説明

通信装置

【課題】電波受発信機の周波数を2以上の種別に複雑に替え、機密の高度化を図るための通信装置を得る。
【解決手段】2以上の種別の送信周波数に送信データを分配して保存する信号分配統合調整器1と、設定された送信周波数毎に送信データを分配して送信する電波受発信機1と、送信周波数毎に送信されてくる送信データを受信する電波受発信機2と、受信された送信周波数毎の送信データを統合して、分配前の元の送信データに復元する信号分配統合調整器2と、信号分配統合調整器1に対して、信号分配統合調整器2、電波受発信機2、および、電波受発信機1を介して、送信周波数の切替指令を送信する計算機又は制御装置2とを備えている。計算機又は制御装置2からの切替指令に基づいて、信号分配統合調整器1および2は、それぞれ、電波受発信機1および2の送信周波数の切り替えの設定変更を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は通信装置に関し、特に、無線によりデータの送受信を行うための通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
企業内、病院内などにおいて、最近は、情報伝達手段にLANシステムが多用されている。従来のLANシステムでは、構内LAN(ハードウエアLAN)上に設置されたルータ毎に第一バンド(例えば5.2GHz無線LAN)と第二バンド(例えば2.4GHz無線LAN)の受発信を可能とし、それに接続されている端末(パソコン、カメラ等々)も同様に第一バンドと第二バンドを有する受発信装置を装備したシステムを構築している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載されている、このシステムの運用は機密情報を取り扱う端末グループと公開情報を取り扱う端末グループに分類し、各グループに異なるバンドを与えている。構内LANではこの第一バンドと第二バンドの入れ替え、選択などを管理し、セキュリティのレベルを向上させている。端末からの通信はIPアドレスにバンド情報を入れ同一バンド内では自由に通信することができる。緊急対応(第一バンド故障など)ではグループ間の転送を認可するバント間通信許可フラグによりグループ間通信を可能とすることもできるようにしている。このようにして、夫々のデータ情報を夫々のバンド(公開情報バンド及び機密情報バンド)に分類し転送することによりセキュリティ向上を図ったものである。
【0004】
また、従来の航空機の電子無線システム用送受信機においては、サイズ、重量、コストの低減を目的とし、必要機能の分析を行い、ハードウエア構成を再構築すると共に最適ビルデングブロック化を図ったものである。ビルデングブロックには複数の多機能送受信機とプロセッサが装着されている。また、既存の暗号化法であるKGV−8、KGV−10、KGV−11、KGV−23、KG−84A、KGR−96、KG−125及びKY−58を適用することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、一般的な従来装置においては、複数バンドを使用することなく機密情報のセキュリティを確保する方法として、該当機器のみ電波の受け渡しをできるようにするパスワード法、乱数表などを使用し、真の信号と無意味な信号を混色させる又は真の信号を加工して暗号化し、漏洩を防止する方法が各種検討され実用化されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−328559号公報
【特許文献2】特開2002−152847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、無線通信の電波は誰でも受信できるため、上記特許文献1に記載の通信方法においては、機密情報を取り扱う機密情報バンドの周波数が第三者に知られてしまうと、簡単に傍受されてしまうという問題点があった。
【0008】
さらに、受信機、発信機及び電波は規格化され、各社の製品は互換性を有しているため、使用者に多くの選択種が付与され、かつ、製品供給の安定化が図られ、安心が与えられているが、その反面で、盗聴等が容易となり、データ及び情報の機密を保つことは難しい。従って、各社においては規格内でパスワードの導入等により最低の機密保持を確保している。更に、十分でない場合は、文字、情報に対して暗号化を行い盗聴を防止する方法が多く用いられている。しかし、これらのパスワード及び暗号化では十分安心できるものでないという問題点があった。
【0009】
また、上記の特許文献2に記載の通信方法においては、既存の暗号化方法を用いているため、万一、第三者に傍受されると、情報が解読されてしまう可能性が高いという問題点があった。
