説明

連続揚重装置

【課題】 ビル等の建設工事において、各階での工事のために必要な種々の資材を、当該階に効率よく連続荷上げ可能な装置を提供する。
【解決手段】 建物1内の資材搬入空間内2において、資材4の荷上げ方向に沿って延在するステップロッド20を介して、上下方向に昇降可能な油圧ジャッキ12を搭載した主受桁15と、ステップロッド20を仮受け支持可能な補助受桁16とからなる受桁ユニット11と、補助受桁16に吊持され、資材4を積載し、資材4を対象階で荷下ろしする荷取りステージ30と、ステップロッド20に着脱自在に取り付けられ、ステップロッド20の延長方向に沿って複数個を取り付けて、各位置で資材4を保持可能な荷受け梁40とを備える。油圧ジャッキ12の動作によりステップロッド20の引き上げを行って、荷下ろし階に支持させた荷取りステージ30上に、荷受け梁40に保持された資材4を受け替えた後、荷下ろし階に資材4を連続して荷下ろしさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続揚重装置に係り、ビルディング等の建設工事において、各階の躯体構築、仕上げ、設備工事のために必要な各種の資材を、当該階に効率よく荷上げできる連続揚重装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルディング等などの建築工事では、鉄骨、鉄筋、型枠等の仮設資材などの躯体施工のための資材(以下、躯体材と記す。)の荷上げは、建物平面内で稼働可能な所定位置に立設されたタワークレーンや、機動性のあるクローラクレーン、ラフタークレーン(以下、クレーン等と記す。)などを使用して行なわれる。また、狭小地での建築工事において、構築中の建物内に資材を仮置きできるようしたトロリークレーン装置等も開発されている(特許文献1)。
【0003】
また、ボード、パネル、天井板・床材等、後続する内装仕上工事のための資材(以下、仕上材と記す。)や、ダクト、電線、通信ケーブル、空調機、照明器具などの設備工事のための資材(以下、設備材と記す。)の荷上げは、すでに完成した躯体内外に仮設として設置された工事用エレベータや建設用リフト(以下、工事用エレベータ等と記す。)を設置して行なうことが多い(特許文献2)。
【0004】
さらに、後続する仕上材と設備材の荷上げを、躯体材を荷上げするクレーン等を並用することで、工事用エレベータなどの設置を省略することもできる。全ての荷上げを単独の揚重装置で実施する方法は、規模の小さい工事や5階建程度の高さの低い建物の施工において選択されることが多い。しかし、高層建物の施工では、躯体工事の進捗と、仕上げ設備工事の進捗とが並行する場合がある。このため、クレーン等の稼働効率が低下してしまい、工事全体の進捗速度を低下させてしまう恐れがある。この問題を解消するため、通常の高層建物の工事の場合には、当初から躯体材の荷上げに用いるクレーン等(建物の立ち上げに合わせてポストの継ぎ足しが可能なタワークレーンが好適)の他に、工事用エレベータ等を設置し、両者が役割を分担し並行して稼動することで工事全体の荷上げ時間を短縮し、工程短縮を図っている。こうすることで、クレーン等は躯体材の荷上げに専念でき、躯体の構築施工期間をより短くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−43284号公報
【特許文献2】特開平11−6301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、クレーン等では、地上(通常は1階)の荷置き場、および荷下ろし階での玉掛け作業を行う必要がある。荷下ろし階(上階)で荷を外された空のフックは次の荷を玉掛けするために地上まで下ろす必要がある。同様に、工事用エレベータでは、地上階で搬器に荷を積載し、上階まで搬器を引上げ搬器から荷を下ろす。上階で荷を下ろした搬器は、次の荷を積載するために地上まで下降させる必要がある。これらのクレーンのフックや搬器が上階から地上階へ戻される動作(戻り動作)の時、空荷であることが多く、搬送機械としては有効に活用されておらず無駄があると考えられる。戻り動作時に何らかの資材を搬送することでこの無駄を減らすことは可能だが、建設工事では、資材を搬入、荷上げする量が搬出・荷下ろしする量よりも圧倒的に高比率であることはあきらかで、特許文献1,2においても、この戻り動作による作業効率低下が改善すべき課題として残っている。
