説明

通信装置

【課題】期間が管理されている会議等の遠隔コミュニケーションにおいて、終了時刻が近づいていることを参加者に適切に通知することを目的とする。
【解決手段】ネットワーク上に接続されたミキサ装置は、会議システムを構成する各端末装置から受取った音声データの音量レベルを調整する機能を有する。図6(B)に示す係数データにより音量レベルを調整するよう管理者により指定された場合、図6(A)に示す音量レベルの音声データを受取り、各時刻の音声データに係数データで指定された係数を乗ずることにより、図6(C)に示す音量レベルの音声データへ変換する。以上の処理により、会議終了の一定時間前になると、他の参加者の音声が次第に小さくなることで、各参加者は会議がまもなく終了するということを知ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会議等の多人数で通信網を介して行われる遠隔コミュニケーションを支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに離れた場所にいる複数の者が、通信回線に接続された音響機器を用いて音声による遠隔会議を行うことを可能とする技術がある。その技術においては、異なる場所に配置された音響機器の各々により集音された話者の音声信号が中央装置に送信され、中央装置にてミキシングされた後、各音響機器に送信される。そのような技術を開示した文献として、例えば特許文献1がある。
【特許文献1】特開2005−269347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記遠隔会議においては参加者同士が同じ空間で会議を行うわけではないため、会議終了時刻が近づいてもその雰囲気が参加者の間で共有されない。そのため、例えば終了時刻の到来に気づかず、会議の結論に到達できないままに突然音声が途切れてしまうといった問題があった。また、ベル音などを送信して参加者に会議終了時刻を通知すると、会議の雰囲気を壊してしまうという問題もあった。
【0004】
本発明は上記のような問題点に鑑みて為されたものであり、期間が管理されている会議等の遠隔コミュニケーションにおいて、終了時刻が近づいていることを参加者に適切に通知することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る通信装置の第1の実施形態は、通信の時間帯を示す時間帯情報を記憶する通信時間帯記憶手段と、オーディオ信号を受取る受け取り手段と、前記通信時間帯記憶手段内の時間帯情報が示す時間帯においてネットワークに接続された所定の通信端末と通信を行い、前記受け取り手段が受取ったオーディオ信号を前記所定の通信端末に送信する通信手段と、時刻を示す時刻情報を出力する計時手段と、前記計時手段が出力する時刻情報が、前記時間帯情報が示す終了時刻に対して所定時間内に入ったか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定が肯定的である場合に、前記オーディオ信号に音響処理を施す音響処理手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明に係る通信装置の第2の実施形態は、上記第1の実施形態に記載の通信装置において、収音した音声に対応する信号を出力する収音手段を具備し、前記受け取り手段は前記収音手段が出力する信号を前記オーディオ信号として受取ることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る通信装置の第3の実施形態は、通信の時間帯を示す時間帯情報を記憶する通信時間帯記憶手段と、ネットワークに接続された複数の通信端末からオーディオ信号を受信する受信手段と、前記受信手段が受信したオーディオ信号を合成して前記各通信端末に送信するとともに、前記合成にあたっては前記各通信端末に送信される合成後のオーディオ信号の中に自己が出力したオーディオ信号が含まれないようにする通信手段と、時刻を示す時刻情報を出力する計時手段と、前記計時手段が出力する時刻情報が、前記時間帯情報が示す終了時刻に対して所定時間内に入ったか否かを判定する判定手段と、前記判定手段の判定が肯定的である場合に、前記各通信端末の内、予め定められた通信端末が出力するオーディオ信号に音響処理を施す音響処理手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る通信装置の第4の実施形態は、上記第1ないし3いずれかの実施形態に記載の通信装置において、前記音響処理手段による音響処理は、前記オーディオ信号の音量を次第に小さくしてゆく処理であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る通信装置の第5の実施形態は、上記第1ないし3いずれかの実施形態に記載の通信装置において、前記音響処理手段による音響処理は、オーディオ信号の音質を次第に変化させてゆく処理であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る通信装置の第6の実施形態は、上記第1ないし3いずれかの実施形態に記載の通信装置において、前記音響処理手段