連結具
【課題】第1部材としてベルト連結部材、第2部材としてなす環を簡易かつ強固に連結することができるなす環等の連結具を提供する。
【解決手段】第1部材1のベルト連結部材4と、第2部材2のなす環5とを連結するのに、なす環5の連結部分に断面円形の首部21を突設し、この首部21の先端に周囲に拡張する膨大部22を設けて係止部23を形成し、ベルト連結部材4の連結部分には嵌着孔13を設けて膨大部22と係止できる被係止部15を形成し、被係止部15と係止部23とはベルト連結部材4となす環5との同一面内が長軸L,L’、直交面内が短軸S,S’となる長円形に形成し、なす環5が一番利用されるベルト連結部材4となす環5とが直交する状態が一番強固に係止できる。
【解決手段】第1部材1のベルト連結部材4と、第2部材2のなす環5とを連結するのに、なす環5の連結部分に断面円形の首部21を突設し、この首部21の先端に周囲に拡張する膨大部22を設けて係止部23を形成し、ベルト連結部材4の連結部分には嵌着孔13を設けて膨大部22と係止できる被係止部15を形成し、被係止部15と係止部23とはベルト連結部材4となす環5との同一面内が長軸L,L’、直交面内が短軸S,S’となる長円形に形成し、なす環5が一番利用されるベルト連結部材4となす環5とが直交する状態が一番強固に係止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ショルダーバッグ、リュックサックなどをはじめベルトを挿通して、バッグ、袋物等に取り付けられた止具に対し、容易に引掛けて連結することができる合成樹脂製のなす環、あるいは差込みタイプのバックルにおいて差込体の一端に配置するベルト取付部材を回動自在に取り付け、または左右のベルト自体を連結するために用いるベルト取付部材を回動自在に連結する連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、簡単に取り扱いができるなす環に仕上げるため、ショルダーバッグなどのベルトを取り付けることができる環状の枠体あるいは支持環と、フックと弾性片を並設したフック体を枠体に対し、回動自在に軸支したなす環が知られている。例えば図13に示すように、1本の基杆と左右一対の転換杆を連結し、全体が二等辺三角形を呈し、左右一対の転換杆の中央に外側が拡径に広がった孔状の嵌着孔を備え、この嵌着孔の内側の縮径部分に切り込みを入れた切口を設けて変形できるように形成した保持具と、基板の一面に軸部を設け、軸部の先端に膨大状の拡大部を形成し、基板の他面にフック部と弾性的に変形できる閉鎮舌片を並設したフック本体を形成し、前記保持具の嵌着孔に対し、フック本体の基板に突設した軸部の先端の拡大部を挿入し回動自在に形成したなす環が知られている。
【0003】
前記なす環を改良したものに、図14に示すように、左右に配された転換杆の中央に形成された拡張部分に形成される嵌着孔の内側に3個の尖端形状を具備した突出部を形成した特殊な形状の嵌着孔に対し、前例と同一形状のフック本体の基板に突設した断面円形の軸部の先端に形成した拡大部を挿入し、回動自在に形成したなす環が知られている。
【特許文献1】特許第2932138号公報
【特許文献2】米国特許第5502878号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前項で述べた図13,14に示すなす環は、双方ともに、フック本体に設置した膨大部および保持具における左右転換杆の中央部分に形成した嵌着孔がともに円形形状であり、フック本体が保持具に対しどの位置関係にあっても、保持具の嵌着孔からフック本体の膨大部が抜脱する傾向があり、強度は同じである。従ってよく使用する回動位置、例えば肩掛けバッグに使用されるなす環の場合、保持具とフック本体とが直交状態にあるとき、多少の外力が加わると、容易に嵌着孔から膨大部が抜脱して、なす環が使用できなくなるという問題点がある。
【0005】
この発明は、上述の問題点を考慮して発明されたものであり、この発明のうち請求項1記載の発明は、なす環の本体とベルト連結部材、あるいは差込みタイプのバックルにおけるバックル本体とベルト連結部材、または2個のベルト連結部材からなるベルト連結具において、第1部材と第2部材に形成する膨大部と嵌着孔を楕円形状を包含する長円形状に形成し、第1部材と第2部材とがいかなる位置関係にあっても、第1部材と第2部材とが的確に係止して連結し、両者が抜脱する憂いがない連結具を提供することが主たる目的である。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、膨大部に形成する係止部と、嵌着孔に形成する被係止部とは第1部材と第2部材とが回動する位置により接触する領域面が変化し確実に係止し、しかも膨大部を配する首部は断面円形に形成して、第1部材と第2部材とを円滑に回動させることができる連結具を提供することが目的である。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、膨大部に形成する係止部と、嵌着孔に形成する被係止部とは、係止部の方が大きく形成して、確実に膨大部を嵌着孔に圧入して係止できる連結具を提供することが目的である。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、嵌着孔は膨大部が圧入する入口側が大径の円形形状であり、嵌着孔の出口側は小径の楕円形を含む長円形形状に形成して、確実に膨大部を係止できる連結具を提供することが目的である。
【0009】
請求項5および6記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、連結具の第1部材をベルト連結部材から形成し、第2部材をなす環の本体から形成し、膨大部はなす環の本体に、また嵌着孔はベルト連結部材のベルト連結杆に形成し、なす環の本体とベルト連結部材とを連結したとき、なす環の本体とベルト連結部材とが同一面内にあるときよりも、直交面内にあるときが、係止部と被係止部との接触面が大きくなるように形成し、係止部と被係止部とが確実に係止し、最大限の強度を発揮できる連結具を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項1記載の発明は、連結具が第1部材と第2部材とから形成し、一方の部材1,2には突出する首部21を設け、この首部21の先端に頭部部分が拡大する膨大部22を形成し、他方の部材2,1には膨大部22が圧入して回動できるように形成し、膨大部入口側と膨大部出口側を備えた貫通状の嵌着孔13を設け、膨大部22の周縁には嵌着孔13と係止できる係止部23を設け、嵌着孔13の出口側周縁に膨大部22と係止できる被係止部15を設け、膨大部22と嵌着孔13の出口側の形状を楕円形を包含する長円形の形状に形成した連結具を主な構成とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、首部21の形状は断面が円形を呈し、その先端に設けた膨大部22の周縁に嵌着孔13と係止できる係止部23を設け、嵌着孔13の周縁には膨大部22と係止できる被係止部15を設け、係止部23と被係止部15とは、第1部材1と第2部材2とが回動する位置により接触する領域面が変化する形状に形成した連結具である。