説明

連結機構及び建設機械

【課題】著しく容易に遊動隙間を所定値に設定可能にすること。
【解決手段】連結機構40は、ブレーキ操作ケーブル36に連結されたクレビス42と、クレビス42の長穴44に沿って移動可能に挿入されたピン46を介してクレビス42に連結されたリンクレバー48とを備えている。リンクレバー48の一部がクレビス42に接触させられた状態でブレーキ操作ケーブル36とリンクレバー48との組付位置がセットされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作力伝達部材と被操作部材との連結機構、更に詳しくは、操作力伝達部材と被操作部材との間に遊動隙間が設けられた連結機構及び前記連結機構を備えた建設機械(例えばホイールローダ)に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、例えばホイールローダであって、原動機の回転数を制御するアクセルペダルと、走行駆動装置を制動するブレーキペダルと、変速機に内蔵されたクラッチをオフ(遮断)するとともに走行駆動装置を制動するインチングペダルとが配置されているホイールローダは、例えば、特許文献1に開示されている。このホイールローダにおいて、トラックなどへの荷物の積み込み作業を行なう際、車両を停止した状態でフロント作業装置を駆動する操作が行なわれる。そのため、左足でインチングペダルを踏込んでクラッチをオフするとともにブレーキを作動させる一方、右足でアクセルペダルを踏込んでエンジン回転数を増速させて、フロント作業装置の速度を早くして作業効率の向上を図ることができる。また、積み込み作業時のトラックへの接近は、インチングペダルの踏込みの解除及び踏込みを繰り返すことにより、安全に行なうことができる。
【0003】
前記ホイールローダにおいて、インチングペダルを踏込むと減圧弁からその踏込み量に比例する油圧が発生して走行ブレーキが作動するとともに、インチングペダルが所定量以上踏込まれると、クラッチをオフさせることができるリミットスイッチがオンする。そして、インチングペダルの踏込み量でリミットスイッチがオンするように調節すると、ブレーキが効き始める前にクラッチがオフするような(換言すれば、クラッチがオフした後に、ブレーキが効き始めるような)、クラッチとブレーキの作動タイミングも、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開平06−072188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、クラッチとブレーキの上記作動タイミングを電気的に遂行する手段が開示されているが、機械的に行なうことも考えられる。例えば、インチングペダルとクラッチ作動手段及び走行ブレーキ作動手段との間をそれぞれケーブルで連結し、インチングペダルを踏み込んだとき、クラッチがオフされた後に走行ブレーキが作動するような構成が考えられる。更に具体的には、インチングペダルとクラッチ作動手段との間を、ケーブルで遊動箇所を設けることなく直結し、インチングペダルの踏み込みに応じてクラッチ作動手段を制御できるよう構成する。他方、インチングペダルと走行ブレーキ作動手段との間を、ケーブルで遊動箇所を設けて連結する。このような構成により、インチングペダルの最初の踏み込みでクラッチをオフし、インチングペダルの更なる踏み込みで初めて走行ブレーキ作動手段を作動させて走行ブレーキを作動させることができる。
【0005】
インチングペダルと走行ブレーキ作動手段との間を、ケーブルで遊動箇所を設けて連結する連結機構の典型例としては、次のような構成が考えられる。すなわち、一端がインチングペダルに連結されたケーブルの他端に長穴を有するクレビスを連結する。そして軸まわりに回動可能に支持されたリンクレバーの一端部を、クレビスの長穴に沿って移動可能に挿入されたピンを介してクレビスに連結する。長穴とピンとの間に所定の遊動隙間を設ける。更に、リンクレバーの他端部と走行ブレーキ作動手段(例えばブレーキのマスターシリンダのピストンロッド)とをケーブルで連結する。
【0006】