【0010】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、電波受発信機の周波数を2以上の種別に複雑に替え、機密の高度化を図るための通信装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、送信データが入力される送信データ入力手段と、2以上の種別の送信周波数に切り替えて送信するために前記送信データを分配して保存する第1の信号分配統合調整手段と、前記第1の信号分配統合調整手段に保存されている前記送信データを、設定された送信周波数毎に分配して送信する第1の電波受発信手段と、前記第1の電波受発信手段から前記送信周波数毎に送信されてくる前記送信データを受信する第2の電波受発信手段と、前記第2の電波受発信手段によって受信された前記送信周波数毎の前記送信データを統合して、分配前の元の送信データに復元する第2の信号分配統合調整手段と、前記第1の信号分配統合調整手段に対して、前記第2の信号分配統合調整手段、前記第2の電波受発信手段、および、前記第1の電波受発信手段を介して、前記送信周波数の切替指令を送信する制御手段とを備え、前記制御手段からの前記切替指令に基づいて、前記第1および第2の信号分配統合調整手段は、それぞれ、前記第1および第2の電波受発信手段の送信周波数の切り替えの設定変更を行うことを特徴とする通信装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、送信データが入力される送信データ入力手段と、2以上の種別の送信周波数に切り替えて送信するために前記送信データを分配して保存する第1の信号分配統合調整手段と、前記第1の信号分配統合調整手段に保存されている前記送信データを、設定された送信周波数毎に分配して送信する第1の電波受発信手段と、前記第1の電波受発信手段から前記送信周波数毎に送信されてくる前記送信データを受信する第2の電波受発信手段と、前記第2の電波受発信手段によって受信された前記送信周波数毎の前記送信データを統合して、分配前の元の送信データに復元する第2の信号分配統合調整手段と、前記第1の信号分配統合調整手段に対して、前記第2の信号分配統合調整手段、前記第2の電波受発信手段、および、前記第1の電波受発信手段を介して、前記送信周波数の切替指令を送信する制御手段とを備え、前記制御手段からの前記切替指令に基づいて、前記第1および第2の信号分配統合調整手段は、それぞれ、前記第1および第2の電波受発信手段の送信周波数の切り替えの設定変更を行うことを特徴とする通信装置であるので、電波受発信機の周波数を2以上の種別に複雑に替え、機密の高度化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
この発明は、複数の周波数に切替えることが可能な電波発信機及び電波受信機を備えて、送信データを夫々の電波受信機へ複雑に分配し送信するとともに、電波受信機で受信した分配データを統合して、元の送信データに再現することにより、電波で伝送するデータのセキュリティを高度化するものである。図1は、この発明の実施の形態1に係る通信装置の概略構成を示した図である。図2は、この発明の実施の形態1に係る通信装置における各構成要素(符号11〜14,21〜24)の入出力信号を示した図である。図1に示すように、この発明に係る通信装置は、グループ1(符号10)とグループ2(符号20)とから構成されている。グループ10は、図1および図2に示す、電波受発信機1(符号11)と、信号分配統合調整器1(符号12)と、コード変換器1(符号13)と、計測器又は制御装置1(符号14)とから構成されている。グループ20は、電波受発信機2(符号21)と、信号分配統合調整器2(符号22)と、コード変換器2(符号23)と、計算機又は制御装置2(符号24)とから構成されている。
【0014】
グループ1(符号10)の動作について説明する。送信データ入力手段である計測器又は制御装置1(符号14)は、各種物理量を計測する計測器、機器、装置又はプラントの運転制御を行う制御装置で構成されている。計測器又は制御装置1(符号14)から出力されるデータは、この発明における送信すべき送信データ信号であり、0〜10V、4〜20mA、又は、メーカ毎に独自に規格化(RS−232C、GP−IB等)がなされた信号のいずれかである。そのため、コード変換器1(符号13)は、計測器又は制御装置1(符号14)から出力されるデータを統一規格化するためのコード変換を行う。第1の信号分配統合調整手段である信号分配統合調整器1(符号12)は、コード変換された出力のうちの送信データ信号を、予め設定された所定の規則に従って、異なる送信周波数に分配した後に一旦保存し、当該送信データの分配情報及び識別情報を生成して送信データに付加する。さらに、信号分配統合調整器1(符号12)は、電波受発信機1(符号11)の送信周波数の切替制御も行う。ここで、分配情報とは、送信データがどの規則に基づいて分配されたかを示す情報であり、識別情報とは、送信データを識別(認証)するための固有情報である。第1の電波受発信手段である電波受発信機1(符号11)は、信号分配統合調整器1(符号12)から出力される信号に、電波で転送するためのプロトコルを注入し、周波数の異なる電波に変換して送信する。このように、送信データは所定の規則に従って分配され、分配された一部分が送信周波数F1で送信され、他の部分が送信周波数F2で送信される(F1≠F2)。尚、分配は、2つの送信周波数に限らず、3つ以上の周波数に分配するようにしてもよい。
