説明

連結構造体

【課題】連結構造体において、第1構造体と第2構造体との間の水平相対変位の上方位置での累増を抑制する。
【解決手段】鉛直方向に複数の階層を有する第1構造体と、前記第1構造体の側方に並んで立設された鉛直方向に複数の階層を有する第2構造体とを有し、前記第1構造体と前記第2構造体とが、水平方向の振動のエネルギーを吸収するエネルギー吸収部材によって連結されてなる連結構造体である。水平方向に隣り合う階層同士において、前記第1構造体に属する階層の水平剛性の方が、前記第2構造体に属する階層の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有する。水平方向に隣り合う階層同士において、前記第2構造体に属する階層の水平剛性の方が、前記第1構造体に属する階層の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに並んで地盤に立設された第1構造体と第2構造体とが、ダンパ等のエネルギー吸収部材により連結されてなる連結構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに独立に地盤に立設された複数の構造体をダンパ等で連結することにより、各構造体の水平振動を抑制する連結制振方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−295493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この連結制振方法を用いた連結構造体の一例として、図1Aの側面図の構成が挙げられる。この連結構造体100は、互いに独立して並んで地盤Gに立設された第1構造体110と第2構造体120とを有する。第1構造体110は、鉛直方向に複数の階層112,112…を有し、同様に第2構造体120も、鉛直方向に複数の階層122,122…を有する。第1構造体110の各階層112,112…の水平剛性は、全階層に亘って高く設定されており、他方、第2構造体120の各階層122,122…の水平剛性は、全階層に亘って低く設定されている。また、第1構造体110と第2構造体120とは、各階層112,122の上端部にてダンパ80により連結されている。
【0005】
このような構成の連結構造体100に対して、地震力や風荷重等の水平外力が作用した際には、図1Bに示すように、水平剛性の高い第1構造体110は小さく水平変形するが、水平剛性の低い第2構造体120は大きく水平変形する。よって、この水平変形の差に基づいてダンパ80が作動して振動エネルギーを吸収し、これら第1及び第2構造体110,120の揺れを抑制する。
【0006】
しかしながら、上述の連結構造体100の場合には、鉛直方向の上方の位置ほど、第1構造体110と第2構造体120との間の間隔δの大きさは大きくなる。すなわち、第1構造体110と第2構造体120との間の水平相対変位δは、上方の位置ほど累増する。すると、例えば、上方に設けるダンパ80ほど、ストロークの大きいものを準備しなければならないなど、種々の面倒な事態が起こり得る。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、連結構造体において、第1構造体と第2構造体との間の水平相対変位の上方位置での累増を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
鉛直方向に複数の階層を有する第1構造体と、前記第1構造体の側方に並んで立設された鉛直方向に複数の階層を有する第2構造体とを有し、前記第1構造体と前記第2構造体とが、水平方向の振動のエネルギーを吸収するエネルギー吸収部材によって連結されてなる連結構造体であって、
水平方向に隣り合う階層同士において、前記第1構造体に属する階層の水平剛性の方が、前記第2構造体に属する階層の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向に隣り合う階層同士において、前記第2構造体に属する階層の水平剛性の方が、前記第1構造体に属する階層の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有することを特徴とする。
【0009】
上記請求項1に示す発明によれば、互いに隣り合う所定の高さの階層同士においては、第1構造体に属する階層の水平剛性の方が、第2構造体に属する階層の水平剛性よりも高く、そして、上記所定の高さとは別の高さで隣り合う階層同士においては、第2構造体に属する階層の水平剛性の方が、前記第1構造体に属する階層の水平剛性よりも高くなっている。よって、第1構造体及び第2構造体のどちらか一方のみが専ら水平変形することは有効に抑制され、これにより、上方位置で第1構造体と第2構造体とは近づき易くなる。その結果として、上方位置での第1構造体と第2構造体との間の水平相対変位の累増を抑制可能となる。
【0010】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の連結構造体であって、
前記第1構造体に属する複数の階層のなかに、鉛直方向の上下に隣り合うどちらの階層よりも水平剛性が低い第1低剛性階層を有し、
前記第2構造体の階層のうちで、前記第1低剛性階層の水平方向の隣に位置する階層の水平剛性の方が、前記第1低剛性階層の水平剛性よりも高くなっており、
前記第2構造体に属する複数の階層のなかに、鉛直方向の上下に隣り合うどちらの階層よりも水平剛性が低い第2低剛性階層を有し、
前記第1構造体の階層のうちで、前記第2低剛性階層の水平方向の隣に位置する階層の水平剛性の方が、前記第2低剛性階層の水平剛性よりも高くなっていることを特徴とする。
【0011】