インチングペダルの最初の踏み込みで、ピンに対しクレビスが前記遊動隙間だけ遊動するので、クラッチはオフ(遮断)作動するが、走行ブレーキは非制動の状態に維持される。インチングペダルの更なる踏み込みで、クラッチはオフ作動の状態に維持されるが、クレビスがピンを移動させるので、リンクレバーが回動させられて走行ブレーキ作動手段が制動作動され、走行ブレーキが制動作動させられる。
【0007】
ブレーキが効きはじめる前にクラッチがオフするような、上記したクラッチとブレーキの作動タイミングを確実に遂行するためには、クレビスの長穴とピンとの間の遊動隙間を所定値に調整することが重要である。遊動隙間が所定値よりも短いと、クラッチが完全にオフする前にブレーキが作動しはじめるので、いわゆるブレーキの引きずりを起こし、ブレーキシューの早期摩耗の原因となる。他方、遊動隙間が所定値よりも長いと、クラッチが完全にオフしたのにもかかわらず、ブレーキが作動しないので、ブレーキの効きが遅くなる。
【0008】
しかしながら、組立ラインにおいて、上記遊動隙間を所定値に調整する作業は困難であり、相当多くの時間を要する。そして、インチングペダルを建設機械に取り付けた後にはじめて上記遊動隙間の調整が可能となるので、組立作業性もよくない。
【0009】
本発明の目的は、著しく容易かつ確実に遊動隙間を所定値に設定することを可能にし、その結果、遊動隙間を所定値に調整する作業を不要とし、組立作業性の向上及び作業時間の短縮を可能にする、新規な連結機構及びこの連結機構を備えた建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、
操作力伝達部材に連結されたクレビスと、クレビスの長穴に沿って移動可能に挿入されたピンを介してクレビスに連結された被操作部材とを備え、被操作部材の一部がクレビスに接触させられた状態で操作力伝達部材と被操作部材との組付位置がセットされる、
ことを特徴とする連結機構、が提供される。
クレビスは、操作力伝達部材に連結された基部と、基部から延び出しかつそれぞれ前記長穴が形成された一対の側壁部とを備え、被操作部材の前記一部は、クレビスの側壁部間に挿入されて前記ピンを介してクレビスに連結され、被操作部材の前記一部の、クレビスの基部に面した領域が基部に接触させられた状態で前記組付位置がセットされて、ピンと、長穴における基部に遠い側の一端面との間に形成される前記遊動隙間が所定値に設定される、ことが好ましい。
被操作部材の長穴の各々は、側壁部の各々の基部からの延び出し方向に長く形成され、操作力伝達部材と被操作部材とが前記組付位置にセットされた状態において、ピンと長穴の、基部に近い側の他端面との間にも隙間が形成される、ことが好ましい。
クレビスの一対の側壁部の、相互に対向する内側面は平行であり、基部の、側壁部の各々が延び出す側の内側面は、側壁部の各々の内側面に直交し、被操作部材の少なくとも前記一部は一定の厚さを有する板形状をなし、被操作部材の前記一部における前記領域は、前記一部の周面における一部領域であり、被操作部材の前記一部領域が基部の前記内側面に接触させられる、ことが好ましい。
被操作部材は、前記組付位置から変位可能に支持されかつ、ピンと相対回動可能に連結される、ことが好ましい。
被操作部材は、軸まわりに回動可能に支持されかつ軸の半径方向外方に延び出した位置に前記一部を備えたリンクレバーからなる、ことが好ましい。
本発明によれば、
原動機により駆動されかつブレーキを備えた走行駆動装置と、原動機から走行駆動装置に伝達される駆動力を接続及び遮断可能な駆動力伝達制御手段と、走行駆動装置のブレーキを作動及び作動解除可能なブレーキ作動制御手段と、インチングペダルとを備え、インチングペダルと駆動力伝達制御手段との間は、駆動力伝達制御ケーブルにより接続され、インチングペダルとブレーキ作動制御手段との間は、前記操作力伝達部材及び請求項1〜6のいずれか1項に記載の連結機構を介して連結される、
ことを特徴とする建設機械、が提供される。
前記操作力伝達部材はブレーキ操作ケーブルからなり、ブレーキ操作ケーブルの一端はインチングペダルに連結されかつ他端は連結機構のクレビスに連結され、連結機構の被操作部材はブレーキ作動制御手段に連結され、インチングペダルは、ホームポジションから所定の方向に変位しかつ変位した位置からホームポジションまで逆の方向に変位可能であり、
