説明

連続繊維束のガイド装置を備えた連続繊維束巻取機と同機によるボビンの製造方法、及び同製造方法により得られる炭素繊維ボビン

【課題】既存の巻取機にガイド装置類を取り付けるだけで、供給されるテープ状に拡幅された強化繊維束を、撚りの無い状態で安定してボビンに巻き取ることができ、強化繊維束を供給時の幅よりも更に拡幅した状態でボビンに連続的に巻き取ることができる強化繊維束の巻取機を提供する。
【解決手段】繊維束の走行路上に配され、同繊維束がひねられて案内される軸線が空間上で互いにねじれた位置関係にある一組の第1及び第2ガイド4,5を有し、ひねられた繊維束をひねり戻してボビン1に導入案内する平行ガイドロール6を有している。第1ガイドが平ガイド又は円錐状ガイドからなり、第2ガイドが円錐状ガイドから構成され、第2ガイドは平面視で、その軸線をボビンの軸に対して90°以下の角度で且つボビン軸線方向から見て第1ガイドと平行な軸線をもって配される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は拡幅されて偏平な断面形状をもつテープ状繊維束をボビンに巻き取るための連続繊維束の巻取機と、前記繊維束の製造方法及び同方法により製造される炭素繊維ボビンとに関し、特に、細繊度から極太繊度のテープ状強化繊維束を拡幅形態を保持した状態で安定して巻き取ることのできるガイド装置を備えた巻取機、同巻取機による連続繊維束の製造方法及び同製造方法を使って得られる炭素繊維ボビンに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等が使用されている。中でも、炭素繊維は、比強度、比弾性率、耐熱性、耐薬品性等に優れ、航空機用途、ゴルフシャフト、釣り竿等のスポーツ用途、一般産業用途の繊維強化複合材料の強化材として使用されている。高強度、高弾性率の炭素繊維を得るためには、炭素繊維前駆体糸条束として糸切れ、毛羽の発生が少なく品質に優れたものが必要である。前駆体糸条束のフィラメント構成として、フィラメント数が3000本以上から24000本以下が主に用いられていた。
【0003】
最近、炭素繊維の利用は建築、土木、自動車、エネルギー、コンパウンド等の一般産業用途にまで広範に使用されるようになり、そのため、高強度・高弾性率でより安価な生産性に優れたフィラメント数が24000本以上のいわゆるラージトウが強く求められている。炭素繊維は、その形態及び特性から繊維そのものだけで使用されることは少なく、大部分は繊維束を複数本平行に引き揃えた後、エポキシ樹脂等の樹脂を含浸させ(一般にはこれをプリプレグという。)、これを円筒状に巻いたり、あるいは被成形物に被せた後、樹脂を硬化させて繊維強化プラスチック成形体として製品化する。
【0004】
炭素繊維は他の強化繊維材料に比べて軽量で且つ高強度であるため、この特性を更に生かすために、炭素繊維にエポキシ等の樹脂を含浸したプリプレグについても更に軽量化させる方向で検討がなされている。
【0005】
炭素繊維プリプレグを軽量化させるためには、炭素繊維束を薄く広げる必要があり、このためにプリプレグを製造している各製造会社は様々な工夫を凝らしている。
【0006】
しかし、プリプレグの製造工程において供給される炭素繊維束等の強化繊維束が予め一定幅に広げられたものであれば、即ち、ボビンに巻き取られている強化繊維束が拡幅されたテープ状であれば、プリプレグの製造工程において強化繊維束の幅を広げるという作業を省くことができる。そのため、最近では薄物プリプレグの成形用として、予め拡幅されたテープ状の強化繊維束がボビンに巻取られた巻体を用いることが多くなっている。
【0007】
また、近年、成型方法としてドラムワインドやフィラメントワインド、引き抜き成型など各種の成型方法へフィラメント数の大きい炭素繊維の適用が試みられている。これら成型方法に対しても繊維束が拡幅されたテープ状の形態であることが好ましく、さらに撚れや繊維束の幅の変動の少ないものであることがより好ましい。
【0008】
このようなテープ状の炭素繊維束は、炭素繊維の製造段階の最後において、エポキシ樹脂等を主成分とするサイジング剤を含浸させ、ニップロールによる絞り、あるいは乾熱ロールへの接触により幅出しを行った後、乾燥させることにより製造される。こうして製造されたテープ状の炭素繊維束は、製品形態としてボビンに巻きとられた巻体の形態をとる

【0009】
巻取装置では、繊維束がボビンの長さ方向に均一に巻き付けられるよう、ボビンの軸に平行に繊維束をトラバースさせている。ところで、かかる既存の巻取装置ではテープ状の繊維束形態を維持することは考慮されていない。そのため、この一般繊維用の巻取装置を用いて、拡幅された繊維束をボビンへ巻き取る際に、メーカー仕様の一般繊維用の汎用ガイドを用いると、トラバースさせるときに繊維束が幅方向に押えられて収束したり、繊維束に軸方向の捻じれが生じるなどによって、上述のように拡幅されたテープ状の繊維束形態が崩れたまま巻き取られてしまい、薄物プリプレグの成形用という上記目的に適応することができなくなる。
【0010】
そこで、既存の巻取装置を用いて、このような拡幅されたテープ状の繊維束を、その偏平形態を保ったままボビンに巻き取るための提案がなされている。従来は、例えば特開平4−119123号公報(特許文献1)や特開平10−330038号公報(特許文献2)に記載されているように、既存の巻取装置にガイド装置をトラバースガイドとして取り付ける方法が提案されている。
【0011】
