通信装置並びに通信システム
【課題】非接触給電と近接無線転送による通信を組み合わせ、ケーブルレスで給電及び高速データ転送を同時に行なう。
【解決手段】コイル12の中央付近に相当する磁性シート13の部位に開口13Aが穿設され、高周波結合器11のうち結合用電極を含むスペーサー11Aの部分のみが、この開口13Aを介して外部に露出している。高周波結合器11を搭載する基板14の大部分は、磁性シート13の下方に隠蔽された状態に保たれている。非接触給電時にコイル12から磁束が発生しても、磁性シート13で遮られ、高周波結合器11内の金属部分に磁束は到達せず、渦電流は発生しない。
【解決手段】コイル12の中央付近に相当する磁性シート13の部位に開口13Aが穿設され、高周波結合器11のうち結合用電極を含むスペーサー11Aの部分のみが、この開口13Aを介して外部に露出している。高周波結合器11を搭載する基板14の大部分は、磁性シート13の下方に隠蔽された状態に保たれている。非接触給電時にコイル12から磁束が発生しても、磁性シート13で遮られ、高周波結合器11内の金属部分に磁束は到達せず、渦電流は発生しない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、微弱なUWB信号を用いた近接無線転送による通信を行なう通信装置並びに通信システムに係り、特に、電磁誘導又は磁界共鳴などを利用した非接触給電と組み合わせるとともに近接無線転送による通信を行なう通信装置並びに通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速通信に適用可能な非接触通信技術として、近接無線転送技術「TransferJet(商標)」(例えば、非特許文献1を参照のこと)を挙げることができる。この近接無線転送技術は、基本的に、誘導電界の結合作用を利用して信号を転送する方式であり、その通信装置は、高周波信号の処理を行なう通信回路部と、グランドに対しある程度の高さで離間して配置された結合用電極と、結合用電極に高周波信号を効率的に供給する共振部で構成される。結合用電極、又は結合用電極と共振部を含んだ部品のことを、本明細書では「高周波結合器」若しくは「カプラー」とも呼ぶ。
【0003】
近接無線転送技術の1つの特徴として、微弱なUWB(Ultra Wide Band)信号を用いて、100Mbps程度の超高速データ転送を実現することが挙げられる。また、近接無線転送技術の他の特徴として、送信電力が低いことが挙げられる。このため、無線設備から3メートルの距離での電界強度(電波の強さ)が所定レベル以下、すなわち近隣に存在する他の無線システムにとってノイズ・レベル程度となる微弱無線であることから、ユーザーは免許を取得せずにこれを使うことができる(例えば、非特許文献2を参照のこと)。
【0004】
例えば、結合用電極、共振部としてのスタブを含むグランドをともに金属板で構成した、近接無線転送を行なう通信装置について提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。また、結合用電極を帯状の導体で構成して、金属の体積を縮小した電界結合器並びに通信装置について提案がなされている(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0005】
また、上記の近接無線転送技術を、NFC(Near Field Communication)に代表される電磁誘導方式の非接触通信と組み合わせた複合通信装置について提案がなされている(例えば、特許文献3を参照のこと)。この複合通信装置は、電磁誘導方式の非接触通信用アンテナ・コイルの近傍に高周波結合器の結合用電極を配置し、データ転送に付随する認証若しくは課金処理を電磁誘導方式の非接触通信で行なうとともに、近接無線転送で大容量データ転送を行ない、これらの通信動作を単一のユーザー操作で且つ従来の認証・課金処理と同じアクセス時間の感覚で完了させることができる。
【0006】
また、データではなく非接触で電力伝送を行なう非接触給電も知られている。一般には、受電装置と給電装置の両方にコイルを設け、電磁誘導や磁界共鳴などを利用して非接触給電が行なわれる。この種の非接触給電では、コイルを通る磁束が機器内部の基板などの金属と鎖交し、電磁誘導により発生する渦電流で装置内が発熱するという問題がある。このため、磁性シートで磁束を遮断して、電磁誘導による渦電流の発生を抑制する方法が採られる(例えば、特許文献4を参照のこと)。
【0007】
図9Aには、磁性シート上にコイル(給電用又は受電用)を配設した構成を上面から眺めた様子を示している。また、図9Bには、図9Aに示した非接触給電部の断面構成を示している。機器内部の基板などの金属は、図示しないが、磁性シートの下方に存在する。コイルで発生する磁束は、磁性シートで遮断されるので、機器内部の基板などの金属には到達しない。したがって、機器内部で渦電流により発熱することはない。
【0008】
ここで、上記の近接無線転送を、電磁誘導方式の非接触通信ではなく、電磁誘導を利用した非接触給電と組み合わせた複合通信装置について検討してみる。このような複合通信装置によれば、ケーブルレスで給電及び高速データ転送を行なうことができるので、ユーザーの利便性が高まる。
【0009】
高周波結合器の結合用電極は金属であることから、給電用若しくは受電用のコイルの近傍に高周波結合器を配置すると、コイルを通る磁束がグランドなどの金属部分と鎖交し、電磁誘導により発生する渦電流で発熱してしまう。また、磁性シートの下に高周波結合器を配設して磁束を遮断しようとすると、近接無線転送の高周波信号までが遮られ、通信性能が劣化してしまう。このため、結合用電極と非接触給電用コイルの配置が技術的課題となる。
【0010】
結合用電極と非接触給電用コイルを近接して配置すれば、データ転送と非接触給電のタッチポイントが単一になるというメリットがある。図10Aには、コイル(給電用又は受電用)の中央付近に高周波結合器を配設した構成を上面から眺めた様子を示している。また、図10Bには、その断面構成を示している。図示の例では、高周波結合器は、コイルとともに磁性シート上に配設されている。機器内部の基板などの金属は、図示しないが、磁性シートの下方に存在する。コイルで発生する磁束は、磁性シートで遮断され、その下方の機器内部には到達しない。しかしながら、コイルを通る磁束は高周波結合器内のグランドなどの金属部分と鎖交するため、電磁誘導により渦電流が発生し、発熱することは明らかである。
【0011】
他方、給電用若しくは受電用のコイルからの磁束の影響を回避するために、給電用若しくは受電用のコイルから離間して高周波結合器を配置することも考えられる。図11Aには、通信装置にコイル(給電用又は受電用)と高周波結合器を離間して配置した様子を示している。この場合、単一のユーザー操作で給電及び高速データ転送を同時に行なうには、送信機と受信機とで、非接触給電部と高周波結合器の間隔が揃うように設計・製作しなければ、これらを同時に向き合わせることはできない。また、送信機と受信機のタッチポイントにおいて、互いの非接触給電部と高周波結合器が対向するような姿勢に配置となければならず、ユーザーにとって操作が煩わしくなる。図11Bには、給電とデータ転送を同時に動作させるために、送信機と受信機間で非接触給電部と高周波結合器を同時に向き合わせて配置した様子を示している。
【0012】
また、図12には、送信機と受信機とで、非接触給電部と高周波結合器の間隔が揃っていないために、送信機と受信機間で非接触給電部と高周波結合器を同時に向き合わせて配置できない例を示している。非接触給電部と高周波結合器の間隔が揃っていないと、給電時とデータ転送時とでタッチポイントが一致しない。すなわち、送受信機同士を近接させても、互いの非接触給電部と高周波結合器とを同時に対向できなくなり、単一のユーザー操作では給電及び高速データ転送を同時に行なうことができない。ユーザーは、例えば通信用の位置決めをし、データ転送を行なった後に、給電に最適な位置に変えて給電を実施する、などの操作が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−154267号公報、図4
【特許文献2】特許第4650536号公報、図5
【特許文献3】特開2010−213197号公報
【特許文献4】WO2007/080820
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】www.transferjet.org/ja/index.html(平成23年6月23日現在)
【非特許文献2】電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)第六条第一項第一号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本明細書で開示する技術の目的は、電磁誘導を利用した非接触給電と近接無線転送による通信を組み合わせ、ケーブルレスで給電及び高速データ転送を同時に行なうことができる、優れた通信装置並びに通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の技術は、
開口部を有する磁性シートと、
前記磁性シート上に配設された非接触給電用コイルと、
結合用電極と、グランドと、前記結合用電極に流れ込む電流量を増大するための共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、
前記結合用電極で送受信する高周波信号を処理する通信回路部と、
を具備する通信装置である。
【0017】
本願の請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の通信装置は、前記結合用電極に蓄えられた電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手に向けて前記高周波信号を伝送するように構成されている。
【0018】
本願の請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の通信装置の磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現している。そして、前記グランド及び前記共振部は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている。
【0019】
本願の請求項4に記載の技術によれば、請求項1に記載の通信装置の高周波結合器は、基板と、前記基板上に導体パターンとして形成された前記グランドと、前記基板上に前記グランドから所定の高さで支持された前記結合用電極と、前記基板上に配設された前記共振部を有している。また、磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現している。そして、前記グランド及び前記共振部を含む前記基板は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている。
【0020】
本願の請求項5に記載の技術によれば、請求項1に記載の通信装置の結合用電極は、帯状にして体積を縮小した導体で構成される。
【0021】
本願の請求項6に記載の技術によれば、請求項3に記載の通信装置は、前記結合用電極を前記通信回路部に接続する信号線ケーブルを取り付けるためのコネクターをさらに備えている。
【0022】
本願の請求項7に記載の技術によれば、請求項6に記載の通信装置において、コネクターは、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記結合用電極とともに前記開口部を介して前記磁性シート上に出現している。そして、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切って前記通信回路部に接続される。
【0023】
