説明

速乾性木材表面処理剤

【課題】人体に無害な天然成分100%で構成され、且つ荏胡麻油や亜麻仁油、桐油等の乾性油より乾燥時間が早く、更には、木材の木目を際立たせたり、表面の艶を出す等、木材の美感を向上させる機能を有する速乾性木材表面処理剤を提供する。
【解決手段】油脂の鹸化価が170〜200の範囲である動植物油脂において、その油脂を構成する脂肪酸の内、オレイン酸とリノール酸との総量が65.0%以上で、且つそのオレイン酸とリノール酸との比が1.0:0.6〜1.1である動植物油脂を5.0重量%以上、天然ワックスであるカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ホホバワックス、木蝋、セラック蝋、イボタ蝋、蜜蝋、鯨蝋、ラノリン、モンタンロウ、オゾケライト、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスの1種又は2種以上を40.0重量%以下配合する速乾性木材表面処理剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の木製内装又は木製家具等に使用され、乾燥性に優れる事から作業性が大幅に向上し、且つ天然成分100%の木材表面処理剤に関するものであり、更に詳しくは、木材の木目を際立たせ、更には表面の艶を出す等、木材の美感を向上させる機能を有する、天然成分100%の速乾性木材表面処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物の木製内装又は木製家具等に使用される木材には、種々の表面処理剤が使用され、木目を際立たせたり、艶を出す等の美感向上の処理が施されている。その表面処理剤には、必須成分としてアセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、ジオキサン、セロソルブ等の有機溶剤が配合されている。しかし、これらの有機溶剤は、人体に対して有害であり、また揮発性が高い為、その使用に際しては作業空間に充満しない様に作業場の換気を十分に行う必要があった。また、作業時間が長い場合には、作業者の健康を損なう恐れもあった。その上、有機溶剤は木材内部に浸透し易い為、たとえ表面が乾燥していても、木材内部から長期に渡って有機溶剤が徐々に揮発していき、居住者が鼻や目、喉の刺激、頭痛を訴える等、人体に悪影響を及ぼす場合が多かった。近年、環境汚染物質に対する規制等の動向を受け、地球環境に優しい木材表面処理剤等の塗料が求められている。また、住宅・家具業界では、ホルマリンを始めとする環境ホルモンによるアレルギーや、化学物質過敏症等の所謂シックハウス症候群が社会問題になっており、この様な背景から、植物から採取した天然原料を主体とする「エコ塗料」が使用されつつある。
【0003】
これら「エコ塗料」として、亜麻仁油、荏胡麻油、桐油等の植物性の乾性油を主成分とするものや、これら乾性油を加工したスタンド油やボイル油、更にはオレンジから得たオレンジシトラール等の精油成分を主成分とする木材表面処理剤が開発され、使用されつつある。しかし、これらのものは、乾燥するまでの時間が2日程度と長く、作業効率的に問題があった。その上、特有の好ましくない臭気が強く、その臭気により作業者に不快感を与え、乾燥後もその臭気が残り、居住者にとっても不快感を与えるものであった。この乾燥時間の長さを解決する技術として特許文献1が報告されている。このものは、天然原料であるリグノフェノール誘導体を使用したものであるが、それを溶解させる為、アセトンや酢酸メチル等の人体に有害な有機溶剤が必須成分として配合されている。この様に現行の「エコ塗料」においても問題が山積しており、これら問題点を解消した、即ち、人体に無害な天然成分100%で、且つ乾燥性に優れる木材表面処理剤の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開2003−226841
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、人体に無害な天然成分100%で構成され、且つ荏胡麻油や亜麻仁油、桐油等の乾性油より乾燥時間が短く、更には、木材の木目を際立たせたり、表面の艶を出す等、木材の美感を向上させる機能を有する速乾性木材表面処理剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、選ばれた特定の動植物油脂を配合した速乾性木材表面処理剤が、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明は、油脂の鹸化価が170〜200の範囲である動植物油脂において、その油脂を構成する脂肪酸の内、オレイン酸とリノール酸との総量が65.0%以上で、且つそのオレイン酸とリノール酸との比が1.0:0.6〜1.1である動植物油脂を5.0重量%以上、天然ワックスであるカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ホホバワックス、木蝋、セラック蝋、イボタ蝋、蜜蝋、鯨蝋、ラノリン、モンタンロウ、オゾケライト、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスの1種又は2種以上を40.0重量%以下配合する速乾性木材表面処理剤に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の速乾性木材表面処理剤は、人体に無害な天然成分100%で構成され、荏胡麻油や亜麻仁油、桐油等の乾性油より乾燥時間が早く、乾燥性に優れており、且つ木材の木目を際立たせたり、表面の艶を出す等、木材の美感を向上させる機能を有する速乾性木材表面処理剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明では、油脂の鹸化価が170〜200の範囲である動植物油脂において、その油脂を構成する脂肪酸の内、オレイン酸とリノール酸との総量が65.0%以上で、且つそのオレイン酸とリノール酸との比が1.0:0.6〜1.1である動植物油脂を使用する。前記条件に合致していれば特に限定はなく、その油脂の1種又は2種以上を混合して用いる。また、この条件を満たすものとしては、例えば、ごま油、ツンブ核油、マツナッツ油、ゆず種子油、落花生油等が挙げられる。これら動植物油脂の内、米油(米糠油)は、木材へ塗布した場合の乾燥性や、木目を際立たせたり、表面の艶を出す等、木材の美感を向上する機能に優れており特に好ましい。
【0009】
前記動植物油脂を、本発明の速乾性木材表面処理剤に対し、5.0重量%以上、好ましくは10.0重量%以上配合する。5.0重量%未満では、本発明が目的とする木材へ塗布した場合の乾燥性や、木目を際立たせたり、表面の艶を出す等、木材の美感を向上する機能が不十分となり好ましくない。
【0010】
本発明の速乾性木材表面処理剤には、木材表面の保護や艶の更なる向上を図る目的で、天然ワックスであるカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ホホバワックス、木蝋、セラック蝋、イボタ蝋、蜜蝋、鯨蝋、ラノリン、モンタンロウ、オゾケライト、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスの1種又は2種以上を使用する。これらの天然ワックスは特に限定はないが、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ホホバワックス等の植物性ワックスを使用した場合には、100%
植物原料で構成された速乾性木材表面処理剤を得ることが出来る。
【0011】
前記天然ワックスを本発明の速乾性木材表面処理剤に対し、40.0重量%以下、好ましくは5〜30重量%の範囲で配合する。40重量%を超えて配合した場合、製剤が硬くなり過ぎ塗布が困難となり、作業性の面で好ましくない。
【0012】
また、乳化剤及び水等を配合し、O/W又はW/Oエマルジョンタイプの木材表面処理剤を調製し、使用した場合も、速乾性や木材表面の美感向上等、本発明が目的とする機能を十分に発揮することが出来る。
【0013】
本発明の速乾性木材表面処理剤には、本発明の機能を損なわない範囲で通常木材表面処理剤に配合される成分、例えば荏胡麻油、亜麻仁油、桐油等の乾性油や、これら乾性油を加工したスタンド油やボイル油、精油等の天然成分を配合することが出来る。
【0014】
本発明の速乾性木材表面処理剤は、建造物の床板、壁板、柱、敷居、框、幅木、廻り縁、欄間、木製ドア、内部建具、箪笥、ベッド、机、イス等の家具、木製工芸等に使用出来、ウエス等の布に含浸させて、木材表面に塗布し擦り込み使用する。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
実施例1
米糠及び米胚芽を圧搾(冷圧)採油し、油脂に通常行われる方法での脱色、脱臭等の精製を行い、鹸化価が187.0、油脂を構成する脂肪酸の内、オレイン酸とリノール酸との総量が79.0%、オレイン酸とリノール酸との比が1.0:0.9である油脂を得、この油脂100%を用い液状の速乾性木材表面処理剤を得た。
【0017】
実施例2
前記液状の速乾性木材表面処理剤85部に対し、キャンデリラワックスを15部配合し、80〜90℃にて攪拌溶解後、30℃以下まで冷却し、ワックス状の速乾性木材表面処理剤を得た。
【0018】
実施例3〜5
表1に示す組成の速乾性木材表面処理剤を調製し、以下の評価方法に従い評価した。その結果を表1に示す。
【0019】
温度23℃、湿度55%の環境下において、50cm×50cm四方(厚さ1cm)の檜板に、実施例1〜5の速乾性木材表面処理剤を15.0g塗布し、その時の「塗布のし易さ」、「塗布時及び乾燥後の臭気」、「乾燥時間」、及び「乾燥後の板表面の状態(木目の際立ち具合や艶)」について、20名のパネラーによる官能評価を行った。尚、評価点数を5点満点とし、20名の平均点を算出し、以下の基準に従い評価した。また、実施例1、2の結果も表1に示す。
<評価基準>
◎:4.5点以上(非常に良好である)
○:4.0点以上、4.5点未満(良好である)
△:3.0点以上、4.0点未満(やや悪い)
×:3.0点未満(悪い)
【0020】
【表1】

