説明

連続気泡発泡体の製造方法

【課題】無数の貫通孔による強度低下がなく、しかも、表面に大きな窪みや皺を生じさせない連続気泡発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】独立気泡発泡体1の少なくとも一方の面を所定の厚みだけ薄く切り取って、コア層が露出した独立気泡発泡体1を製作する。つぎに独立気泡発泡体1aの厚み方向に貫通するガス抜き8を所定間隔毎に複数形成してガス抜き8が点在した独立気泡発泡体1bを製作する。つぎに独立気泡発泡体1bを一対の回転ロール30,31間に導入して厚み方向に圧縮することにより独立気泡間を連通させて連続気泡化し、連続気泡発泡体9を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡体のような独立気泡発泡体を連続気泡化して連続気泡発泡体を製造するための連続気泡発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂に有機過酸化物を添加するか、電子線などの放射線を照射するかしてポリオレフィン系樹脂を架橋させた後、ポリオレフィン樹脂に含有させた有機分解型発泡剤を分解させて架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造している。この架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、気泡の構造が非常に微細な独立気泡構造であるが、これはポリオレフィン系樹脂が強靱であるために有機分解型発泡剤の分解によって生じた気泡の膜が破壊されないためである。
【0003】
従来、連続気泡発泡体として提供されているのは殆どがポリウレタン樹脂発泡体であり、ポリオレフィン系発泡体に比して耐候性、耐薬品性、耐水性に劣り、連続気泡のポリオレフィン系樹脂発泡体の出現が望まれていた。
【0004】
この要望に応えるものとして、先般、外周面に多数の針状物が植設された回転ロールとこの回転ロールに対向配置された他の回転ロールとの間に独立気泡発泡体を導入し、2個の回転ロール間で独立気泡発泡体を挟圧しつつ針状物を独立気泡発泡体の厚み方向に貫通させて独立気泡発泡体の独立気泡を連通させることにより連続気泡発泡体を製造する方法が提案された(例えば、特許文献1参照)。ここで、独立気泡発泡体を挟圧するのは、独立気泡を扁平な状態として針状物により確実に突き刺せるようにするとともに、独立気泡内の圧力を高めた状態で針状物で突き刺して独立気泡を円滑かつ確実に破壊するためである。
【0005】
【特許文献1】特開2002−265661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した連続気泡発泡体の製造方法において、独立気泡発泡体の連続気泡化を十分に行うためには、回転ロールの外周面に植設する針状物の径を小さくして植設密度を高める必要があるが、そのような回転ロールの製作や保守は容易でなく、製作および保守管理のための費用が嵩むという問題がある。また、得られた連続気泡発泡体には針状物による無数の貫通孔が高密度に形成されるため、引っ張り強度や引き裂き強度が大幅に低下するという問題もある。
【0007】
一方、外周面が平滑な一対の回転ロール間に独立気泡発泡体を導入し、2個の回転ロール間で独立気泡発泡体を挟圧することにより圧力を独立気泡に作用させて破壊し連通させるという方法もある。しかし、この方法では、独立気泡発泡体の表面は固いスキン層になっているので、独立気泡内の圧力が高まると、表面のスキン層に接する独立気泡はスキン層を突き破る以前に隣接する独立気泡と連通する。そして、気泡が次第に大きく成長した後、気泡内の圧力が高まったとき、表面のスキン層が強く突き破られるので、得られた連続気泡発泡体の表面に大きな窪みや皺が形成され、外観をひどく低下させる。
【0008】
この発明は、上記問題に着目してなされたもので、無数の貫通孔による強度低下がなく、しかも、表面に大きな窪みや皺を生じさせない連続気泡発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による連続気泡発泡体の製造方法は、独立気泡発泡体の少なくとも一方の面を所定の厚みだけ薄く切り取ったうえで、独立気泡発泡体を一対の回転ロール間に導入して厚み方向に圧縮することにより独立気泡間を連通させて連続気泡化することを特徴とするものである。
