説明

連結鉢体と、連結鉢体の保持具と、保持具の容器及び植物栽培方法

【課題】容易に製作できるようにしながら、育苗時には複数の鉢体を互いに近接させて効率良く設置でき、定植時には苗の種類に応じた定植ピッチで確実に定植できるようにする。
【解決手段】略同一寸法の筒状に形成してある育苗用鉢体1の複数が、筒軸芯を互いに略平行に沿わせて、かつ、筒軸芯に略直交する方向に間隔を隔てて一連に連結され、各鉢体において育苗された苗がその鉢体と共に連結状態で定植可能に構成されている連結鉢体であって、互いに隣り合う鉢体どうしが、作物の種類に応じた定植ピッチと略同じ配設ピッチDで連結され、二つの同一連結鉢体Aを互いに略平行に隣り合わせて並置した状態で、一方の連結鉢体において互いに隣り合う鉢体どうしの間に、他方の連結鉢体における鉢体の側壁部を嵌合可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略同一寸法の筒状に形成してある育苗用鉢体の複数が、筒軸芯を互いに略平行に沿わせて、かつ、筒軸芯に略直交する方向に間隔を隔てて一連に連結され、各鉢体において育苗された苗がその鉢体と共に連結状態で定植可能に構成されている連結鉢体と、連結鉢体の保持具と、保持具の容器及び植物栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
花き,野菜等の苗生産では、セル成型トレイ育苗が一般化している。通常、72〜406穴の連結したセルからなる容器に挿し芽あるいは播種し、一定期間育苗後、各セル容器から苗を1本ずつ抜き取り、本圃栽培床に定植される。しかし、前記セル成型トレイから苗を抜き取り、定植するためには、多くの労力が必要である。特に、ビニールやガラスハウス等、施設内で栽培されるキク等の切り花や葉菜類等の定植労力は、周年して栽培される上に、栽植密度が高いために、多大なものとなる。
一方、定植労力を削減しようという発想から、連結鉢体を用いる方法が用いられる場合がある。
上記連結鉢体は、鉢体に充填した育苗用土に花き,野菜等の植物を挿し芽あるいは播種して所定期間育苗した後、育苗した苗を鉢体と共に本圃栽培床に定植するにあたって、能率良く定植できるように、鉢体の複数を間隔を隔てて一連に連結してある。
特許文献1では、紙または紙のような薄膜を展開することにより形成される四角または六角筒状の個別鉢体を接続した連続鉢体による育苗移植用連続集合鉢が開示されている。
この連続集合鉢は、育苗時には複数の鉢体を互いに近接させて限られた広さの設置場所に効率良く設置でき、定植時には作物の種類に応じた定植ピッチで定植できるように、展開可能に折り畳んである連結部材で鉢体どうしを連結してある。一定期間育苗すると、水溶性接着剤が分離することから、定植時には、連結部材を展開することにより、苗の種類に応じた定植ピッチで定植できるように構成してある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−205687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、連結部材の折り畳み構造が複雑で、製作に手間が掛かるとともに、連結部材を円滑に展開できない場合は、苗の種類に応じた定植ピッチで定植できないおそれもある。
また、この連続集合鉢によるものでは、移植機1条により、苗を引き出し、定植することから、株間は調整できても、条間は移植機の幅以下に狭くすることは難しい。そのため、施設内で条間、株間とも狭く、密稙栽培される作物に適用することは困難であり、これを利用することができない。
また、紙または紙のような剛体ではない薄膜で製造されているため、条間を調整するために手作業でこれを扱えば、鉢体の形状を維持することができず、苗を保持できない。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、容易に製作できるようにしながら、育苗時には複数の鉢体を互いに近接させて効率良く設置でき、定植時には苗の種類に応じた定植ピッチで確実に定植できるようにすることを目的とする。