による音響処理は、オーディオ信号に対してエコー効果を付与する処理、残響効果を付与する処理、ビブラート効果を付与する処理、コーラス効果を付与する処理およびトレモロ効果を付与する処理の少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る通信装置の第7の実施形態は、上記第6の実施形態に記載の通信装置において、前記音響処理手段は、時間の経過とともに付与する効果の度合いを変化させることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る通信装置の第8の実施形態は、上記第1ないし7いずれかの実施形態に記載の通信装置において、前記音響処理手段は、前記判定手段の判定が肯定的である場合に、第2のオーディオ信号を前記オーディオ信号に合成する合成手段を有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る通信装置の第9の実施形態は、上記第8の実施形態に記載の通信装置において、前記第2のオーディオ信号は、ノイズまたは楽曲を表すオーディオ信号であり、前記合成手段は前記オーディオ信号の音量を時間の経過とともに大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、期間が管理されている会議等の遠隔コミュニケーションにおいて、終了時刻が近づいていることを参加者に適切に通知することができる、といった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施する際の最良の形態について説明する。
(A.構成)
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明に係る会議システム1の全体構成を示す図である。会議システム1は、端末装置10A、10B、および10Cと、ミキサ装置20と、それら通信装置を接続する通信網30とから成る。通信網30は例えばインターネットであり、複数の端末装置10の間で所定の通信プロトコルに従ってデータ通信が行われる。
【0017】
なお、端末装置10A、10B、および10Cの間に機能的な差異はない。以下の説明において、端末装置10A、10B、および10Cを区別する必要が無いときには、「端末装置10」と総称する。また、図1において通信網30には、端末装置10A、10B、および10Cの3つが接続されているが、3台以上の端末装置が接続されていても良い。
【0018】
以下、端末装置10のハードウェア構成について説明する。図2は、端末装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
図に示す制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、後述する記憶部103に格納されている各種プログラムを実行することにより、本発明に特徴的な動作を行ったり、端末装置10の各部の動作を制御したりする。
通信IF部102は、例えばNIC(Network Interface Card)であり、通信網30に有線接続されている。この通信IF部102は、制御部101から引渡されたデータを通信網30へ送出する。また、通信IF部102は、通信網30を介してデータを受信し、制御部101へ引渡す。
【0020】
記憶部103は、ROM(Read Only Memory)103aおよびRAM(Random Access Memory)103bを有する。ROM103aは、本発明に特徴的な機能を制御部101に実行させるためのデータや制御プログラムを格納している。RAM103bは、各種プログラムにしたがって作動している制御部101によってワークエリアとして利用されたり、後述するマイクロホン106bから引渡された音声データを記憶したりする。
【0021】
操作部104は、例えばキーボードやマウスなどであり、本会議の参加者が操作部104を操作して何らかの入力を行った場合に、その操作内容を表すデータを制御部101へと伝達するためのものである。
表示部105は、例えばモニタなどであり、制御部101による制御下で端末装置10が有する各種のデータを表示する。
【0022】
音声入力部106は、アナログ/デジタル(以下、「A/D」と略記する)コンバータ106aとマイクロホン106bとを有する。マイクロホン106bは、参加者の音声を収音しその音声を表す音声信号(アナログ信号)を生成し、A/Dコンバータ106aへ出力する。A/Dコンバータ106aは、マイクロホン106bから受取った音声信号にA/D変換を施し、その変換結果であるデジタルデータ(以下、音声データ)を制御部101へ引渡す。
【0023】
音声出力部107は、制御部101から引渡される音声データに応じた音声の再生制御を行うものであり、D/Aコンバータ107aとスピーカ107bとを有する。D/Aコンバータ107aは、制御部101から引渡される音声データに対して、D/A変換を施すことによってアナログ方式の音声信号へ変換しスピーカ107bへ引渡すものである。そして、スピーカ107bは、D/Aコンバータ107aから引渡された音声信号の表す音声を放音する。
以上が、端末装置10のハードウェア構成である。
