説明

連続気泡硬質発泡合成樹脂の製造方法

【課題】スプレー法によって、水を主に使用するか完全水発泡で、発泡剤を多く使用してもポリオールシステム液の貯蔵安定性に優れ、かつ寸法安定性に優れた軽量の連続気泡硬質フォームを製造できる方法を提供する。
【解決手段】ポリエーテルポリオール(A)、ポリエーテルポリオール(B)、およびポリエーテルポリオール(C)を含むポリオール(P)とポリイソシアネート化合物(Y)とを、水を含む発泡剤、難燃剤、整泡剤および触媒の存在下でスプレー法で反応させる。
(A)および(B)は開始剤が窒素原子を含まず、官能基数2〜8。水酸基価が(A)は100〜900mgKOH/g、(B)は20〜56mgKOH/g。(B)は末端オキシエチレンブロック鎖含有量が5〜15質量%。(C)は開始剤が窒素原子を含み官能基数3〜5であり、水酸基価は200〜850mgKOH/g。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続気泡硬質発泡合成樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを発泡剤等の存在下で反応させて、硬質ポリウレタンフォームを製造することは広く行われている。この硬質ポリウレタンフォームの気泡の状態は、独立気泡と連続気泡の2つに大きく分けられる。連続気泡は個々の気泡がつながっており、連続気泡を多く有する硬質ポリウレタンフォームは、寸法安定性に優れており、土木用途や、建築、建材用途の断熱材として使用されている。
【0003】
連続気泡の硬質ポリウレタンフォームを製造する際に用いられる発泡剤として種々の化合物が知られている。従来より、低沸点の含フッ素化合物が主に用いられてきた。しかし、大気中に存在すると地球温暖化を促進する問題を有している。このため、発泡剤として水を多く使用して含フッ素化合物の使用量を削減する技術が提案されている(特許文献1〜3等を参照)。
【0004】
発泡剤として水を多く使用する場合は、原料のポリオール化合物に水、触媒等を混合した配合液(ポリオールシステム液という)の貯蔵安定性が悪くなりやすい。このため、発泡した場合にフォームの気泡状態が不均一になりやすい。特に、吹き付ける場所によって気泡の独立性やセル径等が異なってしまったり、部分的なフォームの収縮や陥没が発生しやすくなる。
【0005】
また、建築、建材用途では、硬質ポリウレタンフォームの軽量化が要求されている。軽量化の手段として発泡剤をできるだけ多く使用することが望まれる。発泡剤である水を多く用いるほど、前述したような、ポリオールシステム液の貯蔵安定性が悪くなる問題、イソシアネート化合物を含む液(イソシアネート液という)とポリオールシステム液との相溶性が低下する問題、混合不良等の問題点がより顕著に現れやすい。すなわち物性や外観を維持したまま軽量化を達成することが非常に難しい。特に反応性を高める必要がある現場発泡(ポリオールシステム液とポリイソシアネート液とを施工面に吹き付けながら反応させる施工方法)のスプレー法においては、軽量で連続気泡を有する硬質ポリウレタンフォームを安定的に製造することは困難であった。
【0006】
特許文献1、2には、低分子量ポリオールと高分子量ポリオールとの混合ポリオールを用い、水発泡により連続気泡性の硬質ポリウレタンフォームを製造する方法が提案されているが、ここで使用されている水の量は比較的少なく、水発泡剤の処方における貯蔵安定性の問題は考慮されていない。
特許文献3には、スラブ発泡により水発泡で低密度の連続気泡硬質ポリウレタンフォームを製造する方法が記載されている。この方法は、平均官能基数2.5〜4、水酸基価200〜300のポリエーテルポリオール(a)と、平均官能基数4〜6、水酸基価400〜900のポリエーテルポリオール(b)と、平均官能基数2.5〜3.5、水酸基価20〜60のポリエーテルポリオール(c)を組み合わせて用い、水を用いて連続気泡硬質ポリウレタンフォームを製造する方法である。
【0007】
特許文献3は、スラブ発泡法による製造方法が記載されているが、高い反応性が要求されるスプレー法については記述されていない。スラブ発泡や注入法などのウレタン発泡法では、ポリオールシステム液とポリイソシアネート液の混合比率を自由に決めることができるが、スプレー発泡法は、通常その混合比率が容積比率で約1:1という制約がある。軽量化のために水を多く使用する場合にも、その制約の下に行うため、通常、スラブ発泡法等の配合は参考とならない。また、特許文献3は、ポリオールシステム液の貯蔵安定性についても考慮されていない。スラブ発泡法は、通常建屋内で行われ、ポリオールシステム液は短期間に使用してしまうため液の貯蔵安定性は考慮する必要がない。一方、スプレー発泡法は屋外で行う場合も多く、ポリオールシステム液は少なくとも一月程度は分離が起きないことが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−25375号公報
【特許文献2】特開2001−342237号公報
【特許文献3】特開2004−91643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、スプレー法によって、発泡剤として水を主に使用するか又は完全水発泡で、発泡剤を多く使用してもポリオールシステム液の貯蔵安定性に優れ、かつ寸法安定性に優れた軽量の連続気泡硬質発泡合成樹脂を製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の連続気泡硬質発泡合成樹脂の製造方法は、ポリオール(P)とポリイソシアネート化合物(Y)を発泡剤、難燃剤、整泡剤および触媒の存在下でスプレー法で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、前記ポリオール(P)がポリオール(A)30〜80質量%、ポリオール(B)10〜40質量%、およびポリオール(C)0〜30質量%を含み、前記発泡剤として水を用いることを特徴とする。