また、本発明は、施設内で大量の苗の定植作業を繰り返し、条間、株間とも狭く、密稙栽培される作物に対応することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、略同一寸法の筒状に形成してある育苗用鉢体の複数が、筒軸芯を互いに略平行に沿わせて、かつ、筒軸芯に略直交する方向に間隔を隔てて一連に連結され、各鉢体において育苗された苗がその鉢体と共に連結状態で定植可能に構成されている連結鉢体であって、
互いに隣り合う鉢体どうしが、前記作物の種類に応じた定植ピッチと略同じ配設ピッチで連結され、二つの同一連結鉢体を互いに略平行に隣り合わせて並置した状態で、一方の連結鉢体において互いに隣り合う鉢体どうしの間に、他方の連結鉢体における鉢体の側壁部を嵌合可能に形成されている点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
互いに隣り合う鉢体どうしが、作物の種類に応じた定植ピッチと略同じ配設ピッチで連結されているので、展開可能に折り畳んである連結部材で鉢体どうしを連結してある場合に比べて容易に製作できるようにしながら、定植時には作物の種類に応じた定植ピッチで確実に定植できる。
また、二つの同一連結鉢体を互いに略平行に隣り合わせて並置した状態で、一方の連結鉢体において互いに隣り合う鉢体どうしの間に、他方の連結鉢体における鉢体の側壁部を嵌合可能に形成されているので、育苗時には二つの同一連結鉢体における鉢体どうしを互いに近接させて効率良く設置できる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記鉢体が、互いに平行に形成してある一対の第1側壁部と、前記第1側壁部に対して略直交する方向に互いに平行に形成してある一対の第2側壁部とを備えた横断面形状が略矩形の筒状に形成され、互いに隣り合う鉢体の前記第1側壁部の壁面どうしが鉢体どうしの並設方向に沿って略直線状に並び、かつ、互いに隣り合う鉢体の前記第2側壁部どうしが互いに対向する姿勢で、前記一対の第1側壁部のうちの、一方の側の第1側壁部どうしを、その第1側壁部と略面一に設けた連結部材で連結して、前記鉢体の複数が一連に連結されている点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
二つの同一連結鉢体を、連結部材で連結されていない第1側壁部側が互いに対向するように略平行に隣り合わせて、かつ、鉢体どうしが千鳥に配置されるように並置した状態で、一方の連結鉢体において互いに隣り合う鉢体どうしの間に、他方の連結鉢体における鉢体を嵌合させて、二つの同一連結鉢体どうしを、平面視で、略矩形に組み合わせることができるので、設置場所が略矩形に形成されている場合に、連結鉢体を無駄なスペースが生じないように効率良く設置し易い。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記鉢体の側壁部に、側壁部高さ方向の全長に亘って連続する隙間が形成されている点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
本圃栽培床に定植後、成長し、植物の葉や根が張った状態でも、側壁部に形成されている隙間から植物が抜け出るように鉢体を移動させて、植物が傷付き難い状態で、その連結鉢体を回収し易い。
従って、植物の収穫を待たずに、しかも、植物を切断することなく、連結鉢体を早期に回収して、再利用できる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、請求項1〜3のいずれか1項記載の連結鉢体を保持する保持具であって、
前記鉢体を、その下方に空間が形成されるように支持可能な支持部とが設けられている点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
