説明

連続式乳化分散処理装置

【課題】粒径が100μm以上の汚泥フロックを破砕することができ、低エネルギーで処理でき、異常振動の発生しない汚泥の連続式乳化分散処理装置を実現することを目的とする。
【解決手段】乳化分散処理槽側面1と乳化分散処理槽底面2で構成された乳化分散処理槽内の底部に回転ブレード6を備え、乳化分散処理槽に1次処理液を導入し、回転ブレード6によって1次処理液を乳化分散処理し、乳化分散処理槽内の最高液位を一定に維持しつつ、2次処理液を導出する連続式乳化分散処理装置であって、液位は、回転ブレード6の回転によって発生する液面上のくぼみが、回転ブレード6に達することができる高さとした連続式乳化分散処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理により発生する排液中の有機物の減量を可能とする汚泥の乳化分散処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の汚泥の破砕技術には、生物・化学的処理と、物理的処理がある。生物・化学的汚泥処理は苛性ソーダや過酸化水素や酵素などを添加して汚泥の細胞を破壊するもので、処理装置が簡単で、大量処理ができるという利点を有するが、装置の設置スペースが大きく、薬品等の取り扱いが危険で、薬品等の補給が面倒であるなどの欠点を有している。一方で、物理的汚泥処理は超音波によるキャビテーションの衝撃波を利用して汚泥の細胞を破砕するものであり、安全で取り扱いが簡単であるという利点を有し、超音波振動子の長寿命化を図り、低消費電力でコンパクトな装置を実現する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記従来の特許文献1に記載の処理装置は、粒径が100μm以上の汚泥フロックを破砕することができず、また1kgの汚泥を破砕するために800Whものエネルギーが必要であり、大量処理には適していなかった。
【0004】
そこで、粒径の大きなフロックを破砕できて、処理効率の高い汚泥の乳化分散処理方法を見つけるために、化学的方法(アルカリ添加、過酸化水素添加、オゾン曝気、マイクロは加熱)、生物学的方法(嫌気処理)、物理的方法(超音波、ブレンダー)など各種の汚泥の破砕方法を検討した結果、家庭用のブレンダー(ジューサーミキサー)が最も良い結果を得られた。
【特許文献1】特開2004−188379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ブレンダーのような構造の乳化分散処理装置は通常はバッチ式であり、連続処理が可能な装置は存在しなかった。排水処理によって発生する汚泥は膨大な量であり、バッチ式では対応できないのは自明であった。また、ブレンダーでは一定液位以上に汚泥を投入すると異常振動が発生するため、連続処理を行うためには異常振動が発生しない液位以下に液位を維持できるかどうかが課題であった。
【0006】
そこで、本発明は粒径が100μm以上の汚泥フロックを低エネルギーで破砕処理でき、異常振動の発生しない汚泥の連続式乳化分散処理装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために、本発明の連続式乳化分散処理装置は、側面と底面で構成された乳化分散処理槽の底部に回転ブレードを備え、乳化分散処理槽に1次処理液を導入し、回転ブレードによって1次処理液を乳化分散処理し、乳化分散処理槽内の最高液位を一定に維持しつつ、2次処理液を導出する連続式乳化分散処理装置であって、液位は、回転ブレードの回転によって発生する液面上のくぼみが、回転ブレードに達することができる高さとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、粒径が100μm以上の大きなフロックの汚泥を、低エネルギーで破砕処理できる汚泥の連続式乳化分散処理装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による連続式乳化分散装置は、側面と底面で構成された乳化分散処理槽の底部に回転ブレードを備え、乳化分散処理槽に1次処理液を導入し、回転ブレードによって1次処理液を乳化分散処理し、乳化分散処理槽内の最高液位を一定に維持しつつ、2次処理液を導出する連続式乳化分散処理装置であって、液位は、回転ブレードの回転によって発生する液面上のくぼみが、回転ブレードに達することができる高さとしたものである。
【0010】
本実施の形態によれば、回転ブレードの回転によって発生する液面上のくぼみが、常に回転ブレードに達した状態で運転が行われるため、乳化分散処理槽は大きな振動を発生することがなく、乳化分散処理を連続して行うことができる。