ポリオール(A)は窒素原子を含まない官能基数2〜8の開始剤(S1)にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が100〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオール(B)は窒素原子を含まない官能基数2〜8の開始剤(S2)にエチレンオキシド以外のアルキレンオキシドを開環付加重合させた後にエチレンオキシドを反応させて得られる、水酸基価が20〜56mgKOH/g、末端オキシエチレンブロック鎖含有量が5〜15質量%であるポリエーテルポリオール。
ポリオール(C)は窒素原子を含む官能基数3〜5の開始剤(S3)にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が200〜850mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0011】
ポリオール(P)100質量部に対して、前記水を15〜30質量部用いることが好ましい。
前記発泡剤として水のみを用いることが好ましい。
前記触媒がアミン系触媒または反応型アミン系触媒のみであることが好ましい。
前記連続気泡硬質発泡合成樹脂が建材用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スプレー法によって、発泡剤として水を主に使用するか又は完全水発泡で、発泡剤を多く使用してもポリオールシステム液の貯蔵安定性に優れ、かつ寸法安定性に優れた軽量の連続気泡硬質発泡合成樹脂を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、連続気泡性を有する硬質発泡合成樹脂(単に、硬質フォームということもある)を製造する方法である。連続気泡性とは、独立気泡が少ないことを意味する。本発明において製造される硬質フォームの独立気泡率は、30%以下であることが好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下が特に好ましい。高い連続気泡性(すなわち、低い独立気泡率)とすることで、寸法安定性が向上する利点が得られる。該独立気泡率は、ASTM D 2856 に準拠して測定される値である。
本発明におけるポリオール(A)、(C)とポリオール(B)のように、水酸基価が大きく異なるポリオールを併用すると連続気泡性となりやすい。
また、ポリオール(A)、(C)とポリオール(B)とを併用すると、水の添加量(部数)が多い場合に、ポリオール(B)のエチレンオキシド含有量を最適化することでポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性とスプレーフォームの良好な連続気泡性と良好な外観を達成できる。
【0014】
本発明の硬質フォームの製造方法は、ポリオール(A)とポリオール(B)、またはポリオール(A)とポリオール(B)とポリオール(C)を含むポリオール(P)と、ポリイソシアネート化合物(Y)とを発泡剤、難燃剤、整泡剤および触媒の存在下、スプレー法で反応させる。
ポリオール(A)、(B)、(C)のそれぞれは、1種でもよく、2種以上を使用してもよい。
【0015】
[ポリオール(A)]
ポリオール(A)は窒素原子を含まない官能基数2〜8の開始剤(S1)にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が100〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオールである。
窒素原子を含まない開始剤(S1)としては、水、多価アルコール類が好ましい。多価アルコール類の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖等が挙げられる。開始剤(S1)は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
特に、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびショ糖から選ばれる少なくとも1種が好ましい。窒素原子を含まないため、水との相溶性が抑制されやすい。システム液の貯蔵安定性を考慮すれば、水の溶解性が向上することは好ましいが、その結果、独立気泡となりやすくなるため、良好な寸法安定性が得られにくくなる。よって、ポリオール(A)として、窒素原子を含まないことが好ましい。
【0016】
開始剤(S1)の官能基数は2〜8である。好ましくは2〜6であり、より好ましくは2〜5である。本発明における開始剤の官能基数とは、開始剤の活性水素原子の数を意味する。開始剤(S1)の官能基数が2以上であると、得られる硬質フォームの強度が良好となりやすい。該官能基数が8以下であると、ポリオール(A)の粘度が高くなりすぎず、原料の混合性を確保しやすい。
【0017】