鉢体を支持部に支持した状態で、その鉢体の下方に形成される空間とに亘って充填してある育苗用土で育苗することにより、育苗中の苗の根を鉢体の下端よりも下方に伸びるように育成することができる。
従って、鉢体を支持部から取り出したときに、根が充分に育った状態となっているので、本圃栽培床に定植後の活着がよくなり、良好な生育を確保できる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、前記支持部が、前記鉢体の下方の夫々に形成された空間を各別に囲む枠状に形成されている点にある。
【0014】
〔作用及び効果〕
鉢体の下方の夫々に形成された空間を各別に囲む枠状に形成されている支持部が、その鉢体で育苗中の苗の根の、隣り合う鉢体側への浸入を妨げ、隣り合う鉢体で育苗中の苗の根どうしが絡み合い難い。
従って、二つの同一連結鉢体を互いに略平行に隣り合わせて並置した状態で、一方の連結鉢体において互いに隣り合う鉢体どうしの間に、他方の連結鉢体における鉢体の側壁部を嵌合させて保持具に保持させてある連結鉢体を密着状態で複数並べて、育苗した後、一つ一つの連結鉢体に分離して保持具から取り出すときに、根どうしが絡み合って、この取り出し作業の妨げとなるようなことがない。
【0015】
本発明の第6特徴構成は、前記支持部が、互いに略平行に隣り合わせて並置した二つの同一連結鉢体を、一方の連結鉢体において互いに隣り合う鉢体どうしの間に、他方の連結鉢体における鉢体の側壁部を嵌合させた状態で支持可能に設けられている点にある。
【0016】
〔作用及び効果〕
二つの同一連結鉢体における鉢体どうしを互いに嵌合させ、この連結鉢体を密着状態で複数並べて、限られた大きさの保持具に、効率良く保持させることができる。
【0017】
本発明の第7特徴構成は、請求項4〜6のいずれか1項記載の保持具を収容する容器であって、
前記保持具を、保持している連結鉢体の上方に間隔を隔てるように積み重ね可能に、スペーサを付設してある
【0018】
〔作用及び効果〕
棚などを特に設置することなく、保持具を、保持している連結鉢体の上方に間隔を隔てるように積み重ねて、育苗中の苗を傷めずに、また、その苗の根が乾燥しないように連結鉢体ごと限られたスペースに効率良く保管することができ、殊に、スペースが限られている低温処理用の低温貯蔵庫に貯蔵するような場合に有利である。
【0019】
本発明の第8特徴構成は、請求項1〜3のいずれか1項記載の連結鉢体と、請求項4〜6のいずれか1項記載の保持具とを使用して植物を栽培する植物栽培方法であって、
前記保持具に保持させた前記連結鉢体の鉢体に育苗用土を充填して苗を育苗した後、その苗を前記保持具から連結鉢体ごと取り出して、その連結鉢体と共に本圃栽培床上に載置して定植する点にある。
【0020】
〔作用及び効果〕
保持具に保持させた連結鉢体の鉢体に育苗用土を充填して、連結鉢体を苗の種類に応じた育苗環境に保持具ごと設置して育苗した後、その苗を保持具から連結鉢体ごと取り出して、その連結鉢体と共に本圃栽培床上に載置して、苗の種類に応じた定植ピッチで定植することができるので、育苗中の苗を容易に管理できると共に、苗の根を傷めることなく、苗の移動や定植を行うことができる。
【0021】
本発明の第9特徴構成は、請求項1又は2記載の連結鉢体と共に定植した苗が成長した植物を収穫した後、又は、請求項3記載の連結鉢体と共に定植した苗の根が本圃栽培床に伸長するまで、予め設定した期間が経過するまで待った後、その連結鉢体を回収して再使用する点にある。
【0022】
〔作用及び効果〕
連結鉢体を繰り返して使用することができる。
【0023】
本発明の第10特徴構成は、請求項1〜3のいずれか1項記載の連結鉢体と、請求項4〜6のいずれか1項記載の保持具と、請求項7記載の容器とを使用して植物を栽培する植物栽培方法であって、
前記保持具に保持させた前記連結鉢体の鉢体に育苗用土を充填して苗を育苗中に、その保持具を収容してある前記容器を積み重ねて、前記苗を低温処理用の低温貯蔵庫に貯蔵する点にある。