上記請求項2に示す発明によれば、第1低剛性階層の上下には、それよりも水平剛性の高い階層がそれぞれ配置されているので、全体的に第1構造体の水平変形は抑制される。また、第2低剛性階層の上下には、それよりも水平剛性の高い階層がそれぞれ配置されているので、全体的に第2構造体の水平変形は抑制される。そして、これら第1構造体及び第2構造体の水平変形の抑制を通して、上方位置での第1構造体と第2構造体との間の水平相対変位の累増は抑制される。
【0012】
請求項3に示す発明は、請求項2に記載の連結構造体であって、
前記第1構造体における前記第1低剛性階層以外の階層を第1高剛性階層とするとともに、前記第2構造体における前記第2低剛性階層以外の階層を第2高剛性階層とした場合に、
前記第1低剛性階層と前記第1高剛性階層とは、鉛直方向に交互に配置されており、
前記第2低剛性階層と前記第2高剛性階層とは、鉛直方向に交互に配置されていることを特徴とする。
【0013】
上記請求項3に示す発明によれば、第1低剛性階層と第1高剛性階層とは交互に配置され、また、第2低剛性階層と第2高剛性階層とは交互に配置されている。よって、上方位置での第1構造体と第2構造体との間の水平相対変位の累増のより一層の抑制を図れる。
【0014】
請求項4に示す発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の連結構造体であって、
水平方向のうちで前記第1構造体と前記第2構造体とが並ぶ方向を左右方向とし、水平方向のうちで前記左右方向と直交する方向を前後方向とした場合に、前記水平剛性は、左右方向の水平剛性のことであり、
前記第1構造体の後方に第3構造体が立設し、前記第2構造体の後方に第4構造体が立設し、
前記第1構造体と前記第3構造体とは、前記エネルギー吸収部材によって連結されており、
前記第2構造体と前記第4構造体とは、前記エネルギー吸収部材によって連結されており、
前記第3構造体と前記第4構造体とは、前記エネルギー吸収部材によって連結されており、
水平方向の左右に隣り合う階層同士において、前記第3構造体に属する階層の左右方向の水平剛性の方が、前記第4構造体に属する階層の左右方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向の左右に隣り合う階層同士において、前記第4構造体に属する階層の左右方向の水平剛性の方が、前記第3構造体に属する階層の左右方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向の前後に隣り合う階層同士において、前記第1構造体に属する階層の前後方向の水平剛性の方が、前記第3構造体に属する階層の前後方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向の前後に隣り合う階層同士において、前記第3構造体に属する階層の前後方向の水平剛性の方が、前記第1構造体に属する階層の前後方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向の前後に隣り合う階層同士において、前記第2構造体に属する階層の前後方向の水平剛性の方が、前記第4構造体に属する階層の前後方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向の前後に隣り合う階層同士において、前記第4構造体に属する階層の前後方向の水平剛性の方が、前記第2構造体に属する階層の前後方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有することを特徴とする。
【0015】
上記請求項4に示す発明によれば、第1構造体と第2構造体との間の水平相対変位の累増を抑制し、第3構造体と第4構造体との間の水平相対変位の累増を抑制し、第1構造体と第3構造体との間の水平相対変位の累増を抑制し、第2構造体と第4構造体との間の水平相対変位の累増を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、連結構造体において、第1構造体と第2構造体との間の水平相対変位の上方位置での累増を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1A及び図1Bは、従来の連結構造体100の概略側面図である。
【図2】図2A及び図2Bは、第1実施形態の連結構造体1の概略側面図である。
【図3】図3A及び図3Bは、第1実施形態の第1変形例の連結構造体1aの概略側面図である。
【図4】図4A及び図4Bは、同第2変形例の連結構造体1bの概略側面図である。
【図5】図5A及び図5Bは、同第3変形例の連結構造体1cの概略側面図である。
【図6】第2実施形態の連結構造体1dの概略斜視図である。
【図7】第2実施形態の変形例の連結構造体1eの概略斜視図である。
【図8】第3実施形態の連結構造体1fの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
===第1実施形態===
図2Aは、第1実施形態の連結構造体1の概略側面図である。この連結構造体1は、互いに独立して所定の並列方向に並んで地盤Gに立設された第1構造体10と第2構造体20とを有する。第1構造体10は、鉛直方向に複数の階層12,12…を有し、同様に、第2構造体20も、鉛直方向に複数の階層22,22…を有する。第1構造体10の階層12,12…と第2構造体20の階層22,22…とは、頂部の階層22を除いて、一対一の関係で互いに対応付けられて対向配置されており、つまり、互いに対応する階層12,22同士は、鉛直方向の位置たる各階層12,22の高さ位置を互いに揃えて設けられている。これにより、第1構造体10の各階層12,12…と第2構造体20の各階層22,22…とのうちで、互いに同じ高さ位置の階層12,22同士は水平方向に隣り合っている。
【0019】
