説明

通信装置

【課題】「CSMA/CA方式の通信装置」との通信における「CSMA/CA方式の通信装置」のパケット到達率の劣化を抑制する。
【解決手段】通信装置は、他端末から送信されたデータパケットおよび返信パケットを受信する受信回路12と、受信回路12により受信されたデータパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれていた場合のみ、データパケットがパケット検出部13により検出されたときに、所定の期間の後、他端末のデータパケットの検出結果を示す返信パケットを送信する送信回路19と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明では、基地局等の制御局なしに、個々の無線端末装置が周辺の無線端末装置に対して、同報通信(ブロードキャスト)することにより、情報を伝えるシステムを想定している。このような通信形態を実現する一例として、無線LANで用いられている通信方式の1つであるCSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式では、データを送信したい端末(ノード)は、他の端末のパケット通信状況を監視し(キャリアセンス)、チャネルが空いているタイミングで送信を開始する。
【0003】
このような無線システムでは、例えば端末Aは、自身の周辺の電波が届く範囲内に存在する端末の通信状況をキャリアセンスにより監視する。
【0004】
そのため、周辺に他の端末が多数存在する場合、自身のデータを送信するタイミングが得られず、データの送信が大きく遅延する場合がある。このため、端末数や通信トラフィックが増加した場合に信頼性を保証できない問題がある。
【0005】
更に、電波が届く範囲外の直接キャリアセンスができない場所に他の端末が多数存在する場合は、それらの端末の通信状況を検出することができず、端末A自身のデータ送信時に他の端末の通信と衝突してしまう場合(いわゆる隠れ端末問題)が発生する。無線LANでは、RTS/CTS(Request To Send / Clear To Send )という方式を用いて、この通信の衝突を回避する手段を持っている。この方式は、特定の端末に対して通信したい場合には有効であるが、同報通信の場合には適用できないため、上記のパケット通信の衝突を回避することはできないという問題がある。
【0006】
そこで、上記問題を解決するために、フレームをnスロットに時分割してアクセスする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された無線端末装置は、フレーム単位でスロットの占有情報を監視し、自端末の送信データに加えて、スロットの占有情報を送信パケットに埋め込むことで他の端末と情報を交換する。上記フレームは例えば100msで構成され、各スロットは各々異なる端末によって占有される。
【0007】
更に、特許文献1の無線端末装置は、同文献の図2に示すように、データとフレーム情報(FI)とを含んだパケットを送信する。このフレーム情報は、自端末で検出されたすべてのスロットの占有状態を表す情報である。各パケットにはこのようなフレーム情報が必要であるため、1パケット内に占める送信対象のデータを多くすることができず、通信トラフィックが渋滞するおそれがあった。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、自端末の周辺端末が検出されるものの、自端末の周辺端末で検出されるが自端末では検出されない他端末(いわゆる隠れ端末)が存在してしまう。そこで、特許文献1では、隠れ端末を検出するアルゴリズムが開示されているが、これはフレーム情報の存在を前提としたものであるので、上記のように、1パケット内に占める送信対象のデータを多くすることができない。一方、フレーム情報を用いないと、隠れ端末が検出されないため、隠れ端末とパケットの衝突が生じてしまう問題がある。
【0009】
そこで、このような問題を解決するために、パケットの衝突を抑制して、通信性能を向上させることができる通信装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
特許文献2に記載の通信装置では、他端末からデータパケットを受信した場合に、1種類または2種類の返信パケットをブロードキャストしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−28550号公報
【特許文献2】特開2009−177634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献2に記載の技術は、例えば、CSMA/CA方式の改良によって返信パケットを送信するように構成したものであり、データパケット部分についてはCSMA/CA方式のものと同様になっている。そのため、上記特許文献2に記載の通信装置と、CSMA/CA方式の通信装置とが互いに通信を行うことができる。以下、上記特許文献2に記載の通信装置を「CSMA/CA方式を改良した通信装置」と称して、「CSMA/CA方式の通信装置」と区別することがある。
【0013】
このように、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」と、「CSMA/CA方式の通信装置」とが混在した状況で通信を行った場合、「CSMA/CA方式の通信装置」が送信するデータパケットに対して、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」が返信パケットをブロードキャストする事態が発生してしまう。ある「CSMA/CA方式の通信装置」が送信したデータパケットのあと、別の「CSMA/CA方式の通信装置」が送信するデータパケットの期間に対して、当該ある「CSMA/CA方式の通信装置」が送信したデータパケットのあと、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」が返信パケットをブロードキャストする期間のほうが短く設定されている。
【0014】
これにより、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」と、「CSMA/CA方式の通信装置」とが混在した状況で通信を行った場合、「CSMA/CA方式の通信装置」がデータパケットを送信しようとしたときには、キャリアセンス機能により送信できない割合が増え、通信特性の劣化を招いていた。
【0015】
実験によって、これらのことが明らかになった。その実験の実験結果の一例を図28に示す。同図には、「CSMA/CA方式の通信装置」が普及している中に、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」が導入され始めたと仮定した実験の実験結果の一例が示されている。なお、横軸はCSMA/CA方式の通信装置を備えた車両の台数(ここでは、1台の車両につき1つの通信装置を備えるようにしているので、車両の台数と通信装置の台数は同一と考える。)を表し、縦軸はパケット到達率を表す。
【0016】
グラフ1は、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」が導入される前の「CSMA/CA方式の通信装置」のみで通信を行った場合の通信装置の台数とパケット到達率との関係を示すものである。
【0017】
グラフ2は、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」を2台を入れて、「CSMA/CA方式の通信装置」の台数を変化させたときの「CSMA/CA方式を改良した通信装置」のパケット到達率を示すものである。このグラフ2が示すように、「CSMA/CA方式の通信装置」のみで通信を行った場合と比較して、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」では、いわゆる隠れ端末に対する対策を施してあるため、パケット到達率は良くなる。