【0024】
〔作用及び効果〕
保持具に保持させてある連結鉢体で育苗中の苗を、根が乾燥しないように連結鉢体ごと、スペースが限られている低温処理用の冷蔵庫などの低温貯蔵庫に、効率良く貯蔵することができる。
従って、慣行法であるセル成型トレイ苗を冷蔵庫内に特別に設けた棚の上に移動、収納したり、苗をビニール袋に移し替えて保管するといった作業が不要となり、効率的な作業体系を組むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図4は、本発明による合成樹脂製連結鉢体Aの実施形態を示し、図1に示すように、略同一寸法の筒状に形成してある育苗用鉢体1の複数が、筒軸芯Xを互いに略平行に沿わせて、かつ、筒軸芯Xに略直交する方向に間隔を隔てて一連に連結されて、各鉢体1において育苗された花き,野菜等の植物の苗2がその鉢体1と共に連結状態で定植可能に構成され、互いに隣り合う鉢体1どうしは、苗2の種類に応じた定植ピッチと略同じ配設ピッチDで連結されている。
【0026】
前記鉢体1は、図2,図3に示すように、互いに平行に形成してある一対の第1側壁部3(3a,3b)と、その第1側壁部3に対して略直交する方向に互いに平行に形成してある一対の第2側壁部4とを一体に備えた横断面形状が略矩形の筒状に形成され、第1側壁部3及び第2側壁部4の下部に鉢体内側に向けて一連に屈曲させてある段部5を形成して、段部5の上側の大径鉢体部分1aと、段部5の下側の小径鉢体部分1bとを同芯状に形成してある。
【0027】
そして、互いに隣り合う鉢体1の第1側壁部3の壁面どうしが鉢体1どうしの並設方向に沿って略直線状に並び、かつ、互いに隣り合う鉢体1の第2側壁部4どうしが互いに対向する姿勢で、一対の第1側壁部3のうちの、一方の側において並設方向に沿って略直線状に並んでいる第1側壁部3aどうしを連結部材6で一体に連結して、鉢体1の複数が一連に連結されている。
【0028】
前記連結部材6は、大径鉢体部分1aにおける第1側壁部3aどうしを連結するもので、大径鉢体部分1aにおける第1側壁部3aの厚さと略同じ厚さの板状に形成して、第1側壁部3aと略面一に設けてあり、互いに隣り合う鉢体1の上端側における第2側壁部4どうしの間隔Eを、鉢体1の上端側における鉢体並設方向に沿う幅Fと略同じ間隔又は若干広い間隔に設定してある。
【0029】
従って、図4に示すように、二つの同一連結鉢体A(A1,A2)を互いに略平行に隣り合わせて、かつ、連結部材6側を外方に向けて並置した状態で、一方の連結鉢体A1において互いに隣り合う鉢体1どうしの間に、他方の連結鉢体A2における鉢体1の側壁部3,4を嵌合して、互いに組み付けることができる。
【0030】
育苗時においては、密な集合状態を確保し、効率的に多数の苗2を育苗することができる一方、定植時は、本圃栽培床内で、簡単に解体でき、連結鉢体Aを載置することで、短時間に、任意の株間、条間で定植作業を実施でき、さらに、施設内における多毛・多期作生産に対応でき、有用である。
【0031】
各個別鉢体1には底板がないことから、本圃栽培床上に載置した後、根はすみやかに栽培床内に伸長し、地上部の良好な生育量を確保し得る。
保持具B及び容器Cからなる育苗セット及び連結鉢体Aは合成樹脂で成型されたものであり、少なくとも数年間使用することができ、多期作生産に対応し、繰り返し利用できる利便性、耐用性を有する。
【0032】
図5〜図7は、上記連結鉢体Aを保持する本発明による合成樹脂製保持具Bを示し、鉢体1の下側開口を覆う底板7と、各連結鉢体Aの鉢体1を連結状態で載置支持する支持部としての多数の矩形枠体8を格子状に配置して形成してある格子部材9とを一体に備え、枠体8は、鉢体1毎にその小径鉢体部分1bを内側に嵌め込んである位置決め状態で載置支持できるように配置してある。
【0033】
前記枠体8は、図6に示すように、小径鉢体部分1bを内側に嵌め込んで鉢体1を載置支持したときに、鉢体1の下端と底板7との間に空間10が形成されるように支持可能な高さで、底板7の上方に向けて突設して、その空間10を各別に囲む枠状に形成してあり、各枠体8で囲まれる底板部分7毎に水抜き孔11を形成してある。