【0011】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において乳化分散処理槽の側面に2次処理液を導出する導出口を備え、導出口は、最高液位の高さに配置され、2次処理液は導出口からオーバーフローによって自然流下するものである。
【0012】
本実施の形態によれば、オーバーフローにより容易に最高液位を安定的に維持することができるので、乳化分散処理を連続して行うことが出来る。
【0013】
本発明の第3の実施の形態は、第1または第2の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において、乳化分散処理槽は側面の上端を覆う天面を有するものである。
【0014】
本実施の形態によれば、乳化分散処理中に1次処理液の流入量が増加した場合に、乳化分散処理槽内の液が上端部から噴出することを防止することができる。
【0015】
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において、乳化分散処理槽の側面を囲うように2次処理液受槽が配置され、2次処理液受槽は2次処理液を導出する導出口を備え、乳化分散処理槽の側面の最高高さは最高液位よりも下側とし、2次処理液は乳化分散処理槽の側面の上端からオーバーフローによって自然流下するものである。
【0016】
本実施の形態によれば、乳化分散処理槽の側面の上端からオーバーフローできるため、乳化分散処理中に1次処理液の流入量が増加した場合でも処理槽内の処理液量を一定に保持でき、回転ブレードの回転によって発生する液面上のくぼみが、常に回転ブレードに達した状態で運転が行われ、乳化分散処理槽は大きな振動を発生することがなく、乳化分散処理を連続して行うことができる。
【0017】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において、2次処理液受槽の上端を覆う天面を有するものである。
【0018】
本実施の形態によれば、乳化分散処理中に1次処理液の流入量が増加した場合に、乳化分散処理槽内の液が上端部から噴出することを防止することができる。
【0019】
本発明の第6の実施の形態は、第4の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において、乳化分散処理槽の側面の上端が水平であるものである。
【0020】
本実施の形態によれば、乳化分散処理槽の側面の上端全周から均一にオーバーフローすることができるため、2次処理液を安定して導出することができる。
【0021】
本発明の第7の実施の形態は、第6の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において、側面の上端は、山刃状になっているものである。
【0022】
本実施の形態によれば、乳化分散処理槽の側面の上端の山刃状になっている部分の谷部分から2次処理液が導出されるため、表面張力の影響を受けにくく、1次処理液の流入量が少量の場合でも、2次処理液を安定して導出することができる。
【0023】
本発明の第8の実施の形態は、第6の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において、乳化分散処理槽の傾きを調節する傾き調整手段を設けたものである。
【0024】
本実施の形態によれば、設置場所が水平でない場合でも、乳化分散処理槽の側面の上端を水平に保つように調節することができる。
【0025】
本発明の第9の実施の形態は、第5の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において、乳化分散処理槽の側面に対して、2次処理液受槽の底面が傾斜しており、2次処理液導出口は前記2次処理液受槽の最下部に配置されたものである。
【0026】
本実施の形態によれば、2次処理液受槽へオーバーフローした2次処理液が液溜まりを生じることなく2次処理液導出口から導出することができる。
【0027】
本発明の第10の実施の形態は、第1の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において、回転ブレードの回転中心近傍に1次処理液を導入するものである。
【0028】
本実施の形態によれば、乳化分散処理槽へ導入された1次処理液は回転ブレード部分を通過するため、ショートパスによる処理効率の低下を防止することができる。
【0029】
