説明

造血におけるIL−12の使用

本発明の態様は、造血の回復を必要とする哺乳類において生じさせるための、造血の増強又は刺激におけるインターロイキン-12(IL12)の使用に関する。本発明の特定の態様は、疾患状態に対処するために使用される1以上の治療措置に関連する造血毒性を緩和するための補助的な療法としての、IL-12の使用に関する。他の態様は、様々な造血欠乏を寛解させるためのIL-12の使用を含む。さらに他の態様は、造血再構築細胞、造血前駆細胞、および造血幹細胞のインビボ増殖のための、Il-12の使用に関する。他の開示された態様は、骨髄の保存または回復のための、Il-12の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2003年7月3日に出願された米国仮出願第60/485,170号に関連し、その優先権を主張する出願である(該仮出願は、参照によって、その全体が援用される)。
【背景】
【0002】
多くの疾患状態は、一般的に不十分な造血に、又は1以上の血球タイプまたは血液系統(blood lineages)の不十分な造血に起因する。なお他の疾患状態は、白血病などの造血系の1以上の系統の機能不全(dysfunction)に起因する。そのうえ、特定の疾患状態(例えば、癌)に対処するために個体に与えられる多くの治療は、個体の血液供給を偶発的に減少させる、および/または、骨髄不全を生じさせる。これらの治療の有毒な造血性の副作用は、好結果をもたらす治療の可能性を減少させ、頻繁に治療の停止に至る制限的な作用である。
【0003】
従って、造血を修復(restore)させること及び造血欠乏(hematopoietic deficiencies)を緩和(alleviate)させることができる療法を開発する必要がある。係る療法は、血液供給を維持する、刺激する、および/または、調節する能力を有するであろう;また、主要な療法(例えば、化学療法または放射線療法)の毒性効果を減少させるために与えられる付属的な療法として有用であろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、一般に、それを必要とする被験者の造血を刺激すること又は増強することにおけるインターロイキン-12(IL-12)の使用に関する。本発明の様々な態様において、前記被験者は哺乳類であり、好適な哺乳類はヒトである。本発明の様々な態様における使用に適切なIL-12の好適なヒト投与量は、約2000 ng/kg〜約10 ng/kg未満の範囲である;しかしながら、約 1 ng/kg以下の用量も本発明の特定の治療方法に適切でありえる。
【0005】
本発明の態様において、造血は、一般的に骨髄に居住している、造血再構築細胞、造血幹/前駆細胞または他の造血細胞のインビボでの増殖(proliferation)または増大(expansion)に関与(involve)することができる;或いは、造血は、一般的に骨髄に居住している、造血再構築細胞、幹/前駆細胞または他の造血細胞の、化学性および/または放射性の傷害からの防護に関与することができる。
【0006】
本発明の特定の態様は、哺乳類における疾患状態を治療する方法に関する。前記方法は、前記疾患状態を標的とすることを意図する哺乳類に対する治療を適用すること(ここで、前記治療は、関連する造血毒性を有する)、および付加的に1以上の治療上有効な用量のIL-12を、前記治療の適用時の近くで投与すること(ここで、前記哺乳類に対するIL-12の投与は、前記治療の造血毒性を低下させる)を含む。本発明の本態様におけるIL-12の投与は、前記疾患状態を標的とすることを意図する前記治療の適用の、前、後、又は前および後の何れかで行いえる。
【0007】
本発明の本態様において、前記疾患状態を標的とすることを意図した治療は、化学療法もしくは放射線療法の形態、または両方である。加えて、疾患状態を標的とすることを意図した治療は、一般的に1以上の造血細胞のタイプまたは系統において欠乏を生じ(これは本発明の態様である)、IL-12の投与により寛解(ameliorated)される。さらに、本発明の本態様において、化学療法および/または放射線療法の、致死性に近い治療モダリティーなどの高用量治療モダリティー、および高密度用量治療措置を使用できる;また、1以上のタイプの化学療法または放射線療法を適用できる;そのため、前記疾患状態の根絶(eradication)または抑制(suppression)が非常に促進される。また、本発明の態様において、1以上の治療上有効な用量のIL-12を、治療の適用の前に、前および後に、または後に、様々な時間間隔で投与できる。
【0008】
様々な疾患状態を、本発明の本態様で治療することができる。例えば、前記疾患状態は、癌の形態で顕在化(manifested)され得る;ここで、治療は、化学療法または放射線療法の形態を含み、1以上のタイプの固形腫瘍(例えば、乳房、肺、前立腺、卵巣の癌などとして顕在化される腫瘍)を治療することを標的とする。本発明の本態様に含まれる癌の他の形態は、例えば、白血病またはリンパ腫などの造血細胞の癌である。前記疾患状態が固形腫瘍または造血細胞障害(癌)の存在によって顕在化されるケースにおいて、本発明の本方法の態様の実施は、腫瘍の緩解(remission)の速度を、前記疾患状態単独を標的とすることを意図した治療モダリティーを適用することと比較して増加させることができる。
【0009】
本発明の本態様で治療することができる他の疾患状態は、様々な段階のHIV感染(後期段階のAIDSを含む)である。しかしながら、本発明の本態様の実施は、HIV感染の早期段階での実施が好ましい。そのうえ、これらの方法の実施は、前記疾患状態単独を標的とすることを意図した治療の適用と比較して、HIV感染の寛解を生じる。HIV感染の寛解は、血球数の変化によって測定することができる;これは、例えば、白血球数の増加、t-細胞数の増加、血小板数の増加などである。
【0010】
一般に、本発明の本態様において、IL-12の投与は、治療の関連する造血毒性からの骨髄細胞の防護を生じる;これは、例えば、前記治療が化学療法を含む場合の骨髄細胞の化学防護および前記治療が放射線療法を含む場合の骨髄細胞の放射線防護である。更に本態様において、骨髄細胞は、造血再構築細胞(hematopoietic repopulating cells)、造血幹細胞、または造血前駆細胞を含み得る。
【0011】
本発明の別の態様は、哺乳類を造血の欠乏に関して治療する方法に関する。該方法は、前記欠乏を寛解させるために必要な、1以上の治療上有効な用量のIL-12を投与することによる方法である。造血における本欠乏は一般的な欠乏であってもよく、又は特定の造血細胞系統または細胞タイプにおける1以上の欠乏を含みえる。本発明の本態様において、前記欠乏は、化学療法または放射線療法の様々な形態の適用において悪化(exacerbated)され得る。そのうえ、前記欠乏は、実質的(substantially)に哺乳類において顕在化される疾患状態の結果であってもよい。
【0012】
本態様において、前記欠乏は、1以上のタイプの骨髄細胞のIL-12促進性の増殖によって寛解される。更に、本態様において、前記欠乏は、造血再構築細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞(hematopoietic progenitor cells)のIL-12促進性の増殖によって優先的に寛解される。
【0013】
上記のように、本発明の本態様において、前記欠乏は、哺乳類における造血の一般的な欠乏であってもよい;或いは、前記欠乏は、1以上の特定の造血細胞系統の欠乏(例えば、低い白血球数、赤血球数、血小板数、好中球数、単球数、リンパ球数、顆粒球数、樹状細胞数など)を含み得る。これらの造血の欠乏状態は、リンパ球減少症、骨髄球減少症(myelopenia)、白血球減少症、好中球減少症、赤血球減少症、巨核球減少症(megakaryopenia)などとして特性付けられてもよい。
【0014】
また、本発明の本態様において、様々な基礎にある疾患状態が造血欠乏の原因であり得る;これには、様々な形態の癌、HIV感染、または以下の表1にリストされる他の疾患状態が含まれる。
【0015】
本発明の別の態様は、哺乳類における造血を刺激する又は増強する方法に関し、該方法は、1以上の治療上有効な用量のIL-12を、造血の刺激または増強を含む治療結果を達成するために効果的な期間(duration)、投与することによる方法である。本態様において、造血の刺激または増強は、Il-12促進性の骨髄細胞の増殖に関与する;優先的には、造血の刺激または増強は、IL-12促進性の造血再構築細胞(長期再構築細胞、造血前駆細胞、または造血幹細胞を含む)の増殖に関与する。同様に本態様に含まれるものは、放射線療法および/または化学療法の適用を同様に利用する方法である。
【0016】
上記のように、本発明の本態様において、前記欠乏は、哺乳類における造血の一般的な欠乏であってもよい;或いは、前記欠乏は、1以上の特定の造血細胞系統の欠乏(例えば、低い白血球数、赤血球数、血小板数、好中球数、単球数、リンパ球数、顆粒球数、樹状細胞数など)を含み得る。これらの造血の欠乏状態は、リンパ球減少症、骨髄球減少症(myelopenia)、白血球減少症、好中球減少症、赤血球減少症、巨核球減少症(megakaryopenia)などとして特性付けられてもよい。
【0017】
また、本発明の本態様において、様々な基礎にある疾患状態が造血欠乏の原因であり得る;これには、様々な形態の癌、HIV感染、または以下の表1にリストされる他の疾患状態が含まれる。
【0018】
本発明のなお別の態様は、哺乳類における骨髄の保存または回復のための方法に関し、該方法には、造血再構築細胞、造血前駆細胞、または造血幹細胞を使用することなく、1以上の治療上有効な用量のIL-12を骨髄の保存(preservation)または回復(recovery)に必要な期間、前記哺乳類に投与することが関与する方法である。これらの方法は、骨髄不全の影響に対抗するための使用に、又は、哺乳類が疾患状態を被り、骨髄のほぼ破壊(near destruction)が前記疾患状態に対処するための治療措置の副産物である場合に適切である。これらの本発明の方法は、次の事項において有用である;その事項とは、骨髄移植の必要性が回避(obviated)されえるので、係る移植物の一般的なネガティブな副作用が、それらが同種間(allogenic)であろうと自己(autologous)であろうと排除されることである。
【0019】
これらの方法は、骨髄の保存または回復を含む;これは造血再構築細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞の増加、1以上の分化型の造血細胞タイプの増加、および/または造血支持細胞の増加に関与する。
【0020】
上記のように、本発明の本態様において、前記欠乏は、哺乳類における造血の一般的な欠乏であってもよい;或いは、前記欠乏は、1以上の特定の造血細胞系統の欠乏(例えば、低い白血球数、赤血球数、血小板数、好中球数、単球数、リンパ球数、顆粒球数、樹状細胞数など)を含み得る。これらの造血の欠乏状態は、リンパ球減少症、骨髄球減少症(myelopenia)、白血球減少症、好中球減少症、赤血球減少症、巨核球減少症(megakaryopenia)などとして特性付けられてもよい。
【0021】
また、本発明の本態様において、様々な基礎にある疾患状態が造血欠乏の原因であり得る;これには、様々な形態の癌、HIV感染、または以下の表1にリストされる他の疾患状態が含まれる。
【発明の記載】
【0022】
本発明の態様は、特に、必要とする哺乳類(a mammal in need)における造血を刺激する又は増強するために、造血においてインターロイキン-12(IL-12)を用いる様々な方法を提供する。本発明は、造血細胞のタイプまたは系統の産生を増加させる、IL-12を用いる様々なアプローチを含む。
【0023】
本発明の特定の態様は、哺乳類における疾患状態を治療することに関し、ここで治療モダリティー自体は、治療モダリティーに対する限定的な毒性として、血液新生(hematopoisis)における減少または欠乏を一般的に生じる。本発明の他の態様は、1以上の造血細胞のタイプまたは系統における欠乏に関して哺乳類を一般的に治療する方法、造血を刺激する又は増強するための方法、並びに細胞(骨髄を含む)を保存および回復させる方法を提供する。
【0024】
本発明の治療方法の治療有効性(therapeutic effectiveness)の指標(indication)は、致死性に照射された動物の生存を与える、これらの方法の能力によって実証される(以下に説明される)。致死性照射からの回復は、本発明の方法の治療有効性の指標である。しかしながら、以下の例に示されるとおり、本発明の治療方法は、致死量未満の照射または致死量未満の化学療法剤に直面した際における又は造血の増加が治療上の利点である疾患状態における、造血および造血の回復を促進できる。
【0025】
本発明の方法の第1の態様は、哺乳類を造血の一般的な治療誘発性の欠乏に関して治療することに関与する。本発明の方法の第2の態様は、哺乳類を造血の欠乏に関して治療することに関与する(ここで、前記欠乏は、実質的に疾患状態の結果であるが、治療モダリティーによって悪化されえる)。本発明の両方の態様は、増強した造血および/または造血回復を、インターロイキン-12(または実質的な均等物)を哺乳類に投与することにより提供する。
【0026】
本発明の他の態様は、IL-12を用いて、造血に欠乏または欠陥(defect)を被る哺乳類における造血および/または造血回復を、促進する、刺激する、または増強する方法を提供する。なお他の態様は、骨髄の保存または回復を、本出願中に提供される方法に基づいてIL-12を投与することによって提供する。そのうえ、本発明の全ての態様において、IL-12促進性、刺激性、又は増強性の造血は、造血再構築、造血幹、または造血前駆細胞の区画(compartment)のレベルから大きく産生されているように思われる。更に、本発明の態様におけるIL-12の使用は、腫瘍学および血液学の医学分野の治療の方法として特に有用である。
【0027】
定義:
以下の定義は、本明細書中で使用される言語に明瞭性(clarity)を付与するために提供される;定義を明瞭にするために使用される言語は、広く、総称的(generically)に解釈されることを意図している。
【0028】
「疾患状態(Disease state)」は、哺乳類に存在するコンディションであり、これによって前記哺乳類の健康および福祉が損なわれる(compromised)。本発明の特定の態様において、前記疾患状態を標的とすることを意図する治療が、哺乳類に投与される。
【0029】
「治療(treatment)」は、前記疾患状態を標的とし、それに対処することを意図している(即ち、前記疾患状態を寛解させる)。従って、特定の治療は、標的とされる前記疾患状態並びに医薬療法および治療アプローチの現行の又は将来の状況に依存する。治療は、関連する毒性を有しえる。
【0030】
「関連する造血毒性(An associated hematopoietic toxicity)」は、前記哺乳類の造血系に有害な影響をおよぼす、哺乳類に対する治療の適用から実質的に生じる毒性である。この有害効果は哺乳類に広く顕在化されうるものであり、これによって多くの造血細胞タイプが正常レベルと考えられるものから、治療の結果として又は治療および組合された疾患状態の結果として、変更させられる;或いは、前記有害効果は、哺乳類に顕在化されうるものであり、より具体的には、これによって1つのみ又は数種の造血細胞タイプが正常レベルと考えられるものから、治療の結果として又は治療および組合された疾患状態の結果として、変更させられる。
【0031】
「インターロイキン-12(IL-12)」は、本願発明において開示される少なくとも1つの造血特性を産する任意のIL-12分子を意味している;これには、当該技術分野において現在既知の又は将来開発される任意の様式で産生される、現在知られている又は将来開発される、本来(native)のIL-12分子、バリアントIl-12分子、および共有結合性に修飾されたIL-12分子が含まれる。一般に、本発明の態様に使用されるIL-12分子のアミノ酸配列は、本発明の方法で治療される特定の哺乳類に由来するものである。従って、例として、ヒトに関しては、一般にヒトIL-12または組換え型のヒトIL-12が、本発明の方法においてヒトに投与されるだろう;そして同様に、ネコに関しては、例えば、ネコIL-12または組換え型のネコIL-12が、本発明の方法においてネコに投与されるだろう。しかしながら、本発明に同様に含まれるものには、次の特定の態様がある;その態様とは、IL-12分子が、そのアミノ酸配列を本発明の治療方法の被験者である哺乳類に由来しない態様である。例としては、ヒトIL-12または組換え型のヒトIL-12が、ネコ哺乳類(feline mammal)に利用され得る。本発明のなお他の態様は、次のIL-12分子を含む;そのIL-12分子とは、IL-12の本来のアミノ酸配列が本来の配列から変更されているが、前記IL-12分子が機能して本願発明に開示されるIL-12の造血特性を生じるものである。IL-12の本来の種特異的なアミノ酸配列からの変更には、IL-12の一次配列における変化が含まれ、バリアントIL-12分子を産する一次アミノ酸配列への欠失および付加が包含される。高度に派生的なIL-12分子の例は、Maxygen社により生産された再設計型IL-12分子(Leong SR, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2003 Feb 4;100(3):1163-8.)である(ここで、バリアントIL-12分子は、DNAシャッフリング法で生産される)。本発明に同様に含まれるものは、修飾型IL-12であり、同様に本発明の方法に含まれる;これは、例えば、米国特許第s.4,640,835; 4,496,689; 4,301,144; 4,670,417; 4,791,192 または 4,179,337に記載される様式における、IL-12への共有結合性の修飾であって、その有効期間、半減期、作用強度、溶解度、送達などを増加させるもの、ポリエチレングリコールグループ(ポリエチレングリコールなど)の付加である。IL-12分子の共有結合性の修飾の1タイプは、前記分子へと導入される;この際に、IL-12ポリペプチドの標的アミノ酸残基に、IL-12ポリペプチドの選択された側鎖又はNもしくはC末端残基と反応する能力を有する有機の誘導体化剤(an organic derivatizing agent)を反応させることによって導入される。本来の配列のIL-12およびIL-12のアミノ酸配列バリアントの両方が、共有結合性に修飾され得る。本願発明でも言及されたとおり、前記IL-12分子は、組換え法を含む当該技術分野において既知の様々な方法によって生産することができる。バリアントIL-12ポリペプチドの特性を事前に予測することはしばしば困難であるので、回収されたバリアントの幾つかのスクリーニングが至適なバリアントを選択するために必要とされる。バリアントIL-12分子の血液学的な刺激又は増強の特性における変化を評価する好適な方法は、以下に開示される致死性照射レスキュー プロトコールを介する方法である。例えば、レドックス若しくは熱安定性、疎水性、タンパク分解に対する感受性、又はキャリアとの若しくは多量体への凝集傾向などの、タンパク質またはポリペプチド特性の他の潜在的な修飾は、当該技術分野において周知の方法によってアッセイされる。
