説明

通信装置

【課題】操作者が器具を咥えながら喋った単語を正しい単語に変換して送信する通信装置を提供する。
【解決手段】通信装置の補償回路7において、単語変換部72は、A/D変換器6から受けたデジタル信号に基づいて単語を認識し、その認識した単語を判定部73へ出力する。また、単語変換部72は、単語が誤っていることを示す信号ICORを判定部73から受けると、内蔵している電子辞書721を用いて正しい単語の候補単語を抽出して判定部73へ出力する。判定部73は、単語変換部72から受けた単語をスピーカ2を介して潜水者に提示し、その提示した単語が正しい単語であることを示す信号CORを操作ボタン11から受けると、単語変換部72から受けた単語を正しいと判定してモデム8へ出力する。一方、判定部73は、信号CORを受けないとき、信号ICORを単語変換部72へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水中における通信に用いられる水中通信装置が知られている(特許文献1)。この水中通信装置は、通信装置本体と、マイク装置とを備える。通信装置本体は、潜水者の頭部に装備される器具に着脱可能に取り付けられ、送受信機能を有する。また、マイク装置は、潜水者がその口部に選択的に装備するマスクに取り付けられ、送信機能を有する。そして、マイク装置と通信装置本体との間は、ワイヤレス化されている。
【0003】
水中通信装置においては、潜水者が喋ると、マイク装置は、潜水者の音声信号を検出し、その検出した音声信号を磁気信号または電波信号によって通信装置本体へ送信する。そして、通信装置本体は、マイク装置からの磁気信号または電波信号を受信し、その受信した磁気信号または電波信号を送信する。これによって、通信装置本体は、マイク装置が検出した音声信号を送信する。
【0004】
また、従来、対象者が発した模倣音声信号と、模倣すべき音声信号とをスペクトル分析し、模倣音声信号の分析結果と、模倣すべき音声信号の分析結果とを比較し、その比較結果に応じて模倣音声信号を修正し、その修正された音声信号を対象者の聴覚器官に対して再生することが知られている(特許文献2)。
【0005】
そして、特許文献2においては、模倣音声信号は、模倣音声信号の各周波数における強度値が模倣すべき音声信号の各周波数における強度値に対応するように修正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−223124号公報
【特許文献2】特開2008−146094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1における水中通信装置においては、潜水者が喋った音声信号を修正することはできない。
【0008】
また、特許文献2に開示された音声信号の修正方法は、模倣音声信号の各周波数における強度値が模倣すべき音声信号の各周波数における強度値に対応するように修正する方法であるため、潜水者がマウスピースを咥えながら喋った単語を正しい単語に修正することはできない。つまり、潜水者がマウスピースを咥えながら喋ると、潜水者から発せられる単語は、正しい単語と異なる単語として聞こえるので、特許文献2に開示された音声信号の修正方法では、潜水者がマウスピースを咥えながら喋った単語を正しい単語に修正することはできない。
【0009】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、操作者が器具を咥えながら喋った単語を正しい単語に変換して送信する通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の実施の形態によれば、通信装置は、器具と、音声検出器と、信号変換器と、補償回路と、送信器とを備える。器具は、操作者の口に咥えられる。音声検出器は、器具に内蔵され、器具が咥えられた状態で操作者から発せられた音声を検出する。信号変換器は、音声検出器によって検出された音声を電気信号に変換する。補償回路は、信号変換器によって変換された電気信号に基づいて音声を構成する各単語を認識し、その認識した各単語を電子辞書を用いて正しい単語に変換して出力する。送信器は、補償回路から出力された正しい単語を送信する。電子辞書は、器具が咥えられた状態で操作者から発せられた単語を音声検出器によって検出した単語である原単語と、原単語に対応付けられ、かつ、原単語の正しい単語である正単語とからなる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の実施の形態による通信装置においては、電子辞書は、器具が咥えられた状態で操作者から発せられた単語を音声検出器によって検出した原単語と、原単語に対応付けられ、かつ、原単語の正しい単語である正単語とからなる。そして、補償回路は、器具が咥えられた状態で操作者から発せられた音声の電気信号に基づいて操作者が発した単語を認識し、その認識した単語を電子辞書を用いて正しい単語に変換して出力する。