【0018】
グラフ3は、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」を2台を入れて、「CSMA/CA方式の通信装置」の台数を変化させたときの「CSMA/CA方式の通信装置」のパケット到達率を示すものである。このグラフ3が示すように、「CSMA/CA方式の通信装置」のみで通信を行った場合と比較して、「CSMA/CA方式の通信装置」では、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」から、横軸の「CSMA/CA方式の通信装置」の台数に相当する返信パケットが送信されるため、パケット到達率は劣化する(悪くなる)。
【0019】
本発明は、上記事実に鑑みて成されたものであり、「CSMA/CA方式の通信装置」との通信における「CSMA/CA方式の通信装置」のパケット到達率の劣化を抑制することができる通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明の通信装置は、他端末から送信されたデータパケットおよび返信パケットを受信する受信手段と、前記受信手段により受信された前記データパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれていた場合のみ、前記データパケットが前記受信手段により検出されたときに、所定の期間の後、前記他端末のデータパケットの検出結果を示す返信パケットを送信する返信パケット送信手段と、前記返信パケットが前記受信手段により受信されたときに、受信された返信パケットの受信タイミングに基づいて、自端末のデータパケットの送信タイミング禁止期間を設定する送信禁止期間設定手段と、前記送信禁止期間設定手段により設定された送信タイミング禁止期間以外のタイミングのときに、自端末のデータパケットを送信する送信手段とを備えている。
【0021】
請求項1に記載の発明の通信装置によれば、受信されたデータパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれていた場合のみ返信パケットを送信する。従って、請求項1に記載の発明の通信装置によれば、送信するデータパケットに返信パケットを送信するための情報が含まれない「CSMA/CA方式の通信装置」からのデータパケットを受信した場合であっても、返信パケットが送信されないので、「CSMA/CA方式の通信装置」との通信における「CSMA/CA方式の通信装置」のパケット到達率の劣化を抑制することができる。
【0022】
請求項2に記載の発明の通信装置は、請求項1に記載の発明の通信装置であって、前記受信手段により受信された前記データパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれているか否かを判定する判定手段を更に備え、前記返信パケット送信手段は、前記判定手段によって前記受信手段により受信された前記データパケットに返信パケットを送信するための情報が含まれていると判定された場合のみ、前記データパケットが前記受信手段により検出されたときに、所定の期間の後、前記他端末のデータパケットの検出結果を示す返信パケットを送信する。
【0023】
請求項3に記載の発明の通信装置は、請求項1または2に記載の発明の通信装置であって、前記送信禁止期間設定手段は、前記受信手段により受信された返信パケットが自端末のデータパケットに対する返信でないときに、データパケットの送信タイミング禁止期間を設定する。
【0024】
請求項3に記載の発明の通信装置によれば、検出できない端末から送信されたパケットの衝突を抑制することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明の通信装置は、請求項3に記載の発明の通信装置であって、前記送信禁止期間設定手段は、前記受信手段により受信された返信パケットが自端末のデータパケットに対する返信であるときに、自端末のデータパケットの送信タイミングを決定し、前記送信タイミングを含まない期間を前記送信タイミング禁止期間として設定する。
【0026】
請求項4に記載の発明の通信装置によれば、パケットの衝突が発生しないタイミングにおいてデータパケットを送信することができる。
【0027】
請求項5に記載の発明の通信装置は、請求項1または2に記載の発明の通信装置であって、前記受信手段は、前記返信パケットとして、データパケットが正常に受信されたことを示す受信検出パケット、又は、データパケットの衝突が検出されたことを示す衝突検出パケットを受信し、前記送信禁止期間設定手段は、前記返信パケットが受信検出パケット又は衝突検出パケットであるか、に基づいて、送信タイミング禁止期間を設定する。
【0028】
請求項5に記載の発明の通信装置によれば、複数の返信パケットを用いることにより、受信状況に応じたデータパケットの送信を行うことができる。
【0029】
請求項6に記載の発明の通信装置は、請求項5に記載の通信装置であって、前記送信禁止期間設定手段は、前記受信手段により受信された衝突検出パケットが、自端末のデータパケットに対する返信であるときに、自端末の次回のデータパケットの送信タイミングを変更するようにデータパケットの送信タイミング禁止期間を設定する。
【0030】
請求項6に記載の発明の通信装置によれば、データパケットの衝突が発生しないように送信タイミングを変更して、データパケットを送信することができる。
【0031】
請求項7に記載の発明の通信装置は、請求項5に記載の通信装置であって、前記送信禁止期間設定手段は、前記受信手段により受信された衝突検出パケットが、自端末のデータパケットに対する返信でないときに、送信タイミング禁止期間の設定を禁止し又は既に設定されている送信タイミング禁止期間の設定を解除する。
【0032】
請求項7に記載の発明の通信装置によれば、送信タイミングをむやみに変更するのを抑制してデータパケットを送信することができる。
【0033】
また、上記目的を達成するために、請求項8に記載の発明のプログラムは、コンピュータを、他端末から送信されたデータパケットおよび返信パケットを受信する受信手段により受信された前記データパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれていた場合のみ、前記データパケットが前記受信手段により検出されたときに、所定の期間の後、前記他端末のデータパケットの検出結果を示す返信パケットを送信する返信パケット送信手段、前記返信パケットが前記受信手段により受信されたときに、受信された返信パケットの受信タイミングに基づいて、自端末のデータパケットの送信タイミング禁止期間を設定する送信禁止期間設定手段、及び前記送信禁止期間設定手段により設定された送信タイミング禁止期間以外のタイミングのときに、自端末のデータパケットを送信する送信手段として機能させるためのものである。
【0034】
請求項8に記載の発明のプログラムによれば、送信するデータパケットに返信パケットを送信するための情報が含まれない「CSMA/CA方式の通信装置」からのデータパケットを受信した場合であっても、返信パケットが送信されないので、「CSMA/CA方式の通信装置」との通信における「CSMA/CA方式の通信装置」のパケット到達率の劣化を抑制することができる。
【0035】