【0010】
この発明による他の連続気泡発泡体の製造方法は、独立気泡発泡体の少なくとも一方の面を所定の厚みだけ薄く切り取るとともに、独立気泡発泡体の厚み方向に貫通するガス抜きを所定間隔毎に複数形成したうえで、独立気泡発泡体を一対の回転ロール間に導入して厚み方向に圧縮することにより独立気泡間を連通させて連続気泡化することを特徴とするものである。
【0011】
この発明の上記した構成において、「独立気泡発泡体の少なくとも一方の面を所定の厚みだけ薄く切り取る」とは、独立気泡発泡体の製造によって生じる固いスキン層を切り取って内部のコア層を露出させることをいう。これにより、独立気泡発泡体に回転ロールによる加圧力が作用したとき、気泡は内部で連通して大きく成長する前に表面に位置する気泡と連通するので、表面よりガスが抜け、大きな窪みや皺を発生させない。
【0012】
また、「独立気泡発泡体の厚み方向に貫通するガス抜き」は、孔状、溝状、切り目状など、形状や大きさを問わない。このようなガス抜きが点在すると、たとえ複数の気泡が連通して内部で成長しようとしても、いずれかのガス抜きに連通してガスが抜けるので、気泡の成長が阻止され、大きな窪みや皺の発生を防止できる。
【0013】
この発明の好ましい一実施態様においては、独立気泡発泡体は放射線架橋のポリオレフィン系樹脂発泡体であるが、これに限らず、化学架橋剤で架橋したポリオレフィン系樹脂発泡体にも適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明による連続気泡発泡体の製造方法は、独立気泡に針状物を突き刺して連続気泡化するというものでないから、針状物が密に植設された回転ロールを製作する必要がなく、回転ロールの製作および保守管理の費用が嵩むのを防止できる。また、得られた連続気泡発泡体には針状物による無数の貫通孔が高密度に形成されることがないので、引っ張り強度や引き裂き強度は低下しない。
さらに、独立気泡発泡体の固いスキン層を除去してコア層を露出させるので、回転ロールにより加圧したとき、表面に位置する気泡の膜が突き破られて表面よりガスが抜け易いので、大きな窪みや皺が発生しない。
さらにまた、独立気泡発泡体の厚み方向に貫通するガス抜きが点在するので、たとえ複数の気泡が連通して内部で成長しようとしても、いずれかのガス抜きに連通してガスが抜けるので、気泡の成長が阻止され、大きな窪みや皺の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、この発明の連続気泡発泡体の製造方法の一実施例を示している。
図示例の連続気泡発泡体の製造方法は、図1(1)に示すスライス工程と、図1(2)に示す穿孔工程と、図1(3)に示す加圧工程とを順次実施して、独立気泡発泡体から連続気泡発泡体を製造するものであるが、この工程の手順は、穿孔工程の後にスライス工程を実施しても良く、また、材料によっては穿孔工程を省略することもできる。
なお、図1(1)〜図1(3)の各工程は、同じ場所で一連に実施してもよいが、例えば、図1(1)(2)の工程と図1(3)の工程とを切り離し、それぞれを別の場所で実施してもよい。
【0016】
図(1)に示すスライス工程は、独立気泡発泡体1の両面について表面をカッター10により薄く切り取る工程である。独立気泡発泡体1は帯状シートであり、巻取ロール11に巻き取られている。巻取ロール11より繰り出された独立気泡発泡体1はガイド板12やガイドローラ13,14によりカッター10に導かれ、表面が所定の厚みだけ薄く切り取られる。他方の面についても同様にして表面が薄く切り取られる。
【0017】
図示例の独立気泡発泡体1は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの独立気泡のポリオレフィン系樹脂発泡体であり、ポリオレフィン系樹脂に電子線、α線、β線、γ線、X線などの放射線を照射して例えば5倍〜50倍で加熱発泡させた放射線架橋のポリオレフィン系樹脂発泡体である。この独立気泡発泡体1は、図2に示すように、多数の独立気泡7が気泡膜を介して連なっているコア層2を有し、コア層2の表裏両面に固いスキン層3,4が存在している。同図中、点線5,6は前記カッター10によるスライスラインを示しており、このスライスライン5,6に沿って表面を薄く切り取ることによりスキン層3,4が除かれかつコア層2が露出した独立気泡発泡体1aが得られる。