【0007】
また、特許文献1に開示された発明では、上述の問題に加え、トロリーが設置される階の工事がある程度まで完成しないと実現できないという問題がある。また、その階ではトロリーがたえまなく稼働し、その床部は資材置き場として利用されるため、当該階での後工程作業が遅れるという問題も生じる。
【0008】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、建築物の構築工事において、各階に各作業工程での必要資材を、効率よく搬入できるようにした連続揚重装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の連続揚重装置は、建物内に形成された資材搬入空間内を、資材の荷上げ方向に沿って延在する懸垂部材を介して昇降して、前記建物の所定階に資材を荷上げ可能な連続揚重装置であって、前記懸垂部材を介して上下方向に昇降可能な油圧昇降手段を搭載した主受桁と、前記懸垂部材を仮受け支持可能な補助受桁とからなる受桁ユニットと、前記補助受桁に吊持され、資材を積載し、該資材を対象階で荷下ろしする荷取りステージと、前記懸垂部材に着脱自在に取り付けられ、該懸垂部材の延長方向に沿って複数個を取り付けて、各位置で資材を保持可能な荷受け部材とを備え、前記油圧昇降手段の動作により前記懸垂部材の引き上げを行って、荷下ろし階に支持させた前記荷取りステージ上に、前記荷受け部材に保持された資材を受け替えた後、該荷下ろし階に前記資材を荷下ろしさせることを特徴とする。
【0010】
前記主受桁に搭載された油圧昇降手段は、資材荷上げ動作において、前記懸垂部材を引き上げることで、該懸垂部材に前記荷受け部材に保持された資材を、前記荷取りステージまで荷上げすることが好ましい。
【0011】
前記受桁ユニットを上階に移動させるために前記主受桁を吊り上げる際に、前記補助受け桁が、前記荷取りステージと、前記懸垂部材と、該懸垂部材で支持する資材とを所定階にて支持することが好ましい。
【0012】
前記主受桁が上階に支持された状態で、前記主受桁に搭載された油圧昇降手段により、前記懸垂部材を引き上げることで、該懸垂部材に保持された前記補助受桁と、前記荷取りステージと、前記資材とを上方移動させるようにしたことが好ましい。
【0013】
前記主受桁と、補助受桁と、荷取りステージの桁材とは、桁端に伸縮自在なブラケットを有し、該ブラケットを所定階の前記資材搬入空間を臨む躯体の開口縁に、資材荷上げ動作、前記受桁ユニットの昇降動作のタイミングに応じて係止させて、対応する桁を所定階の躯体の開口縁に支持させることが好ましい。
【0014】
前記荷取りステージは、前記資材が通過可能な空間を確保できるように、床板が開閉可能に取り付けられるようにすることが好ましい。
【0015】
前記荷取りステージは、前記受桁ユニットの補助受桁に吊り部材を介して吊り高さ調整可能に吊持することが好ましい。
【0016】
前記荷受け部材は、隣接する前記懸垂部材間に掛け渡され、端部に前記懸垂部材を把持可能なクランプ機構を備えることが好ましい。
【0017】
前記懸垂部材は、前記受桁ユニットの上昇高さに応じて所定長さごとに継ぎ足される鋼棒を用いることが好ましい。
【0018】
前記油圧昇降手段は、前記懸垂部材を軸線方向に挿通可能なセンターホールジャッキからなり、内蔵された伸縮可能な油圧駆動シリンダロッドと、複数段の把持手段との連動動作により、前記懸垂部材を、軸線方向に所定ストロークで往復送り出し可能な機構とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、各種の建設資材の荷上げを連続的に効率良く行うことができる。また、タワークレーン等の躯体材の荷上げ用揚重機は、本装置のクライミング作業時等の一部の作業のみに使用するだけで、躯体構築工事の妨げにはならず、本工事の工期短縮が図れる。さらに、揚重装置としてジャッキを使用しているので、工事用エレベータに比べて容易に重量物の搬送が行え、各種の資材を荷上げすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の連続揚重装置の全体構成を示した斜視図。