更に、上記目的を達成するために、請求項9に記載の発明のプログラムは、コンピュータを、他端末から送信されたデータパケットおよび返信パケットを受信する受信手段により受信された前記データパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれているか否かを判定する判定手段、前記判定手段によって前記受信手段により受信された前記データパケットに返信パケットを送信するための情報が含まれていると判定された場合のみ、前記データパケットが前記受信手段により検出されたときに、所定の期間の後、前記他端末のデータパケットの検出結果を示す返信パケットを送信する返信パケット送信手段、前記返信パケットが前記受信手段により受信されたときに、受信された返信パケットの受信タイミングに基づいて、自端末のデータパケットの送信タイミング禁止期間を設定する送信禁止期間設定手段、及び前記送信禁止期間設定手段により設定された送信タイミング禁止期間以外のタイミングのときに、自端末のデータパケットを送信する送信手段として機能させるためのものである。
【0036】
請求項9に記載の発明のプログラムによれば、送信するデータパケットに返信パケットを送信するための情報が含まれない「CSMA/CA方式の通信装置」からのデータパケットを受信した場合であっても、返信パケットが送信されないので、「CSMA/CA方式の通信装置」との通信における「CSMA/CA方式の通信装置」のパケット到達率の劣化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0037】
以上、説明したように、本発明の通信装置及びプログラムによれば、「CSMA/CA方式の通信装置」との通信における「CSMA/CA方式の通信装置」のパケット到達率の劣化を抑制することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信ネットワークの通信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】通信装置によって送受信される基本送信周期の構成を示す図である。
【図3】通信装置の状態遷移図である。
【図4】「データパケット送信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】「自端末のデータに対する返信パケット受信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】送信禁止期間を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】「信号受信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図8】送信禁止期間を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】「返信パケット送信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図10】送信禁止期間を説明するためのタイミングチャートである。
【図11】本実施形態に係る効果を説明するための図である。
【図12】本実施形態に係る効果を説明するための図である。
【図13】本実施形態に係る効果を説明するための図である。
【図14】本実施形態に係る効果を説明するための図である。
【図15】本実施形態に係る効果を説明するための図である。
【図16】本実施形態に係る効果を説明するための図である。
【図17】本実施形態に係る効果を説明するための図である。
【図18】本実施形態に係る効果を説明するための図である。
【図19】本実施形態に係る効果を説明するための図である。
【図20】本実施の形態に係る通信装置による効果をシミュレーションした結果を示す図である。
【図21】受信検出パケットと衝突検出パケットの検出情報を示す図であり、(A)は自端末で他の端末のデータパケットを受信でき、かつデータパケットの衝突がない場合、(B)は自端末でデータパケットを受信でき、かつデータパケットの衝突がある場合である。
【図22】「自端末のデータに対する返信パケット受信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図23】送信禁止期間を説明するためのタイミングチャートである。
【図24】「信号受信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図25】自端末が返信パケット(衝突検出パケット)を受信した場合の送信禁止期間に関するタイミングチャートである。
【図26】「返信パケット送信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図27】送信禁止期間を説明するためのタイミングチャートである。
【図28】従来の技術について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信ネットワークの通信装置の構成を示すブロック図である。無線通信ネットワークは、各通信装置が各々パケットをブロードキャストすることによって、動的に構成される。以下、必要に応じて、説明の対象となる通信装置を自端末といい、自端末の周辺にある通信装置を周辺端末又は他端末という。
【0041】
通信装置は、受信アンテナ11を介して他の無線端末装置が送信したパケットを受信する受信回路12と、受信したパケットを検出し、どのスロット(どのタイミング)で送信されてきたのかを検出するパケット検出部13と、検出されたパケットから送信されてきたデータを復調して受信情報を生成するパケット復調部14と、検出されたパケットのタイミング情報に基づいて送信禁止期間を設定する送信禁止期間設定部15と、を備えている。
【0042】
更に、通信装置は、送信情報に基づいてパケットを生成するパケット生成部16と、受信されて復調されたデータパケットの特定領域に、返信パケットを送信するための情報(返信パケットを送信する指示を示す情報であり、本実施の形態では、詳細を以下で説明する”1”の値)が含まれているか否かを判定する判定部21と、判定部21によって、受信されて復調されたデータパケットに返信パケットを返信するための情報が含まれていると判定された場合のみ(受信されて復調されたデータパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれていた場合のみ)、復調されたパケットに基づいて返信パケットを生成する返信パケット生成部17と、送信タイミングを制御する送信タイミング制御部18と、生成されたパケットを、アンテナ20を介して送信する送信回路19と、全体の動作を制御する制御回路30と、を備えている。
【0043】
なお、返信パケット生成部17は、判定部21によって、受信されて復調されたデータパケットの特定領域に、受信されて復調されたデータパケットに返信パケットを返信するための情報が含まれていると判定された場合のみ、パケット復調部14で復調されたパケットに基づいて、パケットが正常に検出されたかを判定し、正常に検出された場合のみ、パケットが正常に検出されたことを示す返信パケットを生成する。このように、本実施形態では、返信パケット生成部17で生成される返信パケットは1種類である。
【0044】
送信タイミング制御部18は、送信回路19に対して、パケット生成部16で生成されたデータパケット、返信パケット生成部17で生成された返信パケットのそれぞれの送信タイミングを制御する。特に返信パケットについては、送信タイミング制御部18は、データパケットの受信が完了してから所定期間後に必ず送信するように送信回路19を制御する。なお、上記所定時間は各端末共通である。したがって、多数の端末が周辺に密集している場合、各端末からの返信パケットは衝突する。これは、詳しくは後述するが、返信パケットをわざと衝突させて、隠れ端末を検出すること等に利用される。
【0045】