ポリオール(A)の製造に用いるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、スチレンオキシド等が挙げられる。これらのうち、プロピレンオキシドを単独で、または、プロピレンオキシドと少量のエチレンオキシドとを併用することが好ましい。すなわちポリオール(A)におけるオキシエチレンブロック鎖含有量は0〜5質量%が好ましく、0〜2質量%がより好ましく、0質量%(オキシエチレン基を含まない)が特に好ましい。ポリオール中のオキシエチレンブロック鎖含有量とは、開始剤に反応させたアルキレンオキシドのうち、エチレンオキシド由来の部分の含有量を意味する。上記のオキシエチレンブロック鎖含有量が5質量%以下であると、ポリオール(A)の活性が高くなりすぎず、得られる硬質フォームが連続気泡性となりやすく好ましい。
活性水素原子を有する開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させる方法は、公知の方法を用いることができる。
【0018】
ポリオール(A)の水酸基価は100〜900mgKOH/gである。好ましくは200〜900mgKOH/gであり、より好ましくは200〜850mgKOH/gである。該水酸基価が100mgKOH/g以上であると、ポリオール(A)の粘度が高くなりすぎないため好ましく、900mgKOH/g以下であると得られる硬質フォームが連続気泡性となりやすいため好ましい。
【0019】
ポリオール(P)のうち、ポリオール(A)の割合は30〜80質量%であり、45〜80質量%が好ましく、45〜70質量%がより好ましい。ポリオール(A)の割合が30質量%以上であると、ポリオールシステムの貯蔵安定性や施工時のフォームの表面性が良好になりやすい。またポリオール(A)の割合が80質量%以下であると、得られる硬質フォームが連続気泡になりやすいため寸法安定性が良好になり好ましい。
【0020】
[ポリオール(B)]
ポリオール(B)は窒素原子を含まない官能基数2〜8の開始剤(S2)にエチレンオキシド以外のアルキレンオキシドを開環付加重合させた後に、最後にエチレンオキシドを反応させて得られる、水酸基価が20〜56mgKOH/g、末端オキシエチレンブロック鎖含有量が5〜15質量%であるポリエーテルポリオールである。
開始剤(S2)は、前記ポリオール(A)の製造に用いる開始剤(S1)と、好ましい態様も含めて同様である。
【0021】
ポリオール(B)の製造に用いるエチレンオキシド以外のアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、スチレンオキシド等が挙げられる。このうち、プロピレンオキシドが好ましい。その場合、プロピレンオキシドを反応させた後に、最後にエチレンオキシドを反応させることによって末端にエチレンオキシドを付加させる。
【0022】
ポリオール(B)の末端オキシエチレンブロック鎖含有量は5〜15質量%であり、7〜15質量%が好ましく、7〜12質量%が特に好ましい。本発明におけるポリオール中の末端オキシエチレンブロック鎖含有量とは、開始剤に反応させたアルキレンオキシドのうち、分子末端に存在するエチレンオキシド由来の部分の含有量を意味する。
上記の末端オキシエチレンブロック鎖含有量が5質量%以上であると、ポリオールシステム液の貯蔵安定性がよくなる。15質量%以下であると活性が高くなりすぎず、得られる硬質フォームが連続気泡となりやすく、収縮が生じ難く、良好な寸法安定性が得られやすい。
【0023】
またポリオール(B)の水酸基価は20〜56mgKOH/gである。20〜50mgKOH/gが好ましく、20〜40mgKOH/g がより好ましい。該水酸基価が20mgKOH/g以上であると、ポリオール(B)の粘度が高くなりすぎず好ましく、また56mgKOH/g以下であると得られる硬質フォームが連続気泡性となりやすく好ましい。
【0024】
ポリオール(P)のうち、ポリオール(B)の割合は10〜40質量%であり、30〜40質量%が好ましい。ポリオール(B)の割合が10質量%以上であると、連続気泡となりやすく、寸法安定性が良好になりやすい。また40質量%以下であると、ポリオールシステムの貯蔵安定性や施工時のフォームの表面性が良好になりやすい。
【0025】
[ポリオール(C)]
ポリオール(C)は窒素原子を含む官能基数3〜5の開始剤(S3)にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が200〜850mgKOH/gのポリエーテルポリオールである。
窒素原子を含むポリオール(C)を用いると、ポリオール(P)とポリイソシアネート化合物(Y)との反応性が向上し、高い反応性が要求されるスプレー法において良好な硬質フォームを製造できる。
【0026】
窒素原子を含む開始剤(S3)としては、アミン系化合物が好ましい。アミン系化合物としては、脂肪族系アミン類、脂環族系アミン類、芳香族系アミン類が挙げられる。脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。また脂環族系アミン類としては、アミノエチルピペラジン等が挙げられる。また芳香族アミン類としては、ジアミノトルエン、マンニッヒ反応生成物が挙げられる。マンニッヒ反応生成物とは、フェノール類、アルカノールアミン類およびアルデヒド類の反応生成物であり、例えば、ノニルフェノール、モノエタノールアミンおよびホルムアルデヒドの反応生成物が挙げられる。
特に、発泡剤として水を大量に必要とするため、水との親和性の点で、脂肪族および脂環族アミン類が好ましい。
【0027】