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、楕円形を包含する長円形を呈する嵌着孔13の被係止部15における短軸Sは、楕円形を包含する長円形を呈する膨大部22の係止部23における短軸S’よりも長く、長円形を呈する係止部23における長軸L’は、長円形を呈する被係止部15の長軸Lよりも長く形成した連結具である。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、膨大部22が圧入し係止できる嵌着孔13は、膨大部22が圧入する入口側が円形形状から形成され、出口側すなわち膨大部22の係止部23と係止できる嵌着孔13の被係止部15の形状が、楕円形を包含する長円形形状に形成し、この長円形の短軸Sが、膨大部22の入口側の円形形状の径よりも小径に形成した連結具である。
【0014】
請求項5記載の発明は請求項1記載の発明の構成に加え、連結具における第1部材1はベルト連結部材4から形成し、第2部材2はなす環5の本体19から形成し、膨大部22はなす環5の本体19から突設して形成し、嵌着孔13はベルト連結部材4のベルト支持杆11の中央の拡張部12に形成した連結具である。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成に加え、連結具におけるなす環5の本体19と、ベルト連結部材4とを連結したとき、なす環5の本体19とベルト連結部材4とが同一面内にあるときよりも、直交する面内にあるときが、係止部23と被係止部15との接触面が大きくなるように形成した連結具である。
【発明の効果】
【0016】
この出願の発明の効果として、請求項1記載の発明は、連結具は第1部材と第2部材とから形成し、一方の部材には突出する首部を設け、該首部の先端に膨大部を形成し、他方の部材には膨大部を圧入して回動可能に形成する膨大部入口側と膨大部出口側とを備えた嵌着孔を設け、膨大部の周縁に嵌着孔と係止できる係止部を設け、嵌着孔の出口側周縁に膨大部と係止できる被係止部を設け、膨大部と嵌着孔の出口側の形状を長円形の形状に形成したことによって、次の効果を奏する。特に首部の先端に設けた膨大部と、膨大部を圧入する嵌着孔の出口側の形状を長軸と短軸とを備えた楕円形を包含する長円形に形成したので、膨大部の係止強度を向上させる効果があり、また膨大部と嵌着孔とに方向性を付与し、係合操作を正確に行なうことができる効果がある。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、首部は断面形状が円形を呈し、膨大部に形成した係止部と、嵌着孔に形成した被係止部とは、第1部材と第2部材とが回動する位置により接触する領域面が変化する形状に形成したことによって、連結された第1部材と第2部材とを円滑かつ自由自在に回動させることができ、かつ両者が同一面内と直交面内とでは、係止部と被係止部との接触面が異なり、直交面内に配されたときが、一番連結強度が高くなる効果がある。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、長円形を呈する嵌着孔の被係止部における短軸は、長円形を呈する膨大部の係止部における短軸よりも長く、係止部における長軸は、被係止部の長軸よりも長く形成したことによって、膨大部の周縁に形成した被係止部よりも大きいので、膨大部に嵌着孔を容易に取り付けることが可能であり、かつ一旦第1部材と第2部材とが連結されると、両者を抜脱させることができない効果がある。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、嵌着孔は、膨大部の入口側が円形形状で、出口側の短軸が入口側の円形形状の径よりも小径の長円形形状に形成したことによって、嵌着孔における膨大部の入口側の形状を成形が簡易に行える円形形状に形成することができ、そのうえ出口側の形状を入口側の円形形状の径よりも小さい径の短軸からなる長円形形状の被係止部に形成して、嵌着孔に対して膨大部を円滑に圧入することができ、嵌着孔と膨大部を確実かつ強固に係止することができる効果がある。
【0020】
請求項5および6記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、第1部材はベルト連結部材から形成し、第2部材はなす環の本体から形成し、膨大部はなす環の本体に形成し、嵌着孔はベルト連結部材のベルト支持杆に形成し、かつなす環の本体とベルト連結部材を連結したとき、なす環の本体とベルト連結部材とが同一面内にあるときよりも直交面内にあるときが係止部と被係止部との接触面が大きくなるように形成したことによって、連結具の第1部材と第2部材とを、ベルト連結部材となす環の本体から形成し、ベルト連結部材となす環の本体とを容易に組み付けることができ、かつ組み付けられたなす環は、両部材が一番頻度が激しく使用される形態、すなわちベルト連結部材となす環の本体とが直交状態にあるとき、最も連結強度が高く、なす環にいかなる外力が働いても、膨大部が嵌着孔から抜脱することがなく品質のよいなす環が得られる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明における連結具として利用価値の高いなす環5について、図1〜8に基づいて説明する。第1部材1としてのベルト連結部材4および第2部材2としてのなす環5はともに、合成樹脂としてポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて、射出成形手段によって成形し、ベルト連結部材4となす環5とに弾力性を具備させたものである。
【0022】
第1部材1としてのベルト連結部材4は、図1に示すようにベルトBを引掛けるベルト連結杆10となす環5の本体19に設けた膨大部22を圧入できる嵌着孔13を中央の拡張部12に貫設したベルト支持杆11とから形成し、嵌着孔13は、図2に示すように短軸Sと長軸Lとから形成した楕円形を包含する長円形形状に形成し、嵌着孔13の内壁に凹状の切欠部14を長軸Lと短軸Sからずらした位置、すなわち長軸Lの端と短軸Sの端の略中央部分に設けて拡張部12が容易に弾性変形ができ、嵌着孔13が拡がるように形成する。また嵌着孔13は、図4および図6に示すように嵌着孔13の膨大部22が挿入される入口側すなわちベルト支持杆11における膨大部22に対応する面は大径の円形形状であり、出口側すなわちベルト支持杆11における膨大部22と係止する面は図2,5に示すように小径の短軸Sと入口側の径とほぼ同等の長軸Lから形成した楕円形を包含する長円形形状の被係止部15を形成する。
