説明

通気性布帛およびその製造方法

【課題】布帛を伸長させた場合においても、通気度が大きく変化しない通気性布帛およびその製造方法を提供する。
【解決手段】繊維布帛の少なくとも片面に凹凸のある樹脂膜を有し、前記凹凸のある樹脂膜の凸部に貫通孔を有する通気性布帛。高低差が15μm以上である凹凸を有する離型性シートに樹脂溶液を塗布した後、乾燥し、凸部に貫通孔を有する凹凸のある樹脂膜を形成し、次に、接着剤を用い樹脂膜と繊維布帛と貼り合わせる工程を有するものであって、接着剤は、点状、線状又は格子状に用いられている通気性布帛の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通気性を有する繊維布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通気性布帛として、通気性を有していながら防風性を有する布帛が知られている。このような通気性布帛は、繊維布帛の糸の密度を上げ、風を通りにくくすることにより通気性を有しつつ防風性が付与されている。このような高密度の織物、編物は防風性を有しているために、冷たい風が衣服内に侵入することを防ぎ保温性を発揮し、かつ、通気性も有するため、衣服内の蒸れを抑制するため冬物や春秋物のコート、ジャンパーなどの一般衣服やウインドブレーカーなどの運動用衣服にも用いられている。(特許文献1)
【0003】
また、このような通気性布帛は、繊維と繊維の間の隙間が小さいため、羽毛などが飛び出しにくい性能を利用して、羽毛などの中綿を用いるダウンジャケットや羽毛布団などのダウンパックや表地、裏地、側地などに使用されている。(特許文献2)
また、繊維布帛の片面に部分的に樹脂膜を付与し、通気性と防風性を付与する布帛も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−57219
【特許文献2】特開2005−48298
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの布帛を衣服や布団などに用いた場合、特に衣服に用いて着用した場合には、肘部、臀部、脇部、膝部など数十%伸長されることがあり、伸長しない状態にて優れた防風性を有しているものであっても、伸長されたときに、防風性が著しく低下する問題があった。
【0006】
また、ダウンジャケットなどに用いた場合、特にダウンパックが表地や裏地と接続されている場合やダウンパックを用いず、裏地と表地に間にダウンなどの中綿が直接充填されている場合などでは、伸長時に伸長された部分からダウンなどが飛び出すおそれがあった。
【0007】
したがって、本発明では、上記の課題を解決し、布帛を伸長させた場合においても、通気度が大きく変化しない通気性布帛およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる通気性布帛は以下の構成を有する。
(1)本発明の通気性布帛は、繊維布帛の少なくとも片面に凹凸のある樹脂膜を有し、前記凹凸のある樹脂膜の凸部に貫通孔を有する。
(2)前記貫通孔の大きさが1〜300μmである前記(1)記載の通気性布帛。
【0009】
(3)30%伸長させたときの通気度の増加が未伸長時の3倍以下である前記(1)または(2)に記載の通気性布帛。
(4)洗濯20回後において、30%伸長させたときの通気度の増加が未伸長時の3倍以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の通気性布帛。
【0010】
(5)高低差が15μm以上である凹凸を有する離型性シートに樹脂溶液を塗布した後、乾燥し、凸部に貫通孔を有する凹凸のある樹脂膜を形成し、次に、接着剤を用い樹脂膜と繊維布帛と貼り合わせる工程を有するものであって、接着剤は、点状、線状又は格子状に用いられている通気性布帛の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる通気性布帛は、伸長時においても通気度の増加を抑制するため、伸長時においても優れた防風性を有し、また、羽毛等の中綿を用いる繊維製品に用いた場合においても羽毛などの飛び出しを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る通気性布帛について説明をおこなう。