【0021】
比較例1〜5
表2に示す組成の木材表面処理剤を調製し、上記評価方法に従い評価した。その結果を表2に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
実施例1〜5の速乾性木材表面処理剤は、荏胡麻油や桐油に比べ、乾燥時間が大幅に短縮化され、且つ乾燥後の板表面の木目の際立ち具合や艶においても優れていた。更には、塗布もし易く、塗布時及び乾燥後の臭気も良好であった。一方、比較例1〜5の木材表面処理剤は、評価項目の全てを満足するものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の速乾性木材表面処理剤は、人体に無害な天然成分100%で構成され、荏胡麻油や亜麻仁油、桐油等の乾性油を主成分とした従来の「エコ塗料」より、乾燥時間が大幅に短縮化されると共に、木材の木目を際立たせたり、表面の艶を出す等、木材の美感を向上させる機能を有する速乾性木材表面処理剤である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂の鹸化価が170〜200の範囲である動植物油脂において、その油脂を構成する脂肪酸の内、オレイン酸とリノール酸との総量が65.0%以上で、且つそのオレイン酸とリノール酸との比が1.0:0.6〜1.1である動植物油脂を5.0重量%以上、天然ワックスであるカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ホホバワックス、木蝋、セラック蝋、イボタ蝋、蜜蝋、鯨蝋、ラノリン、モンタンロウ、オゾケライト、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスの1種又は2種以上を40.0重量%以下配合する速乾性木材表面処理剤。

【公開番号】特開2006−326886(P2006−326886A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150348(P2005−150348)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(500247769)株式会社 ルバンシュ (7)
【出願人】(503294326)有限会社ライスクリエイト (3)
【Fターム(参考)】