【0023】
なす環5の本体19は、平面形状が円形の基台20の表面に図1および図4に示すように首部21を突設し、この首部21は図6および図4に示すように基台20に近い部分が太い円形で、先端の部分が細い円形に形成し、かつ首部21の先端に図3に示すように周囲に膨出する膨大部22を形成して周縁に係止部23を設ける。この係止部23の形状は、短軸S’と長軸L’から形成された楕円形を包含する長円形形状に形成する。さらに首部21の両側面すなわち嵌着孔13に対面する面には図1および図4に示すように凹状の凹部24を凹設して材料の節減を図る。
【0024】
なす環5は、図1に示すように基台20の裏側に支持部25とフック部26とを平行状に突設し、支持部25にはフック部26の開口部30を封鎖することができる抜止片28を取り付けるための取付孔27を上下に2個穿設し、またフック状を呈するフック部26の先端には抜止片28を挿入できる挿入部29をフック部26の内面に形成し、抜止片28は金属製のワイヤーから形成し、段差状に食違うワイヤーの端部を上下の取付孔27に挿入することによって、なす環5のフック部26の外側へ弾発できるように取り付けて、なす環5の本体19を形成する。
【0025】
ベルト連結部材4となす環5との組み付けは、まずなす環5の本体19に突設した首部21の先端の膨大部22を、ベルト連結部材4におけるベルト支持杆11の拡張部12に設けた嵌着孔13に挿入するに際し、ベルト支持杆11の拡張部12に設けた大径の円形の嵌着孔13に対し、楕円形を包含する長円形の頂面を有する膨大部22を嵌着孔13に宛がって挿入し、嵌着孔13の出口直前において膨大部22の周縁端Eが図4の仮想線で示すように撓み、同時に嵌着孔13の出口側内壁に形成した切欠部14を利用して、嵌着孔13を前後左右に押し拡げ、この嵌着孔13の出口側から膨大部22を脱出させて圧入し、係止部23と被係止部15とを係止して組み付けは完了する。組み付けられたなす環5はベルト連結部材4に対し、首部21を中心として自由自在に回動する。特に図8に示した形態は、なす環5を肩掛けバッグなどに使用したとき常時実施されている形態であるが、膨大部22の長軸L’の係止部23が嵌着孔13の短軸Sの被係止部15に接触し、ベルト連結部材4となす環5とが抜脱強度が一番高い状態で係止し維持できる。
【実施例1】
【0026】
図1〜8に示した実施例1の連結具は、前項で説明したとおり、連結具の第1部材1がベルト連結部材4、第2部材2がなす環5から形成され、両部材4,5は抜止片28を除いた全体を熱可塑性樹脂を用いて射出成形する。抜止片28は金属製のワイヤーから形成するが、基台20の裏面になす環5と同一樹脂を用いて一体に1本の抜止片28に成形してもよい。なす環5はフック部26が円形の基台20の裏面に断面T字形のフック部26を突設し、フック部26の外側に同一幅の補強部分と内側に同一厚さの補強部分とを形成して、全体がフック状を呈する。また基台20の裏面にはフック部26に並設する形で短尺の支持部25を設け、支持部25には上下に2個の取付孔27を穿設し、支持部25の先端とフック部26の先端には開口部30を設け、この開口部30を封鎖するための金属製のワイヤーから形成した抜止片28の端部を取付片27に挿入して抜止片28を外側へ弾発的に付勢する。フック部26の先端における内側には抜止片28の先端を受入れるための凹状の挿入部29を形成する。
【0027】
円形の基台20の上面中央に円形の首部21を突設し、この首部21は図6に示すように基部が太く先端側が図5に示すように細く形成する。さらに首部21の先端に周囲に膨出する膨大部22を設けてベルト連結部材4に設けた嵌着孔13に係止することができる係止部23を設ける。膨大部22は首部21に一体的に連結した係止部23を形成する長円形の底面と、この長円形の底面よりも一回り小さい長円形を形成する頂面とを備え、この膨大部22は底面から頂面へ向けてテーパーが付いており、膨大部22の底面と頂面を形成する長円形はフック部26の引掛け方向(抜止片28の移動方向)と同一方向が長軸L’、フック部26に直交する方向が短軸S’となる楕円形を包含する長円形形状に形成する。首部21の側面すなわちフック部26に直交する側に凹状の凹部24を設け、この凹部24は図4に示すように膨大部22を嵌着孔13に圧入したとき、嵌着孔13で隠蔽されるため表面からは分らない。従って凹部24を凹設することによって連結具の成形材料の削減を図ることができる。
【0028】
ベルト連結部材4は、前述のようにベルトBを連結するため、全体が長方形で一辺にベルトBを連結するベルト連結杆10を設け、このベルト連結杆10に対応してベルト支持杆11を設ける。このベルト支持杆11は中央がベルト支持杆11の幅方向に拡大する拡張部12を設け、この拡張部12になす環5の本体19に設けた首部21を収容し、かつ首部21の先端に形成した膨大部22を圧入できる嵌着孔13を設け、この嵌着孔13は膨大部22が挿入する側すなわち入口側が膨大部22における長軸L’に等しい孔径の円形に形成し、嵌着孔13における膨大部22の出口側が膨大部22の底面を形成する長円形の長軸L’に等しく、また長軸L’に直交する出口側の孔径が図5に示すように首部21の径と等しい短軸S’に形成し、楕円形を包含する長円形に形成することによって、嵌着孔13の出口側の周縁に膨大部22との係止ができる長軸Lと短軸Sから形成された被係止部15を形成する。この嵌着孔13の出口側の四隅に図1および図2に示すように凹状の切欠部14を設けることによって、膨大部22を圧入する際、被係止部15が容易に変形し圧入が円滑に行なえるように形成する。
【0029】
ベルト連結部材4となす環5とを連結する際、嵌着孔13の膨大部22の出口側の内壁に凹状の複数の切欠部14を設け、この切欠部14は楕円形状を包含する長円形の嵌着孔13の径のうち、ベルト支持杆11の長手方向の径に対して離れた位置の内壁、すなわち嵌着孔13の長軸Lと短軸Sとの略中間の位置の内壁に形成することが好ましい。従って図4に見られるように、膨大部22を嵌着孔13に圧入する際に、拡張部12が弾性変形が容易となり、簡単に圧入させることができる。また係止部23を形成する長円形の長軸L’、短軸S’と被係止部15を形成する長円形の長軸Lと短軸Sとの関係を次のとおり、S’>S,(S’−S)>(L’−L)とすることで、拡張部12を拡げる力を加え易くし、また膨大部22が圧入されるときには撓み易くなるので組み付けがきわめて容易である。
【0030】