第1構造体10の各階層12,12…の水平剛性、及び第2構造体20の各階層22の水平剛性は、適宜な大きさに設定されており、この例では、第1構造体10の各階層12,12…及び第2構造体20の各階層22,22…は、それぞれ、水平剛性の高い高剛性階層12a,22aと、この高剛性階層12a,22aよりも水平剛性の低い低剛性階層12b,22bとのどちらか一方に割り振られている。但し、これら高剛性階層12a,12a…同士の水平剛性は互いに同値でなくても良く、同様に、高剛性階層22a,22a…同士の水平剛性も互いに同値でなくても良く、更には、低剛性階層12b,12b…同士の水平剛性も互いに同値で無くても良く、また、低剛性階層22b,22b…同士の水平剛性も互いに同値で無くても良い。すなわち、高剛性階層12a,22aとは、水平剛性の大きさが所定範囲に含まれる階層のことを言い、低剛性階層12b,22bとは、水平剛性の大きさが上記所定範囲よりも小さい所定範囲に含まれる階層のことを言う。このような高剛性階層12a,22aと低剛性階層12b,22bとの配置関係については後述する。また、周知であるが、水平剛性(TON/m)とは、水平剪断変形時の剛性を示す物理量であり、例えば階層を1mだけ水平剪断変形する際の水平荷重(TON)と同値である。
【0020】
第1構造体10と第2構造体20とは、例えば各階層12,22の上端部にてダンパ80(エネルギー吸収部材に相当)により連結されており、これにより、第1構造体10及び第2構造体20の水平振動は抑制される。つまり、連結制振される。なお、ダンパ80としては、オイルダンパや、摩擦ダンパ、鋼材ダンパ、粘性・粘弾性ダンパなどを例示できるが、地震時や風荷重作用時にこれら構造体10,20同士の間に生じ得る水平相対変位δの振動エネルギーを熱エネルギー等に変換等して吸収可能なエネルギー吸収部材であれば、何等上述のダンパに限らない。
【0021】
ここで、この第1実施形態にあっては、第1構造体10は、高剛性階層12aと低剛性階層12bとが鉛直方向に交互に配置されてなり、第2構造体20も高剛性階層22aと低剛性階層22bとが鉛直方向に交互に配置されてなる。また、第1構造体10の高剛性階層12aは、第2構造体20の低剛性階層22bに水平方向に隣り合うように配置され、第1構造体10の低剛性階層12bは第2構造体20の高剛性階層22aに水平方向に隣り合うように配置されており、つまり、第1構造体10と第2構造体20とは、鉛直方向の高剛性階層12a,22aと低剛性階層12b,22bとの配置関係が、互いに逆転している。そして、これにより、第1構造体10の高剛性階層12aの水平剛性の方が、その水平方向の隣に位置する第2構造体20の低剛性階層22bの水平剛性よりも高く、同様に、第2構造体20の高剛性階層22aの水平剛性の方が、その水平方向の隣に位置する第1構造体10の低剛性階層12bの水平剛性よりも高くなっている。
【0022】
そして、このような構成の連結構造体1に対して地震力や風荷重の如き水平外力が上記の並列方向に作用した際には、図2Bに示すように、第1構造体10及び第2構造体20のどちらにおいても、高剛性階層12a,22aよりも低剛性階層12b,22bの方が大きく水平剪断変形し、つまり、各構造体10,20の水平変形量は、概ねその構造体10,20に属する低剛性階層12b,22bに因っている。
但し、このとき、例えば、第1構造体10の高剛性階層12aと第2構造体20の低剛性階層22bとが隣り合う階層(例えば一階)では、主に第2構造体20の低剛性階層22bの水平剪断変形に起因して、第1構造体10と第2構造体20との間の水平相対変位δが拡大するが、第1構造体10の低剛性階層12bと第2構造体20の高剛性階層22aとが隣り合う階層(例えば二階)では、主に第1構造体10の低剛性階層12bの水平剪断変形に起因して、第1構造体10と第2構造体20との水平相対変位δは縮小する。そして、このような水平相対変位δの拡大と縮小とは、高剛性階層12a(22a)と低剛性階層12b(22b)との交互配置に起因して、鉛直方向の上方へ向かうに従って交互に現れるようになっている。よって、上述の水平相対変位δの拡大と縮小とが概ね相殺される形になり、その結果、図1Bの従来例の場合に起きていた上方の位置での第1構造体110と第2構造体120との間の水平相対変位δの累増は、この第1実施形態の構造体10,20にあっては有効に抑制されることになる。
【0023】
図3A及び図3Bは、この累増を抑制する作用効果を奏し得る最小単位の連結構造体1aの概略側面図である。以下、第1変形例という。
【0024】
この第1変形例の連結構造体1aも、互いに独立して並列方向に並んで地盤Gに立設された第1構造体10と第2構造体20とを有している。但し、第1構造体10は二つだけ階層12,12を有し、同じく第2構造体20も二つだけ階層22,22を有し、そして、第1構造体10は、一階を高剛性階層12aとし、二階を低剛性階層12bとする一方、第2構造体20は、一階を低剛性階層22bとし、二階を高剛性階層22aとしている。そして、これにより、前述の第1実施形態と同様に、第1構造体10の高剛性階層12aは、その水平方向の隣に位置する第2構造体20の低剛性階層22bよりも水平剛性が高くなっており、また、第2構造体20の高剛性階層22aは、その水平方向の隣に位置する第1構造体10の低剛性階層12bよりも水平剛性が高くなっている。
【0025】
ここで、かかる構成の連結構造体1aに対して地震力や風荷重の如き水平外力が上記の並列方向に作用した際には、図3Bに示すように、第1構造体10及び第2構造体20のどちらにおいても、主に低剛性階層12b,22bで水平剪断変形するが、このとき、図3Bの例では、一階における第1構造体10の高剛性階層12aと第2構造体20の低剛性階層22bとの水平剛性差に起因した水平相対変位δの拡大が、二階における第1構造体10の低剛性階層12bと第2構造体20の高剛性階層22aとの水平剛性差に起因した水平相対変位δの縮小によって相殺されて、これにより、二階の上端部における第1構造体10と第2構造体20との水平相対変位δの累増が抑制されている。