図2は、n個の通信装置によって送受信される基本周期の構成を示す図である。データパケットと返信パケットで1つの送受信の組み合わせを示している。1基本周期は例えば100msecに設定されており、図2ではn個の組み合わせがある。
【0046】
本実施の形態では、パケット生成部16は、送信情報に基づいてデータパケットを生成する際に、データパケットの予備領域(CSMA/CA方式では使用されていない領域であってCSMA/CA方式では通常”0”の値が設定されている領域)を特定領域として、この特定領域に”1”の値を設定する。この”1”の値は、返信パケットを送信するための情報である。また、この”1”の値は、返信パケットを送信するための指示を示す情報でもある。
【0047】
なお、データパケットのこの特定領域には、従来のCSMA/CA方式では通常”0”の値が設定されているため、この返信パケットの送信を必要としないCSMA/CA方式との区別を図るために、本実施の形態では、特定領域に”0”とは異なる値である”1”を設定することとしたが、本発明はこれに限られない。例えば、CSMA/CA方式との区別を図ることができれば、すなわち、”0”とは異なる数値(例えば”2”や”4”等)であれば特定領域に設定する値はどのような数値であってもよい。しかしながら、特定領域は小さいほうが設計上好ましいため、本実施の形態では、一例として、この特定領域のビット数を1として、設定する値を”1”とした。
【0048】
言い換えると、特定領域に設定された情報は、送信元の装置の通信プロトコルを示す情報である。すなわち、”0”は従来のCSMA/CA方式のプロトコルを示す情報であり、”1”は以下で詳細を説明する本実施の形態のプロトコル(「CSMA/CA方式を改良した通信装置を更に改良した通信装置の通信プロトコル」)である。
【0049】
図3は、本通信装置の状態遷移図である。通信装置は、「受信待機状態」、「データパケット送信処理」、「自端末のデータに対する返信パケット受信処理」、「信号受信処理」、「返信パケット送信処理」の各々の状態を遷移する。
【0050】
具体的には、通信装置は、受信待機状態において、受信信号がなくかつ送信すべきデータがある場合はデータパケット送信処理に移行し、受信信号を検出した場合は信号受信処理に移行する。
【0051】
通信装置は、データパケット送信処理において、データパケットを送信できないときは受信待機状態に移行し、データパケット送信処理が完了したときは自端末のデータに対する返信パケット受信処理に移行する。そして、通信装置は、自端末のデータに対する返信パケット受信処理において、当該処理が完了したとき又は所定期間が経過したときは、受信待機状態に移行する。
【0052】
一方、通信装置は、信号受信処理において、当該処理が完了しかつ返信パケットの送信の必要がないときは受信待機状態に移行し、当該処理が完了しかつ返信パケットの送信が必要であるときは返信パケット送信処理に移行する。そして、通信装置は、返信パケット送信処理において、当該処理が完了したときは、受信待機状態に移行する。以下では、データパケット送信処理、自端末のデータに対する返信パケット受信処理、信号受信処理、返信パケット送信処理についてそれぞれ説明する。
【0053】
通信装置は、受信待機状態において、受信信号がなくかつ送信すべきデータがある場合はデータパケット送信処理に移行し、次の処理を実行する。
【0054】
図4は、「データパケット送信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。ステップS1では、送信タイミング制御部18は、現在のタイミングが送信禁止期間設定部15で設定された送信禁止期間(送信タイミング禁止期間)であるかを判定し、肯定判定のときは「送信すべきデータあり」の状態のままで受信待機状態へ移行し、否定判定のときはステップS2へ移行する。
【0055】
ステップS2では、送信タイミング制御部18は、受信回路12又はパケット検出部13の検出結果に基づいて各スロットの受信感度を測定して、キャリアが検出されたか否かを判定し、肯定判定のときは「送信すべきデータあり」の状態のままで受信待機状態へ移行し、否定判定のときはステップS3へ移行する。
【0056】
ステップS3では、送信タイミング制御部18は、パケット生成部16で生成されたデータパケットを送信するように送信回路19を制御して、本ルーチンを終了する。これにより、データパケットがアンテナ20を介して各端末に送信される。そして、自端末のデータに対する返信パケット受信処理へ移行する。ここで、上述したように、パケット生成部16で生成されたデータパケットの特定領域には”1”の値が設定されている。
【0057】
なお、送信禁止期間でなく(ステップS1の否定判定)かつキャリア未検出(ステップS2の否定判定)の条件が満たされない場合、「送信すべきデータあり」があるが、「受信待機状態」と「データパケット送信処理」の間を行き来することになる。この場合、次のデータパケットを送信すべき時刻になると、以前の送信すべきデータを破棄し、新しいデータを送信するための処理が行われる。
【0058】
図5は、「自端末のデータに対する返信パケット受信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。ステップS11では、送信タイミング制御部18は、上述したステップS3におけるデータパケット送信後から所定期間経過したかを判定し、肯定判定のときは本ルーチンを終了して受信待機状態へ移行し、否定判定のときはステップS12へ移行する。
【0059】
ステップS12では、パケット受信部13は、自端末のデータに対する返信パケットを全ての周辺端末から受信したかを判定し、肯定判定のときはステップS13へ移行し、否定判定のときはステップS11へ戻る。なお、返信パケットは、自端末のデータパケットの送信後の所定の期間以内に受信されたものであるときは自端末に対する返信パケットとみなされ、それ以外の期間に受信されたものであるときは隠れ端末に対する返信パケットとみなされる。
【0060】
ステップS13では、送信禁止期間設定部15は、次回の送信タイミングを予約すべく、送信禁止期間を設定する。
【0061】
図6は、送信禁止期間を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、自端末がデータパケットを送信した後、そのデータパケットに対してすべての周辺端末が返信パケットを送信している。
【0062】
このとき、送信禁止期間設定部15は、全ての周辺端末から自端末のデータパケットに対する返信パケットを受信すると、自端末のデータパケットの送信タイミングから100msec後を自端末の次の送信予定タイミングとして決定し、現在のタイミングから次の送信予定タイミング前までの期間を、送信禁止期間として設定し、本ルーチンを終了する。これにより、自端末の次の送信予定タイミングが予約されたことになる。そして、受信待機状態へ移行する。
【0063】
また、通信装置は、「受信待機状態」において、受信信号を検出した場合は「信号受信処理」に移行し、次の処理を実行する。
【0064】
図7は、「信号受信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。ステップS21では、図1に示す受信回路12が他の端末(周辺端末)のパケットを受信し、パケット検出部13がそのパケットを検出して、ステップS22に進む。
【0065】
ステップS22では、送信禁止期間設定部15は、パケット検出部13で検出されたパケットの種別を判定し、データパケットであるときはステップS23に進み、返信パケットであるときはステップS24に進む。
【0066】