【図2】図1に示した連続揚重装置のうち、受桁ユニットの全体構成を示した斜視図。
【図3】受桁ユニットの主受桁の構成を示した斜視図。
【図4】受桁ユニットの補助受桁の構成を示した斜視図。
【図5】荷取りステージの構成と、資材ユニットを積載した状態を示した斜視図。
【図6】ステップロッド20に取り付けられた荷受け梁の構成と資材ユニットとを示した斜視図。
【図7】資材ユニットの荷上げ作業手順を模式的に示した説明図。
【図8】受桁ユニットおよび荷取りステージのクライミング時の動作手順を模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の連続揚重装置の実施するための形態として、以下の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0022】
図1は、本実施例の連続揚重装置10が建物1の各階Fを上下方向に貫通して形成された資材搬入空間2内に設置され、資材ユニットを所定階に荷上げし、搬入している状態を示した全体構成図である。
【0023】
連続揚重装置10は、所定階に支持され搭載された昇降手段で上下階間を昇降可能な受桁ユニットと、この受桁ユニット11を資材搬入空間2内において昇降手段を介して支持する懸垂部材としての4本のステップロッド20と、昇降手段としての油圧ジャッキと油圧ジャッキ12を運転制御する制御ユニット13と、受桁ユニット11の一部に、吊り部材を介して吊持された荷取りステージと、隣接するステップロッド20間に掛け渡されるように、ステップロッド20の上下方向に所定間隔をあけて取り付けられ、取付られた各高さ位置で資材ユニット4を支持する荷受け梁40とから構成されている。
【0024】
[受桁ユニットの構成]
図2〜図4は、受桁ユニット11の全体構成(図2)、油圧ジャッキ12等の昇降手段を搭載した主受桁(図3)と、主受桁15の両側面に平行をなして配置された補助受桁(図4)の初期状態における状態を示している。これらのうち主受桁15と、補助受桁16は、図2〜図4に示したように、同一形状の薄板状の鋼製の組立箱桁からなり、その長手方向桁長は、資材搬入空間2よりわずかに短く、その両端部には、それぞれ伸縮自在な伸縮ブラケット15a,16aが設けられている。これらの伸縮ブラケット15a,16aは、図3、図4に破線で示したように、縮退時は箱桁端部内に収容され、伸長させた状態では、各階の資材搬入空間2の端部の躯体の上階の開口縁に係止し、主受桁15、補助受桁16の合計4本の受桁が同様に両端支持され、装置荷重を負担する。伸縮ブラケット15a,16aの伸縮動作は、図示しないシリンダロッドの伸縮による油圧駆動あるいは作業員による手作業によって行われる。さらに、2本の主受桁15上には、図3に示したように、桁間を跨ぐように2本のジャッキ受け台14が油圧ユニット13を挟んで設置されている。各ジャッキ受け台2は、2本の油圧ジャッキ12が設置され、油圧ユニットはこれら4本の油圧ジャッキ12を駆動することができる。
【0025】
主受桁15のジャッキ受け台14上に設置された油圧ジャッキ12は、公知の油圧駆動のセンターホールタイプの単動式ジャッキで、軸方向に形成されたセンターホール内に、後述する懸垂部材としてのステップロッド20が挿通される。この油圧ジャッキ12は、ジャッキの軸線方向にセンターホールを有し、このセンターホールを囲むように、油圧で伸長可能なシリンダ(図示せず)を内蔵する。シリンダの上下位置にはステップロッド20の把持機構としての公知の構成からなるコレット(本明細書ではチャックと同義に取り扱う。)が配設されている。各コレットは内蔵スプリングによって初期状態が保持されている。そして導入された油圧によりシリンダが伸長すると、伸長するシリンダに対して、シリンダの上下に位置し、上昇あるいは下降に対応した側のコレットがステップロッド20を把持し、シリンダが伸長する側のコレットが開放され、ステップロッド20はシリンダ伸長量に応じた所定ストローク分だけ、上方あるいは下方へ移動することができる。シリンダ伸長後に油圧解除することにより、シリンダは縮退し初期状態となるが、ステップロッド20はスプリング付勢されたコレットによって把持されているため、移動後の位置が確保される。この所定ストロークのシリンダ伸長、縮退動作を繰り返すことにより、ステップロッド20を所定量だけ上方あるいは下方に移動させることができる。
