通行制御システム、これに用いるポイント制御装置、通行制御方法
【課題】車両側の要求を考慮しかつトータルとして車両それぞれを平等に取り扱うように交差点等の通行制御を行うことができる通行制御システムを提供する。
【解決手段】本システムの路側通信機2は、交差点Jに接近する車載通信機3からの優先通行要求に応じて、車載通信機3を搭載した車両5に対して、優先通行処理を実施する優先通行調整部23aと、優先通行処理の実施に応じて送信される実施通知を車載通信機3に対して送信する通知部23bとを備えている。車載通信機3は、実施通知を受信すると、自装置を搭載した車両5が優先通行処理の実施を受けるのに必要な優先ポイントを所定数だけ減算するポイント演算部32bを備えている。
【解決手段】本システムの路側通信機2は、交差点Jに接近する車載通信機3からの優先通行要求に応じて、車載通信機3を搭載した車両5に対して、優先通行処理を実施する優先通行調整部23aと、優先通行処理の実施に応じて送信される実施通知を車載通信機3に対して送信する通知部23bとを備えている。車載通信機3は、実施通知を受信すると、自装置を搭載した車両5が優先通行処理の実施を受けるのに必要な優先ポイントを所定数だけ減算するポイント演算部32bを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)に付加する構成要素として好適な通行制御システム、これに用いるポイント制御装置、通行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止等を目的として、道路に設置されたインフラ装置からの情報を受信し、この情報を活用することで車両の安全性を向上させる高度道路交通システムが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
かかる高度道路交通システムは、主として、インフラ側の無線通信装置である複数の路側通信機と、各車両に搭載される無線通信装置である車載通信機とによって構成される。そして、各通信主体間で行う通信には、路側通信機と車載通信機とが行う路車(又は車路)間通信と、路側通信機同士が行う路路間通信と、車載通信機同士が行う車車間通信とが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムでは、例えば、路側通信機が設置され、路車(又は車路)間通信を行うことができる環境にあり、かつ、交通信号灯器が設置されている道路の交差点に向かって、車両が走行している場合に、当該車両に搭載された車載通信機が送信した自己の位置情報を、前記路側通信機が受信すると、インフラ側の制御装置は、交差点に接近する前記車両の位置情報を取得することができる。
【0005】
これにより、前記制御装置は、前記車両が交差点に到達するタイミングに合わせて、通行権を当該車両に与えるように交通信号灯器を制御することが可能となる。この制御により、車両を円滑に交差点を通過させることができる。
【0006】
ここで仮に、複数の車両が同一の交差点に進入しようと接近している場合、複数の接近車両の内、どの車両を優先するかを決定する必要がある。
複数の車両の中には、急いで走行したい車両や、特に時間的に制限されることなく走行している車両等、さまざまな車両が混在しており、急いでいる車両に対しては、交差点等での優先的な通行を許可すべきである。
【0007】
しかし、道路を走行する各車両は、緊急車両や公共車両等を除いて、原則として平等に取り扱われるべきであり、特定の車両ばかりを交差点において優先的に取り扱うことは好ましくない。
このため、車両側の要求を考慮しかつトータルとして車両ごと平等に取り扱うように交差点等の通行制御を行う方策の実現が望まれている。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、車両側の要求を考慮しかつトータルとして車両それぞれを平等に取り扱うように交差点等の通行制御を行うことができる通行制御システム、これに用いるポイント制御装置、通行制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、車載通信機と、前記車載通信機との間で通信可能であるとともに路側に設置されて車両の通行制御を行う制御装置と、を備えた車両の通行制御システムであって、前記制御装置は、所定区間に接近する前記車載通信機からの要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与する通行制御部と、前記特典の付与に応じて送信される第一の通知を前記車載通信機に対して送信する通知部とを備え、前記車載通信機は、前記第一の通知を受信すると、自装置を搭載した車両が前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算するポイント演算部を備えていることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、車両が所定区間での通行における特典を受けて制御装置から第一の通知を受信すると、車載通信機のポイント演算部が前記特典を受けるのに必要な特典ポイントを減算するので、車両が特典を受ける機会を、当該車両が使用可能な特典ポイントの範囲内に制限することができる。
このため、車両は、当該車両側の要求により、特典ポイントの範囲内で必要に応じて特典を受けることができる。一方、特典を受ける機会は特典ポイントの範囲内に制限されるので、特典を受ける機会を、特典ポイントによって他の車両との間で調整し均等にできる。
このように、本発明によれば、所定区間での通行における特典を受ける機会を均等に与えることで、車両側の要求を考慮しかつトータルとして車両それぞれを平等に取り扱うように所定区間である交差点等の通行制御を行うことができる。
【0011】
(2)また、上記通行制御システムにおいて、前記車載通信機が、前記特典の要求とともに、当該要求の度合を複数段階で示した要求レベルを前記制御装置に送信するものであるとするときに、前記制御装置の通行制御部は、前記車載通信機の要求及びその要求レベルと、当該車載通信機との間で進路が競合するように前記所定区間に接近する他の車載通信機の要求及びその要求レベルとを受信すると、両要求レベルを比較し、前記要求レベルが上位の車載通信機を搭載した車両にのみ前記特典を付与するものとすることができる。
【0012】
この場合、要求レベルに応じて特典を付与する車両を決定できるので、特典を付与する車両の決定を容易にできる。
また、この場合、前記通知部が、前記特典を付与した車両の車載通信機に対してのみ前記第一の通知を送信することで、特典が付与された車両のみ特典ポイントを減算させることができる。
【0013】
(3)さらに、前記車載通信機のポイント演算部は、前記第一の通知を受信すると、自装置が要求した要求レベルが上位であるほど、前記特典ポイントを多く減算するものであることが好ましい。
この場合、車両側において、より緊急度が高く特典を高い確率で受けたい場合には、より多くの特典ポイントが減算されるのを条件に、より上位の要求レベルで特典付与を要求できる。
【0014】
(4)前記通知部は、前記特典が付与されなかったことに応じて送信される第二の通知を、前記特典が付与されなかった車両の車載通信機に対して送信し、前記車載通信機のポイント演算部は、前記第二の通知を受信すると、前記特典ポイントを所定数だけ加算するものであってもよい。
この場合、特典の付与を受けた車両の車載通信機からは特典ポイントを減算しつつ、特典の付与を譲った車両の車載通信機には特典ポイントが加算されるので、両者の間で、特典ポイントを介して特典付与の機会を交換したのと同様の効果を得ることができる。これにより、両者の間で特典付与の機会の均衡を調整することができる。
【0015】
(5)また、上記通行制御システムにおいて、前記所定区間に接近する車両を感知する感知手段をさらに備えることもできる。この場合、前記通行制御部は、前記感知手段が感知した車両に対応する前記特典の要求及び要求レベルを受信しなかった場合に、予め定めた所定の要求レベルを設定するように構成することができる。
これによって、車載通信機を有しない車両や、車載通信機を有していても何らかの理由で特典付与の要求を送信できなかった車両等に対しても、要求レベルを設定することができる。
なお、感知手段とは、路上に設置され車両の接近を感知する感知装置等の他、車載通信機が送信する送信信号等の受信によって車両が所定区間に接近することを感知するものを含む。
【0016】
(6)また、上記(2)において、要求レベルの比較の結果、いずれかの車両に特典を付与する。このため、前記制御装置の通行制御部は、前記感知手段によって前記所定区間に接近する車両を感知した後、所定期間の間に、当該車載通信機との間で進路が競合するように前記所定区間に接近する他の車両を感知すると、両要求レベルを比較するように構成することが好ましい。
ここで、前記所定期間は、いずれかの車両に特典が付与されることで、特典が付与されなかった車両の運行を無理に妨げることがない期間に設定される。
これにより、いずれの車両に特典を付与しても、特典が付与されなかった車両の運行を妨げることがない。
【0017】
(7)さらに、前記感知手段が前記所定期間の間に前記他の車両を感知しなかった場合、前記制御装置の通行制御部は、要求レベルの比較を中止し、前記車両の運行を優先する。
【0018】
(8)(9)上記通行制御システムにおいて、前記特典は、当該特典が付与される車両が前記所定区間内を優先して通行可能に、前記所定区間に設置された交通規制手段を前記通行制御部が制御する処理であることが好ましい。
より具体的には、前記所定区間とは交差点であり、前記交通規制手段とは交通信号機である。
また、前記処理とは、特典が付与される車両が前記所定区間内を優先して通行できるように、前記特典が付与される車両に対する前記交通信号機の青色の灯色時間を延長し、又は、赤色の灯色時間を短縮するように制御する処理である。
【0019】
(10)また、上記通行制御システムを含む交通システムは、交通社会の向上や環境保全を目的としている。これに対して、例えば、急加減速を控えたり、アイドリングストップを行うといった、燃費を向上させるための施策の実施を伴った運転であるエコドライブや、急加減速や急ハンドルを控えた運転である安全運転は、上記交通システムの目的を達成するための手段の一つでもある。このため、前記車載通信機のポイント演算部は、自装置を搭載した車両が行う、前記エコドライブの状態、又は、安全運転の状態が所定距離、又は、所定期間継続すると、前記特典ポイントを加算するものであってもよい。
この場合、エコドライブ、又は、安全運転に寄与した対価として特典ポイントが加算されるので、車両側にエコドライブ、又は、安全運転の実行を促すことができる。これにより、交差点等の通行制御を行いつつ、環境保全にも寄与することができる。
【0020】
(11)また、本発明のポイント制御装置は、所定区間に接近する車載通信機の要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与する通行制御部と、前記車載通信機に前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算させるための第一の通知を前記車載通信機に対して送信する通知部と、を備えていることを特徴としている。
【0021】
(12)また、本発明に係る車両の運行制御方法は、所定区間に接近する車載通信機からの要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与するステップと、前記特典の付与に応じて送信される第一の通知を前記車載通信機に対して送信するステップと、前記第一の通知を受信すると、前記車載通信機を搭載した車両が前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算するステップと、を備えていることを特徴としている。
【0022】
上記構成のポイント制御装置及び運行制御方法によれば、上述のように、所定区間での通行における特典を受ける機会を均等に与えることで、車両側の要求を考慮しかつトータルとして車両それぞれを平等に取り扱うように所定区間である交差点等の通行制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車両側の要求を考慮しかつトータルとして車両それぞれを平等に取り扱うように交差点等の通行制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の路側装置が設置されている高度道路交通システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】高度道路交通システムの管轄エリアの一部を示す道路平面図である。
【図3】路側通信機と車載通信機の内部構成を示すブロック図である。
【図4】(a)は、緊急度に基づく要求レベルの内容と、必要な優先ポイントを示した表であり、(b)は、優先ポイントの加算事由を示す表である。
【図5】図1及び図2中の交差点を拡大して示した平面図である。
【図6】図5の路側通信機の制御部が通行制御を行う際の処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図6中、ステップS2において優先通行調整部が行う優先通行要求及び要求レベルを取得する処理について示したフローチャートである。
【図8】図5中、車両が交差点に接近し通行する際の処理の一例を示したシーケンス図である。
【図9】図5中、車両及び他の車両が交差点に接近し通行する際の処理の一例を示したシーケンス図である。
【図10】図9の場合において他の車両が車載通信機を搭載していないときの処理の一例を示したシーケンス図である。
【図11】優先ポイントが加算される場合の処理の例を示したシーケンス図であり、(a)は、車両がエコドライブによって優先ポイントが加算される処理の一例、(b)は、ポイントを購入することによって優先ポイントが加算される処理の一例を示している。
【図12】優先ポイントが加算される場合の処理の他の例を示したシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る路側通信機を含む高度道路交通システム(ITS)の全体構成を示す概略斜視図である。なお、本実施形態では、道路構造の一例として、南北方向と東西方向の複数の道路が互いに交差した碁盤目構造を想定している。
図1に示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、交通信号機1、路側通信機2、車載通信機3(図2及び図3参照)、中央装置4、車載通信機3を搭載した車両5、及び、車両感知器や監視カメラ等よりなる路側センサ6を含む。
【0026】
交通信号機1と路側通信機2は、複数の交差点Ji(図例では、i=1〜13)のそれぞれに設置されており、電話回線等の通信回線7を介してルータ8に接続されている。このルータ8は交通管制センター内の中央装置4に接続されている。
中央装置4は、自身が管轄するエリアに含まれる各交差点Jiの交通信号機1及び路側通信機2とLAN(Local Area Network)を構成している。従って、中央装置4は、各交通信号機1及び各路側通信機2との間で双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0027】