【0032】
「1以上の治療上有効な用量のIL-12(One or more therapeutically effective dose(s) of IL-12)」は、前記疾患状態を標的とすることを意図した治療に関連する造血毒性を実質的に寛解させることができる及び/又は1以上の造血細胞タイプにおける造血欠乏を実質的に寛解させることができる、或いは造血再構築細胞、造血前駆細胞、または造血幹細胞の増殖を刺激する又は増強することにより造血を刺激する能力を有する、任意の時間間隔および任意の期間で投与される任意の用量である。
【0033】
「治療適用時の近く(Near the time of administration of the treatment)」は、治療適用の前および/または後の、任意の妥当(reasonable)な時間期間でのIL-12の投与を意味する(例えば、1月、3週、2週、1週、数日、1日、20時間、数時間、1時間、もしくは数分間)。「治療適用時の近く」は、治療およびIL-12の同時または同時近く(near simultaneous)の適用(すなわち、数分から1日内)をも意味し得る。
【0034】
「化学療法(Chemotherapy)」は、現在知られる又は医学技術において開発される天然または合成の因子を含む、任意の療法を意味する。化学療法の例には、現在利用可能な、多くの抗癌剤が含まれる。また一方、化学療法には、疾患状態の治療を意図する、天然または合成の任意の薬物も含まれる。本発明の特定の態様において、化学療法は、前記疾患状態の治療を意図する、最新技術の薬物の適用を含み得る。例には、頭部の局所で進行した扁平上皮癌の患者に対するドセタキセル、シスプラチン、および5-フルオロウラシルでの混合化学療法(Tsukuda, M. et al., hit J Clin Oncol.2004 Jun;9(3):161-6)および不応性の及び再発性の無痛性リンパ腫におけるフルダラビン(fludarabine)およびベンダムスチン(Konigsmann M, et al., Leuk Lymphoma. 2004;45(9):1821-1827)が含まれる。別の例は、少なくとも3つの抗ウイルス剤を患者にHIV感染に対する治療として投与する、現在HAARTと称されるHTV感染またはAIDSに対する現行の治療である。
【0035】
「放射線療法(Radiation therapy)」は、任意の形態の放射を使用して前記疾患状態を治療する、任意の治療を意味する。放射線療法のための放射を発生する機器は、現行の利用可能な又は将来利用可能な機器である。
【0036】
「高用量治療モダリティー(High dose treatment modalities)」は、高亜致死性(high sub-lethal)または致死性に近い(near lethal)治療を意味する。高用量治療モダリティーは、疾患状態に対処する増加した能力を有することを意図するが、一般的に増加した関連する毒性を有することを意図する。更に、一般に高用量治療モダリティーは、従来の治療モダリティーと比較して、造血毒性の増加を呈する。高用量治療モダリティーに関するプロトコールは、現在使用される又は将来使用されるものである。
【0037】
「高密度用量治療措置(dose dense treatment regimen)」は、一般的には、それによって治療が同時に反復されて、従来の治療措置と比較して、促進的な様式で所望の治療成果が達成される治療措置である。本発明の方法は、高密度用量治療措置の使用を、治療に関連する造血毒性を低下させる又は寛解させることによって促進させる;これによって利用される高密度用量治療措置が認容され、特定の疾患状態の治療の成功率が増加する。(一般的には、Hudis CA, Schmits N, Semin Oncol. 2004 Jun;31(3 Suppl 8):19-26; Keith B et al., J Clin Oncol. 2004 Feb 15;22(4):749; author reply 751-3; Maurel Jet al, Cancer. 2004 Apr 1;100(7):1498-506; Atkins CD, J Clin Oncol. 2004 Feb 15;22(4):749-50.を参照されたい)。
【0038】
「化学防護(Chemoprotection)または放射線防護(radioprotection)」は、前記疾患状態を標的とすることを意図する治療に関連する造血毒性、からの防護、又は、の明白な減少を意味する。
【0039】
「緩解の増加(An increased remission)」は、特定の疾患状態の1以上の測定可能なパラメータにおける、減少(decrease)、軽減(lessening)、低下(reduction)、収縮(shrinking)、縮小(diminution)などを意味する。
【0040】
一般に「固形腫瘍(Solid tumors)」は、身体の組織の様々な癌において顕在化され、例えば、肺、乳房、前立腺、卵巣、などに顕在化する固形腫瘍である;そして、血液組織(blood tissue)、骨髄、またはリンパ系の癌以外の癌である。
【0041】
一般に、「造血障害(癌)」は、造血系の癌(例えば、白血病、リンパ腫など)の存在を意味する。
【0042】
「HIV感染」は、HIV感染またはAIDSの徴候の存在にかかわらず、ウイルスの感染または曝露の任意の段階を意味する。更に、本願発明においてHIV感染は、哺乳類の細胞内にHIVウイルスが宿ること(harboring)を意味する。
【0043】
「欠乏を寛解させる(Ameliorate the deficiency)」は、造血欠乏の低下(即ち、現行の医業により規定される、欠乏の改善、または正常状態の部分的または完全な修復)を意味する。従って、造血欠乏の寛解は、一般に又は具体的に、造血の増加、刺激、増強、または促進を意味する。造血欠乏の寛解は、一般的なこと、即ち、2以上の造血細胞のタイプまたは系統を増加させること、又は具体的には、即ち、1つの造血細胞のタイプまたは系統を増加させることとして観察することができる。
【0044】
一般に、「骨髄細胞」は、哺乳類の骨髄区画に居住(reside)および/または帰巣(home)する細胞を意味する。「骨髄細胞(bone marrow cells)」の用語は、造血起源の細胞(造血再構築細胞、造血幹細胞および/または前駆細胞を含むが、これらに限定されない)だけでなく、一般的に骨髄に居住する任意の細胞、例えば、内皮細胞、間葉細胞(mesenchymal cells)、骨細胞(bone cells)、神経細胞(neural cells)、支持細胞(ストローマ細胞)、これらの細胞および/または他の細胞タイプおよび系統に関する、関連する幹および/または前駆細胞を含むが、これらに限定されない。
【0045】
「造血細胞タイプ(Hematopoietic cell type)」は、様々なタイプの分化型の造血細胞を意味するが、特定の造血細胞タイプが由来する造血前駆細胞をも含み得るものであり(例えば、様々な芽細胞);同様に、幹細胞、前駆細胞、および様々な系統を含む、血液細胞の産生に関連する全ての細胞タイプ(例えば、ミエロイド細胞およびリンパ系細胞)を意味する。
【0046】
「造血細胞系統(Hematopoietic cell lineage)」は、一般的に、分化型の造血細胞の特定の系統(例えば、ミエロイド細胞およびリンパ系細胞)を意味するが、より分化した系統(例えば、樹状系、赤血球系、など)をも意味し得る。
【0047】
細胞の「IL-12促進性の増殖(IL-12 facilitated proliferation)」は、造血の増加、刺激、または増強を意味する;該造血は、細胞における増大または増加に少なくとも部分的に起因する;該細胞は、哺乳類の骨髄に一般的に居住する又は帰巣する細胞であり、例えば、造血前駆および/または幹細胞であるが、骨髄のニッチ(niche)の微小環境を構成する他の細胞を含む。
【0048】
一般的に「造血の刺激または増強」は、1以上の造血細胞のタイプまたは系統における増加を意味し、特に哺乳類が1以上の造血細胞のタイプまたは系統において欠乏を有する場合における、1以上の造血細胞のタイプまたは系統の刺激または増強に関する。
【0049】
「造血性の長期再構築細胞(Hematopoietic long-term repopulating cells)」は、一般的に骨髄において最も原始的な血液細胞である;彼らは、様々な血液細胞のタイプおよび系統の生涯にわたる産生を供給することを担う血液幹細胞(blood stem cells)である。
【0050】
「造血幹細胞(Hematopoietic stem cells)」は、一般的に血液幹細胞である;これらには2つのタイプが存在する、即ち:上記の「長期再構築(long-term repopulating)」、および「短期再構築(short-term repopulating)」であり、これは「前駆細胞(progenitor cells)」を短期間(哺乳類に依存して、週、月、又は時々は年さえも)産生することができる;これらは、本願発明において、造血再構築細胞とも称される。
【0051】
「造血前駆細胞(Hematopoietic progenitor cells)」は、一般的に血液幹細胞から分化(即ち、から成熟する)する最初の細胞であり;彼らは、次に様々な血液細胞のタイプおよび系統へと分化する(成熟する)。
【0052】
「造血支持細胞(Hematopoietic support cells)」は、骨髄の非血液細胞である;これらの細胞は、血液細胞産生に「支持」を提供する。これらの細胞は、骨髄ストローマ細胞(bone marrow stromal cells)とも称される。
【0053】
「骨髄の保存(Bone marrow preservation)」は、放射、化学療法、疾患、またはトキシンで傷害された骨髄が、その正常な、又はほぼ正常な状態を維持するプロセス(process)を意味する;「骨髄の回復(bone marrow recovery)」は、放射、化学療法、疾患、またはトキシンで傷害された骨髄が、その正常な、ほぼ正常な状態に修復されるプロセス、又は骨髄機能における任意の測定可能な改善が得られるプロセスを意味する;骨髄機能は、様々な血球のタイプまたは系統の適切なレベルが、造血(血液)幹細胞から産生されるプロセスである。
【0054】
「骨髄不全(Bone marrow failure)」は、放射、化学療法、疾患、またはトキシンで傷害された骨髄が、正常に修復させることが不可能であり、それゆえ哺乳類における適切な造血を維持するために十分な血液細胞を産生することに失敗する、病的プロセス(pathologic process)である。
【0055】
造血細胞産生:
【0056】
一般的には、米国特許第5,968,513, 5,851,984および6,159,462号を参照されたい。血液中で循環している、形態学的に認識可能で、機能的に能力のある細胞には、赤血球、マクロファージ、単球、好中球性の、好酸球性の、および好塩基球性の顆粒球、B-、T、非B-、非T-のリンパ球、および血小板が含まれる。これらの成熟造血細胞は、形態学的に認識可能な分裂している先駆細胞(precursor cells)に由来する;また、該成熟造血細胞は、該先駆細胞で、要求に応じて(on demand)、赤血球系に対する赤芽球、マクロファージ/単球に対する及び顆粒球系に対する骨髄芽球(myeloblasts)、前骨髄球(promyelocytes)および骨髄球(myelocytes)、および血小板に対する巨核球などの各自の系統のために置換される。
【0057】
前記先駆細胞は、2つの主要な亜群(即ち、幹細胞および前駆細胞)に単純(simplistically)に分裂することができる、より原始的な細胞に由来する。幹および前駆細胞の定義は、操作上(operational)の定義であり、機能的な(形態学的というよりも)判定基準に依存する。幹細胞は広範な自己再生(self-renewal)または自己維持(self-maintenance)の能力を有しており、これらの細胞の非存在(absence)または枯渇(depletion)は、1以上の細胞系統または細胞タイプの完全な枯渇、短時間で疾患および死に至るイベントを生じるであろうから必要である。幾つかの幹細胞は必要に応じて分化するが、幾つかの幹細胞又はそれらの娘細胞は、これらの細胞の貴重なプールを維持するための他の幹細胞を産生する。従って、全能性幹細胞または造血再構築細胞は、彼ら自身の種類を維持することに加え、より限定的な自己再生能力を有するか又は自己複製能力を有さない、幾つかの亜系統の前駆細胞へと分化する能力を有する。これらの前駆細胞は、形態学的に認識可能な先駆細胞を最終的に(ultimately)生じる。前記前駆細胞は、1つ(又は2以上)の骨髄球性の分化経路に増殖する及び分化する能力を有する(Lajtha, L. G. (Rapporteur), 1979, Blood Cells 5:447)。
【0058】
様々な感染因子(infectious agents)、遺伝的異常、環境因子、および療法が、1以上の造血細胞タイプにおける欠乏の原因となり得る。例えば、血液学的な異常が、HIV-1感染個体〔ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)は、後天性免疫不全症候群(AIDS)と称される遅効性の退行性の免疫系疾患の主要な原因として関与する(Barre-Sinoussi, F., et al., 1983, Science 220:868-870; Gallo, R., et al.,1984, Science 224:500-503)〕において、特に疾患の後期段階において観察される(Lunardi-Iskandar,Y. et al., 1989, J. Clin. Invest 83:610-615)。これらの異常には、CD4+T細胞の低下、同様に骨髄の形態異常および前駆細胞成長の欠乏に頻繁に関連する、1以上の造血系統の血球減少(cytopenias)が含まれる(Lunardi-Iskandar, Y. et al., 1989, J. Clin. Invest 83:610-615; Louache, F. et al.,1992, Blood 180:2991-2999)。特発血小板減少性紫斑病(ITP)は、血小板数の有意な低下によって特徴付けられ、頻繁にHIVに感染した被験者を悩ませる(Ballem, P. J. et al., 1992, N. Engl. J. Med. 327:1779)。ITPの病人における血小板の破壊は、血小板関連性自己抗体(platelet associated autoantibodies)によって媒介されるように思われる(Berchtold,P. and Wenger, M., 1993, Blood 81:1246; Ballem, P. J. et al., 1987, J. Clin. Invest.80:33)。従って、ITPの管理には免疫抑制が一般的に関与するので、HIV感染患者におけるITPの治療は、HIV感染において極度に有害である。
【0059】
加えて、癌および特定の免疫学的な障害の治療に使用される化学療法および放射線療法が、汎血球減少症(pancytopenias)あるいは貧血、好中球減少症、および血小板減少症の合併症の原因となり得る。従って、造血細胞の増加または置換は、係る治療の成功に関してしばしば決定的なものである。〔血液学的な障害及びそれらの原因の一般的な議論に関しては、例えば、文献("Hematology" in Scientific American Medicine, E. Rubenstein and D. Federman, eds., Volume 2, chapter 5, Scientific American, New York (1996))を参照されたい〕。
【0060】
さらにまた、再生不良性貧血は重大な臨床コンディションを代表する、というのも再生不良性貧血を有する全患者の全体の死亡率は、幹細胞治療の非存在下で高いからである。前記障害を被っている約60〜75%の個体は、新しい幹細胞の非存在下で、12ヶ月以内に死亡する。これらの疾患の全体の発生率は、約25新規症例/百万人/年である。単一の病原性の機構が全ての再生不良性貧血の原因であることは極めてありそうもないが、新しい造血幹細胞の供給が永続的な回復を許容するために通常十分であることは明らかである;というのも、再生不良性貧血を有する患者を一卵双生児(即ち、同系の)(Pillow, R. P., et al., 1966, N. Engl. J. Med. 275:94-97)から又はHLA同一同胞(即ち、同種間の)(Thomas, E. D., et al., Feb. 5, 1972, The Lancet, pp. 284-289)から得られた骨髄で移植することによって、前記疾患を完全に癒す(correct)ことができるからである。しかしながら、再生不良性貧血を有する幾人かの患者は、移植された髄を拒絶する。この合併症は、複数回の治療上の輸血の結果、免疫学的に感作されてきた患者の間で特に共通している。
【0061】
多くの血液学的な障害に、同様に化学療法または放射線治療(radiotherapy)により生じた内在性の造血細胞の破壊に利用可能な現行の療法は、骨髄移植である。しかしながら、骨髄移植の使用は厳しく制限されている。というのも、同一の双生児が利用可能な場合または緩解にある患者の骨髄細胞が生存可能な凍結状態で貯蔵される場合を除いては、完全に適合する(遺伝的に同一)ドナーを得ることは極度に稀であるからである。このような自己のケース以外に、ある度合(degree)の回避不能な遺伝的なミスマッチが存在し、これによって重大で時々は致死的な合併症が内含することになる(entails)。これらの合併症は、2面性である(two-fold)。第一に、前記患者は、外来性の骨髄の免疫拒絶を避けるために、通常、事前に薬物で免疫学的に無能力化される。第二に、供与された骨髄細胞が樹立された場合、それらは外来として認識される患者を攻撃することができる(移植片対宿主病)。緊密に適合した家族のドナーにおいてでさえも、これらの部分的な不適合の合併症は、遺伝的に異なる個体からの骨髄移植に直接的に起因する、実質的な死亡率および罹患率の原因である。