【0024】
端末装置10は以上に説明した構成を有し、参加者がマイクロホン106bに吹き込んだ音声から音声データを生成して通信網30に送出すると共に、通信網30を介して他の参加者の音声を表す音声データを受取ってスピーカ107bから音声を放音することで、各参加者が音声データをやりとりすることを可能にする。
【0025】
次に、ミキサ装置20のハードウェア構成について説明する。
図3は、ミキサ装置20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
制御部201、通信IF部202、操作部204、および表示部205は、各々端末装置10における制御部101、通信IF部102、操作部104、および表示部105と同様の機能を持つため、説明を省略する。
記憶部203は、ROM203aおよびRAM203bを有する。ROM203aは、後述する選択データや本発明に特徴的な機能を制御部201に実行させるためのプログラムを格納している。RAM203bは、各種プログラムにしたがって作動している制御部201によってワークエリアとして利用されたり、係数データや各端末装置10から引渡された音声データを記憶したりする。
【0027】
以上がミキサ装置20のハードウェア構成である。以下では、制御部201がROM203aに格納されたプログラムを実行することによりミキサ装置20に付与される機能であるミキシング機能および音量レベル調整機能について説明する。
【0028】
図4は、ミキサ装置20が各端末装置10から受取った音声データを処理する過程を模式的に示した図である。同図に示すようにミキサ装置20は、回路指定部31と、音声データ合成部22A、22B、および22Cと、音量レベル調整部23A、23B、および23Cの機能を有する。
【0029】
なお以下の説明において、端末装置10の構成および端末装置10が出力する音声データについて、いずれの端末装置10に属するものであるか、又いずれの端末装置10が生成したものであるかを区別する必要があるときには、符号にアルファベットを付して表す。例えば端末装置10Aの制御部101を制御部101A、端末装置10Aが出力した音声データを音声データAなどと表す。また、ミキサ装置20の構成についても、音声データ合成部22A、22B、および22Cをそれぞれ区別する必要がない場合は、音声データ合成部22と総称する。音量レベル調整部23A、23B、および23Cも同様であり、それぞれ区別する必要がない場合は音量レベル調整部23と総称する。
【0030】
まず、ミキシング機能について説明する。通信IF部202は端末装置10A、10B、および10Cから出力された音声データA、B、およびCを受け取り、それらを回路指定部31に出力する。
回路指定部31は以下のようにして、受取った各音声データを音声データ合成部22に割り当てて出力する。すなわち、回路指定部31は、端末装置10Aから受取った音声データAを音声データ合成部22Bおよび22Cに引渡し、音声データBを音声データ合成部22Aおよび22Cに引渡し、音声データCを音声データ合成部22Aおよび22Bに出力する。
【0031】
音声データ合成部22Aは、受取った音声データBおよびCを合成し、合成された音声データを音量レベル調整部23Aに出力する。同様にして音声データ合成部22B、および22Cは受取った音声データを合成し、それぞれ音量レベル調整部23B、および23Cに音声データを送る。
【0032】
次に、音量レベル調整機能について説明する。図5は、ROM203aに格納されている選択データである。選択データにおいては、係数が時刻に対応づけられて規定されている。図5に示す選択データにおいては、会議終了時刻の所定時間前から会議終了時刻にかけての音響処理期間における係数の経時変化のパターンが予め複数(パターン0ないし4)設定されている。
【0033】
パターン0においては、係数は一定値1に設定されている。パターン1においては、係数は音響処理期間に入ると徐々に値が小さくなり、会議終了時刻に0となるように設定されている。パターン2における係数の値は0より大きく1より小さい一定値(この場合0.5)に設定されている。パターン3においては、係数は音響処理期間に入ると徐々に値が大きくなり、会議終了時刻に1となるように設定されている。パターン4においては、係数は一定値0に設定されている。
【0034】
制御部201は遠隔会議の開始に先立ち、会議の開始時刻と終了時刻および上記音響処理期間を入力するようミキサ装置20の管理者に促す画面を表示部205に表示させる。また制御部201は、図5に示す選択データを表示部205に表示させ、パターン0ないし4のいずれかのパターンを管理者が選択するよう促す。管理者によって上記のデータが入力されると、制御部201は係数データを生成し該係数データをRAM203bに書き込む。
【0035】
例えば、管理者が会議の開始時刻に“14:00”、終了時刻に“15:00”、音量レベル調整期間に“5分”と入力し、選択データにおけるパターンに“パターン1”を選択すると、制御部201は図6(B)に示す係数データを生成し、該係数データをRAM203bに書き込む。以下では、図6(B)に示す係数データが生成された場合を例にとって説明する。
【0036】