上記特許文献1に記載されているガイド装置は、ボビンの軸と平行に配されたトラバースアームに直交して立設され、前記トラバースアームに沿って摺動するプレート状のヤーンガイド用固定台を有しており、同ヤーンガイド用固定台の上下に繊維束をガイドするガイドロールが配されている。下部のガイドロールは巻き取りボビンの軸と平行に配さた単一ロールからなり、ヤーンガイド用固定台の上部に配されるガイドロールは、同ボビンの軸と直交する一対の平行なガイドロールからなる。拡幅された繊維束は上下のガイドロールの間で軸線方向に90°捻転されるが、これら上下のガイドロールの間を通すことにより、テープ状の繊維束はその拡幅形態を保持した状態でボビンに巻き取ることができる。
【0012】
一方、上記特許文献2に記載されているガイド装置では、トラバースアームに直交して立設され、トラバースアームに沿って往復動するプレート部材の上部に、軸線が互いに直交して上下に配された複数の円錐状をなすガイドを有し、プレート部材の下部には巻き取りボビンとほぼ平行な軸線を有する上下一対の平行なガイドロールを有している。上部に配された円錐状のガイドによって繊維束が軸線方向に90°捻転され、同繊維束は下部に配された一対のガイドロールの間を同ロールに掛け回されて拡幅形態を保持した状態で送られたのち、前記ボビンに巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平4−119123号公報
【特許文献2】特開平10−330038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかるに、この特許文献2に記載されたガイド装置では、太繊度の繊維束について、その幅についての配慮が何らなされていない。この特許文献2では、円錐状ガイドの頂角を、45°〜120°、好ましくは60°〜90°の範囲内としているが、この頂角範囲では、巻取装置のボビンの配列から制限されたスペースの中にトラバース機構のすべてを納めようとする場合、太繊度の繊維束を巻き取る場合には繊維束の幅部分が接触する充分な長さを確保できない可能性がある。言い換えれば、前記円錐状ガイドの頂角では、円錐の斜辺の長さを太繊度の繊維束の幅に対して充分確保しようとすると円錐状ガイドの底面の直径自体が大きくなり、ボビンを多数配列した巻取装置のスペースに収まらなくなる可能性がある。
【0015】
一方、上記特許文献1に記載されているガイド装置を用いる場合には、上記特許文献2に記載されているガイド装置を用いる場合に比べて、トラバース時の反転及び繊維束の形態保持性に優れている。しかしながら、ガイド装置の上部ガイドロールと下部ガイドロールとの間隔は、同ガイド装置を取り付ける巻取機の設計上制限があり、その間隔は短いため、一繊維束当たりのフィラメント数が多くなり、繊維束の幅が広くなると、上部のガイドロールと下部のガイドロールとの間で繊維束を軸線方向に90°捻じる段階で、繊維束に大きな捻じり力が働き、繊維束の拡幅されたテープ状の形態が損なわれてしまう。
【0016】
本発明は、かかる従来の問題点を解決するためになされたものであり、既存の巻取機にガイド装置類を取り付けるだけで、供給されるテープ状に拡幅された強化繊維束を、撚りの無い状態で安定してボビンに巻き取ることができ、しかも前記強化繊維束を供給時の幅よりも更に拡幅した状態でボビンに巻き取ることができる強化繊維束のガイド装置を装着した巻取機、同巻取機によるボビンの製造方法、及び同製造方法により製造される炭素繊維ボビンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の課題は、本発明に係る連続繊維束の巻取機の基本的構成である、連続繊維束の走行路上に配され、同繊維束がひねられて案内される軸線が空間上で互いにねじれた位置関係にある一組の第1及び第2のガイドと、該一組のガイドの前記走行路後流側に配され、前記ひねられた繊維束をひねり戻してボビンに導入案内するボビンと平行な軸線を有する平行ガイドとを具備する、連続繊維束をボビンに巻き取るときのガイド装置の上方に、軸線がボビンの軸線と平行な第2固定ガイドロールを有し、巻取部のボビンの回転駆動がトルクモータによりなされてなる連続繊維束の巻取機にあって、前記第1のガイドが平ガイド又は円錐状ガイドからなり、前記第2ガイドが円錐状ガイドからなり、円錐状ガイドである前記第2ガイドが、平面視で、その軸線をボビンの軸に対して90°以下の角度で且つボビン軸線方向から見て第1ガイドと平行な軸線をもって配されてなる円錐状ガイドロールであり、前記平行ガイドで前記連続繊維束の走行位置及び連続繊維束の幅を安定化させて前記ボビンに巻き取るようにしたことを特徴とする連続繊維束巻取機により解決される。
【0018】
前記一組のガイドによって前記繊維束をほぼ直角にひねるようにされる。好ましくは、前記一組のガイドと前記平行ガイドとが共通の支持手段によって支持されるとともに、前記支持手段がトラバース機構に連動して同トラバース機構によって前記ボビンの軸線方向と平行な方向に前記ボビンのほぼ全長に沿って往復動するようにするとよい。そのため、上記ガイド装置の上方に軸線がボビンの軸線と平行な第2固定ガイドロールを有している。
【0019】
