説明

造血幹細胞の分化抑制又は増殖方法

本発明は、造血幹細胞を未分化に抑制又は増殖する方法、造血幹細胞の分化抑制又は増殖剤などを提供する。より具体的には、本発明は、造血幹細胞を、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質の存在下で培養することを特徴とする造血幹細胞の分化抑制又は増殖方法;(a)フィーダー細胞、(b)Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質及び(c)一種以上の造血因子又は細胞刺激因子を含み、かつ血清を含まないことを特徴とする造血幹細胞培養系;Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質を含有する造血幹細胞分化抑制又は増殖剤などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、造血幹細胞の分化抑制又は増殖方法、造血幹細胞の製造方法、その方法によって得られる造血幹細胞、その培養法で用いられる培養系、造血幹細胞の増殖または分化を調節する物質をスクリーニングする方法、造血幹細胞の分化抑制又は増殖剤などに関する。
【背景技術】
最近では、Wntと称されるタンパク質が造血幹細胞との関係で盛んに研究されている。例えば、WeissmanらはWntシグナルが幹細胞を増幅できる可能性があると報告している(Nature,VOL.423,2003,pp409−414)。この報告では、従来幹細胞の自己複製に必要であるとされていたHoxB4や分化抑制シグナルに必要なNotchの発現も誘導できることから、幹細胞の増幅や維持におけるWntファミリーの重要な役割が示された。
また、Matthewsらは、マウス胎児肝においてWnt5aとWnt10bが発現していること、Wnt10bは造血幹細胞にも発現していること、Wnt5aまたはWnt10bを発現させた細胞の培養上清は5倍程度に幹細胞を増幅したこと報告している(BLOOD,VOL.89,1997,pp3624−3635)。Hoffmanらはヒト胎児骨髄にWnt2b(これはWnt13に対応する)、Wnt5a、Wnt10bが発現しており、Wnt5aはヒト造血幹細胞にも発現していると報告している(非特許文献1;BLOOD,VOL.92,No.9,1998,pp3189−3202)。しかし、これらのWntは体外培養系で造血幹細胞の自己複製を促進するかどうかについては示されておらず、そもそも胎児の骨髄で造血は行なわれていない。BhatiaらはWnt5aで造血幹細胞を体外では増幅できないが、Wnt5aを含む培養上清をマウスに投与すると3倍程度幹細胞が増幅したと報告している(非特許文献2:PNAS,VOL.100,No.6,2003,pp3422−3427)。この文献では、Wntによる幹細胞の体外での増幅効果は殆ど無いと報告されている。
また、NusseらはWnt3aを可溶性タンパク質として純化に成功し、Wnt3a単独で、造血幹細胞を約6倍に増幅できたと報告している(Nature,VOL.423,2003,pp448−452)。しかしながら、この実験では、幹細胞が分化してしまっており、純粋に幹細胞だけを増幅している訳でもない。また、増幅の程度は、約1.7倍であり、実用化レベルではない。
以上の報告からは、Wntが実際に単独で体性幹細胞の自己複製因子としての機能を持っているのか、Wntが全ての体性幹細胞を自己複製させる能力があるのか否か、オートクラインで自己複製するとする矛盾をどう説明できるのか、またWntファミリーのどのメンバーがどの体性幹細胞を制御しているのか(特異性)、などの疑問点は未だ解明されていない。
【発明の開示】
上記したように、造血幹細胞の増殖との関係でWntタンパク質は種々検討されてきたが、どのWntタンパク質が実際に実用的レベルの造血幹細胞の分化抑制能又は増殖能を有するかについては未だ究明されておらず、そのようなタンパク質を用いて造血幹細胞を未分化に抑制する方法あるいは増殖する方法は未だ知られていない。従って、造血幹細胞の分化抑制能又は増殖能を有するタンパク質を特定することができ、そのタンパク質を用いて造血幹細胞の分化を抑制し、又は増殖させることができれば、血液関連の種々の疾患の治療あるいは研究に有効である。
本発明者等は鋭意研究の結果、成体マウス骨髄ストローマ細胞にはWnt2、Wnt5aが発現しており、成体ヒト骨髄ストローマ細胞にはWnt2、Wnt5a及びWnt5bが発現し、Wnt2が最も多く発現していることを見出した。本発明者等は、この新たな知見に基づいて研究を続けた結果、Wnt2またはWnt5aを用いることにより、造血幹細胞の分化を抑制し、あるいは増殖させることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次のような、造血幹細胞の分化抑制及び/又は増殖方法、その方法によって得られる造血幹細胞、造血幹細胞の製造方法、その培養法で用いられる培養系、造血幹細胞の増殖または分化を調節する物質をスクリーニングする方法、造血幹細胞の分化抑制又は増殖剤などを提供する。