さて、音量レベル調整部23は、音声データ合成部22から受取った音声データの音量レベルを以下に説明するように調整する。図6(A)は、音量レベル調整部23が音声データ合成部22から受取る音声データの音量レベルを示したグラフである。
【0037】
音量レベル調整部23は音声データ合成部22から音声データを受取り、該音声データの音量レベルを調整して、調整後の音量レベルを調整前の音量レベルで除した比の値が図6(B)に示される係数データの対応する時刻の係数となるようにする。すなわち、会議が始まった14:00から会議終了時刻の5分前である14:55までは、音量レベル調整部23は音声データ合成部22から受取った音声データをそのまま出力する。会議終了時刻の5分前の14:55以降は、係数が毎分0.2ずつ低下するよう設定されているため、例えば14:56には係数は0.8であるから、音量レベル調整部23は受取った音声データの音量レベルを0.8倍に低下させて出力する。そして会議終了時刻である15:00には、係数は0であるため無音の音声データを出力する。図6(C)には、このようにして出力される音声データの音量レベルが示されている。
【0038】
音量レベル調整部23は、音量レベルが調整された音声データを通信IF部202に出力する。通信IF部202は、音量レベル調整部23Aから受取った音声データは端末装置10Aへ、音量レベル調整部23Bから受取った音声データは端末装置10Bへ、音量レベル調整部23Cから受取った音声データは端末装置10Cへ出力する。
以上の構成により、端末装置10は、自装置を利用している参加者の音声を表す音声データをミキサ装置20へ送出すると共に、端末装置10B、10Cを利用している参加者の音声を表す音声データをミキサ装置20から受取る。従って、各参加者は自身の発言を他の参加者に送ることができると共に、他の参加者の発言をスピーカ107bから聞くことができる。
【0039】
(B.動作)
次に、会議システム1により行われる会議において各装置が実行する動作について説明する。なお、各端末装置10およびミキサ装置20は、すでに電源が立ち上がり各種制御プログラムに従って動作しているものとする。また、端末装置10A、10B、および10Cの前には、それぞれ本会議に参加する参加者(以下、それぞれ参加者A、B、およびC)が座っているものとする。
【0040】
まず、端末装置10の動作について説明する。参加者がマイクロホン106bに向かって発言すると、マイクロホン106bは参加者の発した音声を収音し、アナログの音声信号を生成する。A/Dコンバータ106aは、マイクロホン106bにより収音された音声信号をデジタル信号である音声データに変換する。制御部101は、該音声データをRAM103bに書き込む。RAM103bに書き込まれた音声データは、順次通信IF部102から通信網30を介してミキサ装置20へ出力される。
次に、ミキサ装置20の動作を説明する。図7は、制御部201が実行する音声データの処理の流れを示したフローチャートである。会議に先立ち、ミキサ装置20の制御部201は、係数データの初期設定を管理者に促す画面を表示部205に表示させる。具体的には、表示部205は図5に示す選択データを画面上に表示し、会議の開始・終了時刻および音量レベル調整期間の入力、選択データにおけるパターンの選択を促す。管理者は、表示部205の表示を見ながら操作部204を操作することにより上記の項目について入力する。制御部201は管理者により入力されたデータに基づいて係数データを確定し、確定された係数データをRAM203bに書き込む(ステップSA100)。
本動作例においては、図6(B)に示す係数データがRAM203bに書き込まれたものとする。
【0041】
会議が開始されると、通信IF部202は各端末装置10から音声データを受取り、回路指定部31に出力する。回路指定部31は、各音声データを前述のように各音声データ合成部22に割り当てる(ステップSA110)。
音声データ合成部22は、回路指定部31から受取った複数の音声データを合成し(ステップSA120)、合成された音声データを音量レベル調整部23に出力する。
【0042】
音量レベル調整部23は、音声データ合成部22から音声データを受取ると、RAM203bに書き込まれている係数データを読出し、音響処理期間には該係数を音声データの音量レベルに乗じることにより、音量レベルを調整する(ステップSA130)。
図6(b)に示す係数データにおいては、14:55から15:00が音響処理期間であり、該期間に音量レベル調整処理が行われる。該期間が始まると、係数は1から徐々に減少していくため、受取った音声データの音量レベルを次第に減少させていく処理を施す。その結果、図6(A)に示す音量レベルを示す音声データから、図6(C)に示す音量レベルを有する音声データが生成される。
音量レベル調整部23は、音量レベルを調整すると通信IF部202に該音声データを受け渡す。通信IF部202は各音声データを、所定の端末装置10に出力する。
【0043】
ここで、再び端末装置10の動作について説明する。端末装置10はミキサ装置20から音声データを受取ると、該音声データをRAM103bに書き込む。制御部101はRAM103bから音声データを順次読み出し、音声出力部107へ出力する。音声出力部107においては、D/Aコンバータ107aは受取った音声データをアナログ信号(音声信号)に変換し、スピーカ107bは該音声信号を表す音声を放音する。
