説明

通管用具及び通管方法

【課題】管の長いときや曲がりが複雑な排水管、及び、詰まり物の形状や構成に関係なく通管でき、専門技術者でなくても一般家庭の人でも簡単に使用できる簡素で安価な通管用具及びこれを用いた通管方法を提供する。
【解決手段】通管用具は、排水管16の開口部17に挿入される管体2と、管体2の末端部に接続される導液管13とを備えて成り、管体2の先端部に噴液孔10が貫通して形成され、管体2の外周面に通液孔11が貫通して形成され、管体2の外周面の外方にゴム製筒体9が配備され、管体2の外周面とゴム製筒体9との間に密閉袋部22が形成され、導液管13から管体2内へ導入された加圧液体が通液孔11を通って密閉袋部22内に入ることにより、ゴム製筒体9が弾性変形し管体径方向外向きに膨張して排水管16の内周面16Aに密着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管の詰まりを除去して排水管を貫通させる通管用具、及びこれを用いた通管方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、家庭などで排水管が詰まると、ワイヤを排水管に挿入し詰まりをワイヤで突いて除去するようにしている。ところが、このようにワイヤを用いると、ワイヤを引き抜くときに汚水が垂れて周囲を汚すことがある。また、ワイヤでは届く距離に限りがあり、しかも短い場合が多い。更に、ワイヤは排水管の曲がり部分から先へ進まないことがある。
【0003】
そこで、前記したような不具合に応える為、下記の特許文献1に記載された通管用具が本発明者により開発されている。この通管用具は、詰まりを除去しようとする排水管の開口部へ先端部が挿入される管体と、加圧液体を排水管へ導入するために管体に接続された導液管と、管体の先端部の外周に設けられ、圧縮流体の導入により管体径方向外向きに膨張して排水管の内周面に密着する袋体とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2001−146782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した特許文献1記載の通管用具によれば、排水管の開口部に管体の先端部を挿入し、圧縮流体を袋体に導入させて膨らませることにより排水管の開口部を封止する。その状態で、排水管内へ加圧液体を導入することにより、排水管の管通しを行うようになっている。
しかしながら、特許文献1記載の通管用具では、管体と排水管内周面との間を密封する作用が空気などの圧縮流体によるものであり、排水管内の詰まりを除去する作用が排水管内に導入された水などの加圧液体によるものであるので、互いに異なる流体とそれぞれ専用の導入部品を必要とする。そのため、構成が複雑で製造コストが高くなり、作業時の取扱いにも手間がかかるという不具合があった。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、管の長いときや曲がりが複雑な排水管、及び、詰まり物の形状や構成に関係なく通管でき、専門技術者でなくても一般家庭の人でも簡単に使用できる簡素で安価な通管用具、及びこれを用いた通管方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る通管用具は、排水管の開口部に挿入される管体と、加圧液体を排水管内に導入するために管体の末端部に接続される導液管とを備えて成り、管体の先端部に噴液孔が貫通して形成され、管体の外周面に通液孔が貫通して形成され、管体の外周面の外方にゴム製筒体が配備され、ゴム製筒体における前記通液孔よりも先端部寄りの位置と前記通液孔よりも末端部寄りの位置とがそれぞれ密封されることにより、管体の外周面とゴム製筒体との間に密閉袋部が形成され、導液管から管体内へ導入された加圧液体が通液孔を通って密閉袋部内に入ることにより、ガム製筒体が弾性変形し管体径方向外向きに膨張して排水管の内周面に密着する構成にされているものである。
【0008】
また、前記の構成における噴液孔に、管体内圧力が所定圧力を超えたときに開く圧力調整弁が配備されているものである。
【0009】
そして、本発明に係る通管方法は、請求項1または請求項2に記載の通管用具における管体を、詰まりを除去しようとする排水管の開口部から挿入し、導液管から密閉袋部内への加圧液体の導入によりゴム製筒体を膨張させ排水管の内周面に密着させてゴム製筒体の外周面と排水管の内周面との隙間を封止し、管体の噴液孔から加圧液体を排水管内に噴出させるものである。