前記第2固定ガイドロールはボビン単位に配され、中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓形状を有するようにするとよい。また、前記第2固定ガイドロールの連続繊維束の走行路上流側であって、上記一組の第1及び第2ガイドの上方に、更に前記第2固定ガイドロールと平行に配された第1の固定ガイドロールを有し、この第1の固定ガイドロールを平ロールとすることが好ましい。また、前記第2固定ガイドロールと前記一組のガイドとの間に更に第3固定ガイドロールが配され、更に前記第2固定ガイドロールと前記第3固定ガイドロールとの間にはダンサーロールが配されており、前記第2及び第3のガイドロールが平ロール又は中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓状ロールとすることが望ましい。
【0020】
連続繊維束の巻取部におけるボビンの回転駆動が前記ダンサーロールの変位に基づき繊維束の張力を制御する巻取張力制御手段により制御され、上記第2及び第3ロールの全てが平ロール又は中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓状ロールとすることができる。また、
同じく連続繊維束の巻取部におけるボビンの回転駆動が前記ダンサーロールの変位に基づき繊維束の張力を制御する巻取張力制御手段により制御されるようにし、上記第2及び第3ロールを平ロールと中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓状ロールとの組合せから構成するとよい。前記第2固定ガイドロールが平ロールからなり、且つ全てのガイド装置ごとに案内される複数の連続繊維束を同時に案内する単一のロールからなるようにしてもよい。前記連続繊維束がフィラメント数12000〜150000本の炭素繊維束からなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一組のガイドは、軸線が互いにねじれた位置関係からなる一組のガイドからなり、平ガイド又は円錐状ガイドから構成される第1ガイドと円錐状ガイドから構成される第2ガイドからなる。第1ガイドとなる平ガイドの軸線は、ボビンの軸線と直交する方向に配置される。この場合の平ガイドは、固定ガイドでも、回転機構を有する平ロールでも差し支えない。また第1ガイドは、平ガイド以外にも円錐状の固定ガイドや、円錐状の回転機構を有するロールであっても差し支えない。この場合、その軸線の方向は、繊維束の供給されて最初に接触する円錐状ガイドの斜辺がボビンの軸と直交する方向に配置することが必要である。
【0022】
第2ガイドとなる円錐状ガイドは、平面視で、その軸線をボビンの軸に対して90°以下の角度で且つボビン軸線方向から見て第1ガイドと平行な軸線をもって配置される。いずれにしても、供給される連続繊維束は第1ガイド及び第2ガイドまでの間で90°近くまで捻転されることになる。また本発明によれば、これら一組のガイドを通ったあと、ボビンに平行な軸線を有する平行ガイドによって繊維束は拡幅されながら約90°逆方向に捻転されて、供給時と同じ向きに戻され、又は更に90°同一方向に捻転されて、結果として180°反転し裏返されて、いずれも安定した幅形態を保持した状態でボビンに整然と巻き取られる。
【0023】
第1ガイドの繊維束が接する部分の面長は、その繊維束の繊度、幅によって適宜選定すればよいが、20mm〜150mmの範囲のものが用いられる。さらに回転機構を有する平ロールである場合、その直径はトラバース機構によってボビンの軸線に平行に移動するものであり、巻取機のボビンの配列スペースの制約からのみ決まってくるものであるが、10mm〜50mmとすることが好適である。さらに、この第1ガイドとして円錐状のガイドを用いる場合、繊維束が最初に接するボビンの軸に直交して配置される斜辺の長さが、20mm〜150mmであることが望ましい。この場合、第1ガイドが平ロールである場合と同様、その寸法形状は巻取機のボビンの配列スペースの制約を受けるため、前記斜辺長さを確保するため、円錐状ガイドの頂角は、45°以下の範囲とすることが望ましい。
【0024】
円錐状の第2ガイドはその軸線を、上面視でボビンの軸線に対して90°以下とし且つボビンの軸線方向から見て第1ガイドの軸線と平行に配置されるが、前記第1ガイドを円錐状のガイドとする場合と同様に、スペースの観点から、その頂角を45°以下とし、狭いスペースの中で太繊度の繊維束の接する斜辺の長さを充分に確保することが好ましい。すなわち、その寸法は底面の直径が10〜50mm、より好ましくは20mm〜40mmであり、斜辺の長さは20〜150mm、より好ましくは30〜120mmである。
【0025】
また、巻取機の種類によっては、巻取りに従がってパッケージ直径が増加していくに伴って、ボビンの回転軸自体が移動するものと、後述するボビントラバース機構全体がボビンの半径方向に移動するものとがある。後者の場合、巻取機の上部に配置された後述する固定ガイドロールから供給される繊維束の方向が、ボビントラバース機構全体の移動に伴って変わってくるために上述したような充分な斜辺長さを取ることができる。
【0026】
軸線が空間上で互いにねじれた位置関係にある一組のガイドにおいて、回転機構を採用するかどうかは、その目的に応じて適宜選定すればよい。すなわち、回転機構を有しないガイドとする場合、繊維束は巻取張力によって当該ガイドに押し付けられ、その摩擦によって積極的に開繊され、幅出しに寄与する。一方、回転機構を有するガイドの場合は、摩擦による開繊作用は回転機構を有しないガイドに比して少なくなるものの、摩擦による毛羽立ちが改善されるものである。また、前記ガイドの材質や表面状態も何ら制約を受けるものではなく、鋼製や樹脂製、あるいは鋼製のものに樹脂をコーティングしたものなどが採用でき、表面の仕上げについても鏡面研磨したもの、梨地処理したものなどが採用できる。これらの材質や表面状態は、その目的や繊維束の製造段階の最後において、付与されるエポキシ樹脂等を主成分とするサイジング剤の種類やサイジング剤によって付与される繊維束の所望の硬さなどにより適宜選定すればよい。