ベルト連結部材4となす環5とを連結した連結具は、両部材4,5は首部21が円形のため自由自在に回動することができ、このとき、図7および図8に示すように係止部23と被係止部15の接触領域または接触面の形態が回動によって随時変化する。すなわち係止領域を形成する嵌着孔13の短軸Sと、この短軸Sと接触する係止部23の短軸S’がS’〜L’に変化することで、長軸L’の抜脱強度に異方性を持たすことができる。特に図8に示すようになす環5とベルト連結部材4とが直交する形態、一般になす環5を使用する場合、最も肩掛けバッグなどでよく使用される場合であり、その場合でもなす環5に形成された膨大部22の長軸L’の係止部23がベルト連結部材4のベルト支持杆11に形成された被係止部15の短軸Sと係止するので、係止が最も強固に行え、なす環5とベルト連結部材4とは抜脱することがない。
【実施例2】
【0031】
図9に示す実施例2の連結具は、前記実施例1における膨大部22における係止部23の形態を、図3に示した形態から90度位相をずらせた状態であり、なす環5の本体19の向き、すなわちフック部26の引掛ける方向と同一方向における膨大部22の係止部23を短軸S’とし、フック部26の引掛ける方向と直交する方向における膨大部22の係止部23を長軸L’と設定することもできる。他の構成は前例と同一である。この場合なす環5の使用態様は前記実施例1とは90度位相を異にする実施態様に適するものである。
【実施例3】
【0032】
図10に示す実施例3の連結具は、ベルト連結部材4におけるベルト支持杆11の拡張部12に設ける嵌着孔13の出口側の形態と、なす環5の膨大部22との形態が前記実施例1の構成とは異なり、ベルト支持杆11の拡張部12に設けた嵌着孔13における出口側の被係止部15すなわち長軸Lと短軸Sが実施例1では図2,3に示すように嵌着孔13の長軸Lと膨大部22の長軸L’とが同一長さで形成されているのに対し、実施例3では長軸Lと短軸Sとの長円形(楕円形を包含する)から形成された嵌着孔13に対し、なす環5の膨大部22は嵌着孔13における長軸Lおよび短軸Sより一段と大きい長軸L’および短軸S’から形成され、膨大部22と嵌着孔13との係止強度が一段と強化される形態である。このとき長軸L,L’と短軸S,S’の関係が(S−S’)>(L’−L)>0の関係にあることが好ましく、そうすることで組み付けが易く、かつ係止強度が強化された形態とすることができる。
【実施例4】
【0033】
図11に示す実施例4の連結具は、差込みタイプのバックルに応用したものである。バックル本体31の差込口から差込体32の両側に突設した差込脚部33を差し込み、バックル本体31の側壁34に差込脚部33を係合させ固定させる。バックル本体31は差込口の反対側にベルトBを取り付けるためのベルト取付部35が設けられている。差込体32は差込脚部33とは反対側中央に実施例1と同形態の首部21を設け、この首部21の先端に膨大部22を設ける。ベルト連結部材4は長方形の枠体から形成し、ベルト支持杆11の拡張部12に実施例1と同形態の嵌着孔13を設け、差込体32に設けた首部21と膨大部22を圧入し係止するものであり、それぞれのベルト取付部35およびベルト連結杆10にベルトを挿通して使用する。
【実施例5】
【0034】
図12に示す実施例5の連結具は、ベルトBを連結するために用いるベルト連結部材4から形成したものであり、一方のベルト連結部材4はベルト支持杆11の中央に形成した拡張部12から首部21を突設し、この首部21の先端に膨大部22を形成し、他方のベルト連結部材4はベルト支持杆11の中央に形成した拡張部12に膨大部22を圧入し係止できる嵌着孔13を設け、この嵌着孔13および首部21、膨大部22の形態は実施例1と同一であり、それぞれのベルト連結杆10にベルトBを連結して使用するものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明の連結具は、第1部材としてベルト連結部材、第2部材としてなす環、または第1部材としてベルト連結部材、第2部材として差込みタイプのバックル、あるいは第1部材、第2部材ともにベルト連結部材を用い、各種のショルダーバッグ、リュックサックなどに用いられたベルトを挿通して、なす環またはバックルあるいはベルト連結部材をバッグ、袋物の止具に引掛けて使用する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1に基づく連結具の分解斜視図である。
【図2】同上連結具のベルト支持杆に設けた嵌着孔(出口側)の平面図である。
【図3】同上連結具の膨大部の平面図である。
【図4】同上連結具の係止状態を表す一部切欠して示す正面図であり、膨大部の圧入経過を仮想線で示す。
【図5】同上連結具の図4におけるA−A断面図である。
【図6】同上連結具の図4におけるB−B断面図である。
【図7】同上連結具の第1部材としてのベルト連結部材と、第2部材としてのなす環が同一面内で係止した状態を表す。
【図8】同上連結具の第1部材としてのベルト連結部材と、第2部材としてのなす環が直交面内で係止した状態を表す。
【図9】実施例2に基づく連結具の分解斜視図である。
【図10】実施例3に基づく膨大部と嵌着孔の係止状態を表す。
【図11】実施例4に基づく連結具のバックルの一部切欠した正面図である。
【図12】実施例5に基づく連結具のベルト連結部材の正面図である。
【図13】公知のなす環の分解正面図である。
【図14】他の公知のなす環の平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 第1部材
2 第2部材
4 ベルト連結部材
5 なす環
11 ベルト支持杆
13 嵌着孔
15 被係止部
19 本体
21 首部
22 膨大部
23 係止部
B ベルト
L 長軸(被係止部)
S 短軸(被係止部)
L’ 長軸(係止部)
S’ 短軸(係止部)
【技術分野】
【0001】
この発明は、ショルダーバッグ、リュックサックなどをはじめベルトを挿通して、バッグ、袋物等に取り付けられた止具に対し、容易に引掛けて連結することができる合成樹脂製のなす環、あるいは差込みタイプのバックルにおいて差込体の一端に配置するベルト取付部材を回動自在に取り付け、または左右のベルト自体を連結するために用いるベルト取付部材を回動自在に連結する連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、簡単に取り扱いができるなす環に仕上げるため、ショルダーバッグなどのベルトを取り付けることができる環状の枠体あるいは支持環と、フックと弾性片を並設したフック体を枠体に対し、回動自在に軸支したなす環が知られている。例えば図13に示すように、1本の基杆と左右一対の転換杆を連結し、全体が二等辺三角形を呈し、左右一対の転換杆の中央に外側が拡径に広がった孔状の嵌着孔を備え、この嵌着孔の内側の縮径部分に切り込みを入れた切口を設けて変形できるように形成した保持具と、基板の一面に軸部を設け、軸部の先端に膨大状の拡大部を形成し、基板の他面にフック部と弾性的に変形できる閉鎮舌片を並設したフック本体を形成し、前記保持具の嵌着孔に対し、フック本体の基板に突設した軸部の先端の拡大部を挿入し回動自在に形成したなす環が知られている。
【0003】