インチングペダルがホームポジションから所定の方向に変位させられると、駆動力伝達制御ケーブルが変位させられることにより、駆動力伝達制御手段が、原動機から走行駆動装置への駆動力の伝達が遮断されるよう制御されかつ、ブレーキ操作ケーブルと共に連結機構のクレビスが変位させられて前記遊動隙間だけ遊動させられ、
インチングペダルが所定の方向へ更に変位させられると、駆動力伝達制御手段による走行駆動装置への前記駆動力の伝達の遮断が維持されかつ、ブレーキ操作ケーブルと共に連結機構のクレビスが更に変位させられることにより、ブレーキ作動制御手段が初めて作動させられて走行駆動装置のブレーキが初めて作動させられる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る連結機構においては、被操作部材の一部がクレビスに接触させられた状態で操作力伝達部材と被操作部材との組付位置がセットされ、ピンと長穴との間に形成される遊動隙間が所定値に設定されるので、著しく容易かつ確実に遊動隙間を所定値に設定することを可能にする。その結果、遊動隙間を所定値に調整する作業を不要とし、組立作業性の向上及び作業時間の短縮を可能にする。本発明係る連結機構を建設機械に適用した場合には、原動機から走行駆動装置への駆動力の遮断とブレーキの作動タイミングを、容易かつ確実に所要のとおりに設定することができる。その結果、ブレーキシューの早期摩耗、ブレーキの効きの低下、などの不具合を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された連結機構及び前記連結機構を備えた建設機械の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
先ず、図7を参照して、本発明に従って構成された連結機構を備えた建設機械であるホイールローダについて説明する。ホイールローダ2は、前フレーム体4と後フレーム体6とを備えている。前フレーム体4の後端部と後フレーム体6の前端部とは、図示しない垂直軸回りを相対回動できるよう連結されている。前フレーム体4には、前車輪8及びバケットなどの作業装置10が装着されている。後フレーム体6には、後車輪12、キャブ14及びエンジンルーム16などが装着されている。
【0014】
後フレーム体6には、原動機であるディーゼルエンジン、ディーゼルエンジンにより駆動される可変容量形の油圧ポンプ、油圧ポンプから吐出される作動油により駆動される可変容量形の走行油圧モータM(図1において2点鎖線でブロックとして示されている)、走行油圧モータMにより駆動される走行駆動装置、原動機から油圧ポンプ及び走行油圧モータMを介して走行駆動装置に伝達される駆動力を接続及び遮断可能な駆動力伝達制御手段などが設けられている(走行油圧モータM以外は不図示)。
【0015】
走行駆動装置は、走行油圧モータMの出力軸に連結されたディファレンシャル装置、ディファレンシャル装置に連結された駆動軸、駆動軸に連結された前記後車輪12及び後車輪12を制動するブレーキDB(図5においてその一部が2点鎖線で示されている)などから構成される(後車輪12及びブレーキDB以外は不図示)。ブレーキDBはフローティングディスクブレーキからなる。ブレーキDBは、ブレーキ作動制御手段、実施形態においてはマスターシリンダMC(図5において2点鎖線で概略的に図示されている)により作動及び作動解除される。マスターシリンダMCは、ブレーキDBのフローティングキャリパ内のブレーキ作動シリンダに接続されている。駆動力伝達制御手段は、走行油圧モータMの容量を制御する斜板の傾転角を制御することができる容量制御機構のアクチュエータから構成される(いずれも図示せず)。これらの構成は周知の構成を利用することでよいので、更なる説明は省略する。
【0016】
図1〜図3を参照して、上記ホイールローダ2のキャブ14内には、インチングペダル20が備えられている。インチングペダル20は、キャブ14内に設けられたブラケット22に回動可能に支持された軸24にアームを介して一体に装着されている。軸24の一端部には、位置決め用のレバー26が半径方向外方に延び出すように固着され、レバー26とブラケット22との間には引張コイルばね28が設けられ、レバー26を図1において時計方向に回動するよう付勢している。ブラケット22にはストッパ30が取り付けられ、レバー26は、引張コイルばね28によりストッパ30に圧接させられる。インチングペダル20は、オペレータにより踏込まれないかぎり、ホームポジションに位置付けられている。