【0012】
従って、操作者が器具を咥えながら喋った単語を正しい単語に変換して送信できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態による通信装置の概略図である。
【図2】図1に示す補償回路の構成図である。
【図3】図2に示す電子辞書の具体例を示す図である。
【図4】図1に示す通信装置の潜水者への装着状態を示す図である。
【図5】図1に示す通信装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態による他の通信装置の概略図である。
【図7】図6に示す補償回路の構成図である。
【図8】図6に示す通信装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態による通信装置の概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による通信装置100は、マウスピース1と、スピーカ2と、マイク3と、増幅・整形器4と、除去フィルタ5と、A/D変換器6と、補償回路7と、モデム8と、送信アンテナ9と、操作ボタン11とを備える。
【0016】
増幅・整形器4、除去フィルタ5、A/D変換器6、補償回路7、モデム8および送信アンテナ9は、通信機器10を構成する。
【0017】
マウスピース1は、潜水者の口に咥えられる。スピーカ2は、マウスピース1に内蔵されており、補償回路7から受けた電気信号を音声信号に変換して出力する。マイク3は、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋った音声を検出し、その検出した音声を電気信号に変換して増幅・整形器4へ出力する。
【0018】
増幅・整形器4は、マイク3から電気信号を受け、その受けた電気信号を増幅するとともに整形して除去フィルタ5へ出力する。
【0019】
除去フィルム5は、増幅・整形器4から受けた電気信号のうち、泡に起因する成分および潜水者の呼吸に起因する成分を除去する。そして、除去フィルタ5は、泡に起因する成分および潜水者の呼吸に起因する成分を除去した電気信号をA/D変換器6へ出力する。なお、除去フィルタ5は、泡に起因する成分および潜水者の呼吸に起因する成分のいずれか一方の成分のみを除去してもよい。
【0020】
A/D変換器6は、除去フィルタ5から受けた電気信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、その変換したデジタル信号を補償回路7へ出力する。
【0021】
補償回路7は、A/D変換器6から受けたデジタル信号に基づいて、各単語を認識する。そして、補償回路7は、その認識した単語が正しい単語であるか否かを判定する。
【0022】
補償回路7は、その認識した単語が正しい単語でないと判定したとき、正しい単語の候補である候補単語を後述する方法によって抽出し、その抽出した候補単語をスピーカ2へ出力する。そして、補償回路7は、スピーカ2へ出力した候補単語が正しい単語であることを示す信号CORを操作ボタン11から受けると、最後にスピーカ2へ出力した候補単語を示すデジタル信号をモデム8へ出力する。
【0023】
モデム8は、補償回路7から受けたデジタル信号を送信信号に変換し、その変換した送信信号を送信アンテナ9を介して送信する。
【0024】
操作ボタン11は、スピーカ2へ出力した候補単語が正しい単語であると潜水者が認識したことを示す信号を受け付けると、信号CORを生成して補償回路7へ出力する。
【0025】
図2は、図1に示す補償回路7の構成図である。図2を参照して、補償回路7は、バッファメモリ71と、単語変換部72と、判定部73とを含む。
【0026】
バッファメモリ71は、A/D変換器6からデジタル信号を受け、その受けたデジタル信号を一時的に保持する。そして、バッファメモリ71は、一定時間、デジタル信号を保持した後、その保持したデジタル信号を単語変換部72へ出力する。
【0027】
単語変換部72は、電子辞書721を内蔵している。単語変換部72は、バッファメモリ71から受けたデジタル信号に基づいて単語を認識する。そして、単語変換部72は、その認識した単語を判定部73へ出力する。
【0028】