本願の請求項8に記載の技術によれば、請求項6に記載の通信装置において、コネクターは、前記非接触給電用コイルの外側に配設されている。そして、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される。
【0024】
本願の請求項9に記載の技術によれば、請求項6に記載の通信装置において、コネクターは、前記磁性シートの下方に配設されている。そして、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される。
【0025】
本願の請求項10に記載の技術によれば、請求項4に記載の通信装置において、通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板内層に形成されたストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続されている。
【0026】
本願の請求項11に記載の技術によれば、請求項4に記載の通信装置において、通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板表層に形成されたマイクロストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続されている。
【0027】
また、本願の請求項12に記載の技術は、
非接触給電用コイルと、
前記非接触給電用コイルの下方に配設され且つ前記非接触給電用コイルの中央付近の部位に開口部を有する磁性シートと、
結合用電極とグランドと共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、
をそれぞれ備えた複数の通信装置からなる通信システムである。
【0028】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【発明の効果】
【0029】
本明細書で開示する技術によれば、電磁誘導を利用した非接触給電と近接無線転送による通信を組み合わせ、ケーブルレスで給電及び高速データ転送を同時に行なうことができる、優れた通信装置並びに通信システムを提供することができる。
【0030】
本明細書で開示する技術によれば、非接触給電と近接無線転送を組み合わせた複合的な通信装置は、結合用電極と給電用コイルが、互いの中心がほぼ同位置となるように配設されており、給電時とデータ転送時でタッチポイントが一致する。したがって、結合用電極と受電用コイルが同じ配置を持つ対向機を近接させて給電及び高速データ転送を同時に行なう際の、装置間の配置の自由度が増す。
【0031】
また、本明細書で開示する技術によれば、通信装置内で結合用電極と給電用若しくは受電用のコイルの中心がほぼ同位置であることから、非接触給電部を高周波結合器と一体化して小型に構成することができ、情報機器への組み込み効率(スペース効率)が向上する。
【0032】
本明細書で開示する技術のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】図1Aは、本明細書で開示する技術の一実施形態に係る複合通信装置の送受信部の構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図1B】図1Bは、図1Aに示した複合通信装置の送受信部の断面構成を示した図である。
【図2】図2は、帯状の導体からなる結合用電極を斜視した図である。
【図3】図3は、帯状の導体からなる結合用電極100の三面図である。
【図4】図4は、帯状の導体からなる結合用電極100の展開図である。
【図5】図5は、結合用電極及びコイルが同じ配置を持つ送受信機同士を回転位置の制約なく近接させる様子を示した図である。
【図6A】図6Aは、本明細書で開示する技術の他の実施形態に係る複合通信装置の送受信部の構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示した複合通信装置の送受信部の断面構成を示した図である。
【図7A】図7Aは、本明細書で開示する技術のさらに他の実施形態に係る複合通信装置の送受信部の構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図7B】図7Bは、図7Aに示した複合通信装置の送受信部の断面構成を示した図である。
【図8A】図8Aは、本明細書で開示する技術のさらに他の実施形態に係る複合通信装置の送受信部の構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図8B】図8Bは、図8Aに示した複合通信装置の送受信部の断面構成を示した図である。
【図9A】図9Aは、磁性シート上にコイル(給電用又は受電用)を配設した構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図9B】図9Bは、図9Aに示した非接触給電部の断面構成を示した図である。
【図10A】図10Aは、コイル(給電用又は受電用)の中央付近に高周波結合器を配設した構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図10B】図10Bは、図10Aに示した非接触給電の断面構成を示した図である。
【図11A】図11Aは、通信装置にコイル(給電用又は受電用)と高周波結合器を離間して配置した様子を示した図である。
【図11B】図11Bは、給電とデータ転送を同時に動作させるために、送信機と受信機間で非接触給電部と高周波結合器を同時に向き合わせて配置した様子を示した図である。
【図12】図12は、送信機と受信機間で非接触給電部と高周波結合器を同時に向き合わせて配置できない例を示した図である。
【図13】図13は、近接無線転送に用いられる高周波結合器の基本的構成を模式的に示した図である。
【図14】図14は、微小ダイポールによる電界を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。
【0035】
電磁誘導を利用した非接触給電と近接無線転送による通信を組み合わせた複合的な通信装置は、ケーブルレスで給電及び高速データ転送を同時に行なうことができる。非接触給電は、当業界で周知の技術である(例えば、特許文献4を参照のこと)。近接無線転送技術の原理について説明しておく。
【0036】
近接無線転送には、アンテナ・エレメントとして、図13に示すような高周波結合器が用いられる。高周波結合器1300は、平板状の結合用電極1301と、直列インダクター1302並びに並列インダクター1303からなる共振部を備え、高周波信号伝送路1305を介して通信回路部1306に接続される。
【0037】
結合用電極1301には、高周波の通信信号が流れ込んで、電荷を蓄える。このとき、直列インダクター1302及び並列インダクター1303からなる共振部の共振作用によって、伝送路を介して結合用電極1301に流れ込む電流は増幅され、より大きな電荷が蓄えられる。また、結合用電極1301に電荷Qが蓄えられると、グランド1304には鏡像電荷−Qが蓄えられる。
【0038】
ここで、平面導体の外部に点電荷Qを置くと、平面導体内には(表面電荷分布を置き換えた仮想的な)鏡像電荷−Qが配置されるが、このことは、例えば溝口正著「電磁気学」(裳華房、第94頁乃至第57頁)にも記載されているように、当業界で周知である。図13中のグランド1304は平面導体に相当し、結合用電極1301の蓄積電荷は平面導体の外部に置かれる点電荷Qに相当する。理論上の平面導体は無限に広いが、実際問題としては、無限に広い平面でなくても、点電荷Qから導体表面の端までの距離が点電荷Qから導体表面までの(最短)距離に比べて十分遠ければよい。
【0039】
点電荷Q及び鏡像電荷−Qが蓄えられた結果、結合用電極1301に蓄えられた電荷Qの中心とグランド1304に蓄えられた鏡像電荷−Qの中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールが形成される(厳密に言うと、電荷Qと鏡像電荷−Qは体積を持ち、微小ダイポールが電荷Qの中心と鏡像電荷−Qの中心を結ぶように形成される)。ここで言う「微小ダイポール」は、「電気ダイポールの電荷間の距離が非常に短いもの」を指す。例えば虫明康人著「アンテナ・電波伝搬」(コロナ社、16頁〜18頁)にも、「微小ダイポール」が記載されている。そして、微小ダイポールによって、電界の横波成分Eθ、電界の縦波成分ER、微小ダイポール回りの磁界Hφが発生する。
【0040】
図14には、微小ダイポールによって発生する電界を図解している。図示のように、電界の横波成分Eθは伝搬方向と垂直な方向に振動し、電界の縦波成分ERは伝搬方向と平行な向きに振動する。また、微小ダイポール回りには磁界Hφが発生する(図示しない)。下式(1)〜(3)は、微小ダイポールによって生成される電磁界を表している。同式中、距離Rの3乗に反比例する成分は静電磁界、距離Rの2乗に反比例する成分は誘導電磁界、距離Rに反比例する成分は放射電磁界である。誘導電磁界は、距離減衰が大きいので、「近傍界」に相当する。これに対し、放射電磁界は、距離減衰が小さいので、「遠方界」に相当する。
【0041】
【数1】
【0042】
但し、上式(1)〜(3)において、微小ダイポールのモーメントp及び距離Rはそれぞれ下式(4)、(5)で定義される。
【0043】
【数2】
【0044】
周辺システムへの妨害波を抑制するには、放射電磁界の成分を含む横波Eθを抑制しながら、放射電磁界の成分を含まない縦波ERを利用することが好ましいと考えられる。何故ならば、上式(1)、(2)から分かるように、電界の横波成分Eθは遠方界に相当する放射電磁界を含むのに対して、縦波成分ERは放射電磁界を含まないからである。
【0045】
上式(2)から、縦波ER成分は微小ダイポールの方向となす角θ=0度で極大となることが分かる。したがって、電界の縦波ERを効率的に利用して近接無線転送を行なうには、微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して通信相手側の高周波結合器を配置して、高周波の電界信号を伝送することが好ましい。また、直列インダクター1302と並列インダクター1303からなる共振部によって、結合用電極131に流れ込む高周波信号の電流量を増やし、より大きくの電荷Qが貯まるようにすることができる。この結果、結合用電極1301に蓄積される電荷Qとグランド1304側の鏡像電荷−Qによって形成される微小ダイポールのモーメントpを大きくすることができ、微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となる伝搬方向に向かって、縦波ERからなる高周波の電界信号を効率的に放出することができる。
【0046】
続いて、電磁誘導を利用した非接触給電と近接無線転送による通信を組み合わせた複合的な通信装置の構成について説明する。
【0047】
図1Aには、本明細書で開示する技術の一実施形態に係る複合通信装置の送受信部の構成を上面から眺めた様子を示している。また、図1Bには、その断面構成を示している。
【0048】
図示の送受信部が、高周波結合器11と、非接触給電用(給電用又は受電用)のコイル12と、磁性シート13で構成される点、並びに、コイル12の中央付近に高周波結合器11が配設される点は、図10A及び図10Bに示した例と同様である。また、図示しないが、磁性シートの下方13には、機器内部の基板などの金属が存在する。
【0049】
高周波結合器11は、コイル12の中央付近に配設されている。但し、図10A及び図10Bに示した構成例とは相違し、コイル12の中央付近に相当する磁性シート13の部位に開口13Aが穿設され、高周波結合器11のうち結合用電極を含むスペーサー11Aの部分が、この開口13Aを介して外部(送受信面)に露出している。また、高周波結合器11に信号線ケーブル16を取り付けるためのコネクター15も、コイル12の内側にあり、開口13Aを介して外部に露出している。コネクター15に接続された信号線ケーブル16は、図中でコイル12の上面を横切り、その他端には高周波結合器11で送受信する高周波信号を処理する通信回路部(図示しない)に接続されている。
