説明

連続鋳造用の浸漬ノズル

【課題】二孔とそれを連結するスリットを有する浸漬ノズルにおいて、溶鋼を浸漬ノズルの開孔部全方向に均一に吐出することで、介在物欠陥や気泡欠陥の発生を抑制し鋳片の品質を向上させる。
【解決手段】溶鋼を鋳型3内に注入する浸漬ノズル1において、浸漬ノズル1下端近傍に形成され、浸漬ノズル1の中心線上から鋳型幅方向に向けて対称に開孔した一対の吐出孔と、該浸漬ノズル1底部に形成され、前記一対の吐出孔を連結する開孔スリットを備えており、前記吐出孔の吐出角度θが、水平方向を基準として仰角5°から30°の範囲内にあり、前記一対の吐出孔と前記開孔スリットとで構成される開孔部の、鋳型幅方向内側両端面への水平投影面積の和をSS、前記開孔部の鉛直下向き投影面積をSBとし、投影面積比SS/SBが、2.5≦SS/SB≦15の範囲内にあることを特徴とする連続鋳造用の浸漬ノズル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、鋼などの溶融金属を連続鋳造する際に、溶融金属を鋳型内に供給する浸漬ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶鋼をはじめとする溶融金属の連続鋳造では、溶鋼は取鍋から溶鋼を受ける中間容器であるタンディッシュに移され、タンディッシュの底部に配置された浸漬ノズルを介して鋳型内に注入される。鋳型に注入された溶鋼は鋳型に接する部分から冷却されて凝固を開始して凝固シェルを形成し、順次鋳型下方のロール帯に引き抜かれて凝固が進行し、最終的に凝固が全て完了して鋳片となる。
【0003】
タンディッシュから鋳型に溶鋼を注入する浸漬ノズルは、有底円筒状の形状であり、その側壁下部には鋳型の幅方向、すなわち鋳型の長辺方向に沿って平行に溶鋼を注ぐための、浸漬ノズルの円筒軸に対して対称な二個の吐出孔が設けられている。二個の吐出孔を有する浸漬ノズル(以下、二孔ノズルと記載する場合がある)において、二個の吐出孔は各々鋳型短辺を向くように鋳型幅方向に平行に配置される。
【0004】
タンディッシュから二孔ノズルを介して、鋳型内に注がれた溶鋼は吐出流として鋳型の短辺に位置する凝固シェルへと衝突して、上昇流と下降流に分岐する。この上昇流は適度な範囲内では介在物や気泡の浮上除去を促進するが、大きすぎると湯面変動や溶融パウダーの巻き込みを引き起こし、操業性や鋳片品質に悪影響を及ぼす。また下降流は介在物や気泡の侵入に寄与するため、出来る限り小さい方が好ましい。この上昇流および下降流の流速は、二孔ノズルの吐出流速の増加に伴い大きくなり、その流速は二孔ノズルの吐出角度にも影響される。二孔ノズルの形状と二孔ノズルによって形成される鋳型内での流動には以下の問題がある。すなわち、二孔ノズルの吐出角度が下向き(すなわち水平方向を基準とした俯角方向)の場合には、下降流速が大きくなるため、下降流に付随した介在物や気泡が深くまで侵入して浮上しきれずに凝固シェルに捕捉され、介在物欠陥や気泡欠陥となり鋳片品質の低下を招く。これに対して、吐出角度が上向き(すなわち水平方向を基準とした仰角方向)の場合には、上昇流速が大きくなるため、湯面を激しく揺動し、溶融パウダーが溶鋼内に巻き込まれて凝固シェルに捕捉され、パウダー系の欠陥となり鋳片品質の低下を招く。吐出角度が水平の場合には、溶鋼吐出流が減衰なく短辺側の凝固シェルに衝突するため、凝固シェルが再溶解して、ブレイクアウトが生じる恐れがある。
【0005】
鋳造速度を小さくして吐出流速を抑えた限りでは上述の問題が発生する可能性は低い。しかし、生産量の増加を図ろうとした場合には鋳造速度を増加しなければならず、それに伴い吐出流速も増加して、上述した特に鋳片品質に関する問題が生じる。この課題を解決するための技術として、二孔ノズルの底部に鋳型幅方向と平行に吐出孔と連結したスリットを設けた特許文献1記載の浸漬ノズル(以下、分散ノズルと記載する場合がある)が知られている。分散ノズルでは、溶鋼を吐出孔及びスリットから鋳型内に注入することにより、溶鋼を鋳型幅全方向に吐出可能であり、二孔ノズルよりも下降流速が小さくなり、介在物の侵入深さが低減して、介在物欠陥が低減するとしている。また、分散ノズルでは溶鋼の均一吐出により、浸漬ノズル閉塞抑制とパウダーの円滑な溶融を可能としている。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−14051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