開始剤(S3)の官能基数は3〜5であり、3〜4がより好ましい。該官能基数が3以上であると、得られる硬質フォームの強度が良好となりやすい。該官能基数が5以下であると、ポリオール(C)の粘度が高くなりすぎず、原料の混合性が良好になりやすく好ましい。
【0028】
ポリオール(C)の製造に用いるアルキレンオキシドは、前記ポリオール(A)の製造に用いるアルキレンオキシドと、好ましい態様も含めて同様である。
【0029】
ポリオール(C)の水酸基価は200〜850mgKOH/gである。300〜850mgKOH/gが好ましく、400〜850mgKOH/gがより好ましい。この水酸基価が200mgKOH/g以上であると、得られた硬質フォームの強度(特に圧縮強度)が出やすく好ましい。また850mgKOH/g以下であると、ポリオール(A)およびポリオール(B)との混合性が良好になりやすく、また得られた硬質フォームが連続気泡性となりやすいため好ましい。
【0030】
ポリオール(P)のうち、ポリオール(C)の割合は0〜30質量%である。0〜25質量%が好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。ポリオール(C)の割合が30質量%以下であると、得られる硬質フォームが連続気泡となりやすく好ましい。
特にポリオール(C)が0質量%である場合は、ポリオール(P)におけるポリオール(A)とポリオール(B)の含有量は、ポリオール(A)が60〜80質量%、ポリオール(B)が20〜40質量%の範囲内が好ましい。
【0031】
[その他の活性水素化合物(D)]
ポリオール(P)はポリオール(A)、ポリオール(B)およびポリオール(C)の他に、その他の活性水素原子を有する化合物(D)(活性水素化合物という)を含んでいてもよい。該その他の活性水素化合物(D)としては、ポリオール(A)、ポリオール(B)およびポリオール(C)のいずれにも含まれない他のポリオール類、多価フェノール類、アミノ化ポリオール類が挙げられる。
他のポリオール類としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
多価フェノール類としては、ビスフェノールA、レゾルシノール等の非縮合化合物、フェノール類をアルカリ触媒の存在下で過剰のホルムアルデヒド類と縮合結合させたレゾール型初期縮合物、このレゾール型初期縮合物を合成する際に非水系で反応させたベンジリック型初期縮合物、過剰のフェノール類を酸触媒の存在下でホルムアルデヒド類と反応させたノボラック型初期縮合物等が挙げられる。これらの初期縮合物の分子量は、200〜10000程度が好ましい。上記において、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、レゾルシノール等が挙げられる。また、ホルムアルデヒド類としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
アミノ化ポリオール類としては、グリセリンにプロピレンオキシドを付加重合した後、アミノ化して得た平均分子量5000、アミノ化率95%のポリエーテルトリアミン(テキサコ社製、商品名:ジェファーミンT−5000)等が挙げられる。
【0032】
ポリオール(P)の好適な組成は、ポリオール(A)45〜70質量%、ポリオール(B)30〜40質量%、ポリオール(C)10〜25質量%、その他の活性水素化合物(D)0〜5質量%である。ポリオール(P)がこの組成であれば、発泡剤として水のみを使用するスプレー用ポリオールシステム液の貯蔵安定性が良く、寸法安定性、基材への接着性が良い硬質フォームが得られる。特に、硬質フォームではその他の活性水素化合物(D)としてよく用いられるポリエステルポリオールを使わないことが好ましい。
反応性が高くて、速い反応速度が得られる点では、ポリオール(P)の組成が、ポリオール(A)30質量%以上45質量%未満、ポリオール(B)30〜40質量%、ポリオール(C)10〜30質量%であることが好ましい。反応速度は反応温度に依存し、反応温度が低いほど反応速度は遅くなる。したがって、特に反応温度が低温(5℃以下)である場合には、反応性が高い組成を選ぶことが好ましい。反応性は後述の実施例で示すライズタイム(単位:秒)で評価でき、ライズタイムが小さいほど反応性が高いことを意味する。
【0033】
[ポリイソシアネート化合物(Y)]
本発明におけるポリイソシアネート化合物(Y)は、特に制限はないが、イソシアネート基を2以上有する芳香族系、脂環族系、脂肪族系等のポリイソシアネート;前記ポリイソシアネートの2種類以上の混合物;これらを変性して得られる変性ポリイソシアネート等が好ましい。
具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のポリイソシアネートまたはこれらのプレポリマー型変性体、ヌレート変性体、ウレア変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。このうち、TDI、MDI、クルードMDIまたはこれらの変性体が好ましい。クルードMDIが入手のしやすさ、取り扱いの容易性の点で特に好ましい。
【0034】
ポリイソシアネート化合物(Y)の使用量は、ポリオール(P)に含まれる活性水素原子の合計数に対するイソシアネート基の数の100倍で表して(通常この100倍で表した数値をイソシアネート指数という)、20〜100が好ましく、30〜80が好ましく、40〜70が最も好ましい。イソシアネート指数が20以上であると連続気泡になりやすく、100以下であると軽量化しやすい。