【0027】
平行ガイドロールは、その上部に配置される円錐状のガイドロールを経由して供給される繊維束をボビンに平行な方向にさらに捻転させ、さらに繊維束をテープ状に拡幅するものである。平行ガイドロールとして、通常は1本の円筒形状のロールが用いられるが、さらに繊維束を拡幅したい場合は、特開平10- 330038号公報に記載の通り複数本数の平行ガイドロールを用いたり、特開2001- 348166号公報に記載の通り、複数の平行ガイドロールを、少なくともその一方を中央部が膨出した湾曲周面をもつ太鼓形状とすることが可能である。
【0028】
本発明によれば、上記一組のガイドの上方に、その軸線がボビンの軸線と平行である第1固定ガイドロールを有していることが好ましく、繊維束供給部から供給される繊維束は、前記巻前記固定ガイドロールにて案内されて供給路の向きが変更されたのち、軸線が空間上で互いにねじれた位置関係にある一組のガイドとに交互に掛け渡されてボビンへと送られる。このとき、ボビンの軸線と平行にトラバースされる、軸線が互いにねじれた位置関係にある一組のガイドのうち初めに繊維束が接する第1ガイドは、その軸線がボビンの軸と直交、すなわちトラバース方向と直交する方向に配置されているため、ボビンの軸と平行に移動しても繊維束は前記上部ガイドロールの周面に沿って供給され、繊維束は安定した状態でトラバースがなされテープ状の形態を維持できる。
【0029】
巻取部に供給される繊維束は、前記第1固定ガイドロールを配するとともに、巻取部のボビンの回転にかかわる駆動がトルクモータによるものであって、繊維束は前記第1固定ロールに掛け渡されたのち、軸線が空間上で互いにねじれた位置関係にある上記一組のガイドと前記ボビンに平行な軸線を有する平行ガイドとを経由して、ボビンに巻き取られる。この場合、前記一組のガイドの第1ガイドは平ガイドであり、第2ガイドは円錐状ガイドである。この一組のガイドによって炭素繊維束をひねって前記平行ガイドに導かれ、該平行ガイドで前記連続繊維束の走行位置及び連続繊維束の幅を安定化させるトラバース機構を経由してボビンに巻き取られる。
【0030】
前記第1固定ガイドとして中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓形状としてもよい。この形状により、上部に配置される固定ガイドロールとトラバース機構、すなわち軸線が空間上で互いにねじれた位置関係にある一組のガイドとの距離が短くても、繊維束はトラバースに伴う糸揺れズレなどが減衰され繊維束の形状を損なうことがない。
【0031】
また本発明の連続繊維束の巻取機によれば、前記中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓形状の第1固定ガイドロールの繊維束が供給されるさらに上流側に、さらに第2の固定ガイドロールを有し、当該第2固定ガイドロールを平ロールとする。平ロールである第2固定ガイドロールと鼓形状の第1固定ガイドロールとを交互に掛け渡すことにより、繊維束は平ロールで開繊、幅出しされるとともに、鼓形状のロールでトラバースに伴う、糸揺れズレなどが減衰され繊維束の形状を損なうことがなくす。
【0032】
本発明にあって、巻取部のボビンの回転にかかわる駆動が、ダンサーロールを用いた巻き取り張力制御機構を備えていることが望ましい。この場合、該ダンサーロールの上方と、前記ダンサーロール及びトラバース機構との間に、それぞれ第1及び第3の固定ガイドロールを有し、それらがすべて平ロール或いはすべて中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓状からなる固定ガイドロールにより構成されていることが好ましく、或いは前記ダンサーロールの上方と該ダンサーロール及びトラバース機構の間とに、それぞれ第1及び第3の固定ガイドロールを有し、それらが平ロールと中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓状である固定ガイドロールとの組合せで構成されていてもよい。すべての固定ガイドロールが平ロールであっても、開繊、拡幅された扁平なテープ状繊維束を巻き取ることは可能であるが、鼓状のガイドロールとの組み合わせによれば、トラバースに伴う糸揺れを減衰させ繊維束の形状を保つことも可能である。
【0033】
なお、本発明の巻取機は、拡幅された扁平なテープ状繊維束、特にフィラメント数の多い炭素繊維を巻き取る場合に適しているが、もちろん各種の繊維束に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るガイド装置を装着した連続繊維束の巻取機による繊維束の巻取り状態を概略で示す側面図である。
【図2】同巻取機のガイド部材の配置を概略で示す正面図である。
【図3】図2のIII-III 線に沿った矢視図である。
【図4】同巻取機による連続繊維束のトラバース状態を概略示す正面図である。
【図5】本発明に係る連続繊維束巻取機の他の実施形態例を概略で示す側面図である。
【図6】本発明に係る連続繊維束巻取機の更に他の実施形態例を概略で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照し具体的に説明する。炭素繊維は通常、アクリル系の原料繊維を空気中で加熱して耐炎化した後、窒素中で加熱して炭素化し得られるPAN系炭素繊維と、石油等のピッチを原料とするピッチ系炭素繊維とがあるが、本発明はそれら両方の炭素繊維を巻き取る際に適用可能である。