更なる増産の要求に応えつつ、高い品質レベルの鋳片を提供するためには、分散ノズルの吐出流速をさらに低減することが必要である。しかし、特許文献1記載の分散ノズルにおいて、吐出角度が下向きの場合は鋳造速度の増加に伴って下降流速が増加してしまい、鋳片品質を悪化させるのみである。
そこで、分散ノズルの吐出角度を上向きとして開孔部の方向を鋳型全方向に拡張して、分散ノズルの吐出流速をさらに低減することが考えられる。しかしながら、特許文献1記載の分散ノズルにおいて、単純に吐出角度を上向きとしただけでは、吐出流が分散ノズルの吐出孔上端壁から剥離してしまい、吐出流は吐出角度の方向には流出しないため、開孔部全方向に均一に溶鋼を吐出することは非常に困難であることがわかった。
よって、特許文献1記載の分散ノズルにおいて、吐出角度を上向きとしても吐出流は浸漬ノズルの開孔部全方向に均一に吐出しないため、吐出流速の低減には到らず、生産性向上と鋳片品質向上の両立を図るには不十分である。
【0008】
本発明は、二個の吐出孔とそれを連結するスリットを有する浸漬ノズルにおいて、溶鋼を浸漬ノズルの開孔部全方向に均一に吐出することで吐出流速を低減して、介在物欠陥や気泡欠陥の発生を抑制し鋳片の品質を向上させるとともに、生産性を向上することが可能な連続鋳造用の浸漬ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは以下の通りである。すなわち、本発明は、溶鋼を鋳型内に注入する浸漬ノズルにおいて、浸漬ノズル下端近傍に形成され、浸漬ノズルの中心線上から鋳型幅方向に向けて対称に開孔した一対の吐出孔と、該浸漬ノズル底部に形成され、前記一対の吐出孔を連結する開孔スリットを備えており、前記吐出孔の吐出角度θが、上向き、すなわち水平方向を基準として仰角(以下、上向きと記載する場合がある)5°から30°の範囲内にあり、前記一対の吐出孔と前記開孔スリットとで構成される開孔部の、鋳型幅方向内側両端面への水平投影面積の和をSS、前記開孔部の鉛直下向き投影面積をSBとし、投影面積比SS/SBが、
2.5≦SS/SB≦15
の範囲内にあることを特徴とする連続鋳造用の浸漬ノズルである。なお、浸漬ノズルの中心線とは、浸漬ノズルの中心を通って鉛直方向に延伸する中心線のことをいう。鋳型幅方向に向けて対称に開孔したとは、鋳型幅方向と同じ方向において対称に開孔していることをいう。
【0010】
さらに、浸漬ノズル上端と吐出孔上端との間の浸漬ノズル内壁に、浸漬ノズルと軸心が一致した溶鋼の流路を狭める浸漬ノズル内径よりも径の小さい円筒状の段差を有しており、
浸漬ノズルの内径と段差部のノズル内径との差の1/2を段差高さH1[mm]とし、吐出孔上端から段差部下端までの距離を段差位置H2[mm]とし、段差部のノズル円筒軸方向の長さを段差長さH3[mm]とし、段差部下端とノズル内壁を結ぶ傾斜部の鉛直方向長さを傾斜長さH4[mm]としたときに、前記H1〜H4が下記の式(1)〜(4)を満たすようにしてもよい。
2≦H1≦25 ・・・(1)
50≦H2≦500 ・・・(2)
20≦H3≦300 ・・・(3)