前記なす環を改良したものに、図14に示すように、左右に配された転換杆の中央に形成された拡張部分に形成される嵌着孔の内側に3個の尖端形状を具備した突出部を形成した特殊な形状の嵌着孔に対し、前例と同一形状のフック本体の基板に突設した断面円形の軸部の先端に形成した拡大部を挿入し、回動自在に形成したなす環が知られている。
【特許文献1】特許第2932138号公報
【特許文献2】米国特許第5502878号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前項で述べた図13,14に示すなす環は、双方ともに、フック本体に設置した膨大部および保持具における左右転換杆の中央部分に形成した嵌着孔がともに円形形状であり、フック本体が保持具に対しどの位置関係にあっても、保持具の嵌着孔からフック本体の膨大部が抜脱する傾向があり、強度は同じである。従ってよく使用する回動位置、例えば肩掛けバッグに使用されるなす環の場合、保持具とフック本体とが直交状態にあるとき、多少の外力が加わると、容易に嵌着孔から膨大部が抜脱して、なす環が使用できなくなるという問題点がある。
【0005】
この発明は、上述の問題点を考慮して発明されたものであり、この発明のうち請求項1記載の発明は、なす環の本体とベルト連結部材、あるいは差込みタイプのバックルにおけるバックル本体とベルト連結部材、または2個のベルト連結部材からなるベルト連結具において、第1部材と第2部材に形成する膨大部と嵌着孔を楕円形状を包含する長円形状に形成し、第1部材と第2部材とがいかなる位置関係にあっても、第1部材と第2部材とが的確に係止して連結し、両者が抜脱する憂いがない連結具を提供することが主たる目的である。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、膨大部に形成する係止部と、嵌着孔に形成する被係止部とは第1部材と第2部材とが回動する位置により接触する領域面が変化し確実に係止し、しかも膨大部を配する首部は断面円形に形成して、第1部材と第2部材とを円滑に回動させることができる連結具を提供することが目的である。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、膨大部に形成する係止部と、嵌着孔に形成する被係止部とは、係止部の方が大きく形成して、確実に膨大部を嵌着孔に圧入して係止できる連結具を提供することが目的である。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、嵌着孔は膨大部が圧入する入口側が大径の円形形状であり、嵌着孔の出口側は小径の楕円形を含む長円形形状に形成して、確実に膨大部を係止できる連結具を提供することが目的である。
【0009】
請求項5および6記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、連結具の第1部材をベルト連結部材から形成し、第2部材をなす環の本体から形成し、膨大部はなす環の本体に、また嵌着孔はベルト連結部材のベルト連結杆に形成し、なす環の本体とベルト連結部材とを連結したとき、なす環の本体とベルト連結部材とが同一面内にあるときよりも、直交面内にあるときが、係止部と被係止部との接触面が大きくなるように形成し、係止部と被係止部とが確実に係止し、最大限の強度を発揮できる連結具を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項1記載の発明は、連結具が第1部材と第2部材とから形成し、一方の部材1,2には突出する首部21を設け、この首部21の先端に頭部部分が拡大する膨大部22を形成し、他方の部材2,1には膨大部22が圧入して回動できるように形成し、膨大部入口側と膨大部出口側を備えた貫通状の嵌着孔13を設け、膨大部22の周縁には嵌着孔13と係止できる係止部23を設け、嵌着孔13の出口側周縁に膨大部22と係止できる被係止部15を設け、膨大部22と嵌着孔13の出口側の形状を楕円形を包含する長円形の形状に形成した連結具を主な構成とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、首部21の形状は断面が円形を呈し、その先端に設けた膨大部22の周縁に嵌着孔13と係止できる係止部23を設け、嵌着孔13の周縁には膨大部22と係止できる被係止部15を設け、係止部23と被係止部15とは、第1部材1と第2部材2とが回動する位置により接触する領域面が変化する形状に形成した連結具である。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、楕円形を包含する長円形を呈する嵌着孔13の被係止部15における短軸Sは、楕円形を包含する長円形を呈する膨大部22の係止部23における短軸S’よりも長く、長円形を呈する係止部23における長軸L’は、長円形を呈する被係止部15の長軸Lよりも長く形成した連結具である。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、膨大部22が圧入し係止できる嵌着孔13は、膨大部22が圧入する入口側が円形形状から形成され、出口側すなわち膨大部22の係止部23と係止できる嵌着孔13の被係止部15の形状が、楕円形を包含する長円形形状に形成し、この長円形の短軸Sが、膨大部22の入口側の円形形状の径よりも小径に形成した連結具である。
【0014】
請求項5記載の発明は請求項1記載の発明の構成に加え、連結具における第1部材1はベルト連結部材4から形成し、第2部材2はなす環5の本体19から形成し、膨大部22はなす環5の本体19から突設して形成し、嵌着孔13はベルト連結部材4のベルト支持杆11の中央の拡張部12に形成した連結具である。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明の構成に加え、連結具におけるなす環5の本体19と、ベルト連結部材4とを連結したとき、なす環5の本体19とベルト連結部材4とが同一面内にあるときよりも、直交する面内にあるときが、係止部23と被係止部15との接触面が大きくなるように形成した連結具である。
【発明の効果】
【0016】