また、単語変換部72は、単語が誤っていることを示す信号ICORを判定部73から受けると、その認識した単語を正しい単語へ変換するための候補単語を電子辞書721を用いて抽出する。そして、単語変換部72は、その抽出した候補単語を判定部73へ出力する。電子辞書721の詳細については、後述する。
【0029】
判定部73は、単語変換部72から単語を受けると、その受けた単語をスピーカ2へ出力する。そして、判定部73は、操作ボタン11から信号CORを受けたか否かを判定することによって単語変換部72から受けた単語が正しいか否かを判定する。
【0030】
判定部73は、単語変換部72から受けた単語が正しくないと判定したとき、信号ICORを生成して単語変換部72へ出力する。
【0031】
一方、判定部73は、単語変換部72から受けた単語が正しいと判定したとき、最後にスピーカ2へ出力した候補単語のデジタル信号をモデル8へ出力する。
【0032】
図3は、図2に示す電子辞書721の具体例を示す図である。図3を参照して、電子辞書721は、原単語と、正単語とを含む。原単語は、マウスピース1が咥えられた状態で潜水者が喋った単語をマイク3が検出した単語であり、正単語は、原単語に対応付けられ、かつ、原単語の正しい単語である。
【0033】
例えば、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ると、「とうめいど」は、「とうえいど」に聞こえる。また、潜水者がマウスピースを咥えた状態で喋ると、「マスク」は、「アスク」に聞こえ、「なみ(波)」は、「ない」に聞こえる。このように、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ると、「ま行」の単語は、誤って聞こえる。
【0034】
また、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ると、「ぷん(分)」は、「うん」に聞こえ、「パラオ」は、「あらお」に聞こえ、「サイパン」は、「さいあん」に聞こえる。このように、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ると、「ぱ行」の単語は、誤って聞こえる。
【0035】
更に、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ると、「ダイビング」は、「だいいんぐ」に聞こえ、「ダイバー」は、「だいあー」に聞こえ、「モルディブ」は、「おるでぃう」に聞こえる。このように、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ると、「ば行」の単語は、誤って聞こえる。
【0036】
マウスピースは、口を半開きしにした状態の高さと、口の幅に近い幅を有し、かつ、やや扁平な筒状体からなる。そして、マウスピースの奥行き、および長さは、歯までであり、残りは、口から突出しており、上下の歯によって噛まれることによって固定される。
【0037】
従って、口は、常時半開きの状態になるため、マウスピースを加えた潜水者は、例えば、唇を開いたり閉じたりすることによるぱ行、ば行、およびま行の音を発声することが困難である。
【0038】
そこで、この発明の実施の形態においては、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ると、誤り易い「ま行」、「ぱ行」および「ば行」の単語について、原単語と正単語とを対応付けた電子辞書721を作製しておき、補償回路7は、「ま行」、「ぱ行」および「ば行」の単語が入力されると、電子辞書721を用いて「ま行」、「ぱ行」および「ば行」の単語を正しい単語に変換する。
【0039】
従って、電子辞書721は、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ると、誤り易い「ま行」、「ぱ行」および「ば行」の単語について、原単語と正単語とを対応付けたものである。
【0040】
また、電子辞書721の1番目から18番目までの単語は、潜水用語であり、19番目から28番目までの単語は、地名であり、29番目から60番目までの単語は、海に生息する生物の名前である。従って、電子辞書721は、潜水作業において必要となる単語について、原単語と正単語とを対応付けたものである。つまり、電子辞書721は、水中における連絡に用いられる単語について、原単語と正単語とを対応付けたものである。
【0041】
図4は、図1に示す通信装置100の潜水者への装着状態を示す図である。図4を参照して、潜水者DIVは、エアボンベ20を背負い、レギュレータ30を口に咥えている。また、潜水者DIVは、マスク40およびシュノーケル50を装着しており、ダイビングコンピュータ50を手首に装着している。