(1)造血幹細胞を、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質の存在下で培養することを特徴とする造血幹細胞の分化抑制又は増殖方法。
(2)一種以上の造血因子又は細胞刺激因子の存在下、かつ血清の非存在下で培養を行なう前記(1)に記載の方法。
(3)SCF及びTPOから選ばれる一種以上の造血因子の存在下で培養を行なう前記(2)に記載の方法。
(4)Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質を培養系に添加し、あるいはそのタンパク質を発現させたフィーダー細胞上で培養する前記(3)に記載の方法。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかの方法によって得られる造血幹細胞。
(6)造血幹細胞を、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質の存在下で培養する工程を含んでなる、造血幹細胞の製造方法。
(7)(a)フィーダー細胞、(b)Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質及び(c)一種以上の造血因子又は細胞刺激因子を含み、かつ血清を含まないことを特徴とする造血幹細胞培養系。
(8)フィーダー細胞として、無血清下で生存可能なC127細胞を含む前記(7)に記載の培養系。
(9)無血清下で生存可能なフィーダー細胞を用いることを特徴とし、(a)フィーダー細胞および造血幹細胞を含み、かつ血清を含まないことを特徴とする培養系に試験物質を共存させる工程、(b)試験物質が共存した培養系で造血幹細胞を培養する工程、及び(c)試験物質非共存下の場合と比較して、試験物質共存下の場合における造血幹細胞の割合および/または数の変化を測定する工程を含む、造血幹細胞の増殖または分化を調節する物質をスクリーニングする方法。
(10)Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質を含有する造血幹細胞分化抑制又は増殖剤。
(11)さらに、造血因子又は細胞刺激因子を含む前記(10)に記載の造血幹細胞分化抑制又は増殖剤。
(12)前記造血因子として、SCF及びTPOから選ばれる一種以上の造血因子を含む前記(11)に記載の造血幹細胞分化抑制又は増殖剤。
本発明の造血幹細胞の分化抑制又は増殖方法を用いることにより、in vitro/ex vivoで造血幹細胞の培養、増殖等を行なうことができる。また、本発明の造血幹細胞の分化抑制又は増殖剤を用いることにより、造血幹細胞を未分化なまま、体内または体外で増殖させることができるので、放射線治療や制ガン剤等の化学療法剤による血球減少症の改善、リンパ球減少に起因する感染症の予防、骨髄形成不全症や骨髄抑制等の骨髄疾患の治療、白血病・高度腎障害・骨髄抑制等の骨髄疾患の治療、遺伝的疾患に由来する低血球症の治療、遺伝子治療時における組換え幹細胞の体外培養等に用いることができる。
また、本発明のスクリーニング法によれば、造血幹細胞の増殖または分化を調節する物質をスクリーニングすることができるので、造血幹細胞レベルの疾患の解明や新たな治療法・治療剤の開発に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.造血幹細胞の分化抑制又は増殖方法、および造血幹細胞の製造方法
本発明の第一の態様によれば、造血幹細胞を、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上の蛋白質の存在下で培養することを特徴とする造血幹細胞の分化抑制又は増殖方法(以下、「培養法」ともいう)が提供される。ここで、「造血幹細胞」とは、顆粒球系細胞(myeloid)、リンパ球系細胞(lymphoid)、赤血球系細胞(erythroid)、巨核球系細胞(megakaryocyte)等を含む全ての血球細胞へ分化する能力を有し、且つ自己複製能を有する細胞をいう。造血幹細胞を体外で培養するためには、何らかの造血因子又は細胞刺激因子の共存が必要であり、このような因子の非存在下では造血幹細胞はすぐに死滅してしまう。一方、このような因子の存在下では造血幹細胞は容易に分化してしまう。造血幹細胞は分化してしまうと自己複製能を失う。造血幹細胞の分化を抑制するとは、通常であれば造血幹細胞の分化が進むような条件下で、自己複製能を保持した造血幹細胞の存在割合および/または数を高めることを意味する。造血幹細胞の増殖(または増幅とも言う)とは、自己複製能を保持した造血幹細胞が増えること即ち自己複製することを意味し、造血幹細胞から分化した細胞が増えることは造血幹細胞の増殖に該当しない。
