説明

連結具

【課題】ナス環本体などの連結具本体とベルト取付部材との間で摩擦音を発生せず、かつ組立てを容易にかつ確実に行うことのできる連結具を提供する。
【解決手段】連結具1,5 の本体2,51の基部22−1,52 から起立する首部24及びその先端に軸線中心から外方向に膨出する縮径可能な係着頭部25を有している。ベルト取付部材3 は、本体の首部を中心に回転可能に連結される。ベルト取付部材 の一部に、係着頭部の挿入により係合可能な貫通孔36が形成されている。大径孔部36−2には、首部が挿入可能なリング状部材4 を有し、このリング状部材 は大径孔部に収容される円筒状壁部41と、同壁部の一端から中心に向けて延在するリング状の係合部43とを有している。この係合部の内径は係着頭部の縮径時の外径に等しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショルダーバッグ、リュックサックなどの袋物に取り付けられる止具に対し、容易に引掛けて連結することができる合成樹脂製のナス環や、1本のベルトの両端を又は2本のベルトを連結、分離する合成樹脂製のバックルなどの連結具に関し、特にベルトの取付部材と連結具の本体とが相対的に回転自在な連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フック状のナス環本体とそのナス環本体にベルト取付部材が回転可能に連結された連結具の一つであるナス環は、例えば実公昭62−27701号(特許文献1)、米国特許第6,286,190号明細書(特許文献2)などに開示されているように実用化されている。
【0003】
上記特許文献1のナス環は、ナス環本体とベルト取付部材とを備え、ナス環本体は、首部及びその先端部に軸線の中心から外方向に膨出する縮径可能な係着頭部を有し、ベルト取付部材は前記首部及び前記係着頭部を挿入可能な貫通孔を有している。前記貫通孔は、前記係着頭部の直径よりも小径の小径孔部と、段差部を介して前記小径孔部に連結される前記係着頭部の直径よりも大径の大径孔部とを備えている。ナス環本体の係着頭部を貫通孔の小径孔部側から挿通し、前記段差部に係着させることで、ナス環本体とベルト取付部材とを容易に組み立てられるようにしている。
【0004】
上記特許文献2のナス環は、ナス環本体とベルト取付部材とを備え、ナス環本体は、首部及びその先端部に軸線の中心から外方向に膨出する係着頭部を有し、前記係着頭部はベルト取付部材の貫通孔を通って、貫通孔の外面に露呈し、係着頭部とベルト取付部材との間にゴムなどの弾性材料からなるリング状の開口部材を介在することで、組立てられる。この開口部材によって、ナス環本体が引っ張られたときの衝撃を吸収するもので、過度の衝撃を受けたときにナス環本体がベルト取付部材から外れるというものである。
【特許文献1】実公昭62−27701号公報
【特許文献2】米国特許第6,286,190号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のナス環は、ナス環本体とベルト取付部材とが別々に製造されるので、組立てが確実で容易にできることが求められる。また、回転時に、ナス環本体とベルト取付部材との摩擦の音が発生しないことも求められる。
【0006】
上記特許文献1に開示されたナス環は、ナス環本体の係着頭部をベルト取付部材の小径孔部と大径孔部とを備えた貫通孔に挿入するだけで容易に組立てが行えるものである。係着頭部は、径方向に拡縮可能な構造を有し、縮径状態で前記小径孔部から挿入し、大径部にて拡径して段差部に係着して、大係部に収容される。したがって、係着頭部は貫通孔の内部に収容されるため、外部に露出せず、見た目もよいものとなる。しかし、強度や磨耗などを考慮してナス環本体およびベルト取付部材に適した材料を選択する必要があるが、採用される材料によっては回転時に耳障りな摩擦音が発生することが多い。
【0007】
上記特許文献2に開示されたナス環は、ナス環本体、ベルト取付部材、ナス環本体とベルト取付部材との間に介在されるリング状開口部材の3つの構成部材からなり、ナス環本体及びベルト取付部材を金属製とし、リング状開口部材をゴムなどの弾性ある合成樹脂製としている。しかし、上記特許文献1のように大径孔部が形成されるものではないので、三者の組み付けが煩雑な上、係着頭部が外部に露呈して、見た目に優れたものとはならない。また、リング状開口部材は衝撃を吸収することが主目的で配されているが、特に金属製のナス環本体とベルト取付部材との間で回転させるとき、金属とゴムなどの弾性材料との間に発生する耳障りな摩擦音をなくすことは、格別の加工をしないかぎり難しい。
【0008】