【0042】
マウスピース1は、レギュレータ30に内蔵されており、潜水者DIVの口に咥えられている。そして、スピーカ2およびマイク3は、マウスピース1内に内蔵されている。
【0043】
レギュレータ30は、エアホース21によってエアボンベ20に接続されており、レギュレータ30内のマウスピース1に内蔵されたスピーカ2およびマイク3は、ケーブル22によって通信機器10に接続されている。
【0044】
また、残圧メータ70は、エアホース23によってエアボンベ20に接続されており、コンパス80が残圧メータ70の近傍に配置されている。
【0045】
更に、操作ボタン11は、ケーブル24によって通信機器10に接続されている。
【0046】
このように、図1に示す通信装置100は、潜水者DIVが潜水に用いる潜水具に装着されている。
【0047】
図5は、図1に示す通信装置100の動作を説明するためのフローチャートである。図5を参照して、通信装置100の動作が開始されると、マイク3は、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋った音声を検出し(ステップS1)、その検出した音声を電気信号に変換する(ステップS2)。
【0048】
そして、マイク3は、電気信号を増幅・整形器4へ出力し、増幅・整形器4は、電気信号を増幅するとともに整形して除去フィルタ5へ出力する。
【0049】
除去フィルタ5は、増幅・整形器4から受けた電気信号に基づいて、泡に起因する成分および潜水者の呼吸に起因する成分を除去し(ステップS3)、その泡に起因する成分および潜水者の呼吸に起因する成分を除去した電気信号をA/D変換器6へ出力する。
【0050】
A/D変換器6は、電気信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、その変換したデジタル信号を補償回路7へ出力する。
【0051】
補償回路7のバッファメモリ71は、A/D変換器6から受けたデジタル信号を一時的に保持し、その保持したデジタル信号を単語変換部72へ出力する。単語変換部72は、バッファメモリ71から受けたデジタル信号に基づいて、単語を認識し(ステップS4)、その認識した単語を判定部73へ出力する。
【0052】
判定部73は、単語変換部72から受けた単語のデジタル信号をスピーカ2へ出力し、スピーカ2は、判定部73からのデジタル信号を音声に変換して出力する。潜水者は、スピーカ2から出力された音声を聞き、自分が意図した単語が聞こえれば、操作ボタン11を押す。一方、潜水者は、スピーカ2から出力された音声を聞き、自分が意図した単語が聞こえなければ、操作ボタン11を押さない。
【0053】
操作ボタン11は、潜水者によって押されると、信号CORを生成して補償回路7の判定部73へ出力し、潜水者によって押されないと、補償回路7の判定部73へ信号を出力しない。
【0054】
従って、判定部73は、単語変換部72から受けた単語のデジタル信号をスピーカ2へ出力した後、操作ボタン11から信号CORを受けたとき、単語変換部72から受けた単語を正しいと判定する。
【0055】
一方、判定部73は、単語変換部72から受けた単語のデジタル信号をスピーカ2へ出力した後、操作ボタン11から信号CORを受けないとき、単語変換部72から受けた単語が誤っていると判定する。この場合、判定部73は、単語変換部72から受けた単語のデジタル信号をスピーカ2へ出力した後、例えば、1秒が経過しても操作ボタン11から信号CORを受けないとき、単語変換部72から受けた単語が誤っていると判定する。
【0056】
このように、判定部73は、単語変換部72から単語を受けると、操作ボタン11から信号CORを受けたか否かを判定することによって、単語変換部72から受けた単語が正しいか否かを判定する(ステップS5)。
【0057】
ステップS5において、単語変換部72から受けた単語が正しくないと判定されたとき、判定部73は、信号ICORを生成して単語変換部72へ出力する。
【0058】
単語変換部72は、信号ICORに応じて、電子辞書721を用いて正しい単語の候補単語を抽出し(ステップS6)、その抽出した候補単語を判定部73へ出力する。
【0059】
判定部73は、単語変換部72から受けた候補単語をスピーカ2を介して潜水者に提示する(ステップS7)。
【0060】
その後、一連の動作は、ステップS5へ戻り、ステップS5にいて、単語が正しいと判定されるまで、上述したステップS5〜ステップS7が繰り返し実行される。
【0061】