ポリイソシアネート化合物(Y)とポリオール化合物(P)の使用量は、容積比で約1:1であることが好ましい。
【0035】
[発泡剤]
本発明においては、発泡剤として水を用いる。水以外に、必要に応じて低沸点の炭化水素化合物、低沸点の含フッ素化合物、不活性ガス等を併用してもよい。
水を用いると得られる硬質フォームが連続気泡となりやすい。したがって、水のみの使用、または水と不活性ガスの併用が好ましく、水のみの使用が環境への負荷がより小さい点で特に好ましい。
前記の低沸点の炭化水素化合物としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。また前記の低沸点の含フッ素化合物としては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3− ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)等が挙げられる。また前記の不活性ガスとしては、空気、窒素、炭酸ガス等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明は、特に、軽量化のために発泡剤を多く使用し、かつ発泡剤として水を多く使用する系において好適であり、優れた効果を発揮する。
具体的には、ポリオール(P)100質量部に対して、発泡剤としての水の量が15〜30質量部程度に多い場合でも、スプレー法により硬質フォームを良好に製造できる。水の使用量が15質量部以上であると、得られた硬質フォームを軽量にしやすく、30質量部以下であると、水とポリオール化合物との良好な混合性が得られやすい。該水の量は16〜25質量部が特に好ましい。
【0037】
[難燃剤]
本発明においては、難燃剤を用いる。難燃剤の使用量は、ポリオール(P)100質量部に対して10〜100質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましく、20〜60質量部がもっとも好ましい。10質量部以上であると、硬質フォームの難燃性が良好に向上する。100質量部以下であると、ポリオールシステム液の貯蔵安定性が良好に保持される。
難燃剤としてはリン系難燃剤が好ましく、化合物としては、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート(TCEP)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)などが好ましい。
【0038】
[触媒]
本発明において用いられる触媒は、ウレタン化反応を促進する触媒であれば特に制限はない。例えば、トリエチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンなどのアミン系触媒、N,N,N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミンなどの反応型アミン系触媒;ジブチルスズジラウレート等の有機金属系触媒が挙げられる。またイソシアネート基の三量化反応を促進させる触媒を併用してもよく、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等のカルボン酸金属塩等が挙げられる。触媒の使用量は、ポリオール(P)100質量部に対して、0.1〜15質量部が好ましい。
触媒としては、環境汚染の問題から金属触媒を使わず、アミン系触媒または反応型アミン系触媒のみを使用することが好ましい。
【0039】
[整泡剤]
本発明においては良好な気泡を形成するため整泡剤を用いる。整泡剤としては例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤が挙げられる。一般的に、硬質ポリウレタンフォームの製造に用いられるシリコーン系整泡剤のほか、高通気性の軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられるシリコーン系整泡剤を用いてもよい。整泡剤の使用量は適宜選定すればよいが、ポリオール(P)100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0040】
[その他の配合剤]
本発明では、上述したポリオール(P)、ポリイソシアネート化合物(Y)、発泡剤、難燃剤、整泡剤、および触媒の他に、任意の配合剤が使用できる。配合剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填剤; 酸化防止剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤;可塑剤、着色剤、抗カビ剤、破泡剤、分散剤、変色防止剤等が挙げられる。
【0041】
[スプレー法]
本発明の硬質フォームの製造方法はスプレー法による。スプレー法は、ポリオール(P)、発泡剤、難燃剤、整泡剤、触媒および必要に応じた配合剤を含む溶液(ポリオールシステム液)を調製し、該ポリオールシステム液と、ポリイソシアネート化合物(Y)を含むイソシアネート液とを施工面に吹き付けながら反応させる発泡方法である。
スプレー法は、工事現場にて直接硬質フォームを製造する方法であり、工事コストを抑制できる、凹凸のある施工面にも隙間なく施工できる等の長所を有している。そのためスプレー法は、建築現場において壁、天井等に硬質フォームからなる断熱材を施工する際に採用されることが多い。具体的な施工例としては、マンション、オフィスビル、プレハブ冷凍倉庫等の断熱材が挙げられる。