路側センサ6は、各交差点Jiに流入する車両台数をカウントする等の目的で、管轄エリア内の道路の各所に設置されている。この路側センサ6は、直下を通行する車両5を超音波感知する車両感知器、或いは、道路の交通状況を時系列に撮影する監視カメラ等よりなり、感知情報や画像データは通信回線7を介して中央装置4に送信される。
なお、図1及び図2では、図示を簡略化するために、各交差点Jiに信号灯器が1つだけ描写されているが、実際の各交差点Jiには、互いに交差する道路の上り下り用として少なくとも4つの信号灯器が設置されている。
【0028】
〔中央装置〕
中央装置4は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなる制御部を有しており、この制御部は、路側通信機2、路側センサ6からの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。
具体的には、中央装置4の制御部は、自身のネットワークに属する交差点Jiの交通信号機1に対して、同一道路上の交通信号機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を行うことができる。
【0029】
また、中央装置4は、通信回線7を介してLAN側と接続された通信インタフェースである通信部を有しており、この通信部は、信号灯器の灯色切り替えタイミングに関する信号制御指令や、渋滞情報等を含む交通情報を所定時間ごとに交通信号機1及び路側通信機2に送信している。
【0030】
また、中央装置4の通信部は、各交差点Jiに対応する路側通信機2から、その通信機2が車載通信機3から受信した車両5の現在位置等を含む車両情報、車両感知器の感知情報、及び、監視カメラが撮影した道路のデジタル情報よりなる画像データ等を受信しており、中央装置4の制御部は、これらの各種情報に基づいて前記系統制御や広域制御を実行する。
【0031】
〔無線通信の方式等〕
図2は、上記高度道路交通システムの管轄エリアの一部を示す道路平面図である。
図2では、互いに交差する2つの道路の各々が上りと下りで片側1車線のものとして例示されているが、道路構造はこれに限られるものではない。
図2にも示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、車載通信機3との間で無線通信が可能な複数の路側通信機2と、キャリアセンス方式(CSMA方式)で他の通信機2,3と無線通信を行う移動無線送受信機の一種である車載通信機3と備えている。
【0032】
複数の路側通信機2は、それぞれ路側の交差点Jiごとに設置されている。一方、車載通信機3は、道路を走行する各車両5にそれぞれ搭載されている。なお、車両5の中には、車載通信機3を搭載していないものもある。
【0033】
各路側通信機2は、その周囲に広がる基準エリアA(路側通信機2の送信信号が十分に届く範囲)をそれぞれ有し、自身の基準エリアAを走行する車両5の車載通信機3に対して無線信号を送信することができる。
また、各路側通信機2は、基準エリアAが重複(一部重複でも全部重複でもよい。)する他の路側通信機2とも無線通信が可能である。
【0034】
本実施形態の高度道路交通システムでは、路側通信機2同士(路路間通信)については無線通信が用いられ、また、路側通信機2と車載通信機3との間(「路」から「車」への路車間通信と「車」から「路」への車路間通信との双方を含む。)と車載通信機3同士(車車間通信)についても、無線通信が用いられている。
なお、前記した通り、交通管制センターに設けられた中央装置4は、各路側通信機2と有線での双方向通信が可能となっているが、これらの間も無線通信であってもよい。
【0035】
各路側通信機2は、自装置が無線送信するためのタイムスロットをTDMA方式で割り当てており、このタイムスロット以外の時間帯には無線送信を行わない。従って、路側通信機2用のタイムスロット以外の時間帯は、車載通信機3のためのCSMA方式による送信時間として開放されている。
また、路側通信機2は、自身の送信タイミングを制御するために他の路側通信機2との時刻同期機能を有している。この路側通信機2の時刻同期は、例えば、自身の時計をGPS時刻に合わせるGPS同期や、自身の時計を他の路側通信機2からの送信信号に合わせるエア同期等によって行われる。
【0036】
〔路側通信機〕
図3は、路側通信機2、及び、車載通信機3の内部構成を示すブロック図である。
路側通信機2は、他の通信機2,3と無線通信するためのアンテナ20が接続された無線通信部21と、中央装置4と双方向通信する有線通信部22と、これらの通信制御を行うCPU等よりなる制御部23と、制御部23に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部24とを備えている。記憶部24は、制御部23が実行する通信制御のためのプログラムや、各通信機2,3の通信機ID等を記憶している。
【0037】
制御部23は、有線通信部22が受信した中央装置4からの交通情報等を、記憶部24に一時的に記憶させ、無線通信部21を介して自己の基準エリアAにブロードキャスト送信する機能を有している。また、制御部23は、無線通信部21が受信した車両情報(車両5の位置、速度、及び方向等)を、記憶部24に一時的に記憶させ、有線通信部22を介して中央装置4に転送する機能を有している。
【0038】
また、制御部23は、記憶部24に記憶されているプログラムにより実現される機能部として、優先通行調整部23aと、通知部23bとを有している。
優先通行調整部23aは、車両5に対して、所定区間での通行における特典の付与として、交差点J内において優先的に通行させるための処理である優先通行処理を実施する機能を有している。
また、通知部23bは、上記優先通行処理の実施、又は不実施を車載通信機3に対して送信する機能を有している。
上記優先通行調整部23a及び通知部23bの具体的な機能や、優先通行処理の内容については、後に説明する。
また、制御部23は、所定区間としての交差点Jに接近する車両を感知する感知手段として、車両感知器等の路側センサ6を用いる。さらに、制御部23は、前記感知手段として、車載通信機3から送信される車両情報や、後述する優先通行要求の受信によって車両(車載通信機3)が交差点Jに接近することを感知する機能を有する場合もある。
【0039】
〔車載通信機〕
車載通信機3は、他の通信機2,3と無線通信のためのアンテナ30に接続された通信部31と、この通信部31に対する通信制御を行うCPU等よりなる制御部32と、この制御部32に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部33とを備えている。記憶部33は、制御部32が実行する通信制御のためのプログラムや、各通信機2,3の通信機ID等を記憶している。
【0040】
車載通信機3の制御部32は、車車間通信のためのキャリアセンス方式による無線通信を通信部31に行わせる機能を有しており、路側通信機2との間の時分割多重方式での通信制御機能は有していない。
従って、車載通信機3の通信部31は、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行うようになっている。
【0041】
なお、車載通信機3の制御部32は、自装置が搭載されている車両5(車載通信機3)の現時点の位置、方向、速度、車種等を含む車両情報を取得し、通信部31を介して外部にブロードキャストで無線送信する。
また、車載通信機3の制御部32は、他の車両5から直接受信した車両情報や、路側通信機2から受信した他の車両5の車両情報に含まれる、位置、速度及び方向に基づいて、右直衝突や出合い頭衝突等を回避するための安全運転支援制御を行うことができる。
【0042】
制御部32は、記憶部33に記憶されるプログラムにより実現される機能部として、優先通行要求部32aと、ポイント演算部32bとを有している。
優先通行要求部32aは、路側通信機2に対して、車両前方の交差点等を優先的に通行することを要求する優先通行要求を送信するための機能を有している。
また、ポイント演算部32bは、路側通信機2からの通知に応じて、交差点等における優先通行処理の実施を受けるために必要な優先ポイント(自装置を搭載した車両5が特典の付与を受けるのに必要な特典ポイント)の演算を行うための機能を有している。
上記優先通行要求部32a及びポイント演算部32bの具体的な機能や、優先ポイントについては、後に説明する。
【0043】
〔優先通行要求、優先通行処理、及び、優先ポイントについて〕
次に、車載通信機3が送信する優先通行要求、路側通信機2が実行する優先通行処理、及び、車載通信機3が優先通行処理を受けるために必要な優先ポイントについて説明する。
【0044】
本実施形態の車載通信機3の優先通行要求部32aは、上述のように、車両前方の交差点等において、優先的に通行することを要求する優先通行要求を送信する。この優先通行要求は、優先的な通行を要求する旨を示す他、後述する要求レベルを示す情報を含んでいる。優先通行要求を送信するか否か、あるいは、送信する場合における要求レベルの値等は、車両5の運転者等によって予め設定される。
この優先通行要求を受信した路側通信機2の優先通行調整部23aは、当該要求を送信した車載通信機3を搭載する車両5に対して、対象の交差点等を優先的に通行させるための処理である優先通行処理を実施するか否かを決定する。
【0045】
路側通信機2の優先通行調整部23aが行う優先通行処理とは、前記優先通行要求に応じて、その要求元の車両5(車載通信機3)が交差点等の対象区間を優先的に通行できるように、その対象区間内の信号機1等の交通規制手段を制御する処理である。
【0046】
より具体的には、例えば、図2中の交差点J13に進入しようとしている車両5−1に対して実施される優先通行処理として、優先通行調整部23aは、処理の実施を決定すると、車両5−1が交差点J13を通過するまでの間、交差点J13における車両5−1に対する交通信号機1の青色の灯色時間を設定しうる範囲で最長となるように延長し、赤色の灯色時間を設定しうる範囲で最短となるように短縮するように制御するといった処理を行う。
一方、車両5−1が走行する道路に交差する方路の交通信号機1の灯色は、逆に、青色の灯色時間を設定しうる範囲で最短となるように短縮され、赤色の灯色時間を設定しうる範囲で最長となるように延長される。
【0047】
このような処理を行うことで、車両5−1が仮に交差点J13に到達したときに信号機1の灯色が赤色であったとしても、赤色の灯色時間が短縮されているので早く青色に変わり、速やかに交差点J13を通過できる。又、処理前の状態で車両5−1が交差点J13に到達すれば信号機1の灯色が赤色に変わるタイミングであったとしても、上記処理によって青色の時間が延長されれば、車両5−1は、交差点J13で停止することなく通過できる。
【0048】
なお、本実施形態において、優先通行調整部23aは、自装置が設置されている所定区間としての交差点に設置されている交通信号機1の灯色を制御することが可能である。また、優先通行調整部23aは、中央装置4に対して、交通信号機1の灯色の制御を要求することができる。従って、優先通行調整部23aは、自装置又は中央装置4による制御によって、上記優先通行処理を実現するための交通信号機1の灯色制御を実現する。
【0049】
車載通信機3が上記優先通行処理を要求するために送信する優先通行要求には、緊急度に基づく要求の度合を複数段階で示した要求レベルを示す情報が含まれている。
【0050】
図4(a)は、緊急度に基づく要求レベルの内容と、必要な優先ポイントを示した表である。図に示すように、優先通行要求は、緊急度の度合に応じて、5段階の要求レベルが規定されている。
本実施形態では、基準となる状態を緊急度「普通」とし、この「普通」に対して緊急度が高い順に「急ぎ」、「緊急」と規定している。また、「普通」よりも急いでいない状態を「ゆっくり」と規定している。緊急度が「ゆっくり」の場合に対して、最も要求の度合が低い要求レベルLv1に設定されている。以降、「普通」、「急ぎ」、「緊急」の順に、Lv2〜Lv5と、より要求の度合が高くなるように設定されている。なお、緊急度が「緊急」の場合、要求レベルがLv4とLv5の2種類設定されている。
【0051】
上記要求レベルは、優先通行要求が複数の車両5の間で、重複した場合に、どの車両5を優先させるのかを決定するためのパラメータであり、最も要求レベルの高い優先通行要求の車両5に対して、優先通行処理が実施される。
【0052】
車載通信機3が要求レベルLv3以上で優先通行要求を行い、優先通行処理の実施を受けた場合、優先ポイントが必要となる。
この優先ポイントとは、例えば、予め所定のポイント数が各車載通信機3に対して与えられ、優先通行処理の実施を受けたりといった処理によって加減算されるものである。
与えられた優先ポイント数は、車載通信機3aの記憶部33に記憶され、ポイント演算部32bによって管理される。
【0053】
上記のように、優先通行処理の実施を受けるためには、優先ポイントが必要であるため、いずれの車載通信機3も、与えられた優先ポイントの範囲で、優先通行処理の実施を受ける機会が制限される。これによって、各車載通信機3それぞれが、平等に優先通行処理の実施を受けることができる。
【0054】
図4(a)に示すように、緊急度「緊急」要求レベルLv5の場合、最も優先ポイントを多く要し、3ポイントを必要とし、要求レベルLv4の場合、2ポイント、要求レベルLv3の場合、1ポイントを必要とする。このように、優先通行処理の実施を受けるために必要なポイント数は、その緊急度(要求レベル)がより高ければそれに応じて必要な優先ポイントも多く必要となるように設定されている。
このため、車両側では、緊急度が高く優先通行処理を高い確率で受けたい場合には、より多くの優先ポイントが減算されるのを条件に、より上位の要求レベルで優先通行処理を要求することができる。
【0055】
緊急度が「普通」及び「ゆっくり」である要求レベルLv1,Lv2の場合には、優先ポイントを必要としない。この優先ポイントは、急ぐことで交差点等の通行において優先されるという利益と引き替えに減算されるものであり、特に急ぐことを要求していない車両からは優先ポイントを減算する必要がないからである。
【0056】
また、優先ポイントは、加算される場合もある。
図4(b)は、優先ポイントの加算事由を示す表である。優先ポイントは、図に示すように、交差点等で優先通行処理の実施を受けた他の車両5に通行を譲った場合に加算される。すなわち、他の車両5に通行を譲った場合、その車両5には、通行を譲ったことに対する対価として優先ポイントが加算される。
このように、優先通行処理を受けた車両5の車載通信機3からは優先ポイントを減算しつつ、通行を譲った車両5の車載通信機3には優先ポイントが加算されるので、両者の間で、優先ポイントを介して優先通行処理を受ける機会を交換したのと同様の効果を得ることができる。これにより、両者の間で優先通行処理を受ける機会の均衡を調整することができる。
【0057】
また、優先ポイントは、購入することで加算することもできる。さらに、所定期間又は所定の走行距離の間、エコドライブを実行することで加算することもできる。