この出願の発明の効果として、請求項1記載の発明は、連結具は第1部材と第2部材とから形成し、一方の部材には突出する首部を設け、該首部の先端に膨大部を形成し、他方の部材には膨大部を圧入して回動可能に形成する膨大部入口側と膨大部出口側とを備えた嵌着孔を設け、膨大部の周縁に嵌着孔と係止できる係止部を設け、嵌着孔の出口側周縁に膨大部と係止できる被係止部を設け、膨大部と嵌着孔の出口側の形状を長円形の形状に形成したことによって、次の効果を奏する。特に首部の先端に設けた膨大部と、膨大部を圧入する嵌着孔の出口側の形状を長軸と短軸とを備えた楕円形を包含する長円形に形成したので、膨大部の係止強度を向上させる効果があり、また膨大部と嵌着孔とに方向性を付与し、係合操作を正確に行なうことができる効果がある。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、首部は断面形状が円形を呈し、膨大部に形成した係止部と、嵌着孔に形成した被係止部とは、第1部材と第2部材とが回動する位置により接触する領域面が変化する形状に形成したことによって、連結された第1部材と第2部材とを円滑かつ自由自在に回動させることができ、かつ両者が同一面内と直交面内とでは、係止部と被係止部との接触面が異なり、直交面内に配されたときが、一番連結強度が高くなる効果がある。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、長円形を呈する嵌着孔の被係止部における短軸は、長円形を呈する膨大部の係止部における短軸よりも長く、係止部における長軸は、被係止部の長軸よりも長く形成したことによって、膨大部の周縁に形成した被係止部よりも大きいので、膨大部に嵌着孔を容易に取り付けることが可能であり、かつ一旦第1部材と第2部材とが連結されると、両者を抜脱させることができない効果がある。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、嵌着孔は、膨大部の入口側が円形形状で、出口側の短軸が入口側の円形形状の径よりも小径の長円形形状に形成したことによって、嵌着孔における膨大部の入口側の形状を成形が簡易に行える円形形状に形成することができ、そのうえ出口側の形状を入口側の円形形状の径よりも小さい径の短軸からなる長円形形状の被係止部に形成して、嵌着孔に対して膨大部を円滑に圧入することができ、嵌着孔と膨大部を確実かつ強固に係止することができる効果がある。
【0020】
請求項5および6記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、第1部材はベルト連結部材から形成し、第2部材はなす環の本体から形成し、膨大部はなす環の本体に形成し、嵌着孔はベルト連結部材のベルト支持杆に形成し、かつなす環の本体とベルト連結部材を連結したとき、なす環の本体とベルト連結部材とが同一面内にあるときよりも直交面内にあるときが係止部と被係止部との接触面が大きくなるように形成したことによって、連結具の第1部材と第2部材とを、ベルト連結部材となす環の本体から形成し、ベルト連結部材となす環の本体とを容易に組み付けることができ、かつ組み付けられたなす環は、両部材が一番頻度が激しく使用される形態、すなわちベルト連結部材となす環の本体とが直交状態にあるとき、最も連結強度が高く、なす環にいかなる外力が働いても、膨大部が嵌着孔から抜脱することがなく品質のよいなす環が得られる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明における連結具として利用価値の高いなす環5について、図1〜8に基づいて説明する。第1部材1としてのベルト連結部材4および第2部材2としてのなす環5はともに、合成樹脂としてポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて、射出成形手段によって成形し、ベルト連結部材4となす環5とに弾力性を具備させたものである。
【0022】
第1部材1としてのベルト連結部材4は、図1に示すようにベルトBを引掛けるベルト連結杆10となす環5の本体19に設けた膨大部22を圧入できる嵌着孔13を中央の拡張部12に貫設したベルト支持杆11とから形成し、嵌着孔13は、図2に示すように短軸Sと長軸Lとから形成した楕円形を包含する長円形形状に形成し、嵌着孔13の内壁に凹状の切欠部14を長軸Lと短軸Sからずらした位置、すなわち長軸Lの端と短軸Sの端の略中央部分に設けて拡張部12が容易に弾性変形ができ、嵌着孔13が拡がるように形成する。また嵌着孔13は、図4および図6に示すように嵌着孔13の膨大部22が挿入される入口側すなわちベルト支持杆11における膨大部22に対応する面は大径の円形形状であり、出口側すなわちベルト支持杆11における膨大部22と係止する面は図2,5に示すように小径の短軸Sと入口側の径とほぼ同等の長軸Lから形成した楕円形を包含する長円形形状の被係止部15を形成する。
【0023】
なす環5の本体19は、平面形状が円形の基台20の表面に図1および図4に示すように首部21を突設し、この首部21は図6および図4に示すように基台20に近い部分が太い円形で、先端の部分が細い円形に形成し、かつ首部21の先端に図3に示すように周囲に膨出する膨大部22を形成して周縁に係止部23を設ける。この係止部23の形状は、短軸S’と長軸L’から形成された楕円形を包含する長円形形状に形成する。さらに首部21の両側面すなわち嵌着孔13に対面する面には図1および図4に示すように凹状の凹部24を凹設して材料の節減を図る。
【0024】
なす環5は、図1に示すように基台20の裏側に支持部25とフック部26とを平行状に突設し、支持部25にはフック部26の開口部30を封鎖することができる抜止片28を取り付けるための取付孔27を上下に2個穿設し、またフック状を呈するフック部26の先端には抜止片28を挿入できる挿入部29をフック部26の内面に形成し、抜止片28は金属製のワイヤーから形成し、段差状に食違うワイヤーの端部を上下の取付孔27に挿入することによって、なす環5のフック部26の外側へ弾発できるように取り付けて、なす環5の本体19を形成する。
【0025】
ベルト連結部材4となす環5との組み付けは、まずなす環5の本体19に突設した首部21の先端の膨大部22を、ベルト連結部材4におけるベルト支持杆11の拡張部12に設けた嵌着孔13に挿入するに際し、ベルト支持杆11の拡張部12に設けた大径の円形の嵌着孔13に対し、楕円形を包含する長円形の頂面を有する膨大部22を嵌着孔13に宛がって挿入し、嵌着孔13の出口直前において膨大部22の周縁端Eが図4の仮想線で示すように撓み、同時に嵌着孔13の出口側内壁に形成した切欠部14を利用して、嵌着孔13を前後左右に押し拡げ、この嵌着孔13の出口側から膨大部22を脱出させて圧入し、係止部23と被係止部15とを係止して組み付けは完了する。組み付けられたなす環5はベルト連結部材4に対し、首部21を中心として自由自在に回動する。特に図8に示した形態は、なす環5を肩掛けバッグなどに使用したとき常時実施されている形態であるが、膨大部22の長軸L’の係止部23が嵌着孔13の短軸Sの被係止部15に接触し、ベルト連結部材4となす環5とが抜脱強度が一番高い状態で係止し維持できる。
【実施例1】
【0026】