【0026】
よって、この累増を抑制するための構成は、次の(A)及び(B)のように表される。
(A)水平方向に隣り合う階層12,22同士(図3Aの例では例えば一階の階層12a,22b同士のこと)において、第1構造体10に属する階層12の水平剛性の方が、第2構造体20に属する階層22の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有する。
(B)水平方向に隣り合う階層12,22同士(図3Aの例では例えば二階の階層12b,22a同士のこと)において、第2構造体20に属する階層22の水平剛性の方が、第1構造体10に属する階層12の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有する。
【0027】
図4Aは、第1実施形態の第2変形例の概略側面図である。
この第2変形例の連結構造体1bも、互いに独立して所定の並列方向に並んで地盤Gに立設された第1構造体10と第2構造体20とを有している。但し、第1構造体10のうちの一つの階層12だけを低剛性階層12bとし、それ以外の階層12,12…を高剛性階層12a,12a…とし、また、第2構造体20のうちで上記第1構造体10の低剛性階層12と水平方向に隣り合わない一つの階層22を低剛性階層22bとし、これ以外の階層22,22…を高剛性階層22a,22a…としている。そして、これにより、第1構造体10の低剛性階層12bの水平剛性の方が、その水平方向の隣に位置する第2構造体20の高剛性階層22aの水平剛性よりも低く、また、第2構造体20の低剛性階層22bの水平剛性の方が、その水平方向の隣に位置する第1構造体10の高剛性階層12aの水平剛性よりも低くなっている。
【0028】
よって、かかる構成の連結構造体1bも、上述した構成A及びBを有している。つまり、図3Bに二点鎖線で示す階層12a,22b同士が構成Aをなす階層に相当し、三点鎖線で示す階層12b,22a同士が構成Bをなす階層に相当している。従って、地震力や風荷重の如き水平外力が上記並列方向に作用した際には、速やかに図3Bのような状態になって、水平相対変位δの累増を抑制することができる。
【0029】
図5A及び図5Bは、第3変形例の概略側面図である。なお、図5Bには、地震力や風荷重の如き水平外力が作用していない時の状態を示し、図5Bには、同水平外力が作用時の状態を示している。
第1実施形態との主な相違点は、各構造体10(20)における高剛性階層12a(22a)と低剛性階層12b(22b)との構成比にある。すなわち、第1実施形態では、第1構造体10及び第2構造体20のどちらの構造体10(20)にあっても、高剛性階層12a(22a)と低剛性階層12b(22b)とを1:1の構成比で交互に鉛直方向に沿って配置していたが、この第3変形例の連結構造体1cでは、図5Aに示すように高剛性階層12a(22a)と低剛性階層12b(22b)との構成比を2:1にしている。つまり、高剛性階層12a,12a(22a,22a)を二層だけ鉛直方向に連続して設けるとともに、その鉛直方向の隣に低剛性階層12b(22b)を一層だけ設け、そして、これを鉛直方向に順次繰り返すことにより、それぞれ、各構造体10(20)を形成している。そして、かかる第1構造体10と第2構造体20とは、互いの低剛性階層12b,22b同士が水平方向に隣り合わないように配置されており、これにより、上述した構成A及びBを備えるようにしている。つまり、第1構造体10の低剛性階層12bの水平方向の隣に第2構造体20の高剛性階層22aが位置し、第2構造体20の低剛性階層22bの水平方向の隣に第1構造体10の高剛性階層12aが位置するようにしている。
【0030】
なお、かかる構成比は、何等2:1に限るものではなく、N:1(Nは3以上の整数)でも良いし、更に言えば、高剛性階層12a(22a)と低剛性階層12b(22b)との構成比を逆にしても良い。つまり、前述の第1実施形態を含めて包括的に言えば、構成比をN:M(N及びMは、それぞれ1以上の任意の整数)としても良い。より具体的に言えば、高剛性階層12a(22a)をN層だけ鉛直方向に連続して設けるとともに、その鉛直方向の隣に低剛性階層12b(22b)をM層だけ連続して設け、そして、これを鉛直方向に順次繰り返すことにより、それぞれ、各構造体10(20)を形成しても良い。但し、水平相対変位δを全体的に抑制する観点からは、望ましくは、各構造体10(20)に占める高剛性階層12a(22a)の数(又は構成比N)は、低剛性階層12b(22b)の数(又は構成比M)以上にすると良い。
【0031】
===第2実施形態===
図6は、第2実施形態の概略斜視図である。なお、図6中では、図の錯綜を防ぐべくダンパを不図示としている。
前述の図2Aの第1実施形態では、第1構造体10と第2構造体20とが並列方向に並んで立設されており、よって、この並列方向たる一方向の水平外力に対しては有効に連結制振可能であった。この点につき、この第2実施形態では、互いに直交する二方向の水平外力に対して有効に連結制振可能に構成されている点で主に相違する。なお、これ以外の点は概ね第1実施形態と同様なので、同じ内容の説明については省略する。
【0032】
図6に示すように、この第2実施形態の連結構造体1dは、ダンパで連結すべき構造体10,20,30,40を四棟有している。すなわち、水平方向のうちで互いに直交する二方向を左右方向及び前後方向とした場合に、先ず、左右方向を並列方向として第1構造体10と第2構造体20とが並んで立設されており、また、その前後方向の後方には、同じく左右方向を並列方向として第3構造体30と第4構造体40とが並んで立設されており、これにより、第1構造体10と第3構造体30とは前後方向に隣り合い、また第2構造体20と第4構造体40とは前後方向に隣り合っている。
【0033】