上記交通システムは、交通社会の向上や環境保全を目的としている。これに対して、例えば、急加減速を控えたり、アイドリングストップを行うといった、燃費を向上させるための施策を実行しつつ運転を行う状態であるエコドライブや、急加減速や急ハンドルを控えた運転を行う状態である安全運転は、上記交通システムの目的を達成するための手段の一つでもある。このため、上記エコドライブ、又は、安全運転が所定距離又は所定期間継続すると、優先ポイントが加算される。この場合、エコドライブ、又は、安全運転に寄与した対価として特典ポイントが加算されるので、車両側にエコドライブ、又は、安全運転の実行を促すことができる。これにより、交差点等の通行制御を行いつつ、環境保全にも寄与することができる。
【0058】
なお、上記優先ポイントの加減算は、車載通信機3aのポイント演算部32bによって行われる。
【0059】
〔制御部の処理について〕
次に、制御部23が通行制御を行う際の処理について説明する。
図5は、図1及び図2中の交差点J13を拡大して示した平面図である。図5において、交差点J4に繋がる方向の方路が幹線道路であるのに対して、交差点J13で交差している方路は、この幹線道路に対して交差する支線である。
交差点J13に設置された路側通信機2は、当該交差点J13に進入し通行する車両の通行制御を行う。
【0060】
また、各方路それぞれには、交差点J13に進入しようと接近する車両5を感知するための車両感知器6aが設置されている。この車両感知器6aとしては、容易に設置できることから、地磁気センサを用いた感知器が用いられている。車両感知器6aは、交差点J13から距離L(Lは、例えば150メートル)だけ離れた位置に設置されており、例えば、地磁気センサと、当該地磁気センサの感知結果を路側通信機2に送信するための通信部とを備えている。この通信部は、有線通信で路側通信機2に感知結果を送信するように設置してもよいし、無線通信で送信するように設置してもよい。無線通信で送信する場合、車両感知器6aの設置がより容易となる。
【0061】
図6は、図5の路側通信機2の制御部23が通行制御を行う際の処理の一例を示すフローチャートである。
図において、まず、制御部23の優先通行調整部23aは、車両感知器6aによる感知結果、又は、車載通信機3が送信する車両情報や優先通行要求等の受信に基づいて、交差点J13に接近する接近車両の有無を判定する(ステップS1)。接近車両がなければステップS1を繰り返し、随時接近車両の有無を判定する。
【0062】
ステップS1において、接近車両が有ると判定すると、優先通行調整部23aは、接近車両の車載通信機3から送信される優先通行要求、及びこれに含まれる要求レベルの取得を試みる(ステップS2)。
【0063】
図7は、図6中、ステップS2において優先通行調整部23aが行う優先通行要求及び要求レベルを取得する処理について示したフローチャートである。
優先通行調整部23aは、車両感知器6aによって感知された車両5からの優先通行要求の受信の有無を判定する(ステップS20)。
感知された車両5に対応する優先通行要求の受信が有ると判定すると、優先通行調整部23aは、受信した優先通行要求に含まれる要求レベルを取得する(ステップS21)。
【0064】
一方、感知された車両5に対応する優先通行要求の受信がないと判定すると、優先通行調整部23aは、その感知された車両5の要求レベルを、要求レベル「2」に設定する(ステップS22)。つまり、優先通行調整部23aは、何らかの理由で優先通行要求の送受信ができなかった車載通信機3の車両5や、車載通信機3を搭載しない車両5に対して、緊急度が「普通」である要求レベルLv2に設定する。
以上のようにして、優先通行調整部23aは、感知された接近車両の要求レベルを取得する。
【0065】
図6に戻って、感知された接近車両の要求レベルを取得すると、優先通行調整部23aは、ステップS1において接近車両が感知されてから所定期間の間に、感知された接近車両が走行する方路に交差する方路側から接近する他の接近車両(接近車両との間で進路が競合するように前方の交差点に接近する他の接近車両)の有無を判定する(ステップS3)。
【0066】
ステップS3において、他の接近車両が無いと判定すると、優先通行調整部23aは、接近車両が優先通行可能に信号制御を行い、当該接近車両に対する優先通行処理を実施する(ステップS4)。
次いで、優先通行調整部23aは、接近車両の車載通信機3に向けて、当該接近車両に対して優先通行処理を実施した旨の通知(実施通知;第一の通知)を、通知部23bに通知させ(ステップS5)、処理を終える。この通知を受信することによって、接近車両(の車載通信機3)は、自装置が送信した優先通行要求に基づいた優先通行処理が実施されたことを認識する。
なお、ステップS3において、所定期間の経過後に他の接近車両が現れた場合、優先通行調整部23aは、当該他の接近車両については、接近車両との間で優先通行処理に関する判定対象としない。よって、他の接近車両は、後に実施される接近車両に対する優先通行処理に従って交差点J13を通過することとなる。
【0067】
一方、ステップS3において、他の接近車両が有ると判定すると、優先通行調整部23aは、他の接近車両の車載通信機3から送信される優先通行要求、及びこれに含まれる要求レベルの取得を試みる(ステップS6)。なお、このステップS6の処理内容は、図7で示した処理内容と同様であるので、説明を省略する。
【0068】
ステップS6にて、他の接近車両の要求レベルを取得すると、優先通行調整部23aは、接近車両と、他の接近車両とで要求レベルが異なっているか否かを判定する(ステップS7)。両者で要求レベルが異なっていれば、優先通行調整部23aは、要求レベルが上位の接近車両が優先通行可能に信号制御を行い、優先通行処理を実施する(ステップS8)。
次いで、優先通行調整部23aは、要求レベルが上位であった接近車両の車載通信機3に向けて、当該接近車両に対して実施通知を通知部23bに通知させるとともに、要求レベルが下位であった接近車両の車載通信機3に向けて、当該車両に対する優先通行処理の実施がされなかった旨の通知(不実施通知;第二の通知)を、通知部23bに通知させ(ステップS9)、処理を終える。
このように、上記実施通知は、優先通行処理の実施に応じて実施対象の車載通信機3に送信され、上記不実施通知は、優先通行処理の実施がされなかったことに応じて、当該処理の実施がされなかった車載通信機3に送信される。
【0069】
要求レベルが下位であった接近車両の車載通信機3は、上述の不実施通知によって、優先通行要求は受信されたが当該要求が受け入れられず、他の車両に交差点J13における優先通行を譲ったことを認識することができる。
【0070】
ステップS7において、接近車両と、他の接近車両とで要求レベルが同じであると判定された場合、優先通行調整部23aは、幹線側を走行する接近車両が優先通行可能に信号制御を行い、優先通行処理を実施する(ステップS10)。よって、図5の場合、優先通行調整部23aは、紙面左右方向に延びる方路を走行する接近車両に対して優先通行処理を実施する。
その後、優先通行調整部23aは、ステップS9に進み、各接近車両に対して通知を行い、処理を終える。
【0071】
次に、路側通信機2が行う優先通行処理と、車載通信機3が行う処理との関係について説明する。
【0072】
図8は、図5中、車両5aが交差点J13に接近し通行する際の処理の一例を示したシーケンス図である。
図8では、図5中、車両5a以外の他の接近車両が存在しておらず、車両5aのみが交差点J13に接近し通行する際の処理を示している。
【0073】
まず、車両5aの車載通信機3aは、自車両の位置や速度等の車両情報と、優先通行要求とを無線送信する(ステップS31)。車載通信機3aの優先通行要求部32aは、優先通行要求を、車両情報とともに常時ブロードキャストで送信することもできるし、交差点に接近したときに必要に応じて送信することもできる。
【0074】
車両5aが進行し、交差点J13近傍の車両感知器6a等によって車両5aが感知されると、路側通信機2は接近車両の存在を認識する(ステップS32)。
車両5aがさらに進行することで、路側通信機2の通信エリアに進入すると、路側通信機2は、車両5aから送信される車両情報の他、優先通行要求を受信する(ステップS33)。なお、本例では、車載通信機3aは、要求レベルLv3で優先通行要求を送信している場合を示している。よって、路側通信機2は、車載通信機3aが要求レベルLv3で優先通行要求を送信していることを認識する。
【0075】
また、ステップS32で接近車両を感知した路側通信機2は、感知してから所定期間(例えば4秒)の間、他の接近車両の感知の有無を判定する(図6中のステップS3の処理に相当)。ここでは、車両5a以外の車両は無いため、路側通信機2は、接近車両を感知してから所定期間の経過後、車両5aに対して優先通行処理を実施することを決定し、当該優先通行処理を実施する(ステップS34)。
図5の場合、路側通信機2の優先通行調整部23aは、優先通行処理として、車両5a前方の交通信号機1aの灯色を、即座に青色に制御してもよいし、車両5aが交差点J13を通行するタイミングで青色になるように、青色の時間の延長、赤色の時間の短縮といった制御をしてもよい。
【0076】
さらに、路側通信機2の通知部23bは、車載通信機3aに対して優先通行処理を実施した旨の通知を送信する(ステップS35)。
【0077】
車載通信機3aのポイント演算部32bは、路側通信機2からの優先通行処理を実施した旨の通知を受信すると(ステップS36)、自装置の有する優先ポイントから1ポイント減算する(ステップS37)。このように、ポイント演算部32bは、優先通行処理を実施した旨の通知を受信すると、優先通行処理を受けるのに必要なポイント数を減算する。なお、処理を受けるための必要ポイント数は、上述のように、優先通行要求の要求レベルに応じて定まるため、ポイント演算部32bは、自装置が送信した優先通行要求の要求レベルに基づいて求める。
【0078】
以上のようにして、路側通信機2及び車載通信機3aは、交差点J13における処理を終える。
【0079】
図9は、図5中、車両5a及び他の車両5bが交差点J13に接近し通行する際の処理の一例を示したシーケンス図である。
図9では、図5中、幹線側を走行する車両5aと、支線側を走行する他の車両5bとが交差点J13に接近している際の処理を示しており、車両5aが、他の車両5bよりも先行して交差点J13に接近しているものとする。なお、ここでは、車両5a,5b以外の車両については考慮しない。
【0080】
図9に示すように、車両5aの車載通信機3a、及び他の車両5bの車載通信機3bは、車両情報とともに、優先通行要求を無線送信する(ステップS41,S42)。
先行して接近する車両5aが進行し、車両感知器6aに感知されると、路側通信機2は接近車両である車両5aの存在を認識する(ステップS43)。
車両5aがさらに進行して路側通信機2の通信エリアに進入すると、路側通信機2は、車両5aの車載通信機3aから送信される車両情報の他、優先通行要求を受信する(ステップS44)。本例では、車載通信機3aは、要求レベルLv4で優先通行要求を送信している場合を示している。
【0081】
ステップS43で接近車両を感知した路側通信機2は、感知してから所定期間(例えば4秒)の間、他の接近車両の感知の有無を判定する(図6中のステップS3の処理に相当)。本実施形態では、上記所定期間内に、他の車両5bを感知したものとする(ステップS45)。
【0082】
ここで、上記所定期間は、その後に、車両5a,5bのいずれかの車両に対して優先通行処理が実施されることで、実施されなかった車両の運行を無理に妨げることがない期間に設定されている。
つまり、仮に後から交差点J13に進入する他の車両5bに優先通行処理が実施された場合、車両5aは、すでに、他の車両5bよりは交差点J13により接近している。よって、車両5aが交差点J13に到達直前に、他の車両5bに対して優先通行処理が実施されると、車両5aの運行を無理に妨げるおそれが生じる。従って、このようなことが生じないように、上記期間を設定し、いずれの車両に優先通行処理を実施しても、優先通行処理が実施されなかった車両の運行を妨げることがないようにされている。
【0083】
本実施形態では、車両感知器6aは、交差点J13から150メートルの地点に設置されており、車両5が車両感知器6aの地点で時速54キロメートル毎時で走行するとすると、約10秒で交差点J13に到達する。よって、車両5が車両感知器6aの地点から進行して、交差点J13まで到達するのにある程度の距離を確保できる値として、上記所定期間を4秒としている。
【0084】
なお、上記所定期間内に他の車両が感知されなかった場合、優先通行調整部23aは、要求レベルの比較を中止し、車両5aの運行を優先し、車両5aに優先通行処理を実施する。つまり、上記所定期間後であって、未だ車両5aが交差点J13に到達していないときに他の車両が感知されたとしても、優先通行調整部23aは、車両5aに対する優先通行処理を終えるまでは、他の車両に対して優先通行処理を実施することはない。
【0085】
このように、本例において、優先通行調整部23aは、車両感知器6aが交差点J13に接近する車両5aを感知した後、所定期間の間に、車両5aの車載通信機3aとの間で進路が競合するように交差点J13に接近する他の車両5bを感知すると、両要求レベルを比較するように構成されているので、いずれの車両に優先通行処理を実施しても、優先通行処理が実施されなかった車両の運行を妨げることがない。
【0086】
ステップS45にて他の車両5bを感知した後、他の車両5bの車載通信機3bが路側通信機2の通信エリアに進入すると、路側通信機2は、他の車両5bから送信される優先通行要求を受信する(ステップS46)。本例では、車載通信機3bは、要求レベルLv3で優先通行要求を送信している場合を示している。
【0087】
次いで、路側通信機2は、両車載通信機3からの優先通行要求の要求レベルを比較する(ステップS47、図6中ステップS7の処理)。この結果、車載通信機3aの要求レベルの方が上位(要求レベルLv4)なので、路側通信機2の優先通行調整部23aは、車両5aに対して優先通行処理を実施することを決定し、当該優先通行処理を実施する(ステップS48)。優先通行処理の内容については、上述の通りである。
【0088】
次に、路側通信機2の通知部23bは、車載通信機3aに対して優先通行処理を実施した旨の通知(実施通知;第一の通知)を送信するとともに、車載通信機3bに対して優先通行処理を実施しなかった旨の通知(不実施通知;第二の通知)を送信する(ステップS49)。
【0089】
車載通信機3aのポイント演算部32bは、路側通信機2からの実施通知を受信すると(ステップS50)、自装置の有する優先ポイントから2ポイント減算する(ステップS51)。本実施形態では、車載通信機3aは、要求レベルLv4で優先通行要求を送信し優先通行処理の実施を受けたので、ポイント演算部32bは、この要求レベルに応じた必要ポイントである2ポイント(図4参照)を減算する。
【0090】
一方、車載通信機3bのポイント演算部32bは、路側通信機2からの不実施通知を受信すると(ステップS52)、自装置の有する優先ポイントに1ポイント加算する(ステップS53)。この場合、優先通行要求を送信した結果、車載通信機3aを搭載した車両5aに優先通行を譲ったこととなる。よって、ポイント演算部32bは、他の車両に優先通行を譲ったことにより付与される1ポイント(図4参照)を加算する。