【0050】
また、図1A並びに図1Bに示す構成によれば、高周波結合器11は、磁性シート13に設けられた開口13Aから送受信面に露出している。したがって、近接無線転送時に対向して配置された送受信機同士で、互いの高周波結合器11間の電界結合を実現することができる。
【0051】
また、図1A並びに図1Bに示す構成によれば、高周波結合器11を搭載する基板14の大部分は、磁性シート13の下方に隠蔽された状態に保たれている。したがって、非接触給電時にコイル12から磁束が発生しても、磁性シート13で遮られるので、高周波結合器11内のグランドや共振部(いずれも図示しない)を始め、基板14の大部分の金属部分に磁束は到達することなく、渦電流により発熱することもない。
【0052】
図13を参照しながら説明したように、高周波結合器11は、結合用電極と、結合用電極に流れ込む電流量を増大するための共振部と、グランドで構成される。図1に示す高周波結合器11は、例えば特許文献1の図4に示されているような、絶縁体(誘電体)からなるスペーサー11Aによって結合用電極をグランドから所定の高さで支持した構造体である。グランドは、基板14に形成された導体パターンからなる。また、共振部も、基板14に形成された導体パターンからなるスタブであってもよい。
【0053】
ここで、結合用電極は、より好ましくは、帯状にして体積を縮小した導体で構成され、絶縁体からなるスペーサー11A内に埋設されている。このような帯状の導体が好ましいのは、同様の結合用電極の作用を得るために、金属部分の体積を小さくすることができ、この結果、非接触給電時にコイル12から発生した磁束による渦電流の影響を受け難くなるからである。
【0054】
例えば、本出願人に既に譲渡されている特開2009−10111号公報には、結合用電極を線状導体で構成し、コイル状に折り畳むことで、大幅な小型化が可能になることが記載されている。また、特許文献2には、帯状にして体積を縮小した導体で構成される結合用電極が開示されている。
【0055】
図2には、帯状の導体からなる結合用電極100の斜視図を示している。また、図3(A)は、帯状の導体からなる結合用電極100の上面図(x軸正の方向から見た図)、図3(B)は、帯状の導体からなる結合用電極100の正面図(z軸正の方向から見た図)、図3(C)は、帯状の導体からなる結合用電極100の側面図を、それぞれ示している。また、図4には、帯状の導体からなる結合用電極100の展開図を示している。図示の結合用電極100は、絶縁体からなるスペーサー11A内に埋設されているものとする。
【0056】
結合用電極100は、共振部(図示しない)に接続される端子Aと、短絡される端子Bと、第1帯状コイル110と、第2帯状コイル120と、連結部130を有する。第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120は、それぞれのコイル軸AX1、AX2が互いに平行になるように配置される。そして、連結部130は、第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120の一方の端部を連結する。したがって、帯状コイル100の中心部Oは、帯状コイル100の形成面(yz面)内で、第1帯状コイル110、第2帯状コイル120及び連結部130により取り囲まれる。
【0057】
第1帯状コイル110、第2帯状コイル120及び連結部130は、一部折り返し地点などを除いて、所定の同一の帯幅を有する。この幅は、結合用電極100の強度や抵抗値などに基づいて設定される。また、第1帯状コイル110、第2帯状コイル120及び連結部130の長さは、高周波信号の周波数に対して2分の1波長の電気長を有する。このような電気長を有することにより、共振部を介して高周波信号が結合用電極100に入力されると、その高周波信号は、帯状コイル100で共振する。その結果、第1帯状コイル110、第2帯状コイル120には交番磁束が発生し、その交番磁束により、帯状コイル100の中心部Oにおいて、結合方向(x軸方向)に振動する縦波の電界が発生する。
【0058】
第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120の巻き方向は、連結部130を挟んで反転している。結合用電極100は高周波信号に対して2分の1波長の電気長を有するが、この結合用電極100は、4分の1波長の位置(中間位置)において、旋回方向が逆転される。つまり、第1帯状コイル110の巻き方向は、仮に端子Aから端子Bに直流電流を通電させた瞬間にコイル軸AX1正の方向に磁束を発生させる方向に設定される。一方、第2帯状コイル120の巻き方向は、反転されているため、コイル軸AX2正の方向に磁束を発生させる方向に設定される。なお、高周波信号が入力されて帯状コイル100で共振した場合には、第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120で発生する磁束は、どちらか一方が反転されて、中心部Oを取り囲む。その結果、結合用電極100は、中心部Oで発生させる縦波の電界を強めることができる。
【0059】
第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120は、それぞれ蛇行した帯状線路112A及び帯状線路122Aを有している。そして、第1帯状コイル110は、帯状線路112Aを、図4の点線の位置において、結合方向(x軸)正の方向又は負の方向に折曲げられることにより形成される。また、第2帯状コイル120は、帯状線路122Aを、図4の点線の位置において、結合方向(x軸)正の方向又は負の方向に折曲げられることにより形成される。
【0060】
第1帯状コイル110は、内側立上部111と外側折返部112と外側立上部113と内側折返部114とが繰り返して形成され、コイル軸AX1を中心とするコイルを形成する。また、第2帯状コイル120は、外側立上部121と外側折返部122と内側立上部123と内側折返部124とが繰り返して形成されて、コイル軸AX2を中心とするコイルを形成する。図2及び図3Aに示すように、このコイル面の単位が繰り返させることにより、第2帯状コイル120が形成される。なお、上記第1帯状コイル110の場合と同様に、第1帯状コイル110と第2帯状コイル120を連結する連結部130における第2帯状コイル120側の一部も、第2帯状コイル120の1のコイル面の一部を形成することとなる。
【0061】
上述したように、図2〜図4に示したような、帯状の導体からなる結合用電極100は、絶縁体からなるスペーサー内に埋設され、図1A並びに図1Bに示したよう立方体の高周波結合器11を構成する。薄い帯状構造の結合用電極100は、絶縁体内に埋設されることにより、その機械強度が増すとともに、所定の高さで支持することができる。また、グランドや共振部などの導体パターンが形成された基板14上にリフロー半田などでスペーサーを実装することができ、高周波結合器11の製造が容易になる。
【0062】
再び図1A並びに図1Bを参照して、複合通信装置の送受信部の構成について説明する。
【0063】
コイル12は、導体の細分化によって導体表面積を大きくすることで、コイルのQ値を向上することができる。また、温度上昇を抑えるために、リッツ線を巻設してコイル12を構成するようにしてもよい。
【0064】
磁性シート13の役割は、上述したように、非接触給電時にコイル12から発生した磁束を遮ることにある。したがって、高周波結合器11内のグランド(図示しない)を始め、磁性シート13で覆われた基板14の大部分の金属部分に磁束は到達することなく、磁気エネルギーが金属内で消費されるのを防ぐことができる。また、磁性シート13は、磁気ヨーク(磁石が持つ吸着力を増幅するための軟鉄板)として機能して、磁気を増幅する役割もある。
【0065】
図10A並びに図10Bに示したように、磁性シート上に、コイル(給電用又は受電用)とともに高周波結合器を配設した構成では、コイルを通る磁束が高周波結合器内のグランドなどの金属部分と鎖交し、渦電流により発熱してしまう(前述)。
【0066】
これに対し、本実施形態に係る複合的な通信装置は、図1A並びに図1Bに示したように、磁性シート13に開口13Aを設け、この開口13Aから高周波結合器11の結合用電極部分を送受信面に露出させる一方、グランドを始め大部分の金属部分磁性シート13の下方に隠蔽された状態にしている。
【0067】
このような構成により、複合的な通信装置は、近接無線転送と非接触電力伝送の双方の効率低下を最小限に抑え、データ転送と給電を行なうことができる。
【0068】
また、図1A並びに図1Bに示した構成例では、磁性シート13の開口13Aは、コイル12の中央付近に相当する部位に設けられており、高周波結合器11の結合用電極部分はコイル12の中央付近から送受信面に露出している。
【0069】
このように高周波結合器11の結合用電極とコイル12の中心がほぼ同位置にあることで、データ転送と非接触給電のタッチポイントが一致するので、結合用電極及びコイルが同じ配置を持つ送受信機間では、近接位置の自由度が増す。図5に示すように、送受信機間でコイル12の中心位置を合わせるのみで、両機器をいかなる回転方向で近接させても、給電及び高速データ転送を同時に行なうことができる。
【0070】
要するに、本実施形態に係る複合的な通信装置は、非接触給電用のコイル12と高周波結合器11の一体化で小型となり、機器への組み込み効率(スペース効率)が上がることで機器の小型化を実現することができる。
【0071】
なお、図1A並びに図1Bに示した構成例では、信号線ケーブル16を取り付けるためのコネクター15も、高周波結合器11とともにコイル12の内側にあり、開口13Aを介して外部に露出している。このようにコネクター15もコイル12の内側に配設すると、高周波結合器11を搭載する基板15をコンパクトにすることができ、複合的な通信装置全体を小型化することができる。その反面、金属製の信号線ケーブル16がコイル12の上面を横切っていることから、非接触給電時にはこの信号線ケーブル16を磁束が通過し、渦電流により発熱するという問題がある。
【0072】
これに対し、図6Aには、複合通信装置の送受信部の他の構成例を上面から眺めた様子を示している。図6Bには、その断面構成を示している。送受信部が高周波結合器11と、非接触給電用(給電用又は受電用)のコイル12と、磁性シート13で構成される点、コイル12の中央付近で高周波結合器11が出現している点、並びに、高周波結合器11を搭載した基板14は磁性シート13で覆われている点は、図1A並びに図1Bに示した構成例と同様である。また、図示しないが、磁性シートの下方13には、機器内部の基板などの金属が存在する。但し、コネクター15が、コイル12の外側に配設されている点で、図1A並びに図1Bに示した構成例とは相違する。
【0073】
図6A並びに図6Bに示した構成例では、コネクター15に接続された信号線ケーブル16がコイル12の上面を横切ることなく、通信回路部(図示しない)に接続される。このような場合、非接触給電時に金属製の信号線ケーブル16を磁束が通過せず、渦電流により発熱するという問題はなくなる。その反面、図1A並びに図1Bに示した構成例と比べて、高周波結合器11を搭載する基板15のサイズが拡張し、複合的な通信装置全体としても大型化してしまう。
【0074】