そして、第1構造体10と第2構造体20とがダンパで連結されていることにより、左右方向の水平外力に対してこれら構造体10,20は連結制振され、同様に、第3構造体30と第4構造体40とがダンパで連結されていることにより、これら構造体30,40は、左右方向の水平外力に対して連結制振される。また、第1構造体10と第3構造体30とがダンパで連結されていることにより、これら構造体10,30は、前後方向の水平外力に対して連結制振され、同様に、第2構造体20と第4構造体40とがダンパで連結されていることにより、これら構造体20,40は、前後方向の水平外力に対して連結制振される。
【0034】
ここで、これら第1〜第4構造体10,20,30,40は、それぞれ、前述の第1実施形態の場合と同様に、高剛性階層12a,22a,32a,42aと低剛性階層12b,22b,32b,42bとが鉛直方向に交互に配置されて構成されている。そして、第1構造体10と第2構造体20とは、互いの高剛性階層12a(22a)と低剛性階層22b(12b)とが水平方向の左右に隣り合った状態になっている。すなわち、第1構造体10に係る高剛性階層12aと第2構造体20に係る低剛性階層22bとが隣り合う階層では、前者の第1構造体10に係る高剛性階層12aの方が、左右方向の水平剛性は高いが、他方、第1構造体10に係る低剛性階層12bと第2構造体20に係る高剛性階層22aとが隣り合う階層では、後者の第2構造体20に係る高剛性階層22aの方が、左右方向の水平剛性は高くなっている。よって、第1構造体10と第2構造体20との間の水平相対変位δx12(左右方向の水平相対変位δx12)の累増が抑制される。
【0035】
同様に、第3構造体30と第4構造体40とは、互いの高剛性階層32a(42a)と低剛性階層42b(32b)とが水平方向の左右に隣り合った状態になっている。すなわち、第3構造体30に係る高剛性階層32aと第4構造体40に係る低剛性階層42bとが隣り合う階層では、前者の第3構造体30に係る高剛性階層32aの方が、左右方向の水平剛性は高いが、他方、第3構造体30に係る低剛性階層32bと第4構造体40に係る高剛性階層42aとが隣り合う階層では、後者の第4構造体40に係る高剛性階層42aの方が、左右方向の水平剛性は高くなっている。よって、第3構造体30と第4構造体40との間の水平相対変位δx34(左右方向の水平相対変位δx34)の累増が抑制される。
【0036】
また、高剛性階層や低剛性階層の鉛直方向の位置については、第3構造体30は第2構造体20と揃っており、第4構造体40は第1構造体10と揃っている。そして、これにより、この第2実施形態にあっては、第1構造体10と第3構造体30とは、互いの高剛性階層12a(32a)と低剛性階層32b(12b)とが水平方向の前後に隣り合った状態になっている。すなわち、第1構造体10に係る高剛性階層12aと第3構造体30に係る低剛性階層32bとが隣り合う階層では、前者の第1構造体10に係る高剛性階層12aの方が、前後方向の水平剛性は高いが、他方、第1構造体10に係る低剛性階層12bと第3構造体30に係る高剛性階層32aとが隣り合う階層では、後者の第3構造体30に係る高剛性階層32aの方が、前後方向の水平剛性は高くなっている。よって、第1実施形態で述べたのと同様の理屈に基づいて、第1構造体10と第3構造体30との間の水平相対変位δy13(前後方向の水平相対変位δy13)の累増も抑制される。
【0037】
同様に、第2構造体20と第4構造体40とは、互いの高剛性階層22a(42a)と低剛性階層42b(22b)とが水平方向の前後に隣り合った状態になっている。すなわち、第2構造体20に係る高剛性階層22aと第4構造体40に係る低剛性階層42bとが隣り合う階層では、前者の第2構造体20に係る高剛性階層22aの方が、前後方向の水平剛性は高いが、他方、第2構造体20に係る低剛性階層22bと第4構造体40に係る高剛性階層42aとが隣り合う階層では、後者の第4構造体40に係る高剛性階層42aの方が、前後方向の水平剛性は高くなっている。よって、第2構造体20と第4構造体40との間の水平相対変位δy24(前後方向の水平相対変位δy24)の累増も抑制される。
【0038】
なお、この第2実施形態では、第1構造体10の高剛性階層12aと、第2構造体20の低剛性階層22bとが左右に隣り合う階層を複数有し、また、第2構造体20の高剛性階層22aと、第1構造体10の低剛性階層12bとが左右に隣り合う階層を複数有しているが、当該階層をそれぞれ少なくとも一つずつ有していれば、水平相対変位δx12の累増の抑制効果を得ることができるので、少なくとも一つずつ有していれば良い。
【0039】
同様に、この第2実施形態では、第3構造体30の高剛性階層32aと、第4構造体40の低剛性階層42bとが左右に隣り合う階層を複数有し、また、第4構造体40の高剛性階層42aと、第1構造体30の低剛性階層32bとが左右に隣り合う階層を複数有しているが、当該階層をそれぞれ少なくとも一つずつ有していれば、水平相対変位δx34の累増の抑制効果を得ることができるので、少なくとも一つずつ有していれば良い。
【0040】
同様に、この第2実施形態では、第1構造体10の高剛性階層12aと、第3構造体30の低剛性階層32bとが前後に隣り合う階層を複数有し、また、第3構造体30の高剛性階層32aと、第1構造体10の低剛性階層12bとが前後に隣り合う階層を複数有しているが、当該階層をそれぞれ少なくとも一つずつ有していれば、水平相対変位δy13の累増の抑制効果を得ることができるので、少なくとも一つずつ有していれば良い。
【0041】
同様に、この第2実施形態では、第2構造体20の高剛性階層22aと、第4構造体40の低剛性階層42bとが前後に隣り合う階層を複数有し、また、第4構造体40の高剛性階層42aと、第2構造体20の低剛性階層22bとが前後に隣り合う階層を複数有しているが、当該階層をそれぞれ少なくとも一つずつ有していれば、水平相対変位δy24の累増の抑制効果を得ることができるので、少なくとも一つずつ有していれば良い。