【0091】
このように本実施形態では、車載通信機3が、要求の度合を複数段階で示した要求レベルを含む優先通行要求を路側通信機2に送信するものであるので、路側通信機2の優先通行調整部23aは、車載通信機3aからの要求レベルを含む優先通行要求と、当該車載通信機3aとの間で進路が競合するように交差点J13に接近する他の車載通信機3bからの要求レベルを含む優先通行要求とを受信すると、両要求レベルを比較し、要求レベルが上位の車載通信機3を搭載した車両5にのみ優先通行処理を実施することができる。
【0092】
この場合、要求レベルに応じて優先通行処理を実施する車両5を決定できるので、優先通行処理を実施する車両5の決定を容易にできる。
また、この場合、前記通知部23bが、優先通行処理の実施を受けた車両5の車載通信機3に対してのみ実施通知(第一の通知)を送信することで、優先通行処理の実施を受けた車両5のみ優先ポイントを減算させることができる。
【0093】
さらに、本実施形態の通知部23bは、前記特典が付与されなかったことに応じて送信される不実施通知(第二の通知)を、優先通行処理の実施がされなかった車両5の車載通信機3に対して送信し、車載通信機3のポイント演算部32bは、不実施通知を受信すると、優先ポイントを所定数だけ加算する。
従って、優先通行処理の実施を受けた車両5の車載通信機3からは優先ポイントを減算しつつ、優先通行処理を譲った車両5の車載通信機3には優先ポイントが加算されるので、両者の間で、優先ポイントを介して優先通行処理を受ける機会を交換したのと同様の効果を得ることができる。これにより、両者の間で優先通行処理を受ける機会の均衡を調整することができる。
【0094】
上記図9では、各車両5a,5bが共に車載通信機3(3a,3b)を搭載している場合を示したが、一方の車両5が車載通信機3を搭載していない場合や、車載通信機3を搭載していても故意に又は故障等何らかの理由で路車間通信に関する処理を停止し行わない(行えない)場合もありうる。
図10は、図9の場合において他の車両5bが車載通信機3を搭載していない又は搭載していても路車間通信に関する処理を行わないときの処理の一例を示したシーケンス図である。
【0095】
図10において、ステップS61(優先通行要求の送信)、ステップS62(車両5aの感知)、ステップS63(車載通信機3aからの優先通行要求の受信)、及び、ステップS64(他の車両5bの感知)については、図9中、ステップS41、ステップS43〜S45と同様である。
【0096】
本例では、他の車両5bが車載通信機3を搭載していない又は搭載していても路車間通信に関する処理を行わないので、路側通信機2は、他の車両5bに対応する優先通行要求を受信することがない。このため、優先通行調整部23aは、上記所定期間の経過後、他の車両5bに対応する優先通行要求を受信していないことを認識すると、他の車両5bに対して、緊急度「普通」である要求レベルLv2を設定する(ステップS65、図7中ステップS22に対応)。
【0097】
これにより、路側通信機2の優先通行調整部23aは、両車両5の要求レベルを比較する(ステップS66)。この結果、車載通信機3aの要求レベルの方が上位(要求レベルLv4)なので、路側通信機2の優先通行調整部23aは、車両5aに対して優先通行処理を実施することを決定し、当該優先通行処理を実施する(ステップS67)。
【0098】
次いで、路側通信機2の通知部23bは、車載通信機3aに対して実施通知を送信する(ステップS68)。車載通信機3aのポイント演算部32bは、路側通信機2からの実施通知を受信すると(ステップS69)、自装置の有する優先ポイントから2ポイント減算する(ステップS70)。
【0099】
他の車両5bは、車載通信機3を搭載していないので、路側通信機2が不実施通知を送信したとしても、何ら処理は行われない。
【0100】
以上のように、本システムは、交差点J13に接近する車両5を感知する車両感知器6aを備えているので、車両感知器6aが感知した車両5に対応する優先通行要求を受信しなかった場合に、優先通行調整部23aは、予め定めた要求レベルをLv2として設定するように構成することができる。
これによって、車載通信機3を有しない車両や、車載通信機3を有していても何らかの理由で優先通行要求を送信できなかった車両5等に対しても、要求レベルを設定することができる。
【0101】
なお、上記例では、後から交差点J13に進入する他の車両5bが車載通信機3を搭載しない場合を例示したが、先行して交差点J13に進入する車両5aが車載通信機3を搭載しない場合も、上記の他の車両5bと同様、要求レベルLv2に設定される(図7)。
【0102】
図11は、優先ポイントが加算される場合の処理の例を示したシーケンス図であり、(a)は、車両5がエコドライブによって優先ポイントが加算される処理の一例を示している。
車載通信機3aのポイント演算部32bは、制御部32が取得する車両5の車両速度等の情報から、当該車両5が急加減速を伴わない運転状態であるエコドライブの状態であるか否かを判断できる。所定期間又は所定走行距離の間エコドライブを継続することで優先ポイントが加算されることから(図4(b)参照)、ポイント演算部32bは、車両5がエコドライブの状態であると判断すると(ステップS80)、その期間又は走行距離の積算を開始する(ステップS81)。
【0103】
その後、積算の結果、優先ポイントの加算対象に設定された目標期間又は目標走行距離に達すると、ポイント演算部32bは、エコドライブの数値目標達成を検知し(ステップS82)、自装置の優先ポイントの加算を行う(ステップS83)。なお、図例では、10ポイント加算している。
【0104】
図11(b)は、ポイントを購入することによって優先ポイントが加算される処理の一例を示している。
車両5(車載通信機3)のユーザが優先ポイントを購入すると、その事実が中央装置4等に入力される。路側通信機2は、前記入力に基づいて、優先ポイントの加算事由が発生したことを認識し(ステップS90)、ポイント加算命令をポイント加算事由が発生した車載通信機3に送信する(ステップS91)。
【0105】
ポイント加算命令を受信した車載通信機3のポイント演算部32bは、当該ポイント加算命令に基づいて、自装置の優先ポイントの加算を行う(ステップS92)。
【0106】
図12は、優先ポイントが加算される場合の処理の他の例を示したシーケンス図である。
車両5(車載通信機3)のユーザが優先ポイントを購入、あるいはエコドライブ等によって、優先ポイントの加算事由が発生し、路側通信機2又は中央装置4がその優先ポイントの加算事由の発生を認識すると(ステップS100)、路側通信機2又は中央装置4は、自装置に繋がる端末装置のカードリーダ等に差し込まれて接続される、前記ユーザが所有している車載通信機3に接続可能であって優先ポイントに関する処理情報が記憶可能な優先ポイント処理用のカードにポイント加算命令を書き込む(ステップS101)。
【0107】
ユーザが、そのカードを自己の車載通信機3のカードリーダ等に差し込んで車載通信機3に接続することで、車載通信機3は、当該カードに書き込まれたポイント加算命令を取得する(ステップS101)。
次いで、車載通信機3のポイント演算部32bは、当該ポイント加算命令に基づいて、自装置の優先ポイントの加算を行う(ステップS103)。
【0108】
なお、優先ポイントの加算事由には、上述の購入や、エコドライブ、安全運転以外に、無事故無違反が所定期間継続した場合等も設定することができる。
【0109】
上記のように構成された本実施形態のシステムは、車載通信機3と、車載通信機3との間で通信可能であるとともに路側に設置されて車両5の通行制御を行う路側通信機2と、を備えた車両5の通行制御システムであり、路側通信機2は、所定区間としての交差点Jに接近する車載通信機3からの要求(優先通行要求)に応じて、車載通信機3を搭載した車両5に対して、優先通行処理(交差点Jでの通行における特典)を実施する優先通行調整部23aと、優先通行処理の実施に応じて送信される実施通知(第一の通知)を車載通信機3に対して送信する通知部23bとを備え、車載通信機3は、実施通知を受信すると、自装置を搭載した車両5が優先通行処理の実施を受けるのに必要な優先ポイント(特典ポイント)を所定数だけ減算するポイント演算部32bを備えていることを特徴としている。
【0110】
本実施形態によれば、車両5が交差点Jでの優先通行処理の実施を受け、路側通信機2から実施通知を受信すると、車載通信機3のポイント演算部32bが処理の実施を受けるのに必要な優先ポイントを減算するので、車両5が優先通行処理の実施を受ける機会を、当該車両5が使用可能な優先ポイントの範囲内に制限することができる。
このため、車両5は、当該車両5側の要求により、優先ポイントの範囲内で必要に応じて優先通行処理の実施を受けることができる。一方、優先通行処理の実施を受ける機会は優先ポイントの範囲内に制限されるので、優先通行処理の実施を受ける機会を、優先ポイントによって他の車両との間で調整し均等にできる。
【0111】
このように、本実施形態によれば、交差点Jでの優先通行処理の実施を受ける機会を均等に与えることで、車両5側の要求を考慮しかつトータルとして車両5それぞれを平等に取り扱うように交差点Jの通行制御を行うことができる。
【0112】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されることはない。上記実施形態では、本発明を交差点に適用した場合を例示したが、交差点以外に、例えば、対面通行可能な道路の途中に存在する、片側交互通行しかできない、車両同士で進路が競合する区間についても適用することができる。
また、上記実施形態において、図6中、ステップS10では、幹線側を走行する接近車両に優先通行処理を実施する場合を示したが、交差する各方路が幹線支線の関係になくほぼ同等の関係である場合には、先着車両を優先して優先通行処理を実施することもできる。
【0113】
また、上記実施形態では、優先ポイントは、各車載通信機3のポイント演算部32bが個々に演算管理する場合を示したが、各車載通信機3aの優先ポイントを路側通信機2や、中央装置4によって管理してもよい。
さらに、上記実施形態中の路側通信機2において、優先通行調整部23a及び通知部23bによって実現される機能は、中央装置4が有していても良い。
【0114】
また、本実施形態では、優先通行要求をするために必要な優先ポイントについては、要求レベルの段階に応じたポイント数に設定した場合を示したが、例えば、片側車線の数が多ければ多い交差点ほど、必要ポイントが多くなるといったように、交差点の大きさに応じて必要な優先ポイントの数を設定してもよい。
【0115】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
1 交通信号機(交通規制手段)
2 路側通信機(制御装置、ポイント制御装置)
3 車載通信機
6a 車両感知器(感知装置)
23a 優先通行調整部(通行制御部)
23b 通知部
32a 優先通行要求部
32b ポイント演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)に付加する構成要素として好適な通行制御システム、これに用いるポイント制御装置、通行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止等を目的として、道路に設置されたインフラ装置からの情報を受信し、この情報を活用することで車両の安全性を向上させる高度道路交通システムが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
かかる高度道路交通システムは、主として、インフラ側の無線通信装置である複数の路側通信機と、各車両に搭載される無線通信装置である車載通信機とによって構成される。そして、各通信主体間で行う通信には、路側通信機と車載通信機とが行う路車(又は車路)間通信と、路側通信機同士が行う路路間通信と、車載通信機同士が行う車車間通信とが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムでは、例えば、路側通信機が設置され、路車(又は車路)間通信を行うことができる環境にあり、かつ、交通信号灯器が設置されている道路の交差点に向かって、車両が走行している場合に、当該車両に搭載された車載通信機が送信した自己の位置情報を、前記路側通信機が受信すると、インフラ側の制御装置は、交差点に接近する前記車両の位置情報を取得することができる。
【0005】
これにより、前記制御装置は、前記車両が交差点に到達するタイミングに合わせて、通行権を当該車両に与えるように交通信号灯器を制御することが可能となる。この制御により、車両を円滑に交差点を通過させることができる。
【0006】
ここで仮に、複数の車両が同一の交差点に進入しようと接近している場合、複数の接近車両の内、どの車両を優先するかを決定する必要がある。
複数の車両の中には、急いで走行したい車両や、特に時間的に制限されることなく走行している車両等、さまざまな車両が混在しており、急いでいる車両に対しては、交差点等での優先的な通行を許可すべきである。
【0007】
しかし、道路を走行する各車両は、緊急車両や公共車両等を除いて、原則として平等に取り扱われるべきであり、特定の車両ばかりを交差点において優先的に取り扱うことは好ましくない。
このため、車両側の要求を考慮しかつトータルとして車両ごと平等に取り扱うように交差点等の通行制御を行う方策の実現が望まれている。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、車両側の要求を考慮しかつトータルとして車両それぞれを平等に取り扱うように交差点等の通行制御を行うことができる通行制御システム、これに用いるポイント制御装置、通行制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、車載通信機と、前記車載通信機との間で通信可能であるとともに路側に設置されて車両の通行制御を行う制御装置と、を備えた車両の通行制御システムであって、前記制御装置は、所定区間に接近する前記車載通信機からの要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与する通行制御部と、前記特典の付与に応じて送信される第一の通知を前記車載通信機に対して送信する通知部とを備え、前記車載通信機は、前記第一の通知を受信すると、自装置を搭載した車両が前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算するポイント演算部を備えていることを特徴としている。
【0010】
本発明によれば、車両が所定区間での通行における特典を受けて制御装置から第一の通知を受信すると、車載通信機のポイント演算部が前記特典を受けるのに必要な特典ポイントを減算するので、車両が特典を受ける機会を、当該車両が使用可能な特典ポイントの範囲内に制限することができる。
このため、車両は、当該車両側の要求により、特典ポイントの範囲内で必要に応じて特典を受けることができる。一方、特典を受ける機会は特典ポイントの範囲内に制限されるので、特典を受ける機会を、特典ポイントによって他の車両との間で調整し均等にできる。