0≦H4≦H1 ・・・(4)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鋳造速度を増加させた場合でも、浸漬ノズルの開孔部全方向に溶鋼を均一に安定的に吐出することができるため、吐出流速が低減し、これに伴い下降流速が小さくなり、介在物や気泡の侵入深さも小さくなり、介在物や気泡の侵入を抑制できる。さらに、上昇流速も適度に確保されるため、介在物や気泡の浮上除去を促進できる。よって、介在物欠陥や気泡欠陥の発生が抑制され、鋳片品質を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上述の通り、鋳造速度を増加しつつ鋳片品質を向上するためには、浸漬ノズルから開孔部全方向になるべく均等に安定的に溶鋼を吐出させ、吐出流速および下降流速を小さくして、介在物や気泡の侵入を抑制する事が望ましい。さらに、介在物や気泡の浮上除去促進のためには、湯面を激しく揺動しない範囲で上昇流速を適度に大きくする事が望ましい。
しかし、分散ノズルで、吐出角度が下向きの場合は、下降流速が大きく、上昇流速が小さいため、介在物や気泡の浮上除去には不十分である。また、分散ノズルで単に吐出角度を上向きとした場合の溶鋼流動を図2に示すが、ノズル内側壁近傍を流れてきた溶鋼は、吐出孔上端に到達するとノズル内壁面から剥離してしまうため、溶鋼は吐出角度の方向に流出せず、開孔部全方向への均一吐出は達成されない。さらに、このとき吐出孔上部では負圧が生じるため、浸漬ノズル内への溶鋼や溶融パウダーの吸い込みが発生して、溶鋼流動を不安定にして鋳片品質を低下してしまう。
【0013】
本発明者は鋭意検討により、分散ノズルの吐出角度を上向きとしても、吐出流が吐出孔上端壁から剥離せずに、例えば図1に示すように吐出角度方向に流出し、溶鋼が鋳型全方向に安定的に、かつ均一に吐出できることを明らかにした。
【0014】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本発明の浸漬ノズルは、図1および図3に示す分散ノズルである。
【0015】
本発明にかかる分散ノズルは、以下の三点を検討した。一点目が、浸漬ノズル1の吐出角度θである。二点目が、浸漬ノズル1の開孔部の鋳型3の幅方向内側両端面(鋳型3の短辺)へ投影された水平投影面積の和SSと、当該開孔部の鉛直下向き投影面積SBとの投影面積比SS/SBである。なお、浸漬ノズル1の開孔部とは、浸漬ノズル1の下端近傍に形成され、浸漬ノズル1の中心線C(図3(a))から鋳型3の幅方向(図1中のY方向、図3(a)中のY方向)に向けて対称に開孔した一対の吐出孔9、9と、浸漬ノズル1の底部に形成され、一対の吐出孔9、9を連結する開孔スリットとしてのスリット8と、で構成されるものである。三点目が、浸漬ノズル1の上端と吐出孔9の上端との間の浸漬ノズル内壁10への浸漬ノズル1と軸心が一致したノズル縦孔12内の溶鋼の流路を狭める、浸漬ノズル1の内径よりも径の小さい円筒状の段差の付与である。
【0016】
吐出角度θと投影面積比SS/SBが溶鋼7の流動に与える影響について検討した。浸漬ノズル1から鋳型3内に流出する流体の挙動を1/2.5スケールの水モデル実験により確認した。水モデル実験装置は、幅が1300mm相当、厚さが250mm相当の鋳片を実機連続鋳造機にて鋳造する場合を想定し、メニスカスから2.3m相当までの液相部分を再現した。水量は実機鋳造速度に相当する種々の水量で変化させた。浸漬ノズル1には、種々の吐出角度θ及び投影面積比SS/SBを設定した分散ノズルを用いた。鋳型3内の流動状態を観測するために、着色水を用いて目視にて流動状態を確認した。
【0017】
水モデル実験の結果、吐出角度θは水平方向を基準として仰角5°から30°の範囲、かつ、投影面積比SS/SBは2.5から15の範囲にて、図1に示す様な、吐出流が均一に開孔部全方向に吐出する溶鋼流動を示す事が明らかとなった。この理由は、浸漬ノズル1内を流れてきた流体が浸漬ノズル1底部にて十分な圧損を受けることで、圧損がない場合にはスリット8から流出していた流量の一部が吐出孔9に分配され、吐出孔9からの流量が増加したためである。また、鋳型全方向に流体が均一に吐出した事に伴って、相対的に上昇流5の流速(以下、上昇流速という)は大きくなり、下降流6の流速(以下、下降流速という)は小さくなった。
【0018】