【0042】
図7は、第2実施形態の変形例の概略斜視図である。上述の第2実施形態との相違点は、この変形例の連結構造体1eの第3構造体30が鉛直方向に一階層分だけ位置をずらして配置されている点にある。そして、これにより、第3構造体30における高剛性階層32a及び低剛性階層32bの鉛直方向の位置関係は、第1構造体10及び第4構造体40のものと全く同一となっている。つまり、第1構造体10、第3構造体30、及び第4構造体40については、互いの低剛性階層12b,32b,42b同士が水平方向に隣り合っており、且つ、互いの高剛性階層12a,32a,42a同士が水平方向に隣り合っているが、これに対し、第2構造体20だけは、高剛性階層22a及び低剛性階層22bの位置関係が、第1、第3、第4構造体10,30,40に対して逆転しており、つまり、第2構造体20の低剛性階層22bは、第1、第3、第4構造体10,30,40の高剛性階層12a,32a,42aと水平方向に隣り合い、且つ第2構造体20の高剛性階層22aは、第1、第3、第4構造体10,30,40の低剛性階層12b,32b,42bと水平方向に隣り合っている。よって、この変形例にあっても、第2構造体20と第1構造体10との間の水平相対変位δx12(左右方向の水平相対変位δx12)の累増、及び、第2構造体20と第4構造体40との間の水平相対変位δy24(前後方向の水平相対変位δy24)の累増は確実に抑制される。
【0043】
===第3実施形態===
図8は、第3実施形態の概略斜視図である。前述の第2実施形態では、高剛性階層12a,22a,32a,42aは、水平方向の二方向、つまり左右方向及び前後方向の両方向について大きな水平剛性を有し、低剛性階層12b,22b,32b,42bは、左右方向及び前後方向の両方向に関して、高剛性階層12a,22a,32a,42aよりも小さな水平剛性を有しているものとして説明したが、この第3実施形態では、各階層の水平剛性に異方性を持たせている点で主に相違する。
例えば、図8に示すように、左右方向の水平剛性が高剛性に設定されている階層12c,22c,32c,42cでは、前後方向の水平剛性が低剛性(左右方向の水平剛性よりも低い剛性)に設定されており、また、左右方向の水平剛性が低剛性に設定されている階層12d,22d,32d,42dでは、前後方向の水平剛性が高剛性(左右方向の水平剛性よりも高い剛性)に設定されている。なお、以下の説明では、前者の階層12c,22c,32c,42cのことを、「左右高剛性/前後低剛性階層」と言い、後者の階層12d,22d,32d,42dのことを、「左右低剛性/前後高剛性階層」と言う。
【0044】
この第3実施形態の連結構造体1fも、第2実施形態と同様に四棟の構造体10,20,30,40を、第2実施形態と同様の平面配置で有している。すなわち、左右方向を並列方向として第1構造体10と第2構造体20とが並んで立設され、また、その前後方向の後方には、同じく左右方向を並列方向として第3構造体30と第4構造体40とが並んで立設され、これにより、第1構造体10と第3構造体30とは前後方向に隣り合い、また第2構造体20と第4構造体40とは前後方向に隣り合っている。そして、第1構造体10と第2構造体20とがダンパで連結され、第3構造体30と第4構造体40とがダンパで連結され、また、第1構造体10と第3構造体30とがダンパで連結され、第2構造体20と第4構造体40とがダンパで連結されている。なお、この図8中でも図の錯綜を防ぐべく、ダンパは不図示としている。
【0045】
第1〜第4構造体10,20,30,40は、それぞれ互いに概ね同構造である。すなわち、第1構造体10は、左右高剛性/前後低剛性階層12cと、左右低剛性/前後高剛性階層12dとが鉛直方向に交互に配置されて構成され、第2構造体20は、左右高剛性/前後低剛性階層22cと、左右低剛性/前後高剛性階層22dとが鉛直方向に交互に配置されて構成され、第3構造体30は、左右高剛性/前後低剛性階層32cと、左右低剛性/前後高剛性階層32dとが鉛直方向に交互に配置されて構成され、第4構造体40は、左右高剛性/前後低剛性階層42cと、左右低剛性/前後高剛性階層42dとが鉛直方向に交互に配置されて構成されている。
【0046】
但し、第1構造体10と第2構造体20とは、互いの左右高剛性/前後低剛性階層12c(22c)と左右低剛性/前後高剛性階層22d(12d)とが水平方向の左右に隣り合った状態になっている。そして、第1構造体10に係る左右高剛性/前後低剛性階層12cと第2構造体20に係る左右低剛性/前後高剛性階層22dとが隣り合う階層では、前者の第1構造体10に係る左右高剛性/前後低剛性階層12cの方が、左右方向の水平剛性は高いが、他方、第1構造体10に係る左右低剛性/前後高剛性階層12dと第2構造体20に係る左右高剛性/前後低剛性階層22cとが隣り合う階層では、後者の第2構造体20に係る左右高剛性/前後低剛性階層22cの方が、左右方向の水平剛性は高くなっている。よって、第1構造体10と第2構造体20との間の水平相対変位δx12(左右方向の水平相対変位δx12)の累増が抑制される。
【0047】
同様に、第3構造体30と第4構造体40とは、互いの左右高剛性/前後低剛性階層32c(42c)と、左右低剛性/前後高剛性階層42d(32d)とが水平方向の左右に隣り合った状態になっている。そして、第3構造体30に係る左右高剛性/前後低剛性階層32cと、第4構造体40に係る左右低剛性/前後高剛性階層42dとが隣り合う階層では、前者の第3構造体30に係る左右高剛性/前後低剛性階層32cの方が、左右方向の水平剛性は高いが、他方、第3構造体30に係る左右低剛性/前後高剛性階層32dと第4構造体40に係る左右高剛性/前後低剛性階層42cとが隣り合う階層では、後者の第4構造体40に係る左右高剛性/前後低剛性階層42cの方が、左右方向の水平剛性は高くなっている。よって、第3構造体30と第4構造体40との間の水平相対変位δx34(左右方向の水平相対変位δx34)の累増が抑制される。