【0062】
末梢血も、造血再構成のための再構築細胞または幹細胞の供給源として、調査されてきた(Nothdurtt, W., et al., 1977, Scand. J. Haematol. 19:470-481; Sarpel, S. C., et al., 1979, Exp. Hematol. 7:113-120; Ragharachar,A., et al., 1983, J. Cell. Biochem. Suppl. 7A:78; Juttner, C. A., et al., 1985, Brit. J. Haematol. 61:739-745; Abrams, R. A., et al., 1983, J. Cell. Biochem. Suppl. 7A:53; Prummer, 0., et al., 1985, Exp. Hematol. 13:891-898)。幾つかの研究において、有望な結果が、様々な白血病(Reiffers, J., et al., 1986, Exp. Hematol. 14:312-315; Goldman, J. M., et al., 1980, Br. J. Haetatol. 45:223-231; Tilly,H., et al., Jul. 19, 1986, The Lancet, pp. 154-155; 次の文献をも参照されたい, L. B. and Juttner, C. A.,1987, Brit. J. Haematol. 66: 285-288, および該文献中で引用される文献);およびリンパ腫(Korbling, M., et al., 1986, Blood 67:529-532)を有する患者に関して得られてきた。しかしながら、末梢血を用いた他の研究は、再構成に影響することに失敗している(Hershko, C., et al., 1979, The Lancet 1:945-947; Ochs, H. D., et al., 1981, Pediatr. Res, 15:601)。また、幾つかの研究は、造血再構成のための幹細胞供給源として、胎性の肝細胞移植(Cain, G. R., et al., 1986, Transplantation 41:32-25; Ochs, H. D., et al., 1981, Pediatr. Res. 15:601; Paige, C. J., et al., 1981, J. Exp. Med.153:154-165; Touraine; J. L., 1980, Excerpta Med. 514:277; Touraine, J. L., 1983, Birth Defects 19:139; 次の文献をも参照されたい、 Good, R. A., et al., 1983, Cellular Immunol. 82:44--45 および該文献中で引用される文献)または新生児の脾臓細胞移植(Yunis, E. J., et al., 1974,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 72:4100)の使用を調査している。新生児の胸腺の細胞も、免疫再構成実験(immune reconstitution experiments)において、移植されている(Vickery, A. C., et al., 1983, J. Parasitol. 69(3):478-485;Hirokawa, K., et al., 1982, Clin. Immunol. Immunopathol. 22:297-304)。
【0063】
インターロイキン-12(IL-12):
【0064】
IL-12に関する一般的な記載に関しては、米国特許第5,573,764,5,648,072, 5,648,467, 5,744,132, 5,756,085, 5,853,714 および6,683,046号を参照されたい。インターロイキン-12(IL-12)は、免疫応答に関与する細胞の活性を制御する炎症性(proinflamatory)サイトカインとして一般的に記載される、ヘテロ二量体のサイトカインである(Fitz KM, et al,. 1989, J.Exp. Med. 170:827-45)。一般にIL-12は、ナチュラルキラー(NK)細胞およびT細胞からのインターフェロン-γ(INF-γ)の産生を刺激し(Lertmemongkolchai G, Cai et al., 2001,Journal of Immunology. 166:1097-105; Cui J, Shin T, et al., 1997, Science. 278:1623-6; Ohteki T, Fukao T, et alk., 1999, J. Exp. Med. 189:1981-6; Airoldi l, Gri G, et al., 2000,Journal of Immunology. 165:6880-8)、Tヘルパー1(THl)細胞の分化を支持し(Hsieh CS, et al., 1993, Science. 260:547-9; Manetti R, et al., 1993, J. Exp. Med.177:1199-1204)、生得的な抵抗性および適応免疫の間のリンクを形成する。また、IL-12は、その免疫変調性(immuno-modulatory)および抗血管形成効果を介して、癌成長を阻害することが示されている(Brenda. MJ, et al., 1993, J. Exp. Med. 178:1223-1230; Noguchi Y, et al,, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93:11798-11801; Giordano PN, et al., 2001, J.Exp. Med. 194:1195-1206 ; Colombo MP, et al, 2002, Cytokine Growth factor rev.13:155-168; Yao L, et al., 2000, Blood 96:1900 - 1905)。IL-12は、主に樹状細胞(DC)および食細胞(マクロファージおよび好中球)によって、病原性の細菌、真菌、または細胞内寄生虫に遭遇することにより一度彼らが活性化されて、産生される(Reis C, et al., 1997, J. Exp, Med. 186:1819-1829; Gazzinelli RT, et al., 1994, J.Immunol.153:2533-2543; Dalod M, et al., 2002, J. Exp. Med. 195:517-528)。IL-12レセプター(IL-12 R)は、主に活性化T細胞およびNK細胞によって発現される(Presky DH, et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 93:14002-14007; Wu CY, et al., 1996, Eur J Immunol. 26:345-50)。
【0065】
一般に、IL-12の産生は、INF-γの産生を刺激し、これは次にはIL-12の産生を増強し、このようにして正のフィードバックループを形成する。インビトロ系において、次の事項が報告されている;その事項とは、IL-12が他のサイトカイン(例えば、IL-3およびSCF)と相乗作用して、初期の造血前駆体(early hematopoietic progenitors)の増殖および分化を刺激することができることである(Jacobsen SE, et al., 1993, J. Exp Med 2: 413-8; Ploemacher RE, et al.,1993, Leukemia 7: 1381-8; Hirao A, et al., 1995, Stem Cells 13: 47-53)。
【0066】
しかしながら、本発明の前に、インビボ IL-12の投与が、末梢血細胞数および骨髄造血を減少させることが観察された(Robertson MJ, et al., 1999, Clinical Cancer Research 5: 9-16; Lenzi R, et al., 2002, Clinical Cancer Research 8:3686-95; Ryffel B. 1997, Clin Immunol Immunopathol.83:18-20; Car BD, et al., 1999, The Toxicol Pathol. 27:58-63)。Eng等およびCar等は、INF-γレセプターノックアウトマウスを用いて、高用量IL-12が一般に認められる毒性効果を誘発しないこと、即ち、造血の阻害がないことを実証した(Eng VIM et al., 1995, J. Exp Mod. 181:1893-8; Car BD, et al., 1995, American Journal of Pathology 147:1693-707)。この観察は次の事項を示唆するものである;その事項とは、分化型の造血細胞のIL-12促進性の増強の一般的な現象が、以前に報告されたように、INF-γの産生によってインビボでバランス(balanced)されえること〔これは、優性の骨髄抑制性の様式(a dominant myelo-suppressive fashion)で作用する〕である。
【0067】
任意の特定の理論に拘泥することなく、本願発明者は次の仮説を立てる;その仮説とは、造血細胞のIL-12媒介性の増殖の機構的な経路に関する以前の報告とは対照的に、造血系が損なわれる場合(化学療法または放射線療法の期間でのように)、又は1以上の造血欠乏に至る特定の造血疾患および障害のケースにおいて、INF-γの産生に至るIl-12媒介性の経路が変更され得ることである。従って、本明細書中に開示される例で使用される低用量以外に、本発明の態様における造血の副作用減少の別の可能な機構は、次の機構である;その機構とは、相対的に低用量のIL-12が造血系を損なった哺乳類に与えられた場合、IL-12/INF-γの正のフィードバックループが阻害されうることである。INF-γは造血を阻害し、毒性の原因となる主要なサイトカインであるように思われるので、INF-γ産生の中断は、IL-12の投与が明らかな毒性なしに造血の防護および回復の効果を提供するとの発明者による発見の基礎にある1つの因子でありえる。
【0068】
本発明の治療方法:
【0069】
本発明は、造血細胞の量の増加が望ましい疾患および障害〔例えば、1以上の造血細胞のタイプまたは系統の数の低下に関連する疾患または障害、或いは推奨される治療が造血毒性に関連し、それゆえ1以上の造血細胞のタイプまたは系統の数の低下に至る疾患(例えば、癌)〕を、IL-12、その誘導体およびアナログを投与することによって治療するための治療方法に関する。従って、本発明の態様は、本明細書中に開示されるとおり、様々な造血細胞欠乏(造血再構築細胞、前駆体、および幹細胞、同様に一般的な骨髄欠乏における欠乏が含まれる)を、哺乳類へのIL-12の直接投与によって緩和する又は治療する方法を提供する。
【0070】
本発明の第1の態様において、哺乳類における疾患状態を治療することに関して方法が開示される;該方法は、前記疾患状態を標的とすることを意図する、哺乳類に対する治療を適用すること(ここで、前記治療は、関連する造血毒性を有する)、連動して(in conjunction with)、1以上の治療上有効な用量のIL-12を前記治療の適用時の近くで投与することによる。本発明の本態様におけるIL-12の哺乳類への投与の1つの効果は、治療の造血毒性の低下であり、これによって計画された特定の患者の療法措置(therapeutic regimen)に利用される、高用量および高密度用量プロトコールが許容される。
【0071】
本発明の第2の態様において、IL-12を直接的に治療を受け入れられる(amenable)疾患または障害を被っている哺乳類(好ましくは、ヒト)に投与することに関して方法が開示される;該方法は、1以上の造血細胞タイプの産生を増加させることによる(例えば、造血細胞欠乏に関連する疾患または障害)。本発明の第3の態様において、必要とする哺乳類において造血を刺激する方法は、1以上の治療上有効な用量のIL-12を、造血の刺激を含む治療効果を達成する期間投与することを含み、造血の刺激には、造血再構築細胞、造血前駆細胞、または造血幹細胞のIL-12促進性の増殖が関与する。本発明の第4の態様において、哺乳類における骨髄の保存または回復に関する方法が開示され、該方法は、骨髄細胞、造血前駆細胞、または造血幹細胞を使用することなく、1以上の治療上有効な用量のIL-12を、骨髄の保存または回復に必要な期間前記哺乳類に投与することによる。
【0072】
本発明の特定の態様の更なる側面は、次の事項である;その事項とは、様々な形態の放射線および化学療法に関連する造血毒性を軽減する補助的(adjuvant)または付属的(ancillary)な療法としてのIL-12の使用は、高用量および高密度用量治療プロトコールの利用を許容し、そして特定の疾患状態および全体的な患者の生存の緩解率の向上を達成する。
【0073】
本発明の特定の態様は、哺乳類における疾患状態を治療する方法を提供する。本態様において、前記疾患状態は、任意の化学療法または放射線療法または両方で治療される任意の疾患状態であってもよい。本発明において、化学療法剤の組合せの使用が好ましい;というのも、この臨床プロトコールが、治療上より有効であると一般的に考えられているからである。
【0074】
これらの方法は、一般的に前記疾患状態を標的とすることを意図した哺乳類に治療を適用することを含む。本態様において、治療(前記疾患状態に対処することを意図する)は、関連する造血毒性をも有する。本発明の本態様における第2成分は、治療上有効な用量のIL-12を前記治療適用時の近くで投与することを含む。IL-12は、所望の治療上の効果を産する治療の適用近くの時間の任意のポイントで投与することができる。本発明の本態様の実施の全体的な利点は、次の事項である;その事項とは、哺乳類に対するIL-12の投与が、治療の造血毒性を低下または減少させ、そして結果として、様々な治療モダリティーの制限される毒性量(the limiting toxic dosage)を変更させることである。
【0075】
これらの態様において、前記方法は、一般的に哺乳類への一次療法と、共にIL-12の形態での二次療法とを適用することを含む(ここで二次療法、即ち、IL-12は、一次療法単独の適用と比較して、造血を増強するか又は造血回復を改善する。本発明の本態様において、好適な哺乳類はヒトである。
【0076】
前記疾患状態を標的とすることを意図した治療は、前記疾患状態に対処することを試みるための、任意の現在実施される療法、又は化学療法もしくは放射線療法または組合せ療法を使用する開発される任意の療法であってもよい。本発明において、化学療法には、化学薬品の投与が関与する;この薬品は、任意の化学的な状態(例えば、単量体から高度に重合した種まで)で提供される、天然または合成の薬剤でありえる。本発明において、放射線療法は、相対的に高エネルギー波長の光または高エネルギー粒子を、治療モダリティーとして哺乳類に適用することを含む。化学療法または放射線療法に関して、現在実施される又は将来開発される、高用量の療法アプローチおよび高密度用量プロトコールを、本発明の態様に使用することができる。
【0077】
通常、本発明の方法で治療できる障害には、4つの広いカテゴリーが含まれるが、これらに限定されない。第1は、正常な血球産生および成熟の不全または機能不全(即ち、再生不良性貧血、血球減少、および低増殖性幹細胞障害)に起因するものである。第2グループは、造血器官における新生物性の悪性疾患(例えば、白血病およびリンパ腫)である。障害の第3グループには、非造血起源の広域性の悪性固形腫瘍を有する患者のものが含まれる。これらの患者における造血細胞増殖の誘導は、細胞の移植を使用することなく、骨髄レスキュー処置として作用する;これは、化学療法および/または放射線療法(さもなくば、致死的な化学療法または放射線療法および高密度用量治療プロトコールを含む)に対する補助的な療法として患者に提供される。疾患の第4グループは自己免疫性のコンディションからなり、ここで造血の増強または刺激(造血細胞の増加に至る)は、異常免疫系の置換の供給源として作用することができる。インビボでの造血細胞産生の誘導で治療することができる、特定の疾患および障害は、表1にリストされるもの及び以下に記載されるものであるが、これらに限定されない。
【0078】
表I
-----------------------------------------------------------------------
造血を増加させることによって治療することができる疾患 状態または障害

I. 正常な血球の産生および成熟の不全(failure)または機能不全(dysfunction)に起因する疾患
低増殖性幹細胞障害(hypoproliferative stem cell disorders)
再生不良性貧血(aplastic anemia)
好中球減少症
血球減少症(cytopenia)
汎血球減少症(pancytopenia)
無顆粒球症(agranulocytosis)
血小板減少症(thrombocytopenia)
赤芽球癆(red cell aplasia)
薬物、放射、または感染によるブラックファン-ダイアモンド症候群(Blackfan-Diamond syndrome)

II. 造血悪性疾患(Hematopoietic malignancies)
急性リンパ性(リンパ球性)白血病
慢性リンパ性白血病
急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)
慢性骨髄性白血病
急性悪性骨髄硬化症(acute malignant myelosclerosis)
多発性骨髄腫
真性多血症(polycythemia vera)
特発性骨髄性異形性(agnogenic myelometaplasia)
ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(Waldenstrom's macroglobulinemia)
ホジキンリンパ腫(Hodgkin's lymphoma)
非ホジキンリンパ腫

III. 悪性固形腫瘍を有する患者の免疫抑制
悪性黒色腫