【0036】
テープ状の炭素繊維束は、例えば特公平6−65787号公報に開示されているように、同繊維束にサイジング剤を含浸させた後、加熱ロールで接触乾燥させることにより得られる。この炭素繊維束は、このような成形後、巻取り装置によりボビンに巻き取られて、後のプリプレグ等の製造工程へと送られる。
【0037】
図1は本発明のガイド装置が取り付けられた、ボビンの回転にかかわる駆動がトルクモータである巻取部を概略的に示した側面図であり、図2は本発明のガイド装置の主要部の概略図、図3は図2のIII-III 線に沿った矢視図、図4は同正面図である。
【0038】
本発明におけるガイド装置10は、図示せぬフレームに取り付けられた3つのガイド4,5,6を有し、ボビン軸1aに平行に往復動する図示せぬ公知のトラバース機構に装着されて一緒に往復動する。ガイド装置10の第1及び第2ガイド4,5は一組のガイドを構成し、図3に示す上面視では、それぞれの軸線が互いにねじれた位置関係となるように配置され、かつ図1に示すボビンの軸線方向から見て、それぞれボビン軸1aとは直交する方向に配置される。また他の一つのガイド6は前記第2ガイド5の繊維束供給後流側に配され、その軸線6aが前記ボビン軸1aと平行に配されたガイドロール(以下、平行ガイドロールという。)からなる。
【0039】
第1ガイド4は平ガイドからなり、これは固定ガイドでも回転機構を有する平ロールでもかまわない。またそれらの材質としても、鋼製の梨地メッキを施したもの、あるいは鏡面メッキを施したもの、更にはテフロンなどの樹脂をコーティングしたものなど、いずれの材質も使用可能である。第1ガイド4は、平ガイド以外の円錐状の固定ガイド、或いは円錐状の回転機構を有するロールであっても差し支えないが、このように円錐状ガイドであるときは、第1ガイド軸線4aを、繊維束が供給されて最初に接する円錐の斜辺に相当する部分が、図3に示すとおり、ボビン軸1aと垂直な方向に配置する。このとき、第1ガイド4の繊維束の接する部分の長さは、供給する繊維束の繊度あるいは繊維束の幅にもよるが、平ガイドを用いる場合は巻取機のボビン1の配列スペースも考慮して、20mm〜100mm、好ましくは30mm〜80mmとする。更にその直径もボビン1の配列スペースの点から10〜50mmが好ましく、より好ましくは20mm〜40mmである。また、第1ガイド4に円錐状の固定ガイドや回転ロールを用いる場合も、繊維束が最初に接する部分である斜辺の長さが、20mm〜120mm、好ましくは30mm〜100mmであり、円錐の底面の直径も10〜50mm、より好ましくは20mm〜40mmである。
【0040】
第2ガイド5は円錐状を呈しており、第1ガイド4とは第1ガイド軸線4aがねじれた位置関係に配置される。すなわち、第2ガイド5は、図1及び図3においてボビン軸1aとはその軸線方向から見て直交する方向に配置され、同時に第2ガイド軸線5aは、図3に示すようにボビン軸1aに対して繊維束の供給方向から見て90°以下の角度をもって設置される。その円錐形状の頂角は45°以下に設定される。ボビン1の配列スペースの制約の観点から、狭いスペースの中で太繊度の繊維束の接する斜辺の長さを充分確保することが好ましい。すなわち、円錐状である第2ガイド5の底面の直径は10〜50mmであることが好ましく、より好ましくは20〜40mmであり、斜辺の長さは20mm〜100mm、好ましくは30mm〜80mmである。
【0041】
この一組の第1ガイド4及び第2ガイド5と、上記平行ガイドロール6によって、繊維束はほぼその供給方向の軸線に対して90°捻転されてから0°に戻し、又は更に同一方向に90°捻転させるためには、第2ガイド軸線5aの方向及びその頂角は、前述のとおり、繊維束と接する斜辺の方向を、図3に示すように、ボビン軸1aに対して30°〜60°に設定し、特に40〜50°に設定することが好ましい。
【0042】
前記平行ガイドロール6もまた、前述した第1ガイド4、第2ガイド5と共通の支持手段によって支持され、図示せぬトラバース機構によりボビン軸1aと平行な方向に往復トラバースされる。
【0043】
この平行ガイドロール6は、その上方に配置される円錐状のロールからなる第2ガイド5を経由して供給されてくる繊維束をボビンに平行な方向に更に捻転させると同時に、繊維束をテープ状に拡幅する。平行ガイドロール6としては、1本の円筒形状のロールが用いられるが、巻取部内におけるボビン配列スペースの観点から、その直径は10mm〜40mm、更に好ましくは、15mm〜30mmに設定される。また、そのロール面長は繊維束の総繊度や繊維束の幅などから適宜決定すればよいが、トラバースに伴い多少はそのロール周面上で繊維束の位置が変わることも考慮する。これらの状況を考慮し、平行ガイドロール6のロール面長は20mm〜100mm、更にトラバース機構への取り付けなどのスペース要因をも考慮すると30mm〜80mmとすることが更に好ましい。繊維束を更に拡幅したい場合は、特開平10- 330038号公報に記載の通り、複数本数の平行ガイドロールを用いたり、或いは特開2001- 348166号公報に記載の通り、複数の平行ガイドロールを配し、 その少なくともその一部を中央部が膨出した湾曲周面をもつ太鼓形状とすることが可能である。
【0044】
図1に示す通り、巻取部本体の上方には、その軸線をボビン軸1aと平行に第1固定ガイドロール2と第2固定ガイドロール3が設けられる。