【0034】
そして、図7に示すように、二つの連結鉢体A(A1,A2)毎に、互いに略平行に隣り合わせて、かつ、連結部材6側を外方に向けて並置して、各鉢体1を、一方の連結鉢体A1において互いに隣り合う鉢体1どうしの間に、他方の連結鉢体A2における鉢体1が入り込む状態で枠体8に載置支持して、各連結鉢体Aを保持できるように構成してある。
【0035】
図8,図9は、多数の連結鉢体Aを保持している保持具Bを収容する本発明による容器Cを示し、保持具Bを載置する平面視で略矩形の載置板12と、その載置板12の外周部を、一つの側辺部13を除いてコの字状に囲む周枠14とを備え、容器Cを作業用床面などの載置面に載置した状態で、載置板12の周枠14を設けていない側辺部13を通して、保持具Bを載置面と載置板12とに亘って押し引きすることにより、保持具Bを必要に応じて出し入れできるように構成してある。
【0036】
前記載置板12には、載置板12に載置した保持具Bを、保持している連結鉢体Aの上方に間隔を隔てるように積み重ね可能に、合成樹脂製スペーサ15を付設してあり、このスペーサ15は、容器C毎に収容してある保持具Bどうしを上下に積み重ねる際に、上側の保持具Bを収容している容器Cを載置する略コの字形の載置枠16と、脚17とを一体に備え、各脚17の下端を載置板12の周枠14に形成してある嵌合孔18に抜き差し可能に嵌合してある。
【0037】
図10〜図12は、上記連結鉢体Aと上記保持具Bとを使用して植物を栽培する本発明による植物栽培方法を示し、図6,図7に示したように、二つの連結鉢体A毎に、一方の連結鉢体A1において互いに隣り合う鉢体1どうしの間に、他方の連結鉢体A2における鉢体1が入り込む状態で、多数の連結鉢体Aの鉢体1を保持具Bに保持し、図10に示すように、各鉢体1に育苗用土19を充填して、花きや野菜等の植物を挿し芽あるいは播種して苗2を育苗する。
【0038】
この場合、連結鉢体Aを保持している保持具Bを容器Cに収容せずに育苗しても、保持具Bを容器Cに収容して育苗しても良いが、育苗中に、多数の保持具Bを積み重ねて、苗2を低温処理用の低温貯蔵庫などに貯蔵する場合は、図11に示すように、保持具Bを容器Cに収容して庫内に積み重ねて貯蔵する。
【0039】
スペーサ15は載置枠16と脚17とを備えているので、低温貯蔵庫内で蛍光灯を点灯する場合でも、隣り合う脚17の間から採光がえられる窓を形成して苗2に充分な光を照射できる。
【0040】
そして、苗2を所定期間育苗した後、本圃に定植するときは、その苗2を保持具Bから連結鉢体Aごと取り出して、図12に示すように、その連結鉢体Aと共に作物ごとの最適な定植ピッチLで本圃栽培床上に載置して定植し、連結鉢体Aと共に定植した苗2が成長した植物を収穫した後、その連結鉢体Aを回収して再使用する。
鉢体1は剛性があるので、保持具Bから取り出した時、形状がくずれないので、苗2を保持して持ち運びができる。
【0041】
載置方法は、畝方向に対し、平行、直角等、いずれでも自由な載置が可能であり、載置間隔は、栽培植物、作型に応じて任意である。よって、多種多様な作物の栽培方法に対応できる。
【0042】
〔第2実施形態〕
図13,図14は、鉢体1の側壁部に、側壁部高さ方向の全長に亘って連続する隙間20が形成されている連結鉢体Aの実施形態を示し、図13は、鉢体1の第1側壁部3のいずれか一方に、側壁部高さ方向の全長に亘って連続する隙間20を形成してある実施形態を示し、図14は、鉢体1の第2側壁部4のいずれか一方に、側壁部高さ方向の全長に亘って連続する隙間20を形成してある実施形態を示す。
【0043】