【0013】
(実施形態)
本発明の通気性布帛は、繊維布帛の少なくとも片面に凹凸のある樹脂膜(以下、樹脂膜ということもある。)を有し、前記凹凸のある樹脂膜の凸部に貫通孔を有する。
【0014】
本発明の繊維布帛とは、その素材としては、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、アクリル、レーヨン、アセテート、ポリ乳酸、大豆蛋白、絹、羊毛、綿、麻などの化学繊維、天然繊維等いかなるものからなるものであってもよく、これらの繊維の混繊、混紡、交織、交編等なされているものであってもよい。
【0015】
また、繊維布帛の形態は、織物、編物、不織布等いかなる形態を有するものであってもよい。
また、繊維布帛は、染色加工、捺染加工、撥水加工、制電加工、吸水加工、SR加工、抗菌防臭加工、制菌加工、消臭加工、紫外線遮蔽加工、防炎加工、カレンダー加工などを施してもよい。
【0016】
伸び率の観点からは、ポリウレタン繊維やポリトリメチレンテレフタレートなどの伸縮性の素材を用いた繊維布帛やかさ高加工などの伸縮性を付与することができる加工がなされた加工糸を用いた織物、編物などが好ましい。また、これらのものを組み合わせたものであってもよい。
【0017】
繊維布帛は、タテ方向またはヨコ方向の少なくともいずれか一方の伸び率は30%以上有するとよい。より好ましくは50%がよい。伸び率の上限は特にないが、本発明の繊維布帛を用いて製造される繊維製品の特性に応じ決定すればよい。
この場合の伸び率はJIS L1096 伸縮織物及び編物の伸縮性 伸び率 A法(定速伸長法)で測定したものをいう。
【0018】
本発明の凹凸のある樹脂膜の素材としては、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、塩化ビニルなどがあげられる。特に、伸縮性を有するポリウレタンが好ましい。また、ウレタン樹脂は透湿性を有しているものであっても、有していないものであってもいずれでも使用することができる。
【0019】
凹凸のある樹脂膜とは、樹脂膜の厚みが均一なものではなく凹凸があり、凹凸の高低差は5μm以上、より好ましくは10μm〜100μmが好ましい。5μm未満では、通気性布帛を伸長させたときの通気度の増加を抑制できなくなるおそれがある。また、100μm超では、凹凸のバランスにもよるが、得られる通気性布帛の風合いが硬くなるおそれがある。
【0020】
また、凹凸のある樹脂膜の凹部、つまり樹脂膜の薄い部分の膜の厚みは、1μm〜30μmがよい。1μm未満では、伸長時の通気度の増加を抑制できなくなるおそれがある。30μmを超えると風合いが硬くなるおそれがある。
また、凹凸のある樹脂膜の凸部、つまり樹脂膜の厚い部分の膜の厚みは、10〜100μmがよい。10μm未満であると凸部に貫通孔が形成されないおそれがある。100μmを超えると、凹凸のバランスにもよるが、得られる通気性布帛の風合いが硬くなるおそれがある。
【0021】
本発明の前記凹凸のある樹脂膜の凸部には貫通孔を有する。一般的に繊維布帛に樹脂膜を付与し、孔を設けることにより通気性を付与する場合には、多数の孔が連通した多孔質の樹脂膜や均一な厚みの膜に針などのより貫通孔を開ける方法や凹凸のある樹脂膜の場合には凹部に孔を設けるものが考えられるが、本発明では樹脂膜の凸部に貫通孔を有する。なお、凹凸を有する樹脂膜の全ての凸部に貫通孔を有している必要はない。1mmあたり1〜50個の貫通孔を有するとよい。
【0022】
本発明では、凸部に貫通孔を有することにより、通気性布帛を伸長させたとき、また、洗濯後に通気性布帛を伸長させたときの通気度の増加を抑制することができる。