本発明の具体的な目的は、組立てが容易で、且つ係着頭部が外面に露呈せず、連結具本体とベルト取付部材との間の回転によっても摩擦音が発生が防止され、外観的にも美しい連結具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、本発明の基本的な構成である、首部及び同首部の先端に軸線中心から外方向に膨出する縮径可能な係着頭部を有する連結具本体と、前記首部を中心に回転可能に連結されるベルト取付部材とを備え、前記ベルト取付部材の一部に、前記係着頭部の直径よりも小径の小径孔部と、前記小径孔部に段部を介して連結され、前記係着頭部の直径よりも大径の大径孔部とを備えた貫通孔を有する連結具であって、前記貫通孔の前記大径孔部に収容され、前記首部が挿通可能なリング状部材を有し、同リング状部材は、前記大径孔部の内径に等しい外径をもつ円筒状壁部と、同円筒状壁部の下端に中心に向けて延在し前記係着頭部が係着する係合部とを備えていることを特徴とする連結具によって効果的に達成される。
【0010】
ここで、本発明に係る連結具のリング状部材にあっては、通常、前記係合部の内径を前記ベルト取付部材の前記小径孔部の内径に略等しく設定することが望ましく、また前記リング状部材に、その中心から前記壁部の内周面に向けて延びる複数のリブを形成することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る連結具の前記リング状部材の高さは、前記大径孔部の高さとほぼ等しく、前記係着頭部の高さは、前記壁部の高さ以下とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る連結具は、連結具本体、ベルト取付部材及びリング状部材の3つの部材が独立しており、ベルト取付部材に形成された前記貫通孔の前記大径孔部に段差を介して前記リング状部材が収容される。このリング状部材は前記連結具本体の係着頭部が挿入可能に開口しており、その構造は前記貫通孔の大径孔部の内周面に沿って立設する円筒状壁部と、同円筒状壁部の一端に中心に向けて延在し前記係着頭部が係着する係合部とを備えている。
【0013】
いま、連結具本体の係着頭部を前記貫通孔の小係孔部に縮径状態で挿入し、大径部に収容されているリング状部材の開口を通して円筒状壁部まで挿通させると、そこで係着頭部は弾性的に拡径し、前記リング状部材の内径側に延在する係合部に係着する。このときの組立手順は、先に大径孔部にリング状部材を嵌め込んだあとに係着頭部を段差部を介してリング状部材の開口に挿入してもよく、或いは係着頭部を大径孔部に挿通させたのち、反対側からリング状部材を大径孔部に押し込むことによっても組み立てることが可能である。
【0014】
いずれにしても、連結具を組み立てたのちには、係着頭部はリング状部材の円筒状壁部内の収容空間に収容されている。その結果、係着頭部は円筒状壁部から外面に露出することなく、すなわち前記ベルト取付部材の貫通孔からも外部に露呈することがなく、見た目に優れたものとなる。また、連結具本体とベルト取付部材の大径孔部との間にリング状部材を介在させることで、機能に応じてそれぞれの材料を適宜選択することができるため、幅広い要求に応えることができる。さらに、リング状部材の前記円筒状壁部の外径を前記ベルト取付部の大径孔部の内径にほぼ一致させているため、例えばリング状部材の係合部を下にして大径孔部に収容する際に、大径孔部の内壁面がガイド面となって、安定した姿勢で挿入することができ、大径孔部に収容後も大係孔部と小係孔部との間の段差部に前記リング状部材の係合部が載置され、連結具本体の係着頭部が安定した状態をその姿勢を維持できるので、組立てを確実に行なうことができる。
【0015】
本発明にあって、前記リング状部材の前記係合部の内径を前記ベルト取付部材の前記小径孔部の内径と等しくしておくと、連結具本体の係着頭部がリング状部材の開口に挿入しやすくなる。更に、前記リング状部材は、その中心から前記壁部の内周面に向けて延びる複数のリブを備えている場合は、リング状部材の中心方向への補強と形状保持がなされ、収容される貫通孔の大径孔部の変形を防止する効果もある。
【0016】
また、リング状部材の高さは、大径孔部の高さとほぼ等しく、係着頭部の高さは、壁部の高さ以下であることで、大径孔部にリング状部材を収容し、その面を平面板上に載置するだけで、リング状部材が大径孔部にしっかりと収容でき、その状態で組立てを行うと、係着頭部の高さが壁部の高さ以下であるので、係着頭部が外面に出ることがなく、容易に組立てが行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を代表的な実施例に基づき図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲において多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係る連結具の代表例であるナス環の各部品を分解した斜視図である。図2は、同ナス環のリング状部材の一部を切断して示す拡大斜視図であり、図3は、同ナス環の構成部材の一部を破断して示す分解正面図、図4は、組立て状態にある同ナス環の一部を破断して示す要部正面図である。図5は、図4のV-V 線に沿った断面図である。なお以下の説明では、図1に示す、ナス環本体2における係着頭部25からフック部22へ向かう方向を下方向とし、ベルト取付部材3の長手方向に沿った左右の方向を左右方向とする。
