説明

連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御装置及び湯面高さ制御方法

【課題】樋内及び鋳型内の材料やセンサの構造,種類等に起因する影響を受けることなく、正確かつ高信頼に湯面レベル制御を行うことのできる連続及び半連続鋳造における湯面レベル制御装置及び湯面レベル制御方法を提供する。
【解決手段】炉体と樋との間に設けられた出湯調節手段と樋にかかる重量を検出することによって樋内溶湯量を計測する樋内溶湯量測定器と、この樋内溶湯量測定器で計測された樋内溶湯量に基づいて、出湯調節手段を調節して樋内溶湯量を一定に保つための炉体からの出湯量制御信号を生成する出湯制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル(高さ)制御装置及び湯面レベル制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、特に銅あるいは銅合金の連続あるいは半連続鋳造は、樋内の溶湯を、供給管を通して鋳型内の湯面が一定になるようにかつ均一に供給しながら鋳型内の溶湯を連続的に冷却・凝固して下方に引いて鋳塊を生成する。そして、鋳型内ヘ溶湯を供給するに際しては、樋と供給管との間に設けた溶湯調節器がネジ式に構成され、上下回転することによって流路が開閉するように構成されてきた。
【0003】
湯面制御としては、静電容量型センサ、渦電流型センサ等の非接触式の電気的センサを用いて、鋳型内湯面の高さを検出し、これに基づいて湯面レベルを所定置に保持しようとするものがある。その他、浮き等を使用した機械式のセンサを用い、或いは放射線を利用したセンサを用いる制御も行なわれている。また、不活性ガスを溶湯中に吹き込み、その吹き込み深さに応じて変化する圧力変化によって湯面深さを測定する方法も用いられている。
【0004】
特許文献1には、不活性ガスを溶湯中に吹き込み、ガスの圧力値を圧力計で検出し、この検出値の変化に応じて下降管(供給管)から鋳型への溶湯供給量を溶融金属流量調節部(溶湯調節器)によって調節し、湯面レベルを一定にすることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、鋳型内に供給される銅あるいは銅合金の溶湯の湯面制御を自動化すると共に、溶湯の均一な供給を行う自動鋳造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−300121号公報
【特許文献2】特開平11−19755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
湯面制御のためのセンサには以下の問題点があった。静電容量型センサは、溶融金属ばかりでなく、鋳型や雰囲気制御用のカバー等、他の部材の影響を受けやすい。また、湯面検出の際、被服材料の厚みを含んだ湯面高さを検出することになるため、不正確な湯面高さに基づく湯面制御になっている。このため、被服材料の厚みが常に変動していたり、場所によって厚みに大きな差があった場合は湯面の制御が正しく行えなくなる。
【0008】
また、渦電流式センサの場合、センサ周囲の機器からの電磁ノイズによって誤作動することがあり、信頼性が得られないばかりか、センサの設置位置にも制約が多い。さらに機械式センサを用いた場合、使用中における動作部の焼き付きや損傷による動作不良を発生する懸念がある。また、放射式センサを用いた場合、制御精度や安全性の確保の面で解決すべき課題がある。
【0009】
さらに、溶湯中に吹き込んだ不活性ガスの吹き込み深さに応じて変化する圧力変化により湯面深さを測定する方法にあっては、ガス流量が一定でないため、圧力損失による圧力変化量が一定でなくなり、湯面深さの正確な測定が行えない。
【0010】
そこで、本発明は、樋内及び鋳型内の材料やセンサの構造,種類等に起因する影響を受けることなく、正確かつ高信頼に湯面レベル制御を行うことのできる連続及び半連続鋳造における湯面レベル制御装置及び湯面レベル制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、金属性の溶湯を溜める炉体から金属性の溶湯が供給される樋と、該樋内の溶湯が供給管を通して供給され、冷却・凝固した鋳塊が引き下げられるようにした鋳型とを備えた連続あるいは半連続鋳造装置に用いられ、前記樋に保持された溶湯の湯面レベルを計測して、湯面レベルの制御を行うようにした連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御装置において、
前記炉体と前記樋との間に設けられた出湯調節手段と前記樋にかかる重量を検出することによって樋内溶湯量を計測する樋内溶湯量測定器と、該樋内溶湯量測定器で計測された樋内溶湯量に基づいて、前記出湯調節手段を調節して樋内溶湯量を一定に保つための前記炉体からの出湯量制御信号を生成する出湯制御手段と、を備えること
を特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御装置を提供する。
【0012】
本発明は、また、前記供給管には、前記樋からの溶湯の出口開口部に向けて出湯量を調整する湯量調節器が備えられ、前記樋にかかる重量によって生じる該樋の垂直方向の上下動量を前記湯量調節器の出湯量調節によって調節するようにしたことを特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御装置を提供する。
【0013】