ステップS23では、判定部21は、受信されて復調されたデータパケットの特定領域に、返信パケットを送信するための情報(返信パケットを送信する指示を示す情報であり、本実施の形態では、詳細を以下で説明する”1”の値)が含まれているか否かを判定し、返信パケットを送信するための情報が含まれていると判定した場合には、返信パケットを送信する必要があると判定して、次のステップS25へ進み、返信パケットを送信するための情報が含まれていないと判定した場合には、返信パケットを送信する必要がない(受信処理完了かつ返信の必要なし)と判定して、本ルーチンを終了し、受信待機状態へ移行する。
【0067】
ステップS25では、送信禁止期間設定部15は、所定の期間待機して本ルーチンを終了し、返信パケット送信処理へ移行する。
【0068】
また、ステップS24では、自端末のデータパケットに対する返信ではない返信パケットが検出された状態になっているため、隠れ端末が存在することが分かる。そこで、送信禁止期間設定部15は、次のように送信禁止期間を設定する。
【0069】
図8は、送信禁止期間を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、隠れ端末(周辺端末では検出されるが自端末では検出されない端末)の送信パケットは、基本送信周期(例えば100msec)毎に送信されるが、自端末では検出されていない。また、周辺端末の返信パケットは自端末では検出されるものとする。
【0070】
送信禁止期間設定部15は、返信パケットが検出されると、返信パケットの検出タイミングから100msec後を、次の返信パケットの受信タイミングと予測し、その予測したタイミングから所定期間前の時間までを、送信禁止期間として設定する。
【0071】
上記の返信パケットは、隠れ端末が送信したデータパケットを受けて周辺端末が送信したものである可能性がある。そこで、送信禁止期間設定部15は、返信パケットの検出タイミングに基づいて、隠れ端末が次のデータパケットを送信する可能性がある期間を送信禁止期間として設定する。そして、送信禁止期間の設定後、本ルーチンを終了して(受信処理完了かつ返信の必要なしと判定して)受信待機状態へ移行する。
【0072】
図9は、「返信パケット送信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。ステップS31では、送信タイミング制御部18は、データパケットの受信が完了してから所定期間後に返信パケットを送信するように送信回路19を制御して、ステップS32に進む。これにより、データパケットが正常に受信されたときは、受信完了から所定期間経過後に必ず返信パケットが送信される。
【0073】
ステップS32では、送信禁止期間設定部15は、他端末の次回の送信予定のタイミングで自端末が送信しないように、送信禁止期間を設定する。
【0074】
図10は、送信禁止期間を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、他端末の次回の送信予定のタイミングで自端末が送信しないようにすべく、送信禁止期間設定部15は、次回送信タイミングと予想される期間を送信禁止期間として設定する。具体的には、送信禁止期間設定部15は、自端末が返信パケットを送信した後から100msec(基本送信周期)後を終期、その終期から所定時間前までを始期とした送信禁止期間を設定する。これにより、他端末の次の送信タイミングが送信禁止期間内に含まれ、他端末の次の送信タイミングに自端末がデータパケットを送信するのを防止することができる。そして、送信禁止期間の設定が終了すると、本ルーチンを終了して受信待機状態へ移行する。
【0075】
以上のように、第1の実施形態に係る通信装置は、自端末のデータパケットに対する返信である返信パケットを受信すると、自端末のデータパケットの送信タイミングから基本送信周期後を自端末の次の送信予定タイミングとして決定し、現在のタイミングから次の送信予定タイミング前までの期間を、送信禁止期間として設定する。これにより、上記通信装置は、自端末の次の送信予定タイミングを予約して、そのタイミングで確実にデータパケットを送信することができる。
【0076】
また、上記通信装置は、自端末のデータパケットに対する返信ではない返信パケットを受信すると、その返信パケットの受信タイミングに基づいて、隠れ端末が次のデータパケットを送信すると推定される期間を送信禁止期間に設定し、その送信禁止期間以外のタイミングで自端末のデータパケットを送信する。これにより、上記通信装置は、隠れ端末とのパケットの衝突を回避することができる。
【0077】
図11は、「CSMA/CA方式の通信装置」100,102同士が通信をしているエリアに、第1の実施の形態に係る通信装置200が1台入ってきた状況(シチュエーション)を示している。このような状況の場合、第1の実施の形態に係る通信装置200は返信パケットを送信(送出)しない。これは、「CSMA/CA方式の通信装置」100,102からのデータパケットには、返信パケットを送信するための情報が含まれないからである。このように、第1の実施の形態に係る通信装置200は、「CSMA/CA方式の通信装置」100,102からのデータパケットに対して返信パケットを送信しない構成となっている。そのため、第1の実施の形態に係る通信装置200によれば、「CSMA/CA方式の通信装置」100,102との通信における「CSMA/CA方式の通信装置」100,102のパケット到達率の劣化を抑制することができる。
【0078】
図12は、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」104と、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116とが同一タイムスケジュールで通信をしている状況を示し、図13は、第1の実施の形態に係る通信装置200と、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116とが同一タイムスケジュールで通信をしている状況を示す。
【0079】
図12に示す状況では、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」104は、図14に示すように、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116からのデータパケットに対して返信パケットを送信してしまう。しかしながら、図13に示す状況では、第1の実施の形態に係る通信装置200は、図15に示すように、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116からのデータパケットに対して返信パケットを送信しない。このように、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」104は、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116との通信における「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116のパケット到達率の劣化を生じさせていたが、第1の実施の形態に係る通信装置200は、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116の送信機会を減らすようなことはなく、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116のパケット到達率の劣化を抑制することができる。なお、図14、図15では、データパケットと、返信パケットとが模式的に表されており、データパケット内の数字は対応する通信装置から送信されたことを示す。また、図14、図15では、横軸は時間を表す。
【0080】