【0048】
また、第1構造体10と第3構造体30とは、互いの左右低剛性/前後高剛性階層12d(32d)と左右高剛性/前後低剛性階層32c(12c)とが水平方向の前後に隣り合った状態になっている。そして、第1構造体10に係る左右低剛性/前後高剛性階層12dと、第3構造体30に係る左右高剛性/前後低剛性階層32cとが隣り合う階層では、前者の第1構造体10に係る左右低剛性/前後高剛性階層12dの方が、前後方向の水平剛性は高いが、他方、第1構造体10に係る左右高剛性/前後低剛性階層12cと、第3構造体30に係る左右低剛性/前後高剛性階層32dとが隣り合う階層では、後者の第3構造体30に係る左右低剛性/前後高剛性階層32dの方が、前後方向の水平剛性は高くなっている。よって、第1構造体10と第3構造体30との間の水平相対変位δy13(前後方向の水平相対変位δy13)の累増が抑制される。
【0049】
同様に、第2構造体20と第4構造体40とは、互いの左右低剛性/前後高剛性階層22d(42d)と左右高剛性/前後低剛性階層42c(22c)とが水平方向の前後に隣り合った状態になっている。そして、第2構造体20に係る左右低剛性/前後高剛性階層22dと、第4構造体40に係る左右高剛性/前後低剛性階層42cとが隣り合う階層では、前者の第2構造体20に係る左右低剛性/前後高剛性階層22dの方が、前後方向の水平剛性は高いが、他方、第2構造体20に係る左右高剛性/前後低剛性階層22cと左右低剛性/前後高剛性階層42dとが隣り合う階層では、後者の第4構造体40に係る左右低剛性/前後高剛性階層42dの方が、前後方向の水平剛性は高くなっている。よって、第2構造体20と第4構造体40との間の水平相対変位δy24(前後方向の水平相対変位δy24)の累増も抑制される。
【0050】
以上説明してきた第1〜第3実施形態の連結構造体1,1a,1b,1c,1d,1e,1fが具備する第1〜第4構造体10,20,30,40は、それぞれ、例えば鉄骨ラーメン構造の柱梁架構に対して、各階層の床部に相当する位置に床材が設置され、壁部に相当する位置にパネル材等が設置されたものを本体とする。
そして、各階層の水平剛性は、その階層の柱梁にブレースを対角方向に架け渡したり、耐震壁を設けたりすることにより、水平剛性の目標値へと調整される。すなわち、柱梁にブレースや耐震壁を設けない階層は、その水平剛性は概ね柱梁のみに基づくため低剛性階層となり、設けた階層は、柱梁の水平剛性に加えて更にブレースや耐震壁の水平剛性が付加されるので高剛性階層となる。なお、水平剛性を高める部材としては、上述のブレースや耐震壁以外に、例えば間柱や、雑壁、非構造壁等が挙げられる。また、低剛性階層にすべき階層の壁部にはパネル材を用い、高剛性階層にすべき階層の壁部には、パネル材よりも水平剛性の高いRC壁式構造等を用いることによって、低剛性階層と高剛性階層との作り分けを行っても良い。更には、低剛性階層を作り込む場合には、その階層の柱や梁の部材数を高剛性階層よりも少なくしたり、同部材の断面サイズを小さくすることにより、対象の階層を低剛性階層に設定しても良い。
【0051】
ちなみに、左右方向及び前後方向のどちらか一方の水平剛性を選択的に高めたい場合には、その水平剛性を高めたい方向に、ブレースの長手方向や耐震壁の壁幅方向を沿わせながらブレースや耐震壁を設ければ良い。例えば、対象の階層の水平剛性を、左右方向に高めたい場合には、ブレースの長手方向や耐震壁の壁幅方向を左右方向に沿わせて設置すれば良く、これにより、第3実施形態の左右高剛性/前後低剛性階層12c,22c,32c,42cが実現される。また、同対象の階層の水平剛性を、前後方向に高めたい場合には、ブレースの長手方向や耐震壁の壁幅方向を前後方向に沿わせて設置すれば良く、これにより、第3実施形態の左右低剛性/前後高剛性階層12d,22d,32d,42dが実現される。
【0052】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0053】
上述の実施形態では、各階層の上端部にダンパ80を設けるものとしていたが、ダンパ80は全ての階層に対して設ける必要はなく、制振効果を考慮して、特定の階層に対して選択的に設けるようにしても良い。また、目標とする制振効果によっては、所定の階層に対してはダンパ80に代えてばね部材等の弾性部材や、ほぼ弾性変形をしない高剛性部材を設け、これにより、水平方向に隣り合う階層同士を連結しても良い。ちなみに、ダンパ80は、前述の構成A又はBを満たす階層以上の高さに設けると良い。
【0054】
上述の実施形態では、ダンパ80の各例の具体的内容については述べていなかったが、これらは例えば以下のようなものである。
オイルダンパは、例えば油等の粘性流体が流れる管路と、管路の一部に設けられたオリフィス(絞り抵抗)とを本体とする。そして、上述の水平相対変位δによって、管路を流れる粘性流体がオリフィスを通過する際の抵抗力を減衰力として用いて振動エネルギーを吸収して連結構造体の揺れを減衰する。
摩擦ダンパは、例えば一定の圧接力で互いに圧接された摩擦板と滑り板とを本体とする。そして、上述の水平相対変位δによって摩擦板と滑り板とが摺動する際の仕事量(摺動による摩擦力×摺動量)に基づいて振動エネルギーを吸収して連結構造体の揺れを減衰する。
鋼材ダンパは、例えば変形能力が高い鋼種の鋼板や鋼棒等の鋼部材を本体とする。そして、上述の水平相対変位δにより鋼部材が水平方向に塑性変形する際の仕事量(=鋼部材の降伏力×塑性変形量)に基づいて振動エネルギーを吸収して連結構造体の揺れを減衰する。