このように、本発明によれば、所定区間での通行における特典を受ける機会を均等に与えることで、車両側の要求を考慮しかつトータルとして車両それぞれを平等に取り扱うように所定区間である交差点等の通行制御を行うことができる。
【0011】
(2)また、上記通行制御システムにおいて、前記車載通信機が、前記特典の要求とともに、当該要求の度合を複数段階で示した要求レベルを前記制御装置に送信するものであるとするときに、前記制御装置の通行制御部は、前記車載通信機の要求及びその要求レベルと、当該車載通信機との間で進路が競合するように前記所定区間に接近する他の車載通信機の要求及びその要求レベルとを受信すると、両要求レベルを比較し、前記要求レベルが上位の車載通信機を搭載した車両にのみ前記特典を付与するものとすることができる。
【0012】
この場合、要求レベルに応じて特典を付与する車両を決定できるので、特典を付与する車両の決定を容易にできる。
また、この場合、前記通知部が、前記特典を付与した車両の車載通信機に対してのみ前記第一の通知を送信することで、特典が付与された車両のみ特典ポイントを減算させることができる。
【0013】
(3)さらに、前記車載通信機のポイント演算部は、前記第一の通知を受信すると、自装置が要求した要求レベルが上位であるほど、前記特典ポイントを多く減算するものであることが好ましい。
この場合、車両側において、より緊急度が高く特典を高い確率で受けたい場合には、より多くの特典ポイントが減算されるのを条件に、より上位の要求レベルで特典付与を要求できる。
【0014】
(4)前記通知部は、前記特典が付与されなかったことに応じて送信される第二の通知を、前記特典が付与されなかった車両の車載通信機に対して送信し、前記車載通信機のポイント演算部は、前記第二の通知を受信すると、前記特典ポイントを所定数だけ加算するものであってもよい。
この場合、特典の付与を受けた車両の車載通信機からは特典ポイントを減算しつつ、特典の付与を譲った車両の車載通信機には特典ポイントが加算されるので、両者の間で、特典ポイントを介して特典付与の機会を交換したのと同様の効果を得ることができる。これにより、両者の間で特典付与の機会の均衡を調整することができる。
【0015】
(5)また、上記通行制御システムにおいて、前記所定区間に接近する車両を感知する感知手段をさらに備えることもできる。この場合、前記通行制御部は、前記感知手段が感知した車両に対応する前記特典の要求及び要求レベルを受信しなかった場合に、予め定めた所定の要求レベルを設定するように構成することができる。
これによって、車載通信機を有しない車両や、車載通信機を有していても何らかの理由で特典付与の要求を送信できなかった車両等に対しても、要求レベルを設定することができる。
なお、感知手段とは、路上に設置され車両の接近を感知する感知装置等の他、車載通信機が送信する送信信号等の受信によって車両が所定区間に接近することを感知するものを含む。
【0016】
(6)また、上記(2)において、要求レベルの比較の結果、いずれかの車両に特典を付与する。このため、前記制御装置の通行制御部は、前記感知手段によって前記所定区間に接近する車両を感知した後、所定期間の間に、当該車載通信機との間で進路が競合するように前記所定区間に接近する他の車両を感知すると、両要求レベルを比較するように構成することが好ましい。
ここで、前記所定期間は、いずれかの車両に特典が付与されることで、特典が付与されなかった車両の運行を無理に妨げることがない期間に設定される。
これにより、いずれの車両に特典を付与しても、特典が付与されなかった車両の運行を妨げることがない。
【0017】
(7)さらに、前記感知手段が前記所定期間の間に前記他の車両を感知しなかった場合、前記制御装置の通行制御部は、要求レベルの比較を中止し、前記車両の運行を優先する。
【0018】
(8)(9)上記通行制御システムにおいて、前記特典は、当該特典が付与される車両が前記所定区間内を優先して通行可能に、前記所定区間に設置された交通規制手段を前記通行制御部が制御する処理であることが好ましい。
より具体的には、前記所定区間とは交差点であり、前記交通規制手段とは交通信号機である。
また、前記処理とは、特典が付与される車両が前記所定区間内を優先して通行できるように、前記特典が付与される車両に対する前記交通信号機の青色の灯色時間を延長し、又は、赤色の灯色時間を短縮するように制御する処理である。
【0019】
(10)また、上記通行制御システムを含む交通システムは、交通社会の向上や環境保全を目的としている。これに対して、例えば、急加減速を控えたり、アイドリングストップを行うといった、燃費を向上させるための施策の実施を伴った運転であるエコドライブや、急加減速や急ハンドルを控えた運転である安全運転は、上記交通システムの目的を達成するための手段の一つでもある。このため、前記車載通信機のポイント演算部は、自装置を搭載した車両が行う、前記エコドライブの状態、又は、安全運転の状態が所定距離、又は、所定期間継続すると、前記特典ポイントを加算するものであってもよい。
この場合、エコドライブ、又は、安全運転に寄与した対価として特典ポイントが加算されるので、車両側にエコドライブ、又は、安全運転の実行を促すことができる。これにより、交差点等の通行制御を行いつつ、環境保全にも寄与することができる。
【0020】
(11)また、本発明のポイント制御装置は、所定区間に接近する車載通信機の要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与する通行制御部と、前記車載通信機に前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算させるための第一の通知を前記車載通信機に対して送信する通知部と、を備えていることを特徴としている。
【0021】
(12)また、本発明に係る車両の運行制御方法は、所定区間に接近する車載通信機からの要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与するステップと、前記特典の付与に応じて送信される第一の通知を前記車載通信機に対して送信するステップと、前記第一の通知を受信すると、前記車載通信機を搭載した車両が前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算するステップと、を備えていることを特徴としている。
【0022】
上記構成のポイント制御装置及び運行制御方法によれば、上述のように、所定区間での通行における特典を受ける機会を均等に与えることで、車両側の要求を考慮しかつトータルとして車両それぞれを平等に取り扱うように所定区間である交差点等の通行制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車両側の要求を考慮しかつトータルとして車両それぞれを平等に取り扱うように交差点等の通行制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の路側装置が設置されている高度道路交通システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】高度道路交通システムの管轄エリアの一部を示す道路平面図である。
【図3】路側通信機と車載通信機の内部構成を示すブロック図である。
【図4】(a)は、緊急度に基づく要求レベルの内容と、必要な優先ポイントを示した表であり、(b)は、優先ポイントの加算事由を示す表である。
【図5】図1及び図2中の交差点を拡大して示した平面図である。
【図6】図5の路側通信機の制御部が通行制御を行う際の処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図6中、ステップS2において優先通行調整部が行う優先通行要求及び要求レベルを取得する処理について示したフローチャートである。
【図8】図5中、車両が交差点に接近し通行する際の処理の一例を示したシーケンス図である。
【図9】図5中、車両及び他の車両が交差点に接近し通行する際の処理の一例を示したシーケンス図である。
【図10】図9の場合において他の車両が車載通信機を搭載していないときの処理の一例を示したシーケンス図である。
【図11】優先ポイントが加算される場合の処理の例を示したシーケンス図であり、(a)は、車両がエコドライブによって優先ポイントが加算される処理の一例、(b)は、ポイントを購入することによって優先ポイントが加算される処理の一例を示している。
【図12】優先ポイントが加算される場合の処理の他の例を示したシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の一実施形態に係る路側通信機を含む高度道路交通システム(ITS)の全体構成を示す概略斜視図である。なお、本実施形態では、道路構造の一例として、南北方向と東西方向の複数の道路が互いに交差した碁盤目構造を想定している。
図1に示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、交通信号機1、路側通信機2、車載通信機3(図2及び図3参照)、中央装置4、車載通信機3を搭載した車両5、及び、車両感知器や監視カメラ等よりなる路側センサ6を含む。
【0026】
交通信号機1と路側通信機2は、複数の交差点Ji(図例では、i=1〜13)のそれぞれに設置されており、電話回線等の通信回線7を介してルータ8に接続されている。このルータ8は交通管制センター内の中央装置4に接続されている。
中央装置4は、自身が管轄するエリアに含まれる各交差点Jiの交通信号機1及び路側通信機2とLAN(Local Area Network)を構成している。従って、中央装置4は、各交通信号機1及び各路側通信機2との間で双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0027】
路側センサ6は、各交差点Jiに流入する車両台数をカウントする等の目的で、管轄エリア内の道路の各所に設置されている。この路側センサ6は、直下を通行する車両5を超音波感知する車両感知器、或いは、道路の交通状況を時系列に撮影する監視カメラ等よりなり、感知情報や画像データは通信回線7を介して中央装置4に送信される。
なお、図1及び図2では、図示を簡略化するために、各交差点Jiに信号灯器が1つだけ描写されているが、実際の各交差点Jiには、互いに交差する道路の上り下り用として少なくとも4つの信号灯器が設置されている。
【0028】
〔中央装置〕
中央装置4は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなる制御部を有しており、この制御部は、路側通信機2、路側センサ6からの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。
具体的には、中央装置4の制御部は、自身のネットワークに属する交差点Jiの交通信号機1に対して、同一道路上の交通信号機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を行うことができる。
【0029】
また、中央装置4は、通信回線7を介してLAN側と接続された通信インタフェースである通信部を有しており、この通信部は、信号灯器の灯色切り替えタイミングに関する信号制御指令や、渋滞情報等を含む交通情報を所定時間ごとに交通信号機1及び路側通信機2に送信している。
【0030】
また、中央装置4の通信部は、各交差点Jiに対応する路側通信機2から、その通信機2が車載通信機3から受信した車両5の現在位置等を含む車両情報、車両感知器の感知情報、及び、監視カメラが撮影した道路のデジタル情報よりなる画像データ等を受信しており、中央装置4の制御部は、これらの各種情報に基づいて前記系統制御や広域制御を実行する。
【0031】
〔無線通信の方式等〕
図2は、上記高度道路交通システムの管轄エリアの一部を示す道路平面図である。
図2では、互いに交差する2つの道路の各々が上りと下りで片側1車線のものとして例示されているが、道路構造はこれに限られるものではない。
図2にも示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、車載通信機3との間で無線通信が可能な複数の路側通信機2と、キャリアセンス方式(CSMA方式)で他の通信機2,3と無線通信を行う移動無線送受信機の一種である車載通信機3と備えている。
【0032】
複数の路側通信機2は、それぞれ路側の交差点Jiごとに設置されている。一方、車載通信機3は、道路を走行する各車両5にそれぞれ搭載されている。なお、車両5の中には、車載通信機3を搭載していないものもある。
【0033】
各路側通信機2は、その周囲に広がる基準エリアA(路側通信機2の送信信号が十分に届く範囲)をそれぞれ有し、自身の基準エリアAを走行する車両5の車載通信機3に対して無線信号を送信することができる。
また、各路側通信機2は、基準エリアAが重複(一部重複でも全部重複でもよい。)する他の路側通信機2とも無線通信が可能である。
【0034】
本実施形態の高度道路交通システムでは、路側通信機2同士(路路間通信)については無線通信が用いられ、また、路側通信機2と車載通信機3との間(「路」から「車」への路車間通信と「車」から「路」への車路間通信との双方を含む。)と車載通信機3同士(車車間通信)についても、無線通信が用いられている。
なお、前記した通り、交通管制センターに設けられた中央装置4は、各路側通信機2と有線での双方向通信が可能となっているが、これらの間も無線通信であってもよい。
【0035】
各路側通信機2は、自装置が無線送信するためのタイムスロットをTDMA方式で割り当てており、このタイムスロット以外の時間帯には無線送信を行わない。従って、路側通信機2用のタイムスロット以外の時間帯は、車載通信機3のためのCSMA方式による送信時間として開放されている。
また、路側通信機2は、自身の送信タイミングを制御するために他の路側通信機2との時刻同期機能を有している。この路側通信機2の時刻同期は、例えば、自身の時計をGPS時刻に合わせるGPS同期や、自身の時計を他の路側通信機2からの送信信号に合わせるエア同期等によって行われる。
【0036】
〔路側通信機〕
図3は、路側通信機2、及び、車載通信機3の内部構成を示すブロック図である。
路側通信機2は、他の通信機2,3と無線通信するためのアンテナ20が接続された無線通信部21と、中央装置4と双方向通信する有線通信部22と、これらの通信制御を行うCPU等よりなる制御部23と、制御部23に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部24とを備えている。記憶部24は、制御部23が実行する通信制御のためのプログラムや、各通信機2,3の通信機ID等を記憶している。
【0037】
制御部23は、有線通信部22が受信した中央装置4からの交通情報等を、記憶部24に一時的に記憶させ、無線通信部21を介して自己の基準エリアAにブロードキャスト送信する機能を有している。また、制御部23は、無線通信部21が受信した車両情報(車両5の位置、速度、及び方向等)を、記憶部24に一時的に記憶させ、有線通信部22を介して中央装置4に転送する機能を有している。
【0038】