【発明の効果】
【0010】
以上述べたように、本発明に係る通管用具及び通管方法によれば、深い位置の排水管でもその開口部に通管用具3の先端部を挿入しさえすれば、あとは地面上などで操作することができる。これにより、排水管内へ加圧液体を導入することができる。従って、家庭でも手軽、迅速、かつ、確実に排水管の管通しを行うことができる。また、排水管の開口部から詰まりまでの距離がいくぶんか長い場合や、排水管に曲がり部分がある場合であっても、加圧液体単独の作用 によって詰まりを除去することができる。特に、本発明によれば、ひとつの加圧液体だけで、管体を膨張させて排水管内を密封する作用と、排水管内に加圧液体を送り込む作用の双方を呈することができる。そのため、流体を扱う部品が一系統だけで済むので、構成が簡素で安価なものを提供できる。また、一系統の弁開閉操作だけで済むので使い勝手がよい。
【0011】
また、圧力調整弁を噴液孔に配備したものでは、管体内圧力が所定圧力に達するまではゴム製筒体の膨張及び管体内の蓄圧に寄与する。一方、管体内圧力が所定圧力を超えると噴液孔を開いて、それまで管体内で蓄圧されていた加圧液体を噴液孔から排水管内に一気に噴き出すことができる。それにより、高い噴射液圧と強い衝撃力を備えた加圧液体を排水管内の詰まりに向けて噴射できるから、確実に詰まりを除去できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実地形態に係る通管用具を示す構成図である。
【図2】前記の通管用具の正面図である。
【図3】前記の通管用具の一部断面を含む右側面図である。
【図4】前記の通管用具の左側面図である。
【図5】図2における通管用具のA−A要部断面図である。
【図6】図2における通管用具のB−B要部断面図である。
【図7】前記の通管用具を排水管に挿入した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
図1は本発明の一実地形態に係る通管用具を示す構成図、図2は前記の通管用具の正面図、図3は前記の通管用具の一部断面を含む右側面図、図4は前記の通管用具の左側面図、図5は図2における通管用具のA−A要部断面図、図6は図2における通管用具のB−B要部断面図である。
各図において、この実施形態に係る通管用具1は、排水管に挿入される管体ユニット2Yと、管体ユニット2Yの末端部2Bの管体導液孔8に接続される導液管13とから構成されている。管体ユニット2Yは、合成樹脂を原材料として円筒形状に一体成型された管体2と、管体2の外周面の外方に配備されるゴム製筒体9と、管体2の先端部2A及び末端部2Bでゴム製筒体9の外周面を固定しそれぞれを封着する固定バンド12,12とから構成されている。
【0014】
前記した管体2の先端部2A及び末端部2Bは、先端部2Aと末端部2Bとの間の部分よりも大径に形成されている。先端部2Aの端面には噴液孔10が管心方向に貫通して形成され、管体7の末端部2Bの端面には管体導液孔8が管心方向に貫通して形成されている。管体2の各所寸法は特に限定されないが、先端部8及び末端部2Bの外径は例えば65mmにされている。また、噴液孔10の孔径は、管体導液孔8の孔径よりも小さな径に設定されている。管体2において先端部2Aと末端部2Bとの間の部分の外周面2Cには、多数の通液孔11,11,11,・・・が管径方向に貫通して形成されている。そして、管体2の外周面2Cの外方に、ゴム製筒体9が配備されている。管体2の通液孔11,11,11,・・・よりも先端部2A寄りに位置するゴム製筒体9の位置9Aと、管体2の通液孔11,11,11,・・・よりも末端部2B寄りに位置するゴム製筒体9の位置9Bは、それぞれ、固定バンド12,12で全周にわたって封着されている。これにより、管体2の外周面2Cとゴム製筒体9との間に密閉袋部22が形成される。
【0015】
噴液孔10の途中には、圧力調整弁23を収容するための弁収容空間26が形成されている。圧力調整弁23は、噴液孔10を開閉するボール弁24と、ボール弁24を弁収容空間26の液噴出方向上流側の壁に押圧するコイルバネ25とから構成されている。これらのボール弁24とコイルバネ25が弁収容空間26内に装入されている。コイルバネ25のバネ力は、管体内空間27での圧力が後述の所定圧力を超えたときにその圧力に打ち負けてボール弁24を開くように、予め設定されている。
【0016】