図7Aには、複合通信装置の送受信部のさらに他の構成例を上面から眺めた様子を示している。図7Bには、その断面構成を示している。送受信部が高周波結合器11と、非接触給電用(給電用又は受電用)のコイル12と、磁性シート13で構成される点、コイル12の中央付近に高周波結合器11が出現している点、並びに、高周波結合器11を搭載した基板14は磁性シート13で覆われている点は、図1A並びに図1Bに示した構成例と同様である。また、図示しないが、磁性シートの下方13には、機器内部の基板などの金属が存在する。高周波結合器11に信号線ケーブル16を取り付けるためのコネクター15は、スルーホール(図示しない)を介して基板14の裏面側に配設されている。
【0075】
図7A並びに図7Bに示した構成例では、コネクター15に取り付けられた信号線ケーブル16は、コイル12の上面を横切ることなく、通信回路部(図示しない)に接続される。すなわち、コネクター15に接続された信号線ケーブル16は磁性シート13の下方に隠蔽された状態にあるので、非接触給電時にコイル12から発生する磁束は信号線ケーブル16に到達することなく、渦電流により発熱することもない。
【0076】
図8Aには、複合通信装置の送受信部のさらに他の構成例を上面から眺めた様子を示している。図8Bには、その断面構成を示している。送受信部が高周波結合器11と、非接触給電用(給電用又は受電用)のコイル12と、磁性シート13で構成される点、コイル12の中央付近に高周波結合器11が出現している点、並びに、高周波結合器11を搭載した基板14は磁性シート13で覆われている点は、図1A並びに図1Bに示した構成例と同様である。また、図示しないが、磁性シートの下方13には、機器内部の基板などの金属が存在する。
【0077】
図8A並びに図8Bに示す構成例では、通信回路部17は、高周波結合器11とともに基板14上に実装されている。但し、高周波結合器11がコイル12の中央付近に配設されるが、通信回路部17はコイル12の外側に配設される。そして、高周波結合器11と通信回路部17は、基板14の内層に形成されたストリップラインからなる高周波信号伝送路を介して接続されている。
【0078】
したがって、ストリップラインからなる高周波信号伝送路は、磁性シート13の下方に隠蔽された状態にあるので、非接触給電時にコイル12から発生する磁束は信号線ケーブル16に到達することなく、渦電流により発熱することもない。また、ストリップラインからなる高周波信号伝送路18で高周波結合器11と通信回路部17を接続する構成によれば、図6や図7に示した例のようにコネクター15が不要になる。すなわち、ストリップラインからなる高周波信号伝送路18コネクター15及び信号線ケーブル16の代わりとなり、省スペース化を実現することができる。
【0079】
なお、高周波結合器11と通信回路部17を接続する高周波信号伝送路18として、図8A及び図8Bに示したような、基板14の内層に形成されたストリップラインの代わりに、基板14の表層に形成されたマイクロストリップライン(図示しない)を使用することもできる。
【0080】
なお、本明細書の開示の技術は、以下のような構成をとることも可能である。
(1)開口部を有する磁性シートと、前記磁性シート上に配設された非接触給電用コイルと、結合用電極と、グランドと、前記結合用電極に流れ込む電流量を増大するための共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、前記結合用電極で送受信する高周波信号を処理する通信回路部と、を具備する通信装置。
(2)前記結合用電極に蓄えられた電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手に向けて前記高周波信号を伝送する、上記(1)に記載の通信装置。
(3)前記磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、前記結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、前記グランド及び前記共振部は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている、上記(1)又は(2)のいずれかに記載の通信装置。
(4)前記高周波結合器は、基板と、前記基板上に導体パターンとして形成された前記グランドと、前記基板上に前記グランドから所定の高さで支持された前記結合用電極と、前記基板上に配設された前記共振部を有し、前記磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、前記結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、前記グランド及び前記共振部を含む前記基板は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている、上記(1)又は(2)のいずれかに記載の通信装置。
(5)前記結合用電極は、帯状にして体積を縮小した導体で構成される、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の通信装置。
(6)前記結合用電極を前記通信回路部に接続する信号線ケーブルを取り付けるためのコネクターをさらに備える、上記(3)又は(4)のいずれかに記載の通信装置。
(7)前記コネクターは、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記結合用電極とともに前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切って前記通信回路部に接続される、上記(6)に記載の通信装置。
(8)前記コネクターは、前記非接触給電用コイルの外側に配設され、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される、上記(6)に記載の通信装置。
(9)前記コネクターは、前記磁性シートの下方に配設され、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される、上記(6)に記載の通信装置。
(10)前記通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板内層に形成されたストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続される、上記(4)に記載の通信装置。
(11)前記通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板表層に形成されたマイクロストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続される、上記(4)に記載の通信装置。
(12)非接触給電用コイルと、前記非接触給電用コイルの下方に配設され且つ前記非接触給電用コイルの中央付近の部位に開口部を有する磁性シートと、結合用電極とグランドと共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、をそれぞれ備えた複数の通信装置からなる通信システム。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本明細書で開示する技術について詳細に説明してきた。しかしながら、本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0082】
本技術に係る複合的な通信装置は、携帯端末用のクレードルや、非接触無線転送機能を搭載したパーソナル・コンピューターなど、さまざまな情報機器に適用することができる。
【0083】
要するに、例示という形態で本技術を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本技術の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0084】
11…高周波結合器、11A…スペーサー
12…コイル
13…磁性シート、13A…開口
14…基板
15…コネクター
16…信号線ケーブル
17…通信回路部
18…高周波信号伝送路(ストリップライン)
120…高周波結合器
121…結合用電極
122…直列インダクター
123…並列インダクター
124…グランド
125…高周波信号伝送路
126…通信回路部
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、微弱なUWB信号を用いた近接無線転送による通信を行なう通信装置並びに通信システムに係り、特に、電磁誘導又は磁界共鳴などを利用した非接触給電と組み合わせるとともに近接無線転送による通信を行なう通信装置並びに通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速通信に適用可能な非接触通信技術として、近接無線転送技術「TransferJet(商標)」(例えば、非特許文献1を参照のこと)を挙げることができる。この近接無線転送技術は、基本的に、誘導電界の結合作用を利用して信号を転送する方式であり、その通信装置は、高周波信号の処理を行なう通信回路部と、グランドに対しある程度の高さで離間して配置された結合用電極と、結合用電極に高周波信号を効率的に供給する共振部で構成される。結合用電極、又は結合用電極と共振部を含んだ部品のことを、本明細書では「高周波結合器」若しくは「カプラー」とも呼ぶ。
【0003】
近接無線転送技術の1つの特徴として、微弱なUWB(Ultra Wide Band)信号を用いて、100Mbps程度の超高速データ転送を実現することが挙げられる。また、近接無線転送技術の他の特徴として、送信電力が低いことが挙げられる。このため、無線設備から3メートルの距離での電界強度(電波の強さ)が所定レベル以下、すなわち近隣に存在する他の無線システムにとってノイズ・レベル程度となる微弱無線であることから、ユーザーは免許を取得せずにこれを使うことができる(例えば、非特許文献2を参照のこと)。
【0004】
例えば、結合用電極、共振部としてのスタブを含むグランドをともに金属板で構成した、近接無線転送を行なう通信装置について提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。また、結合用電極を帯状の導体で構成して、金属の体積を縮小した電界結合器並びに通信装置について提案がなされている(例えば、特許文献2を参照のこと)。
【0005】
また、上記の近接無線転送技術を、NFC(Near Field Communication)に代表される電磁誘導方式の非接触通信と組み合わせた複合通信装置について提案がなされている(例えば、特許文献3を参照のこと)。この複合通信装置は、電磁誘導方式の非接触通信用アンテナ・コイルの近傍に高周波結合器の結合用電極を配置し、データ転送に付随する認証若しくは課金処理を電磁誘導方式の非接触通信で行なうとともに、近接無線転送で大容量データ転送を行ない、これらの通信動作を単一のユーザー操作で且つ従来の認証・課金処理と同じアクセス時間の感覚で完了させることができる。
【0006】
また、データではなく非接触で電力伝送を行なう非接触給電も知られている。一般には、受電装置と給電装置の両方にコイルを設け、電磁誘導や磁界共鳴などを利用して非接触給電が行なわれる。この種の非接触給電では、コイルを通る磁束が機器内部の基板などの金属と鎖交し、電磁誘導により発生する渦電流で装置内が発熱するという問題がある。このため、磁性シートで磁束を遮断して、電磁誘導による渦電流の発生を抑制する方法が採られる(例えば、特許文献4を参照のこと)。
【0007】
図9Aには、磁性シート上にコイル(給電用又は受電用)を配設した構成を上面から眺めた様子を示している。また、図9Bには、図9Aに示した非接触給電部の断面構成を示している。機器内部の基板などの金属は、図示しないが、磁性シートの下方に存在する。コイルで発生する磁束は、磁性シートで遮断されるので、機器内部の基板などの金属には到達しない。したがって、機器内部で渦電流により発熱することはない。
【0008】