【0017】
インチングペダル20の軸24にはまた、作動レバー32が固着されている。作動レバー32は軸24から半径方向外方に延び出し、この作動レバー32の先端部には、駆動力伝達制御ケーブル34及び操作力伝達部材であるブレーキ操作ケーブル36の各々の一端が連結ボルト38を介して相対回動可能に連結されている。連結ボルト38の軸線は、軸24の軸線と平行である。駆動力伝達制御ケーブル34の他端は、走行油圧モータMの図示しない容量制御機構のアクチュエータに連結されている。ブレーキ操作ケーブル36の他端は、本発明に係る連結機構40を介して、マスターシリンダMCに連結される。
【0018】
図4〜図6を参照して、本発明に係る連結機構40は、操作力伝達部材、実施形態においてはブレーキ操作ケーブル36に連結されたクレビス42と、クレビス42の長穴44に沿って移動可能に挿入されたピン46を介してクレビス42に連結された被操作部材、実施形態実においてはリンクレバー48とを備えている。そしてリンクレバー48の一部がクレビス42に接触させられた状態でブレーキ操作ケーブル36とリンクレバー48との組付位置がセットされる。前記組付位置がセットされた状態で、ピン46と長穴44の各々との間に形成される遊動隙間Dが所定値に設定される。
【0019】
更に具体的に説明する。クレビス42は、ブレーキ操作ケーブル36に連結された基部50と、基部50から延び出した一対の側壁部52とを備えている。短いロッド形状をなす基部50の中心部には雌ねじ穴が形成されている。この雌ねじ穴は、基部50の軸方向の一端(図5において上端)及び軸方向の他端部(図5において下端部)にそれぞれ開口している。基部50の雌ねじ穴には、ブレーキ操作ケーブル36の、雄ねじが形成された他端部がねじ係合される。ブレーキ操作ケーブル36の雄ねじにはロックナット54がねじ係合されかつ、クレビス42の基部50の一端面に締め付けられることにより、ブレーキ操作ケーブル36とクレビス42との連結が確実になされる。
【0020】
それぞれ長穴44が形成された一対の側壁部52は、基部50の他端部から相互に間隔をおいて平行に延び出すよう基部50と一体に形成されている。相互に実質的に同じ形状及び大きさを有する一対の側壁部52は、一定の厚さ及び幅を有する縦長矩形の板状をなし、一対の側壁部52の、相互に対向する内側面は平行である。側壁部52の各々は、基部50の軸線を等間隔に挟んで軸線に平行に延在する。基部50の軸線は、側壁部52の各々の幅方向中心位置を通る。基部50の、側壁部52の各々が延び出す側の内側面50Aは、側壁部52の各々の内側面に直交するよう形成されている。長穴44の各々は、側壁部52の各々の基部52からの延び出し方向に長く形成されている。長穴44の各々は、一定の幅をもって直線状に延び、基部50に遠い側の一端面44Aと、基部50に近い側の他端面44Bとは、それぞれ半円形状に形成されている。長穴44の各々の幅は、ピン46の直径よりもわずかに大きく形成されている。長穴44の各々の幅方向の中心を通る仮想中心線は、基部50の軸線に対し重なる位置にある。
【0021】
リンクレバー48は、後フレーム体6(図7)に取り付けられた支持ブラケット56に軸58を介して回動可能に支持される。すなわち、リンクレバー48には軸受部49が一体に取り付けられ、リンクレバー48は、軸受部49を介して軸58に回動可能に支持される。リンクレバー48の軸受部49の外周部における一部領域から半径方向外方に延び出した位置に存在する前記一部(先端部)は、クレビス42の側壁部52の各々間に相対移動可能に挿入されて前記ピン46を介してクレビス42に連結される。リンクレバー48の前記一部の、クレビス42の基部50に面した領域48Aが基部50に接触させられた状態で前記組付位置がセットされる。ピン46と、長穴44の各々における基部42に遠い側の一端面44Aとの間に形成される前記遊動隙間Dが所定値に設定される。ブレーキ操作ケーブル36とリンクレバー48との組付位置がセットされた状態において、ピン46と長穴44の各々の、基部50に近い側の他端面44Bとの間にも隙間が形成される。
【0022】