ゴム製筒体9の厚さは、加圧液体Wの圧力により膨張可能なものであれば特に限定されないが、例えば1.0〜2.5mm程度である。このゴム製筒体9を構成するゴム材として、この例では、軟質のネオプレン/クロロプレンゴムであるCR45が使用されている。このネオプレン/クロロプレンゴム(CR)は、耐油性、耐候性、耐熱性に富み、比較的安価で入手容易であることから、ゴム製筒体9の素材として好適である。但し、本発明の管体に用いるゴム材としては、ネオプレン/クロロプレンゴムに替えて、例えば、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、ブチルゴム(BR)、またはスチレンブタジエンゴム(SBR)などを使用することも可能である。
【0017】
そして、管体ユニット2Yの管体導液孔8とホースなどの導液管13の一端部とが接続され固定バンド5で固定されている。導液管13の他端部は逆支弁付きコック7の一端部と接続され固定バンド6で固定されている。逆支弁付きコック7の他端部は別の導液管13の一端部と接続され固定バンド6で固定されている。この導液管13の他端部は蛇口15と接続され固定バンド4で固定されている。蛇口15は導液管19を介して加圧液体Wの供給源と接続されている。
【0018】
引き続き、通管用具1による排水管16の通管方法につき、図7を用いて説明する。この場合において、詰まり18を除去しようとする排水管16の開口部17に、作業者が通管用具1の管体ユニット2Yをその先端部から挿入する。その後、逆止弁付きコック7を開栓すると、導液管13からの加圧液体W(ここでは例えば圧力が0.3MPa程度の水道水)が管体2の管体導液孔8から管体内空間27内に入る。管体内空間27内へ導入された加圧液体Wは通液孔11,11,11,・・・を通って密閉袋部22内に流入する。これにより、ゴム製筒体9の内周面が管体径方向外向きに押されることにより、弾性変形し膨張して排水管16の内周面16Aに密着する。このようにしてゴム製筒体9の外周面9Cと排水管16の内周面16Aとの隙間17aが密封されるのである。尚、ゴム製筒体9内の密閉袋部22及び管体2内の管体内空間27の圧力W1が所定圧力(水道水圧0.3MPaよりも低い、例えば0.27MPa)を超えるまでは、圧力調整弁23が噴液孔10を閉止しているため、加圧液体Wがゴム製筒体9を膨張させながら、密閉袋部22内及び管体内空間27内を蓄圧している。
【0019】
続いて、ゴム製筒体9内の密閉袋部22及び管体2内の管体内空間27の圧力W1が所定圧力(水道水圧0.3MPaよりも低い、例えば0.27MPa)を超えると、圧力調整弁23のボール弁24が作動して噴液孔10を開く。これにより、それまでの間に蓄圧していた加圧液体Wが噴液孔10を経て排水管16内に勢いよく噴き出し、それに伴って排水管16内の詰まり18が矢印21の方向に押し流されて除去される。その後、逆支弁付きコック7を閉めると、密閉袋部22内及び管体内空間27内の加圧液体Wは液抜き孔28から徐々に排水管16内に流出する。これにより、密閉袋部22内及び管体内空間27内の圧力が下がってゴム製筒体9が縮径し、ゴム製筒体9の外周面9Cが排水管16の内周面16Aから離れるのである。これにより、管体ユニット2Yを排水管16から抜き出せるようになる。
【0020】
この実施形態に係る通管用具1及びこれを用いた通管方法によれば、排水管16が深いところにあったとしても管体ユニット2Yを持って、排水管16の開口部17に管体ユニット2Yをその先端部から挿入しさえすれば、後け地面20上で逆支弁付きコック7の開閉操作をするだけですむ。これにより、拡径したゴム製筒体9によって排水管16内が封止されるとともに、排水管16内へ加圧液体Wが導入される。従って、専門技術者でなくても一般家庭の人でも、手軽に、迅速に、あるいは確実に、排水管16の管通し作業を行うことができる。また、排水管16の開口部17から詰まり18までの距離が長い場合や、排水管16に曲がり部分がある場合であっても、加圧液体Wが作動源となっているから、詰まり除去動作にはほとんど影響しない。
【0021】
特に、この通管用具1では、ひとつの流体(加圧液体W)だけで、ゴム製筒体9を膨張させて排水管16内を密封する作用と、排水管16内に加圧液体Wを送り込む作用の、双方を呈することができる。そのために、流体を扱う部品が一系統だけで済むから構成が簡素で安価になる。すなわち、この通管用具1は管内径が75mmや100mm以上といった比較的大径の排水管に用いるものとして適している。また、一系統の弁操作だけで済むので使い勝手がよい。