具体的には、吐出角度θが水平方向を基準として仰角5°よりも下向きの場合は、溶鋼が鋳型全方向には吐出せずに、図2に示すような従来の分散ノズルと同等の流動パターンとなり、下降流速は大きかった。吐出角度θが水平方向を基準として仰角30°超では、吐出流が直接メニスカスに衝突するため、液面の揺動が非常に大きくなった。投影面積比SS/SBが2.5未満では、浸漬ノズル1底部にて十分な圧損を受ける事ができずにスリット8から流出する流量が多くなり、開孔部から均一な吐出流を得る事が出来なかった。投影面積比SS/SBが15超では、浸漬ノズル1底部で受ける圧損が大きくなりすぎ、吐出孔9からの流体流出量が非常に多くなり、全方向吐出が達成されず下降流速、液面変動ともに大きくなった。
【0019】
さらに本発明者は、図3に示した浸漬ノズル1内部への段差の付与が浸漬ノズル1内部の溶鋼流動及び鋳型3内の溶鋼流動に与える影響について鋭意検討を行った。浸漬ノズル1内部の溶鋼流動及び鋳型3内の溶鋼流動について水モデル実験にて評価した。実験に用いた装置及び実験条件は上述の検討と同様である。浸漬ノズル1には種々の寸法の段差を付与した分散ノズルを用いた。また、このときの吐出角度θは水平方向を基準として仰角5°から30°、投影面積比SS/SBは2.5から15の範囲とした。鋳型3内の流動状態を観測するために、着色水を用いて目視にて流動状態を確認した。
【0020】
浸漬ノズル1内部の段差は図3に示す様に、浸漬ノズル1の内径と段差部11の内径との差の1/2を段差高さH1[mm]を2≦H1≦25とし、ノズル吐出孔9の上端から段差部11の下端までの距離を段差位置H2[mm]を50≦H2≦500とし、段差部11のノズル円筒軸方向の長さを段差長さH3[mm]を20≦H3≦300とし、段差部11の下端とノズル内壁10を結ぶ傾斜部13の鉛直方向長さを傾斜長さH4[mm]を0≦H4≦H1とした。
なお、段差部11とは、段差高さH1である部分を意味しており、傾斜部13は含まない。
水モデル実験の結果、上記の段差を浸漬ノズル1内部に設けることにより、浸漬ノズル1内部の流動がより安定化し、また、鋳型全方向への流体がより均一に吐出した。この理由を説明する。段差部11の下端以降では、ノズル内壁面側を通過する流体よりもノズル中央部を通過する流体の方が流速は大きくなる。ノズル中央部を通る流体は、ノズル内壁近傍を通る流体よりも先にノズル底部に到達して、そこで十分な圧損を受けることで、流体の流量は吐出孔9に多く分配される。また、ノズル内壁面側を通過する流体は段差部11の下端にて一時的にノズル壁面から剥離して流速が小さくなり、吐出孔9を通過する際に、先にノズル中央部を通りノズル底部にて圧損を受けた流体に押し戻される形となり、吐出孔9を流体が充満して鋳型3内に流出することとなる。よって、ノズル内部流動がより安定化し、また、開孔部全方向により均一な流体吐出を達成した。
【0021】
具体的には、段差高さH1が2mm未満では、段差の無い分散ノズルと流動状態が同等であり、段差の効果がほとんど見られない。また、段差高さH1が25mm超では、段差部11の上端にて浸漬ノズル1の上端へと向かう反転流が発生してしまい、浸漬ノズル1の内部での流れが不安定になりやすい。また、この場合には段差部11では流路が非常に狭くなるため吐出孔9から十分な流量が得られにくくなる。段差位置H2が50mm未満では、段差部11の下端にて流体が剥離した直後に吐出孔9の上端に到達するため、吐出孔9から流出せずにスリット8からの流量が多くなる。段差位置H2が500mm超では、段差部11の下端から吐出孔9の上端までの距離が十分に長いため、剥離した流れが再度ノズル壁面に沿う流れとなり、段差の効果が得られにくい。段差長さH3が20mm未満では、段差部11にて径方向に均一な流れが得られず、浸漬ノズル1の内部にて偏流が生じやすくなる。段差長さH3が500mm超ではノズル寸法の制約上好ましくない。傾斜長さH4が0mm未満はノズル構造上好ましくない。また、傾斜長さH4>段差高さH1では、剥離した流れが再度ノズル壁面に沿う流れとなり、段差の効果が得られにくい。