本発明で用いるWnt2及びWnt5aは公知の蛋白質であり、そのアミノ酸配列および該蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列は以下の配列データベースから入手できる。ヒトWnt2遺伝子及びヒトWnt5a遺伝子は、GenBankに、それぞれ、Accession No.NM_003391及びAccession No.NM_003392として登録されている。ヒトWnt2タンパク質及びヒトWnt5aタンパク質は、NCBI Entrez Protein Databaseに、それぞれ、Accession No.NP_003382及びAccession No.NP_003383として登録されている。マウスWnt2遺伝子及びマウスWnt5a遺伝子は、GenBankに、それぞれ、Accession No.BC026373及びAccession No.BC018425として登録されている。マウスWnt2タンパク質及びマウスWnt5aタンパク質は、NCBI Entrez Protein Databaseに、それぞれ、Accession No.P21552及びAccession No.AAH18425として登録されている。本発明で用いるWnt2及びWnt5aは、いずれの種由来のものでもよいが、好ましくはヒト由来である。また、ヒトWnt2及びWnt5aと同等の活性を保持している限り、ヒト蛋白質のアミノ酸配列に対して欠失、置換、挿入、及び/または付加が生じたアミノ酸配列からなる変異蛋白質もWnt2及びWnt5aと同様に使用しうる。アミノ酸の変異部位および個数は、変異蛋白質がヒトWnt2及びWnt5aと同等の活性を保持している限り特に制限はないが、変異個数は通常数十アミノ酸以内(例えば、60アミノ酸以内)、好ましくは10アミノ酸以内、より好ましくは1〜数個(例えば、1〜6個)、さらに好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個である。本発明で用いるWnt2及びWnt5aは、該蛋白質を発現している細胞や組織から調製することができ、またペプチド合成機(例えば、ペプチドシンセサイザー433A型、アプライドバイオシステムズ ジャパン株式会社製)を使用した化学合成法でも、また原核生物あるいは真核生物から選択される適当な宿主細胞を用いた組換え方法によっても調製することができる。しかしながら、その純度の面から遺伝子工学的な手法による生産ならびに組換え型蛋白質が好ましい。本発明で用いるWnt2及びWnt5aは、それ単独の形態でも別種の蛋白質との融合蛋白質の形態でも使用することができ、また、蛋白質を更に種々の形態へと変換させることも可能である。例えば、蛋白質に対する種々の化学修飾、ポリエチレングリコール等の高分子との結合、不溶性担体への結合、糖鎖修飾、脂質修飾等、当業者に知られている多種の手法による加工が考えられる。
本発明において用いる造血幹細胞は、例えば、ヒト及びマウス等の哺乳動物の胎児肝臓、骨髄、末梢血、臍帯血等から採取できるが、造血幹細胞が含まれる限りその採取源を問うものではない。またその調製、単離は、目的とする造血幹細胞のマーカーを指標として通常の方法により行なうことができる。例えば、マウスでは、細胞分化抗原(Linege)が陰性であり、かつc−kitならびにSca−1陽性の細胞の内、CD34抗原が陰性から弱陽性の性質を示す細胞に造血幹細胞の性質が見いだされている(Osawa,M.,Science,273:242,1996)。ヒト造血幹細胞のマーカーとしてはCD34抗原が知られており、特により未分化なマーカーとしてCD34抗原陽性、CD38抗原陰性、細胞分化抗原陰性があることが知られている(Bhatia et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94,5320−5325,1997)。また、場合によっては、造血幹細胞を単離することなく、ヒト又はマウス骨髄由来等の有核細胞あるいは幹細胞分画をそのまま培養に供することもできる。例えば、マウス骨髄由来等の幹細胞分画としてSP(side population)細胞分画(造血幹細胞を約半分弱含み、他の組織幹細胞も含むと考えられている)を用いることもできる。
本発明によれば、上記のようにして採取した造血幹細胞または造血幹細胞分画を、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上の蛋白質の存在下で培養する。細胞のin vitro培養は、公知の細胞培養技術を用いて行なうことができる(例えば、新生化学実験講座18 細胞培養技術(日本生化学会編、東京化学同人発行、1989)等参照)。造血幹細胞の培養は、培養用のシャーレ、フラスコ、あるいは培地組成、pHなどを機械的に制御できるバイオリアクターにおいて適当な培地を用いて行なうことができる。培養に用いる適当な培地は、造血幹細胞の生存・増殖が阻害されない限り特に制限されないが、例えば、SF−02培地(三光純薬)、Opti−MEM培地(GIBCO BRL)、MEM培地(GIBCO BRL)、DMEM培地(GIBCO BRL)、IMDM培地(GIBCO BRL)、PRMI1640培地(GIBCO BRL)、RD培地(RPMI1640:DMEM=1:1〔V/V〕混合培地)等が挙げられる。培養系には、通常、添加される成分、例えば、インスリン、トランスフェリン、ラクトフェリン、2−メルカプトエタノール、エタノールアミン、亜セレン酸ナトリウム、およびHEPES、血清(例えば、ウシ胎児血清、ヒト血清、ウマ血清)、モノチオグリセロール、ピルビン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、各種ビタミン、各種アミノ酸、各種増殖因子が必要に応じて添加される。