【0015】
次に、グループ2(符号20)の動作について説明する。第2の電波受発信手段である電波受発信機2(符号21)は、電波受発信機1(符号11)からの周波数の異なる夫々の送信データを受信することができる。また、第2の信号分配統合調整手段である信号分配統合調整器2(符号22)は、受信された複数の周波数に分配された信号を分配情報または識別情報を基に統合して、分配前の元の送信データ信号に復元する。また、コード変換器2(符号23)は、復元されたその信号のコードを、制御手段である計算機又は制御装置2(符号24)のコードに合わせて変換する。また、計算機又は制御装置2(符号24)は、送信データを周波数の異なる送信周波数に分配して送信するための制御、分配方法を変更するための制御、および、各電波受発信機の周波数切替制御の切替指令を発信し、コード変換器2(符号23)、信号分配統合調整器2(符号22)、電波受発信機2(符号21)、電波受発信機1(符号11)を経由して、信号分配統合調整器1(符号12)へ当該指令を転送する機能を備えている。信号分配統合調整器1および2(符号12,22)は、計算機又は制御装置2(符号24)からの切替指令に基づいて、それぞれ、電波受発信機1および2(符号11,21)の送信周波数の切り替えの設定変更を行う。
【0016】
以下の説明においては、電波受発信機1および2(符号11,21)が2種類の周波数に切り替えられる構成である場合を例に挙げて説明するが、その場合に限らず、2種類以上の周波数への切替が可能な構成として、送信データの分配を複雑化し、更に、セキュリティを高度化した構成としてもよい。
【0017】
なお、グループ1および2(符号10,20)は、いずれも情報の送信および受信の両方が可能な構成であるが、本実施の形態においては、説明の簡略化のために、グループ1が送信側、グループ2が受信側の場合を例に挙げて説明することとする。
【0018】
計算機又は制御装置2(符号24)から送信周波数を切り替える指令を、コード変換器2(符号23)を経由して、信号分配統合調整器2(符号22)へ転送、次に同指令を、電波受発信機2(符号21)へ送信して公共電波(PHS通信など)にて伝送するためのプロトコル情報を合成(付加)し、電波として発信する。電波受発信機1(符号11)はこの電波を受信し、信号分配統合調整器1(符号12)へ転送する。信号分配統合調整器1(符号12)は、転送されてきた当該指令に基づいて、電波受発信機1(符号11)の周波数切り替えの設定変更を行い、送信周波数を変更する。信号分配統合調整器2(符号22)は、当該指令を伝送後、電波受発信機2(符号21)の周波数を切替える設定を行う。また、信号分配統合調整器1(符号12)が、送信周波数切り替え情報を送信データに合成して、電波受発信機1(符号11)、電波受発信機2(符号21)、信号分配統合調整器2(符号22)へ転送し、電波受発信機2(符号21)の送信周波数を切替える設定も可能である。信号分配統合調整器1(符号12)は、切り替え後の送信周波数で所定のテスト信号を送信させるための指令を、電波受発信機1(符号11)へ発信する(テスト信号送信指令手段)。電波受発信機1(符号11)は、電波受発信機2(符号21)、信号分配統合調整器2(符号22)およびコード変換器2(符号23)を経由して、計算機又は制御装置2(符号24)へテスト信号を転送する。計算機又は制御装置2(符号24)は、テスト信号が正常に受信されたか否かの確認を行い、異常が無い場合、コード変換器2(符号23)、信号分配統合調整器2(符号22)、電波受発信機2(符号21)および電波受発信機1(符号11)を経由して、信号分配統合調整器1(符号12)へ当該テスト信号の正常な受信を示す確認信号を送信し(確認信号受信手段)、以降切り替え後の送信周波数で送信データの送信を行う(送信データ送信指令手段)。電波の周波数は通常2種類とするが、それ以上の種類の周波数の切替えも可能な構成としてもよい。
【0019】