凸部は、膜の厚みが厚くなっており、そこに貫通孔が形成された場合、貫通孔の周りの樹脂の厚みが厚くなっている。
このような構成とすることにより、通気性を有し、かつ、伸長時、貫通孔は回りに存在する樹脂により引き伸ばされることが抑制され、凹部の薄い樹脂膜の方が引き伸ばされることで、通気度の増加を抑制していると考えている。
また、洗濯時においても貫通孔の周りの樹脂が磨耗による貫通孔の拡大を抑制し、洗濯処理後においても伸長時の通気度の増加を抑制していると考えている。
【0023】
また、貫通孔の周りにある凸部および貫通孔のない凸部は、樹脂が充填されているものであっても、また、空洞であってもよい。
【0024】
また、本発明では前記貫通孔の大きさが1〜300μmであるとよい。300μmを超えると防風性や羽毛などの飛び出しを抑制する効果が低下するおそれがあり、1μm未満では、十分な通気性が得られないおそれがある。
【0025】
また、本発明の通気性布帛は、30%伸長させたときの通気度の増加が未伸長時の3倍以下であるとよい。
30%伸長させたときの通気度の増加が未伸長時の3倍以下であれば、衣服として繊維布帛を用いた場合に、実着用時に衣服一部が伸長されていたとしても防風性を維持し、防寒性が大きく低下することを防ぐ。
より好ましくは50%伸長させたときの通気度の増加が未伸長時の3倍以下であるとよい。
【0026】
通気度は、未伸長時、伸長時とも、5cm/cm・s以下、より好ましくは2cm/cm・s以下がよい。
5cm/cm・sを超えると十分な防風性やダウンなどの飛び出し防止性が十分ではないおそれがある。
【0027】
なお、30%伸長させたときの通気度の測定は、通気性布帛のタテ方向またはヨコ方向のいずれか一方を伸長前の長さから30%引伸ばし、通気度を測定する。
通気度の測定は、JIS L1096A法(フラジール形法)に準じて測定する。
【0028】
洗濯20回後においても、30%伸長させたときの通気度の増加が未伸長時の3倍以下であるとよい。より好ましくは50%伸長させたときの通気度の増加が未伸長時の3倍以下であるとよい。
なお、洗濯方法はJIS L0217 103法に準じた方法で行ったものである。
【0029】
また、本発明の通気性布帛は、タテ方向またはヨコ方向の少なくともいずれか一方の伸び率は30%以上有するとよい。より好ましくは50%がよい。伸び率の上限は特にないが、本発明の繊維布帛を用いて製造される繊維製品の特性に応じ決定すればよい。
この場合の伸び率はJIS L1096 伸縮織物及び編物の伸縮性 伸び率 A法(定速伸長法)で測定したものをいう。
【0030】
本発明の通気性布帛は、繊維布帛の少なくとも片面に凹凸のある樹脂膜を有するものであるが、繊維布帛の片面に凹凸のある樹脂膜が接着剤により貼り合わされたものや繊維布帛に直接片面に凹凸のある樹脂膜が貼り合わされたものが挙げられる。
【0031】
性能の安定性の観点からは接着剤によって貼り合せたものが好ましく、繊維布帛と凹凸のある樹脂膜は、点状、線状、格子状等に用いられた接着剤によって、接着されているものが通気度を出す観点より好ましい。接着剤が繊維布帛と凹凸のある樹脂膜の全面に隙間無く覆うように用いられると、貫通孔が接着剤で埋まってしまい、通気度が大きく低下するおそれがある。より高い通気性を付与するとの観点からは点状に接着剤を用いるとよい。
【0032】
以上のような本発明の構成を有することにより、樹脂膜を付与された布帛が伸長された場合にも、通気度が大きく低下することを防ぎ、また、洗濯処理後においてもこれらの性質の低下を防ぐことができる。
【0033】
次に本発明の好ましい製造方法について説明する。なお、本発明の通気性布帛の製造方法は以下のものに限定されるものではない。
本発明の通気性布帛の製造方法は、高低差が15μm以上である凹凸を有する離型性シートに樹脂溶液を塗布した後、乾燥し、凸部に貫通孔を有する凹凸のある樹脂膜を形成し、次に、接着剤を用い樹脂膜と繊維布帛と貼り合わせる工程を有するものであって、接着剤は、点状、線状又は格子状に用いられている。