また、制御部23は、記憶部24に記憶されているプログラムにより実現される機能部として、優先通行調整部23aと、通知部23bとを有している。
優先通行調整部23aは、車両5に対して、所定区間での通行における特典の付与として、交差点J内において優先的に通行させるための処理である優先通行処理を実施する機能を有している。
また、通知部23bは、上記優先通行処理の実施、又は不実施を車載通信機3に対して送信する機能を有している。
上記優先通行調整部23a及び通知部23bの具体的な機能や、優先通行処理の内容については、後に説明する。
また、制御部23は、所定区間としての交差点Jに接近する車両を感知する感知手段として、車両感知器等の路側センサ6を用いる。さらに、制御部23は、前記感知手段として、車載通信機3から送信される車両情報や、後述する優先通行要求の受信によって車両(車載通信機3)が交差点Jに接近することを感知する機能を有する場合もある。
【0039】
〔車載通信機〕
車載通信機3は、他の通信機2,3と無線通信のためのアンテナ30に接続された通信部31と、この通信部31に対する通信制御を行うCPU等よりなる制御部32と、この制御部32に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部33とを備えている。記憶部33は、制御部32が実行する通信制御のためのプログラムや、各通信機2,3の通信機ID等を記憶している。
【0040】
車載通信機3の制御部32は、車車間通信のためのキャリアセンス方式による無線通信を通信部31に行わせる機能を有しており、路側通信機2との間の時分割多重方式での通信制御機能は有していない。
従って、車載通信機3の通信部31は、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行うようになっている。
【0041】
なお、車載通信機3の制御部32は、自装置が搭載されている車両5(車載通信機3)の現時点の位置、方向、速度、車種等を含む車両情報を取得し、通信部31を介して外部にブロードキャストで無線送信する。
また、車載通信機3の制御部32は、他の車両5から直接受信した車両情報や、路側通信機2から受信した他の車両5の車両情報に含まれる、位置、速度及び方向に基づいて、右直衝突や出合い頭衝突等を回避するための安全運転支援制御を行うことができる。
【0042】
制御部32は、記憶部33に記憶されるプログラムにより実現される機能部として、優先通行要求部32aと、ポイント演算部32bとを有している。
優先通行要求部32aは、路側通信機2に対して、車両前方の交差点等を優先的に通行することを要求する優先通行要求を送信するための機能を有している。
また、ポイント演算部32bは、路側通信機2からの通知に応じて、交差点等における優先通行処理の実施を受けるために必要な優先ポイント(自装置を搭載した車両5が特典の付与を受けるのに必要な特典ポイント)の演算を行うための機能を有している。
上記優先通行要求部32a及びポイント演算部32bの具体的な機能や、優先ポイントについては、後に説明する。
【0043】
〔優先通行要求、優先通行処理、及び、優先ポイントについて〕
次に、車載通信機3が送信する優先通行要求、路側通信機2が実行する優先通行処理、及び、車載通信機3が優先通行処理を受けるために必要な優先ポイントについて説明する。
【0044】
本実施形態の車載通信機3の優先通行要求部32aは、上述のように、車両前方の交差点等において、優先的に通行することを要求する優先通行要求を送信する。この優先通行要求は、優先的な通行を要求する旨を示す他、後述する要求レベルを示す情報を含んでいる。優先通行要求を送信するか否か、あるいは、送信する場合における要求レベルの値等は、車両5の運転者等によって予め設定される。
この優先通行要求を受信した路側通信機2の優先通行調整部23aは、当該要求を送信した車載通信機3を搭載する車両5に対して、対象の交差点等を優先的に通行させるための処理である優先通行処理を実施するか否かを決定する。
【0045】
路側通信機2の優先通行調整部23aが行う優先通行処理とは、前記優先通行要求に応じて、その要求元の車両5(車載通信機3)が交差点等の対象区間を優先的に通行できるように、その対象区間内の信号機1等の交通規制手段を制御する処理である。
【0046】
より具体的には、例えば、図2中の交差点J13に進入しようとしている車両5−1に対して実施される優先通行処理として、優先通行調整部23aは、処理の実施を決定すると、車両5−1が交差点J13を通過するまでの間、交差点J13における車両5−1に対する交通信号機1の青色の灯色時間を設定しうる範囲で最長となるように延長し、赤色の灯色時間を設定しうる範囲で最短となるように短縮するように制御するといった処理を行う。
一方、車両5−1が走行する道路に交差する方路の交通信号機1の灯色は、逆に、青色の灯色時間を設定しうる範囲で最短となるように短縮され、赤色の灯色時間を設定しうる範囲で最長となるように延長される。
【0047】
このような処理を行うことで、車両5−1が仮に交差点J13に到達したときに信号機1の灯色が赤色であったとしても、赤色の灯色時間が短縮されているので早く青色に変わり、速やかに交差点J13を通過できる。又、処理前の状態で車両5−1が交差点J13に到達すれば信号機1の灯色が赤色に変わるタイミングであったとしても、上記処理によって青色の時間が延長されれば、車両5−1は、交差点J13で停止することなく通過できる。
【0048】
なお、本実施形態において、優先通行調整部23aは、自装置が設置されている所定区間としての交差点に設置されている交通信号機1の灯色を制御することが可能である。また、優先通行調整部23aは、中央装置4に対して、交通信号機1の灯色の制御を要求することができる。従って、優先通行調整部23aは、自装置又は中央装置4による制御によって、上記優先通行処理を実現するための交通信号機1の灯色制御を実現する。
【0049】
車載通信機3が上記優先通行処理を要求するために送信する優先通行要求には、緊急度に基づく要求の度合を複数段階で示した要求レベルを示す情報が含まれている。
【0050】
図4(a)は、緊急度に基づく要求レベルの内容と、必要な優先ポイントを示した表である。図に示すように、優先通行要求は、緊急度の度合に応じて、5段階の要求レベルが規定されている。
本実施形態では、基準となる状態を緊急度「普通」とし、この「普通」に対して緊急度が高い順に「急ぎ」、「緊急」と規定している。また、「普通」よりも急いでいない状態を「ゆっくり」と規定している。緊急度が「ゆっくり」の場合に対して、最も要求の度合が低い要求レベルLv1に設定されている。以降、「普通」、「急ぎ」、「緊急」の順に、Lv2〜Lv5と、より要求の度合が高くなるように設定されている。なお、緊急度が「緊急」の場合、要求レベルがLv4とLv5の2種類設定されている。
【0051】
上記要求レベルは、優先通行要求が複数の車両5の間で、重複した場合に、どの車両5を優先させるのかを決定するためのパラメータであり、最も要求レベルの高い優先通行要求の車両5に対して、優先通行処理が実施される。
【0052】
車載通信機3が要求レベルLv3以上で優先通行要求を行い、優先通行処理の実施を受けた場合、優先ポイントが必要となる。
この優先ポイントとは、例えば、予め所定のポイント数が各車載通信機3に対して与えられ、優先通行処理の実施を受けたりといった処理によって加減算されるものである。
与えられた優先ポイント数は、車載通信機3aの記憶部33に記憶され、ポイント演算部32bによって管理される。
【0053】
上記のように、優先通行処理の実施を受けるためには、優先ポイントが必要であるため、いずれの車載通信機3も、与えられた優先ポイントの範囲で、優先通行処理の実施を受ける機会が制限される。これによって、各車載通信機3それぞれが、平等に優先通行処理の実施を受けることができる。
【0054】
図4(a)に示すように、緊急度「緊急」要求レベルLv5の場合、最も優先ポイントを多く要し、3ポイントを必要とし、要求レベルLv4の場合、2ポイント、要求レベルLv3の場合、1ポイントを必要とする。このように、優先通行処理の実施を受けるために必要なポイント数は、その緊急度(要求レベル)がより高ければそれに応じて必要な優先ポイントも多く必要となるように設定されている。
このため、車両側では、緊急度が高く優先通行処理を高い確率で受けたい場合には、より多くの優先ポイントが減算されるのを条件に、より上位の要求レベルで優先通行処理を要求することができる。
【0055】
緊急度が「普通」及び「ゆっくり」である要求レベルLv1,Lv2の場合には、優先ポイントを必要としない。この優先ポイントは、急ぐことで交差点等の通行において優先されるという利益と引き替えに減算されるものであり、特に急ぐことを要求していない車両からは優先ポイントを減算する必要がないからである。
【0056】
また、優先ポイントは、加算される場合もある。
図4(b)は、優先ポイントの加算事由を示す表である。優先ポイントは、図に示すように、交差点等で優先通行処理の実施を受けた他の車両5に通行を譲った場合に加算される。すなわち、他の車両5に通行を譲った場合、その車両5には、通行を譲ったことに対する対価として優先ポイントが加算される。
このように、優先通行処理を受けた車両5の車載通信機3からは優先ポイントを減算しつつ、通行を譲った車両5の車載通信機3には優先ポイントが加算されるので、両者の間で、優先ポイントを介して優先通行処理を受ける機会を交換したのと同様の効果を得ることができる。これにより、両者の間で優先通行処理を受ける機会の均衡を調整することができる。
【0057】
また、優先ポイントは、購入することで加算することもできる。さらに、所定期間又は所定の走行距離の間、エコドライブを実行することで加算することもできる。
上記交通システムは、交通社会の向上や環境保全を目的としている。これに対して、例えば、急加減速を控えたり、アイドリングストップを行うといった、燃費を向上させるための施策を実行しつつ運転を行う状態であるエコドライブや、急加減速や急ハンドルを控えた運転を行う状態である安全運転は、上記交通システムの目的を達成するための手段の一つでもある。このため、上記エコドライブ、又は、安全運転が所定距離又は所定期間継続すると、優先ポイントが加算される。この場合、エコドライブ、又は、安全運転に寄与した対価として特典ポイントが加算されるので、車両側にエコドライブ、又は、安全運転の実行を促すことができる。これにより、交差点等の通行制御を行いつつ、環境保全にも寄与することができる。
【0058】
なお、上記優先ポイントの加減算は、車載通信機3aのポイント演算部32bによって行われる。
【0059】
〔制御部の処理について〕
次に、制御部23が通行制御を行う際の処理について説明する。
図5は、図1及び図2中の交差点J13を拡大して示した平面図である。図5において、交差点J4に繋がる方向の方路が幹線道路であるのに対して、交差点J13で交差している方路は、この幹線道路に対して交差する支線である。
交差点J13に設置された路側通信機2は、当該交差点J13に進入し通行する車両の通行制御を行う。
【0060】
また、各方路それぞれには、交差点J13に進入しようと接近する車両5を感知するための車両感知器6aが設置されている。この車両感知器6aとしては、容易に設置できることから、地磁気センサを用いた感知器が用いられている。車両感知器6aは、交差点J13から距離L(Lは、例えば150メートル)だけ離れた位置に設置されており、例えば、地磁気センサと、当該地磁気センサの感知結果を路側通信機2に送信するための通信部とを備えている。この通信部は、有線通信で路側通信機2に感知結果を送信するように設置してもよいし、無線通信で送信するように設置してもよい。無線通信で送信する場合、車両感知器6aの設置がより容易となる。
【0061】
図6は、図5の路側通信機2の制御部23が通行制御を行う際の処理の一例を示すフローチャートである。
図において、まず、制御部23の優先通行調整部23aは、車両感知器6aによる感知結果、又は、車載通信機3が送信する車両情報や優先通行要求等の受信に基づいて、交差点J13に接近する接近車両の有無を判定する(ステップS1)。接近車両がなければステップS1を繰り返し、随時接近車両の有無を判定する。
【0062】
ステップS1において、接近車両が有ると判定すると、優先通行調整部23aは、接近車両の車載通信機3から送信される優先通行要求、及びこれに含まれる要求レベルの取得を試みる(ステップS2)。
【0063】
図7は、図6中、ステップS2において優先通行調整部23aが行う優先通行要求及び要求レベルを取得する処理について示したフローチャートである。
優先通行調整部23aは、車両感知器6aによって感知された車両5からの優先通行要求の受信の有無を判定する(ステップS20)。
感知された車両5に対応する優先通行要求の受信が有ると判定すると、優先通行調整部23aは、受信した優先通行要求に含まれる要求レベルを取得する(ステップS21)。
【0064】
一方、感知された車両5に対応する優先通行要求の受信がないと判定すると、優先通行調整部23aは、その感知された車両5の要求レベルを、要求レベル「2」に設定する(ステップS22)。つまり、優先通行調整部23aは、何らかの理由で優先通行要求の送受信ができなかった車載通信機3の車両5や、車載通信機3を搭載しない車両5に対して、緊急度が「普通」である要求レベルLv2に設定する。
以上のようにして、優先通行調整部23aは、感知された接近車両の要求レベルを取得する。
【0065】
図6に戻って、感知された接近車両の要求レベルを取得すると、優先通行調整部23aは、ステップS1において接近車両が感知されてから所定期間の間に、感知された接近車両が走行する方路に交差する方路側から接近する他の接近車両(接近車両との間で進路が競合するように前方の交差点に接近する他の接近車両)の有無を判定する(ステップS3)。
【0066】
ステップS3において、他の接近車両が無いと判定すると、優先通行調整部23aは、接近車両が優先通行可能に信号制御を行い、当該接近車両に対する優先通行処理を実施する(ステップS4)。
次いで、優先通行調整部23aは、接近車両の車載通信機3に向けて、当該接近車両に対して優先通行処理を実施した旨の通知(実施通知;第一の通知)を、通知部23bに通知させ(ステップS5)、処理を終える。この通知を受信することによって、接近車両(の車載通信機3)は、自装置が送信した優先通行要求に基づいた優先通行処理が実施されたことを認識する。
なお、ステップS3において、所定期間の経過後に他の接近車両が現れた場合、優先通行調整部23aは、当該他の接近車両については、接近車両との間で優先通行処理に関する判定対象としない。よって、他の接近車両は、後に実施される接近車両に対する優先通行処理に従って交差点J13を通過することとなる。
【0067】
一方、ステップS3において、他の接近車両が有ると判定すると、優先通行調整部23aは、他の接近車両の車載通信機3から送信される優先通行要求、及びこれに含まれる要求レベルの取得を試みる(ステップS6)。なお、このステップS6の処理内容は、図7で示した処理内容と同様であるので、説明を省略する。
【0068】