スプレー法としては種々の方法が知られているが、特にポリオール成分とポリイソシアネート成分とをミキシングヘッドで混合して発泡させるエアレススプレー発泡が好ましい。
【0042】
本発明により製造される硬質フォームは、軽量であることが好ましい。具体的にはカップ発泡により製造された硬質フォームの密度が5〜25kg/mであることが好ましく、5〜20kg/m以下がより好ましく、7〜15kg/mが最も好ましい。
本発明の硬質フォームは軽量化しやすく、難燃剤が配合されているため、特に建築、建材用途に好ましい。
【0043】
本発明によれば、発泡剤として水を主に使用するか、または完全水発泡のスプレー法によって、連続気泡硬質フォームを製造できる。水を多く使用するにもかかわらずポリオールシステム液の良好な貯蔵安定性が得られるとともに、ポリオール(P)とポリイソシアネート化合物(Y)との良好な混合性も得られ、水を多く使用しての軽量化が可能である。得られる硬質フォームのセルは微細であり、破泡等が発生してセルが荒れることもなく、陥没の発生が抑制でき、寸法安定性に優れかつ良好な強度が得られる。また、スプレー法において重要な硬質フォームの表面性が良好であり、凹凸がなく平滑性に優れた表面が得られる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。水酸基価は、JIS K1557(1970年版)に準拠して測定した。粘度は、JIS K1557(1970年版)に準拠して測定した。
[実施例および比較例]
表1、2に示す配合で硬質フォームを製造した。例1〜10は本発明にかかる実施例であり、例11〜17は比較例である。表中において配合量を表す数値の単位は質量部である。
実施例および比較例で用いた原料は、以下のとおりである。
【0045】
[ポリオール(P)]
ポリオールA1:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを反応させ、その後にエチレンオキシドを反応させて得られた水酸基価は112mgKOH/g 、末端オキシエチレンブロック鎖含有量33質量%のポリエーテルポリオール。
ポリオールA2 : 開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた水酸基価は240mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールA3 : ジプロピレングリコール。水酸基価836mgKOH/g。
ポリオールA4 :開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた水酸基価は400mgKOH/gのポリエーテル。
【0046】
ポリオールB1:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた水酸基価は56mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールB2:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを反応させ、その後にエチレンオキシドを反応させて得られた水酸基価は56mgKOH/g 、末端オキシエチレンブロック鎖含有量13質量%のポリエーテルポリオール。
ポリオールB3:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを反応させ、その後にエチレンオキシドを反応させて得られた水酸基価は34mgKOH/g 、末端オキシエチレンブロック鎖含有量14質量%のポリエーテルポリオール。
ポリオールB4:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを反応させ、その後にエチレンオキシドを反応させて得られた水酸基価は34mgKOH/g 、末端オキシエチレンブロック鎖含有量10質量%のポリエーテルポリオール。
ポリオールB5:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを反応させ、その後にエチレンオキシドを反応させて得られた水酸基価は26mgKOH/g 、末端オキシエチレンブロック鎖含有量15質量%のポリエーテルポリオール。
ポリオールB6:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを反応させ、その後にエチレンオキシドを反応させて得られた水酸基価は24mgKOH/g 、末端オキシエチレンブロック鎖含有量14質量%のポリエーテルポリオール。
ポリオールB7:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた水酸基価は34mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールB8:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを反応させ、その後にエチレンオキシドを反応させて得られた水酸基価は34mgKOH/g 、末端オキシエチレンブロック鎖含有量4質量%のポリエーテルポリオール。
ポリオールB9:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを反応させ、その後にエチレンオキシドを反応させて得られた水酸基価は34mgKOH/g 、末端オキシエチレンブロック鎖含有量16質量%のポリエーテルポリオール。