【0034】
本発明の高低差が15μm以上である凹凸を有する離型性シートとは、例えば、フッ素系樹脂やシリコーン系樹脂などにより処理された離型性の繊維布帛(織物、編物、不織布等)、シリコーン樹脂やポリプロピレン樹脂などを積層した離型紙、また、離型性を有するポリエステル製やポリプロピレン製の樹脂フィルムなどが挙げられる。安定した凹凸を形成する観点からは高低差が15μm以上である凹凸を有する離型紙が好ましい。
【0035】
離型性シートの凹凸の高低差が、15μm未満では凸部に貫通孔を有する樹脂膜が得られないおそれがある。また、凸部に貫通孔を有する樹脂膜を形成する観点からは凹凸の高低差は25μm以上がより好ましく、また、上限は100μm以下が好ましい。
【0036】
離型性シートに樹脂溶液を塗布する。離型性シートへ樹脂溶液を塗布する方法としては、ナイフコータ、ナイフオーバーロールコータ、パイプコータ、コンマコータ、リバースコータ、グラビアコータ等を用いて塗布することができる。
【0037】
樹脂溶液としては、前記のポリウレタン等の樹脂を溶媒で希釈したものを用いる。溶媒としては、水、ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン(TOL)、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルサルフォキシド(DMSO)、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブチルアルコール(IBA)などの有機溶剤を用いることができる。
樹脂の溶媒による希釈は、樹脂溶液中の樹脂濃度が5〜20質量%に希釈するとよい。
樹脂濃度が20質量%を上まると、樹脂膜の凸部に貫通孔が形成されないおそれがある。
また、樹脂濃度が5%を下回ると生産性が大きく低下したり、凹部においても貫通孔が発生するおそれがある。
【0038】
樹脂溶液には、架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、エチレンイミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤等を挙げることができる。
【0039】
樹脂溶液に添加する架橋剤の添加量は、前記樹脂100部に対し0〜10質量部であるとよい。架橋剤の添加量が10質量部を超えると、風合が硬くなる可能性がある。
【0040】
また、樹脂溶液中に着色のための顔料、吸湿性などを付与するためのシルクパウダー、ゼラチンパウダーや卵殻膜パウダーなどの有機粒子や透湿性や防水性向上のための酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機粒子、分散染料による樹脂膜の汚染対策のための多孔質状のシリカなどの多孔性粒子、抗菌性付与のための銀ゼオライトやピリジン系などの抗菌剤をはじめ、消臭剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0041】
粒子状のものを添加する場合には、凹凸を有する樹脂膜の凹部の膜厚みよりも小さな粒子径、若しくは、鱗片状の粒子を用いた場合は凹凸を有する樹脂膜の凹部の膜厚みよりも薄い粒子を用いると、伸長時や洗濯後の通気度の増加を抑制するという本発明の効果に対する悪影響を抑制するとの観点より好ましい。
【0042】
離型紙上に樹脂溶液を塗布した後、乾燥をおこない樹脂膜を製膜する。乾燥条件は、60〜130℃にて、10〜300秒程度行えばよい。
乾燥後、架橋剤を添加したものなど、必要に応じ130〜180℃にて5秒〜180秒熱処理をおこなってもよい。
上記の方法により、凸部に貫通孔を有する凹凸のある樹脂膜を形成することができる。また、後の工程中においても一部、未貫通の孔が貫通し貫通孔が形成される。