【0026】
受桁ユニット11の補助受桁16は、図2,図4に示したように、上述した主受桁15とほぼ同一形状からなり、補助受桁16の長手方向端面にも、主受桁15と同様の伸縮ブラケット16aが設けられている。この伸縮ブラケット16aを伸長させ、対象階の資材搬入空間2の端部の躯体の開口縁に係止し、補助受桁16が躯体の対象階において両端支持される。この補助受桁16は、図4に示したように、懸垂部材としてのステップロッド20が桁内を上下方向に貫通する構造となっている。そして、各ステップロッド20が貫通する位置の桁上面には、それぞれ荷重仮受けチャックが設けられている。この荷重仮受けチャック18によりステップロッド20を把持して仮支持することができる。
【0027】
荷重仮受けチャック18は、図4の拡大図に示したように、センターホール形状からなり、センターホールにステップロッド20を貫通させるように桁上面に埋設設置されている。荷重仮受けチャック18の内部には油圧あるいは手動で動作するチャック(図示せず)が内蔵されている。このチャックを開閉させることで、ステップロッド20を把持、開放させることができる。ステップロッド20を把持した状態で、ステップロッド20に作用する垂直方向の荷重を支持することができる。
【0028】
[懸垂部材の構成]
本実施例では、懸垂部材として、ステップロッド20と称する、所定形状の節部が軸方向に連続形成された公知の加工鋼棒が使用されている。本発明では、図1に示したように、受桁ユニット11の主受桁15に搭載されたセンターホールタイプの油圧ジャッキ12、補助受桁16の荷重仮受けチャック18のセンターホールに挿通されている。また、後述する荷受け梁40の両端クランプ41を所定位置に取り付けることができる。ステップロッド20は所定の単位長のロッドを同直径のカップラーで複数本連結して使用する。懸垂部材としては、本実施例のステップロッド20の他、連結部にねじ切り加工が施されたねじ節鉄筋、丸鋼棒、撚り鋼線ワイヤ等を使用することができる。丸鋼棒、撚り鋼線ワイヤを用いる場合には、コレットに相当する部位に比較的鋭利な歯が形成されたチャックを使用することが好ましい。これにより、懸垂部材を支持する際の滑りを防止することができる。
【0029】
[荷取リステージの構成]
図5(a)は、補助受桁16の下面から吊り部材を介して吊持された荷取りステージ30と、この荷取りステージ30のステージ床32上に着床される予定の資材ユニット4とを示した説明図、図5(b)は荷取りステージ30の床板31が閉じられ、ステージ床32が形成された状態を示した説明図、図5(c)は荷取りステージ30と、そのステージ床32上に着床された資材ユニット4とを示した説明図である。
【0030】
荷取りステージ30は、桁材35と、桁材35間を連結するつなぎ梁36をフレームとし、桁材35の対向した内側下端に床板31が蝶番(図示せず)を介して連結されている。この床板31は、起立転倒させることで開閉自在なステージ床32を構成する。なお、床板31にはスリット34が形成されている。このスリット34により、ステップロッド20との干渉を回避する。また、受桁15、補助受桁16と同様に、桁材の両端部に伸縮可能な伸縮ブラケット35aが設けられ、躯体の上階搬送終了階(荷下ろし階)に両端支持できるようになっている。また、床板31を起立して開いた状態では、荷上げする資材ユニット4がフレームで囲まれた開口部分を通過することができる。よって、運用時には床板31を起立して開いた状態で資材ユニット4を通過させた後に、床板31を閉じてステージ床32を形成し(図5(b)参照)、通過した資材ユニット4を下降させる。そのときステージ床32に台車などを介在させて着床させ、後述する荷受け梁40を外して資材ユニット4をステップロッド20から切り離してステージ床32上を移動させ、荷下ろし対象階に搬入することができる。
【0031】