ポリオールB10:開始剤としてグリセリンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドを反応させ、その後にエチレンオキシドを反応させて得られた水酸基価は34mgKOH/g 、末端オキシエチレンブロック鎖含有量45質量%のポリエーテルポリオール。
【0047】
ポリオールC1:開始剤としてエチレンジアミンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた水酸基価は300mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールC2:開始剤としてエチレンジアミンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた水酸基価は760mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールC3:開始剤としてモノエタノールアミンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた水酸基価は500mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオールC4:開始剤としてエチレンジアミンを用い、アルキレンオキシドとしてプロピレンオキシドのみを反応させて得られた水酸基価は500mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0048】
[ポリイソシアネート化合物(Y)]クルードMDI(商品名:コロネート−1130、NCO含量(質量%):31.3%、粘度:120mPa・s、日本ポリウレタン社製)。
[難燃剤]トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(商品名:FYLOL PCF ICL−IP JAPAN社製)。
[整泡剤]シリコーン系整泡剤(商品名:SF2938F、東レ・ダウコーニング社製)。
[触媒]反応型アミン系触媒(商品名:TOYOCAT RX−7、アミノアルコール系触媒、東ソー社製)。
[発泡剤]水。
【0049】
<カップ発泡による製造および評価>
表1、2に示す配合で、ポリオール(P)(合計は100質量部)に対し発泡剤(水)、整泡剤、触媒および難燃剤を加えて混合し、これをポリオールシステム液とした。
調製したポリオールシステム液30gとポリイソシアネート化合物34.8gとを液温20℃で1Lカップ内に合わせ入れ、ボール盤に撹拌翼を備えた撹拌装置により毎分3000回転の回転数で3秒間撹拌して発泡させ、硬質フォームを製造した。ポリオール(P)の水酸基価およびイソシアネート指数を表1、2に示す。
【0050】
以下の評価を行った。結果を表1、2に示す。
[クリームタイム・ライズタイム]
反応性の評価として、ポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物とを混合してから、色相の変化が起こり始め、発泡を開始するまでの時間(秒)をクリームタイムとして測定した。また、混合を開始してから、発泡によるフォームの上昇が停止するまでの時間(秒)をライズタイムとして目視で測定した。
[密度]
得られたフォームのコア部から一辺が80mmの立方体を切り出し、JIS K 7222に準拠して密度を測定した。収縮変形の大きいものは密度の測定は不可能であり、測定不能とした。
[収縮性]
収縮性の評価は、発泡によるフォームの上昇が停止してから、20℃で30分間放置し、外観状態を観察した。変形のないものは○(良好)、収縮変形したものは×(不良)で表記した。
[貯蔵安定性]
ポリオールシステム液を20℃で1ヶ月間保存して観察した。分離、沈殿、固化のいずれか1つでも発生すれば×(不良)、いずれも発生しなければ○(良好)として評価した。
【0051】
<スプレー発泡による製造および評価>
カップ発泡による製造と同様のポリオールシステム液とポリイソシアネート化合物とを液温40℃、室温20℃、体積比率1:1にて、スプレー発泡機を用いて壁面を想定したフレキシブルボードに吹き付け施工する方法で硬質フォームを製造した。スプレー発泡機は、ガスマー社製Dガンを接続した日本ウレタンエンジニアリング社製MODEL N−1600UE−HYD発泡機を用いた。
[密度]JIS K 7220に準拠し、施工した翌日にコア部を200mm×200mm×25mmの直方体に切り出し、密度を測定した。
[表面性]硬質フォーム表面の凹凸状態が大きいと、凸部分の厚みが厚すぎる場合は、硬質フォームが住宅の内壁に収まらないことから凸部分をカットする必要がある。また凹部分が大きい場合は、厚み偏差が大きくなり、断熱性能にばらつきが生ずるため、重ねて吹き付ける必要があり、壁内に収まらない厚みとなれば、更にカットする必要がある。したがって、スプレー法においては、表面が平滑に施工しやすいことが、原料使用量の増加や施工の手間がかかるのを防ぎ、効率的な施工を実施するために必要な性能である。表面性として、吹き付け後の表面の凹凸となっているコブの高低差の最大値をミツトヨ社製ノギスで測定し、確認し、以下の3段階で評価した。吹き付け面積は1800cmとした。
3:コブ状の凹凸が確認されず、表面が非常に滑らかな状態。
2:コブ状の凹凸がやや緩やかであるか、あるいは部分的なところに確認され、やや平滑性が失われている状態。コブの高低差の最大値が10mm未満、あるいはコブの存在する総面積が900cm未満。