なお、樹脂膜の凹凸は、離型紙と接している面に凹凸があり、離型紙と接していない面は、接着性の観点からは貫通孔の孔の部分を除き平坦なものが好ましい。
【0043】
次に、接着剤を用い樹脂膜と繊維布帛と貼り合わせる。繊維布帛は、前記のものを用いることができる。
接着剤は、樹脂膜上もしくは、繊維布帛上に付与すればよいが、接着強度の観点からは、離型シートの上に形成された状態の樹脂膜上に付与するとよい。
【0044】
接着剤は、樹脂膜上もしくは、繊維布帛上に点状、線状又は格子状に用いられる。樹脂膜上もしくは、繊維布帛上の全面に接着剤を付与すると、樹脂膜に形成される貫通孔が樹脂で埋められたり、形成されなかったりするおそれがあるため好ましくない。
【0045】
接着剤は、グラビアコータ、スクリーン、スプレーなどを用い、樹脂膜上もしくは、繊維布帛上に付与することができる。グラビアコータが接着性の観点より好ましく用いられる。
【0046】
接着剤としては、ウレタン系、エポキシ系、メラミン系、ナイロン系などの接着剤を用いることができる。また、接着剤は、1液型、2液型のいずれであってもよく、また、湿気硬化型などを含むホットメルトタイプのウレタン樹脂であってもよい。好ましくはウレタン系の接着剤がよい。
【0047】
これらの接着剤は、溶媒に溶解させたものや過熱し溶融させたもの用いる。
また、接着剤には、架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤、エチレンイミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤等を挙げることができる。
その他、触媒や酸化防止剤、顔料等も接着剤に添加してもよい。
【0048】
接着剤を凹凸のある樹脂膜上もしくは、繊維布帛上に付与した後、接着剤の乾燥後、または、乾燥前に、凹凸のある樹脂膜と繊維布帛を貼り合わせる。
貼り合わせ方法としては、例えば、ニップロールを用いる方法が挙げられる。圧着条件としては、圧力(線圧)1〜250kg/cm、温度80〜130℃程度の条件が好ましい。
樹脂膜と繊維布帛を積層した後、40℃〜90℃程度にて2〜100時間程度エージングをおこなってもよい。
【0049】
次に、樹脂膜から離型性シートを剥離し、繊維布帛の少なくとも片面に凹凸のある樹脂膜を有し、前記凹凸のある樹脂膜の凸部に貫通孔を有する通気性布帛を得る。
【0050】
また、その後、フッ素系撥水剤、シリコン系撥水剤などを用いる公知の撥水処理をおこない、100〜170℃でシワ取りおよび規格調整のための仕上げセットをおこなってもよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に記載の「部」は質量部、「%」は質量%である。また、各種物性等は以下の方法にて測定した。
(樹脂膜の厚み、凹凸、貫通孔の大きさ、離型紙の凹凸)
電子顕微鏡(SEMEDX Type H形、日立サイエンスシステムズ製)を用い50〜500倍にて観察を行い測定した。
(通気度)
JIS L1096A法(フラジール形法)に準じて測定した。
なお、30%および50%伸長させたときの通気度の測定は、通気性布帛のヨコ方向に伸長前の長さから30%および50%引伸ばし、通気度を測定した。
(伸び率)
JIS L1096 伸縮織物及び編物の伸縮性 伸び率 A法(定速伸長法)で測定した。
(洗濯処理)
JIS L0217 103法に準じて洗濯処理をおこなった。
【0052】
(実施例1)ポリエステル繊維を用いた編物(スムース、33デシテックス/36フィラメント、密度タテ67本/2.54cm×ヨコ63本/2.54cm、伸び率ヨコ方向50%以上)を分散染料でグレーに染色し、アサヒガードAG710(旭硝子製、フッ素系撥水剤)にて撥水処理したものを繊維布帛としてもちいた。
【0053】
次に、ランダムに高低差有し、凹凸の最大高低差が50μmの離型紙を離型シートとして用い、下記の樹脂溶液をパイプコータを用い塗布(スリット0.06mm)し、100℃にて1分間乾燥し、凸部に貫通孔を有する凹凸のある樹脂膜を形成した。