更に、この通管用具1は噴液孔10に圧力調整弁23を備えているので、管体内空間27内の圧力が所定圧力に達するまではゴム製筒体9の膨張及び管体内空間27内の蓄圧に寄与する。一方、管体内空間27内の圧力が所定圧力を超えると噴液孔10を開いて、蓄圧されていた加圧液体Wを排水管16内に一気に噴き出すことができる。それにより、噴液孔10に圧力調整弁23が無い場合と比べて、高い噴射液圧と強い衝撃力を備えた加圧液体Wを詰まり18に向けて噴射できるから、確実に詰まり18を除去することができる。
【0022】
一方で、排水管16への管体ユニット2Yの挿入に先立って、排水管16内に予め氷片やスポンジ小片を投入しておくと、詰まり18に存在する漏水可能な微小隙間を、加圧液体Wによる加圧時に氷片やスポンジ小片が塞いで加圧ロスを少なくする。特に、スポンジ小片は弾力性に富み水を含むと通気しにくくなるため、詰まりの微小隙間を十分に塞ぐ。そして、用済み後に氷片は融けて無害な水となるため、後処理の手間をかけることがない。また、氷片はどの家庭でも容易に調達できるという利点がある。
【0023】
尚、本発明に係る管体や構成に関して、それぞれの形状や連結状態は、上述した実施形態のものに限らない。一方、本発明に係る加圧液体としては、入手容易、安価、安全、後処理容易などの観点から水がもっとも好ましいが、水以外に、例えば植物油、グリセリン、エチレングリコールその他の安全な液体を用いても構わない。
また、上記では、管体2の噴液孔10内に圧力調整弁23を配備した例を示したが、圧力調整弁を備えていない噴液孔を有するものも本発明に含まれる。その場合は、管体内空間内及び密閉袋部内に導入された加圧液体によりゴム製筒体を膨張させ得るように、管体における先端側の噴液孔の孔径と末端側の管体導液孔の孔径を調整すればよい。
【符号の説明】
【0024】
1 通管用具
2 管体
2A 先端部
2B 末端部
2C 外周面
2Y 管体ユニット
4 固定バンド
5 固定バンド
6 固定バンド
7 逆支弁付きコック
8 管体導液孔
9 ゴム製筒体
9A 位置
9B 位置
9C 外周面
10 噴液孔
11 通液孔
12 固定バンド
13 導液管
15 蛇口
16 排水管
16A 内周面
17 開口部
17a 隙間
18 詰まり
19 導液管
20 地面
21 矢印方向
22 密閉袋部
23 圧力調整弁
24 ボール弁
25 コイルバネ
26 弁収容空間
27 管体内空間
28 液抜き孔
W 加圧液体
W1 圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管の開口部に挿入される管体と、加圧液体を排水管内に導入するために管体の末端部に接続される導液管とを備えて成り、管体の先端部に噴液孔が貫通して形成され、管体の外周面に通液孔が貫通して形成され、管体の外周面の外方にゴム製筒体が配備され、ゴム製筒体における前記通液孔よりも先端部寄りの位置と前記通液孔よりも末端部寄りの位置とがそれぞれ密封されることにより、管体の外周面とゴム製筒体との間に密閉袋部が形成され、導液管から管体内へ導入された加圧液体が通液孔を通って密閉袋部内に入ることにより、ゴム製筒体が弾性変形し管体径方向外向きに膨張して排水管の内周面に密着する構成にされていることを特徴とする通管用具。
【請求項2】
噴液孔に、管体内圧力が所定圧力を超えたときに開く圧力調整弁が配備されていることを特徴とする請求項1に記載の通管用具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の通管用具における管体を、詰まりを除去しようとする排水管の開口部から挿入し、導液管から密閉袋部内への加圧液体の導入によりゴム製筒体を膨張させ排水管の内周面に密着させてゴム製筒体の外周面と排水管の内周面との隙間を封止し、管体の噴液孔から加圧液体を排水管内に噴出させることを特徴とする通管方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−202200(P2012−202200A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87738(P2011−87738)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(594164025)
【Fターム(参考)】