図1〜8に示した実施例1の連結具は、前項で説明したとおり、連結具の第1部材1がベルト連結部材4、第2部材2がなす環5から形成され、両部材4,5は抜止片28を除いた全体を熱可塑性樹脂を用いて射出成形する。抜止片28は金属製のワイヤーから形成するが、基台20の裏面になす環5と同一樹脂を用いて一体に1本の抜止片28に成形してもよい。なす環5はフック部26が円形の基台20の裏面に断面T字形のフック部26を突設し、フック部26の外側に同一幅の補強部分と内側に同一厚さの補強部分とを形成して、全体がフック状を呈する。また基台20の裏面にはフック部26に並設する形で短尺の支持部25を設け、支持部25には上下に2個の取付孔27を穿設し、支持部25の先端とフック部26の先端には開口部30を設け、この開口部30を封鎖するための金属製のワイヤーから形成した抜止片28の端部を取付片27に挿入して抜止片28を外側へ弾発的に付勢する。フック部26の先端における内側には抜止片28の先端を受入れるための凹状の挿入部29を形成する。
【0027】
円形の基台20の上面中央に円形の首部21を突設し、この首部21は図6に示すように基部が太く先端側が図5に示すように細く形成する。さらに首部21の先端に周囲に膨出する膨大部22を設けてベルト連結部材4に設けた嵌着孔13に係止することができる係止部23を設ける。膨大部22は首部21に一体的に連結した係止部23を形成する長円形の底面と、この長円形の底面よりも一回り小さい長円形を形成する頂面とを備え、この膨大部22は底面から頂面へ向けてテーパーが付いており、膨大部22の底面と頂面を形成する長円形はフック部26の引掛け方向(抜止片28の移動方向)と同一方向が長軸L’、フック部26に直交する方向が短軸S’となる楕円形を包含する長円形形状に形成する。首部21の側面すなわちフック部26に直交する側に凹状の凹部24を設け、この凹部24は図4に示すように膨大部22を嵌着孔13に圧入したとき、嵌着孔13で隠蔽されるため表面からは分らない。従って凹部24を凹設することによって連結具の成形材料の削減を図ることができる。
【0028】
ベルト連結部材4は、前述のようにベルトBを連結するため、全体が長方形で一辺にベルトBを連結するベルト連結杆10を設け、このベルト連結杆10に対応してベルト支持杆11を設ける。このベルト支持杆11は中央がベルト支持杆11の幅方向に拡大する拡張部12を設け、この拡張部12になす環5の本体19に設けた首部21を収容し、かつ首部21の先端に形成した膨大部22を圧入できる嵌着孔13を設け、この嵌着孔13は膨大部22が挿入する側すなわち入口側が膨大部22における長軸L’に等しい孔径の円形に形成し、嵌着孔13における膨大部22の出口側が膨大部22の底面を形成する長円形の長軸L’に等しく、また長軸L’に直交する出口側の孔径が図5に示すように首部21の径と等しい短軸S’に形成し、楕円形を包含する長円形に形成することによって、嵌着孔13の出口側の周縁に膨大部22との係止ができる長軸Lと短軸Sから形成された被係止部15を形成する。この嵌着孔13の出口側の四隅に図1および図2に示すように凹状の切欠部14を設けることによって、膨大部22を圧入する際、被係止部15が容易に変形し圧入が円滑に行なえるように形成する。
【0029】
ベルト連結部材4となす環5とを連結する際、嵌着孔13の膨大部22の出口側の内壁に凹状の複数の切欠部14を設け、この切欠部14は楕円形状を包含する長円形の嵌着孔13の径のうち、ベルト支持杆11の長手方向の径に対して離れた位置の内壁、すなわち嵌着孔13の長軸Lと短軸Sとの略中間の位置の内壁に形成することが好ましい。従って図4に見られるように、膨大部22を嵌着孔13に圧入する際に、拡張部12が弾性変形が容易となり、簡単に圧入させることができる。また係止部23を形成する長円形の長軸L’、短軸S’と被係止部15を形成する長円形の長軸Lと短軸Sとの関係を次のとおり、S’>S,(S’−S)>(L’−L)とすることで、拡張部12を拡げる力を加え易くし、また膨大部22が圧入されるときには撓み易くなるので組み付けがきわめて容易である。
【0030】
ベルト連結部材4となす環5とを連結した連結具は、両部材4,5は首部21が円形のため自由自在に回動することができ、このとき、図7および図8に示すように係止部23と被係止部15の接触領域または接触面の形態が回動によって随時変化する。すなわち係止領域を形成する嵌着孔13の短軸Sと、この短軸Sと接触する係止部23の短軸S’がS’〜L’に変化することで、長軸L’の抜脱強度に異方性を持たすことができる。特に図8に示すようになす環5とベルト連結部材4とが直交する形態、一般になす環5を使用する場合、最も肩掛けバッグなどでよく使用される場合であり、その場合でもなす環5に形成された膨大部22の長軸L’の係止部23がベルト連結部材4のベルト支持杆11に形成された被係止部15の短軸Sと係止するので、係止が最も強固に行え、なす環5とベルト連結部材4とは抜脱することがない。
【実施例2】
【0031】
図9に示す実施例2の連結具は、前記実施例1における膨大部22における係止部23の形態を、図3に示した形態から90度位相をずらせた状態であり、なす環5の本体19の向き、すなわちフック部26の引掛ける方向と同一方向における膨大部22の係止部23を短軸S’とし、フック部26の引掛ける方向と直交する方向における膨大部22の係止部23を長軸L’と設定することもできる。他の構成は前例と同一である。この場合なす環5の使用態様は前記実施例1とは90度位相を異にする実施態様に適するものである。
【実施例3】
【0032】
図10に示す実施例3の連結具は、ベルト連結部材4におけるベルト支持杆11の拡張部12に設ける嵌着孔13の出口側の形態と、なす環5の膨大部22との形態が前記実施例1の構成とは異なり、ベルト支持杆11の拡張部12に設けた嵌着孔13における出口側の被係止部15すなわち長軸Lと短軸Sが実施例1では図2,3に示すように嵌着孔13の長軸Lと膨大部22の長軸L’とが同一長さで形成されているのに対し、実施例3では長軸Lと短軸Sとの長円形(楕円形を包含する)から形成された嵌着孔13に対し、なす環5の膨大部22は嵌着孔13における長軸Lおよび短軸Sより一段と大きい長軸L’および短軸S’から形成され、膨大部22と嵌着孔13との係止強度が一段と強化される形態である。このとき長軸L,L’と短軸S,S’の関係が(S−S’)>(L’−L)>0の関係にあることが好ましく、そうすることで組み付けが易く、かつ係止強度が強化された形態とすることができる。
【実施例4】
【0033】
図11に示す実施例4の連結具は、差込みタイプのバックルに応用したものである。バックル本体31の差込口から差込体32の両側に突設した差込脚部33を差し込み、バックル本体31の側壁34に差込脚部33を係合させ固定させる。バックル本体31は差込口の反対側にベルトBを取り付けるためのベルト取付部35が設けられている。差込体32は差込脚部33とは反対側中央に実施例1と同形態の首部21を設け、この首部21の先端に膨大部22を設ける。ベルト連結部材4は長方形の枠体から形成し、ベルト支持杆11の拡張部12に実施例1と同形態の嵌着孔13を設け、差込体32に設けた首部21と膨大部22を圧入し係止するものであり、それぞれのベルト取付部35およびベルト連結杆10にベルトを挿通して使用する。