【0054】
(樹脂溶液)
【0055】
透湿性ウレタン樹脂溶液
【0056】
(ウレタン樹脂 30%、DMF及びTOL 70%) 100部
【0057】
MEK 60部
【0058】
DMF 10部
【0059】
白色顔料 5部
【0060】
(酸化チタン 55%、DMF 40%、ウレタン樹脂5%)
【0061】
次に、離型紙上の樹脂膜の上に、下記接着剤をグラビアコータを用い点状に付与し、100℃にて30秒乾燥した。
【0062】
(接着剤)
【0063】
ウレタン樹脂溶液 100部
【0064】
(ウレタン樹脂 60%、TOL20%、MEK20%)
【0065】
イソシアネート系架橋剤
【0066】
(コロネートHL、日本ポリウレタン工業製) 10部
【0067】
有機スズ系触媒(レザミンHI−215、大日精化工業)0.5部
【0068】
次に、接着剤を塗布した樹脂膜面と繊維布帛をホットニップロールを用い110℃にて熱圧着し貼り合わせた。
【0069】
次に、70℃にて72時間エージングした後、離型紙を剥離した。最後に、150℃にて20秒間仕上げセットを行い、通気性布帛を得た。
【0070】
得られた通気性布帛は以下のものであった。得られた通気性布帛は、伸長時及び洗濯後の伸長時においても通気度の上昇を抑制している。
【0071】
樹脂膜 凸部の厚み 30μm
【0072】
凹部の厚み 3μm
【0073】
貫通孔 孔径 繊維布帛側 1〜60μm
【0074】
繊維布帛と反対側(離型紙側)5〜100μm
【0075】
通気度 未伸長時 0.5cm/cm・s
【0076】
30%伸長時 0.9cm/cm・s
【0077】
50%伸長時 1.3cm/cm・s
【0078】
通気度 20回洗濯後
【0079】
未延伸時 1.0cm/cm・s
【0080】
30%伸長時 1.9cm/cm・s
【0081】
50%伸長時 2.0cm/cm・s
【0082】
伸び率 タテ方向60% ヨコ方向142%
【0083】
(比較例1) 離型シートとして高低差が10μmのフルダル離型紙を用い、樹脂溶液を以下のようにした以外は実施例1と同様にし、加工布帛を得た。得られた加工布帛は、わずかな凹凸はあるがほぼ平坦であり、貫通孔を有していなかった。また、加工布帛の性能を以下に記載した。
【0084】
(樹脂溶液)
【0085】
透湿性ウレタン樹脂溶液
【0086】
(ウレタン樹脂 30%、DMF及びTOL 70%) 100部
【0087】
MEK 35部
【0088】
白色顔料 5部
【0089】
(酸化チタン 55%、DMF 40%、ウレタン樹脂5%)
【0090】
樹脂膜 凸部の厚み 15μm
【0091】
凹部の厚み 11μm
【0092】
貫通孔 なし
【0093】
通気度 未伸長時 0.0cm/cm・s
【0094】
30%伸長時 0.0cm/cm・s
【0095】
50%伸長時 0.0cm/cm・s
【0096】
通気度 20回洗濯後
【0097】
未延伸時 0.0cm/cm・s
【0098】
30%伸長時 0.0cm/cm・s
【0099】
50%伸長時 0.0cm/cm・s
【0100】
伸び率 タテ方向57% ヨコ方向102%
【0101】
(比較例2) ナイロン繊維を用いた編物(スムース、33デシテックス/36フィラメント、密度タテ67本/2.54cm×ヨコ63本/2.54cm、伸び率ヨコ方向50%以上)を酸性染料でブルーに染色し、アサヒガードAG710(旭硝子製、フッ素系撥水剤)にて撥水処理したものを繊維布帛としてもちいた。
【0102】
次の下記樹脂溶液をナイフコータを用い(スリット0.06mm)て繊維布帛の片面に塗布し、110℃にて乾燥し、引き続き、170℃にて仕上げセットをおこない繊維布帛の片面に樹脂膜を付与し、通気性布帛を得た。得られた通気性繊維布帛は樹脂が繊維布帛の繊維と繊維の間に入り込み繊維と繊維の隙間を埋めていた。得られた通気性布帛の性能を以下に記載した。このような通気性繊維布帛は、伸長により繊維と繊維の間の樹脂が繊維から剥がれたり、樹脂が裂けたりすることにより通気性が増加すると考えられる。