ステップS6にて、他の接近車両の要求レベルを取得すると、優先通行調整部23aは、接近車両と、他の接近車両とで要求レベルが異なっているか否かを判定する(ステップS7)。両者で要求レベルが異なっていれば、優先通行調整部23aは、要求レベルが上位の接近車両が優先通行可能に信号制御を行い、優先通行処理を実施する(ステップS8)。
次いで、優先通行調整部23aは、要求レベルが上位であった接近車両の車載通信機3に向けて、当該接近車両に対して実施通知を通知部23bに通知させるとともに、要求レベルが下位であった接近車両の車載通信機3に向けて、当該車両に対する優先通行処理の実施がされなかった旨の通知(不実施通知;第二の通知)を、通知部23bに通知させ(ステップS9)、処理を終える。
このように、上記実施通知は、優先通行処理の実施に応じて実施対象の車載通信機3に送信され、上記不実施通知は、優先通行処理の実施がされなかったことに応じて、当該処理の実施がされなかった車載通信機3に送信される。
【0069】
要求レベルが下位であった接近車両の車載通信機3は、上述の不実施通知によって、優先通行要求は受信されたが当該要求が受け入れられず、他の車両に交差点J13における優先通行を譲ったことを認識することができる。
【0070】
ステップS7において、接近車両と、他の接近車両とで要求レベルが同じであると判定された場合、優先通行調整部23aは、幹線側を走行する接近車両が優先通行可能に信号制御を行い、優先通行処理を実施する(ステップS10)。よって、図5の場合、優先通行調整部23aは、紙面左右方向に延びる方路を走行する接近車両に対して優先通行処理を実施する。
その後、優先通行調整部23aは、ステップS9に進み、各接近車両に対して通知を行い、処理を終える。
【0071】
次に、路側通信機2が行う優先通行処理と、車載通信機3が行う処理との関係について説明する。
【0072】
図8は、図5中、車両5aが交差点J13に接近し通行する際の処理の一例を示したシーケンス図である。
図8では、図5中、車両5a以外の他の接近車両が存在しておらず、車両5aのみが交差点J13に接近し通行する際の処理を示している。
【0073】
まず、車両5aの車載通信機3aは、自車両の位置や速度等の車両情報と、優先通行要求とを無線送信する(ステップS31)。車載通信機3aの優先通行要求部32aは、優先通行要求を、車両情報とともに常時ブロードキャストで送信することもできるし、交差点に接近したときに必要に応じて送信することもできる。
【0074】
車両5aが進行し、交差点J13近傍の車両感知器6a等によって車両5aが感知されると、路側通信機2は接近車両の存在を認識する(ステップS32)。
車両5aがさらに進行することで、路側通信機2の通信エリアに進入すると、路側通信機2は、車両5aから送信される車両情報の他、優先通行要求を受信する(ステップS33)。なお、本例では、車載通信機3aは、要求レベルLv3で優先通行要求を送信している場合を示している。よって、路側通信機2は、車載通信機3aが要求レベルLv3で優先通行要求を送信していることを認識する。
【0075】
また、ステップS32で接近車両を感知した路側通信機2は、感知してから所定期間(例えば4秒)の間、他の接近車両の感知の有無を判定する(図6中のステップS3の処理に相当)。ここでは、車両5a以外の車両は無いため、路側通信機2は、接近車両を感知してから所定期間の経過後、車両5aに対して優先通行処理を実施することを決定し、当該優先通行処理を実施する(ステップS34)。
図5の場合、路側通信機2の優先通行調整部23aは、優先通行処理として、車両5a前方の交通信号機1aの灯色を、即座に青色に制御してもよいし、車両5aが交差点J13を通行するタイミングで青色になるように、青色の時間の延長、赤色の時間の短縮といった制御をしてもよい。
【0076】
さらに、路側通信機2の通知部23bは、車載通信機3aに対して優先通行処理を実施した旨の通知を送信する(ステップS35)。
【0077】
車載通信機3aのポイント演算部32bは、路側通信機2からの優先通行処理を実施した旨の通知を受信すると(ステップS36)、自装置の有する優先ポイントから1ポイント減算する(ステップS37)。このように、ポイント演算部32bは、優先通行処理を実施した旨の通知を受信すると、優先通行処理を受けるのに必要なポイント数を減算する。なお、処理を受けるための必要ポイント数は、上述のように、優先通行要求の要求レベルに応じて定まるため、ポイント演算部32bは、自装置が送信した優先通行要求の要求レベルに基づいて求める。
【0078】
以上のようにして、路側通信機2及び車載通信機3aは、交差点J13における処理を終える。
【0079】
図9は、図5中、車両5a及び他の車両5bが交差点J13に接近し通行する際の処理の一例を示したシーケンス図である。
図9では、図5中、幹線側を走行する車両5aと、支線側を走行する他の車両5bとが交差点J13に接近している際の処理を示しており、車両5aが、他の車両5bよりも先行して交差点J13に接近しているものとする。なお、ここでは、車両5a,5b以外の車両については考慮しない。
【0080】
図9に示すように、車両5aの車載通信機3a、及び他の車両5bの車載通信機3bは、車両情報とともに、優先通行要求を無線送信する(ステップS41,S42)。
先行して接近する車両5aが進行し、車両感知器6aに感知されると、路側通信機2は接近車両である車両5aの存在を認識する(ステップS43)。
車両5aがさらに進行して路側通信機2の通信エリアに進入すると、路側通信機2は、車両5aの車載通信機3aから送信される車両情報の他、優先通行要求を受信する(ステップS44)。本例では、車載通信機3aは、要求レベルLv4で優先通行要求を送信している場合を示している。
【0081】
ステップS43で接近車両を感知した路側通信機2は、感知してから所定期間(例えば4秒)の間、他の接近車両の感知の有無を判定する(図6中のステップS3の処理に相当)。本実施形態では、上記所定期間内に、他の車両5bを感知したものとする(ステップS45)。
【0082】
ここで、上記所定期間は、その後に、車両5a,5bのいずれかの車両に対して優先通行処理が実施されることで、実施されなかった車両の運行を無理に妨げることがない期間に設定されている。
つまり、仮に後から交差点J13に進入する他の車両5bに優先通行処理が実施された場合、車両5aは、すでに、他の車両5bよりは交差点J13により接近している。よって、車両5aが交差点J13に到達直前に、他の車両5bに対して優先通行処理が実施されると、車両5aの運行を無理に妨げるおそれが生じる。従って、このようなことが生じないように、上記期間を設定し、いずれの車両に優先通行処理を実施しても、優先通行処理が実施されなかった車両の運行を妨げることがないようにされている。
【0083】
本実施形態では、車両感知器6aは、交差点J13から150メートルの地点に設置されており、車両5が車両感知器6aの地点で時速54キロメートル毎時で走行するとすると、約10秒で交差点J13に到達する。よって、車両5が車両感知器6aの地点から進行して、交差点J13まで到達するのにある程度の距離を確保できる値として、上記所定期間を4秒としている。
【0084】
なお、上記所定期間内に他の車両が感知されなかった場合、優先通行調整部23aは、要求レベルの比較を中止し、車両5aの運行を優先し、車両5aに優先通行処理を実施する。つまり、上記所定期間後であって、未だ車両5aが交差点J13に到達していないときに他の車両が感知されたとしても、優先通行調整部23aは、車両5aに対する優先通行処理を終えるまでは、他の車両に対して優先通行処理を実施することはない。
【0085】
このように、本例において、優先通行調整部23aは、車両感知器6aが交差点J13に接近する車両5aを感知した後、所定期間の間に、車両5aの車載通信機3aとの間で進路が競合するように交差点J13に接近する他の車両5bを感知すると、両要求レベルを比較するように構成されているので、いずれの車両に優先通行処理を実施しても、優先通行処理が実施されなかった車両の運行を妨げることがない。
【0086】
ステップS45にて他の車両5bを感知した後、他の車両5bの車載通信機3bが路側通信機2の通信エリアに進入すると、路側通信機2は、他の車両5bから送信される優先通行要求を受信する(ステップS46)。本例では、車載通信機3bは、要求レベルLv3で優先通行要求を送信している場合を示している。
【0087】
次いで、路側通信機2は、両車載通信機3からの優先通行要求の要求レベルを比較する(ステップS47、図6中ステップS7の処理)。この結果、車載通信機3aの要求レベルの方が上位(要求レベルLv4)なので、路側通信機2の優先通行調整部23aは、車両5aに対して優先通行処理を実施することを決定し、当該優先通行処理を実施する(ステップS48)。優先通行処理の内容については、上述の通りである。
【0088】
次に、路側通信機2の通知部23bは、車載通信機3aに対して優先通行処理を実施した旨の通知(実施通知;第一の通知)を送信するとともに、車載通信機3bに対して優先通行処理を実施しなかった旨の通知(不実施通知;第二の通知)を送信する(ステップS49)。
【0089】
車載通信機3aのポイント演算部32bは、路側通信機2からの実施通知を受信すると(ステップS50)、自装置の有する優先ポイントから2ポイント減算する(ステップS51)。本実施形態では、車載通信機3aは、要求レベルLv4で優先通行要求を送信し優先通行処理の実施を受けたので、ポイント演算部32bは、この要求レベルに応じた必要ポイントである2ポイント(図4参照)を減算する。
【0090】
一方、車載通信機3bのポイント演算部32bは、路側通信機2からの不実施通知を受信すると(ステップS52)、自装置の有する優先ポイントに1ポイント加算する(ステップS53)。この場合、優先通行要求を送信した結果、車載通信機3aを搭載した車両5aに優先通行を譲ったこととなる。よって、ポイント演算部32bは、他の車両に優先通行を譲ったことにより付与される1ポイント(図4参照)を加算する。
【0091】
このように本実施形態では、車載通信機3が、要求の度合を複数段階で示した要求レベルを含む優先通行要求を路側通信機2に送信するものであるので、路側通信機2の優先通行調整部23aは、車載通信機3aからの要求レベルを含む優先通行要求と、当該車載通信機3aとの間で進路が競合するように交差点J13に接近する他の車載通信機3bからの要求レベルを含む優先通行要求とを受信すると、両要求レベルを比較し、要求レベルが上位の車載通信機3を搭載した車両5にのみ優先通行処理を実施することができる。
【0092】
この場合、要求レベルに応じて優先通行処理を実施する車両5を決定できるので、優先通行処理を実施する車両5の決定を容易にできる。
また、この場合、前記通知部23bが、優先通行処理の実施を受けた車両5の車載通信機3に対してのみ実施通知(第一の通知)を送信することで、優先通行処理の実施を受けた車両5のみ優先ポイントを減算させることができる。
【0093】
さらに、本実施形態の通知部23bは、前記特典が付与されなかったことに応じて送信される不実施通知(第二の通知)を、優先通行処理の実施がされなかった車両5の車載通信機3に対して送信し、車載通信機3のポイント演算部32bは、不実施通知を受信すると、優先ポイントを所定数だけ加算する。
従って、優先通行処理の実施を受けた車両5の車載通信機3からは優先ポイントを減算しつつ、優先通行処理を譲った車両5の車載通信機3には優先ポイントが加算されるので、両者の間で、優先ポイントを介して優先通行処理を受ける機会を交換したのと同様の効果を得ることができる。これにより、両者の間で優先通行処理を受ける機会の均衡を調整することができる。
【0094】
上記図9では、各車両5a,5bが共に車載通信機3(3a,3b)を搭載している場合を示したが、一方の車両5が車載通信機3を搭載していない場合や、車載通信機3を搭載していても故意に又は故障等何らかの理由で路車間通信に関する処理を停止し行わない(行えない)場合もありうる。
図10は、図9の場合において他の車両5bが車載通信機3を搭載していない又は搭載していても路車間通信に関する処理を行わないときの処理の一例を示したシーケンス図である。
【0095】
図10において、ステップS61(優先通行要求の送信)、ステップS62(車両5aの感知)、ステップS63(車載通信機3aからの優先通行要求の受信)、及び、ステップS64(他の車両5bの感知)については、図9中、ステップS41、ステップS43〜S45と同様である。
【0096】
本例では、他の車両5bが車載通信機3を搭載していない又は搭載していても路車間通信に関する処理を行わないので、路側通信機2は、他の車両5bに対応する優先通行要求を受信することがない。このため、優先通行調整部23aは、上記所定期間の経過後、他の車両5bに対応する優先通行要求を受信していないことを認識すると、他の車両5bに対して、緊急度「普通」である要求レベルLv2を設定する(ステップS65、図7中ステップS22に対応)。
【0097】
これにより、路側通信機2の優先通行調整部23aは、両車両5の要求レベルを比較する(ステップS66)。この結果、車載通信機3aの要求レベルの方が上位(要求レベルLv4)なので、路側通信機2の優先通行調整部23aは、車両5aに対して優先通行処理を実施することを決定し、当該優先通行処理を実施する(ステップS67)。
【0098】
次いで、路側通信機2の通知部23bは、車載通信機3aに対して実施通知を送信する(ステップS68)。車載通信機3aのポイント演算部32bは、路側通信機2からの実施通知を受信すると(ステップS69)、自装置の有する優先ポイントから2ポイント減算する(ステップS70)。
【0099】
他の車両5bは、車載通信機3を搭載していないので、路側通信機2が不実施通知を送信したとしても、何ら処理は行われない。
【0100】
以上のように、本システムは、交差点J13に接近する車両5を感知する車両感知器6aを備えているので、車両感知器6aが感知した車両5に対応する優先通行要求を受信しなかった場合に、優先通行調整部23aは、予め定めた要求レベルをLv2として設定するように構成することができる。
これによって、車載通信機3を有しない車両や、車載通信機3を有していても何らかの理由で優先通行要求を送信できなかった車両5等に対しても、要求レベルを設定することができる。
【0101】
なお、上記例では、後から交差点J13に進入する他の車両5bが車載通信機3を搭載しない場合を例示したが、先行して交差点J13に進入する車両5aが車載通信機3を搭載しない場合も、上記の他の車両5bと同様、要求レベルLv2に設定される(図7)。
【0102】
図11は、優先ポイントが加算される場合の処理の例を示したシーケンス図であり、(a)は、車両5がエコドライブによって優先ポイントが加算される処理の一例を示している。
車載通信機3aのポイント演算部32bは、制御部32が取得する車両5の車両速度等の情報から、当該車両5が急加減速を伴わない運転状態であるエコドライブの状態であるか否かを判断できる。所定期間又は所定走行距離の間エコドライブを継続することで優先ポイントが加算されることから(図4(b)参照)、ポイント演算部32bは、車両5がエコドライブの状態であると判断すると(ステップS80)、その期間又は走行距離の積算を開始する(ステップS81)。
【0103】