本発明の第11の実施の形態は、第10の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において、乳化分散処理槽の底部から、1次処理液を導入させるものである。
【0030】
本実施の形態によれば、回転ブレードを回転させるモーターを上部に配置することが可能となり、メンテナンスを容易にすることができる。
【0031】
本発明の第12の実施の形態は、第10の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において、最高液位より上側に1次処理液を導入する1次処理液導入口を設け、1次処理液導入口から乳化分散処理槽へ1次処理液を導入させるものである。
【0032】
本実施の形態によれば、1次処理液導入口が大気へ解放されているため、1次処理液は乳化分散処理槽液中の圧力の影響を受けることが無く、安定して導入することができる。
【0033】
本発明の第13の実施の形態は、第12の実施の形態による連続式乳化分散処理装置において、1次処理液導入口から、回転ブレードの回転中心近傍へ、1次処理液導入管を垂下し、1次処理液導入管より1次処理液を導入させるものである。
【0034】
本実施の形態によれば、1次処理液を確実に回転ブレード部分まで導くことができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例における連続式乳化分散処理装置について、図面を参照して説明する。
【0036】
図1は本発明の一実施例における連続式乳化分散処理装置を示す構成図である。なお、図中の矢印は1次処理液及び2次処理液の流れを示す。
【0037】
乳化分散処理装置の乳化分散処理槽は乳化分散処理槽側面1と乳化分散処理槽底面2と乳化分散処理槽天面3からなる円筒形状で、乳化分散処理槽底面2はモーターハウジング9に固定されている。
【0038】
乳化分散処理槽天面3には1次処理液導入口4と1次処理液導入口4につながった1次処理液導入管17が配置されており、1次処理液導入管17の下端は回転ブレード6近傍まで垂下されている。
【0039】
乳化分散処理槽底面2にはメカニカルシール10が固定してあり、モーターハウジング9に固定されたモーター8のモーターシャフト11の動力を回転ブレード6へと伝達するようになっている。モーターハウジング9は傾き調整手段12によってベース13上に水平に固定されている。
【0040】
ここで、回転ブレード6と乳化分散処理槽は板厚3mmのステンレス製であり、メカニカルシール10はダブルメカニカルシール、モーターは10000rpm以上の回転が可能なDCブラシレスモーターである。
【0041】
尚、回転ブレード6の材質はチタン合金や鉄にメッキを施したものの他、セラミックなどでもよい。
【0042】
また、排水処理によって発生した汚泥は汚泥貯留タンク51に貯留されており、汚泥貯留タンク51には汚泥供給ポンプ52が設置されている。
【0043】
上記構成において、汚泥供給ポンプ52によって汚泥貯留タンク51から汲み出された汚泥は1次処理液導入口4から1次処理液導入管17を通り、乳化分散処理槽へ流入し、回転ブレード6によって乳化分散処理された後、2次処理液導出口5からオーバーフローする。
【0044】
2次処理液導出口5は回転ブレード6の回転によって発生する液面上のくぼみ7が、回転ブレード6に達することができる高さに設定されている。
【0045】
2次処理液導出口5の位置が高すぎて、回転ブレード6の回転によって発生する液面上のくぼみ7が回転ブレード6に達することが出来なかった場合、大きな振動が発生し、メカニカルシール10やモーター8や傾き調整手段12などが破壊される恐れがあり、運転を継続することはできなかった。
【0046】
また、1次処理液導入管17の下端は回転ブレード6によって発生する液面上のくぼみ7によって大気へ開放されているため、1次処理液は乳化分散処理槽液中の圧力を受けることがなく、安定して回転ブレード部分に導かれる。
【0047】
1次処理液導入管17がない場合は、1次処理液は1次処理液導入口4から空気中を直接流下するため、回転ブレード6によって発生する乳化分散処理槽内の気流の乱れの影響を受けて、回転ブレード部分に流下できない場合があり、処理が不安定であった。
【0048】
以上のように、処理中の最高液位を回転ブレード6の回転によって発生する液面上のくぼみ7が、回転ブレード6に達することが出来る高さに維持できるため、粒径が100μm以上の汚泥フロックの破砕を低エネルギーで連続して処理できる。
【0049】
なお、傾き調整手段は防振ゴムなどを用いて、防振手段と併用してもよい。
【0050】