本実施形態の鉢体1を使用すれば、本圃栽培床に定植後に、植物の葉や根が張った状態でも、側壁部に形成されている隙間20から植物が抜け出せるように鉢体1を移動させて、植物が傷付き難い状態で、その連結鉢体を回収し易く、植物の収穫を待たずに、しかも、植物を切断することなく、連結鉢体Aを早期に回収して、再利用できる。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0044】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による連結鉢体は、合成樹脂以外の剛性のある材料で形成してあっても良い。個別の鉢体は、紙や不織布で形成してあっても良いが、保持体から分離した時、苗を保持したまま持ち上げることができる必要があるので、少なくとも連結部は剛性のある材料で形成しなければならない。
2.本発明による連結鉢体に連結されている鉢体の数は適宜選択すれば良い。
3.本発明による連結鉢体は、鉢体どうしを直に連結して構成してあっても良い。
4.本発明による連結鉢体は、六角形の筒状に形成してある育苗用鉢体の複数が一連に連結されていても良い。
5.本発明による連結鉢体は、育苗用土を保持し易くなるように、図15(a)に示すように、段部を備えない円錐台形や角錐台形の筒状に形成してある鉢体1を連結してあっても、図15(b)に示すように、下端部に沿って内向きの鍔21を備えた筒状に形成してある鉢体1を連結してあっても良く、また、育苗用土を保持できるのであれば、図15(c)に示すように、側壁部高さ方向の全長に亘って同径の筒状に形成してある鉢体1を連結してあっても良い。
6.本発明による保持具は、格子部材からなる支持部を備えたものに限定されず、鉢体の下方に空間が形成できるように、鉢体を支持できるのであれば、列状あるいは点状の支持部を備えたものでも良い。
7.本発明による保持具は、容器に保持具をセットした状態で育苗するのであれば、底板を備えないものであっても良い。この場合、容器の載置板に水抜き孔を形成しておいて、この容器の載置板を底板として用いる。
8.本発明による保持具は、容器に一体的に成型されていても良い。
9.本発明による保持具は、保持具どうしを、保持している連結鉢体の上方に間隔を隔てるように積み重ね可能に、スペーサを設けてあっても良い。
10.本発明による容器は、スペーサと載置板とを一体に設けてあっても良い。
11.本発明による容器のスペーサは、折り畳むような構造であっても良い。
12.本発明による容器のスペーサは、充分な採光をえられる窓を形成するが、その形状は適宜変更可能である。
13.本発明による容器は、保持具が落下しないように、保持具を容器の周囲に係止するように構成してあれば、載置板を備えないものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】連結鉢体の平面図
【図2】連結鉢体の要部斜視図
【図3】連結鉢体の要部側面図
【図4】連結鉢体どうしの組み付け状態を示す斜視図
【図5】保持具の要部斜視図
【図6】連結鉢体を保持具に保持した状態を示す要部縦断面図
【図7】連結鉢体を保持具に保持した状態を示す要部平面図
【図8】容器の分解斜視図
【図9】連結鉢体を保持した保持具が容器に収容されている状態を示す斜視図
【図10】連結鉢体の使用方法を示す要部縦断面図
【図11】連結鉢体を保持している保持具を容器に収容して積み重ねてある状態を示す斜視図
【図12】連結鉢体の使用方法を示す斜視図
【図13】第2実施形態の連結鉢体を示す斜視図
【図14】第2実施形態の連結鉢体を示す斜視図
【図15】連結鉢体の別実施形態を示す要部縦断面図
【符号の説明】
【0046】
1 鉢体
2 苗
3 第1側壁部
4 第2側壁部
6 連結部材
8 支持部
10 空間
12 載置板
15 スペーサ
19 育苗用土
20 隙間
X 筒軸芯
A 連結鉢体
B 保持具
C 容器
D 配設ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略同一寸法の筒状に形成してある育苗用鉢体の複数が、筒軸芯を互いに略平行に沿わせて、かつ、筒軸芯に略直交する方向に間隔を隔てて一連に連結され、