また、計測器又は制御装置1(符号14)の送信データは、計算機又は制御装置2(符号24)からのビット単位の周波数の分配区分に係る指令又は信号分配統合調整器1の各ビット対応のスイッチ群で設定された周波数の分配区分に係る設定に基づき、信号分配統合調整器1(符号12)にて1文字(通常8ビット)を構成する各ビット毎又は任意のビット毎に(すなわち、1または複数のビット毎に)、周波数の異なる電波に分配する。分配された送信データは、上記の各ビット毎及び任意のビット毎に、周波数の分配区別を予め行って保存され、分配区分されたデータを計算機又は制御装置2(符号24)の周波数切替指令に従って、周波数の区分毎に時系列にて順次データを送信し、信号分配統合調整器2(符号22)にて、これらのデータを統合して元のデータヘ復元する。更に統合を確実に行うため、信号分配統合調整器1(符号12)は1文字をビット分配して送信する際、分配情報および識別情報を1文字毎に合成(付加)し、信号分配統合調整器2(符号22)にて分配情報および識別情報を読み出し、それを基にして元のデータヘ復元する。あるいは、計測器又は制御装置1(符号14)の送信データを計算機又は制御装置2(符号24)の指令に基づき、信号分配統合調整器1(符号12)にて複数の文字単位に分配して周波数の異なる電波でデータ送信を行うようにしてもよい。この場合には、複数の文字毎に予め送信周波数区分を行い保存する。計算機又は制御装置2(符号24)は周波数を切替える指令を、コード変換器2(符号23)、信号分配統合調整器2(符号22)、電波受発信機2(符号21)、電波受発信機1(符号11)を経由して、信号分配統合調整器1(符号12)へ転送する。信号分配統合調整器1(符号12)は、その指令に合わせて、電波受発信機1(符号11)を経由して、周波数区分毎に時系列に順次送信する。電波受発信機2(符号21)は、この信号を受信して、信号分配統合調整器2(符号22)へ転送する。信号分配統合調整器2(符号22)は、これらの受信データを統合して、元のデータヘ復元する。統合を確実に行うため、信号分配統合調整器1(符号12)は、複数の文字を分配して送信する場合において、分配情報および識別情報を伝送単位の複数文字毎に合成(付加)し、電波受発信機1(符号11)へ転送し、電波受発信機2(符号21)を経由して信号分配統合調整器2(符号22)に転送する。信号分配統合調整器2(符号22)にて、分配情報および識別情報を読み出し、それを基にして元のデータヘ復元する。
【0020】
電波受発信機1(符号11)と電波受発信機2(符号21)の電波の発信周波数は比較的接近したものでも送信データの機密性は十分確保できるが、この発明においては、この電波の発信周波数を大きく替える(例えばテレメータ800MHzとPHSデータ通信1.7GHzなど)ことにより最短で送信できる発信周波数が選定することもできる。即ち、データの交信時間は電波の周波数が高いほど通信の情報密度を上げることができ交信時間は短くなる。また、発信機と受信機の間に障害物が多い場合、電波の周波数が低い方が、より電波の屈折率が高くなり、S/N比(信号/雑音)を高くでき、再送信機会を少なくでき交信時間の短縮が図れる。即ち、データの転送量は場所により適切な電波の周波数を選ぶことにより最適なデータ転送を選択できる。本実施の形態では、計算機又は制御装置2(符号24)からテスト信号の発信指令をコード変換器2(符号23)を経由して、信号分配統合調整器2(符号22)から電波受発信機2(符号21)、電波受発信機1(符号11)を経由して信号分配統合調整器1(符号12)へ転送する。信号分配統合調整器1(符号12)はこの指令に基づきテスト信号を夫々異なる周波数で発信するよう指令する。次に、テスト信号は電波受発信機1(符号11)、電波受発信機2(符号21)を経由して転送され、計算機又は制御装置2(符号24)でテスト信号が早く到達した周波数を確認し、伝送時間の短い周波数を検知して(伝送時間検知手段)、伝送時間の結果を確認し、伝送時間の極端に長い又は伝送が困難と推定された方の周波数を使用しないように、計算機又は制御装置2(符号24)から、コード変換器2(符号23)、信号分配統合調整器2(符号22)、電波受発信機2(符号21)、電波受発信機1(符号11)を経由して、信号分配統合調整器1(符号12)に信号分配設定の変更を行うための指令を送信する(最適送信周波数切替指令手段)。これにより、信号分配統合調整器1(符号12)は、当該指令に基づいて、伝送時間の短い周波数で信号の送信を行うように信号分配設定の変更を行う。特に、周波数の切り替えが3種類以上可能な場合には、伝送時間の長いまたは伝送が困難と推定された周波数のみを使用しないようにすれば、セキュリティを確保した上で、信号の伝送を短時間で行うことができ、有効である。
【0021】