非小細胞肺癌
胃の癌腫(carcinoma)
卵巣癌(ovarian carcinoma)
乳癌(breast carcinoma)
小細胞肺癌(small cell lung carcinoma)
網膜芽細胞腫(retinoblastoma)
精巣癌(testicular carcinoma)
グリア芽細胞腫(glioblastoma)
横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma)
神経芽細胞腫(neuroblastoma)
ユーイング肉腫(Ewing's sarcoma)
リンパ腫(Lymphoma)

IV. 自己免疫疾患
関節リウマチ
糖尿病I型
慢性肝炎
多発性硬化症(multiple sclerosis)
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)

V. 遺伝性(先天性)障害
貧血
家族性の再生不良性貧血
ファンコニー症候群(Fanconi's syndrome)
ブルーム症候群(Bloom's syndrome)
真性赤血球無形成(PRCA;pure red cell aplasia)
先天性角化不全症(dyskeratosis congenita)
ブラックファン-ダイアモンド症候群
先天性異常赤血球産生症候群I-IV(congenital dyserythropoietic syndromes I-IV)
シュワックマン-ダイアモンド症候群(Shwachmann-Diamond syndrome)
ジヒドロ葉酸レダクターゼ欠乏(dihydrofolate reductase deficiencies)
ホルムアミノトランスフェラーゼ欠乏(formamino transferase deficiency)
レッシュ−ナイハン症候群(Lesch-Nyhan syndrome)
先天性球状赤血球症(congenital spherocytosis)
先天性楕円赤血球症(congenital elliptocytosis)
先天性有口赤血球症(congenital stomatocytosis)
先天性Rh陰性疾患(congenital Rh null disease)
発作性夜間ヘモグロビン尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)
G6PD(グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)バリアント1,2,3
ピルビン酸キナーゼ欠乏
先天性エリスロポエチン感受性欠乏(congenital erythropoietin sensitivity deficiency)
鎌形赤血球疾患および形質(sickle cell disease and trait)
地中海貧血症 α, β, γ
met-ヘモグロビン血症(met-hemoglobinemia)
免疫の先天性障害
重症複合免疫不全症疾患(SCID;severe combined immunodeficiency disease)
不全リンパ球症候群(barelymphocyte syndrome)
イオン透過孔応答性複合免疫不全(ionophore-responsive combined immunodeficiency)
キャップ形成異常性(a capping abnormality)を伴う複合免疫不全
ヌクレオシドホスホリラーゼ欠乏(nucleoside phosphorylase deficiency)
顆粒球アクチン欠乏(granulocyte actin deficiency)
乳児性無顆粒球症(infantile agranulocytosis)
ゴーシェ病
アデノシンデアミナーゼ欠乏
コストマン症候群(Kostmann's syndrome)
細網異形成症(reticular dysgenesis)
先天性白血球機能不全症候群(congenital leukocyte dysfunction syndromes)

VI. 他のもの
大理石骨病(osteopetrosis)
脊髄硬化症(myelosclerosis)
後天性溶血性貧血(acquired hemolytic anemias)
後天性免疫不全
一次または二次的な免疫不全性の細菌感染(例えば、ブルセラ症、リステリア症、結核、ライ病)を生じる感染障害
寄生虫感染(例えば、マラリア、レーシュマニア症)
真菌感染
リンパ球系細胞セットにおける不釣合(disproportions)および加齢による損傷性の免疫機能(impaired immune functions)が関与する障害
食細胞障害
コストマン無顆粒球症(Kostmann's agranulocytosis)
慢性肉芽腫症(chronic granulomatous disease)
チェディアック-東症候群(Chediak-Higachi syndrome)
Willams-Beuren症候群
好中球アクチン欠乏症
好中球膜GP-180欠乏症(neutrophil membrane GP-180 deficiency)
代謝性貯蔵疾患(metabolic storage diseases)
ムコ多糖症(mucopolysaccharidoses)
ムコリピドーシス(mucolipidoses)
免疫機構が関与している種々雑多(miscellaneous)な障害
ウィスコット-アルドリック症候群(Wiskott-Aldrich Syndrome)
アルファ 1-アンチトリプシン欠乏症
-----------------------------------------------------------------------
【0079】
a) 正常な血球の産生および成熟の不全または機能不全に起因する疾患
【0080】
本発明の好適な態様において、本発明の方法に基づいてIl-12投与を使用して、正常な血球の産生および成熟の不全または機能不全に起因する疾患(例えば、再生不良性貧血、血球減少、または低増殖性幹細胞障害)が治療される。これらの障害は、正常な数の機能的な血液細胞を供給する骨髄中の幹細胞の不全を内含する。再生不良性貧血は、中間および成熟形態の赤血球、白血球、および血小板を生じさせる幹細胞の不全から生じる。赤血球産生は通常最も重篤に影響されるが、他の成熟血球因子の産生における著明な減少は、白血球および/または血小板の産生に特異的に影響する幾つかの貧血としても観察される。これらの貧血の非常に大多数は、成体生活(adult life)の間に獲得されるものであり、如何なる明白な遺伝的素因(any apparent genetic predisposition)も有していない。これらの後天性の貧血の約半分は、毒物への暴露、薬物、または幹細胞機能を損傷させる疾患プロセスなどの、任意の明らかな原因因子(causative factor)の非存在下で生じる;これらは特発性再生不良性貧血(idiopathic aplastic anemias)と称される。残るケースは、極度に多様なアレイ(array)の化学物質および薬物への暴露に関連するものであり、また、HIV感染などのウイルス感染の結果、および妊娠後にも生じる。他の特定のタイプの再生不良性貧血は、無顆粒球症または血小板減少症と称されるものであり、それぞれ特定の白血球における又は血小板産生における重篤な欠乏を示す。また、これらの非赤血球性の欠乏は、HIV感染と頻繁に関連する。また、HIV感染と有意に関連しているものは、重篤な血小板欠乏症、特発血小板減少性紫斑病(ITP)である。加えて、無顆粒球症は、自己免疫性症候群(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE))と又は他の感染症(例えば、新生児風疹)と関連するものである可能性がある。
【0081】
加えて、病原性微生物での一次または二次的な感染の結果による免疫欠乏(immune deficiencies)は、本発明に開示される方法によるIL-12の投与で治療することができる。本発明の本態様により治療されえる免疫欠乏を生じさせる微生物には、グラム陰性桿菌(例えば、ブルセラまたはリステリア)、結核の又はハンセン病(ライ病)の病原学的な因子であるマイコバクテリウム(mycobacterium)、プラスモディウム(マラリアの病原学的な因子)またはリーシュマニアなどの寄生虫、および真菌類(例えば、肺炎および免疫不全に対して二次的な致死性の感染を生じるもの)が含まれるが、これらに限定されない(多くのこれらの障害の議論に関しては、 Harrison's Principles of Internal Medicine, 1970, 6th Edition, Wintrobe, M. M., et al., eds., McGraw-Hill, New York, pp. 798-1044を参照されたい)。
【0082】
本発明の好適な態様において、Il-12は、化学療法および/または放射線療法に関連する又はHIV感染に対処する化学療法および/または放射線療法の使用の有り無し(with or without)のHIVに関連する血球減少に投与される。HIV感染に関連する造血欠乏には、CD4+T細胞および他のリンパ球、赤血球、血小板(特に、ITP)、および好中球における低下が含まれる。
【0083】
b) 悪性疾患(Malignancies)の治療
様々な形態の癌および他の疾患状態に対処するために単一で又は共に使用される、化学療法および放射線療法の双方は、個々の造血系に有毒である。従って、化学療法、放射線療法、又はこれらの2つの療法モダリティーの組合せで治療される個体に関して、個々の血液供給を実質的に枯渇させることが可能である。そのうえ、この血液供給の枯渇は、一般に様々な癌および他の疾患状態に対処する化学療法および/または放射線療法の使用における限定要因であり、それゆえに一般に高用量または高密度用量治療措置の使用は除外(precludes)される。
【0084】
以前、IL-12が、免疫モジュレーターとして中心的な役割を担うことが報告されている、そしてマウスにおける腫瘍成長を阻害することが以前に示されている;IL-12は、癌療法において免疫応答を刺激するその潜在性に関して、第一相および第二相ヒト臨床試験で試験されている(Eng VM et al., Journal of Experimental Medicine 181:1893- 8; Car BD et al., American Journal of Pathology 147: 1693-707)。しかしながら、IL-12療法の共通副作用の1つは、血球数における一過性の減少であり:リンパ球減少症は共通(common)である(Eng VM et al., Journal of Experimental. Medicine 181:1893-8;Car BD et al., American Journal of Pathology 147: 1693-707)。動物毒性試験においても、リンパ球減少症は共通の副作用である(Neta R, et al., J. Immunol. 153:4230-7; Hayes MP et al., Blood 91:4645-4651)。
【0085】
しかしながら、以前の試験とは対照的に、発明者は、次の事項を見出した;その事項とは、IL-12が特定の時間「帯」の間に、一次療法(例えば、化学療法または放射線療法)に関連して投与された場合、IL-12の投与は、前記IL-12投与の観察可能な有毒効果なく、血球数の最下点(nadir)を広く増加させる(即ち、血球数を増加させる)ことである。
【0086】
従って、本発明の治療方法は、一般的な造血を促進することができる、特に、特定の悪性疾患を標的とする治療措置として、化学療法および/または放射線療法を経験してきた、経験している、又は経験するだろう個体における造血を促進することができる。従って、本発明の特定の態様において、IL-12投与は、一次療法の投与時間の近くで実行される1以上の一次療法に対する、補助的または付属的な療法として使用される。従って、本発明は、個体の血液供給を偶発的(incidentally)に減少させる1以上の療法を経験している被験者の造血回復、同様に一般回復(general recovery)を増強する。本明細書中に使用される、「経験している(undergoing)」の用語は、本発明の付属的な療法の実行(implementation)の前、間、および/または後の一次療法の実行を包含する。
【0087】
化学療法および/または放射線療法に対する補助的または付属的な療法として本発明の方法を用いた結果である、個体由来の利益(individual-derived benefits)には、これらの一次療法モダリティーの有毒な副作用の減少、同様に、これらの有毒な副作用からの回復の増強がある。これらの有毒な副作用には、被験者の造血系の1以上の血液成分の枯渇が含まれる。本発明の方法を適用することの特別な個体由来の利益は、次の事項である;その事項とは、より攻撃的な一次療法モダリティーを使用して、標的とした疾患状態に対処することができることである。従って、本発明の方法を補助的または付属的な療法として使用することによって、高密度用量治療モダリティーまたは高用量モダリティーに適用される一次療法が許容される。次には、IL-12を含んでいる治療組成物が、付属的な療法又は組合せ療法として、伝統的な療法モダリティーと共に適用される場合、一次療法の成功の可能性が実質的に増加する。本発明の治療方法の別の用途は、特定の疾患状態に起因する又は特定の治療モダリティー(例えば、攻撃的な化学療法および/または放射線療法)の使用によって誘発される、骨髄不全の治療におけるものである。
【0088】
高増殖性の悪性幹細胞障害、同様に非造血性の悪性疾患は、本願発明に開示されるとおり、化学療法および/または放射線療法と共にIL-12の直接投与による造血細胞のレスキューによって、治療することができる。本発明により治療することができるコンディションには、表1にリストされる白血病および表1にリストされる固形腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
これらの悪性疾患は、とりわけ化学療法および/または放射線療法、可能なときは(when feasible)、同種間の骨髄移植によって現在治療されている。しかしながら、同種間(allogeneic)のHLA同一同胞(HLA identical sibling)の骨髄は、患者の1/3未満にのみ利用可能である;また、この治療は、移植関連合併症(例えば、免疫不全および移植片対宿主病)と関連する。本発明の方法を介したインビボでの造血細胞増殖の誘導は、適切な同種間のドナーを欠いている患者の造血再構成を許容する、或いは自己移植のケースにおいて、悪性細胞(malignant cells)の再導入(reintroduction)のリスクを排除する。従って、本発明の方法を、癌または免疫学的な障害の治療に対する、化学療法および/または放射線療法を経験している患者に適用することができる。同様に本発明の本態様に含まれるものは、HIV感染を治療するために使用される様々な療法(例えば、HAART療法)および/または放射線療法(例えば、以下に記載される、全リンパ照射)に対する、補助的な療法としてのIL-12投与の使用である。
【0090】
c) 自己免疫障害(Autoimmune Disorders)
多くの慢性の炎症性および退行性(degenerative)の疾患は、身体自身の組織に対する、連続的な免疫反応によって特徴付けられる。係る自己免疫障害には、関節リウマチおよび他の炎症性の骨障害(osteopathies)、糖尿病I型、慢性肝炎、多発性硬化症、および全身性エリテマトーデスが含まれるるが、これらに限定されない。自己免疫障害は、リンパ節照射(lymphoid irradiation)でしばしば治療することができる。本願発明において開示されるIL-12の投与は、放射線治療後に造血系を再構築するために価値がありえる。
【0091】
抗炎症薬(例えば、ステロイド)は、自己反応性のT細胞によって活性化される炎症細胞(inflammatory cell)を遅延させる(retard)が、活性化している新しい炎症細胞からの自己タンパク質を認識するT細胞を阻止しない。自己免疫疾患を治療するための、より直接的なアプローチは、リンパ系組織の照射によるT細胞の根絶に依存し、患者の造血系を再構築する非照射の骨髄からの幹細胞に頼るものである。理論的根拠は、次の事項である;その事項とは、骨髄幹細胞からの成熟T細胞の新しい集団の形成が、自己特異的抗原に反応性を有するT細胞の非存在を生じえるとのことである。この手順は、全リンパ照射(TLI;total lymphoid irradiation)と称され、難治性の関節リウマチを治療するために使用されている(Strober, S., et al., 1985, Annals of Internal Medicine 102:441-449, 450-458)。これらの臨床試験は次の事項を示した;その事項とは、別の難治性の症例(otherwise intractable cases)の大多数において、関節疾患が少なくとも2〜3年間有意に緩和されたことである。しかしながら、係る治療の主要な弱点(drawback)は、これらの高齢者患者の骨髄中の幹細胞の、造血系を効率的に再構築する機能の不全であり、これによって感染症および出血障害(bleeding disorders)が生じる。類似する試験が、SLEの治療に対する細胞障害性薬の代替としての、TLIの効果に関してなされている(Strober, S., et al., 1985, Ann. Internal Med. 102:450)。難治性SLEを治療するためのTLIの使用の試験は、次の事項をも示している;その事項とは、この治療は、疾患活性(disease activity)を緩和するが、照射後の造血系を急速に及び効率的に再構築する骨髄幹細胞の不全によって厳格に限定されることである。従って、本発明の治療方法を使用して、残っている造血細胞の増殖を促進し、TLI療法の成功率を増加させることができる。
【0092】
d) IL-12の投与の方法
【0093】
本発明は、被験者に1以上の有効な用量のIL-12を所望の治療上の効果を達成する期間で投与することにより治療する方法を提供する。前記被験者は、好ましくは、動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌ、など)を含む哺乳類であり、最も好ましくはヒトであるが、これらに限定されない。
【0094】