リンクレバー48の少なくとも前記一部(実施形態においては全部)は、一定の厚さを有する板形状をなしている。この厚さは、クレビス42の側壁部52の各々の内側面間の隙間内に、内側面に沿って相対移動可能な程度に設定される。そして、リンクレバー48の前記一部における前記領域48Aは、前記一部の周面における一部領域48Aであり、リンクレバー48の前記一部領域48Aが基部50の内側面50Aに接触させられる。リンクレバー48の前記一部領域48Aは、軸受部49の外周部における一部領域から半径方向外方に延び出した先端部から延び出し方向に直交する側方に若干突出した部分に形成されている。前記一部領域48Aは、前記組付位置がセットされた状態において、基部50の内側面50Aに密着するような直線形状に形成されているが、曲面であってもよい。
【0023】
リンクレバー48の前記一部にはピン46が相対回動可能に挿入される貫通穴が形成されている。ピン46は、本体部が円形断面を有するとともに本体部の一端に頭部が形成され、先端部に割ピン挿入用の貫通穴が形成されている。頭部の直径は、側壁部52の各々における長穴44の幅よりも大きい。リンクレバー48の前記一部(先端部)が、クレビス42の側壁部52の各々間に粗体移動可能に挿入された状態で、ピン46が、側壁部52の各々の長穴44及びリンクレバー48の前記一部に形成された貫通穴に相対回動可能に挿入される。ピン46の頭部は片方の側壁部52の外側に位置付けられ、ピン46の先端部は他方の側壁部52の外側に位置付けられる。ピン46の先端部にはワッシャ60が嵌合され、その外側の貫通穴に割りピン62が挿入され、ピン46の抜けが防止される。
【0024】
リンクレバー48には、軸受部49の外周部における他の一部領域から半径方向外方に延び出した突出部が設けられ、この突出部に連結穴64が形成されている。リンクレバー48の連結穴64とマスターシリンダMCのピストンロッドPRの一端とは、図示しない連結ピンを介して連結されている。
【0025】
図1、図2、図5及び図6を参照して、インチングペダル20は、図1に示されるホームポジションから所定の方向(図1において反時計方向)に引張コイルばね28のばね力に抗して変位し(軸24を中心として回動し)かつ、変位した位置(不図示)からホームポジションまで逆の方向に引張コイルばね28のばね力により変位(復帰)可能である。
【0026】
オペレータによる踏み込みにより、インチングペダル20がホームポジションから所定の方向に変位させられると、駆動力伝達制御ケーブル34及びブレーキ操作ケーブル36が作動レバー32の回動により同時に変位させられる。駆動力伝達制御ケーブル34の変位により、走行油圧モータMの容量を制御する斜板の傾転角を制御することができる容量制御機構のアクチュエータ(不図示)が、ディーゼルエンジンから走行駆動装置への駆動力の伝達が遮断されるよう制御される。
【0027】
同時にブレーキ操作ケーブル36の変位により連結機構40のクレビス42が変位させられるが、最初に前記遊動隙間Dだけ遊動させられる。すなわち、クレビス42の長穴44の各々における、基部50に遠い側の一端面44Aがピン46に対し、前記遊動隙間Dだけ遊動させられる(一端面44Aがピン46の外周面に接触する位置まで遊動させられる。また、クレビス42の基部50の内側面50Aは、接触させられていた、リンクレバー48の前記一部領域48Aから離隔する)。リンクレバー48は回動しないので、ブレーキDBも作動しない(ブレーキDBは非制動)。
【0028】
インチングペダル20が所定の方向へ更に変位させられると、駆動力伝達制御ケーブル34が更に変位されるが、前記アクチュエータの前記制御は継続され、走行駆動装置への前記駆動力の伝達の遮断が維持される。同時にブレーキ操作ケーブル36も更に変位されるが、この変位により、連結機構40のクレビス42が更に変位させられる。その結果、クレビス42の長穴44の各々における、基部50に遠い側の一端面44Aがピン46をブレーキ操作ケーブル36の変位方向(図5において上方)に強制移動させることにより、リンクレバー48が軸58まわりに図5において時計方向にはじめて回動させられる。マスターシリンダMCのピストンロッドPRが図5において左方に押し込まれ、圧油がブレーキDBのフローティングキャリパ内に送り込まれて、ブレーキDBが初めて作動させられる(走行駆動装置が初めて制動させられる)。