この発明は送信データの高度な機密性を確保するために、1文字(通常8ビット)を構成するビット毎に送信時の周波数を送信周波数F1及び送信周波数F2に複雑に分解する。例えば、1ビットおきに送信周波数F1と送信周波数F2に分配すると有効ビットと無効ビットが交互に配置される。この分配された情報を送信周波数F1で送信し、盗聴受信された場合、各文字は、文字でないもの又は他の文字に化けることから、全く役に立たないものとなる。更に、この送信周波数F1は文字情報のうち半分(通常1文字8ビット構成のうち4ビットしかない)が欠けていることから、幾ら高級な方法をもってしても元の送信データに復元することは非常に困難であり、不可能である。更に、乱数表に従い、1文字の構成ビットについて、偶数のビットを送信周波数F1に、奇数のビットを送信周波数F2にするなど分配方法を刻々変化させれば、更に高度となり解読は絶対困難なものとなる。なお、分配を簡単化するために一文字の8ビットに対応した分配スイッチを設け、各ビット対応のスイッチ毎に「ON」が送信周波数F1、「OFF」が送信周波数F2と言うような画一的な分配もできる。次に、1文字を構成するビット毎の分配から文字ごとの分配も可能である。但し、文字の場合は文脈に基づけば解読が可能になるなど機密性としては十分でないことから数字のみ送信周波数F1及びF2へ分配することが望ましい。更に、一旦文字を数字化して送信周波数F1及びF2に分配するようにしてもよい。次に、分配した情報を統合し、元の文字に復元するには分配情報を、信号分配統合調整器1(符号12)の記憶器に予めプログラムしておき、送信周波数F1及びF2の送信データに合成(付加)して転送し、信号分配統合調整器2(符号22)にて、この分配情報を元に送信周波数F1及びF2の送信データを統合して、元の送信データに復元するようにすればよい。さらに、計算機又は制御装置2(符号24)から分配情報を信号分配統合調整器1(符号12)及び信号分配統合調整器2(符号22)へ暗号化して転送し、送信データの分配及び統合による復元を行うようにしてもよい。
【0022】
雑音、妨害電波などによる通信障害は、電波の周波数が大きく異なる場合は、一方の系統のみに生じることが多い。一方、通信には各種プロトコルが組み込まれ通信に障害が生じ一定時間内に情報が転送されない場合は再転送を行う機能が注入されている。この場合、周波数の異なる一方の系統に雑音、妨害電波等により頻繁に通信障害が生じた場合は、その系統のみ通信時間が著しく増加する。このような環境の場合は通信時間の短い電波の周波数を使用して通信を行うことが有効である。当該機能は、信号分配統合調整器1(符号12)へ計算機又は制御装置2(符号24)から予め設定されたテスト信号を発信するよう指令を転送して、信号分配統合調整器1(符号12)からテスト信号発信指令を電波受発信機1(符号11)に転送し、電波受発信機2(符号21)を経由して信号分配統合調整器2(符号22)、コード変換器2(符号23)、計算機又は制御装置2(符号24)で、テスト信号の転送遅れを確認し、転送が著しく遅い系統があれば、異常系統として情報転送系統から切り離す指令を発信する。切り離し指令は、正常系統のみに信号を配分することで実現できる。
【0023】
通常送信データは1時間に1回程度の送信となることから、送信データは先ず異なる周波数毎に設定された分配則に従い、ビット単位又は文字単位に分配され、識別情報を付加され信号分配統合調整器1(符号12)の記憶器に、一旦保存され、計算機又は制御装置2(符号24)から周波数選定及び送信指令が発信されると、コード変換器2(符号23)、信号分配統合調整器2(符号22)、電波受発信機2(符号21)、電波受発信機1(符号11)を経由して、信号分配統合調整器1(符号12)へ転送、信号分配統合調整器1(符号12)は、電波受発信機1(符号11)の送信周波数の設定を行う。信号分配統合調整器2(符号22)は電波受発信機2(符号21)の受信周波数を設定する。次に信号分配統合調整器1(符号12)はテスト信号の発信を電波受発信機1(符号11)に指令し、テスト信号は電波受発信機2(符号21)で受信し、信号分配統合調整器2(符号22)経由で、計算機又は制御装置2(符号24)にてテスト信号が予め決められた通りであるか確認し、決められた通りであれば、信号分配統合調整器2(符号22)から電波受発信機2(符号21)、電波受発信機1(符号11)を経由して、信号分配統合調整器1(符号12)へ決められた通りの設定を示す信号を転送し、送信データの転送準備は完了する。次に、信号分配統合調整器1(符号12)にビット単位又は文字単位毎に記憶器に保存されている夫々の周波数毎の送信データ信号を時系列に、順次、電波受発信機1(符号11)および電波受発信機2(符号21)を経由して、信号分配統合調整器2(符号22)へ転送する。転送された送信データは、分配情報を元に時系列に統合又は識別情報を元にして統合し、元の送信データヘ復元する。
【0024】