【0022】
以上により、吐出角度θが水平方向を基準として仰角5°から30°、投影面積比SS/SBが2.5から15、段差形状を段差高さH1が2mmから25mm、段差位置H2が50mmから500mm、段差長さH3が20mmから300mm、傾斜長さH4が0mm以上段差高さH1以下にて、溶鋼吐出流をより安定的に、かつ、より均一に浸漬ノズル1の開孔部全方向に吐出する事が可能となった。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0024】
(実施例1)
転炉−脱ガスを経て成分調整した炭素濃度30ppm以下の極低炭素鋼を、垂直曲げ型スラブ連続鋳造機にて鋳造速度1.5、2.0、2.5m/
minで連続鋳造した。スラブ厚さは240mm、スラブ幅は1000〜2000mm、溶鋼取鍋容量は300tである。浸漬ノズルには、表1〜3記載の本発明分散ノズルを含む種々の分散ノズル及び二孔ノズルを用いた。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
本発明にかかる分散ノズルの使用時の湯面変動量を評価するために、鋳型上部にて湯面レベル計を用いて鋳型短辺側でのメニスカスの湯面変動状況を確認した。
【0029】
また、鋳片品質の評価のために、鋳片内に残留した介在物個数を評価した。鋳片内の介在物個数は、鋳片の表面から鋳片厚み方向に120mm(鋳片1/2厚)の部分を全幅方向に切り出し、鋳片内に存在する大きさ50μm以上の介在物個数を計測した。大きさ50μm以上の介在物は鋳片において欠陥となり得るサイズである。
【0030】
同様に、鋳片品質の評価のために、鋳片内に残留した気泡個数を評価した。鋳片内の気泡個数は、鋳片の表面から鋳片厚み方向に75mm(鋳片1/4厚)の部分を全幅方向に切りだし、直径0.1mm以上の気泡個数を計測した。直径0.1mm以上の気泡は鋳片において欠陥となり得るサイズである。
【0031】
まず、湯面変動の評価結果について述べる。その結果を表1〜3に示す。本発明にかかる分散ノズルでの湯面変動状況は、湯面が安定した条件である吐出角度下向きの浸漬ノズル(No.7、12、19、24、31及び36)と同程度の湯面変動状況であり、操業でも問題のないレベルであった。
【0032】
次に、鋳片内の介在物個数を調査した結果について述べる。その結果を表1〜3に示す。表1〜3の介在物欠陥指数は、No.12、24及び36の下降流速が一番大きな二孔ノズル使用時の介在物個数を1として鋳造速度毎に相対的に表示している。その結果、本発明のNo.1〜6、13〜18及び25〜30の分散ノズルを用いて鋳造した鋳片では、二孔ノズルに比べて大幅に介在物欠陥指数が減少した。また、比較例No.7〜11、19〜23及び31〜35の分散ノズルと比較しても本発明にかかる分散ノズルでは介在物欠陥指数が減少した。
【0033】
次に、鋳片内の気泡個数の調査結果について述べる。その結果を表1〜3に示す。表1〜3の気泡欠陥指数は上記と同様の理由により、No.12、24及び36の二孔ノズル使用時の気泡個数を1として鋳造速度毎に相対的に表示している。その結果、本発明のNo.1〜6、13〜18及び25〜30の分散ノズルを用いて鋳造した鋳片では、二孔ノズルに比べて気泡欠陥指数が大幅に減少した。また、比較例No.7〜11、19〜23及び31〜35の分散ノズルと比較しても本発明にかかる分散ノズルでは気泡欠陥指数が減少した。
【0034】
(実施例2)
転炉−脱ガスを経て成分調整した炭素濃度30ppm以下の極低炭素鋼を、垂直曲げ型スラブ連続鋳造機にて鋳造速度1.5、2.0、2.5m/
minで連続鋳造した。スラブ厚さは240mm、スラブ幅は1000〜2000mm、溶鋼取鍋容量は300tである。浸漬ノズルには、表4〜6記載の本発明分散ノズルを含む種々の分散ノズル及び二孔ノズルを用いた。
【0035】
【表4】

【0036】
【表5】

【0037】
【表6】