【0045】
繊維の製造段階の最後において、エポキシ樹脂等を主成分とするサイジング剤を含浸させ、ニップロールによる絞り、あるいは乾熱ロールへの接触により幅出しを行った後に巻取部へ供給されるが、この繊維束は、前記巻取部の上部に設置された上部第1固定ガイドロール2と上部第2固定ガイドロール3に掛け回されてから、軸線が空間上で互いにねじれた位置関係にある一組のガイドすなわち、第1ガイド4と第2ガイド5とに交互に掛け回されてボビンへと送られる。このとき、第1ガイド4と第2ガイド5はボビン軸1aと平行にトラバースされ、更に初めに繊維束が接する第1ガイド4は平ガイドであり、その軸線がボビンの軸と垂直すなわちトラバース方向と直交する方向に配置されているため、ボビンの軸と平行に移動しても繊維束は前記第1ガイド4のロール周面に沿って供給され、繊維束は安定した状態でトラバースがなされテープ状の形態を維持できる。なお、図示例では単一の平行ガイドロール6を使っているが、2本一対の平行ガイドロールを平行に配される採用することもできる。この場合には、トラバースの折り返し位置においても、繊維束を確実に追随させて往復動させることができるため、繊維束が更に安定してトラバースがなされる。
【0046】
更に、第2固定ガイドロール3としては、図2及び図4に示すように中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓形状とする。この形状を採用することにより、第2固定ガイドロール3と軸線が空間上で互いにねじれた位置関係にある一組の第1及び第2ガイド4,5との間の距離が短くしても、第2固定ガイドロール3と図示せぬトラバース機構との間で、繊維束はトラバースに伴う糸揺れズレなどが低減され繊維束の形状を損なうことがない。このとき湾曲周面の形状として円弧の一部をその形状とするが、その円弧の半径は、繊維束の幅や第1ガイド4までの距離にもよるが、30〜150mm、より好ましくは40〜120mmであることが好適である。また、この第2固定ガイドロール3の直径も何ら制約を受けるものではないが、繊維束の毛羽の巻き付き防止の観点から、最も凹んだ部分の直径は25mm以上であることが好ましい。
【0047】
この中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓形状の第2固定ガイドロール3の、繊維束が供給される更に上流側に、更に第1固定ガイドロール2を有しており、当該第1固定ガイドロール2は平ロールとすることも特徴の一つである。平ロールの寸法形状は何ら制約を受けるものではないが、繊維束の毛羽の巻き付き防止の観点から、その直径を25mm以上とすることが好ましい。
【0048】
繊維束を平ロールである第1固定ガイドロール2と鼓形状の第2固定ガイドロール3とを交互に掛け回すことにより、繊維束は平ロールで開繊と幅出しとが同時になされるとともに、鼓形状のロールでトラバースに伴う、糸揺れズレなどが減衰され繊維束の形状を損なうことがない。
【0049】
図5には、本発明におけるガイド装置10が取り付けられるとともに、第2固定ガイドロール11と前記ガイド装置10との間にダンサーロール12が取り付けられ、ダンサーロール12の変位量に基づいてボビン1の回転を制御して、繊維束の張力を制御する張力制御方式を備えた巻取機の概略側面図が示されている。ここで図5において、第2固定ガイドロール11は図1に示した第2固定ガイドロール3のように各ガイド装置10ごとに配される複数のガイドロールから構成されてはおらず、各ガイド装置10に共通に使われる単一のガイドロールから構成されている。
【0050】
図5に示す巻取機にあっては、連続繊維束の走行路にあって前記第2固定ガイドロール11との間で連続繊維束を前記ダンサーロール12の下側周面に掛け回して支持案内する
第3固定ガイドロール13が取り付けられている。これら第2固定ガイドロール11、ダンサーロール12及び第3固定ガイドロール13以外の構成は、図1に示した巻取機と実質的に同一の構成を備えている。単一のロールからなる前記第2固定ガイドロール11には複数の繊維束が供給され、ここからそれぞれの繊維束がそれぞれのボビンに巻き取られるべくダンサーロール12を経由する。
【0051】
図5に示すダンサーロール12は、振り子状にロール自体が揺動可能であり、繊維束の張力とダンサーロール12の自重及び図示せぬ付加荷重とのバランスで揺動するものである。ここでダンサーロール12にはその揺動幅すなわち変位量に応じてボビン1の巻取り張力を制御すべく、PID方式などによる図示せぬ張力制御機構を有しており、例えば繊維束の張力が下がりダンサーロール12が重力により下方に下がる場合、ボビン軸1aの巻取り回転速度を増加させ、所定の張力となるように制御する。図5に示す巻取機のガイドガイドロールのうち、前記第2固定ガイドロール11、ダンサーロール12及び第3固定ガイドロール13を全て平ロールで構成しても、或いは中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓形状であるものでも、平ロールと中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓形状であるものとの組合せで構成されることが可能である。
【0052】