各鉢体において育苗された苗がその鉢体と共に連結状態で定植可能に構成されている連結鉢体であって、
互いに隣り合う鉢体どうしが、作物の種類に応じた定植ピッチと略同じ配設ピッチで連結され、
二つの同一連結鉢体を互いに略平行に隣り合わせて並置した状態で、一方の連結鉢体において互いに隣り合う鉢体どうしの間に、他方の連結鉢体における鉢体の側壁部を嵌合可能に形成されている連結鉢体。
【請求項2】
前記鉢体が、互いに平行に形成してある一対の第1側壁部と、前記第1側壁部に対して略直交する方向に互いに平行に形成してある一対の第2側壁部とを備えた横断面形状が略矩形の筒状に形成され、
互いに隣り合う鉢体の前記第1側壁部の壁面どうしが鉢体どうしの並設方向に沿って略直線状に並び、かつ、互いに隣り合う鉢体の前記第2側壁部どうしが互いに対向する姿勢で、前記一対の第1側壁部のうちの、一方の側の第1側壁部どうしを、その第1側壁部と略面一に設けた連結部材で連結して、前記鉢体の複数が一連に連結されている請求項1記載の連結鉢体。
【請求項3】
前記鉢体の側壁部に、側壁部高さ方向の全長に亘って連続する隙間が形成されている請求項1又は2記載の連結鉢体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の連結鉢体を保持する保持具であって、
前記鉢体を、その下方に空間が形成されるように支持可能な支持部が設けられている保持具。
【請求項5】
前記支持部が、前記鉢体の下方の夫々に形成された空間を各別に囲む枠状に形成されている請求項4記載の保持具。
【請求項6】
前記支持部が、互いに略平行に隣り合わせて並置した二つの同一連結鉢体を、一方の連結鉢体において互いに隣り合う鉢体どうしの間に、他方の連結鉢体における鉢体の側壁部を嵌合させた状態で支持可能に設けられている請求項4又は5記載の保持具。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項記載の保持具を収容する容器であって、
前記保持具を、保持している連結鉢体の上方に間隔を隔てるように積み重ね可能に、スペーサを付設してある容器。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項記載の連結鉢体と、請求項4〜6のいずれか1項記載の保持具とを使用して植物を栽培する植物栽培方法であって、
前記保持具に保持させた前記連結鉢体の鉢体に育苗用土を充填して苗を育苗した後、
その苗を前記保持具から連結鉢体ごと取り出して、その連結鉢体と共に本圃栽培床上に載置して定植する植物栽培方法。
【請求項9】
請求項1又は2記載の連結鉢体と共に定植した苗が成長した植物を収穫した後、又は、請求項3記載の連結鉢体と共に定植した苗の根が本圃栽培床に伸長するまで、予め設定した期間が経過するまで待った後、その連結鉢体を回収して再使用する請求項8記載の植物栽培方法。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか1項記載の連結鉢体と、請求項4〜6のいずれか1項記載の保持具と、請求項7記載の容器とを使用して植物を栽培する植物栽培方法であって、
前記保持具に保持させた前記連結鉢体の鉢体に育苗用土を充填して苗を育苗中に、その保持具を収容してある前記容器を積み重ねて、前記苗を低温処理用の低温貯蔵庫に貯蔵する植物栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−232780(P2009−232780A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84332(P2008−84332)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(591065549)福岡県 (121)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(508093067)株式会社九州クボタ化成 (6)
【Fターム(参考)】