1:コブ状の凹凸が大きく、あるいは全面に確認され、完全に平滑性が失われている状態。コブの高低差の最大値が10mm以上、あるいはコブの存在する総面積が900cm以上。
[寸法安定性]高温高湿収縮度(単位:%)をASTM D 2126に準拠し、測定した。すなわち、コア部を100mm×100mm×40mmの直方体に切り出し、発泡方向(吹き付け面に対して垂直方向)に対して垂直方向の寸法(T)を測定し、温度70℃、相対湿度95%の環境下で24時間経過した後の、発泡方向に対して垂直方向の寸法(T)を測定し、寸法変化(T−T)をTで割った値の100倍を寸法変化率とした。
[独立気泡率]コア部分を25mm×25mm×25mmの立方体で切り出し、ノギス(ミツトヨ社製)を使用し、縦、横および高さの寸法を測定し、みかけ体積を測定した。また、真体積は真体積測定装置(VM−100型、エステック社製)を用い、気相置換法によって真体積を測定した。真体積をみかけ体積で除算した値を100分率で示した(単位:%)。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1、2の結果より、本発明にかかる例1〜例10は、ポリオールシステム液の貯蔵安定性が良好であり、また、スプレー発泡において重要な表面性および寸法安定性が良好であることがわかった。特に末端オキシエチレンブロック鎖含有量が10質量%であるポリオールB4を用いた例2、例10は寸法安定性が優れていた。
これに対して、例11及び例12は、ポリオール(B)を含有せず、その代わりにオキシエチレンブロック鎖を含有しないポリオールB7(例11)、または末端オキシエチレンブロック鎖含有量が少ないポリオールB8(例12)を用いた比較例であり、ポリオールシステム液の貯蔵安定性が悪かった。
例13及び例14は、ポリオール(B)を含有せず、その代わりに末端オキシエチレンブロック鎖含有量が多いポリオールB9(例13)またはB10(例14)を用いた比較例であり、貯蔵安定性は良好であるが、カップ発泡後に20℃(常温)で放置すると収縮した。またスプレー発泡における寸法安定性も劣っていた。
例15〜17は各ポリオールの使用比率が本発明の範囲外である比較例である。例15および例16では、カップ発泡後に収縮が生じ、寸法安定性も劣っていた。
例17は、ポリオールシステム液の貯蔵安定性が悪く、スプレー発泡における表面性も劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、水を多く含むポリオールシステム液の貯蔵安定性が良好となり、スプレー法による完全水発泡でも連続気泡硬質発泡合成樹脂の製造が可能となる。得られる硬質フォームは、軽量であり、表面外観やセル状態に優れ、建築、建材用途、特に戸建て住宅の断熱材に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(P)とポリイソシアネート化合物(Y)を発泡剤、難燃剤、整泡剤および触媒の存在下でスプレー法で反応させて硬質発泡合成樹脂を製造する方法において、
前記ポリオール(P)がポリオール(A)30〜80質量%、ポリオール(B)10〜40質量%、およびポリオール(C)0〜30質量%を含み、前記発泡剤として水を用いることを特徴とする連続気泡硬質発泡合成樹脂の製造方法。
ポリオール(A)は窒素原子を含まない官能基数2〜8の開始剤(S1)にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が100〜900mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
ポリオール(B)は窒素原子を含まない官能基数2〜8の開始剤(S2)にエチレンオキシド以外のアルキレンオキシドを開環付加重合させた後にエチレンオキシドを反応させて得られる、水酸基価が20〜56mgKOH/g、末端オキシエチレンブロック鎖含有量が5〜15質量%であるポリエーテルポリオール。
ポリオール(C)は窒素原子を含む官能基数3〜5の開始剤(S3)にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基価が200〜850mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【請求項2】
ポリオール(P)100質量部に対して、前記水を15〜30質量部用いる請求項1記載の連続気泡硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記発泡剤として水のみを用いる請求項1または2記載の連続気泡硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記触媒がアミン系触媒または反応型アミン系触媒のみである、請求項1、2または3に記載の連続気泡硬質発泡合成樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記連続気泡硬質発泡合成樹脂が建材用である、請求項1から4のいずれかに記載の連続気泡硬質発泡合成樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2010−168575(P2010−168575A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292373(P2009−292373)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】