ここで、上記の近接無線転送を、電磁誘導方式の非接触通信ではなく、電磁誘導を利用した非接触給電と組み合わせた複合通信装置について検討してみる。このような複合通信装置によれば、ケーブルレスで給電及び高速データ転送を行なうことができるので、ユーザーの利便性が高まる。
【0009】
高周波結合器の結合用電極は金属であることから、給電用若しくは受電用のコイルの近傍に高周波結合器を配置すると、コイルを通る磁束がグランドなどの金属部分と鎖交し、電磁誘導により発生する渦電流で発熱してしまう。また、磁性シートの下に高周波結合器を配設して磁束を遮断しようとすると、近接無線転送の高周波信号までが遮られ、通信性能が劣化してしまう。このため、結合用電極と非接触給電用コイルの配置が技術的課題となる。
【0010】
結合用電極と非接触給電用コイルを近接して配置すれば、データ転送と非接触給電のタッチポイントが単一になるというメリットがある。図10Aには、コイル(給電用又は受電用)の中央付近に高周波結合器を配設した構成を上面から眺めた様子を示している。また、図10Bには、その断面構成を示している。図示の例では、高周波結合器は、コイルとともに磁性シート上に配設されている。機器内部の基板などの金属は、図示しないが、磁性シートの下方に存在する。コイルで発生する磁束は、磁性シートで遮断され、その下方の機器内部には到達しない。しかしながら、コイルを通る磁束は高周波結合器内のグランドなどの金属部分と鎖交するため、電磁誘導により渦電流が発生し、発熱することは明らかである。
【0011】
他方、給電用若しくは受電用のコイルからの磁束の影響を回避するために、給電用若しくは受電用のコイルから離間して高周波結合器を配置することも考えられる。図11Aには、通信装置にコイル(給電用又は受電用)と高周波結合器を離間して配置した様子を示している。この場合、単一のユーザー操作で給電及び高速データ転送を同時に行なうには、送信機と受信機とで、非接触給電部と高周波結合器の間隔が揃うように設計・製作しなければ、これらを同時に向き合わせることはできない。また、送信機と受信機のタッチポイントにおいて、互いの非接触給電部と高周波結合器が対向するような姿勢に配置となければならず、ユーザーにとって操作が煩わしくなる。図11Bには、給電とデータ転送を同時に動作させるために、送信機と受信機間で非接触給電部と高周波結合器を同時に向き合わせて配置した様子を示している。
【0012】
また、図12には、送信機と受信機とで、非接触給電部と高周波結合器の間隔が揃っていないために、送信機と受信機間で非接触給電部と高周波結合器を同時に向き合わせて配置できない例を示している。非接触給電部と高周波結合器の間隔が揃っていないと、給電時とデータ転送時とでタッチポイントが一致しない。すなわち、送受信機同士を近接させても、互いの非接触給電部と高周波結合器とを同時に対向できなくなり、単一のユーザー操作では給電及び高速データ転送を同時に行なうことができない。ユーザーは、例えば通信用の位置決めをし、データ転送を行なった後に、給電に最適な位置に変えて給電を実施する、などの操作が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−154267号公報、図4
【特許文献2】特許第4650536号公報、図5
【特許文献3】特開2010−213197号公報
【特許文献4】WO2007/080820
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】www.transferjet.org/ja/index.html(平成23年6月23日現在)
【非特許文献2】電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号)第六条第一項第一号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本明細書で開示する技術の目的は、電磁誘導を利用した非接触給電と近接無線転送による通信を組み合わせ、ケーブルレスで給電及び高速データ転送を同時に行なうことができる、優れた通信装置並びに通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の技術は、
開口部を有する磁性シートと、
前記磁性シート上に配設された非接触給電用コイルと、
結合用電極と、グランドと、前記結合用電極に流れ込む電流量を増大するための共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、
前記結合用電極で送受信する高周波信号を処理する通信回路部と、
を具備する通信装置である。
【0017】
本願の請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の通信装置は、前記結合用電極に蓄えられた電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手に向けて前記高周波信号を伝送するように構成されている。
【0018】
本願の請求項3に記載の技術によれば、請求項1に記載の通信装置の磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現している。そして、前記グランド及び前記共振部は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている。
【0019】
本願の請求項4に記載の技術によれば、請求項1に記載の通信装置の高周波結合器は、基板と、前記基板上に導体パターンとして形成された前記グランドと、前記基板上に前記グランドから所定の高さで支持された前記結合用電極と、前記基板上に配設された前記共振部を有している。また、磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現している。そして、前記グランド及び前記共振部を含む前記基板は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている。
【0020】
本願の請求項5に記載の技術によれば、請求項1に記載の通信装置の結合用電極は、帯状にして体積を縮小した導体で構成される。
【0021】
本願の請求項6に記載の技術によれば、請求項3に記載の通信装置は、前記結合用電極を前記通信回路部に接続する信号線ケーブルを取り付けるためのコネクターをさらに備えている。
【0022】
本願の請求項7に記載の技術によれば、請求項6に記載の通信装置において、コネクターは、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記結合用電極とともに前記開口部を介して前記磁性シート上に出現している。そして、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切って前記通信回路部に接続される。
【0023】
本願の請求項8に記載の技術によれば、請求項6に記載の通信装置において、コネクターは、前記非接触給電用コイルの外側に配設されている。そして、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される。
【0024】
本願の請求項9に記載の技術によれば、請求項6に記載の通信装置において、コネクターは、前記磁性シートの下方に配設されている。そして、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される。
【0025】
本願の請求項10に記載の技術によれば、請求項4に記載の通信装置において、通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板内層に形成されたストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続されている。
【0026】
本願の請求項11に記載の技術によれば、請求項4に記載の通信装置において、通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板表層に形成されたマイクロストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続されている。
【0027】
また、本願の請求項12に記載の技術は、
非接触給電用コイルと、
前記非接触給電用コイルの下方に配設され且つ前記非接触給電用コイルの中央付近の部位に開口部を有する磁性シートと、
結合用電極とグランドと共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、
をそれぞれ備えた複数の通信装置からなる通信システムである。
【0028】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【発明の効果】
【0029】
本明細書で開示する技術によれば、電磁誘導を利用した非接触給電と近接無線転送による通信を組み合わせ、ケーブルレスで給電及び高速データ転送を同時に行なうことができる、優れた通信装置並びに通信システムを提供することができる。
【0030】
本明細書で開示する技術によれば、非接触給電と近接無線転送を組み合わせた複合的な通信装置は、結合用電極と給電用コイルが、互いの中心がほぼ同位置となるように配設されており、給電時とデータ転送時でタッチポイントが一致する。したがって、結合用電極と受電用コイルが同じ配置を持つ対向機を近接させて給電及び高速データ転送を同時に行なう際の、装置間の配置の自由度が増す。
【0031】
また、本明細書で開示する技術によれば、通信装置内で結合用電極と給電用若しくは受電用のコイルの中心がほぼ同位置であることから、非接触給電部を高周波結合器と一体化して小型に構成することができ、情報機器への組み込み効率(スペース効率)が向上する。
【0032】
本明細書で開示する技術のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】図1Aは、本明細書で開示する技術の一実施形態に係る複合通信装置の送受信部の構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図1B】図1Bは、図1Aに示した複合通信装置の送受信部の断面構成を示した図である。
【図2】図2は、帯状の導体からなる結合用電極を斜視した図である。
【図3】図3は、帯状の導体からなる結合用電極100の三面図である。
【図4】図4は、帯状の導体からなる結合用電極100の展開図である。
【図5】図5は、結合用電極及びコイルが同じ配置を持つ送受信機同士を回転位置の制約なく近接させる様子を示した図である。
【図6A】図6Aは、本明細書で開示する技術の他の実施形態に係る複合通信装置の送受信部の構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示した複合通信装置の送受信部の断面構成を示した図である。
【図7A】図7Aは、本明細書で開示する技術のさらに他の実施形態に係る複合通信装置の送受信部の構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図7B】図7Bは、図7Aに示した複合通信装置の送受信部の断面構成を示した図である。
【図8A】図8Aは、本明細書で開示する技術のさらに他の実施形態に係る複合通信装置の送受信部の構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図8B】図8Bは、図8Aに示した複合通信装置の送受信部の断面構成を示した図である。
【図9A】図9Aは、磁性シート上にコイル(給電用又は受電用)を配設した構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図9B】図9Bは、図9Aに示した非接触給電部の断面構成を示した図である。