【0019】
本発明のナス環1は、連結具本体としてのナス環本体2と、ベルト等の端部に装着されるベルト取付部材3と、リング状部材4とを備え、前記ベルト取付部材3は前記リング状部材4を介して前記ナス環本体2に対して相対的に回転可能に連結される。
【0020】
ナス環本体2とベルト取付部材3とには、例えばポリアセタール(POM)や、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの合成樹脂が使用され、リング状部材4には、ポリアミド(PA)や、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの合成樹脂、或いは、亜鉛やアルミなどの金属を使用することができる。ナス環本体2及びベルト取付部材3には、荷重などによる変形を起こしにくい材料を選択し、リング状部材4にはナス環本体2及びベルト取付部材3の材料に対して潤滑性のよい材料を選択して使用することが好ましい。
【0021】
かかる材料の組み合わせにより、ナス環本体2とベルト取付部材3とに相対的な引っ張りや回転がなされても、強固で且つ摩擦音の発生が少ないナス環を製作することができる。摩擦音は、相手材料と接触する部分で互いの材料が凝着し、その状態で摺動したときに、凝着部分がすべり、磨耗することにより発生することが要因として考えられる。特にポリアセタール同士は、凝着を生じやすいことが知られている。従って、回転摩擦部の摩擦材同士をポリアセタールで構成することは避けるべきである。ただし、本発明では上記材料以外にも、多様な組み合わせが採用できる。
【0022】
図1及び図3に示すように、ナス環本体2は、フック21の平円板状の基端部22−1の中心から上方に突出する首部24と、同首部先端の軸線中心から放射状に外側に膨出する縮径可能な複数の係着頭部25とを有している。ここで前記軸線中心とは、円柱状の前記首部24の中心を通り、その首部24の突出方向に延びる線を意味する。上記ベルト取付部材3が回転する回転中心でもある。係着頭部25及び首部24は、割溝26によって分割された複数の分割片27から構成され、各分割片27はフック21の上記基端部22−1の中央から起立している。本実施例にあって、前記割溝26は平面視で十字状を呈し、4個の分割片27が形成されている。
【0023】
フック21は、基端部22−1の下方に略J字状に延びるフック部22を備え、フック部22の開口は抜止片23により弾性的に閉じられる。抜止片23は、前記基端部22−1からフック部22の先端22−2に向けて一体に形成され、その先端を前記フック部22の先端22−2の内面に係止されている。係着頭部25は、首部24の上方向に高さh1を有している。
【0024】
ベルト取付部材3は矩形枠状を呈しており、水平方向に延びる主体部31と、主体部31の両端から垂直下方に平行に延び、自由端部に互いに対向して形成された軸孔32−1,33−1をもつ一対の脚部32,33と、左右端部に軸部34−1を有し、同軸端部32,33が前記脚部32,33の軸孔32−1,33−1に回転自在に嵌入され、主体部31に平行な細長の支持杆34とを備えている。勿論、主体部31、脚部32,33及び支持杆34の全てを一体に成形した矩形状のベルト取付部材とすることもできる。また、図ではベルト取付部材3を長方形状に形成しているが、正方形や円形、半円形に形成することもできる。
【0025】
支持杆34は、杆部本体35の両端部からそれぞれ外方に延在する軸部34−1,34−1を有するとともに、前記杆部本体35の長手方向中央部には前後方向に膨出する円板状膨出部35−1を有している。その円板状膨出部35−1には、上下に貫通する貫通孔36が形成されている。貫通孔36は、係着頭部25の拡径時の外径よりも小径で首部24が回転自在に挿通される小径孔部36−1と、後述するリング状部材4が収容され、係着頭部25の拡径時の外径よりも大きい内径を有し、リング状部材4の外径とほぼ等しい大径孔部36−2とを備えている。ここで、ほぼ等しいとは、大径孔部36−2の孔径はリング状部材4ががたつきなく収容できればよいので、リング状部材4の外径に等しいことを意味することは当然として、外径より僅かに大きい場合をも含んでいる。