様々な送達系が知られており、この送達系を使用して、本発明の方法に基づいてIL-12を投与することができる;この送達系は、例えば、リポソーム中への封入(encapsulation)、微小粒子(microparticles)、マイクロカプセル、IL-12を発現する能力を有する組換え細胞、レセプター媒介性のエンドサイトーシス(例えば、 Wu and Wu, 1987, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照されたい)、レトロウイルスまたは他のベクターの部分としてIL-12に関する遺伝子を具備する核酸の構築、などである。導入の方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および 口(oral)の経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
本発明の方法に基づいて、IL-12を任意の都合よい経路で投与することができる〔例えば、輸液または大量瞬時投与(bolus injection)によるもの、上皮性または粘膜皮膚の内張(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管の粘膜、など)を通した吸収によるものである〕;また、他の生物学的に活性な因子と共に投与してもよい。投与は、全身性または局所性であってもよい。加えて、IL-12を含む薬学的組成物を中枢神経系に任意の適切な経路で導入することが望ましいであろう;脳室内注射は脳室内カテーテル(例えば、貯蔵器に接続された、Ommaya貯蔵器など)によって促進されえる、肺投与も使用できる(例えば、吸入器または噴霧器、およびエアゾール薬剤の処方を使用することにより)。IL-12を含む薬学的組成物を、治療が必要な領域に局所的に投与することが望ましいであろう;これは、局所的適用で、注射で、カテーテルの手段で、坐剤の手段で、又はインプラントの手段(該インプラントは、多孔性、非多孔性またはゼラチン質の物質であり、sialastic膜などの膜またはファイバーが含まれる)で達成しえる。
【0096】
IL-12投与の他のモード(modes)には、ベシクル(特に、リポソーム)での送達が関与する(Langer, Science 249:1527-1533 (1990); Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353-365 (1989); Lopez-Berestein, ibid., pp. 317-327を参照のこと;一般的にも同書を参照されたい)。IL-12投与のなお他のモードには、制御放出システム(a controlled release system)での送達が関与する。特定の態様において、ポンプを使用しえる(Langer, supra; Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987); Buchwald et al., Surgery 88:507 (1980); Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321:574 (1989)を参照されたい)。加えて、高分子材料を使用できる(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres, Boca Raton, Fla. (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, N.Y. (1984); Ranger and Peppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983)を参照されたい;また、Levy et al., Science 228:190 (1985); During et al., Ann. Neurol. 25:351 (1989); Howard et al., J. Neurosurg. 71:105 (1989)を参照されたい)、又は徐放システムを、治療上の標的(即ち、脳)に近接して配置できるので、全身性の用量の僅かなフラクションを要求するのみである(例えば、 Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115-138 (1984)を参照されたい)。他の徐放システムは、Langerの総説(Science 249:1527-1533 (1990))で議論されている。
【0097】
e) IL-12の形態および投与量
【0098】
本発明の態様に使用するIL-12の適切な剤形(dosage forms)には、生得的(inherently)に非有毒および非治療的(non-therapeutic)である、生理的に認容される担体が包含される。係る担体の例には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、ホスフェート(phosphates)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和の野菜脂肪酸の部分的なグリセリド混合物(partial glyceride mixtures of saturated vegetable fatty acids)、水、塩、または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム(potassium hydrogen phosphate)、塩化ナトリウム、亜鉛塩(zinc salts)、コロイド珪酸(colloidal silica)、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベース物質(cellulose-based substances)、およびPEGが含まれる。IL-12ポリペプチドの局所またはゲルベース形態の担体には、多糖類、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー、PEG、およびウッドワックスアルコール(wood wax alcohols)が含まれる。全ての投与に関して、従来の持効性形態(depot forms)が適切に使用される。係る形態には、例えば、マイクロカプセル、ナノ―カプセル、リポソーム、プラスター、吸入形態(inhalation forms)、鼻スプレー、舌下錠、および徐放性処方(sustained-release preparations)が含まれる。IL-12ポリペプチドは、約1ug/ml〜100mg/mlの濃度で係るビヒクル中に処方される。
【0099】
徐放性処方の適切な例には、前記ポリペプチドを含有している固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ;このマトリックスは、造形品(shaped articles)の形態のものである(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)。徐放性マトリックスの例には、Langer等(上記)およびLanger(上記)によって記載されたポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸およびガンマエチル-L-グルタミン酸のコポリマー(Sidman et al, 上記)、非分解性のエチレン-ビニルアセテート(Langer et al., 上記)、分解性の乳酸―グリコール酸コポリマー、例えば、Lupron Depot.TM.(乳酸―グリコール酸コポリマーおよびロイプロリドアセテートから構成される注射可能剤ミクロスフェア)、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。ポリマー(例えば、エチレン-ビニルアセテートおよび乳酸-グリコール酸)は100日間以上にわたり分子の放出が可能であるが、特定のヒドロゲルは短い時間期間(time periods)タンパク質を放出する。被包性ポリペプチド(encapsulated polypeptides)が身体に長い時間残存する場合、水分に37゜Cで暴露されると変性または凝集し、生物活性の損失および免疫原性における可能な変化が生じる。合理的な戦略を、関与する機構に依存する安定化に関して考案することができる。例えば、凝集機構がチオ-ジスルフィド相互交換を介した分子間S-S形成であることが発見される場合、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、含水量をコントロールすること、適切な添加物を用いること、および特異的なポリマーマトリックス組成物を開発すること(developing)によって達成しえる。
【0100】
また、徐放性のIL-12含有組成物には、リポソーム捕捉ポリペプチド(liposomally entrapped polypeptides)が含まれる。IL-12ポリペプチドを含有しているリポソームは、当該技術分野において既知の方法、例えば、Eppstein等( Eppstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:3688-3692 (1985); Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4030 (1980))および米国特許第4,485,045および4,544,545号に記載の方法によって調製される。通常、前記リポソームは小型(約200〜800オングストローム)の単層型のものであり、脂質含有が約30mol. %コレステロールより大きいものであり、選択される比率はIL-l2療法に関して調整される。循環時間が増強されたリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0101】
疾患の治療に関して、適切な投与量(dosage)のIL-12ポリペプチドは、上記のとおり、治療される疾患のタイプ、前記疾患の重症度および経過、以前の治療、本願発明において開示されるIL-12治療方法への患者の臨床歴および応答、主治医の判断(discretion)に依存する。本発明に基づいて、IL-12は、患者に一度で又は一連の治療にわたって適切に投与される。
【0102】
疾患のタイプおよび重症度に依存して、約1ng/kg〜約2000ng/kg(好ましくは約10ng/kg〜約500ng/kg)のIL-12が、患者への投与に対する初期の候補投与量である(例えば、1以上の分離投与によってであろうと又は連続的な輸液によってであろうと)。ヒトは約500ng/kgの反復投与量に耐えうるが、約2000ng/kgまでの単一の投与量は易感染性(compromised)の造血系に有毒な副作用を産生しないだろう。例えば、用量は、他のサイトカイン(例えば、G-CSF、GM-CSF、およびEPO)に関するものと同じであってもよい。数日を超える反復投与に関して、治療は、コンディションに依存して、発生する疾患の症状が望まれる抑制に達するまで維持される。しかしながら、他の投与計画(dosage regimen)も有用であろう。この療法の進展は、従来の技術およびアッセイで容易にモニターされる。
【0103】
Il-12は、他のサイトカインと共に、直接の共投与または連続的な投与によって投与されてもよい。1以上のサイトカインがIL-12と共投与される場合、IL-12のより低い用量を使用しえる。他のサイトカイン(即ち、IL-12以外)の適切な用量は、約1ng/kg〜約15mg/kgのサイトカインである。例えば、用量は、他のサイトカイン(例えば、G-CSF、GM-CSF、およびEPO)に関するものと同じであってもよい。他のサイトカイン(s)を、IL-12の投与の前に、同時に、又は引続いて投与しえる。サイトカイン(s)およびIL-12を混合して、哺乳類への同時投与のための薬学的組成物を形成してもよい。特定の態様において、IL-12およびサイトカインの量は、血液細胞の相乗的な再構築(または、造血細胞の増殖および/または分化における相乗的な増加)がIL-12および他のサイトカインの投与に際して哺乳類において発生する量である。換言すれば、血液細胞の再構築(又は、造血細胞の増殖/分化)に関する2以上の因子(即ち、Il-12および1以上のサイトカイン(s))の協調的作用(coordinated action)は、これらの分子の個々の効果の和よりも大きい。
【0104】
IL-12の治療上の組成物は、貯蔵するために、所望の度合の純度を有しているIL-12を自由選択で生理的に認容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A., Ed., (1980))、凍結乾燥されたケーキまたは水性の溶液の形態で調製される。認容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される投与量および濃度でレシピエントに無毒なものであり、次のものが含まれる:緩衝剤、例えば、ホスフェート、シトレート、および他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性のポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;キレート化剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトール;塩を形成する対イオン(salt-forming counter-ions)、例えば、ナトリウム;および/または非イオン性の界面活性剤、例えば、Tween.RTM.,Pluronics.TM.またはポリエチレングリコール(PEG)。
【0105】
また、IL-12は調製されたマイクロカプセルに捕捉されえる;例えば、コアセルベーション技術によって又は界面重合〔例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタシレート(methylmethacylate))マイクロカプセル〕によって、コロイド性の薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)に又はマクロエマルジョンに捕捉されえる。係る技術は、Remington's Pharmaceutical Sciencesに開示されている。
【0106】
インビボ投与に使用されるIl-12は、滅菌されなければならない。これは、凍結乾燥および再構成の前に又は引続いて、滅菌濾過膜(sterile filtration)を通して濾過することによって容易に達成される。Il-12は、凍結乾燥形態において又は溶液において通常貯蔵される。治療上のIL-12組成物は、一般的に無菌のアクセスポートを有している容器に配置される;これは、例えば、皮下注射針で貫通可能な栓を有している静脈内の溶液バックまたはバイアルである。
【0107】
局所的に適用される場合、Il-12は他の構成成分(例えば、担体および/またはアジュバント)と適切に混合される。係る他の構成成分の性質において次の事項以外には制限はない;その事項とは、それらが、それらの意図する投与に関して生理的に認容され且つ効果的でなければならず、そして前記組成物の活性成分の活性を落すことができないことである。適切なビヒクルの例には、軟膏、クリーム、ゲル、または懸濁剤(精製コラーゲンの有り無しで)が含まれる。また、組成物は、経皮パッチ(transdermal patches)、プラスター、およびバンデージに、好ましくは液体または準液体形態で浸透させてもよい。
【0108】
ゲル処方を得るために、液体組成物に処方されたIL-12は、局所的に投与される適切な粘性のゲルを形成する、効果的な量の水溶性のポリ多糖または合成ポリマー(例えば、PEG)と混合されてもよい。使用されえるポリ多糖には、例えば、セルロース誘導体、例えば、以下に記載されるものを含むエーテル化セルロース誘導体、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、およびアルキルヒドロキシアルキルセルロース、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース;デンプンおよび分画化デンプン(fractionated starch);寒天;アルギン酸およびアルギナート;アラビアゴム;プルラン(pullullan);アガロース;カラゲナン;デキストラン;デキストリン;フルクタン;イヌリン;マンナン;キシラン;アラビナン;キトサン;グリコーゲン;グルカン;および合成のバイオポリマー;同様に、ゴム(gums)、例えば、キサンタンゴム;グアールゴム;イナゴマメゴム;アラビアゴム;トラガカントゴム;およびカラヤゴム;並びにその誘導体および混合物が含まれる。本願発明における好適なゲル化剤は次のもの、即ち、生物学的なシステムに不活性、無毒、調製が単純、そして流れすぎず又は粘稠すぎず、その中に保持されるIL-12分子を不安定化しないものである。
【0109】
好ましくは、前記ポリ多糖は、エーテル化セルロース誘導体であり、より好ましくはUSPに規定され、精製され(purified)、およびリストされるものであり、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースである。本願発明において最も好適なものは、メチルセルロースである。
【0110】
典型的には、ゲル化に有用なポリエチレングリコールは、適切な粘性を得るための、低および高分子量のPEGsの混合物である。例えば、PEGの分子量400〜600に分子量1500のものを有するものの混合物(a mixture of a PEG of molecular weight 400-600 with one of molecular weight 1500)は、ペーストを得るための適切な比率に混合された場合、この目的に効果的であろう。
【0111】
多糖類およびPEGsに適用される「水溶性(water soluble)」の用語は、コロイド性の溶液および分散剤(dispersions)を含むことを意味する。通常、セルロース誘導体の溶解度は、エーテル基の置換の度合によって決定される。そして、本願発明において有用な安定化誘導体(stabilizing derivatives)は、セルロース鎖中のアンヒドログルコース単位毎に係るエーテル基を十分な量で含有せしめて、前記誘導体を水溶性に変えるべきである。少なくとも0.35エーテル基/アンヒドログルコース単位のエーテル置換の度合は、一般的に十分である。加えて、前記セルロース誘導体は、アルカリ金属塩(例えば、Li, Na, K,またはCs塩)の形態であってもよい。
【0112】
メチルセルロースがゲルに使用される場合、好ましくはそれは約2〜5%、より好ましくは約3%のゲルを含み、そしてIl-12は約300〜1000mg/ゲルmlの量で存在する。
【0113】