【0103】
(樹脂溶液)
【0104】
透湿性アクリル樹脂溶液
【0105】
(水系アクリル樹脂 40%、水、界面活性剤 60%) 100部
【0106】
イソシアネート系架橋剤 1部
【0107】
樹脂膜 凸部の厚み 24μm
【0108】
凹部の厚み 20μm
【0109】
貫通孔 なし
【0110】
通気度 未伸長時 0.1cm/cm・s
【0111】
30%伸長時 0.3cm/cm・s
【0112】
50%伸長時 1.4cm/cm・s
【0113】
通気度 20回洗濯後
【0114】
未延伸時 4.6cm/cm・s
【0115】
30%伸長時 32.9cm/cm・s
【0116】
50%伸長時 50以上cm/cm・s
【0117】
伸び率 タテ方向42% ヨコ方向174%
【0118】
(実施例2) ナイロン繊維を用いた編物(スムース、22デシテックス/24フィラメント、密度タテ66本/2.54cm×ヨコ62本/2.54cm、伸び率ヨコ方向50%以上)を分散染料でグレーに染色し、アサヒガードAG710(旭硝子製、フッ素系撥水剤)にて撥水処理したものを繊維布帛としてもちいた以外は実施例1と同様にし通気性繊維布帛を得た。得られた通気性布帛の性能を以下に記載した。得られた通気性布帛は、伸長時及び洗濯後の伸長時においても通気度の上昇を抑制している。
【0119】
樹脂膜 凸部の厚み 30μm
【0120】
凹部の厚み 3μm
【0121】
貫通孔 孔径 繊維布帛側 1〜60μm
【0122】
繊維布帛と反対側(離型紙側) 5〜100μm
【0123】
通気度 未伸長時 0.3cm/cm・s
【0124】
30%伸長時 0.6cm/cm・s
【0125】
50%伸長時 1.4cm/cm・s
【0126】
通気度 20回洗濯後
【0127】
未延伸時 0.3cm/cm・s
【0128】
30%伸長時 0.3cm/cm・s
【0129】
50%伸長時 0.6cm/cm・s
【0130】
伸び率 タテ方向54% ヨコ方向161%
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明によると、伸長時においても通気度の増加が抑制されるため、伸長時においても優れた防風性を有し、羽毛等の中綿の飛び出しを抑制することができウインドブレーカーやダウンジャケットなどの繊維製品として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維布帛の少なくとも片面に凹凸のある樹脂膜を有し、前記凹凸のある樹脂膜の凸部に貫通孔を有する通気性布帛。
【請求項2】
前記貫通孔の大きさが1〜300μmである請求項1記載の通気性布帛。
【請求項3】
30%伸長させたときの通気度の増加が未伸長時の3倍以下である請求項1または2に記載の通気性布帛。
【請求項4】
洗濯20回後において、30%伸長させたときの通気度の増加が未伸長時の3倍以下である請求項1〜3のいずれかに記載の通気性布帛。
【請求項5】
高低差が15μm以上である凹凸を有する離型性シートに樹脂溶液を塗布した後、乾燥し、凸部に貫通孔を有する凹凸のある樹脂膜を形成し、次に、接着剤を用い樹脂膜と繊維布帛と貼り合わせる工程を有するものであって、接着剤は、点状、線状又は格子状に用いられている通気性布帛の製造方法。


【公開番号】特開2012−40829(P2012−40829A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185993(P2010−185993)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000184687)小松精練株式会社 (110)
【Fターム(参考)】