信号分配統合調整器1(符号12)は1文字を構成するビット(通常8ビット)をビット分配スイッチ若しくはビット分配記憶器の設定に対応して分配し、分配結果を別途記憶器で保存する。保存したビット情報は、計算機又は制御装置2(符号24)からコード変換器2(符号23)、信号分配統合調整器2(符号22)、電波受発信機2(符号21)、電波受発信機1(符号11)、信号分配統合調整器1(符号12)へ転送された周波数切り替え情報をもとにして、電波受発信機1(符号11)に対して周波数の異なる電波で時系列に順次送信するよう制御する。なお、ビット分配記憶器へは計算機又は制御装置2(符号24)から分配指令を、コード変換器2(符号23)、信号分配統合調整器2(符号22)、電波受発信機2(符号21)、電波受発信機1(符号11)を経由して、信号分配統合調整器1(符号12)へ転送される。一方、複数の文字毎に分配する制御は、計算機又は制御装置2(符号24)から信号分配統合調整器1(符号12)の記憶器に分配情報を転送し、その指令に基づき分配し、分配結果を別途記憶器で保存して、前記同様に、電波受発信機1(符号11)を制御して、異なる周波数に分配して転送する。分配して転送されたデータの統合、即ち、元のデータヘの復元は、信号分配統合調整器1(符号12)と信号分配統合調整器2(符号22)に付加した情報を基に復元する。なお、ビット分配スイッチで分配を設定されたものは頻繁に設定変更することは困難なため解読されてしまう恐れが高くなる。従って、計算機又は制御装置(符号24)から設定情報を頻繁に伝送データ毎、伝送データ群毎及び時間毎などにより、伝送データの周波数分配を複雑に変化させ重要機密の保持を有効なものとしている。データの統合に対して高い信頼性を確保するには、分配、識別情報をデータ転送の単位毎に信号分配統合調整器1(符号12)で合成(付加)し、信号分配統合調整器2(符号22)でデータ毎に付加された分配、識別情報を読み出し、それを基に元の伝送データに復元することも可能である。
【0025】
2系統の無線電波受発信機の内、雑音環境などにより一方の系統のデータ送信に時間がかかる場合がある。そのため定期的に、計算機又は制御装置2(符号24)からコード変換器2(符号23)、信号分配統合調整器2(符号22)、電波受発信機2(符号21)、電波受発信機1(符号11)を経由して、信号分配統合調整器1(符号12)へ予め決められたテスト信号を送信周波数F1で発信するように指令し、テスト信号を、電波受発信機1(符号11)、電波受発信機2(符号21)、信号分配統合調整器2(符号22)、コード変換器2(符号23)を経由して、計算機又は制御装置2(符号24)へ転送する。続いて、予め決められたテスト信号を送信周波数F2で同様の経路で、計算機又は制御装置2(符号24)へ転送し、両者の転送時間を比較して、大きな遅れのでる周波数を検知し、その結果を元に、計算機又は制御装置(符号24)は、コード変換器2(符号23)、信号分配統合調整器2(符号22)、電波受発信機2(符号21)及び電波受発信機1(符号11)を経由して、信号分配統合調整器1(符号12)へ転送する。送信が困難に近い又は遅れが著しい周波数が確認された場合、データ送信の重要性、即応性の要求されるデータの場合、送信時間の短い周波数側ヘデータを全て配分して送信する設定を行う。
【0026】
図3は本発明の送信データの一文字のタィムチャート例と同分配事例を示すもので一文字24ビット構成の一事例(IPアドレス等は省略)で、表の上段はビット1〜24の区分を示す。二段目は送信元データのビット配列を示す。三段目は送信周波数F1のビット配列を示す。最下段は送信周波数F2のビット配列を示す。各ビットの内、1ビットはストップビット、2ビットはパリティビットを示す。現在では、特に、パリティビットを使わない場合が多いことから、ここでは偶数又は奇数のパリティビットの設定は行わず、無効ビットとしている。送信元データは、計測器又は制御装置1(符号14)から発信された情報で分配処理を行っていないことを示す7ビット目を「0」としている。16ビットから23ビットは、文字データビットで、文字又は数字が設定されている。この例では、「11001010」となっている。最後に24ビット目は次のデータのはじめを示す[スタートビット]として「0」が設定されている。送信周波数F1とF2の事例では、3ビットから7ビットは、文字ビットの分配情報1で、「00001」に設定している。これは、図4(a)のように、文字データビット16〜23ビットを4つおきに、送信周波数F1とF2に分配することを意味している。あるいは、図4(c)の補足説明2に示すように、文字データビット16〜23ビットを1つおきに、送信周波数F1とF2に分配することを意味するようにしてもよい。なお、文字データビット16〜23ビット中の記号「X」は、0または1の任意の値を乱数表等により(例えば、偶数なら0、奇数なら1として)引用して埋めている。また、ビット8〜9は識別情報1で、ビット10〜15は識別情報2で構成されており、1文字情報毎に固有の付番を行い、1文字の送信を時系列以外に無差別に抜き出して送信、受信する場合に送信周波数F1とF2の1文字データを時系列に並び替え、送信元データヘ統合するための識別情報となる。