そして、ステップS5において、単語が正しいと判定されると、判定部73は、最終的にスピーカ2へ出力した候補単語をモデム8へ出力し、モデル8は、判定部73から受けた単語を送信信号に変換し、その変換した送信信号を送信アンテナ9を介して送信する(ステップS8)。
【0062】
これによって、通信装置100における動作が終了する。
【0063】
このように、通信装置100においては、補償回路7は、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ったときに誤り易い単語を電子辞書721を用いて正しい単語に変換して送信する。そして、電子辞書721は、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ったときの誤り易い単語である原単語と、その原単語に対応する正しい単語である正単語とを対応付けて保持している。
【0064】
従って、潜水者がマウスピース1を咥えながら喋った単語を正しい単語に変換して送信できる。
【0065】
潜水者は、通信装置100を図4に示すように潜水具に装着して潜水し、通信装置100を用いてマウスピース1を咥えながら正しい単語を発する。その結果、潜水者は、海中で他の潜水者とスムーズにコミュニケーションできる。
【0066】
図6は、この発明の実施の形態による他の通信装置の概略図である。この発明の実施の形態による通信装置は、図6に示す通信装置100Aであってもよい。
【0067】
図6を参照して、通信装置100Aは、図1に示す通信装置100の補償回路7を補償回路7Aに代え、操作ボタン11を操作ボタン11Aに代えたものであり、その他の部分は、通信装置100と同じである。
【0068】
補償回路7Aは、訂正依頼信号CRM_M,CRM_P,CRM_Bのいずれかを操作ボタン11Aから受ける。そして、補償回路7Aは、訂正依頼信号CRM_Mを受けると、電子辞書721を用いて「ま行」の単語を正しい単語の候補である候補単語に変換し、その変換した候補単語をスピーカ2を介して潜水者に提示する。また、補償回路7Aは、訂正依頼信号CRM_Pを受けると、電子辞書721を用いて「ぱ行」の単語を正しい単語の候補である候補単語に変換し、その変換した候補単語をスピーカ2を介して潜水者に提示する。更に、補償回路7Aは、訂正依頼信号CRM_Bを受けると、電子辞書721を用いて「ば行」の単語を正しい単語の候補である候補単語に変換し、その変換した候補単語をスピーカ2を介して潜水者に提示する。
【0069】
補償回路7Aは、その他、補償回路7と同じ機能を果たす。
【0070】
操作ボタン11Aは、4個のボタンA,M,P,Bを有する。そして、操作ボタン11Aは、ボタンAが潜水者によって押されると、信号CORを生成して補償回路7Aへ出力する。また、操作ボタン11Aは、ボタンMが潜水者によって押されると、訂正依頼信号CRM_Mを生成して補償回路7Aへ出力する。更に、操作ボタン11Aは、ボタンPが潜水者によって押されると、訂正依頼信号CRM_Pを生成して補償回路7Aへ出力する。更に、操作ボタン11Aは、ボタンBが潜水者によって押されると、訂正依頼信号CRM_Bを生成して補償回路7Aへ出力する。
【0071】
図7は、図6に示す補償回路7Aの構成図である。図7を参照して、補償回路7Aは、図2に示す補償回路7の単語変換部72を単語変換部72Aに代えたものであり、その他の部分は、補償回路7と同じである。
【0072】
単語変換部72Aは、訂正依頼信号CRM_M,CRM_P,CRM_Bのいずれかを操作ボタン11Aから受ける。そして、単語変換部72Aは、訂正依頼信号CRM_Mを受けると、電子辞書721を用いて「ま行」の単語を正しい単語の候補である候補単語に変換し、その変換した候補単語を判定部73へ出力する。また、単語変換部72Aは、訂正依頼信号CRM_Pを受けると、電子辞書721を用いて「ぱ行」の単語を正しい単語の候補である候補単語に変換し、その変換した候補単語を判定部73へ出力する。更に、単語変換部72Aは、訂正依頼信号CRM_Bを受けると、電子辞書721を用いて「ば行」の単語を正しい単語の候補である候補単語に変換し、その変換した候補単語を判定部73へ出力する。
【0073】
通信装置100Aも図4に示すように潜水者の潜水具に装着される。そして、通信装置100Aを使用する潜水者は、自己が「ま行」の単語をマウスピース1を咥えながら喋るとき、操作ボタン11AのボタンMを押し、自己が「ぱ行」の単語をマウスピース1を咥えながら喋るとき、操作ボタン11AのボタンPを押し、自己が「ば行」の単語をマウスピース1を咥えながら喋るとき、操作ボタン11AのボタンBを押す。
【0074】