【図10A】図10Aは、コイル(給電用又は受電用)の中央付近に高周波結合器を配設した構成を上面から眺めた様子を示した図である。
【図10B】図10Bは、図10Aに示した非接触給電の断面構成を示した図である。
【図11A】図11Aは、通信装置にコイル(給電用又は受電用)と高周波結合器を離間して配置した様子を示した図である。
【図11B】図11Bは、給電とデータ転送を同時に動作させるために、送信機と受信機間で非接触給電部と高周波結合器を同時に向き合わせて配置した様子を示した図である。
【図12】図12は、送信機と受信機間で非接触給電部と高周波結合器を同時に向き合わせて配置できない例を示した図である。
【図13】図13は、近接無線転送に用いられる高周波結合器の基本的構成を模式的に示した図である。
【図14】図14は、微小ダイポールによる電界を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本明細書で開示する技術の実施形態について詳細に説明する。
【0035】
電磁誘導を利用した非接触給電と近接無線転送による通信を組み合わせた複合的な通信装置は、ケーブルレスで給電及び高速データ転送を同時に行なうことができる。非接触給電は、当業界で周知の技術である(例えば、特許文献4を参照のこと)。近接無線転送技術の原理について説明しておく。
【0036】
近接無線転送には、アンテナ・エレメントとして、図13に示すような高周波結合器が用いられる。高周波結合器1300は、平板状の結合用電極1301と、直列インダクター1302並びに並列インダクター1303からなる共振部を備え、高周波信号伝送路1305を介して通信回路部1306に接続される。
【0037】
結合用電極1301には、高周波の通信信号が流れ込んで、電荷を蓄える。このとき、直列インダクター1302及び並列インダクター1303からなる共振部の共振作用によって、伝送路を介して結合用電極1301に流れ込む電流は増幅され、より大きな電荷が蓄えられる。また、結合用電極1301に電荷Qが蓄えられると、グランド1304には鏡像電荷−Qが蓄えられる。
【0038】
ここで、平面導体の外部に点電荷Qを置くと、平面導体内には(表面電荷分布を置き換えた仮想的な)鏡像電荷−Qが配置されるが、このことは、例えば溝口正著「電磁気学」(裳華房、第94頁乃至第57頁)にも記載されているように、当業界で周知である。図13中のグランド1304は平面導体に相当し、結合用電極1301の蓄積電荷は平面導体の外部に置かれる点電荷Qに相当する。理論上の平面導体は無限に広いが、実際問題としては、無限に広い平面でなくても、点電荷Qから導体表面の端までの距離が点電荷Qから導体表面までの(最短)距離に比べて十分遠ければよい。
【0039】
点電荷Q及び鏡像電荷−Qが蓄えられた結果、結合用電極1301に蓄えられた電荷Qの中心とグランド1304に蓄えられた鏡像電荷−Qの中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールが形成される(厳密に言うと、電荷Qと鏡像電荷−Qは体積を持ち、微小ダイポールが電荷Qの中心と鏡像電荷−Qの中心を結ぶように形成される)。ここで言う「微小ダイポール」は、「電気ダイポールの電荷間の距離が非常に短いもの」を指す。例えば虫明康人著「アンテナ・電波伝搬」(コロナ社、16頁〜18頁)にも、「微小ダイポール」が記載されている。そして、微小ダイポールによって、電界の横波成分Eθ、電界の縦波成分ER、微小ダイポール回りの磁界Hφが発生する。
【0040】
図14には、微小ダイポールによって発生する電界を図解している。図示のように、電界の横波成分Eθは伝搬方向と垂直な方向に振動し、電界の縦波成分ERは伝搬方向と平行な向きに振動する。また、微小ダイポール回りには磁界Hφが発生する(図示しない)。下式(1)〜(3)は、微小ダイポールによって生成される電磁界を表している。同式中、距離Rの3乗に反比例する成分は静電磁界、距離Rの2乗に反比例する成分は誘導電磁界、距離Rに反比例する成分は放射電磁界である。誘導電磁界は、距離減衰が大きいので、「近傍界」に相当する。これに対し、放射電磁界は、距離減衰が小さいので、「遠方界」に相当する。
【0041】
【数1】
【0042】
但し、上式(1)〜(3)において、微小ダイポールのモーメントp及び距離Rはそれぞれ下式(4)、(5)で定義される。
【0043】
【数2】
【0044】
周辺システムへの妨害波を抑制するには、放射電磁界の成分を含む横波Eθを抑制しながら、放射電磁界の成分を含まない縦波ERを利用することが好ましいと考えられる。何故ならば、上式(1)、(2)から分かるように、電界の横波成分Eθは遠方界に相当する放射電磁界を含むのに対して、縦波成分ERは放射電磁界を含まないからである。
【0045】
上式(2)から、縦波ER成分は微小ダイポールの方向となす角θ=0度で極大となることが分かる。したがって、電界の縦波ERを効率的に利用して近接無線転送を行なうには、微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して通信相手側の高周波結合器を配置して、高周波の電界信号を伝送することが好ましい。また、直列インダクター1302と並列インダクター1303からなる共振部によって、結合用電極131に流れ込む高周波信号の電流量を増やし、より大きくの電荷Qが貯まるようにすることができる。この結果、結合用電極1301に蓄積される電荷Qとグランド1304側の鏡像電荷−Qによって形成される微小ダイポールのモーメントpを大きくすることができ、微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となる伝搬方向に向かって、縦波ERからなる高周波の電界信号を効率的に放出することができる。
【0046】
続いて、電磁誘導を利用した非接触給電と近接無線転送による通信を組み合わせた複合的な通信装置の構成について説明する。
【0047】
図1Aには、本明細書で開示する技術の一実施形態に係る複合通信装置の送受信部の構成を上面から眺めた様子を示している。また、図1Bには、その断面構成を示している。
【0048】
図示の送受信部が、高周波結合器11と、非接触給電用(給電用又は受電用)のコイル12と、磁性シート13で構成される点、並びに、コイル12の中央付近に高周波結合器11が配設される点は、図10A及び図10Bに示した例と同様である。また、図示しないが、磁性シートの下方13には、機器内部の基板などの金属が存在する。
【0049】
高周波結合器11は、コイル12の中央付近に配設されている。但し、図10A及び図10Bに示した構成例とは相違し、コイル12の中央付近に相当する磁性シート13の部位に開口13Aが穿設され、高周波結合器11のうち結合用電極を含むスペーサー11Aの部分が、この開口13Aを介して外部(送受信面)に露出している。また、高周波結合器11に信号線ケーブル16を取り付けるためのコネクター15も、コイル12の内側にあり、開口13Aを介して外部に露出している。コネクター15に接続された信号線ケーブル16は、図中でコイル12の上面を横切り、その他端には高周波結合器11で送受信する高周波信号を処理する通信回路部(図示しない)に接続されている。
【0050】
また、図1A並びに図1Bに示す構成によれば、高周波結合器11は、磁性シート13に設けられた開口13Aから送受信面に露出している。したがって、近接無線転送時に対向して配置された送受信機同士で、互いの高周波結合器11間の電界結合を実現することができる。
【0051】
また、図1A並びに図1Bに示す構成によれば、高周波結合器11を搭載する基板14の大部分は、磁性シート13の下方に隠蔽された状態に保たれている。したがって、非接触給電時にコイル12から磁束が発生しても、磁性シート13で遮られるので、高周波結合器11内のグランドや共振部(いずれも図示しない)を始め、基板14の大部分の金属部分に磁束は到達することなく、渦電流により発熱することもない。
【0052】
図13を参照しながら説明したように、高周波結合器11は、結合用電極と、結合用電極に流れ込む電流量を増大するための共振部と、グランドで構成される。図1に示す高周波結合器11は、例えば特許文献1の図4に示されているような、絶縁体(誘電体)からなるスペーサー11Aによって結合用電極をグランドから所定の高さで支持した構造体である。グランドは、基板14に形成された導体パターンからなる。また、共振部も、基板14に形成された導体パターンからなるスタブであってもよい。
【0053】
ここで、結合用電極は、より好ましくは、帯状にして体積を縮小した導体で構成され、絶縁体からなるスペーサー11A内に埋設されている。このような帯状の導体が好ましいのは、同様の結合用電極の作用を得るために、金属部分の体積を小さくすることができ、この結果、非接触給電時にコイル12から発生した磁束による渦電流の影響を受け難くなるからである。
【0054】
例えば、本出願人に既に譲渡されている特開2009−10111号公報には、結合用電極を線状導体で構成し、コイル状に折り畳むことで、大幅な小型化が可能になることが記載されている。また、特許文献2には、帯状にして体積を縮小した導体で構成される結合用電極が開示されている。
【0055】
図2には、帯状の導体からなる結合用電極100の斜視図を示している。また、図3(A)は、帯状の導体からなる結合用電極100の上面図(x軸正の方向から見た図)、図3(B)は、帯状の導体からなる結合用電極100の正面図(z軸正の方向から見た図)、図3(C)は、帯状の導体からなる結合用電極100の側面図を、それぞれ示している。また、図4には、帯状の導体からなる結合用電極100の展開図を示している。図示の結合用電極100は、絶縁体からなるスペーサー11A内に埋設されているものとする。
【0056】
結合用電極100は、共振部(図示しない)に接続される端子Aと、短絡される端子Bと、第1帯状コイル110と、第2帯状コイル120と、連結部130を有する。第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120は、それぞれのコイル軸AX1、AX2が互いに平行になるように配置される。そして、連結部130は、第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120の一方の端部を連結する。したがって、帯状コイル100の中心部Oは、帯状コイル100の形成面(yz面)内で、第1帯状コイル110、第2帯状コイル120及び連結部130により取り囲まれる。
【0057】
第1帯状コイル110、第2帯状コイル120及び連結部130は、一部折り返し地点などを除いて、所定の同一の帯幅を有する。この幅は、結合用電極100の強度や抵抗値などに基づいて設定される。また、第1帯状コイル110、第2帯状コイル120及び連結部130の長さは、高周波信号の周波数に対して2分の1波長の電気長を有する。このような電気長を有することにより、共振部を介して高周波信号が結合用電極100に入力されると、その高周波信号は、帯状コイル100で共振する。その結果、第1帯状コイル110、第2帯状コイル120には交番磁束が発生し、その交番磁束により、帯状コイル100の中心部Oにおいて、結合方向(x軸方向)に振動する縦波の電界が発生する。
【0058】
第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120の巻き方向は、連結部130を挟んで反転している。結合用電極100は高周波信号に対して2分の1波長の電気長を有するが、この結合用電極100は、4分の1波長の位置(中間位置)において、旋回方向が逆転される。つまり、第1帯状コイル110の巻き方向は、仮に端子Aから端子Bに直流電流を通電させた瞬間にコイル軸AX1正の方向に磁束を発生させる方向に設定される。一方、第2帯状コイル120の巻き方向は、反転されているため、コイル軸AX2正の方向に磁束を発生させる方向に設定される。なお、高周波信号が入力されて帯状コイル100で共振した場合には、第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120で発生する磁束は、どちらか一方が反転されて、中心部Oを取り囲む。その結果、結合用電極100は、中心部Oで発生させる縦波の電界を強めることができる。