本発明の培養法においては、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上の蛋白質に加え、造血因子又は細胞刺激因子、あるいはその両方を培養系に添加することによって、より有効に造血幹細胞の分化抑制および/または自己複製を行なうことができる。ここで、「造血因子又は細胞刺激因子」とは、造血細胞に自己複製、増殖、分化、生存、遊走などの刺激を与える因子を広義に意味する。ここで用いられる造血因子又は細胞刺激因子は、造血幹細胞の生存・増殖を阻害しない限り特に限定されない。好ましく用いられる造血因子又は細胞刺激因子としては、例えば、SCF(幹細胞成長因子;stem cell factor)、TPO(トロンボポエチン)、IL−3(インターロイキン−3)、IL−11(インターロイキン−11)、GM−CSF(顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子;granulocyte/macrophage colony−stimulating factor)、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子;granulocyte colony−stimulating factor)、TGF−β(トランスフォーミング成長因子−β)、MIP−1α、Flt3/Flk2−ligand、EPO(エリスロポエチン)、Notchリガンド(Jaggedファミリー、Deltaファミリー)、Tie2リガンド(アンジオポエチン)、BMP4、Flk2/Flk3リガンド、FL、bFGF、オンコスタチンM、IL6/sIL6R、EGFおよびLIF等が挙げられる。本発明で使用される造血因子又は細胞刺激因子は、遺伝子組換え技術、ペプチド合成法、細胞培養法等により製造されたヒト、マウス等の哺乳動物由来の蛋白質を含む。さらにここで用いられる造血因子又は細胞刺激因子は、アミノ酸配列の1部(例えば、1〜数個(例えば、1〜6個))、好ましくは1〜3個)が置換、挿入、付加及び/または欠失した変異蛋白質でも、活性を保持している限りにおいて使用しうる。または、各因子を発現させたフィーダー細胞を用いてもよい。
培養系に添加される造血因子又は細胞刺激因子の量は、一般的には因子特異的であるが、因子は、造血幹細胞培養培地に、通常、約1ng/ml〜約100ng/mlの間の濃度で、好ましくは約5ng/ml〜約50ng/mlの濃度で、より好ましくは約5ng/ml〜約30ng/mlの間の濃度で添加される。
本発明の培養方法においては、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質、および各種造血因子又は細胞刺激因子から選ばれる一種以上を培養系に添加することもできるが、それらタンパク質や因子を発現させたフィーダー細胞上で造血幹細胞を共培養してもよい。ここで好ましく用いられるフィーダー細胞としては、X線処理等で増殖能を欠損させた骨髄細胞または骨髄ストローマ細胞、AGM領域由来細胞、線維芽細胞、胎児肝臓由来細胞、間葉系幹細胞、血管内皮細胞、および前脂肪細胞等を用いることができる。本発明の特に好ましい態様によれば、培養系に血清を添加しない無血清培地で培養を行なう。無血清培地で特に好ましく用いられるフィーダー細胞としては、C127細胞が挙げられる。なお、本発明で好ましく用いられる、無血清培地で生存、長期培養、および/または増殖できるC127細胞は、例えば、次のようにして得ることができる。まず、C127細胞を、1%FCS+5%KSR入りのDMEMで1ヶ月ほど掛けて生き残る細胞を選択し、更に0.1%FCS+5%KSRを含むDMEMでも生き残る細胞を増殖する。次いで完全無血清のDMEM+5%KSRで増幅する細胞を限界希釈法によってクローン化した細胞を、無血清培地で生存、長期培養、および/または増殖可能なC127細胞とする。
フィーダー細胞にWnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質や、各種造血因子又は細胞刺激因子を発現させるには、それらタンパク質や因子のアミノ酸配列をコードするDNAを含んでなる組換えベクターを作製し、該組換えベクターをフィーダー細胞に導入すればよい。