なお、荷取りステージ30は、4本の吊り部材で補助受桁16の下面に吊持されている。本発明の受桁ユニット11のクライミング時には、吊り部材38を操作して荷取りステージ30を荷下ろし階からわずか浮上させ、伸縮ブラケットを縮退させ、補助受桁16と一体に上階へ吊り上げられる。
【0032】
荷取りステージ30を補助受桁16の下面に吊持するために、本発明では、吊り部材38としてチェーンブロックを用いている。このチェーンブロック38は、資材ユニット4の荷上げ時には、荷取りステージ30が荷下ろし階の躯体の開口縁に両端支持されているので、緩められた状態にある。受桁ユニット11のクライミング時には、このチェーンブロック38を巻き上げて荷取りステージ30を躯体から浮上させ、荷取りステージ30の伸縮ブラケット35aを縮め、補助受桁16とともに上階へ盛替えられる。
【0033】
荷受け梁40は、図6に示したように、荷上げされる資材ユニット4をステップロッド20で支持させる2本で1組の、それぞれの端部がステップロッド20に着脱自在な梁材である。その両端にはステップロッド20を把持するクランプ41が設けられいる。このクランプ41介して荷受け梁40をステップロッド20に形成された節部に確実に取り付けられるようになっている。
【0034】
[資材ユニットの構成]
資材には、上述したように、躯体材、仕上げ材、設備材等の各種寸法、形状のものが存在する。それらを連続して無駄なく荷上げするために、本発明では、所定容積内に資材を収め、パレット(図示せず)等を用いてユニット化した資材ユニット4を荷受け梁40に載置して荷上げするにようにしている。
【0035】
[資材ユニットの荷上げ作業]
上述した構成からなる連続揚重装置10を用いて行う資材ユニット4の荷上げ作業について、図7(a),(b)を参照して説明する。
(1)資材ユニット4のステップロッド20への組み付け(地上階)
(1-1)地上階にて、資材ユニット4をフォークリフト(図示せず)などを使用して、本揚重装置が設置された資材搬入空間2の下部開口位置に移動させ、2本1組の荷受け梁40上にセットする。
(1-2)主受桁15の油圧ジャッキ12に保持されている4本のステップロッド20の下端にジョイント部材(図示せず)を利用してステップロッド20を継ぎ足し、ステップロッド20の所定位置に荷受け梁40の両端にあるクランプを取付ける。
(2)資材ユニット4の上方への荷上げ
(2-1)主受桁15の油圧ジャッキ12のシリンダ伸縮動作とコレットによるロッド支持を反復させて、複数個の資材ユニット4が取り付けられたステップロッド20を、主受桁15位置から上方階へステップ送り(上昇)する。このステップロッド20の上昇動作によって、ステップロッド20に取付けられた複数個の資材ユニット4は上方へ荷上げされる。なお、このステップロッド20上昇動作時には、補助受桁16の荷重仮受けチャック18は解放状態とする。
(2-2)上昇動作の進行に伴って、主受桁15の油圧ジャッキ12の上側にステップロッド20が次々と繰り出されていく。ステップロッド20の連結位置がジャッキ上方に到達した時点で、ジャッキ上方に出したステップロッド20は順次連結位置で切り離して取外し、仮設エレベータなどを利用して地上階へ下ろすことが好ましい。
(3)資材ユニット4の荷下ろし階F(n)での荷下ろし作業
(3-1)あらかじめ、荷取りステージ30を荷下ろし階まで上昇させ、伸縮ブラケット35aを伸長しておき(図5(a))、躯体側に支持させた状態にする。荷取りステージ30の床板31は上方に起立させておき、桁材35の間を資材ユニット4が通過できる状態にしておく。
(3-2)ステップロッド20の上昇動作により、複数個の資材ユニット4を上方に荷上げし、最上位置の資材ユニット4が荷取りステージ30のステージ面を通過した状態で床板31を閉じてステージ床32を形成する(図5(b))。
(3-3)主受桁15の油圧ジャッキ12のシリンダ伸縮動作とコレットによるロッド支持を逆手順で行って資材ユニット4を所定量だけ降下させて最上位置の資材ユニット4を荷取りステージ30のステージ床32に着床させる(図5(c))。このとき、必要に応じて台車などを資材の下部に配置し、荷下ろし階F(n)への横引き作業を効率化させることが好ましい。
(3-4)最上位置の資材ユニット4が荷取りステージ30のステージ床32に着床したら、荷受け梁40のクランプをステップロッド20から切り離す。