粘性・粘弾性ダンパは、粘性材料又は粘弾性材料を本体とする。そして、上述の水平相対変位δによって粘性材料又は粘弾性材料が剪断変形する際の剪断抵抗力を減衰力として用いて振動エネルギーを吸収して連結構造体の揺れを減衰する。
【符号の説明】
【0055】
1 連結構造体、1a 連結構造体、1b 連結構造体、1c 連結構造体、
1d 連結構造体、1e 連結構造体、1f 連結構造体、
10 構造体、12 階層、12a 高剛性階層、12b 低剛性階層、
12c 左右高剛性/前後低剛性階層、12d 左右低剛性/前後高剛性階層、
20 構造体、22 階層、22a 高剛性階層、22b 低剛性階層、
22c 左右高剛性/前後低剛性階層、22d 左右低剛性/前後高剛性階層、
30 構造体、32a 高剛性階層、32b 低剛性階層、
32c 左右高剛性/前後低剛性階層、32d 左右低剛性/前後高剛性階層、
40 構造体、42a 高剛性階層、42b 低剛性階層、
42c 左右高剛性/前後低剛性階層、42d 左右低剛性/前後高剛性階層、
80 ダンパ(エネルギー吸収部材)、
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に複数の階層を有する第1構造体と、前記第1構造体の側方に並んで立設された鉛直方向に複数の階層を有する第2構造体とを有し、前記第1構造体と前記第2構造体とが、水平方向の振動のエネルギーを吸収するエネルギー吸収部材によって連結されてなる連結構造体であって、
水平方向に隣り合う階層同士において、前記第1構造体に属する階層の水平剛性の方が、前記第2構造体に属する階層の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向に隣り合う階層同士において、前記第2構造体に属する階層の水平剛性の方が、前記第1構造体に属する階層の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有することを特徴とする連結構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の連結構造体であって、
前記第1構造体に属する複数の階層のなかに、鉛直方向の上下に隣り合うどちらの階層よりも水平剛性が低い第1低剛性階層を有し、
前記第2構造体の階層のうちで、前記第1低剛性階層の水平方向の隣に位置する階層の水平剛性の方が、前記第1低剛性階層の水平剛性よりも高くなっており、
前記第2構造体に属する複数の階層のなかに、鉛直方向の上下に隣り合うどちらの階層よりも水平剛性が低い第2低剛性階層を有し、
前記第1構造体の階層のうちで、前記第2低剛性階層の水平方向の隣に位置する階層の水平剛性の方が、前記第2低剛性階層の水平剛性よりも高くなっていることを特徴とする連結構造体。
【請求項3】
請求項2に記載の連結構造体であって、
前記第1構造体における前記第1低剛性階層以外の階層を第1高剛性階層とするとともに、前記第2構造体における前記第2低剛性階層以外の階層を第2高剛性階層とした場合に、
前記第1低剛性階層と前記第1高剛性階層とは、鉛直方向に交互に配置されており、
前記第2低剛性階層と前記第2高剛性階層とは、鉛直方向に交互に配置されていることを特徴とする連結構造体。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の連結構造体であって、
水平方向のうちで前記第1構造体と前記第2構造体とが並ぶ方向を左右方向とし、水平方向のうちで前記左右方向と直交する方向を前後方向とした場合に、前記水平剛性は、左右方向の水平剛性のことであり、
前記第1構造体の後方に第3構造体が立設し、前記第2構造体の後方に第4構造体が立設し、
前記第1構造体と前記第3構造体とは、前記エネルギー吸収部材によって連結されており、
前記第2構造体と前記第4構造体とは、前記エネルギー吸収部材によって連結されており、
前記第3構造体と前記第4構造体とは、前記エネルギー吸収部材によって連結されており、
水平方向の左右に隣り合う階層同士において、前記第3構造体に属する階層の左右方向の水平剛性の方が、前記第4構造体に属する階層の左右方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向の左右に隣り合う階層同士において、前記第4構造体に属する階層の左右方向の水平剛性の方が、前記第3構造体に属する階層の左右方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向の前後に隣り合う階層同士において、前記第1構造体に属する階層の前後方向の水平剛性の方が、前記第3構造体に属する階層の前後方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向の前後に隣り合う階層同士において、前記第3構造体に属する階層の前後方向の水平剛性の方が、前記第1構造体に属する階層の前後方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向の前後に隣り合う階層同士において、前記第2構造体に属する階層の前後方向の水平剛性の方が、前記第4構造体に属する階層の前後方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有し、
水平方向の前後に隣り合う階層同士において、前記第4構造体に属する階層の前後方向の水平剛性の方が、前記第2構造体に属する階層の前後方向の水平剛性よりも高い階層を少なくとも一つ有することを特徴とする連結構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−177249(P2012−177249A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40258(P2011−40258)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】