この識別情報1と識別情報2の事例では送信周波数F1及びF2ともに異なる値であるが、すなわち、送信周波数F1は、識別情報1が「00」で、識別情報2が「111000」となっており、送信周波数F2は、識別情報1が「01」で、識別情報2が「110111」となっているが、夫々の識別情報1と識別情報2を加算したら同一番号となる。即ち、同一データであると識別でき、送信周波数F1及びF2の文字データビットの統合を行い、元の送信データに復元することができる。具体的には、分配情報に従って、図4(a)の場合なら、16〜19ビットの4ビット分は送信周波数F1のデータを拾い、20〜23ビットの4ビット分は送信周波数F2のデータを拾って、それらを統合して、送信元データ「11001010」を得る。また、図4(c)の場合なら、1つおきに送信周波数F1とF2のデータを拾って、それらを統合して、送信元データ「11001010」を得る。
【0027】
図4はこの発明の「送信データ」の文字列(IPアドレス等は省略)のタイムチャートと同分配事例である。表の上段は複数文字の伝送単位であるパケットの構成例を示す。表中の上段は複数の文字1〜23(1パケット単位例)の事例を示している。二段目は「送信元データ」である。三段目は「送信周波数F1」の1パケット当たりの文字配列を示す。最下段は「送信周波数F2」のパケット当たりの文字配列を示す。表の横列は最初の1〜2文字は「分配情報1」を示し、この場合は数字のみ分配することを表している。送信周波数F1とF2の文字が異なる(すなわち、送信周波数F1は「DH」で、送信周波数F2は「DD」である。)が、複雑化させるため、このように異なる文字でも、予め、信号分配統合調整器1及び2(符号12,22)には同一指令と設定されており、「DH」,「DD」の意味は、数字のみ分配してアルファベットは分配しないという指令であると予め設定されている。即ち、分配情報が読み取られないよう複雑化している事例である。次に、文字3〜4は分配情報2とし、この場合は(すなわち、送信周波数F1が「H0」で、送信周波数F2が「D1」の場合は)、1つおきに分配することを示している。これも、送信周波数F1とF2では、その文字が異なっているが、これも前記同様に複雑化するための手段である。文字5〜7及び文字8はデータの識別情報で、この場合、夫々を加算することにより、送信周波数F1とF2の識別情報が同じであることを示している。即ち、統合すべき送信周波数F1とF2のデータであることが解読できる。文字9〜23は伝送文字列データを示す。伝送文字列データ中の記号「X」の部分は、0〜9までの任意の数字であり、乱数表から無作為に引用して埋めたものである。結果として、送信周波数F1とF2を統合すれば、送信元データの数字データが再現される。具体的には、アルファベットについては送信周波数F1およびF2で同じものを送信し、数字については、送信周波数F1とF2に1つおきに分配しているので、アルファベットについては送信周波数F1かF2のいずれかのデータを拾い、数字については送信周波数F1とF2のデータを1つおきに拾えば、送信元データ「ABCDEF012345TYZ」を得ることができる。
【0028】
以上のように、この発明の通信装置は、電波受発信機の周波数を切替え、かつ、夫々の切替周波数を大幅に変える及び少し変えるという方式の何れも可能としていること、更に送信データを夫々の電波受発信機へ分配することにより高級な暗号化ができ、無線交信においても第三者による解読が極端に難しくなり機密度の高いデータ伝送が実現できる。次に、決められたテスト信号を定期的に大幅に異なる周波数の電波で送信すると、雑音環境の影響を受け易い周波数のテスト信号は、再送信を繰り返し、伝送時間が遅延するので、この場合には、重要度の高いデータ及び即応性を要求される送信データに対して、伝送時間の短い周波数へ全送信データを分配して送信するようにしたので、信頼度の高い、高速通信が選択できる。
【0029】
従来の暗号化は機密情報(データ)自身を乱数表等により加工することにより容易に解読できないようにするもので、この発明では、機密情報に位置付けられたデータ情報をバンド間にビット毎に分散して送信して、受信側の統括するプロセッサーでデータ情報を統合することにより、送信元の機密情報データに復元するもので、たとえ第三者に傍受されても、解読が極めて困難であるため、高度なセキュリティレベルを確保できる画期的な方法である。