(3-5)資材ユニット4を荷取りステージ30から対象階へ横引き移動する。取外した荷受け梁40は、別途仮設エレベータなどを利用して地上階へ下ろす。
(3-6)1組の資材ユニット4を対象階に移動させたら、上述と同様の手順で、荷取りステージ30の床板31を再度起立して開き、ステップロッド20に支持されている次の資材ユニット4の取り込み作業を行う。そして、必要な数の資材ユニット4を連続して対象階に荷上げすることができる。
【0036】
[連続揚重装置のクライミング時の動作手順]
所定の荷下ろし階F(n−1)での荷上げが完了したら、連続揚重装置10を設置階F(n)から上階F(n+1)に引き上げ、新たな荷下ろし階F(n)での上述した資材ユニット4の荷上げ作業を行う。そのための連続揚重装置10の上階F(n+1)へのクライミング動作手順について、図8各図を参照して説明する。
【0037】
(1)荷取りステージ30の上昇準備(図8(a))
(1-1)荷取りステージ30を吊持している4本のチェーンブロック38を巻上げ、荷下ろし階F(n−1)にある荷取りステージ30を躯体から浮かした状態にする。
(1-2)荷取りステージ30の伸縮ブラケット35aを縮退する。
【0038】
(2)補助受桁16への荷重の受け替え(図8(a))
(2-1)ステップロッド20が挿通している、装置設置階F(n)にある補助受桁16の荷重仮受けチャック18(図4)を作動させ、ステップロッド20を把持して補助受桁16側で支持できる状態にする。
(2-2)主受桁15上の油圧ジャッキ12を、資材ユニット4を下降させる側にわずかに作動させ、ステップロッド20介して伝えられる、複数個の資材ユニット4の荷重を補助受桁16で支持するように盛り替える。
(2-3)主受桁15上の油圧ジャッキ12を解放した状態にする。
【0039】
(3)主受桁15の上階F(n+1)への吊り上げ、盛替え(図8(b),(c))
(3-1)主受桁15に玉掛けを行ない、タワークレーン等の別の揚重設備(図示せず)のワイヤWに吊られた主受桁15を躯体から浮かした状態にし、主受桁15の伸縮ブラケット15aを縮め、その状態から上述した別の揚重設備のワイヤWの巻き上げにより、主受桁15を上階F(n+1)へ吊り上げる。
(3-2)上階F(n+1)に位置した主受桁15の伸縮ブラケット15aを伸ばし、ワイヤWをわずかに巻き下げ、主受桁15の両端を上階F(n+1)の躯体の開口縁で支持させる(図8(c))。このときステップロッド20は、主受桁15を上階F(n+1)へ盛替えた後にも主受桁15の油圧ジャッキ12がステップロッド20を把持できる程度の長さまでジャッキ上方の突き出し長を確保しておく。
【0040】
(4)主受桁15への荷重受け替え(図8(c))
主受桁15の油圧ジャッキ12を作動させ、ジャッキ内のシリンダロッド(図示せず)をわずかに伸長してステップロッド20を油圧ジャッキ12で支持する。これにより装置荷重は主受桁15に受け替えられる。
【0041】
(5)補助受桁16、荷取りステージ30、資材ユニット4の上昇
(5-1)主受桁15の油圧ジャッキ12のシリンダ伸縮とコレットによるロッド支持とを反復動作させて、ステップロッド20を上方へ移動させる。このステップロッド20の引き上げ動作によって、ステップロッド20を把持している補助受桁16と複数個の資材ユニット4とが同時に上方へ持ち上げられる(図8(d))。
(5-2)補助受桁16が、主受桁15が設置された上階F(n+1)まで引き上げられたら、補助受桁16の伸縮ブラケット16aを伸長し、補助受桁16を躯体で支持させる。続いて補助受桁16の荷重仮受けチャック18のステップロッド20把持を開放する(図8(e))。
【0042】
(6)荷取りステージ30の再セット(図8(e),(f))
補助受桁16に吊持された荷取りステージ30は、図8(e)に示したように、受桁ユニットの下階の新しい荷下ろし階F(n)に達している。その状態で荷取りステージ30の桁材35の伸縮ブラケット35aを伸長し、荷取りステージ30を吊持しているチェーンブロック38をわずかに巻き下げて荷取りステージ30を新しい荷下ろし階F(n)の開口縁部で支持する。以後、図7(a)に示した状態となり、新たな荷下ろし階F(n)への資材ユニット4の荷上げ作業を連続して行うことができる。