【0059】
第1帯状コイル110及び第2帯状コイル120は、それぞれ蛇行した帯状線路112A及び帯状線路122Aを有している。そして、第1帯状コイル110は、帯状線路112Aを、図4の点線の位置において、結合方向(x軸)正の方向又は負の方向に折曲げられることにより形成される。また、第2帯状コイル120は、帯状線路122Aを、図4の点線の位置において、結合方向(x軸)正の方向又は負の方向に折曲げられることにより形成される。
【0060】
第1帯状コイル110は、内側立上部111と外側折返部112と外側立上部113と内側折返部114とが繰り返して形成され、コイル軸AX1を中心とするコイルを形成する。また、第2帯状コイル120は、外側立上部121と外側折返部122と内側立上部123と内側折返部124とが繰り返して形成されて、コイル軸AX2を中心とするコイルを形成する。図2及び図3Aに示すように、このコイル面の単位が繰り返させることにより、第2帯状コイル120が形成される。なお、上記第1帯状コイル110の場合と同様に、第1帯状コイル110と第2帯状コイル120を連結する連結部130における第2帯状コイル120側の一部も、第2帯状コイル120の1のコイル面の一部を形成することとなる。
【0061】
上述したように、図2〜図4に示したような、帯状の導体からなる結合用電極100は、絶縁体からなるスペーサー内に埋設され、図1A並びに図1Bに示したよう立方体の高周波結合器11を構成する。薄い帯状構造の結合用電極100は、絶縁体内に埋設されることにより、その機械強度が増すとともに、所定の高さで支持することができる。また、グランドや共振部などの導体パターンが形成された基板14上にリフロー半田などでスペーサーを実装することができ、高周波結合器11の製造が容易になる。
【0062】
再び図1A並びに図1Bを参照して、複合通信装置の送受信部の構成について説明する。
【0063】
コイル12は、導体の細分化によって導体表面積を大きくすることで、コイルのQ値を向上することができる。また、温度上昇を抑えるために、リッツ線を巻設してコイル12を構成するようにしてもよい。
【0064】
磁性シート13の役割は、上述したように、非接触給電時にコイル12から発生した磁束を遮ることにある。したがって、高周波結合器11内のグランド(図示しない)を始め、磁性シート13で覆われた基板14の大部分の金属部分に磁束は到達することなく、磁気エネルギーが金属内で消費されるのを防ぐことができる。また、磁性シート13は、磁気ヨーク(磁石が持つ吸着力を増幅するための軟鉄板)として機能して、磁気を増幅する役割もある。
【0065】
図10A並びに図10Bに示したように、磁性シート上に、コイル(給電用又は受電用)とともに高周波結合器を配設した構成では、コイルを通る磁束が高周波結合器内のグランドなどの金属部分と鎖交し、渦電流により発熱してしまう(前述)。
【0066】
これに対し、本実施形態に係る複合的な通信装置は、図1A並びに図1Bに示したように、磁性シート13に開口13Aを設け、この開口13Aから高周波結合器11の結合用電極部分を送受信面に露出させる一方、グランドを始め大部分の金属部分磁性シート13の下方に隠蔽された状態にしている。
【0067】
このような構成により、複合的な通信装置は、近接無線転送と非接触電力伝送の双方の効率低下を最小限に抑え、データ転送と給電を行なうことができる。
【0068】
また、図1A並びに図1Bに示した構成例では、磁性シート13の開口13Aは、コイル12の中央付近に相当する部位に設けられており、高周波結合器11の結合用電極部分はコイル12の中央付近から送受信面に露出している。
【0069】
このように高周波結合器11の結合用電極とコイル12の中心がほぼ同位置にあることで、データ転送と非接触給電のタッチポイントが一致するので、結合用電極及びコイルが同じ配置を持つ送受信機間では、近接位置の自由度が増す。図5に示すように、送受信機間でコイル12の中心位置を合わせるのみで、両機器をいかなる回転方向で近接させても、給電及び高速データ転送を同時に行なうことができる。
【0070】
要するに、本実施形態に係る複合的な通信装置は、非接触給電用のコイル12と高周波結合器11の一体化で小型となり、機器への組み込み効率(スペース効率)が上がることで機器の小型化を実現することができる。
【0071】
なお、図1A並びに図1Bに示した構成例では、信号線ケーブル16を取り付けるためのコネクター15も、高周波結合器11とともにコイル12の内側にあり、開口13Aを介して外部に露出している。このようにコネクター15もコイル12の内側に配設すると、高周波結合器11を搭載する基板15をコンパクトにすることができ、複合的な通信装置全体を小型化することができる。その反面、金属製の信号線ケーブル16がコイル12の上面を横切っていることから、非接触給電時にはこの信号線ケーブル16を磁束が通過し、渦電流により発熱するという問題がある。
【0072】
これに対し、図6Aには、複合通信装置の送受信部の他の構成例を上面から眺めた様子を示している。図6Bには、その断面構成を示している。送受信部が高周波結合器11と、非接触給電用(給電用又は受電用)のコイル12と、磁性シート13で構成される点、コイル12の中央付近で高周波結合器11が出現している点、並びに、高周波結合器11を搭載した基板14は磁性シート13で覆われている点は、図1A並びに図1Bに示した構成例と同様である。また、図示しないが、磁性シートの下方13には、機器内部の基板などの金属が存在する。但し、コネクター15が、コイル12の外側に配設されている点で、図1A並びに図1Bに示した構成例とは相違する。
【0073】
図6A並びに図6Bに示した構成例では、コネクター15に接続された信号線ケーブル16がコイル12の上面を横切ることなく、通信回路部(図示しない)に接続される。このような場合、非接触給電時に金属製の信号線ケーブル16を磁束が通過せず、渦電流により発熱するという問題はなくなる。その反面、図1A並びに図1Bに示した構成例と比べて、高周波結合器11を搭載する基板15のサイズが拡張し、複合的な通信装置全体としても大型化してしまう。
【0074】
図7Aには、複合通信装置の送受信部のさらに他の構成例を上面から眺めた様子を示している。図7Bには、その断面構成を示している。送受信部が高周波結合器11と、非接触給電用(給電用又は受電用)のコイル12と、磁性シート13で構成される点、コイル12の中央付近に高周波結合器11が出現している点、並びに、高周波結合器11を搭載した基板14は磁性シート13で覆われている点は、図1A並びに図1Bに示した構成例と同様である。また、図示しないが、磁性シートの下方13には、機器内部の基板などの金属が存在する。高周波結合器11に信号線ケーブル16を取り付けるためのコネクター15は、スルーホール(図示しない)を介して基板14の裏面側に配設されている。
【0075】
図7A並びに図7Bに示した構成例では、コネクター15に取り付けられた信号線ケーブル16は、コイル12の上面を横切ることなく、通信回路部(図示しない)に接続される。すなわち、コネクター15に接続された信号線ケーブル16は磁性シート13の下方に隠蔽された状態にあるので、非接触給電時にコイル12から発生する磁束は信号線ケーブル16に到達することなく、渦電流により発熱することもない。
【0076】
図8Aには、複合通信装置の送受信部のさらに他の構成例を上面から眺めた様子を示している。図8Bには、その断面構成を示している。送受信部が高周波結合器11と、非接触給電用(給電用又は受電用)のコイル12と、磁性シート13で構成される点、コイル12の中央付近に高周波結合器11が出現している点、並びに、高周波結合器11を搭載した基板14は磁性シート13で覆われている点は、図1A並びに図1Bに示した構成例と同様である。また、図示しないが、磁性シートの下方13には、機器内部の基板などの金属が存在する。
【0077】
図8A並びに図8Bに示す構成例では、通信回路部17は、高周波結合器11とともに基板14上に実装されている。但し、高周波結合器11がコイル12の中央付近に配設されるが、通信回路部17はコイル12の外側に配設される。そして、高周波結合器11と通信回路部17は、基板14の内層に形成されたストリップラインからなる高周波信号伝送路を介して接続されている。
【0078】
したがって、ストリップラインからなる高周波信号伝送路は、磁性シート13の下方に隠蔽された状態にあるので、非接触給電時にコイル12から発生する磁束は信号線ケーブル16に到達することなく、渦電流により発熱することもない。また、ストリップラインからなる高周波信号伝送路18で高周波結合器11と通信回路部17を接続する構成によれば、図6や図7に示した例のようにコネクター15が不要になる。すなわち、ストリップラインからなる高周波信号伝送路18コネクター15及び信号線ケーブル16の代わりとなり、省スペース化を実現することができる。
【0079】
なお、高周波結合器11と通信回路部17を接続する高周波信号伝送路18として、図8A及び図8Bに示したような、基板14の内層に形成されたストリップラインの代わりに、基板14の表層に形成されたマイクロストリップライン(図示しない)を使用することもできる。
【0080】
なお、本明細書の開示の技術は、以下のような構成をとることも可能である。
(1)開口部を有する磁性シートと、前記磁性シート上に配設された非接触給電用コイルと、結合用電極と、グランドと、前記結合用電極に流れ込む電流量を増大するための共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、前記結合用電極で送受信する高周波信号を処理する通信回路部と、を具備する通信装置。
(2)前記結合用電極に蓄えられた電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手に向けて前記高周波信号を伝送する、上記(1)に記載の通信装置。
(3)前記磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、前記結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、前記グランド及び前記共振部は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている、上記(1)又は(2)のいずれかに記載の通信装置。
(4)前記高周波結合器は、基板と、前記基板上に導体パターンとして形成された前記グランドと、前記基板上に前記グランドから所定の高さで支持された前記結合用電極と、前記基板上に配設された前記共振部を有し、前記磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、前記結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、前記グランド及び前記共振部を含む前記基板は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている、上記(1)又は(2)のいずれかに記載の通信装置。
(5)前記結合用電極は、帯状にして体積を縮小した導体で構成される、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の通信装置。
(6)前記結合用電極を前記通信回路部に接続する信号線ケーブルを取り付けるためのコネクターをさらに備える、上記(3)又は(4)のいずれかに記載の通信装置。