使用されるIL-12の効果的な量は、治療の目的物、投与の経路、および患者のコンディションなどに依存する。従って、至適な治療効果を得るために、投与量を滴定(titer)すること及び投与経路を修飾することがセラピストに要求される。典型的には、臨床医は、投与量が所望の効果を達成するまでIL-12を投与する。全身治療に関して典型的な一日の投与量は、上記の要因に依存して、約1 ng/kg〜2000 ng/kgまで又はそれ以上、好ましくは約10ng/kg〜約500ng/kgの範囲であってもよい。別の一般的な提案として、IL-12レセプターが処方され、そして標的の部位または組織へと送達される;その際の投与量は、約0.1 ng/ccよりも多く、前記組織に効果的であるが過度に有毒ではない最大用量までのIL-12レベルを達成する能力を有する投与量である。この組織内濃度は、可能であるならば、経験的に決定される頻度で、連続的な輸液、徐放性放出、局所的適用、または注射によるものを含む投与措置(administration regime)によって、維持すべきである。この療法の進展は、従来のアッセイで容易にモニターされる。
【実施例】
【0114】
実施例1:
哺乳類を致死性電離放射線(lethal ionizing radiation)から防護(protect)する又はレスキュー(rescue)することへの、IL-12の能力を評価するために研究を行った。この結果は図1に示される。マウスは、組換え型のマウスIL-12〔100 ng/マウス(これは平均で約 5 ug/kgである), 静脈内注射〕を、致死量放射線 (1000rad)の前(24 時間)または後(1 時間)に受けた。コントロール群のマウスは、等容量のPBS緩衝剤を受けた。生存率は、Kaplan-Meier法で分析された。また、p値はLog順位検定を用いて計算された。IL-12 処理 (-▲-, n=38 または △-, n=35 )およびコントロール(□, n=62)の生存差(survival difference)は、統計学的に有意(p<0.001 )である。また、放射前にIL-12を受けたマウス(-▲-)とコントロール(□, n=62 )との間の生存差、および放射後にIL-12を受けたマウス(△)とコントロール(□, n=62)との間の生存差は、双方とも統計学的に有意(p<0.05 )である。
【0115】
実施例2:
哺乳類を致死量電離放射線(lethal dose ionizing radiation)から効果的に防護できる、低用量IL-12を評価するために研究を行った。IL-12の最小の効果的な放射線防護用量を決定するために、異なる用量のIL-12を、致死量電離放射線の前(24 時間前)または後(1 時間内)に、致死性に照射された動物に投与した。最高の生存率は、5ug/kgの用量で得られた(放射線適用の前および後の双方において)。高用量(50ug/kgまでの)は、生存の増大を生じなかった。5ug/Kgの用量は、適切なヒト用量としての約 400 ng/kgへと、ヒト用量がマウス用量の1/12であるとの一般的な規則を用いて変換することができる。図1に示したとおり、100ng/マウス (5ug/Kg)で投与したとき、95%(放射24 時間前に投与された)および75%(放射後に投与された)の動物は、長期間の生存( 1 年以上)を示したが、全てのコントロール動物は致死量放射線を受けた後に24日以内に死亡した。IL-12処理した動物は、コントロール群の動物と比較して、有意によりよい生存(p<0.001)を示した。興味深いことに、コントロールと比較して、放射前にIL-12を受けた動物および放射後にIL-12を受けた動物の差も、有意である(p<0.05)。
【0116】
実施例3:
IL-12を放射24時間前に異なる用量で投与して次の事項が決定された;その事項とは、IL-12投与の濃度と致死性照射からの生存との間の用量依存的な関連性が存在するかどうかである。表2に示したとおり、マウスにおける至適な放射線防護(radioprotective)の用量は、約 100 ng/マウスまたは5ug/kgである。この用量は、ヒトにおいて約 400ng/kgに変換できる(ヒト用量は、一般にマウス用量の1/12なので)。
【0117】
【表2】

【0118】
*Il-12を、異なる用量で、放射の 24 時間前に投与した。前記表に示したとおり、至適な放射線防護の用量は、約 100 ng/マウスである。
【0119】
実施例4:
IL-12の造血性のレスキュー効果の関連性を更に探索するために(それは投与の時間に関連するだろうから)、IL-12を致死性に照射された動物に放射の前後の異なる時間に投与した。次の時点を試験した、それは即ち:放射の- 48, -36, -24, および -12 時間前又は放射の +1, +12, +24, および +36 時間後である。表3に示したとおり、IL-12が放射前に投与された場合、最高の結果は生存した全ての動物(10のうち10)で-24時間で得られ;所定(given)の放射後では+1 時間で最高のレスキュー(生存した5マウスのうち4)が得られた。他の注射時間は、示さない(各群における試験した5動物に関して、-48, -36, +12 および +36 時間の注射時間で、0% 生存率)か又は若干(試験した5動物に関して、-12 および +24 時間の注射時間で、20% 生存率)示した。
【0120】
【表3】

*IL-12を、致死量放射線の前または後の異なる時間で投与した。そして動物の生存を毎日観察した。表2に示したとおり、放射線防護に関して最高の投与時間は、放射の24 時間前または1 時間後である。IR:致死性照射
【0121】
実施例5:
IL-12 投与の放射線防護効果が、特異的で、INF-γ非依存性であるかどうかを決定するために、試験を実施した。この放射線防護効果がIL-12-関連サイトカインの共通特性であるかどうか又は前記放射線防護効果がIL-12特異的であるかどうかを解明するために、以下のサイトカインを放射線防護アッセイで試験した:
1)IL-23, ヘテロ二量体(p l9+p40), これは同じサブユニットp40をIL-12 (p35+p40)と共有する;また、IL- 23 は同じレセプターサブユニット, すなわちIL-12RbをIL-12と共有する;さらにIL-12と類似して、IL-23とそのレセプターとの結合は、INF-γ産生を生じる;
2)IL-18(IL-12と同様に)は、インターフェロンγの放出を誘導することができる;
3)IL-2, これは免疫応答においてIL-12と相乗的に機能し、T細胞中におけるIL-12レセプターの発現を増加させる。
4)GM-CSF, G および M 細胞産生を刺激するサイトカイン。
表4に示したとおり、IL-12は、マウスを致死量放射線から防護できる唯一の試験されたサイトカインである(IL-12が放射後に投与された場合、5マウスのうち4が生存した)。また、GM-CSFおよびIL-12の間に相乗効果が存在するかどうかを決定するために評価をした。相乗効果は発見されなかった。従って、IL-12の放射線防護機能は、特異的で、インターフェロンγ非依存性である。
【0122】
【表4】

【0123】
*異なるサイトカインを、致死量放射線の 1 時間後にマウスに適用した。生存率を、動物の生存を毎日チェックすることにより観察した。IL-18およびIL-23の双方はINF-γ産生を誘導できるが、これらのサイトカインの放射線防護効果は存在しなかった。この結果は、次の事項を示唆していた;その事項とは、放射線防護効果がIL-12特異的で、INF-γ非依存性であるということである。GM-CSFのみでは如何なる放射線防護効果も示さず、IL-12と共に使用した場合にも、付加的な効果も示さなかったので、IL-12単独は動物を致死量放射線から防護するために十分である。*:IL:インターロイキン;GM-CSF:顆粒球マクロファージコロニー刺激因子
【0124】
実施例6:
骨髄および腸管での、IL-12投与および放射の効果を決定するために試験を実施した。本試験において解明すべき主な質問は、腸管を感作(sensitizing)することなく、IL-12が骨髄を放射の有害な効果から防護できるかどうかである。前記試験の結論は、IL-12が、骨髄を電離放射線(ionizing radiation)から防護するが、腸管を電離放射線に対して感作しないことである。
【0125】
IL-12が腸管を電離放射線に対して感作するかどうかを決定するために、2つの異なる用量のIL-12および放射を放射線防護アッセイに使用した(即ち、5ug/kg および 50ug/kgのIL-12および2つの異なる用量の放射をも使用した)。IL-12の投与および放射に引き続いて、骨髄および小腸の双方を、5ug/kgまたは50 ug/kgのIL-12および致死量放射線を受けたマウスから組織学研究のために除去した。致死量は、1000radまたは1600radであった。1000 radまたは1600 rad)および5ug/kg IL-12の用量で、コントロールマウスおよびIL-12処理マウスの小腸に有意な差はなかった: 小腸は、図 3に示されるとおりビラおよび陰窩(villa and crypt)の形および数に関して無変化(intact)であったが(1600 radでのデータ示さず)、1600 rad放射(コントロール群およびIL-12処置群の双方のマウス)を受けたマウスに胃腸管傷害(GI tract damage)が存在している。しかしながら、骨髄は、図 2に示すとおり、異なるプロファイルを提示していた: Il-12処理動物(5ug/kg)は、有意に高い細胞密度(cellularity)を有する防護された髄(marrow)を1日目で示し(コントロール vs. IL-12投与)、より保存された骨髄構造および細胞密度を7日目で示し(コントロール vs. IL-12投与)、および有意な骨髄の回復を放射後の14日目で示した(コントロール vs. IL-12投与)。特に7日目で、静脈洞構造(venous sinusoid structures)を、IL-12処理マウスの骨髄中に観察することができるが、コントロールマウスにおいてはできない。静脈洞(venous sinuses)は、骨髄中の造血前駆および造血幹細胞を支持する機能を担うと信じられている。
【0126】
コントロール中の及びIL-12処置群中のマウス間に、放射後7日目および10日目で骨髄の組織学的な構造に有意差は認められないようであるが(データ示さず)、IL-12処理マウスの骨髄細胞密度はコントロールマウスよりも良好である(データ示さず)。しかしながら、コロニーを、IL-12処理マウスの骨髄中に放射後12日目で観察した。14日目までに、IL-12処理マウスの骨髄細胞密度の完全な回復が認められた。IL-12処置群とは異なり、コントロール群のマウスは、試験した全ての時点で骨髄回復の徴候を示さなかった。
【0127】
実施例7:
IL-12投与が、電離放射線の影響から複数系統の血球の回復を促進させるかどうかを示すため研究を行った。末梢血細胞計数降下は、造血系における電離放射線の障害の指標である。
【0128】
IL-12が電離放射線からの放射線防護効果を実証したので、末梢血球の回復を致死量または致死量以下の放射の両方でモニターした。
【0129】
致死量放射線(10Gy)後、IL-12処理および無処置のマウスの双方に関して、完全血球計数(full blood cell count)は最低ポイントに降下した。IL-12処理マウスは、放射後14日目で回復を開始したが、コントロール動物は死滅した。IL-12処理動物は、正常な血球数に放射後約30日で達した(図6に示すとおり)。回復が白血球、赤血球、および血小板を含む複数系統であることに注目すべきである。この結果は、上記のような重要な臨床的価値を有することが期待される。
【0130】
図4に示すとおり、亜致死性放射線(500 rad)、IL-12は、処理マウスにおいて血球数回復を促進する(コントロール動物と比較して)。ここでもまた、回復は、広い範囲であり、全ての血液系統および血球タイプを包含している。特に放射後5日目および8日目、IL-12処理マウスからの赤血球、血小板、白血球、および単球は、コントロールマウスと比較して統計学的に高い(p<0.05)。この効果は、IL-12が放射の24時間前に適用された場合、放射後にIl-12を適用した場合と比較して、幾分か優れている。
【0131】
実施例8:
IL-12が骨髄中の幹/前駆細胞を致死量放射線から防護することができるかどうかを評価するために、試験を実施した。
【0132】
レスキュー現象に関してIL-12投与により防護される骨髄細胞サブセットを決定するために、CFCおよびCFU-S12アッセイを致死量放射線後の異なる時点で実施した。骨髄細胞をIL-12処理またはコントロール動物から、CFCおよびCFU-S12アッセイのために放射後に直ちに(0日)、または7, 9, 10, 12, 14 および 21日目に回収した。前駆細胞がIL-12処理から防護される場合(IL-12は本試験において放射の24 時間前に投与された)、細胞が0日で除去されたときにCFCおよびCFU-S12コロニーが検出されるべきである。しかしながら、放射後0または7日目に分離された骨髄細胞は、IL-12処理およびコントロール動物においてCFCもCFU-S12コロニーも生じさせない。放射後10日目に、IL-12処理マウスから分離された骨髄細胞は、CFU-S12を発生しはじめたが、検出可能なCFCは発生しない;これは、放射後12日目で分離されたIL-12処理骨髄から出現しはじめ、放射後14日目で分離された骨髄から完全に回復する(図 5A および 図 5Bに示される)。CFCおよびCFU-S12コロニーは、放射後14日目にIL-12処理動物においてのみ検出された(図 5A および 5Bに示される)。これらの結果は次の事項を示唆している;その事項とは、IL-12が骨髄前駆体および短期のHSCsを致死量放射線から直接的に防護しないだろうことである。この結果に関する1つの説明は、IL-12処理動物骨髄中に致死量放射線から残ったCFCおよびCFU-S12コロニー形成細胞はないであろうとのことである。放射後14日目での、CFCおよびCFU-S12コロニー形成細胞は、IL-12処理でレスキューされた長期再構築幹細胞(long-term repopulating stem cells)に由来し得る。
【0133】
実験の詳細は以下の通りである。致死量放射線後の異なる時点で、コロニー形成細胞アッセイ(CFC アッセイ)(5A)、コロニー形成単位脾臓12日 アッセイ(CFU-S12)(5B-5C)、および骨髄移植(BMT, 5D-F)に関して、骨髄細胞をIL-12またはPBS緩衝剤を受けたマウスから単離した。レジェンド:DO:照射後すぐ;IR、照射。BM, 骨髄。CFU-S12、コロニー形成単位―spleen12。
【0134】
図5A: 分離された骨髄細胞を、12日目にコロニー形成を検出するために、メチルセルロースプレートに蒔いた。正常マウスからの骨髄細胞を、前記アッセイ系のコントロールとして使用した。コントロールおよびIL-12処理マウスの双方で、最初の9日で検出可能なCFC活性は認められない。12日目までに、低レベルCFC細胞活性が、IL-12処理マウスにおいて提示されはじめる。CFC活性の完全な回復は、IL-12処理マウスにおいて放射後約14日目に観察された。対照的に、コントロールマウス骨髄細胞のCFC細胞活性の回復は、認められなかった。
【0135】
図5B〜C: IL-12処理またはコントロールマウスから分離された骨髄細胞を、第二の致死性に照射されたマウスに移植した。移植後12日目、レシピエントマウスを屠殺した;そして脾臓を、除去し、固定してコロニー形成を計数した。IL-12処理およびコントロールマウスの双方の最初の7日に分離された細胞は、CFU-S12を発生しなかった。しかしながら、CFU-S12活性の完全な回復が、IL-12処理マウスにおいて放射後約10日目に分離された細胞で観察された。図5Bは、トータル6マウスでの2実験の概要を示す;図5Cは、IL-12処理またはPBS緩衝剤処理(コントロール)骨髄細胞を受けたマウスから分離された脾臓を示す。
【0136】
図5D〜F: 二次的な骨髄移植を使用して、IL-12が長期再構築HSCを防護できるかを検出した。致死量放射線およびIL-12レスキューの6月後、これらのマウス(Ly 5.2)から骨髄細胞を、分離し、そして第2の致死性に照射されたマウス(Ly 5.1)に移植した。移植4ヶ月後、ドナー細胞(Ly5.2)を、レシピエントの末梢血で検査した。図5Fに示したとおり、約30%の再構築された血液細胞はドナー起源であり、ドナー細胞に由来するT/B細胞(図5E)およびM/G(図5D)細胞を検出することができる;このことはIL-12が長期再構築細胞を防護することを示している。
【0137】
IL-12は、骨髄前駆細胞または短期の造血幹細胞(ST-HSCs)を致死性照射から防護するようには思われなかった。というのも、照射後直ちに又は7日後に骨髄中でCFC (図 5A) および CFU (図 5B)活性が無いか又は僅かしかなかったからである。照射後、CFUに関して10日まで(図5B&C)またはCFCに関して14日まで(図 5A)、完全な回復に近いコロニー形成ではなかった。これら後のCFUおよびCFC活性は、彼ら双方が防護された長期の造血幹細胞(LT-HSCs)から由来したことを示している。CFU(ST-HSCs)に関する回復は、CFC(骨髄前駆細胞)よりも約4日早かった。この事項は、LT-HSCからST-HSCsにはじまり、次によりコミットした前駆細胞へといたる、正常な骨髄幹細胞の分化段階と一致している。活性なLT-HSCsは、致死性に照射されたマウスをレスキューすることだけではなく、造血系をすっかり再構築することもできる。IL-12-防護LT-HSCsは、致死性に照射されたマウスをレスキューする及び造血系を再構築させる(図 5F)ことだけではなく、長期において機能的な骨髄球性系(図 5D)およびリンパ球系(図 5E)へと分化した。
【0138】
以下に幾つかのさらなる実験の詳細を記載する。致死量放射線からのレスキューの6月後(IL-12処理マウス, C57BL/Ly5.2)、全骨髄細胞を、分離し、そして1x106 細胞を第2の致死性に照射されたマウス(C57BL/Ly5.1)に移植した。移植の4ヶ月後、血液細胞を採集し、抗-Ly5.2および抗-Mac-1/抗-Gr-1 抗体(5D)、および抗-Ly5.2および抗-CD3/抗-B220抗体(5E)および抗-Ly5.2 抗体(5F)で染色した。IL-12レスキュー骨髄細胞は、骨髄球系細胞(5D, Ly5.2 およびMac-1/Gr-1抗原の二重陽性を示す細胞);およびリンパ球系細胞(5E, Ly5.2 およびCD3/B220抗原の二重陽性を示す細胞)の両方を生じた。IL-12レスキュー骨髄ドナー細胞に由来する、約 28±1%の血液細胞が存在していた(5F)。D:照射後の日数。
【0139】
実施例9:
IL-12投与が骨髄細胞増殖を刺激するかどうかを決定するために、試験を実施した。試験の結果は次の事項を明らかにした;その事項とは、IL-12が、骨髄細胞をサイクリング(cycling)および増殖へと促進する(コントロールと比較して)ことである。
【0140】
S期の細胞が放射に比較的耐性であることが信じられている。Brd-U取込および細胞サイクリング分析の両方を実施して、IL-12が骨髄細胞増殖を刺激できるかどうかを決定した。IL-12処理マウスにおいて、コントロール動物と比較して、より多くのS期の骨髄細胞が存在する(12% vs 10%, p<0.05)。そのうえ、コントロール動物と比較して、IL-12処理骨髄において、より多くのBrdU陽性細胞が存在する(17% vs 8%, p<0.05)。
【0141】
これらの結果は、図7に示される。IL-12投与(100ng/マウス)の24時間後、骨髄細胞をBrdU取込アッセイのために分離した(図7A)。統計分析は、IL-12処理骨髄が、コントロールマウスと比較して高いレベルのBrdU陽性細胞を含有していることを示した(図 7B, p<0.01, n=6)。細胞周期分析をプロピジウムヨウ化物染色法で実施した、これによりS期での細胞数の有意な増加が示された(C, p<0.05, n=6)。
【0142】
実施例10:
IL-12投与が、Sca-1+ 細胞を放射誘導性のアポトーシスから防護するかどうかを評価するために研究を行った。Sca-1+ は、造血再構築細胞または幹/前駆細胞のマーカーである。IL-12投与の24時間後、マウスは、致死量放射線(10Gy)を受けた。放射7時間後、マウスを屠殺し、骨髄細胞を分離し、アネキシンV(細胞アポトーシスの指標)およびSca-1抗原(幹細胞 マーカー)を検出した。図8に示されるとおり、PBS処理コントロールマウスと比較して、IL-12処理マウス中のアネキシンV- (アネキシンVに関して陰性)/Sca-1+ 細胞は、全骨髄中で有意に増加する(19.2±3.7% vs 9.7±1.5%, p<0.01)。全Sca-1+ 細胞におけるAnnexinV-(陰性)/Sca-1+ 細胞の比率は、コントロールマウスと比較して、IL-12処理動物に関して有意に高かった(54±5% vs 44±15%, p<0.05)。
【0143】
IL-12投与は、全骨髄中のアネキシンV陰性/Sca-1陽性細胞(活動的な骨髄再構築または幹/前駆細胞)のパーセンテージを有意に増加させると思われた。この結果は、次の事項を指摘する;その事項とは、致死性照射後のIL-12処理マウス中に、幹マーカー(例えば、Sca-1)を有する、より活動的な骨髄細胞が存在したことである。
【0144】
実施例11:
IL-12投与が化学療法薬と共に使用された場合、複数系統の血球の回復を促進させるかどうかを決定するため、試験を行った。この実施例において、IL-12の使用は、化学療法による主要な療法に対して、補助的または付属的な療法としてである。IL-12を、異なる時間(化学療法の36hrs前または12hrs後)に投与した。この研究においてマウスは、相対的に高用量の化学療法薬 Cytoxan(例えば、300 mg/kg)を受けた。異なる時間のpost-cytoxan処理で、血球計数検査のために、末梢血を尾静脈から採取した。これらのデータは、図9に示される。図9A 白血球数; B:赤血球数; C:血小板数。限定されたマウス数(n=5)で、IL-12処理マウスは、良好な血球回復を示した。
【0145】
[材料および方法]
マウスおよびサイトカイン
上記に開示された実験に使用した全てのマウスは、Jackson Labs (Bar Harbor, ME)から購入した。使用した具体的なマウスは、C57BL/6J系統の雌マウスであり、一般に6〜8週齡であった。マウスは、南カリフォルニア大学の動物管理使用委員会により承認されたプロトコールにしたがって取扱われ、管理された。組換え型のマウス インターロイキン 12 (IL-12)は、R&D Systems社(Minneapolis, MN)またはPepro Tech社(Rocky Hill, NJ)から購入され、製造者の推奨にしたがってリン酸緩衝食塩水(PBS)に、pH 7.4、100ng/ulの貯蔵濃度に溶解され、-70゜Cで貯蔵された。他のサイトカインまたはケモカインは、R&D Systems社から購入した。
【0146】
放射線防護アッセイ
マウスは、放射線防護アッセイ前の1週間に酸性水を与えられた。サイトカイン〔リン酸緩衝食塩水(PBS), pH 7.4に希釈される〕を、全身体での致死性照射(TBI;total body lethal irradiation)の前または後の特定時間に、マウスに静脈注射した。コントロール群マウスは、PBS緩衝液を注射された。TBIに関して、マウスは、電離照射(セシウム 137からのγ線)を500radの用量で3時間インターバルで2回、又は1000radの用量で1回暴露された;これは、カナダ原子力エネルギー社〔Atomic Energy of Canada LTD (Kanafa, Ontario, Canada)〕のGammacell 40 machine中で実施された。γ線の照射線量率(exposure rate)は、1Gy/minである。この放射線量は、全てのコントロール群マウスを暴露後30日以内に死亡させる。照射後、マウスは、抗生物質を含有している水を与えられた。生存曲線に関して、Kaplan-Meier法を使用した。各実験は、3回以上繰り返して行った。
【0147】
末梢血細胞数に関して、6〜8週齡の雌C57BL/6Jマウスは、致死性(1000rad)または亜致死性(500rad)照射の前または後に、IL-12のi.v.注射を受けた。1Oul血液を尾から採取し、MASCOT Multispecies Hematology Systems (CDC Technologies, Oxford, CT)中で血球計数分析を、照射後の異なる日に行った。各群は、少なくとも 3 マウスを有していた。
【0148】
細胞のサイクリングおよび増殖アッセイ
細胞サイクリングアッセイ(cell cycling assay)に関して、IL-12(100ng/マウス)またはPBSをマウスに静脈注射した。注射24時間後、全骨髄細胞を大腿骨から流出させ、溶解緩衝剤で処理して赤血球を破壊した。PBS中での洗浄および-20゜C純粋エタノール中での少なくとも1時間の固定の後、約5x105 骨髄細胞を、RNA分解酵素 A (20ng/ul終濃度)で37゜C、30分間処理し、次にシグマ (St Louis, MO)から購入したプロピジウムヨウ化物(100ng/ul 終濃度)で室温で15〜30分間染色し、次に蛍光活性化セルソーティング(FACS)を用いた細胞サイクリング分析で直接処理した。
【0149】
BrdUアッセイに関して、IL-12(100ng/マウス)またはPBSを、マウスに静脈注射した。注射の21時間後、マウスは、5-ブロモ-2'-デオキシウリジン(シグマのBrdU)を50mg/kg用量i.p.注射された。BrdU注射の3時間後、マウスを屠殺した。そして、全骨髄細胞を大腿骨から分離し、溶解緩衝剤で処理して、赤血球を破壊した。骨髄細胞を、Oncogene Research Products (Boston, MA)から購入したBrdU免疫組織化学システムキットを用いた増殖アッセイのために、サイトスピンでスライドに分散させた。
【0150】
骨髄、脾臓、および小腸の病理学
マウスを、IL-12(100ng/マウス)またはPBSで、致死性照射を受ける24時間前に処理した。致死性照射後の異なる日に、大腿骨、脾臓、および小腸を除去し、10%ホルマリン緩衝剤で24時間固定した。引き続いて、骨髄をRapid Decalcifierで約30分間脱灰した。サンプルおよび組織を、次にルーチンのヘマトキシリンおよびエオシン染色のために5 umのミクロ-切片にするために、TissuePrep2パラフィンワックスに包埋した。幾つかの小腸を、PAS(過ヨウ素酸シッフ)染色で処理した。
【0151】
長期造血幹細胞におけるIL-12放射線防護効果
致死性照射の前または後のIL-12処理によりレスキューされたLy5.2系統マウスを、6ヶ月後に屠殺した。ドナー細胞として、これらのマウスからの全骨髄細胞(1x106 Ly5.2細胞/レシピエントマウスまたは5x105 Ly5.2細胞と共に5x105 Ly5.1競争細胞/レシピエント)を、全身体で致死性照射を受けたLy5.1系統マウスへと移植した。移植の4ヶ月後、末梢血細胞を、Ly5.2細胞(抗-Ly5.2抗体のFITC抱合体)と共にT細胞およびB細胞マーカー(抗-CD3および抗-B220抗体のPE抱合体)と共にマクロファージおよび顆粒球細胞マーカー(抗-CD 11bおよび抗-Gr1抗体のPE抱合体)に関してFACSを用いて分析した。全ての抗体は、BD Pharmingen(San Diego, CA)から購入した。
【0152】
コロニー形成単位(CFU)アッセイおよびCFU-spleen12アッセイ
致死性照射の24時間前、マウスをIL-12(100ng/マウス)でi.v.処理した。そして骨髄細胞を、これらのマウスから致死性照射後の異なる日に分離した。CFUアッセイに関して、2x105 骨髄細胞を、1mlメチルセルロース培地 MethCult GF M3434〔Stem Cell Technologies Inc.(Vancouver, BC)より〕に十分に混合し、そして35 mmディッシュ中で培養した。各サンプルは、繰り返された。12日培養後、コロニー(>50 細胞)を、顕微鏡下で計数した。
【0153】
CFU-spleen12アッセイに関して、ドナーとして2x105 骨髄細胞を、致死性照射を受けたレシピエントマウスへと移植した。1ドナーマウスからの細胞を、3レシピエントマウスへと移植した。移植の12日後、レシピエントマウスを屠殺し、脾臓をTellyesniczky's溶液(90mlの70%エタノール、5mlの氷酢酸、および5mlの100%ホルマリン)で固定した。脾臓コロニーを計数した。
【0154】
本発明は、特定の好適な態様に関連して、かなり詳細に議論してきたが、他の態様も可能である。従って、添付される特許請求の範囲の範囲は、本開示に含まれる好適な態様の記載に限定されるべきではない。本明細書中で参照される全ての引用文献および特許は、その全体が参照によって援用される。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】図1は、IL-12投与の放射線防護効果に関するKaplan-Meier生存曲線を示す;データは、IL-12がマウスを致死性電離放射線から防護することを示している。
【図2】図2は、動物モデルにおいて、IL-12投与が骨髄を致死量放射線から防護することを示している。IL-12処理(5ug/kg)および致死量放射線(1, 12 および14日)後の異なる時間に、大腿骨を分離し、10%ホルマリン中で固定し、脱灰し、そしてパラフィン切片及びヘマトキシリン&エオシン染色のために処理した。2A 放射1日後; 2B: 放射12日後; 2C: 放射14日後。1日、7日、および10日(結果は7および10日目に関して示さない)の時点で有意な組織学的な差はないが、コロニーはIL-12で処理したマウスにおいて12日目に観察された(2B)。14日目、IL-12処理マウスにおける骨髄は有意な再生を示したが、コントロールマウスの骨髄では明らかな再生は存在しない。(200x拡大率)
【図3】図3は、動物モデルにおいて、低用量IL-12(5ug/kg)が2つの致死量放射線に対して胃腸管を感作しないことを示す;IL-12処理(5ug/kg(約100ng/マウス))またはコントロールマウスは、異なる用量の放射を受けた(それぞれ骨髄およびGI路に関して、10および16Gy致死量)放射4日後、小腸を除去し、10Gyを受けたマウスに関してPAS染色(過ヨウ素酸シッフ)、16Gyを受けたマウスに関してH&E染色のために固定した。双方の放射用量を受けた、コントロールおよびIL-12処理マウスの間に有意な組織学的な差は存在していない;従って、IL-12による感作は観察されなかった、また、10Gy放射を受けたマウスにおいて明らかな組織学的なダメージはない(200x拡大率)。
【図4−1】図4は、IL-12投与が、亜致死性に照射されたマウスの複数系統の血球細胞回復を促進することを示す。IL-12処理(100ng/mosue)および亜致死性放射線(500rad)の後、末梢血を、血球計数および分化のために尾静脈を介して異なる時間に採取した。4A 白血球数; 4B:赤血球数; 4C:血小板数。実線(-▲-)は、放射24時間前にIL-12を受けたマウスである;実線(◆)は、放射1時間後にIL-12を受けたマウスである。p<0.05=*
【図4−2】図4は、IL-12投与が、亜致死性に照射されたマウスの複数系統の血球細胞回復を促進することを示す。IL-12処理(100ng/mosue)および亜致死性放射線(500rad)の後、末梢血を、血球計数および分化のために尾静脈を介して異なる時間に採取した。4A 白血球数; 4B:赤血球数; 4C:血小板数。実線(-▲-)は、放射24時間前にIL-12を受けたマウスである;実線(◆)は、放射1時間後にIL-12を受けたマウスである。p<0.05=*
【図4−3】図4は、IL-12投与が、亜致死性に照射されたマウスの複数系統の血球細胞回復を促進することを示す。IL-12処理(100ng/mosue)および亜致死性放射線(500rad)の後、末梢血を、血球計数および分化のために尾静脈を介して異なる時間に採取した。4A 白血球数; 4B:赤血球数; 4C:血小板数。実線(-▲-)は、放射24時間前にIL-12を受けたマウスである;実線(◆)は、放射1時間後にIL-12を受けたマウスである。p<0.05=*
【図5】図5は、IL-12投与が、致死性に照射されたマウスの長期再構築幹細胞を防護することを示す。致死量放射線後の異なる時点で、コロニー形成細胞アッセイ(CFC アッセイ)(5A)、コロニー形成単位脾臓12日 アッセイ(CFU-S12)(5B-5C)、および骨髄移植(BMT, 5D-F)に関して、骨髄細胞をIL-12またはPBS緩衝剤を受けたマウスから分離した;D: 照射後の日数, DO: 照射後すぐ;IR、照射。BM, 骨髄。CFU-S12、コロニー形成単位―脾臓12。
【図6】図6は、IL-12投与が、致死性に照射されたマウスの複数系統の血球細胞回復を促進することを示す。IL-12処理(100ng/mosue)および亜致死性放射線(10Gy)の後、末梢血を、血球計数および分化のために尾静脈を介して異なる時間に採取した。A 白血球数; B:赤血球数; C:血小板数。放射後14日目までに、コントロール群の全てのマウスは死亡したが、IL-12を受けたマウスは回復し始めた。
【図7】図7は、IL-12投与が、全般的に骨髄の細胞増殖を刺激することを示している。IL-12投与(100ng/マウス)の24時間後、骨髄細胞をBrdU取込アッセイのために分離した(A)。統計分析は、IL-12処理骨髄が、コントロールマウスと比較して高い%のBrdU陽性細胞を含有していることを示した(B, p<0.01, n=6)。細胞周期分析をプロピジウムヨウ化物染色法で実施した、これによりS期での細胞数の有意な増加が示された(C, p<0.05, n=6)。
【図8】図8は、IL-12投与が、Sca-1+細胞を放射誘導性アポトーシスから防護することを示している(ここで、Sca-1+ 陽性細胞は、造血再構築細胞または造血幹細胞の存在の指標である)。
【図9−1】図9は、IL-12投与が、化学療法薬の造血性侵襲(hematopoietic insult)からの複数系統の血球細胞の回復を促進することを示している。比較的高用量の化学療法薬 Cytoxan(300 mg/kg)を受けたマウスに、IL-12を異なる時間(36hrs前または12hrs後)に投与した。
【図9−2】図9は、IL-12投与が、化学療法薬の造血性侵襲(hematopoietic insult)からの複数系統の血球細胞の回復を促進することを示している。比較的高用量の化学療法薬 Cytoxan(300 mg/kg)を受けたマウスに、IL-12を異なる時間(36hrs前または12hrs後)に投与した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の疾患状態を治療する方法であって:
前記疾患状態を標的とすることを意図した哺乳類に治療を適用することと(ここで、前記治療は関連する造血毒性を有している);および
1以上の治療上有効な用量のIL-12を前記治療適用時の近くで投与することと(ここで、前記哺乳類へのIL-12の投与は、治療の造血毒性を低下させる)を備える方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記哺乳類がヒトである方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、前記治療が化学療法を含む方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、前記治療が放射線療法を含む方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、前記治療が化学療法および放射線療法を含む方法。
【請求項6】
請求項2記載の方法であって、IL-12の用量が約 2000 ng/kg未満である方法。
【請求項7】
請求項2記載の方法であって、IL-12の用量が約 500ng/kg未満である方法。
【請求項8】
請求項2記載の方法であって、IL-12の用量が約 100 ng/kg未満である方法。
【請求項9】
請求項2記載の方法であって、IL-12の用量が約 10 ng/kg未満である方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法であって、前記治療が1以上の高用量治療モダリティーを含む方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法であって、前記治療が高密度用量治療措置を適用される方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法であって、前記IL-12の投与が前記治療に関連する造血毒性からの骨髄細胞の防護を生じる方法。
【請求項13】
請求項3記載の方法であって、前記IL-12の投与が骨髄細胞の化学防護を生じる方法。
【請求項14】
請求項12記載の方法であって、前記骨髄細胞が造血再構築細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞を含む方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法であって、前記治療が1以上の固形腫瘍を治療することを標的とする方法。