【0018】
図1(2)は、両面のスキン層3,4が除かれた独立気泡発泡体1aにガス抜き8を穿設する工程を示している。前記独立気泡発泡体1aは、対向位置する一対の回転ロール20,21間に導入される。一方の回転ロール20は外周に複数本の針状物22が一定間隔で設けられている。他方の回転ロール21は外周に針状物22の先端部を受け入れる凹部23が前記針状物22と同じ間隔で設けられている。2個の回転ロール20,21は図示しない駆動機構に連繋され、それぞれ反対方向へ同じ速度で同期回転する。回転ロール20,21の間隔は独立気泡発泡体1aの厚みにほぼ対応させてある。回転ロール20,21間を独立気泡発泡体1aが通過するとき、回転ロール20の針状物22が独立気泡発泡体1aを突き刺さることによりガス抜き8が貫通形成される。
【0019】
図3は穿孔工程を経て得られた連続気泡発泡体1bの外観を示している。この連続気泡発泡体1bの表面には裏面にまで達したガス抜き8が幅方向と長さ方向とにそれぞれ一定間隔毎に形成されている。図示例は、奇数行目と偶数行目とは穿孔位置が幅方向にずれているが、必ずしもこれに限られるものではない。
【0020】
図1(3)は、ガス抜き8が穿設された独立気泡発泡体1bを加圧する工程を示している。前記独立気泡発泡体1bは、対向位置する一対の回転ロール30,31間に導入される。各回転ロール30,31はともに外周面がフラットであるが、回転ロール30,31の外周面に滑り止めのためのローレット加工を施してもよい。2個の回転ロール30,31は図示しない駆動機構に連繋されており、それぞれ反対方向へ同じ速度で同期回転する。回転ロール30,31の間隔dは独立気泡発泡体1bの厚みtより小さな値に設定されている。
【0021】
独立気泡発泡体1bが一対の回転ロール30,31間に導入されて厚み方向に圧縮されると、各独立気泡が加圧されて気泡膜が破れ、隣接する独立気泡との間が連通する。独立気泡発泡体1bはスキン層3,4が除かれてコア層2が露出しているので、独立気泡発泡体1bに回転ロール30,31による加圧力が作用したとき、独立気泡は内部で連通して大きく成長する前に表面に近い独立気泡と連通して表面よりガスが抜ける。また、ガス抜き8が随所に点在するので、たとえ複数の独立気泡が連通して内部で成長しようとしても、いずれかのガス抜き8に連通してガスが抜けるので、成長が阻止される。
【0022】
図4は、この発明の実施に用いられる連続気泡発泡体の製造装置の概略構成を示している。同図中、4,5,6は高さが揃った作業テーブルであり、中央の作業テーブル4には上記した回転ロール30,31が設置されている。
前側の作業テーブル5には、上端に水平なアーム51を有する支持フレーム50と、帯状の独立気泡発泡体1bを中央の作業テーブル4の方向へ案内するガイドローラ52とが設けられている。前記アーム51は、独立気泡発泡体1bが巻かれた巻取ロール53を回動自由に支持する。独立気泡発泡体1bが回転ロール30,31により引っ張られると、独立気泡発泡体1bが巻取ロール53より繰り出される。独立気泡発泡体1bは、前処理工程または他の工場において、両面のスキン層が除かれかつ所定間隔毎にガス抜きが複数形成されたものである。
【0023】
後側の作業テーブル6には、上端に回転軸61を水平に支持した支持フレーム60と、回転ロール30,31を経て形成された連続気泡発泡体9を上方へ案内するガイドローラ62とが設けられている。前記回転軸61には連続気泡発泡体9を巻き取るための巻取ロール63が装着されており、図示しない駆動機構が回転軸61を回転させることにより連続気泡発泡体9を巻取ロール63に巻き取る。
【0024】
図5および図6は、独立気泡発泡体1bを一対の回転ロール30,31で加圧して連続気泡化するための機構を示している。
中央の作業テーブル4は移動可能なようにキャスター49が備えられており、上面の両端部には一方の回転ロール30の回転軸40を回転自由に支持する軸受44,44が設置されている。
【0025】