なお、ハードウエアでは、受発信装置とプロセッサが2系統必要となることからシステムとしては割高になるものの極めて重要なデータ、機密性の高い情報の伝達には有効なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明に係る通信制御装置は、無線で送信した場合にたとえ傍受されても解読ができないような構成にしたので、通信全般に用いて有効であるが、特に、例えば、化学プラント、農業分野、気象観測、土木管理、原子力プラント、放射性同位元素の製造分野、放射線又は放射能を用いた医療、研究機関、核燃料の製造、再処理プラント、放射線利用工業分野、等の重要機密データの送受信を行う種々の技術分野の通信装置として用いるとさらに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の実施の形態1に係る通信装置の構成を示した概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る通信装置内を送信する各信号を示した説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る通信装置における送信データの一文字ビット配列例と同分配事例を示した説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る通信装置における送信データの文字列例と同分配事例図を示した説明図である。
【符号の説明】
【0032】
10 グループ1、11 電波受発信機1、12 信号分配統合調整器1、13 コード変換器1、14 計測器又は制御装置1、20 グループ2、21 電波受発信機2、22 信号分配統合調整器2、23 コード変換器2、24 計算機又は制御装置2。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信データが入力される送信データ入力手段と、
2以上の種別の送信周波数に切り替えて送信するために前記送信データを分配して保存する第1の信号分配統合調整手段と、
前記第1の信号分配統合調整手段に保存されている前記送信データを、設定された送信周波数毎に分配して送信する第1の電波受発信手段と、
前記第1の電波受発信手段から前記送信周波数毎に送信されてくる前記送信データを受信する第2の電波受発信手段と、
前記第2の電波受発信手段によって受信された前記送信周波数毎の前記送信データを統合して、分配前の元の送信データに復元する第2の信号分配統合調整手段と、
前記第1の信号分配統合調整手段に対して、前記第2の信号分配統合調整手段、前記第2の電波受発信手段、および、前記第1の電波受発信手段を介して、前記送信周波数の切替指令を送信する制御手段と
を備え、
前記制御手段からの前記切替指令に基づいて、前記第1および第2の信号分配統合調整手段は、それぞれ、前記第1および第2の電波受発信手段の送信周波数の切り替えの設定変更を行う
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第1の信号分配統合調整手段は、前記送信データを構成している各文字を1または複数のビット単位に分配することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1の信号分配統合調整手段は、
前記制御手段からの前記切替指令に基づく前記第1の電波受発信手段の送信周波数の切り替えの設定変更が行われたときに、所定のテスト信号を前記制御手段に対して送信させるための指令を前記第1の電波受発信手段に発信するテスト信号送信指令手段と、
前記第1の電波受発信手段が送信した前記テスト信号が正常に前記制御手段に送信された場合に、前記制御手段から返送される確認信号を受信する確認信号受信手段と、
前記制御手段からの確認信号の受信があったときに、前記第1の信号分配統合調整手段に保存されている前記送信データを前記送信周波数毎に分配して送信するように第1の電波受発信手段に指令を発信する送信データ送信指令手段と
を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記第1の電波受発信手段から送信される前記テスト信号の伝送時間を送信周波数毎に検知する伝送時間検知手段と、
前記伝送時間の検知結果に基づいて、伝送時間の短い送信周波数を用いて前記送信データを送信するように、前記第1および第2の信号分配統合調整手段に指令を発信する最適送信周波数切替指令手段と
を有していることを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記第1の信号分配統合調整手段は、分配された前記送信データに分配情報および識別情報を付加して送信し、
前記第2の信号分配統合調整手段は、前記分配情報および前記識別情報に基づいて、受信した前記送信データを統合して、分配前の元の送信データに復元する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−229571(P2006−229571A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40565(P2005−40565)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】