【0029】
オペレータによる踏み込みが解除されると、インチングペダル20が逆の方向に変位させられて、ホームポジションに復帰させられる。駆動力伝達制御ケーブル34及びブレーキ操作ケーブル36が作動レバー32の逆方向への回動により同時に元の位置に復帰させられる。駆動力伝達制御ケーブル34の逆方向への変位により、アクチュエータ(不図示)の前記制御が解除され、走行駆動装置への前記駆動力の伝達が接続される。
【0030】
他方、ブレーキ操作ケーブル36の逆方向への変位により、リンクレバー48が軸58まわりに図5において反時計方向に回動させられてホームポジション(図5)に復帰させられるので、マスターシリンダMCのピストンロッドPRの、図5において左方への押し込みが解除され、ブレーキDBの作動が解除される(走行駆動装置の制動が解除される)。
【0031】
本発明に係る連結機構40は、操作力伝達部材であるブレーキ操作ケーブル36に連結されたクレビス42と、クレビス42の長穴44に沿って移動可能に挿入されたピン46を介してクレビス42に連結された被操作部材であるリンクレバー48とを備えている。そして、リンクレバー48の一部48Aがクレビス42に接触させられた状態でブレーキ操作ケーブル36とリンクレバー48との組付位置がセットされる。前記組付位置がセットされた状態で、ピン46と長穴44との間に形成される遊動隙間Dが所定値に設定される。したがって、リンクレバー48を所定のホームポジションに位置付け、クレビス42を、クレビス42の長穴44に沿って移動可能に挿入されたピン46を介してリンクレバー48に連結するとともに、リンクレバー48の一部48Aをクレビス42に接触させた状態で、ブレーキ操作ケーブル36の長さ調整などを行なってブレーキ操作ケーブル36の取り付け位置をセットすることにより、ブレーキ操作ケーブル36とリンクレバー48との組付位置がセットされる。このように、リンクレバー48の一部48Aをクレビス42に接触させた状態で、自動的に上記遊動隙間Dが設定されるので、著しく容易かつ確実に遊動隙間Dを所定値に設定することを可能にする。その結果、遊動隙間Dを所定値に調整する作業を不要とし、組立作業性の向上及び作業時間の短縮を可能にする。
【0032】
本発明係る連結機構40をホイールローダ2などの建設機械に適用した場合には、原動機から走行駆動装置への駆動力の遮断とブレーキの作動タイミングを、容易かつ確実に所要のとおりに設定することができる。その結果、ブレーキシューの早期摩耗、ブレーキの効きの低下、などの不具合を防止することができる。
【0033】
上記連結機構40の実施形態において、被操作部材は回動可能なリンクレバー48から構成されているが、前記組付位置から変位可能に支持された被操作部材であれば本発明は成立する(例えば、被操作部材が、クレビス42の往復移動方向に変位可能に支持された被操作部材からなる実施形態もある)。また、上記連結機構40は、ホイールローダ2における操作力伝達部材であるブレーキ操作ケーブル36と、ブレーキ作動制御手段であるマスターシリンダMCを作動制御する被操作部材であるリンクレバー48との連結機構として適用されるが、これに限定されるものではない。上記連結機構40は、操作力伝達部材と被操作部材との間に上記した如き作動遅れのタイミングを必要とする連結機構であれば、どのような連結機構にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図8に示すホイールローダに備えられたインチングペダルと、前記ペダルに連結された駆動力伝達制御ケーブル及び本発明に係る連結機構に連結されたブレーキ操作ケーブルとを示す側面図である。
【図2】図1に示す構成を、図1において右方から見た正面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面拡大図である。
【図4】図3のB−B矢視断面拡大図であって、本発明に係る連結機構を構成するクレビスと被操作部材であるリンクレバーとの接続部を示す図である。
【図5】図4に示す連結機構において、クレビスの、リンクレバーとの接続部を断面にして示す拡大図である。
【図6】図5のC−C矢視断面図である。