【0044】
以上の処理が行われることにより、参加者はマイクロホン106bに向けて発言することで他の全ての参加者に発言内容を聞かせることができると共に、他の参加者の発言をスピーカ107bから聞くことができる。更には、会議の開始時刻から終了時刻の一定時間前までは、通常の音量レベルの音声がスピーカ107bから放音されるが、会議終了時刻の一定時間前(本動作例においては5分前)から、スピーカ107bから聞こえてくる他の参加者の音声が徐々に小さくなり、参加者同士の距離がまるで“遠ざかっていく”ような感覚を参加者に与えることができる。そのような感覚を覚えた参加者は、会議の終了が近づいていることを違和感無く認識し、適切に会議を終了することができる。
【0045】
(C.変形例)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は以下に述べる種々の態様で実施することができる。
【0046】
(1)上述した実施形態においては、係数データに基づいて音声データの音量レベルを調整する音量レベル調整部23を、ミキサ装置20に持たせる場合について説明したが、該機能を端末装置10に持たせても良い。すなわち、それぞれの装置が、自装置が生成する音声データの音量レベルを調整するとしてもよい。また、音響処理期間になるとネットワークを介して音量調整機能を有する通信装置に対して所定の音量調整を行う指示を出す通信装置をネットワーク上に接続し、会議の管理を行わせても良い。
【0047】
(2)上述した実施形態においては、端末装置10およびミキサ装置20は有線でネットワーク接続されている場合について説明したが、無線で各装置をつないでもよい。
【0048】
(3)上述した実施形態においては、制御部201は、音量レベル調整部23A、23B、および23Cが一律の音量レベル調整処理を行うよう制御する場合について説明した。すなわち、音量レベル調整部23A、23B、および23Cは共通の係数データを用いて音量レベルを調整した。しかし、音量レベル調整部23A、23B、および23Cにそれぞれ別個の係数データを設定し、各音量レベル調整部23が独立して制御を行うようにしても良い。
【0049】
(4)上述した実施形態においては、参加者による音声を表す音声データを対象として音量レベル調整処理を行う場合について説明した。しかし、上記音量レベル調整処理と並行して、該音声データにBGM(Back Ground Music、例えば“蛍の光”など)を付加することでより効果的に会議終了時刻の周知を行ってもよい。その場合のミキサ装置20の構成および動作について説明する。
図4に示すミキサ装置の構成において、BGMの音量を調整するBGM音量調整装置、および音声データに対してBGMを付加するBGM付加装置を設ける。BGMの音量レベルにおいても、図5に示す選択データに基づいて係数データが生成される。管理者が所定のデータを入力すると係数データが生成され、上記BGM音量調整装置およびBGM付加装置は係数データに基づいてBGMの付加を行う。例えば管理者がパターン3を選択した場合、音響処理期間に入るとBGMが音声データに付加され、その音量レベルは会議終了時刻が近づくにつれて次第に高くなるように設定される。
このように、会議終了時刻が近づくと設定された音量レベルのBGMが参加者の音声に付加され、参加者に会議の終了が近づいていることを、雰囲気を壊すことなく知らせることができる。
なお、上記の説明では付加する音声がBGMである場合について説明したが、音声の種類はBGMに限定されるものではない。参加者に効果的に会議終了を知らせる音声の種類であればより良いが、ノイズや電子音でも良い。
【0050】
(5)上述した実施形態においては、係数データのパターンが0、1、2、3、4に示したものが予め設定されている場合について示したが、パターンはそれらに限られるものではない。パターンは4つ以上設定されていても良いし、グラフの形状は示されたパターン以外にさまざまなパターンがあっても良い。
【0051】
(6)上記実施形態においては、音声データ合成部22で音声を合成してから音量レベル調整部23で音量レベルの調整処理を行った。しかし、音量レベルの調整処理は、音声データの合成を行う前に行ってもよいし、音声データの合成処理を行う前後に重ねて行っても良い。例えば、上記動作例では全ての参加者が同時に会議を開始・終了する場合について説明したが、一部の参加者だけが早めに会議を終えたりする場合については以下のようにするとよい。すなわち図8に示すように、音量レベル調整部23と同様の機能を有する音量レベル調整部24A、24B、および24Cを回路指定部31の下流で音声データ合成部22の上流に設置する。なお、音量レベル調整部24A、24B、および24Cをそれぞれ区別する必要が無い場合は、音量レベル調整部24と総称する。管理者は、音量レベル調整部24のそれぞれについて予め係数データを設定することができるようになっており、早めに会議を切り上げる参加者の音声データが通過する音量レベル調整部24は、上記の係数データに基づいて早目に該音声データの音量を設定された係数データに従って調整する。以上のようにすることで、一部の参加者だけが途中退席する場合においても、他の参加者はその旨を知ることができる。なお、本変形例においては、音量レベル調整部23および24の両者を設置する場合について示したが、音量レベル調整部24を設置する場合には、音量レベル調整部23を設置しないとしても良い。