その後、積算の結果、優先ポイントの加算対象に設定された目標期間又は目標走行距離に達すると、ポイント演算部32bは、エコドライブの数値目標達成を検知し(ステップS82)、自装置の優先ポイントの加算を行う(ステップS83)。なお、図例では、10ポイント加算している。
【0104】
図11(b)は、ポイントを購入することによって優先ポイントが加算される処理の一例を示している。
車両5(車載通信機3)のユーザが優先ポイントを購入すると、その事実が中央装置4等に入力される。路側通信機2は、前記入力に基づいて、優先ポイントの加算事由が発生したことを認識し(ステップS90)、ポイント加算命令をポイント加算事由が発生した車載通信機3に送信する(ステップS91)。
【0105】
ポイント加算命令を受信した車載通信機3のポイント演算部32bは、当該ポイント加算命令に基づいて、自装置の優先ポイントの加算を行う(ステップS92)。
【0106】
図12は、優先ポイントが加算される場合の処理の他の例を示したシーケンス図である。
車両5(車載通信機3)のユーザが優先ポイントを購入、あるいはエコドライブ等によって、優先ポイントの加算事由が発生し、路側通信機2又は中央装置4がその優先ポイントの加算事由の発生を認識すると(ステップS100)、路側通信機2又は中央装置4は、自装置に繋がる端末装置のカードリーダ等に差し込まれて接続される、前記ユーザが所有している車載通信機3に接続可能であって優先ポイントに関する処理情報が記憶可能な優先ポイント処理用のカードにポイント加算命令を書き込む(ステップS101)。
【0107】
ユーザが、そのカードを自己の車載通信機3のカードリーダ等に差し込んで車載通信機3に接続することで、車載通信機3は、当該カードに書き込まれたポイント加算命令を取得する(ステップS101)。
次いで、車載通信機3のポイント演算部32bは、当該ポイント加算命令に基づいて、自装置の優先ポイントの加算を行う(ステップS103)。
【0108】
なお、優先ポイントの加算事由には、上述の購入や、エコドライブ、安全運転以外に、無事故無違反が所定期間継続した場合等も設定することができる。
【0109】
上記のように構成された本実施形態のシステムは、車載通信機3と、車載通信機3との間で通信可能であるとともに路側に設置されて車両5の通行制御を行う路側通信機2と、を備えた車両5の通行制御システムであり、路側通信機2は、所定区間としての交差点Jに接近する車載通信機3からの要求(優先通行要求)に応じて、車載通信機3を搭載した車両5に対して、優先通行処理(交差点Jでの通行における特典)を実施する優先通行調整部23aと、優先通行処理の実施に応じて送信される実施通知(第一の通知)を車載通信機3に対して送信する通知部23bとを備え、車載通信機3は、実施通知を受信すると、自装置を搭載した車両5が優先通行処理の実施を受けるのに必要な優先ポイント(特典ポイント)を所定数だけ減算するポイント演算部32bを備えていることを特徴としている。
【0110】
本実施形態によれば、車両5が交差点Jでの優先通行処理の実施を受け、路側通信機2から実施通知を受信すると、車載通信機3のポイント演算部32bが処理の実施を受けるのに必要な優先ポイントを減算するので、車両5が優先通行処理の実施を受ける機会を、当該車両5が使用可能な優先ポイントの範囲内に制限することができる。
このため、車両5は、当該車両5側の要求により、優先ポイントの範囲内で必要に応じて優先通行処理の実施を受けることができる。一方、優先通行処理の実施を受ける機会は優先ポイントの範囲内に制限されるので、優先通行処理の実施を受ける機会を、優先ポイントによって他の車両との間で調整し均等にできる。
【0111】
このように、本実施形態によれば、交差点Jでの優先通行処理の実施を受ける機会を均等に与えることで、車両5側の要求を考慮しかつトータルとして車両5それぞれを平等に取り扱うように交差点Jの通行制御を行うことができる。
【0112】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定されることはない。上記実施形態では、本発明を交差点に適用した場合を例示したが、交差点以外に、例えば、対面通行可能な道路の途中に存在する、片側交互通行しかできない、車両同士で進路が競合する区間についても適用することができる。
また、上記実施形態において、図6中、ステップS10では、幹線側を走行する接近車両に優先通行処理を実施する場合を示したが、交差する各方路が幹線支線の関係になくほぼ同等の関係である場合には、先着車両を優先して優先通行処理を実施することもできる。
【0113】
また、上記実施形態では、優先ポイントは、各車載通信機3のポイント演算部32bが個々に演算管理する場合を示したが、各車載通信機3aの優先ポイントを路側通信機2や、中央装置4によって管理してもよい。
さらに、上記実施形態中の路側通信機2において、優先通行調整部23a及び通知部23bによって実現される機能は、中央装置4が有していても良い。
【0114】
また、本実施形態では、優先通行要求をするために必要な優先ポイントについては、要求レベルの段階に応じたポイント数に設定した場合を示したが、例えば、片側車線の数が多ければ多い交差点ほど、必要ポイントが多くなるといったように、交差点の大きさに応じて必要な優先ポイントの数を設定してもよい。
【0115】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0116】
1 交通信号機(交通規制手段)
2 路側通信機(制御装置、ポイント制御装置)
3 車載通信機
6a 車両感知器(感知装置)
23a 優先通行調整部(通行制御部)
23b 通知部
32a 優先通行要求部
32b ポイント演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載通信機と、前記車載通信機との間で通信可能であるとともに路側に設置されて車両の通行制御を行う制御装置と、を備えた車両の通行制御システムであって、
前記制御装置は、所定区間に接近する前記車載通信機からの要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与する通行制御部と、前記特典の付与に応じて送信される第一の通知を前記車載通信機に対して送信する通知部とを備え、
前記車載通信機は、前記第一の通知を受信すると、自装置を搭載した車両が前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算するポイント演算部を備えていることを特徴とする通行制御システム。
【請求項2】
前記車載通信機は、前記特典の要求とともに、当該要求の度合を複数段階で示した要求レベルを前記制御装置に送信し、
前記制御装置の通行制御部は、前記車載通信機の要求及びその要求レベルと、前記車両との間で進路が競合するように前記所定区間に接近する他の車両の車載通信機からの要求及びその要求レベルとを受信すると、両要求レベルを比較し、前記要求レベルが上位の車載通信機を搭載した車両にのみ前記特典を付与し、
前記通知部は、前記特典を付与した車両の車載通信機に対してのみ前記第一の通知を送信する請求項1に記載の通行制御システム。
【請求項3】
前記車載通信機のポイント演算部は、前記第一の通知を受信すると、自装置が要求した要求レベルが上位であるほど、前記特典ポイントを多く減算する請求項2に記載の通行制御システム。
【請求項4】
前記通知部は、前記特典が付与されなかったことに応じて送信される第二の通知を、前記特典が付与されなかった車両の車載通信機に対して送信し、
前記車載通信機のポイント演算部は、前記第二の通知を受信すると、前記特典ポイントを所定数だけ加算する請求項2又は3に記載の通行制御システム。
【請求項5】
前記所定区間に接近する車両を感知する感知手段をさらに備え、
前記通行制御部は、前記感知手段が感知した車両に対応する前記特典の要求及び要求レベルを受信しなかった場合、予め定めた所定の要求レベルを設定する請求項2に記載の通行制御システム。
【請求項6】
前記制御装置の通行制御部は、前記感知手段によって前記所定区間に接近する車両を感知した後、所定期間の間に、当該車載通信機との間で進路が競合するように前記所定区間に接近する他の車両を感知すると、両要求レベルを比較する請求項5に記載の通行制御システム。
【請求項7】
前記制御装置の通行制御部は、前記感知手段が前記所定期間の間に前記他の車両を感知しなかった場合、要求レベルの比較を中止する請求項6に記載の通行制御システム。
【請求項8】
前記特典は、当該特典が付与される車両が前記所定区間内を優先して通行可能に、前記所定区間に設置された交通規制手段を前記通行制御部が制御する処理である請求項1〜7のいずれか一項に記載の通行制御システム。
【請求項9】
前記交通規制手段は、交通信号機であり、
前記処理は、前記特典が付与される車両に対する前記交通信号機の青色の灯色時間を延長し、又は、赤色の灯色時間を短縮するように制御する処理である請求項8に記載の通行制御システム。
【請求項10】
前記車載通信機のポイント演算部は、自装置を搭載した車両が行う、燃費を向上させるための施策の実施を伴った運転状態、又は、急加減速や急ハンドルを控えた運転状態が、所定距離、又は、所定期間継続すると、前記特典ポイントを加算する請求項1〜9のいずれか一項に記載の通行制御システム。
【請求項11】
所定区間に接近する車載通信機の要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与する通行制御部と、
前記車載通信機に前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算させるための第一の通知を前記車載通信機に対して送信する通知部と、を備えていることを特徴とするポイント制御装置。
【請求項12】
所定区間に接近する車載通信機からの要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与するステップと、
前記特典の付与に応じて送信される第一の通知を前記車載通信機に対して送信するステップと、
前記第一の通知を受信すると、前記車載通信機を搭載した車両が前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算するステップと、を備えていることを特徴する車両の運行制御方法。
【請求項1】
車載通信機と、前記車載通信機との間で通信可能であるとともに路側に設置されて車両の通行制御を行う制御装置と、を備えた車両の通行制御システムであって、
前記制御装置は、所定区間に接近する前記車載通信機からの要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与する通行制御部と、前記特典の付与に応じて送信される第一の通知を前記車載通信機に対して送信する通知部とを備え、
前記車載通信機は、前記第一の通知を受信すると、自装置を搭載した車両が前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算するポイント演算部を備えていることを特徴とする通行制御システム。
【請求項2】
前記車載通信機は、前記特典の要求とともに、当該要求の度合を複数段階で示した要求レベルを前記制御装置に送信し、
前記制御装置の通行制御部は、前記車載通信機の要求及びその要求レベルと、前記車両との間で進路が競合するように前記所定区間に接近する他の車両の車載通信機からの要求及びその要求レベルとを受信すると、両要求レベルを比較し、前記要求レベルが上位の車載通信機を搭載した車両にのみ前記特典を付与し、
前記通知部は、前記特典を付与した車両の車載通信機に対してのみ前記第一の通知を送信する請求項1に記載の通行制御システム。
【請求項3】
前記車載通信機のポイント演算部は、前記第一の通知を受信すると、自装置が要求した要求レベルが上位であるほど、前記特典ポイントを多く減算する請求項2に記載の通行制御システム。
【請求項4】
前記通知部は、前記特典が付与されなかったことに応じて送信される第二の通知を、前記特典が付与されなかった車両の車載通信機に対して送信し、
前記車載通信機のポイント演算部は、前記第二の通知を受信すると、前記特典ポイントを所定数だけ加算する請求項2又は3に記載の通行制御システム。
【請求項5】
前記所定区間に接近する車両を感知する感知手段をさらに備え、
前記通行制御部は、前記感知手段が感知した車両に対応する前記特典の要求及び要求レベルを受信しなかった場合、予め定めた所定の要求レベルを設定する請求項2に記載の通行制御システム。
【請求項6】
前記制御装置の通行制御部は、前記感知手段によって前記所定区間に接近する車両を感知した後、所定期間の間に、当該車載通信機との間で進路が競合するように前記所定区間に接近する他の車両を感知すると、両要求レベルを比較する請求項5に記載の通行制御システム。
【請求項7】
前記制御装置の通行制御部は、前記感知手段が前記所定期間の間に前記他の車両を感知しなかった場合、要求レベルの比較を中止する請求項6に記載の通行制御システム。
【請求項8】
前記特典は、当該特典が付与される車両が前記所定区間内を優先して通行可能に、前記所定区間に設置された交通規制手段を前記通行制御部が制御する処理である請求項1〜7のいずれか一項に記載の通行制御システム。
【請求項9】
前記交通規制手段は、交通信号機であり、
前記処理は、前記特典が付与される車両に対する前記交通信号機の青色の灯色時間を延長し、又は、赤色の灯色時間を短縮するように制御する処理である請求項8に記載の通行制御システム。
【請求項10】
前記車載通信機のポイント演算部は、自装置を搭載した車両が行う、燃費を向上させるための施策の実施を伴った運転状態、又は、急加減速や急ハンドルを控えた運転状態が、所定距離、又は、所定期間継続すると、前記特典ポイントを加算する請求項1〜9のいずれか一項に記載の通行制御システム。
【請求項11】
所定区間に接近する車載通信機の要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与する通行制御部と、
前記車載通信機に前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算させるための第一の通知を前記車載通信機に対して送信する通知部と、を備えていることを特徴とするポイント制御装置。
【請求項12】
所定区間に接近する車載通信機からの要求に応じて、当該車載通信機を搭載した車両に対して前記所定区間での通行における特典を付与するステップと、
前記特典の付与に応じて送信される第一の通知を前記車載通信機に対して送信するステップと、
前記第一の通知を受信すると、前記車載通信機を搭載した車両が前記特典の付与を受けるのに必要な特典ポイントを所定数だけ減算するステップと、を備えていることを特徴する車両の運行制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−150630(P2012−150630A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8507(P2011−8507)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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