【0043】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 建物
2 資材搬入空間
4 資材ユニット
10 連続揚重装置
11 受桁ユニット
12 油圧ジャッキ
13 制御ユニット
15 主受桁
15a,16a,35a 伸縮ブラケット
16 補助受桁
20 ステップロッド(懸垂部材)
30 荷取りステージ
31 床板
32 ステージ床
35 桁材
38 チェーンブロック(吊り部材)
40 荷受け梁
41 クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に形成された資材搬入空間内を、資材の荷上げ方向に沿って延在する懸垂部材を介して昇降して、前記建物の所定階に資材を荷上げ可能な連続揚重装置であって、
前記懸垂部材を介して上下方向に昇降可能な油圧昇降手段を搭載した主受桁と、前記懸垂部材を仮受け支持可能な補助受桁とからなる受桁ユニットと、
前記補助受桁に吊持され、資材を積載し、該資材を対象階で荷下ろしする荷取りステージと、
前記懸垂部材に着脱自在に取り付けられ、該懸垂部材の延長方向に沿って複数個を取り付けて、各位置で資材を保持可能な荷受け部材とを備え、
前記油圧昇降手段の動作により前記懸垂部材の引き上げを行って、荷下ろし階に支持させた前記荷取りステージ上に、前記荷受け部材に保持された資材を受け替えた後、該荷下ろし階に前記資材を荷下ろしさせることを特徴とする連続揚重装置。
【請求項2】
前記主受桁に搭載された油圧昇降手段は、資材荷上げ動作において、前記懸垂部材を引き上げることで、該懸垂部材に前記荷受け部材に保持された資材を、前記荷取りステージまで荷上げすることを特徴とする請求項1に記載の連続揚重装置。
【請求項3】
前記受桁ユニットを上階に移動させるために前記主受桁を吊り上げる際に、前記補助受け桁が、前記荷取りステージと、前記懸垂部材と、該懸垂部材で支持する資材とを所定階にて支持することを特徴とする請求項1に記載の連続揚重装置。
【請求項4】
前記主受桁が上階に支持された状態で、前記主受桁に搭載された油圧昇降手段により、前記懸垂部材を引き上げることで、該懸垂部材に保持された前記補助受桁と、前記荷取りステージと、前記資材とを上方移動させるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の連続揚重装置。
【請求項5】
前記主受桁と、補助受桁と、荷取りステージの桁材とは、桁端に伸縮自在なブラケットを有し、該ブラケットを所定階の前記資材搬入空間を臨む躯体の開口縁に、資材荷上げ動作、前記受桁ユニットの昇降動作のタイミングに応じて係止させて、対応する桁を所定階の躯体の開口縁に支持させることを特徴とする請求項1に記載の連続揚重装置。
【請求項6】
前記荷取りステージは、前記資材が通過可能な空間を確保できるように、床板が開閉可能に取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載の連続揚重装置。
【請求項7】
前記荷取りステージは、前記受桁ユニットの補助受桁に吊り部材を介して吊り高さ調整可能に吊持されたことを特徴とする請求項1に記載の連続揚重装置。
【請求項8】
前記荷受け部材は、隣接する前記懸垂部材間に掛け渡され、端部に前記懸垂部材を把持可能なクランプ機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の連続揚重装置。
【請求項9】
前記懸垂部材は、前記受桁ユニットの上昇高さに応じて所定長さごとに継ぎ足される鋼棒であることを特徴とする請求項1に記載の連続揚重装置。
【請求項10】
前記油圧昇降手段は、前記懸垂部材を軸線方向に挿通可能なセンターホールジャッキからなり、内蔵された伸縮可能な油圧駆動シリンダロッドと、複数段の把持手段との連動動作により、前記懸垂部材を、軸線方向に所定ストロークで往復送り出し可能としたことを特徴とする請求項1に記載の連続揚重装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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