図16は、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」104と、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116とが同一タイムスケジュールで通信をしている場合に、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」105が通信エリア1に接近してきた状況を示し、図17は、第1の実施の形態に係る通信装置200と、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116とが同一タイムスケジュールで通信をしている場合に、第1の実施の形態に係る通信装置202が通信エリア1に接近してきた状況を示す。
【0081】
図16に示す状況では、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」104は、図18に示すように、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116からのデータパケットに対して返信パケットを送信してしまい、CSMA/CA方式を改良した通信装置」105は、同図に示すように、「CSMA/CA方式の通信装置」110からのデータパケットに対して返信パケットを送信してしまう。しかしながら、図17に示す状況では、第1の実施の形態に係る通信装置200は、図19に示すように、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116からのデータパケットに対して返信パケットを送信しない。また、第1の実施の形態に係る通信装置202は、同図に示すように、「CSMA/CA方式の通信装置」110からのデータパケットに対して返信パケットを送信しない。このように、「CSMA/CA方式を改良した通信装置」104等は、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116との通信における「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116のパケット到達率の劣化を生じさせていたが、第1の実施の形態に係る通信装置200等は、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116の送信機会を減らすようなことはなく、「CSMA/CA方式の通信装置」106、108、110、112、114、116のパケット到達率の劣化を抑制することができる。なお、図18、図19では、データパケットと、返信パケットとが模式的に表されており、データパケット内の数字は対応する通信装置から送信されたことを示す。また、図19、図19では、横軸は時間を表す。
【0082】
また、図20に、本実施の形態に係る通信装置による効果をシミュレーションした結果を示す。図20の左側は、同一通信エリア内に、「CSMA/CA方式の通信装置」のみが50台、及び200台存在して、互いに通信を行った場合のパケット到達率を示す。また、図20の右側は、同一通信エリア内に、「CSMA/CA方式の通信装置」のみが50台、同一通信エリア内に、「CSMA/CA方式の通信装置」が194台、本実施の形態に係る通信装置が6台(全体の3%)存在して、互いに通信を行った場合のパケット到達率を示す。
【0083】
図20から明らかなように、「CSMA/CA方式の通信装置」のみが200台存在したときの「CSMA/CA方式の通信装置」のパケット到達率と、同一通信エリア内に、「CSMA/CA方式の通信装置」が194台、本実施の形態に係る通信装置が6台(全体の3%)存在したときの「CSMA/CA方式の通信装置」のパケット到達率とが略同一であることが分かり、第1の実施の形態に係る通信装置によって、「CSMA/CA方式の通信装置」のパケット到達率の劣化を抑制することができることが分かる。
【0084】
[第2の実施形態]
第1の実施形態に係る通信装置は1種類の返信パケットを用いたが、第2の実施形態に係る通信装置は2種類の返信パケットを用いる。1つは第1の実施形態と同様に、パケットが受信され正常に検出されたことを示す返信パケット(以下「受信検出パケット」という。)であり、残りの1つはパケットが同一タイミングで衝突しているのを検出したことを示す返信パケット(以下「衝突検出パケット」という。)である。
【0085】
よって、図1に示す返信パケット生成部17は、第1の実施形態と同様にして受信検出パケットを生成するだけでなく、自端末でデータパケットを検出したときは衝突検出パケットを生成する。
【0086】
本実施形態では、受信検出パケットと衝突検出パケットとは、パケットの時間長が異なっている。例えば、受信検出パケットは、衝突検出パケットよりも時間長が短くなっている。
【0087】
図21は受信検出パケットと衝突検出パケットの検出情報を示す図であり、図21(A)は自端末で他の端末のデータパケットを受信でき、かつデータパケットの衝突がない場合、図21(B)は自端末でデータパケットを受信でき、かつデータパケットの衝突がある場合である。
【0088】
各端末は、1つのデータパケットのみを受信したときは受信検出パケットを返信し(同図(A))、複数のデータパケットを受信したときは衝突検出パケットを返信する(同図(B))。
【0089】
なお、各端末は、返信パケットの受信電力が継続する時間に基づいて、継続時間が所定値より短いときは受信検出パケットのみを受信し、継続時間が所定値より長いときは衝突検出パケットのみ、あるいは、受信検出パケット及び衝突検出パケットの両方を受信したと判別することができる。
【0090】
また、各端末は、使用するサブキャリアの組み合わせを変えた2つの返信パケットを用いてもよい。これにより、使用するサブキャリアの組み合わせに応じて、2種類以上の返信パケットが含まれるか否かを判別することができる。また、各端末は、複数回返信パケットを送信しても良いし、スペクトル拡散信号を返信パケットとして利用しても良い。このように、複数種類の返信パケットの形式は特に限定されるものではない。
【0091】
さらに、第2の実施形態では、図3に示す「自端末のデータに対する返信パケット受信処理」、「信号受信処理」、「返信パケット送信処理」においてそれぞれ次の処理が行われる。
【0092】
図22は、「自端末のデータに対する返信パケット受信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。ここでは、ステップS41、S42は、図5に示すステップS11、S12と同じ処理である。そして、ステップS42で肯定判定になるとステップS43に進む。
【0093】
ステップS43では、送信禁止期間設定部15は、パケット検出部13で検出された返信パケットの種別(受信検出パケット又は衝突検出パケット)を判定し、受信検出パケットであるときはステップS44に進み、衝突検出パケットであるときはステップS45に進む。
【0094】
ステップS44では、送信禁止期間設定部15は、図5に示すステップS13と同様にして、次回の送信タイミングを予約すべく、送信禁止期間を設定して本ルーチンを終了し、受信待機状態へ移行する。
【0095】
また、ステップS45では、送信タイミング制御部18は、次回の自端末の送信タイミングを変更すべく、送信禁止期間を設定する。
【0096】
図23は、送信禁止期間を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、自端末がデータパケットを送信した後、そのデータパケットに対してすべて(又は一部)の周辺端末が返信パケット(衝突検出パケット)を送信している。
【0097】