(7)前記コネクターは、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記結合用電極とともに前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切って前記通信回路部に接続される、上記(6)に記載の通信装置。
(8)前記コネクターは、前記非接触給電用コイルの外側に配設され、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される、上記(6)に記載の通信装置。
(9)前記コネクターは、前記磁性シートの下方に配設され、前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される、上記(6)に記載の通信装置。
(10)前記通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板内層に形成されたストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続される、上記(4)に記載の通信装置。
(11)前記通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板表層に形成されたマイクロストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続される、上記(4)に記載の通信装置。
(12)非接触給電用コイルと、前記非接触給電用コイルの下方に配設され且つ前記非接触給電用コイルの中央付近の部位に開口部を有する磁性シートと、結合用電極とグランドと共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、をそれぞれ備えた複数の通信装置からなる通信システム。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本明細書で開示する技術について詳細に説明してきた。しかしながら、本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0082】
本技術に係る複合的な通信装置は、携帯端末用のクレードルや、非接触無線転送機能を搭載したパーソナル・コンピューターなど、さまざまな情報機器に適用することができる。
【0083】
要するに、例示という形態で本技術を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本技術の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0084】
11…高周波結合器、11A…スペーサー
12…コイル
13…磁性シート、13A…開口
14…基板
15…コネクター
16…信号線ケーブル
17…通信回路部
18…高周波信号伝送路(ストリップライン)
120…高周波結合器
121…結合用電極
122…直列インダクター
123…並列インダクター
124…グランド
125…高周波信号伝送路
126…通信回路部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する磁性シートと、
前記磁性シート上に配設された非接触給電用コイルと、
結合用電極と、グランドと、前記結合用電極に流れ込む電流量を増大するための共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、
前記結合用電極で送受信する高周波信号を処理する通信回路部と、
を具備する通信装置。
【請求項2】
前記結合用電極に蓄えられた電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手に向けて前記高周波信号を伝送する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、
前記結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、
前記グランド及び前記共振部は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記高周波結合器は、基板と、前記基板上に導体パターンとして形成された前記グランドと、前記基板上に前記グランドから所定の高さで支持された前記結合用電極と、前記基板上に配設された前記共振部を有し、
前記磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、
前記結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、
前記グランド及び前記共振部を含む前記基板は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記結合用電極は、帯状にして体積を縮小した導体で構成される、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記結合用電極を前記通信回路部に接続する信号線ケーブルを取り付けるためのコネクターをさらに備える、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項7】
前記コネクターは、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記結合用電極とともに前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、
前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切って前記通信回路部に接続される、
請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記コネクターは、前記非接触給電用コイルの外側に配設され、
前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される、
請求項6に記載の通信装置。
【請求項9】
前記コネクターは、前記磁性シートの下方に配設され、
前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される、
請求項6に記載の通信装置。
【請求項10】
前記通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板内層に形成されたストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続される、
請求項4に記載の通信装置。
【請求項11】
前記通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板表層に形成されたマイクロストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続される、
請求項4に記載の通信装置。
【請求項12】
非接触給電用コイルと、
前記非接触給電用コイルの下方に配設され且つ前記非接触給電用コイルの中央付近の部位に開口部を有する磁性シートと、
結合用電極とグランドと共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、
をそれぞれ備えた複数の通信装置からなる通信システム。
【請求項1】
開口部を有する磁性シートと、
前記磁性シート上に配設された非接触給電用コイルと、
結合用電極と、グランドと、前記結合用電極に流れ込む電流量を増大するための共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、
前記結合用電極で送受信する高周波信号を処理する通信回路部と、
を具備する通信装置。
【請求項2】
前記結合用電極に蓄えられた電荷の中心と前記グランドに蓄えられた鏡像電荷の中心を結ぶ線分からなる微小ダイポールを形成し、前記微小ダイポールの方向となす角θがほぼ0度となるように対向して配置された通信相手に向けて前記高周波信号を伝送する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、
前記結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、
前記グランド及び前記共振部は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
前記高周波結合器は、基板と、前記基板上に導体パターンとして形成された前記グランドと、前記基板上に前記グランドから所定の高さで支持された前記結合用電極と、前記基板上に配設された前記共振部を有し、
前記磁性シートは、前記非接触給電用コイルの中央付近に前記開口部を有し、
前記結合用電極は、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、
前記グランド及び前記共振部を含む前記基板は、前記磁性シートの下方に隠蔽されている、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
前記結合用電極は、帯状にして体積を縮小した導体で構成される、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記結合用電極を前記通信回路部に接続する信号線ケーブルを取り付けるためのコネクターをさらに備える、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項7】
前記コネクターは、前記非接触給電用コイルの内側に配設され、前記結合用電極とともに前記開口部を介して前記磁性シート上に出現し、
前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切って前記通信回路部に接続される、
請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記コネクターは、前記非接触給電用コイルの外側に配設され、
前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される、
請求項6に記載の通信装置。
【請求項9】
前記コネクターは、前記磁性シートの下方に配設され、
前記コネクターに取り付けられた前記信号線ケーブルは、前記非接触給電用コイルの上面を横切ることなく前記通信回路部に接続される、
請求項6に記載の通信装置。
【請求項10】
前記通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板内層に形成されたストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続される、
請求項4に記載の通信装置。
【請求項11】
前記通信回路部は、前記基板上に実装され、前記基板表層に形成されたマイクロストリップラインからなる信号伝送路を介して前記結合用電極に接続される、
請求項4に記載の通信装置。
【請求項12】
非接触給電用コイルと、
前記非接触給電用コイルの下方に配設され且つ前記非接触給電用コイルの中央付近の部位に開口部を有する磁性シートと、
結合用電極とグランドと共振部を有し、前記結合用電極が前記開口部を介して前記磁性シート上に出現する高周波結合器と、
をそれぞれ備えた複数の通信装置からなる通信システム。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−9235(P2013−9235A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141584(P2011−141584)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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