上記第2固定ガイドロール11には、1本の円筒形状のロールが用いられるが、この際も巻取部内におけるボビン1の配列スペースの観点から、その直径は20mm〜120mm、好ましくは30mm〜100mmである。また、そのロール面長は繊維束の総繊度や繊維束の幅、供給される繊維束の本数などから適宜決定すればよいものの、ダンサーロール12、第3固定ガイドロール13がすべて平ロールで構成されている場合、トラバースに伴い多少はそのロール周面上で繊維束の位置が変わることも考慮する。またダンサーロール12、第3固定ガイドロール13を平ロールで構成する場合、これらの直径は巻取部内におけるボビン1の配列スペースの観点から10mm〜40mmとすることが好ましい。また、この場合には面長ついても、ロール周面上で繊維束の位置が変わることを考慮して決定する必要がある。
【0053】
糸揺れを低減するため、ダンサーロール12、第3固定ガイドロール13に中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓形状のロールを採用する場合は、湾曲周面の形状として円弧の一部をその形状とするが、その円弧の半径寸法としては、繊維束の幅や一組の第1及び第2ガイド4,5のうち第1ガイド4までの距離に影響されるが、30〜150mm、より好ましくは40〜120mmが好適である。また、その直径も何ら制約を受けるものではないが、繊維束の毛羽の巻き付き防止の観点から、最も凹んだ部分の直径として25mm以上とすることが好ましい。
【0054】
これらの巻取機におけるガイドロールなどの配置は、図6に示す態様でも一向に差し支えず、所望の効果が得られるものである。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0055】
図1及び図2に示す上述したガイド装置10を製作し、神津製作所製のKTW−C型巻取機のガイドとして使用した。その巻取部によるボビン1の回転に関する駆動はトルクモーター駆動方式が採用される。このとき第1ガイド4はフレーム8に固定された円柱状の平ガイドが用いられ、繊維束の接する部分の長さを60mm、直径を25mmとした。また、第2ガイド5は、その頂角が15°の円錐状の高さ60mmの固定ガイドを用い、図3に示すボビン軸1aとの角度θが57.5°に設定した。これら第1ガイド4と第2ガイド5はいずれも鋼製の表面に梨地メッキを施した。平行ガイドロール6は、その直径が15mmで、そのロール面長(ロール幅)は75mmの鋼製で梨地メッキを施したものを用いた。また、巻取部上方に位置する上部第1固定ガイドロール2は直径40mm、長さ
80mmの平ロールを用い、上部第2固定ガイドロール3は中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓形状であるロールを用い、その湾曲周面は円弧の一部の形状を有し、その円弧の半径は45mm、最も凹んだ部分の直径を50mm、ロール長さを50mmとした。
【0056】
このようなガイド装置10を、上記巻取機に取り付けて、巻取部によって炭素繊維束を紙製の巻取りボビン(紙管)に巻き取った。ここで紙管としては直径80mm、長さ305mmのものを使用し、トラバース幅は254mmとした。また、炭素繊維束としてはフィラメント数50000本、単繊維の直径が7μmであり、繊維束の幅は13mmのテープ状に成形されたものを用いた。
【0057】
この炭素繊維束を巻取部への供給速度4m/minで上記紙管に2000m巻き取った。巻き取った紙管から炭素繊維束を10m/minの速度で引き出し、ドラムワインド評価を行った。CCDカメラを用いて1 秒毎に1000m分の幅の実測を行ったところ、紙管の中央部分だけでなく、紙管の端部においても繊維束には幅の減少が認められず、繊維束の拡幅形態の安定性を示しており、その幅の変動は19mm〜21mmの幅の範囲であり、CV値は2.5%以内であった。
【実施例2】
【0058】
図5に示すバウリグリー社(Bouligny Company )製の巻取機でフィラメント数48000本、(単繊維の)直径が7μmからなる炭素繊維束を巻き取った。このとき、ガイド装置10は実施例1と同様の形状寸法を有するものを用いた。ただし、第1ガイド4と第2ガイド5はいずれもその材質として表面にテフロン系樹脂をコーティングしたものを用いた。
【0059】
第2固定ガイドロール11は、その直径が76.2mm、ロール長さは、繊維束が4本供給されることを考慮して、127mmのものを用いた。また、ダンサーロール12、及び第3固定ガイドロール13はいずれも平ロールであり、その直径は50.8mm、ロール長さ50.5mmのものを用いた。このようなガイドロールを備えた巻取機によって炭素繊維束を紙製の巻取りボビン(紙管)に巻き取った。ここで紙管としては外径82mm、長さ305mmのものを使用し、トラバース幅は252.4mmであった。
【0060】
上記炭素繊維束を巻取部への供給速度7m/minで上記紙管に2000m巻き取った。巻き取った紙管から炭素繊維束を10m/minの速度で引き出し、ドラムワインド評価を行った。CCDカメラを用いて1秒毎に1000m分の幅の実測を行ったところ、紙管の中央部分だけでなく、紙管の端部においても繊維束には幅の減少が認められず、繊維束の拡幅形態の安定性を示しており、その変動は18mm〜20mmの幅の範囲であり、CV値は2.5%以内であった。
【0061】
以上述べたように、本発明の連続繊維束の巻取機用ガイド装置は、トラバースするガイドスタンドに、互いに形状の異なる2対4個のガイドロール群とガイド部材とが配されており、最初の第1及び第2の固定ガイドロールによってトラバースの動きが打ち消され、次の一組の第1及び第2ガイドにより繊維束の形状を保ちつつ、その軸線方向に90°の捻転が安定して付与されて、最後の平行ロールとプレスロールにより、ボビンの外周方向に沿って炭素繊維束を、拡幅形態を保持した状態で供給することができるようになり、テープ状に拡幅された繊維束を安定した形態で巻き取ることができる。