なお、培養は、例えば、33〜39℃(好ましくは37℃)の温度で、3〜6%CO2(好ましくは5%)下、5〜50日間行なう。造血幹細胞の分化抑制および/または自己複製の結果は、Herzenberg,L.A.「Weir’s Handbook of Experimental Immunology,5th edition」,Blackwell Science Inc.1997」、Spangrude,G.J.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87:7433−7437,1990;Visser,J.M.W.,「Flow cytometry in hematology」,Academic Press,p9−29,1992等を参考に細胞表面抗原を指標に確認することができる。例えば、ヒト造血幹細胞のマーカーとしては、少なくともCD34抗原陽性、好ましくはCD34抗原陽性、CD38抗原陰性、細胞分化抗原陰性であることをヒト造血幹細胞の指標として用いることができる。造血幹細胞の存在を確認する手段として放射線照射マウスを用いた移植実験系、または、in vitro(インビトロ)のコロニー形成法(Bradley,T.R.,J.Exp.Med.,44:287−299,1966)を用いることも可能である。放射線照射マウスを用いた移植実験系では、放射線照射し造血系に障害を与えたマウス(レシピエント)に、他のマウス(ドナー)から分離した骨髄細胞や造血幹細胞含有画分を移植する。移植後、レシピエント由来とドナー由来の造血系細胞の割合(キメリズム)を指標に、長期骨髄再構築能を有する造血幹細胞の存在を確認する(Osawa,M.,Science,273:242−245,1996、Bhatia et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94,5320−5325,1997)。コロニー形成法において、造血幹細胞を種々の血液細胞が出現できるように種々のサイトカインを添加した培地にて培養すると、分化方向の決定された造血前駆細胞は、小数あるいは、単一な分化系列の細胞しか含まないコロニーを形成するが、多分化能を持つ造血幹細胞は、複数の分化系列の血液細胞を含むコロニーを形成することができる。特に、赤血球を含む混合コロニー(CFU−Emix)を形成することが、ヒトでは造血幹細胞の指標とされている。
本発明は、上述の本発明の培養方法を用いることを特徴とする、造血幹細胞の製造方法を提供する。本発明の製造方法は、(a)造血幹細胞を、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質の存在下で培養する工程を含んでなることを特徴とする。本発明の製造方法は、更に以下のような工程を含むことができるが、これらに限定されるものではなく、本発明の培養方法や培養系に準じた工程を適宜含み得る;(b)一種以上の造血因子又は細胞刺激因子の存在下、かつ血清の非存在下で培養を行なう工程、(c)造血幹細胞をフィーダー細胞と共培養する工程、(d)フィーダー細胞にWnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質を発現させる工程。
2.上記培養方法によって得られた造血幹細胞
上記本発明の方法によって得られた造血幹細胞は、従来の骨髄移植や臍帯血移植に代わる造血幹細胞移植用に用いることができる。例えば、自己免疫疾患等の骨髄移植によってその改善の見られる疾患に対しては、自己あるいは非自己の幹細胞を増殖させるに際し、本発明による幹細胞増殖技術を利用することができる。具体的には、本発明の方法により得られた造血幹細胞は、様々な白血病に対する全身X線療法や高度化学療法を行う際に、これらの治療と組み合わせて用いることができる。また、造血幹細胞は、例えば、固形癌患者の化学療法、放射線療法等の骨髄抑制が副作用として生じる治療を実施する際に、施術前に骨髄を採取しておき、造血幹細胞を試験管内で増幅し、施術後に患者に戻すことで、副作用による造血系の障害から早期に回復させることができ、より強力な化学療法を行えるようになる。
また、本発明を利用して、患者あるいは他人の造血幹細胞を各種血液細胞に分化させ、それらを患者の体内に移入することにより、各種血液細胞の形成が不十分な患者を治療することができる。また、本発明の培養方法によって得られる造血幹細胞は、再生不良性貧血などの貧血を呈する骨髄低形成に起因する造血不全症を改善することができる。その他、本発明の培養方法によって得られる造血幹細胞の移植が有効な疾患としては、慢性肉芽腫症、重複免疫不全症候群、無ガンマグロブリン血症、Wiskott−Aldrich症候群、後天性免疫不全症候群(AIDS)等の免疫不全症候群、サラセミア、酵素欠損による溶血性貧血、鎌状赤血球症等の先天性貧血、Gaucher病、ムコ多糖症等のリソゾーム蓄積症、副腎白質変性症、各種の癌または腫瘍等が挙げられる。
造血幹細胞の移植は、使用する細胞以外は、従来行われている骨髄移植や臍帯血移植と同様に行なうことができる。なお、本発明の移植片は、本発明の方法によって増殖した造血幹細胞を含む細胞成分の他に、緩衝液等を含む組成物として用いることもできる。
3.細胞培養系及びこれを用いるスクリーニング方法