【0026】
小径孔部36−1と大径孔部36−2とは、段差部36−3を介して連結して形成されている。また、図3に示すように、大径孔部36−2の高さH3は、後述するリング状部材4の高さH1とほぼ等しい。これによって、大径孔部36−2に嵌着されたリング状部材4が外部に目立つように露出することがない。高さH1と高さH3がほぼ等しいとしたのは、リング状部材4が外部に突出して見えないような寸法であればよいことを意味する。高さH3は、段差部36−3の段差面から支持杆34の下面までの高さのことである。
【0027】
リング状部材4は、外周面が平滑な円筒状を呈しており、同リング状部材4は前記大径孔部36−2の内径に等しい外径をもつ円筒状壁部41と、同円筒状壁部41の下端に中心に向けて延在し前記係着頭部25が係着するリング状の係合部43とを備えている。前記円筒状壁部41の内径は、前記係着頭部25の拡径時に係着頭部25を収容可能な大きさをもつ。リング状係合部43の内径は、前記係着頭部25の拡径時の外径よりも小さく、前記首部24が遊挿される内径を有している。本実施例では、更にリング状部材4の中心から円筒状壁部41の内周面に向けて放射状に延びる複数のリブ42が形成されており、同リブ42によってリング状部材4の内部空間を複数の空間に区分けしている。
【0028】
図示例にあっては、それぞれのリブ42は約90度の角度で中心で交わり、平面視で十字状を呈している。このリブ42で区分けされる空間は、上記分割片27と同数で、それらが挿通可能な空間であるとともに、リブ42の幅は割溝26の幅より小さく、割溝26内に入りこむ。リング状部材4は高さH1を有する。高さH1はリング状部材4の下面から上面までの高さであり、高さH2は係合部43の上面からリング状部材4の上面までの高さを示す。
【0029】
図4に示すように、リング状部材4が、ベルト取付部材3の大径孔部36−2に収容される。リング状部材4の係合部43の内径は、ベルト取付部材3の小径孔部36−1の内径とほぼ等しい長さに設定され、前記係合部43と前記小径孔部36−1とを合わせた高さは、首部24の長さに等しいか、または首部24の長さより僅かに低く設定されている。前記係合部43及び前記小径孔部36−1の内径は、係着頭部25の弾性変形による縮径状態にあるときに挿通可能な外径にほぼ等しいか、僅かに大きな外径であり、係着頭部25が縮径状態でスムーズに挿入できる内径に設計されている。円筒状壁部41の内径は、前記係着頭部25の常態、すなわち拡径状態にあるときの外径に等しく、クリヤランスが残る程度の大きさに設定されていればよい。図3に示すように、係着頭部25の高さh1は、円筒状壁部41の高さH2以下に設定され、正面視で係着頭部25の頂部が見えず、外部から容易に触ることができないようにされる。また、組立てられた状態では、係着頭部25の高さh1は、係合部43の係合面から円筒状壁部41の上面までの高さと同じである。また、円筒状壁部41の外郭高さH2は、大径孔部45の高さと同じである。
【0030】
次に、ナス環の組立て手順を説明する。まず、リング状部材4をベルト取付部材3の大径孔部36−2に収容する。このとき、リング状部材4の外周面は、大径孔部36−2の内周面と対面する。そして、小径孔部36−1側からナス環本体2の係着頭部25を弾性変形により縮径させながら小径孔部36−1及びリング状部材4の内径部を挿通して、係着頭部25の係着面がリング状部材4の係合部43を越えると、係着頭部25が弾性復帰して拡径して係合部43に係合する。図4に示すように、この係合状態で係着頭部25の外周面と大径孔部36−2の内壁面との間にリング状部材4が介在する。このように、係着頭部25と大径孔部36−2の内壁面との間にリング状部材4が介在するため、リング状部材4の材料をナス環本体2とベルト取付部材3との材料に対して潤滑性をもつものが選択でき、摩擦音の発生を防止することができる。また、円筒状壁部41が大径孔部36−2に嵌挿されていることによって、ベルト取付部材3に形成されている貫通孔が補強される効果もある。
【0031】
また、大径孔部36−2の高さH3は、リング状部材4の高さH1とほぼ等しく、かつ係着頭部25の高さh1は、リング状部材4の係合部43の係着面から円筒状壁部41の上端までの高さH2以下に設定したことで、見た目に優れることに加え、ナス環本体2とリング状部材4を収容したベルト取付部材3とを組立てるときに、特別な治具を使用することなく簡単に組立てられるものである。つまり、大径孔部36−2にリング状部材4を収容し、その係合部43の下面を小径孔部36−1と大径孔部36−2との段差部36−3に載置するだけで、リング状部材4が大径孔部36−2に確実にかつしっかりと収容でき、係着頭部25を小径孔部36−1側から挿入しても、係着頭部25の先端が係合部43の内径面と干渉することなく簡単に組立てを行うことができる。