【請求項16】
前記疾患状態単独を標的とすることを意図した治療の適用と比較して、1以上の固形腫瘍の緩解の増加を生じる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
請求項1記載の方法であって、前記治療が1以上の造血細胞障害を治療することを標的とする方法。
【請求項18】
前記疾患状態単独を標的とすることを意図した治療の適用と比較して、1以上の造血細胞障害の緩解の増加を生じる、請求項1記載の方法。
【請求項19】
請求項1記載の方法であって、前記治療がHIV感染を治療することを標的とする方法。
【請求項20】
HIV感染又はその関連する症状の減少を生じる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項19記載の方法であって、前記哺乳類の白血球数が増加する方法。
【請求項22】
請求項19記載の方法であって、前記哺乳類のT-細胞数が増加する方法。
【請求項23】
請求項3記載の方法であって、前記化学療法が1以上の造血細胞のタイプまたは系統における欠乏を生じ、前記IL-12の投与が前記欠乏を寛解する方法。
【請求項24】
請求項3記載の方法であって、前記化学療法治療が2以上の化学療法の適用を含む方法。
【請求項25】
請求項3記載の方法であって、IL-12が前記化学療法の前に投与される方法。
【請求項26】
請求項3記載の方法であって、IL-12が前記化学療法の後に投与される方法。
【請求項27】
請求項3記載の方法であって、IL-12が前記化学療法の前または後に投与される方法。
【請求項28】
請求項3記載の方法であって、IL-12が前記化学療法の前および後に投与される方法。
【請求項29】
請求項4記載の方法であって、IL-12投与が骨髄細胞の放射線防護を生じる方法。
【請求項30】
請求項29記載の方法であって、前記骨髄細胞が造血再構築細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞を含む方法。
【請求項31】
請求項4記載の方法であって、前記放射線療法が致死量に近い放射(near-lethal dose of radiation)を含む方法。
【請求項32】
請求項4記載の方法であって、前記放射線療法が亜致死性の放射(sub-lethal dose of radiation)を含む方法。
【請求項33】
請求項4記載の方法であって、前記放射線療法が高密度用量治療措置を適用される方法。
【請求項34】
請求項4記載の方法であって、IL-12が前記放射線療法の前に投与される方法。
【請求項35】
請求項4記載の方法であって、IL-12が前記放射線療法の後に投与される方法。
【請求項36】
請求項4記載の方法であって、IL-12が前記放射線療法の前または後に投与される方法。
【請求項37】
請求項4記載の方法であって、IL-12が前記放射線療法の前および後に投与される方法。
【請求項38】
請求項4記載の方法であって、前記放射線療法が1以上の造血細胞のタイプまたは系統における欠乏を生じ、前記IL-12の投与が前記欠乏を寛解する方法。
【請求項39】
請求項10記載の方法であって、前記高用量治療モダリティーが放射線療法の投与を含む方法。
【請求項40】
請求項11記載の方法であって、前記高密度用量治療措置が放射線療法の投与を含む方法。
【請求項41】
請求項1記載の方法であって、1以上の治療上有効な用量のIL-12が、前記治療の適用の前に、前および後に、または後に、様々な時間間隔で投与される方法。
【請求項42】
哺乳類を造血における欠乏に関して治療する方法であって:
1以上の治療上有効な用量のIL-12を、前記欠乏を寛解させるために必要に応じて(as needed)投与することを含む方法。
【請求項43】
請求項42記載の方法であって、前記造血における欠乏が、1以上の造血細胞のタイプまたは系統における欠乏を含む方法。
【請求項44】
請求項42記載の方法であって、前記哺乳類がヒトである方法。
【請求項45】
請求項42記載の方法であって、IL-12の用量が約 2000 ng/kg未満である方法。
【請求項46】
請求項42記載の方法であって、IL-12の用量が約 500 ng/kg未満である方法。
【請求項47】
請求項42記載の方法であって、IL-12の用量が約 100 ng/kg未満である方法。
【請求項48】
請求項42記載の方法であって、IL-12の用量が約 10 ng/kg未満である方法。
【請求項49】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が1以上のタイプの骨髄細胞のIL-12促進性の増殖によって寛解される方法。
【請求項50】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が造血再構築細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞のIL-12促進性の増殖によって寛解される方法。
【請求項51】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が化学療法によって悪化する方法。
【請求項52】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が放射線療法によって悪化する方法。
【請求項53】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が実質的に疾患状態の結果である方法。
【請求項54】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏がリンパ球減少症を含む方法。
【請求項55】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が骨髄球減少症を含む方法。
【請求項56】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が白血球減少症を含む方法。
【請求項57】
請求項42記載の方法であって、前記白血球減少症が好中球減少症である方法。
【請求項58】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が赤血球減少症を含む方法。
【請求項59】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が巨核球減少症を含む方法。
【請求項60】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が血小板の欠乏を含む方法。
【請求項61】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が単球の欠乏を含む方法。
【請求項62】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏がリンパ球の欠乏を含む方法。
【請求項63】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が赤血球の欠乏を含む方法。
【請求項64】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が好中球の欠乏を含む方法。
【請求項65】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏がT細胞の欠乏を含む方法。
【請求項66】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が顆粒球の欠乏を含む方法。
【請求項67】
請求項42記載の方法であって、前記欠乏が樹状細胞の欠乏を含む方法。
【請求項68】
哺乳類における造血を刺激する又は増強する方法であって、1以上の治療上有効な用量のIL-12を、造血の刺激または増強を含む治療効果を達成する期間投与することを備える方法。
【請求項69】
請求項68記載の方法であって、前記造血の刺激または増強が、Il-12促進性の骨髄細胞の増殖に関与する方法。
【請求項70】
請求項68記載の方法であって、前記造血の刺激または増強が、造血再構築細胞、造血前駆細胞、または造血幹細胞のIL-12促進性の増殖に関与する方法。
【請求項71】
請求項68記載の方法であって、IL-12の用量が約 2000 ng/kg未満である方法。
【請求項72】
請求項68記載の方法であって、IL-12の用量が約 500 ng/kg未満である方法。
【請求項73】
請求項68記載の方法であって、IL-12の用量が約 100 ng/kg未満である方法。
【請求項74】
請求項68記載の方法であって、IL-12の用量が約 10 ng/kg未満である方法。
【請求項75】
請求項70記載の方法であって、前記造血再構築細胞が長期再構築細胞を含む方法。
【請求項76】
放射線療法の適用を更に含む、請求項68記載の方法。
【請求項77】
化学療法の適用を更に含む、請求項68記載の方法。
【請求項78】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類が1以上の造血細胞のタイプまたは系統における欠乏を有する方法。
【請求項79】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類がリンパ球減少症を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項80】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類が骨髄球減少症を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項81】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類が白血球減少症を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項82】
請求項81記載の方法であって、前記白血球減少症が好中球減少症である方法。
【請求項83】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類が赤血球減少症を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項84】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類が巨核球減少症を含む欠乏を有する方法。
【請求項85】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類が血小板の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項86】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類が単球の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項87】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類がリンパ球の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項88】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類が赤血球の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項89】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類が好中球の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項90】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類がT細胞の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項91】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類が顆粒球の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項92】
請求項68記載の方法であって、前記哺乳類が樹状細胞の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項93】
哺乳類における骨髄の保存または回復のための方法であって、造血再構築細胞、造血前駆細胞、または造血幹細胞を使用することなく、1以上の治療上有効な用量のIL-12を骨髄の保存または回復に必要な期間、前記哺乳類に投与することを備える方法。
【請求項94】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類が骨髄不全を有する方法。
【請求項95】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類が疾患状態を被り、前記骨髄のほぼ破壊(near destruction)が前記疾患状態に対処するための治療措置の副産物である方法。
【請求項96】
請求項93記載の方法であって、前記の治療上有効な用量のIL-12を骨髄の保存または回復に必要な期間、前記哺乳類に投与することが、骨髄移植の必要性を回避する方法。
【請求項97】
請求項93記載の方法であって、骨髄の保存または回復が造血再構築細胞、造血幹細胞、または造血前駆細胞の増加を含む方法。
【請求項98】
請求項93記載の方法であって、骨髄の保存または回復が1以上の分化型の造血細胞タイプの増加を含む方法。
【請求項99】
請求項93記載の方法であって、骨髄の保存または回復が造血支持細胞の増加を含む方法。
【請求項100】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類が、1以上の造血細胞のタイプまたは系統における欠乏を有する方法。
【請求項101】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類がリンパ球減少症を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項102】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類が骨髄球減少症を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項103】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類が白血球減少症を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項104】
請求項103記載の方法であって、前記白血球減少症が好中球減少症である方法。
【請求項105】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類が赤血球減少症を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項106】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類が巨核球減少症を含む欠乏を有する方法。
【請求項107】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類が血小板の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項108】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類が単球の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項109】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類がリンパ球の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項110】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類が赤血球の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項111】
請求項93記載の方法であって、前記哺乳類が好中球の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項112】
請求項93記載の方法であって、必要とする前記哺乳類がT細胞の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項113】
請求項93記載の方法であって、必要とする前記哺乳類が顆粒球の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項114】
請求項93記載の方法であって、必要とする哺乳類が樹状細胞の欠乏を含む造血欠乏を有する方法。
【請求項115】
請求項93記載の方法であって、IL-12の用量が約 2000 ng/kg未満である方法。
【請求項116】
請求項93記載の方法であって、IL-12の用量が約 500 ng/kg未満である方法。
【請求項117】
請求項93記載の方法であって、IL-12の用量が約 100 ng/kg未満である方法。
【請求項118】
請求項93記載の方法であって、IL-12の用量が約 10 ng/kg未満である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【公表番号】特表2008−500948(P2008−500948A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517858(P2006−517858)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/021710
【国際公開番号】WO2005/007093
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(592048844)ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (26)
【Fターム(参考)】