【実施例5】
【0034】
図12に示す実施例5の連結具は、ベルトBを連結するために用いるベルト連結部材4から形成したものであり、一方のベルト連結部材4はベルト支持杆11の中央に形成した拡張部12から首部21を突設し、この首部21の先端に膨大部22を形成し、他方のベルト連結部材4はベルト支持杆11の中央に形成した拡張部12に膨大部22を圧入し係止できる嵌着孔13を設け、この嵌着孔13および首部21、膨大部22の形態は実施例1と同一であり、それぞれのベルト連結杆10にベルトBを連結して使用するものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明の連結具は、第1部材としてベルト連結部材、第2部材としてなす環、または第1部材としてベルト連結部材、第2部材として差込みタイプのバックル、あるいは第1部材、第2部材ともにベルト連結部材を用い、各種のショルダーバッグ、リュックサックなどに用いられたベルトを挿通して、なす環またはバックルあるいはベルト連結部材をバッグ、袋物の止具に引掛けて使用する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1に基づく連結具の分解斜視図である。
【図2】同上連結具のベルト支持杆に設けた嵌着孔(出口側)の平面図である。
【図3】同上連結具の膨大部の平面図である。
【図4】同上連結具の係止状態を表す一部切欠して示す正面図であり、膨大部の圧入経過を仮想線で示す。
【図5】同上連結具の図4におけるA−A断面図である。
【図6】同上連結具の図4におけるB−B断面図である。
【図7】同上連結具の第1部材としてのベルト連結部材と、第2部材としてのなす環が同一面内で係止した状態を表す。
【図8】同上連結具の第1部材としてのベルト連結部材と、第2部材としてのなす環が直交面内で係止した状態を表す。
【図9】実施例2に基づく連結具の分解斜視図である。
【図10】実施例3に基づく膨大部と嵌着孔の係止状態を表す。
【図11】実施例4に基づく連結具のバックルの一部切欠した正面図である。
【図12】実施例5に基づく連結具のベルト連結部材の正面図である。
【図13】公知のなす環の分解正面図である。
【図14】他の公知のなす環の平面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 第1部材
2 第2部材
4 ベルト連結部材
5 なす環
11 ベルト支持杆
13 嵌着孔
15 被係止部
19 本体
21 首部
22 膨大部
23 係止部
B ベルト
L 長軸(被係止部)
S 短軸(被係止部)
L’ 長軸(係止部)
S’ 短軸(係止部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結具は第1部材1と第2部材2とから形成し、一方の部材1, 2には突出する首部21を設け、該首部21の先端に膨大部22を形成し、他方の部材2, 1には膨大部22を圧入して回動可能に形成する膨大部入口側と膨大部出口側とを備えた嵌着孔13を設け、膨大部22の周縁に嵌着孔13と係止できる係止部23を設け、嵌着孔13の出口側周縁に膨大部22と係止できる被係止部15を設け、膨大部22と嵌着孔13の出口側の形状を長円形の形状に形成してなることを特徴とする連結具。
【請求項2】
首部21は断面形状が円形を呈し、膨大部22に形成した係止部23と、嵌着孔13に形成した被係止部15とは、第1部材1と第2部材2とが回動する位置により接触する領域面が変化する形状に形成してなる請求項1記載の連結具。
【請求項3】
長円形を呈する嵌着孔13の被係止部15における短軸Sは、長円形を呈する膨大部22の係止部23における短軸S’よりも長く、係止部23における長軸L’は、被係止部15の長軸Lよりも長く形成してなる請求項1記載の連結具。
【請求項4】
嵌着孔13は、膨大部22の入口側が円形形状で、出口側の短軸Sが入口側の円形形状の径よりも小径の長円形形状に形成してなる請求項1記載の連結具。
【請求項5】
第1部材1はベルト連結部材4から形成し、第2部材2はなす環5の本体19から形成し、膨大部22はなす環5の本体19に形成し、嵌着孔13はベルト連結部材4のベルト支持杆11に形成してなる請求項1記載の連結具。
【請求項6】
なす環5の本体19とベルト連結部材4を連結したとき、なす環5の本体19とベルト連結部材4とが同一面内にあるときよりも、直交面内にあるときが、係止部23と被係止部15との接触面が大きくなるように形成してなる請求項5記載の連結具。
【請求項1】
連結具は第1部材1と第2部材2とから形成し、一方の部材1, 2には突出する首部21を設け、該首部21の先端に膨大部22を形成し、他方の部材2, 1には膨大部22を圧入して回動可能に形成する膨大部入口側と膨大部出口側とを備えた嵌着孔13を設け、膨大部22の周縁に嵌着孔13と係止できる係止部23を設け、嵌着孔13の出口側周縁に膨大部22と係止できる被係止部15を設け、膨大部22と嵌着孔13の出口側の形状を長円形の形状に形成してなることを特徴とする連結具。
【請求項2】
首部21は断面形状が円形を呈し、膨大部22に形成した係止部23と、嵌着孔13に形成した被係止部15とは、第1部材1と第2部材2とが回動する位置により接触する領域面が変化する形状に形成してなる請求項1記載の連結具。
【請求項3】
長円形を呈する嵌着孔13の被係止部15における短軸Sは、長円形を呈する膨大部22の係止部23における短軸S’よりも長く、係止部23における長軸L’は、被係止部15の長軸Lよりも長く形成してなる請求項1記載の連結具。
【請求項4】
嵌着孔13は、膨大部22の入口側が円形形状で、出口側の短軸Sが入口側の円形形状の径よりも小径の長円形形状に形成してなる請求項1記載の連結具。
【請求項5】
第1部材1はベルト連結部材4から形成し、第2部材2はなす環5の本体19から形成し、膨大部22はなす環5の本体19に形成し、嵌着孔13はベルト連結部材4のベルト支持杆11に形成してなる請求項1記載の連結具。
【請求項6】
なす環5の本体19とベルト連結部材4を連結したとき、なす環5の本体19とベルト連結部材4とが同一面内にあるときよりも、直交面内にあるときが、係止部23と被係止部15との接触面が大きくなるように形成してなる請求項5記載の連結具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−45683(P2008−45683A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222631(P2006−222631)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
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