【図7】本発明に係る連結機構を備えたホイールローダの実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0035】
2: ホイールローダ
36:ブレーキ操作ケーブル(操作力伝達部材)
40:連結機構
42:クレビス
44:長穴
46:ピン
48:リンクレバー(被操作部材)
D:遊動隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作力伝達部材に連結されたクレビスと、クレビスの長穴に沿って移動可能に挿入されたピンを介してクレビスに連結された被操作部材とを備え、被操作部材の一部がクレビスに接触させられた状態で操作力伝達部材と被操作部材との組付位置がセットされる、
ことを特徴とする連結機構。
【請求項2】
クレビスは、操作力伝達部材に連結された基部と、基部から延び出しかつそれぞれ前記長穴が形成された一対の側壁部とを備え、被操作部材の前記一部は、クレビスの側壁部間に挿入されて前記ピンを介してクレビスに連結され、被操作部材の前記一部の、クレビスの基部に面した領域が基部に接触させられた状態で前記組付位置がセットされて、ピンと、長穴における基部に遠い側の一端面との間に形成される前記遊動隙間が所定値に設定される、請求項1記載の連結機構。
【請求項3】
被操作部材の長穴の各々は、側壁部の各々の基部からの延び出し方向に長く形成され、操作力伝達部材と被操作部材とが前記組付位置にセットされた状態において、ピンと長穴の、基部に近い側の他端面との間にも隙間が形成される、請求項2記載の連結機構。
【請求項4】
クレビスの一対の側壁部の、相互に対向する内側面は平行であり、基部の、側壁部の各々が延び出す側の内側面は、側壁部の各々の内側面に直交し、被操作部材の少なくとも前記一部は一定の厚さを有する板形状をなし、被操作部材の前記一部における前記領域は、前記一部の周面における一部領域であり、被操作部材の前記一部領域が基部の前記内側面に接触させられる、請求項2又は請求項3記載の連結機構。
【請求項5】
被操作部材は、前記組付位置から変位可能に支持されかつ、ピンと相対回動可能に連結される、請求項2〜4のいずれか1項に記載の連結機構。
【請求項6】
被操作部材は、軸まわりに回動可能に支持されかつ軸の半径方向外方に延び出した位置に前記一部を備えたリンクレバーからなる、請求項5記載の連結機構。
【請求項7】
原動機により駆動されかつブレーキを備えた走行駆動装置と、原動機から走行駆動装置に伝達される駆動力を接続及び遮断可能な駆動力伝達制御手段と、走行駆動装置のブレーキを作動及び作動解除可能なブレーキ作動制御手段と、インチングペダルとを備え、インチングペダルと駆動力伝達制御手段との間は、駆動力伝達制御ケーブルにより接続され、インチングペダルとブレーキ作動制御手段との間は、前記操作力伝達部材及び請求項1〜6のいずれか1項に記載の連結機構を介して連結される、
ことを特徴とする建設機械。
【請求項8】
前記操作力伝達部材はブレーキ操作ケーブルからなり、ブレーキ操作ケーブルの一端はインチングペダルに連結されかつ他端は連結機構のクレビスに連結され、連結機構の被操作部材はブレーキ作動制御手段に連結され、インチングペダルは、ホームポジションから所定の方向に変位しかつ変位した位置からホームポジションまで逆の方向に変位可能であり、
インチングペダルがホームポジションから所定の方向に変位させられると、駆動力伝達制御ケーブルが変位させられることにより、駆動力伝達制御手段が、原動機から走行駆動装置への駆動力の伝達が遮断されるよう制御されかつ、ブレーキ操作ケーブルと共に連結機構のクレビスが変位させられて前記遊動隙間だけ遊動させられ、
インチングペダルが所定の方向へ更に変位させられると、駆動力伝達制御手段による走行駆動装置への前記駆動力の伝達の遮断が維持されかつ、ブレーキ操作ケーブルと共に連結機構のクレビスが更に変位させられることにより、ブレーキ作動制御手段が初めて作動させられて走行駆動装置のブレーキが初めて作動させられる、請求項7記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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