【0032】
次に、リング状部材4のリブ42について具体的に説明する。図5は図4のV-V 線に沿った矢視断面を示している。ナス環本体2のフック部22とベルト取付部材3とが離間する方向に引張り荷重が加わると、支持杆34の中央部分が下方に湾曲し、円状断面の貫通孔36が、支持杆34の長手方向の径が狭まった楕円形状に変形しようとする。しかし、リング状部材4の内周間に延在するリブ42によって、円筒状壁部41の変形を阻止し、結果として貫通孔36の変形が防止される。また、リブ42は円筒状壁部41と一体に形成されているので、貫通孔36の変形しようとする力をリブ42及び円筒状壁部41で同時に受けることができる。
【0033】
例えば、図5に示す状態から45度回転した状態では、リブ42は変形する方向である支持杆34の長手方向と平行ではないが、貫通孔36の変形を先ず円筒状壁部41が受け、その力を円筒状壁部41の空洞内に形成されたリブ42で受けるため、貫通孔36の変形が防止される。こうして貫通孔36の変形が防止されることにより係着頭部25の係合が維持され、ナス環本体2とベルト取付部材3とが外れにくくなり、係着強度の強いものとなる。ここでの係着強度が強いとは、ナス環本体2とベルト取付部材3との係合力を確保する強さをいい、係合が外れにくいことを意味する。
【実施例2】
【0034】
次に、本発明の実施例2に係る連結具としてのバックル5について説明する。なお、以下の実施例2の説明において、上述の実施例1と同様の構成を有する部材については、同じ符号と名称を用いている。そのため、それらの部材の詳細な説明を省略することにする。ここで、図6は実施例2に係るバックル5を示した斜視図である。
【0035】
本実施例2に係るバックル5は、雄部材51と、雄部材51を係止する雌部材54を備えたバックル本体50と、バックル本体50に回転可能に支持されるベルト取付部材3とを備えている。雌部材54は、首部24及びその先端に軸線中心から外方向に膨出する縮径可能な係着頭部25を有し、前記係着頭部25とは反対側の雌部材本体55には、前記雄部材51が挿入係止される。前記係着頭部25及び前記首部24は、割溝26によって分割される3個の分割片27から構成される。雄部材51はベルトの取付け部である基部52から略平行に突出する2本の係合脚部53を備え、前記係合脚部53の係止部53−1が雌部材54に係止され、同係止部53−1は雌部材54の両側面の係着開口55−1から外面に露出する。
【0036】
前記雌部材本体55は、正面視で中央部の左右側面が内側に湾曲して凹んだ鼓状の偏平箱体からなり、その左右の凹み部側面に上記係着開口55−1が形成され、上記係着頭部25の反対側端面には矩形状に開口する脚部挿脱開口55−2が形成されている。これらの係着開口55−1及び脚部挿脱開口55−2は、雌部材本体55の内部空洞と連通している。一方の雄部材51は、一端に図示せぬベルト端部を固着するベルト通しを有する基部52と、同基部52から位置方向に略平行に延出する左右係合脚部53とを備えている。
【0037】
この左右係合脚部53を上記雌部材本体55の前記脚部挿脱開口55−2から内部に挿入すると、その係止部53−1が雌部材本体55の内壁面により接近方向に押されて、左右脚部が弾性的に変形する。更に挿入を続けると、前記左右係合脚部53の係止部53−1が雌部材54の左右両側面の係着開口55−1に達し、そこで左右係合脚部53は押圧力から開放されて弾性復帰し、左右の前記係着開口55−1と係合する。以上の雄部材51及び雌部材本体55は、一般的な構造であるため、これ以上の詳しい説明は省略する。なお、この雄部材51及び雌部材本体55の形状及び構造は、図示例に限定されるものではなく、従来公知の構造は当然として、本発明に特有な上記構成以外の部分で、将来にわたり開発されるバックルの形状及び構造についても適用が可能である。
【0038】
本実施例2と上述の実施例1とは、前者がバックルであるのに対して後者がナス環である点で大きく異なるが、その他の構造上の相違点は、係着頭部25及び首部24が3個の分割片27で形成されていることと、リング状部材4のリブ42が、その中心から内周面に向けて放射状に延びる3本のリブからなる以外は、実質的に変わるところはない。したがって、壁部41の高さH2、リング状部材4の高さH1,第2大径孔部36−2の高さH3、係着頭部25の高さh1の関係は実施例1と同じである。
【0039】