具体的には、送信禁止期間設定部15は、自端末のデータパケットの送信タイミングから100msec後の自端末の次の送信予定タイミングを含む所定期間を、送信禁止期間として設定する。これにより、自端末の次の送信予定タイミングが前回と比べて変更されたことになる。そして、送信禁止期間が設定されると本ルーチンを終了し、受信待機状態へ移行する。
【0098】
図24は、「信号受信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。ここでは、ステップS51、S52、S53、S55は、図7に示すステップS21、S22、S23、S25と同じ処理である。そして、ステップS52でパケットの種別が返信パケットと判定されるとステップS54に進む。
【0099】
ステップS54では、送信禁止期間設定部15は、パケット検出部13で検出された返信パケットの種別(受信検出パケット又は衝突検出パケット)を判定し、受信検出パケットであるときはステップS56に進み、衝突検出パケットであるときはステップS57に進む。
【0100】
ステップS56では、送信禁止期間設定部15は、図7に示すステップS24と同様にして、隠れ端末の存在を考慮して送信禁止期間を設定して本ルーチンを終了し、受信待機状態へ移行する。
【0101】
また、ステップS57では、送信禁止期間設定部15は、他端末の送信タイミングが変更されることを予測して、送信禁止期間を解除する。ここでは、隠れ端末(周辺端末では検出されるが自端末では検出されない端末)のデータパケットの衝突が発生しているものとし、それを検出した周辺端末が返信パケット(衝突検出パケット)を送信している。
【0102】
図25は、自端末が返信パケット(衝突検出パケット)を受信した場合の送信禁止期間に関するタイミングチャートである。
【0103】
このとき、自端末と同じように衝突検出パケットを受信した周辺端末(パケットの衝突を起こした隠れ端末)は、次のデータパケットの送信タイミングを変更すると予測できる。そこで、送信禁止期間設定部15は、返信パケット(衝突検出パケット)を受信したタイミングから100msec後を基準時とし、その基準時から所定時間前までの時間を、送信禁止期間として設定するのを禁止する。または、送信禁止期間設定部15は、既に前記期間が送信禁止期間として設定されていた場合は、その設定を解除する。そして、送信禁止期間が解除されると本ルーチンを終了して、受信待機状態へ移行する。
【0104】
図26は、「返信パケット送信処理」の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【0105】
ステップS61では、図1に示す返信パケット生成部17は、パケット復調部14で復調されたパケットに基づいて、データパケットの受信に成功したか否かを判定し、成功したときはステップS62に進み、成功していないときはステップS64に進む。
【0106】
ステップS62では、返信パケット生成部17は、受信検出パケットを生成する。そして、送信タイミング制御部18は、返信パケット生成部17で生成された受信検出パケットを送信するように送信回路19を制御して、ステップS63に進む。これにより、受信検出パケットは、アンテナ20を介して、周辺端末に送信される。
【0107】
ステップS63では、送信禁止期間設定部15は、図9に示すステップS32と同様にして、他端末の次回送信タイミングで自端末が送信しないように、送信禁止期間を設定し、本ルーチンを終了する。
【0108】
一方、ステップS64では、返信パケット生成部17は、衝突検出パケットを生成する。送信タイミング制御部18は、返信パケット生成部17で生成された衝突検出パケットを送信するように送信回路19を制御して、ステップS65に進む。これにより、衝突検出パケットは、アンテナ20を介して、周辺端末に送信される。
【0109】
ステップS65では、送信禁止期間設定部15は、他端末の送信タイミングが変更されることを考慮して、送信禁止期間を解除し、本ルーチンを終了する。
【0110】
図27は、上記送信禁止期間を説明するためのタイミングチャートである。ここでは、自端末は同一タイミングで複数の他端末からの送信パケット(データパケット)を受信し、自端末が返信パケット(衝突検出パケット)を送信している。すなわち、周辺端末同士のデータが衝突している。このとき、各周辺端末は、自端末からの衝突検出パケットを検出すると、データパケットの送信タイミングを変更すると予測できる。
【0111】
そこで、送信禁止期間設定部15は、自端末の返信パケット(衝突検出パケット)の送信タイミングから100msec後を基準時とし、その基準時から所定時間前までの期間を、送信禁止期間として設定するのを禁止する。または、送信禁止期間設定部15は、既に前記期間が送信禁止期間として設定されていた場合は、その設定を解除する。そして、送信禁止期間が解除されると本ルーチンを終了して、受信待機状態へ移行する。
【0112】
以上のように、第2の実施形態に係る通信装置は、衝突検出パケットが自端末のデータパケットに対する返信であるときは、周辺端末との間で同一タイミングにおいてデータパケットの衝突が生じているので、自端末のデータパケットの次の送信予定タイミングを変更すべく、送信禁止期間を設定する。
【0113】
また、上記通信装置は、衝突検出パケットが自端末のデータパケットに対する返信でないときは、隠れ端末同士間でデータパケットの衝突が生じているが、当該隠れ端末がデータパケットの送信タイミングを変更すると考えられるので、送信禁止期間の設定を解除する。
【0114】
これにより、通信装置は、隠れ端末があるか否かにかかわらず、データパケットの衝突を抑制すると共に、送信タイミングを変更する又は変更を禁止することにより、スロットを効率よく利用して通信性能を向上させることができる。
【0115】
また、第2の実施の形態に係る通信装置は、上記の第1の実施の形態に係る通信装置と同様の原理で、「CSMA/CA方式の通信装置」のパケット到達率の劣化を抑制することができる。
【0116】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で設計上の変更をされたものにも適用可能であるのは勿論である。
【0117】
また、パケット検出部13、パケット復調部14、送信禁止期間設定部15、パケット生成部16、返信パケット生成部17、送信タイミング制御部18、判定部21、及び制御回路を、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Rean Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等で構成されたコンピュータのROMに記憶されたプログラムによって実現するようにしてもよい。このようなプログラムとしては、例えば、コンピュータを、他端末から送信されたデータパケットおよび返信パケットを受信する受信手段により受信されたデータパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれていた場合のみ、データパケットが受信手段により検出されたときに、所定の期間の後、他端末のデータパケットの検出結果を示す返信パケットを送信する返信パケット送信手段、返信パケットが受信手段により受信されたときに、受信された返信パケットの受信タイミングに基づいて、自端末のデータパケットの送信タイミング禁止期間を設定する送信禁止期間設定手段、及び送信禁止期間設定手段により設定された送信タイミング禁止期間以外のタイミングのときに、自端末のデータパケットを送信する送信手段として機能させるためのプログラムが考えられる。
【0118】