【0052】
(7)上記実施形態においては、図5に示す選択データのいずれのパターンも係数は単調な経時変化を示す場合について説明した。しかし、図9に示すように、音響処理期間に入ると単調に減少し、会議終了間際に再び係数が増大するというように設定されたパターンを持っていても良い。例えばパターン5を音量レベルの調整処理に適用した場合、音響処理期間に入ると話者の音声が徐々に小さくなり、その後に再び大きくなるように音量レベルは調整される。その結果、他の参加者は再度音量レベルが増大したことを認識し、会議の終了時刻がいよいよ迫っていることを正確に知ることができると共に、話者は会議終了の挨拶などを通常の音量レベルで他の参加者に向けてすることができる。
【0053】
(8)上記実施形態においては、たとえば図6(B)に示すように各時刻における係数の値を規定する場合について説明した。しかし、係数を時刻の関数として書き込んでおき、音量レベル調整部23または24は該関数から係数を算出して音量レベルを調整しても良い。
【0054】
(9)上記実施形態においては、音声データに施す音響効果の一つとして、音量レベルを調整する場合について説明した。しかし、音声データに施す音響効果の種類は音量レベルの調整に限るものではなく、例えば音声データにエコー効果、リバーブ効果、トレモロ効果、ビブラート効果を施したり、コーラスを付加したり、音質を調整したりしても良い。
なお、エコー効果とは、処理前の音声データに対して、同音声データを異なる数段階遅延させて重ね合わせることにより音声が反響しているような感覚を生じさせる効果である。また、リバーブ効果とは、処理前の音声に対してさまざまな遅延時間を持った多数の反射音を合成することで、音声に余韻効果を与える効果である。また、トレモロ(tremolo)効果とは、音量レベルを小刻みに増減する技術である。ビブラート効果とは、音程か音量またはその両方を周期的に変化させる効果である。コーラスの付加とは、ディレイ回路によりごく微小時間を処理前の音声から遅らせ、遅らせた音をある0.5秒とか1秒といった一定周期で揺らすことにより、複数の音が同時になっているような効果を出す効果である。音質の調整とは、ここでは音声の周波数特性を変化させることにより、音の柔らかさや硬さ、温かみなどの印象を変化させる処理である。
【0055】
なお、上記の各種音響効果に対しても音量レベルの調整と同様に、音響処理期間中に経時変化を付けてもよい。例えば、エコー付加処理においては、会議終了が近づくにつれて反響音の遅延を大きくしていき、あたかも他の参加者が遠くに遠ざかっていくような感覚を生じさせるようにすれば良い。なお、音響処理としては上記に記載した音響処理以外にもさまざまな技法があり、上記に限られるものではない。
【0056】
(10)上記実施形態においては、本発明に係る通信端末に特徴的な機能をソフトウェアモジュールで実現する場合について説明したが、上記各機能を担うハードウェアモジュールを組み合わせて本発明に係る通信端末を構成するようにしても良い。
【0057】
(11)上記実施形態においては、本発明に係る通信装置に特徴的な機能を制御部101または201に実現させるための制御プログラムをROM103aまたは203aに予め書き込んでおく場合について説明したが、CD−ROMやDVDなどのコンピュータ装置読み取り可能な記録媒体に上記制御プログラムを記録して配布するとしても良く、インターネットなどの電気通信回線経由のダウンロードにより上記制御プログラムを配布するようにしても勿論良い。
【0058】
(12)上記実施形態においては、通信網30がインターネットである場合について説明したが、通信網30はLAN(Local Area Network)などであっても良い。要は、所定の通信プロトコルに従って通信装置同士が行うデータ通信を仲介するものであれば良い。
【0059】
(13)上記実施形態においては、音量レベル調整部23が音声データを調整することにより、調整後の音量レベルと調整前の音量レベルの“比”が係数データにおいて規定されている値になるようにする場合について説明したが、係数データの値は“比”として利用される場合に限らない。管理者が係数データを適切に作成することにより、“差”として利用することもできる。要は、音響処理期間において規定された係数を用いて音量レベルが適切に調整できれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る通信装置の一実施形態であるミキサ装置20を含んでいる会議システム1の全体構成を示すブロック図である。
【図2】端末装置10の構成例を示すブロック図である。
【図3】ミキサ装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】ミキサ装置20の機能構成を示すブロック図である。
【図5】選択データのグラフである。