この実施例2においても、バックル5の両側に取り付けたベルトが引っ張られたとき、貫通孔36がバックルの幅方向に狭まるようになるのを、壁部41とその内周に設けたリブ42とで耐える構造となっています。どの回転位置でも同様の効果を得るために、リブ42は約120度の等角度で配置されることが好ましい。また本実施例では、雌部材54にだけが係着頭部25を有しているが、雌部材54に代えて雄部材51に係着頭部25を形成してもよく、或いは雄部材51及び雌部材54の双方に係着頭部25を形成するようにしてもよい。
【0040】
上記リング状部材4に設けるリブ42の円筒状壁部41との連結部分は、円筒状壁部41をその中心を通る直線にて二分割したとき、リブ42が直線状で且つその一端が少なくとも分割された二つの半円弧上に存在するように、特に円筒状壁部41の中心に関して対称な部位となるように設けることが望ましい。かかる構成により、円筒状壁部41が、その直径が狭まる方向に力を受けたとき、直線状のリブ42の両端が円筒状壁部41を支持することになるため、より強い力に耐えることができるようになる。
【0041】
また、上記実施例1及び実施例2のリング状部材4は、内周にリブ42を備える構造であったが、リング状部材4に強度を求めない場合や、その材料自体に強度がある場合には、リブを設ける必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、バッグ、袋物などに使用されるナス環やバックルなどに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1に係るナス環の分解斜視図である。
【図2】同上ナス環のリング状部材の拡大斜視図である。
【図3】同上ナス環の分解正面図である。
【図4】同上ナス環を組立てた状態を表す一部切欠して示す正面図である。
【図5】同上ナス環の図4におけるV-V 断面図である。
【図6】実施例2に係るバックルの斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ナス環(連結具)
2 ナス環本体
21 フック
22 フック部
22−1 基端部
22−2 先端
23 抜止片
24 首部
25 係着頭部
26 割溝
27 分割片

3 ベルト取付部材
31 主体部
32、33 脚部
32−1 軸孔
33−1 軸孔
34 支持杆
34−1 軸部
35 杆部本体 35−1 円板状膨出部
36 貫通孔
36−1 小径孔部
36−2 大径孔部
36−3 段差部

4 リング状部材
41 円筒壁部
42 リブ
43 係合部

5 バックル(連結具)
50 バックル本体
51 雄部材
52 基部
53 係合脚部
53−1 係止部
54 雌部材
55 雌部材本体
55−1 係着開口
55−2 挿脱開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
首部(24)及び同首部の先端に軸線中心から外方向に膨出する縮径可能な係着頭部(25)を有する連結具本体(2,50)と、前記首部(24)を中心に回転可能に連結されるベルト取付部材(3)とを備え、前記ベルト取付部材(3)の一部に、前記係着頭部(25)の直径よりも小径の小径孔部(36−1)と、前記小径孔部(36−1)に段部(36−3)を介して連結され、前記係着頭部(25)の直径よりも大径の大径孔部(36−2)とを備えた貫通孔(36)を有する連結具であって、
前記貫通孔(36)の前記大径孔部(36−2)に収容され、前記首部(24)が挿通可能なリング状部材(4)を有し、
同リング状部材(4)は、前記大径孔部(36−2)の内径に等しい外径をもつ円筒状壁部(41)と、同円筒状壁部(41)の下端に中心に向けて延在し前記係着頭部(25)が係着する係合部(43)とを備えてなる、
ことを特徴とする連結具。
【請求項2】
前記係合部(43)の内径は前記小径孔部(36−1)の内径に等しく設定されてなる請求項1記載の連結具。
【請求項3】
前記リング状部材(4)は、その中心から前記壁部(41)の内周面に向けて放射状に延びる複数のリブ(42)を備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の連結具。
【請求項4】
前記リング状部材(4)の高さ(H1)は、前記大径孔部(36−2)の高さ(H3)とほぼ等しく、前記係着頭部(25)の高さ(h1)は、前記壁部(41)の高さ(H2)以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−111463(P2008−111463A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293888(P2006−293888)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】