また、オーバーフロー以外では、流量調整弁を使用することにより、乳化分散処理槽の導出入量を等しくして、最高液位を一定に維持することも可能である。
【0051】
図2は本発明における他の実施例の連続式乳化分散処理装置を示す構成図である。図1と同じ構成については同一符号を付し、説明は省略する。
【0052】
乳化分散処理槽は乳化分散処理槽側面21と乳化分散処理槽底面22からなり、乳化分散処理槽側面21を囲うように2次処理液受槽30が配置されており、2次処理液受槽30の上部には2次処理液受槽天面23を設けている。2次処理液受槽30の底面は乳化分散処理槽側面21に対して傾斜し、鋭角に接するような形状となっている。
【0053】
上記構成において、1次処理液導入口24から乳化分散処理槽へ流入した汚泥は、回転ブレード6によって乳化分散処理された後、乳化分散処理槽上端31からオーバーフローし、2次処理液受槽30へと流入する。2次処理液受槽30へ流入した2次処理液は、2次処理液導出口25から流出するようになっている。
【0054】
乳化分散処理槽上端31の全周からオーバーフローできるので、乳化分散処理中に1次処理液の流入量が増加した場合でも処理槽内の処理液量を一定に保持でき、乳化分散処理槽上端31の高さは回転ブレードの回転によって発生する液面上のくぼみが、回転ブレードに達することができる高さを保持できる。
【0055】
もし、乳化分散処理槽上端31の高さが高すぎる場合は図1の2次処理液導出口5の位置が高すぎる場合と同様であり、安定した運転を行うことはできなかった。また、乳化分散処理槽上端31を水平に保っておかなければ、乳化分散処理槽からのオーバーフローが不安定で、大きな振動が発生することもあった。
【0056】
したがって、乳化分散処理槽上端31を水平に切断するとともに、傾き調整手段12を用いて乳化分散処理槽の水平を保持することが重要である。
【0057】
図3は図2における連続式乳化分散処理装置の乳化分散処理槽の他の実施例を示す構成図である。図1、図2と同じ構成については同一符号を付し、説明は省略する。
【0058】
図3に示すように、乳化分散処理槽上端33は山刃状になっており、山刃の谷部分から2次処理液が流出するようになっている。乳化分散処理槽上端33の谷部分の乳化分散処理槽22からの高さは回転ブレード6の回転によって発生する液面上のくぼみ7が、回転ブレード6に達することができる高さに設定されている。
【0059】
このように乳化分散処理槽上端33を山刃状にすることで、山刃状になっている部分の谷部分から2次処理液が導出されるため、1次処理液の流入量が少量の場合でも、図2の水平の場合に比べ液面の表面張力が小さくなり2次処理液を安定して導出することができ、大きな振動の発生を防ぐことができる。
【0060】
図4は本発明の他の実施例における乳化分散処理装置を示す構成図である。図1と同じ構成については同一符号を付し、説明は省略する。
【0061】
乳化分散処理装置の乳化分散処理槽底面42は1次処理液導入口44を備えている。乳化分散処理槽の上部に配置された上部モーターベース49に設置されたモーター8の動力はカップリング15によって回転ブレード6へと伝達するようになっている。
【0062】
また、乳化分散処理槽底面42は傾き調整手段12によってベース13上に水平に固定されており、乳化分散処理槽天面43には回転ブレード6の回転軸を貫通させるための貫通口が設けてある。
【0063】
上記構成において、汚泥供給ポンプ52によって汚泥貯留タンク51から汲み出された汚泥は1次処理液導入口44から乳化分散処理槽へ流入し、回転ブレード6によって乳化分散処理された後、2次処理液導出口5からオーバーフローするようになっている。
【0064】
このように、1次処理液を乳化分散処理槽底面42から導入することで、1次処理液を容易に回転ブレード6の中心付近に導入できる。
【0065】
さらに、モーター8を乳化分散処理槽の上部に設置することが可能となるため、メカニカルシール10が不要となり、装置のイニシャルコストを下げることが可能となるとともに、モーター交換時などのメンテ性を向上することができた。
【0066】
図5は本発明の他の実施例における連続式乳化分散処理装置を示す構成図である。図1と同じ構成については同一符号を付し、説明は省略する。
【0067】
乳化分散処理槽内の液位は流入量流量計61と流出量流量計62の値が一定となるように、汚泥供給ポンプ52と汚泥導出ポンプ63を制御することで一定に維持することができ、液位は回転ブレード6の回転によって発生する液面上のくぼみ7が、回転ブレード6に達することが出来る高さに設定されている。
【0068】