本発明は、また、前記樋内溶湯量測定器は、前記樋にかかる重量を検出する検出器と、樋内量を演算する樋内量演算処理手段とから構成されることを特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御装置を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記検出器は、外面に耐熱カバーを備えることを特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御装置を提供する。
【0015】
本発明は、金属性の溶湯を溜める炉体から金属性の溶湯が供給される樋と、該樋内の溶湯が供給管を通して供給され、冷却・凝固した鋳塊が引き下げられるようにした鋳型とを備えた連続あるいは半連続鋳造装置に用いられ、前記樋に保持された溶湯の湯面高さを計測して、湯面高さの制御を行うようにした連続あるいは半連続鋳造装置の湯面高さ制御装置による湯面レベル制御方法において、
樋内溶湯量測定器が、前記樋にかかる重量を検出することによって樋内溶湯量を計測し、
出湯調整手段が、前記樋内溶湯量測定器で計測された樋内溶湯量に基づいて、前記炉内と前記樋との間に設けられた出湯調節手段を調節して樋内溶湯量を一定に保つための前記炉体からの出湯量制御信号を生成すること
を特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御方法を提供する。
【0016】
本発明は、また、前記供給管の、前記樋からの溶湯の出口開口部に向けて備えられて、出湯量を調整する湯量調節器は、前記樋にかかる重量によって生じる該樋の垂直方向の上下動量を前記湯量調節器の出湯量調節によって調節することを特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御方法を提供する。
【0017】
本発明は、また、前記樋にかかる重量によって生じる該樋の垂直方向の上下動量は、前記供給管の、前記樋からの溶湯出口開口部に向けて供えられて出湯量を調整する湯量調節器が前記樋と共動することによって吸収されることを特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上述したように樋内溶湯量に基づいて、出湯調節手段を調節して樋内溶湯量を一定に保つための炉内からの出湯量制御信号を生成するようにしているので、樋内溶湯量が一定に保たれ、これに対応して湯面レベルが一定に保たれた制御がなされる。この場合に、樋内及び鋳型内の材料やセンサの構造、種類に起因する影響を受けることがなく、正確かつ高信頼に湯面レベルの制御を行うことができる。
【0019】
また、樋の上下動量は、炉内の出口に設けた出湯調節手段、あるいは該出湯調節手段及び湯量調節器の出湯量調節によって容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例の構成を示す図。
【図2】本発明の実施例のフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明の実施例の連続あるいは半連続鋳造装置で用いられる湯面レベル制御装置100の構成を示す、一部断面を含む構成図である。
【0023】
図1において、本実施例の湯面レベル制御装置100は、連続あるいは半連続鋳造装置に関連づけて設けられる。
【0024】
連続あるいは半連続鋳造装置は、上方に、金属性の溶湯、特に銅あるいは銅合金の溶湯2を溜め、保持する樋1、この樋の底部に設けた供給管2、この供給管2の流出口開口度を制御する湯量調節器3、樋1の下方に配設された鋳型8から構成される。
【0025】
図1において、溶湯2のレベル、すなわち高さはHとされる。供給管2は、流出口4Aを備え、その出口開口部4Bは、鋳型8に向けて開口する。このように、流出口4Aは、鋳型8の上方に位置するように配置される。鋳型8は、円筒体状に形成されており、流出口4Aからの溶湯2を鋳型8の中央に供給できるように、流出口4Aから鋳型8の中央に亘って、上述のように、カーボン製の供給管4が垂直に設置されている。そして、この供給管4の出口開口部4Bの端面は、平滑に形成されている。
【0026】
鋳型に供給された溶湯は、冷却・凝固され、鋳塊10を形成する。鋳塊10の上方には溶湯溜まりであるモルテンプール9が形成される。モルテンプール9の上面が湯面7となる。
【0027】
鋳型8の底は、鋳塊10によって閉塞され、鋳塊10は下方に引き出し可能とされる。このために、鋳型8の下方には、冷却手段(図示せず)及び鋳塊引下げ手段(図示せず)が設けられている。
【0028】
湯量調節器3は、ネジ式構造に形成され、上下回転することによって流路の開閉を行う。
【0029】
樋1の下面には、樋内溶湯量測定器が設けられる。この樋内溶湯量測定器は、樋1にかかる重量を検出する検出器5と樋内量を演算する樋内量演算処理手段(樋内量測定器6)とから構成される。
【0030】
樋1の下面には、重量を保持するためのスプリング構成とされた保持装置1Aが設けられ、検出器5による樋にかかる重量が検出される。検出器5には、その外面に耐熱カバー5Aが設けられる。検出器5によって検出された重量から容易に樋内溶湯量が算出され得る。検出された重量信号は、電気信号に変換され、出湯制御手段13に伝送される。出湯制御手段13はパソコン構成とされ、入出力手段、演算手段及び記憶手段を備え、出湯調節手段14の出力を制御することができる。
【0031】
樋1の上方には、銅あるいは銅合金を溜める内筒状の炉体12が設けてある。出湯調節手段14は、ネジ式構造で構成され、回転角度によって炉体12に附属され、炉体12から樋1への出湯量を制御することができる。
【0032】
出湯制御手段13は、樋内溶湯量測定器で計測された樋内溶湯量に基づいて、出湯調節手段14を調節して樋内溶湯量を一定に保つための炉体12からの出湯量制御信号を生成する。この場合に、樋1にかかる重量によって生じる樋1のわずかな垂直方向の上下動量を湯量調整器3の出湯量調節によって調節するようにすると、樋内溶湯量の出湯調整制御は極めて容易で迅速な制御が可能になる。湯量調整器3の機能を出湯調節手段14に持たせるようにしてもよい。例えば、溶湯調節器3を樋1と一体構成として、湯量調節器3が樋1と共動するようにして上下動量を吸収するようにしてもよい。