【0062】
また、本発明の巻取部によって巻取りボビンに巻き取られた巻体から巻き出される繊維束は幅が広く且つその幅寸法も安定しているため、薄物の炭素繊維プリプレグやドラムワインド及びフィラメントワインドによる成形品を製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
1 ボビン
1a ボビン軸
2 上部第1固定ガイドロール
3 上部第2固定ガイドロール
4 第1ガイド
4a 第1ガイド軸線
5 第2ガイド
5a 第2ガイド軸線
6 平行ガイドロール
7 プレッシャーロール
8 フレーム
10 ガイド装置
11 第2固定ガイドロール
12 ダンサーロール
13 第3固定ガイドロール
θ (第2ガイド軸線5aとボビン軸1aのなす)角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続繊維束の走行路上に配され、同繊維束がひねられて案内される軸線が空間上で互いにねじれた位置関係にある一組の第1及び第2のガイドと、該一組のガイドの前記走行路後流側に配され、前記ひねられた繊維束をひねり戻してボビンに導入案内するボビンと平行な軸線を有する平行ガイドとを具備する、連続繊維束をボビンに巻き取るときのガイド装置の上方に、軸線がボビンの軸線と平行な第2固定ガイドロールを有し、巻取部のボビンの回転駆動がトルクモータによりなされてなる連続繊維束の巻取機にあって、
前記第1のガイドが平ガイド又は円錐状ガイドからなり、前記第2ガイドが円錐状ガイドからなり、
円錐状ガイドである前記第2ガイドが、平面視で、その軸線をボビンの軸に対して90°以下の角度で且つボビン軸線方向から見て第1ガイドと平行な軸線をもって配されてなる円錐状ガイドロールであり、
前記平行ガイドで前記連続繊維束の走行位置及び連続繊維束の幅を安定化させて前記ボビンに巻き取るようにしたことを特徴とする連続繊維束巻取機。
【請求項2】
前記一組のガイドと前記平行ガイドとが共通の支持手段によって支持されるとともに、前記支持手段がトラバース機構に連動して同トラバース機構によって前記ボビンの軸線方向と平行な方向に前記ボビンのほぼ全長に沿って往復動する請求項1記載の連続繊維束巻取機。
【請求項3】
前記第2固定ガイドロールがボビン単位に配され、中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓形状を有してなる請求項1記載の連続繊維束巻取機。
【請求項4】
前記第2固定ガイドロールの連続繊維束の走行路上流側であって、上記一組の第1及び第2ガイドの上方に、更に前記第2固定ガイドロールと平行に配された第1の固定ガイドロールを有し、この第1の固定ガイドロールが平ロールである請求項1〜3のいずれかに記載の連続繊維束巻取機。
【請求項5】
前記第2固定ガイドロールと前記一組のガイドとの間に更に第3固定ガイドロールが配され、更に前記第2固定ガイドロールと前記第3固定ガイドロールとの間にダンサーロールが配されてなり、前記第2及び第3のガイドロールが平ロール又は中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓状ロールである請求項4記載の連続繊維束巻取機。
【請求項6】
連続繊維束の巻取部におけるボビンの回転駆動が前記ダンサーロールの変位に基づき繊維束の張力を制御する巻取張力制御手段により制御され、上記第2及び第3ロールの全てが平ロール又は中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓状ロールである請求項5記載の連続繊維束巻取機。
【請求項7】
連続繊維束の巻取部におけるボビンの回転駆動が前記ダンサーロールの変位に基づき繊維束の張力を制御する巻取張力制御手段により制御され、上記第2及び第3ロールが平ロールと中央部が凹んだ湾曲周面を有する鼓状ロールとの組合せから構成されてなる請求項5又は6に記載の連続繊維束巻取機。
【請求項8】
前記第2固定ガイドロールが平ロールからなり、且つ全てのガイド装置ごとに案内される複数の連続繊維束を同時に案内する単一のロールからなる請求項1記載の連続繊維束巻取機。
【請求項9】
請求項1記載の連続繊維束巻取機によって連続繊維束を巻き取ることを特徴とするボビンの製造方法。
【請求項10】
前記連続繊維束がフィラメント数12000〜150000本の炭素繊維束からなる請求項9記載のボビンの製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法によって得られることを特徴とする炭素繊維ボビン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−12224(P2012−12224A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170410(P2011−170410)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【分割の表示】特願2005−31256(P2005−31256)の分割
【原出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】