【図6】音量レベル調整処理の説明図である。
【図7】ミキサ装置20の行う処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】ミキサ装置20の機能構成を示すブロック図である。
【図9】係数データの一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0061】
1…会議システム、10、10A、10B、10C…端末装置、20…ミキサ装置、22、22A、22B、22C…音声データ合成部、23、23A、23B、23C…音量レベル調整部、24、24A、24B、24C…音量レベル調整部、30…通信網、31…回路指定部、101、201…制御部、102、202…通信IF部、103、203…記憶部、103a、203a…ROM、103b、203b…RAM、104、204…操作部、105、205…表示部、106…音声入力部、106a…A/Dコンバータ、106b…マイクロホン、107…音声出力部、107a…D/Aコンバータ、107b…スピーカ、108、206…バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信の時間帯を示す時間帯情報を記憶する通信時間帯記憶手段と、
オーディオ信号を受取る受け取り手段と、
前記通信時間帯記憶手段内の時間帯情報が示す時間帯においてネットワークに接続された所定の通信端末と通信を行い、前記受け取り手段が受取ったオーディオ信号を前記所定の通信端末に送信する通信手段と、
時刻を示す時刻情報を出力する計時手段と、
前記計時手段が出力する時刻情報が、前記時間帯情報が示す終了時刻に対して所定時間内に入ったか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定が肯定的である場合に、前記オーディオ信号に音響処理を施す音響処理手段と
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
収音した音声に対応する信号を出力する収音手段を具備し、
前記受け取り手段は前記収音手段が出力する信号を前記オーディオ信号として受取ることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
通信の時間帯を示す時間帯情報を記憶する通信時間帯記憶手段と、
ネットワークに接続された複数の通信端末からオーディオ信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信したオーディオ信号を合成して前記各通信端末に送信するとともに、前記合成にあたっては前記各通信端末に送信される合成後のオーディオ信号の中に自己が出力したオーディオ信号が含まれないようにする通信手段と、
時刻を示す時刻情報を出力する計時手段と、
前記計時手段が出力する時刻情報が、前記時間帯情報が示す終了時刻に対して所定時間内に入ったか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定が肯定的である場合に、前記各通信端末の内、予め定められた通信端末が出力するオーディオ信号に音響処理を施す音響処理手段と
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項4】
前記音響処理手段による音響処理は、前記オーディオ信号の音量を次第に小さくしてゆく処理であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
前記音響処理手段による音響処理は、オーディオ信号の音質を次第に変化させてゆく処理であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項6】
前記音響処理手段による音響処理は、オーディオ信号に対してエコー効果を付与する処理、残響効果を付与する処理、ビブラート効果を付与する処理、コーラス効果を付与する処理およびトレモロ効果を付与する処理の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
前記音響処理手段は、時間の経過とともに付与する効果の度合いを変化させることを特徴とする請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記音響処理手段は、前記判定手段の判定が肯定的である場合に、第2のオーディオ信号を前記オーディオ信号に合成する合成手段を有することを特徴と請求項1ないし7のいずれかに記載の通信装置。
【請求項9】
前記第2のオーディオ信号は、ノイズまたは楽曲を表すオーディオ信号であり、前記合成手段は前記オーディオ信号の音量を時間の経過とともに大きくすることを特徴とする請求項8に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−98991(P2008−98991A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278597(P2006−278597)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】