図8は、図6に示す通信装置100Aの動作を説明するためのフローチャートである。図8に示すフローチャートは、図5に示すフローチャートのステップS6,S7をステップS11〜ステップS16に代えたものであり、その他は、図5に示すフローチャートと同じである。
【0075】
図8を参照して、通信装置100Aにおける動作が開始されると、上述したステップS1〜ステップS5が順次実行される。
【0076】
そして、ステップS5において、単語が正しくないと判定されると、判定部73は、信号ICORを生成して単語変換部72Aへ出力する。単語変換部72Aは、信号ICORを受けるとともに、訂正依頼信号CRM_Mを操作ボタン11Aから受けたか否かを判定することによって、「ま行」の単語の訂正依頼が有ったか否かを判定する(ステップS11)。
【0077】
ステップS11において、「ま行」の単語の訂正依頼が有ったと判定されたとき、単語変換部72Aは、電子辞書721を用いて「ま行」の単語を正しい単語の候補である候補単語に変換する(ステップS12)。
【0078】
一方、ステップS11において、「ま行」の単語の訂正依頼が無かったと判定されたとき、単語変換部72Aは、訂正依頼信号CRM_Pを操作ボタン11Aから受けたか否かを判定することによって、「ぱ行」の単語の訂正依頼が有ったか否かを判定する(ステップS13)。
【0079】
ステップS13において、「ぱ行」の単語の訂正依頼が有ったと判定されたとき、単語変換部72Aは、電子辞書721を用いて「ぱ行」の単語を正しい単語の候補である候補単語に変換する(ステップS14)。
【0080】
一方、ステップS13において、「ぱ行」の単語の訂正依頼が無かったと判定されたとき、単語変換部72Aは、電子辞書721を用いて「ば行」の単語を正しい単語の候補である候補単語に変換する(ステップS15)。
【0081】
そして、ステップS12,S14,S15のいずれかの後、単語変換部72Aは、ステップS12,S14,S15のいずれかにおいて変換された候補単語を判定部73へ出力し、判定部73は、単語変換部72Aから受けた候補単語をスピーカ2を介して潜水者に提示する(ステップS16)。
【0082】
その後、一連の動作は、ステップS5へ戻り、ステップS5において、単語が正しいと判定されるまで、上述したステップS5,S11〜S16が繰り返し実行される。
【0083】
そして、ステップS5において、単語が正しいと判定されると、上述したステップS8が実行され、通信装置100Aの動作が終了する。
【0084】
このように、通信装置100Aにおいては、潜水者がマウスピース1を咥えながら「ま行」の単語を喋ろうとすると、補償回路7Aは、操作ボタン11Aからの訂正依頼信号CRM_Mに応じて「ま行」の単語を電子辞書721を用いて正しい単語へ変換し、潜水者がマウスピース1を咥えながら「ぱ行」の単語を喋ろうとすると、補償回路7Aは、操作ボタン11Aからの訂正依頼信号CRM_Pに応じて「ぱ行」の単語を電子辞書721を用いて正しい単語へ変換し、潜水者がマウスピース1を咥えながら「ば行」の単語を喋ろうとすると、補償回路7Aは、操作ボタン11Aからの訂正依頼信号CRM_Bに応じて「ば行」の単語を電子辞書721を用いて正しい単語へ変換する。
【0085】
この場合、単語変換部72Aは、電子辞書721を用いて各単語を正しい単語の候補単語に変換するとき、「ま行」の単語、または「ぱ行」の単語、または「ば行」の単語のみを検索すればよい。従って、候補単語に迅速に変換できる。
【0086】
上記においては、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ったときに誤り易い単語として「ま行」の単語、「ぱ行」の単語、および「ば行」の単語を示したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ったときに誤り易い単語は、「ま行」の単語、「ぱ行」の単語、および「ば行」の単語以外の単語であってもよい。
【0087】
また、上記においては、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ったときに誤り易い単語として日本語を示したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋ったときに誤り易い単語は、日本語以外の単語であってもよい。
【0088】
更に、上記においては、スピーカ2およびマイク3は、マウスピース1に内蔵されると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、スピーカ2およびマイク3は、潜水者がマウスピース1を咥えた状態で喋った音声を検出し、または潜水者が音声を聞き取れる位置であれば、どこに配置されていてもよい。