汚泥供給ポンプの供給流量が汚泥導出ポンプの導出流量よりも多いと、回転ブレード6の回転によって発生する液面上のくぼみ7が回転ブレードに達することが出来ずに大きな振動が発生し、メカニカルシール10やモーター8や傾き調整手段12などが破壊される恐れがあり、安定した運転を行うことはできなかった。
【0069】
また、汚泥供給ポンプの供給流量が汚泥導出ポンプの導出流量よりも少ないと、乳化分散処理槽内が空になり処理が行えなかった。
【0070】
また、液位が低過ぎると、大きな振動は発生しないが、乳化分散処理時間が十分に確保できなくなり、乳化分散処理が不十分になってしまった。
【0071】
図6は本発明で使用する回転ブレードの一実施例の外形図で後述の実験に使用したものである。回転ブレードの材質はSUS304、板厚は1.5mm、外径は122mmであった。
【0072】
図7は図2で示した乳化分散処理装置を用いて行った汚泥の乳化分散処理実験の結果を表すグラフである。実験に用いた乳化分散処理装置は、乳化分散処理槽の容積は5L、乳化分散処理槽の内径は180mm、回転ブレードの外径は122mm、モーターの回転数は10000rpmであった。モーターの回転数が10000rpmの場合大きな振動が発生せず、安定した運転ができるためには乳化分散処理槽側面21の高さは280mm以下である必要があった。
【0073】
また、乳化分散処理の効果を出すためには7000rpm以上の回転数が必要であった。
【0074】
なお、安定した運転ができるための乳化分散処理槽側面21の高さは乳化分散処理槽の内径、回転ブレードの回転数、汚泥の性状(粘性、濃度)によって異なるが、回転ブレード6の回転によって発生する液面上のくぼみ7が回転ブレード6に達することが出来れば、大振動を発生することなく、安定して運転を行うことができた。
【0075】
一方、回転ブレード6の回転によって発生する液面上のくぼみ7が回転ブレード6に達することが出来ない場合は、液面上のくぼみ7が上下に振動することで回転ブレード6にかかる負荷が変動し、このため大振動が発生したと推測される。ここで、液面上のくぼみ7が回転ブレード6に達するとは、液面上のくぼみ7の底が回転ブレードの中心に達する程度である。
【0076】
乳化分散処理実験はバッチと連続の2つのパターンに分けて行い、バッチでは15秒、30秒、60秒の3パターンを、連続ではバッチと同じ時間乳化分散処理槽に汚泥が滞留するように、20L/分、10L/分、5L/分の3パターンで実験を行った。
【0077】
図7中に示す再基質化率とは、汚泥中に38μm未満のSS(Suspended Solid:懸濁物質)が含まれる割合であり、式(1)より算出され、この値が大きいほど汚泥が細かく破砕されていることになる。
【0078】
ε= (A2/A1)×100 ・・・(1)
ここで、ε:汚泥の再基質化率%、A1:汚泥の全TOCmg/L、 A2:汚泥中の38μm未満のSSに含まれるTOCmg/Lである。
【0079】
38μm未満のSSの抽出はろ紙用いた分級によっておこなった。また、TOCの測定は(株)島津製作所製の全有機炭素計TOC−Vcsn及び固体試料燃焼装置SSM−5000Aによって行った。
【0080】
図7より、バッチに対して連続は再基質化率が数%小さくなるものの、ほぼ同等の性能であることが分かる。
【0081】
また、汚泥1kgを処理するために投入するエネルギーE(Wh/kg)は式(2)より算出される。
【0082】
E=(W×T)/M ・・・(2)
ここで、W:モーターの消費電力(W)、T:乳化分散処理時間(h)、M:乳化分散処理した汚泥の質量(kg)である。
【0083】
したがって、処理時間30秒の場合はW=2400W、T=30秒/(60分×60秒)=8.3×10-3h、M=22,000mg/L×5L×10-6=0.11kgであり、これを式(2)に代入すると、
E=(2,400×8.3×10-3)/0.11=181Wh/kg
であり、超音波による800Wh/kgに対して、約80%の低エネルギーを実現することができた。
【0084】
また、乳化分散処理前の汚泥(処理時間0秒)の再基質化率は22%程度であり、粒径100μm以上の汚泥フロックがかなりの割合を占めていたが、30秒以上の乳化分散処理によって再基質化率が80%以上になっていることから、粒径100μm以上の汚泥フロックも破砕されたことが分かる。
【0085】
以上のように、本発明によれば、粒径が100μm以上の大きなフロックの汚泥を、低エネルギーで処理できる効率の良い汚泥の乳化分散処理装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明による乳化分散処理装置は、排水処理により発生する汚泥に対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施例における連続式乳化分散処理装置を示す構成図