他方の回転ロール31の回転軸41は両端部がそれぞれ支持機構8により昇降可能に支持されており、これにより独立気泡発泡体1bの厚みに応じて回転ロール30,31間の間隔が変えられるようになっている。各支持機構8は、回転軸41を支持する軸受45,45を備えた可動フレーム80を備え、可動フレーム80にねじ軸81上に装着されたナット部材82がそれぞれ一体に設けられている。ハンドル83の操作でねじ軸81を回動させると、ナット部材82と一体に可動フレーム80が昇降動作するもので、これにより回転ロール31が昇降する。なお、図中、84は可動フレーム80の両端に形成された筒状部84であり、作業テーブル4上に縦設されたガイド軸85,85に嵌まり、ガイド軸85に沿ってスライドする。
【0026】
各回転ロール30,31は、外周面に滑り止めのためのローレット加工が施されており、反対方向に同じ速度で同期回転するように駆動機構7によって駆動される。各回転ロール30,31の回転軸40,41の一端にはスプロケットホイール42,43が装着され、各スプロケットホイール42,43と減速機付きのモータ71に装着された駆動ホイール74と中間ホイール73との間にチェン72が巻き掛けられて前記駆動機構7が構成されている。
【0027】
上記した構成において、駆動機構7を駆動して回転ロール30,31を回転させると、独立気泡発泡体1bが回転ロール30,31間に導入されて厚み方向に圧縮されるので、独立気泡が加圧されて気泡膜が破れ、隣接する独立気泡同士が連通して連続気泡化する。
この場合に、独立気泡発泡体1bは固いスキン層が除去されてコア層が露出しているので、表面に近い気泡の膜が突き破られて表面よりガスが抜け易いので、大きな窪みや皺の発生が防止される。さらに、独立気泡発泡体1bの厚み方向に貫通するガス抜き8が点在するので、たとえ複数の気泡が連通して内部で成長しても、いずれかのガス抜き8に連通してガスが抜け、大きな窪みや皺の発生が防止される。
【0028】
なお、この実施例では、独立気泡発泡体1bを回転ロール30,31間へ複数回導入して圧縮処理を繰り返すが、例えば、図7に示すように、複数対の回転ロール30A,31A、30B,31B、30C,31Cを一列に並べて連続気泡化を段階的に進めてもよい。なお、9a,9bは中間段階の連続気泡発泡体であり、9cは最終段階の連続気泡発泡体であり、9c,9b,9aの順に連続気泡化が進み、連続気泡発泡体9cが最も柔軟である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の連続気泡発泡体の製造方法の各工程を示す正面図である。
【図2】連続気泡発泡体の内部構造を示す拡大断面図である。
【図3】穿孔工程を経た連続気泡発泡体の斜視図である。
【図4】連続気泡発泡体の製造装置の全体構成を示す側面図である。
【図5】連続気泡発泡体の製造装置の主要部の正面図である。
【図6】連続気泡発泡体の製造装置の主要部の側面図である。
【図7】連続気泡発泡体の製造装置の他の実施例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1,1a,1b 独立気泡発泡体
7 独立気泡
8 ガス抜き
9 連続気泡発泡体
30,31 回転ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立気泡発泡体の少なくとも一方の面を所定の厚みだけ薄く切り取ったうえで、独立気泡発泡体を一対の回転ロール間に導入して厚み方向に圧縮することにより独立気泡間を連通させて連続気泡化することを特徴とする連続気泡発泡体の製造方法。
【請求項2】
独立気泡発泡体の少なくとも一方の面を所定の厚みだけ薄く切り取るとともに、独立気泡発泡体の厚み方向に貫通するガス抜きを所定間隔毎に複数形成したうえで、独立気泡発泡体を一対の回転ロール間に導入して厚み方向に圧縮することにより独立気泡間を連通させて連続気泡化することを特徴とする連続気泡発泡体の製造方法。
【請求項3】
前記独立気泡発泡体は、放射線架橋のポリオレフィン系樹脂発泡体である請求項1または2に記載された連続気泡発泡体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−1096(P2006−1096A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178713(P2004−178713)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(592085241)高山産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】