本発明の他の態様によれば、(a)フィーダー細胞、(b)Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質及び(c)一種以上の造血因子又は細胞刺激因子を含み、かつ血清を含まないことを特徴とする造血幹細胞培養系を提供する。このような無血清培養系においては、無血清下で少なくとも生存可能な、好ましくは長期培養、および/または増殖可能なフィーダー細胞を用いる必要がある。好適なフィーダー細胞は、無血清下で生存可能なように調製したC127細胞である。このような無血清培養系は、造血幹細胞の分化または増殖を調節する物質をスクリーニングする方法に利用することができる。すなわち、本発明の造血幹細胞の増殖または分化を調節する物質をスクリーニングする方法は、無血清下で生存可能なフィーダー細胞を用いることを特徴とし、(a)フィーダー細胞および造血幹細胞を含み、かつ血清を含まないことを特徴とする培養系に試験物質を共存させる(添加あるいはフィーダー細胞に発現させる)工程、(b)試験物質を共存させた(添加あるいはフィーダー細胞に発現させた)培養系で造血幹細胞を培養する工程、及び(c)試験物質非共存下(非添加または非発現)の場合と比較して、試験物質共存下(添加または発現)の場合における造血幹細胞の割合および/または数の変化を測定する工程を含む。本発明のスクリーニング方法において、例えば、造血幹細胞の増殖促進活性を有する物質を試験するに際しては、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質を培養系に含めておく(添加あるいはフィーダー細胞に発現させる)ことにより、幹細胞の分化を抑制した状態で試験物質の増殖促進活性をより有効に試験することが可能である。また、必要に応じて造血因子又は細胞刺激因子の一種以上を培養系に含めてもよい。増殖または分化の調節とは、増殖抑制、増殖促進、分化抑制および分化促進の何れかのことであり、特に増殖促進が好ましい。
このスクリーニングにおいて用いる試験物質としては、細胞の培養上清、精製タンパク質若しくはペプチド、合成化合物、微生物や植物に由来する天然物、造血幹細胞の増殖あるいは分化を促進する因子を産生していることが予想される支持細胞により産生される蛋白質や生体物質などが挙げられる。試験物質の活性は、培養系において試験物質の存在下及び非存在下において、処理前後の細胞に含まれる造血幹細胞の割合および/または数を算出することで測定することができる。細胞に含まれる造血幹細胞の割合および/または数はFACSによって求めることができる。造血幹細胞の分化は、分化した細胞に特異的な抗原に対する抗体により、FACSあるいは蛍光抗体法で測定することができる。たとえば、B細胞の特異抗原としてB220、顆粒球の特異抗原としてGr−1、赤芽球系細胞の特異抗原としてTER119が使用できる。また、CFU−GM、CFU−Mix、CFU−S等のコロニーアッセイにより測定することができる。このようなスクリーニングの結果、有意な造血幹細胞の自己複製・増殖、分化抑制、または分化が検出されれば、スクリーニングに用いた試験物質は、造血幹細胞の増殖または分化を調節する因子であると判定される。このような因子は、特に血液系疾患の治療薬開発において有用である。
4.造血幹細胞の分化抑制又は増殖剤
本発明の他の態様によれば、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質を含有する造血幹細胞分化抑制又は増殖剤(以下、単に、「造血幹細胞増殖剤」ともいう)が提供される。本発明の増殖剤は、好ましくは、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質に加えて、上記した造血因子又は細胞刺激因子の一種以上、例えば、SCF、TPOまたはその両方を含有する。
本発明の造血幹細胞増殖剤は、造血幹細胞を未分化なまま、体内または体外で増殖させることができるので、上記したin vitroにおける造血幹細胞の培養・増殖方法において用いることができる他、放射線治療や制ガン剤等の化学療法剤による血球減少症の改善、リンパ球減少に起因する感染症の予防、骨髄形成不全症や骨髄抑制などの骨髄疾患の治療、白血病、高度腎障害・骨髄抑制などの骨髄疾患の治療、遺伝的疾患に由来する低血球症の治療、遺伝子治療時における組換え幹細胞の体外培養等に用いることができる。
本発明の造血幹細胞増殖剤は、経口、非経口、骨髄等の局所その他の適当な経路で投与することができる。造血幹細胞増殖剤の望ましい投与量は、その有効成分(上記Wntタンパク質、及び必要に応じて造血因子又は細胞刺激因子それぞれを「有効成分」という)として、1日あたり1〜1000μG/kg体重程度で、好ましくは5〜500μg/kg体重程度であるが、患者の体重および症状や個々の投与経路によって当然変動する。場合によっては前記範囲の下限より低い投与量が適当なこともあるし、前記範囲より投与量を多くしてもそれを1日に何回にも分けて少量ずつ投与すれば有害な副作用を生じない場合もある。
本発明で用いられる上記有効成分は、前記3つの投与経路のいずれをとっても単独または薬学的あるいは薬剤学的に許容される担体または希釈剤と共に投与することができ、またその投与は1回または数回に分けて行うことができる。より具体的に述べると、本発明の増殖剤は様々な種類の投与形態で投与することができ、たとえば各種の薬剤学的に許容される不活性担体と併用して錠剤、カプセル、薬用ドロップ、トローチ、硬質キャンディ、粉末剤、噴霧剤、クリーム、膏薬、坐薬、ゼリー、ジェル、ペースト、ローション、軟膏、水性懸濁液、注射液、エリキシル、シロップ等の形態とすることができる。これらの担体には、固体希釈剤または賦形剤、無菌水性媒体、各種の非毒性有機溶媒等が含まれる。