【図2】本発明の他の実施例における連続式乳化分散処理装置を示す構成図
【図3】同連続式乳化分散処理装置の他の乳化分散処理槽を示す構成図
【図4】本発明の他の実施例における連続式乳化分散処理装置を示す構成図
【図5】本発明の他の実施例における連続式乳化分散処理装置を示す構成図
【図6】本発明で使用する回転ブレードの一実施例の外形を示す構成図
【図7】汚泥の乳化分散処理実験の結果を表すグラフ
【符号の説明】
【0088】
1、21 乳化分散処理槽側面
2、22、42 乳化分散処理槽底面
3、43 乳化分散処理槽天面
4、24、44 1次処理液導入口
5、25 2次処理液導出口
6 回転ブレード
7 液面上のくぼみ
8 モーター
9 モーターハウジング
10 メカニカルシール
11 モーターシャフト
12 傾き調整手段
13 ベース
15 カップリング
17 1次処理液導入管
23 2次処理液受槽天面
30 2次処理液受槽
31、33 乳化分散処理槽上端
49 上部モーターベース
51 汚泥貯留タンク
52 汚泥供給ポンプ
61 流入量流量計
62 流出量流量計
63 汚泥導出ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面と底面で構成された乳化分散処理槽の底部に回転ブレードを備え、前記乳化分散処理槽に1次処理液を導入し、前記回転ブレードによって1次処理液を乳化分散処理し、前記乳化分散処理槽内の最高液位を一定に維持しつつ、2次処理液を導出する連続式乳化分散処理装置であって、前記液位は、前記回転ブレードの回転によって発生する液面上のくぼみが、前記回転ブレードに達することができる高さとしたことを特徴とする連続式乳化分散処理装置。
【請求項2】
前記乳化分散処理槽の側面に2次処理液を導出する導出口を備え、前記導出口は、前記最高液位の高さに配置され、2次処理液は前記導出口からオーバーフローによって自然流下することを特徴とする請求項1記載の連続式乳化分散装置。
【請求項3】
前記乳化分散処理槽は側面の上端を覆う天面を有したことを特徴とする請求項1または2に記載の連続式乳化分散処理装置。
【請求項4】
前記乳化分散処理槽の側面を囲うように2次処理液受槽が配置され、前記2次処理液受槽は2次処理液を導出する導出口を備え、前記乳化分散処理槽の側面の最高高さは前記最高液位よりも下側とし、2次処理液は前記乳化分散処理槽の側面の上端からオーバーフローによって自然流下することを特徴とする請求項1記載の連続式乳化分散処理装置。
【請求項5】
前記2次処理液受槽の上端を覆う天面を有したことを特徴とする請求項4記載の連続式乳化分散処理装置。
【請求項6】
前記乳化分散処理槽の側面の上端が水平であることを特徴とする請求項4記載の連続式乳化分散処理装置。
【請求項7】
前記側面の上端は、山刃状になっていることを特徴とする、請求項6記載の連続式乳化分散処理装置。
【請求項8】
前記乳化分散処理槽の傾きを調節する傾き調整手段を設けたことを特徴とする請求項6記載の連続式乳化分散処理装置。
【請求項9】
前記乳化分散処理槽の側面に対して、前記2次処理液受槽の底面が傾斜しており、2次処理液導出口は前記2次処理液受槽の最下部に配置されたことを特徴とする請求項4記載の連続式乳化分散処理装置。
【請求項10】
前記回転ブレードの回転中心近傍に1次処理液を導入することを特徴とする請求項1記載の連続式乳化分散処理装置。
【請求項11】
前記乳化分散処理槽の底部から、1次処理液を導入させることを特徴とする請求項10に記載の連続式乳化分散処理装置。
【請求項12】
前記最高液位より上側に1次処理液を導入する1次処理液導入口を設け、前記1次処理液導入口から前記乳化分散処理槽へ1次処理液を導入させることを特徴とする請求項10に記載の連続式乳化分散処理装置。
【請求項13】
前記1次処理液導入口から、前記回転ブレードの回転中心近傍へ、1次処理液導入管を垂下し、前記1次処理液導入管より1次処理液を導入させることを特徴とする請求項12に記載の連続式乳化分散処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−56389(P2009−56389A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225560(P2007−225560)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】