【0089】
更に、上記においては、通信装置は、潜水具に装着され、潜水者が喋った単語を正しい単語に変換して送信すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、通信装置は、鉱山の採掘者が身に付ける器具に装着され、採掘者がマスクをしたまま喋った単語を正しい単語に変換して送信するようにしてもよい。
【0090】
そして、この発明の実施の形態による通信装置は、一般的には、操作者が器具(マウスピース1およびマスク等)を咥えた状態で喋ったときに誤り易い原単語と、原単語に対応付けられ、かつ、原単語の正しい単語である正単語とからなる電子辞書と、入力された単語が誤っているとき、単語が正しいと判定されるまで、電子辞書を用いて正しい単語の候補単語を潜水者に提示する補償回路とを備えていればよい。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0092】
この発明は、通信装置に適用される。
【符号の説明】
【0093】
1 マウスピース、2 スピーカ、3 マイク、4 増幅・整形器、5 除去フィルタ、6 A/D変換器、7,7A 補償回路、8 モデム、9 送信アンテナ、10 通信機器、11,11A 操作ボタン、20 エアボンベ、21,23 エアホース、22,24 ケーブル、30 レギュレータ、40 マスク、50 シュノーケル、60 ダイビングコンピュータ、70 残圧メータ、80 コンパス、71 バッファメモリ、72,72A 単語変換部、73 判定部、100,100A 通信装置、721 電子辞書。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者の口に咥えられる器具と、
前記器具に内蔵され、前記器具が咥えられた状態で前記操作者から発せられた音声を検出する音声検出器と、
前記音声検出器によって検出された音声を電気信号に変換する信号変換器と、
前記信号変換器によって変換された電気信号に基づいて前記音声を構成する各単語を認識し、その認識した各単語を電子辞書を用いて正しい単語に変換して出力する補償回路と、
前記補償回路から出力された正しい単語を送信する送信器とを備え、
前記電子辞書は、前記器具が咥えられた状態で前記操作者から発せられた単語を前記音声検出器によって検出した単語である原単語と、前記原単語に対応付けられ、かつ、前記原単語の正しい単語である正単語とからなる、通信装置。
【請求項2】
前記補償回路は、前記認識した各単語が誤っているとき、前記各単語が前記正しい単語に変換されるまで前記電子辞書を用いて前記正しい単語の候補である候補単語を提示し、前記各単語が正しいと判定されると、最終的に提示した候補単語を前記正しい単語として出力する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記原単語および前記正単語は、ま行、ぱ行およびば行の単語からなる、請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記原単語および前記正単語は、水中における連絡に用いられる単語からなる、請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記ま行の単語を前記正しい単語に補正することを指示するための第1の指示信号を受け付ける第1のボタンと、
前記ぱ行の単語を前記正しい単語に補正することを指示するための第2の指示信号を受け付ける第2のボタンと、
前記ば行の単語を前記正しい単語に補正することを指示するための第3の指示信号を受け付ける第3のボタンとを更に備え、
前記補償回路は、前記第1の指示信号を受けると、前記ま行の単語を前記電子辞書を用いて前記正しい単語に変換し、前記第2の指示信号を受けると、前記ぱ行の単語を前記電子辞書を用いて前記正しい単語に変換し、前記第3の指示信号を受けると、前記ば行の単語を前記電子辞書を用いて前記正しい単語に変換する、請求項3または請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記信号変換器によって変換された電気信号から泡に起因する成分を除去する除去フィルタを更に備え、
前記補償回路は、前記除去フィルタによって前記泡に起因する成分が除去された電気信号に基づいて、前記音声を構成する各単語を認識し、その認識した各単語を電子辞書を用いて正しい単語に変換して出力する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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