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
1.マウス及びヒト成体骨髄ストローマ細胞で発現しているWnt遺伝子の同定
1.1 骨髄幹細胞の調製
非働化したウシ胎児血清(FCS)を2%含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を、26ゲージの針で骨髄腔に一気に注ぐことにより、マウス骨髄細胞を8週令のC57BL/6マウス(Charles River)から調製した。成人ヒト骨髄細胞を、インフォームドコンセントと、施設内倫理委員会の承認に基づいて正常ドナーの後腸骨稜(posterior iliac crest)から得た。細胞懸濁液をLymphoprep(Nycomed)上に置き、800gで20分間遠心した。単核細胞を回収し、2%のFCSを含むPBSで洗浄した。そして、接着細胞を10%のFCSを含むIMD培養液(Gibco−BRL)で10日間培養した。全RNAはAGPC法で単離した後、degenerative RT−PCRで発現しているWntの種類を同定した。
1.2 Degenerative RT−PCR解析
逆転写ポリメーラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を以下のように行った。第一鎖(first strand)cDNAをSuperscript II(Gibco−BRL)を用いて合成した。PCRの増幅はLA Tag polymerase(Takara)とデジェネレートプライマー

を用いて、94°Cで1分を1サイクル、94°Cで1分、54°Cで30秒;72°Cで45秒を60サイクル、そして72°Cで5分を1サイクル行った。精製したPCR産物を、pBluescriptにサブクローニングし、そして核酸配列をABI 3700ジェネティック・アナライザー(Applied Biosystems)を用いて決定した。この方法によって、マウスではWnt2、Wnt5a、ヒトではWnt2、Wnt5a、Wnt5bが発現していることを見いだした。両者ともWnt2が最も多く発現されていた。
2.Wntを用いた幹細胞分画の増殖アッセイ
2.1 造血幹細胞の調製
有核細胞を7−8週令のlacZトランスジェニックマウス(B6;S129−Gt(ROSA26)Sorの骨髄細胞から、Lymphoprepを用いた遠心によって調製した。2%FCSを含むPBS中に懸濁した細胞(1X10細胞/ml)をHoechst33342(1.5μg/ml)と、Rhodamine123(0.1μg/ml)で染色した。造血幹細胞に富んだ分画である、side population(SP)細胞をFACS Vantage SEセルソーター(商標:Beckton Dickinson Bioscience)で単離した。一匹のマウスから約4000個のSP細胞を単離した。lacZトランスジェニックマウスから、マウス骨髄造血幹細胞であるLin陰性c−Kit陽性Sca1陽性CD34陰性またはlowの細胞分画をFACSを用いて単離した。一匹のマウスから約10000個の細胞を単離した。
2.2 in vitroでの幹細胞の自己複製アッセイ
マウス又はヒトの全長Wnt2及びWnt5aのcDNAをKOD+DNA polymeraseを用いたRT−PCRで単離し、Wnt cDNAの完全な核酸配列がデータベースに登録されている配列と同一であることを確認した。pcDNA3.1発現ベクターにマウスまたはヒトの各WntのcDNAを組換え、C127細胞にLipofect Amine 2000(invitrogen)を用いてトランスフェクトし、G418(1mg/ml)に耐性の安定発現細胞を無血清培地(DMEM+5%のKSR(Knockout serum replacement)(Gibco))中に維持した。Wntの発現はRT−PCRでは確認済みであり、一部抗体が利用できるWnt5aに関してはウエスタン解析で発現を確認した。
組み換えWntを発現するC127トランスフェクタントまたは組み換えWnt非発現C127細胞を24穴プレートに播種した後、単離したlacZトランスジェニックマウス由来骨髄造血幹細胞を5000個/ウエルで植え込み、共培養した。培地は無血清培地またはTPOおよびSCF添加無血清培地を用いた。2日おきに培地を交換し6日目に細胞をトリプシン消化して回収し、β−Gal陽性細胞即ちlacZトランスジェニックマウス由来の細胞をfluorescein di−β−galactopyranosideを基質に用いて蛍光発色によって分画し、その中のLin陰性c−Kit陽性Sca1陽性細胞(造血幹細胞)の割合を算出した。