また、他の例としては、コンピュータを、他端末から送信されたデータパケットおよび返信パケットを受信する受信手段により受信されたデータパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれているか否かを判定する判定手段、判定手段によって受信手段により受信されたデータパケットに返信パケットを送信するための情報が含まれていると判定された場合のみ、データパケットが受信手段により検出されたときに、所定の期間の後、他端末のデータパケットの検出結果を示す返信パケットを送信する返信パケット送信手段、返信パケットが受信手段により受信されたときに、受信された返信パケットの受信タイミングに基づいて、自端末のデータパケットの送信タイミング禁止期間を設定する送信禁止期間設定手段、及び送信禁止期間設定手段により設定された送信タイミング禁止期間以外のタイミングのときに、自端末のデータパケットを送信する送信手段として機能させるためのプログラムが考えられる。
【0119】
また、上記ではMACプロトコル種別を表す情報として、”0”を従来のCSMA/CA方式のプロトコルを示す情報であり、”1”を本実施の形態のプロトコル(「CSMA/CA方式を改良した通信装置を更に改良した通信装置の通信プロトコル」)とした例について説明したが、この情報を識別する手段をMAC部内に持たせるようにしてもよい。この手段は、チップ化された半導体回路や論理回路を組合わせたもの、あるいはCPUソフトウェアとしてプログラミングされたもの、また、通信装置と接続されたコンピュータ内のソフトウェアとしてプログラミングされたもので実現できる。
【符号の説明】
【0120】
12 受信回路
13 パケット検出部
14 パケット復調部
15 送信禁止期間設定部
16 パケット生成部
17 返信パケット生成部
18 送信タイミング制御部
19 送信回路
21 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他端末から送信されたデータパケットおよび返信パケットを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された前記データパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれていた場合のみ、前記データパケットが前記受信手段により検出されたときに、所定の期間の後、前記他端末のデータパケットの検出結果を示す返信パケットを送信する返信パケット送信手段と、
前記返信パケットが前記受信手段により受信されたときに、受信された返信パケットの受信タイミングに基づいて、自端末のデータパケットの送信タイミング禁止期間を設定する送信禁止期間設定手段と、
前記送信禁止期間設定手段により設定された送信タイミング禁止期間以外のタイミングのときに、自端末のデータパケットを送信する送信手段と、
を備えた通信装置。
【請求項2】
前記受信手段により受信された前記データパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれているか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記返信パケット送信手段は、前記判定手段によって前記受信手段により受信された前記データパケットに返信パケットを送信するための情報が含まれていると判定された場合のみ、前記データパケットが前記受信手段により検出されたときに、所定の期間の後、前記他端末のデータパケットの検出結果を示す返信パケットを送信する請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記送信禁止期間設定手段は、前記受信手段により受信された返信パケットが自端末のデータパケットに対する返信でないときに、データパケットの送信タイミング禁止期間を設定する
請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記送信禁止期間設定手段は、前記受信手段により受信された返信パケットが自端末のデータパケットに対する返信であるときに、自端末のデータパケットの送信タイミングを決定し、前記送信タイミングを含まない期間を前記送信タイミング禁止期間として設定する
請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記受信手段は、前記返信パケットとして、データパケットが正常に受信されたことを示す受信検出パケット、又は、データパケットの衝突が検出されたことを示す衝突検出パケットを受信し、
前記送信禁止期間設定手段は、前記返信パケットが受信検出パケット又は衝突検出パケットであるか、に基づいて、送信タイミング禁止期間を設定する
請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項6】
前記送信禁止期間設定手段は、前記受信手段により受信された衝突検出パケットが、自端末のデータパケットに対する返信であるときに、自端末の次回のデータパケットの送信タイミングを変更するようにデータパケットの送信タイミング禁止期間を設定する
請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記送信禁止期間設定手段は、前記受信手段により受信された衝突検出パケットが、自端末のデータパケットに対する返信でないときに、送信タイミング禁止期間の設定を禁止し又は既に設定されている送信タイミング禁止期間の設定を解除する
請求項5に記載の通信装置。
【請求項8】
コンピュータを、
他端末から送信されたデータパケットおよび返信パケットを受信する受信手段により受信された前記データパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれていた場合のみ、前記データパケットが前記受信手段により検出されたときに、所定の期間の後、前記他端末のデータパケットの検出結果を示す返信パケットを送信する返信パケット送信手段、
前記返信パケットが前記受信手段により受信されたときに、受信された返信パケットの受信タイミングに基づいて、自端末のデータパケットの送信タイミング禁止期間を設定する送信禁止期間設定手段、及び
前記送信禁止期間設定手段により設定された送信タイミング禁止期間以外のタイミングのときに、自端末のデータパケットを送信する送信手段
として機能させるためのプログラム。
【請求項9】
コンピュータを、
他端末から送信されたデータパケットおよび返信パケットを受信する受信手段により受信された前記データパケットに、返信パケットを送信するための情報が含まれているか否かを判定する判定手段、
前記判定手段によって前記受信手段により受信された前記データパケットに返信パケットを送信するための情報が含まれていると判定された場合のみ、前記データパケットが前記受信手段により検出されたときに、所定の期間の後、前記他端末のデータパケットの検出結果を示す返信パケットを送信する返信パケット送信手段、
前記返信パケットが前記受信手段により受信されたときに、受信された返信パケットの受信タイミングに基づいて、自端末のデータパケットの送信タイミング禁止期間を設定する送信禁止期間設定手段、及び
前記送信禁止期間設定手段により設定された送信タイミング禁止期間以外のタイミングのときに、自端末のデータパケットを送信する送信手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−124773(P2011−124773A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280587(P2009−280587)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「車車間通信の実現に向けた周波数高度利用技術の研究開発」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】