【0033】
次に本実施例を使用した連続及び半連続鋳造方法について図2を参照して説明する。鋳塊11を鋳造するに際しては、湯量調節器3が閉止状態で炉体12より樋1内に溶湯を投入し(S1)、規定の溶湯量まで溶湯を溜めた後、湯量調節器3を解放して鋳造をスタートする(S2)。このとき前記規定の溶湯量の重量を重量検出器5で測定し(S3)、基準とする(S4)。湯量調節器3は、解放後一定の開度のまま固定とする(S5)。その後樋内溶湯量の基準からの増減に対し、炉体からの出湯量の制御を実施する(S6)ことにより樋内溶湯量を一定に保つ(S7)。樋1内溶湯量一定により、流出口4Aにかかる圧力が一定化され、供給管4より鋳型8内に供給される溶湯量が一定に保たれる。これにより、鋳型8内湯面レベルは一定化される(S8)。
【0034】
以上のように、本実施例によれば、樋内、鋳型内の材料の影響を受けることはなく、鋳型内湯面を一定に保つことができ、安定した状態で冷却されるため鋳塊の表面欠陥が改善される。また、鋳造作業の簡素化、及び自動化を図ることができる。これによりブレイクアウトやオーバーフロー等の操作ミスが減り、作業者の安全性向上及び人件費の削減が可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1…樋、2…溶湯、3…湯量調節器、5…重量検出器、5A…耐熱カバー、6…樋内量演算処理手段(樋内量測定器)、8…鋳型、9…モルテンプール(溶湯溜まり)、10…鋳塊、12…炉体、13…出湯制御手段、14…出湯調節手段、100…湯面レベル制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属性の溶湯を溜める炉体から金属性の溶湯が供給される樋と、該樋内の溶湯が供給管を通して供給され、冷却・凝固した鋳塊が引き下げられるようにした鋳型とを備えた連続あるいは半連続鋳造装置に用いられ、前記樋に保持された溶湯の湯面レベルを計測して、湯面レベルの制御を行うようにした連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御装置において、
前記炉体と前記樋との間に設けられた出湯調節手段と前記樋にかかる重量を検出することによって樋内溶湯量を計測する樋内溶湯量測定器と、該樋内溶湯量測定器で計測された樋内溶湯量に基づいて、前記出湯調節手段を調節して樋内溶湯量を一定に保つための前記炉体からの出湯量制御信号を生成する出湯制御手段と、を備えること
を特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御装置。
【請求項2】
請求項1において、前記供給管には、前記樋からの溶湯の出口開口部に向けて出湯量を調整する湯量調節器が備えられ、前記樋にかかる重量によって生じる該樋の垂直方向の上下動量を前記湯量調節器の出湯量調節によって調節するようにしたことを特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御装置。
【請求項3】
請求項1において、前記樋内溶湯量測定器は、前記樋にかかる重量を検出する検出器と、樋内量を演算する樋内量演算処理手段とから構成されることを特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御装置。
【請求項4】
請求項3において、前記検出器は、外面に耐熱カバーを備えることを特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御装置。
【請求項5】
金属性の溶湯を溜める炉体から金属性の溶湯が供給される樋と、該樋内の溶湯が供給管を通して供給され、冷却・凝固した鋳塊が引き下げられるようにした鋳型とを備えた連続あるいは半連続鋳造装置に用いられ、前記樋に保持された溶湯の湯面高さを計測して、湯面高さの制御を行うようにした連続あるいは半連続鋳造装置の湯面高さ制御装置による湯面レベル制御方法において、
樋内溶湯量測定器が、前記樋にかかる重量を検出することによって樋内溶湯量を計測し、
出湯調整手段が、前記樋内溶湯量測定器で計測された樋内溶湯量に基づいて、前記炉内と前記樋との間に設けられた出湯調節手段を調節して樋内溶湯量を一定に保つための前記炉体からの出湯量制御信号を生成すること
を特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御方法。
【請求項6】
請求項5において、前記供給管の、前記樋からの溶湯の出口開口部に向けて備えられて、出湯量を調整する湯量調節器は、前記樋にかかる重量によって生じる該樋の垂直方向の上下動量を前記湯量調節器の出湯量調節によって調節することを特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御方法。
【請求項7】
請求項5において、前記樋にかかる重量によって生じる該樋の垂直方向の上下動量は、前記供給管の、前記樋からの溶湯出口開口部に向けて供えられて出湯量を調整する湯量調節器が前記樋と共動することによって吸収されることを特徴とする連続あるいは半連続鋳造装置の湯面レベル制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−55942(P2012−55942A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202968(P2010−202968)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】