組み換えWnt発現C127トランスフェクタントまたは組み換えWnt非発現C127細胞と、マウス骨髄造血幹細胞の共培養において、TPOおよびSCFを添加していない無血清培地で培養した場合、3日後にはlacZトランスジェニックマウス由来細胞は生存しておらず、造血幹細胞は維持も増幅もできなかった。組み換えWnt非発現C127細胞との共培養において、TPOおよびSCF添加無血清培地で培養した場合、回収したβ−Gal陽性細胞のうち88%はLin陽性細胞であり分化した細胞であった。12%はLin陰性c−Kit陽性Sca1陽性細胞であり幹細胞であると考えられた。これは従来の幹細胞のサイトカインを用いた増幅結果とほぼ一致したものである。一方、組み換えWnt発現C127トランスフェクタントとの共培養において、TPOおよびSCF添加無血清培地で培養した場合、回収したβ−Gal陽性細胞のうち23%〜27%(マウスWnt2において27%、マウスWnt5aにおいて25%、ヒトWnt5aにおいて23%)は造血幹細胞であった。組み換えWnt発現C127トランスフェクタントとの共培養の場合、共培養処理後生存しているlacZトランスジェニックマウス由来細胞における造血幹細胞の割合は、組み換えWnt非発現C127細胞との共培養の場合と比べて、マウスWnt2において2.3倍、マウスWnt5aにおいて2.1倍、ヒトWnt5aにおいて1.9倍を示した。即ち、Wnt2およびWnt5aは、TPOやSCFのような造血幹細胞の分化を促す因子の存在下において、造血幹細胞の分化を抑制し、未分化な状態を維持して生存させるのに有効であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
本発明の造血幹細胞の分化抑制又は増殖方法、造血幹細胞の製造方法、並びに、本発明の造血幹細胞の分化抑制又は増殖剤を用いることにより、造血幹細胞を未分化なまま、体内または体外で増殖させることができるので、化学療法剤による血球減少症の改善、リンパ球減少に起因する感染症の予防、骨髄疾患の治療、白血病・高度腎障害・骨髄抑制等の骨髄疾患の治療などに用いることができる。
また、本発明のスクリーニング法によれば、造血幹細胞の増殖または分化を調節する物質をスクリーニングすることができるので、造血幹細胞レベルの疾患の解明や新たな治療法・治療剤の開発に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血幹細胞を、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質の存在下で培養することを特徴とする造血幹細胞の分化抑制又は増殖方法。
【請求項2】
一種以上の造血因子又は細胞刺激因子の存在下、かつ血清の非存在下で培養を行なう前記請求項1に記載の方法。
【請求項3】
SCF及びTPOから選ばれる造血因子の一種以上の存在下で培養を行なう前記請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質を培養系に添加し、あるいはそのタンパク質を発現させたフィーダー細胞上で培養する前記請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれかの方法によって得られる造血幹細胞。
【請求項6】
造血幹細胞を、Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質の存在下で培養する工程を含んでなる、造血幹細胞の製造方法。
【請求項7】
(a)フィーダー細胞、(b)Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質及び(c)一種以上の造血因子又は細胞刺激因子を含み、かつ血清を含まないことを特徴とする造血幹細胞培養系。
【請求項8】
フィーダー細胞として、無血清下で生存可能なC127細胞を用いることを特徴とする前記請求項7に記載の培養系。
【請求項9】
無血清下で生存可能なフィーダー細胞を用いることを特徴とし、(a)フィーダー細胞および造血幹細胞を含み、かつ血清を含まないことを特徴とする培養系に試験物質を共存させる工程、(b)試験物質が共存した培養系で造血幹細胞を培養する工程、及び(c)試験物質非共存下の場合と比較して、試験物質共存下の場合における造血幹細胞の割合および/または数の変化を測定する工程を含む、造血幹細胞の増殖または分化を調節する物質をスクリーニングする方法。
【請求項10】
Wnt2及びWnt5aから選ばれる一種以上のタンパク質を含有する造血幹細胞分化抑制又は増殖剤。
【請求項11】
さらに、造血因子又は細胞刺激因子を含む前記請求項10に記載の造血幹細胞分化抑制又は増殖剤。
【請求項12】
前記造血因子として、SCF及びTPOから選ばれる一種以上の造血因子を含む前記請求項11に記載の造血幹細胞分化抑制又は増殖剤。

【国際公開番号】WO2005/056778
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516252(P2005−516252)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018860
【国際出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】