【0038】
本発明にかかる分散ノズルの使用時の湯面変動量を評価するために、鋳型上部にて湯面レベル計を用いて鋳型短辺側でのメニスカスの湯面変動状況を確認した。
【0039】
また、鋳片品質の評価のために、鋳片内に残留した介在物個数を評価した。鋳片内の介在物個数は、鋳片の表面から鋳片厚み方向に120mm(鋳片1/2厚)の部分を全幅方向に切り出し、鋳片内に存在する大きさ50μm以上の介在物個数を計測した。大きさ50μm以上の介在物は鋳片において欠陥となり得るサイズである。
【0040】
同様に、鋳片品質の評価のために、鋳片内に残留した気泡個数を評価した。鋳片内の気泡個数は、鋳片の表面から鋳片厚み方向に75mm(鋳片1/4厚)の部分を全幅方向に切りだし、直径0.1mm以上の気泡個数を計測した。直径0.1mm以上の気泡は鋳片において欠陥となり得るサイズである。
【0041】
まず、湯面変動の評価結果について述べる。その結果を表4〜6に示す。本発明にかかる分散ノズルでの湯面変動状況は、湯面が安定した条件である吐出角度下向きの浸漬ノズル(No.55、60、79、84、103及び108)と同程度の湯面変動状況であり、操業でも問題のないレベルであった。
【0042】
次に、鋳片内の介在物個数を調査した結果について述べる。その結果を表4〜6に示す。表4〜6の介在物欠陥指数は、No.60、84及び108の下降流速が一番大きな二孔ノズル使用時の介在物個数を1として鋳造速度毎に相対的に表示している。その結果、本発明のNo.37〜54、61〜78及び85〜102の分散ノズルを用いて鋳造した鋳片では、二孔ノズルに比べて大幅に介在物欠陥指数が減少した。また、比較例No.55〜59、79〜83及び103〜107の分散ノズルと比較しても本発明の分散ノズルでは介在物欠陥指数が減少した。
【0043】
次に、鋳片内の気泡個数の調査結果について述べる。その結果を表4〜6に示す。表4〜6の気泡欠陥指数は上記と同様の理由により、No.60、84及び108の二孔ノズル使用時の気泡個数を1として鋳造速度毎に相対的に表示している。その結果、本発明のNo.37〜54、61〜78及び85〜102の分散ノズルを用いて鋳造した鋳片では、二孔ノズルに比べて気泡欠陥指数が大幅に減少した。また、比較例No.55〜59、79〜83及び103〜107の分散ノズルと比較しても本発明の分散ノズルでは気泡欠陥指数が減少した。
【産業上の利用可能性】
【0044】
鋼などの溶融金属を連続鋳造する際に、溶融金属を鋳型内に供給する浸漬ノズルに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による浸漬ノズル内及び鋳型内の溶鋼流動を示す図である。
【図2】従来分散ノズルによる浸漬ノズル内及び鋳型内の溶鋼流動を示す図である。
【図3】本発明の浸漬ノズルを示した図であり、(a)及び(b)は浸漬ノズル内部に設置した段差を示す縦断面図であり、(c)は浸漬ノズル底部の平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 浸漬ノズル
2 モールドパウダー
3 鋳型
4 メニスカス反転流
5 上昇流
6 下降流
7 溶鋼
8 ノズル底部スリット
9 吐出孔
10 浸漬ノズル内壁
11 段差部
12 ノズル縦孔
13 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鋼を鋳型内に注入する浸漬ノズルにおいて、
浸漬ノズル下端近傍に形成され、浸漬ノズルの中心線上から鋳型幅方向に向けて対称に開孔した一対の吐出孔と、
該浸漬ノズル底部に形成され、前記一対の吐出孔を連結する開孔スリットを備えており、
前記吐出孔の吐出角度θが、水平方向を基準として仰角5°から30°の範囲内にあり、
前記一対の吐出孔と前記開孔スリットとで構成される開孔部の、鋳型幅方向内側両端面への水平投影面積の和をSS、前記開孔部の鉛直下向き投影面積をSBとし、投影面積比SS/SBが、
2.5≦SS/SB≦15
の範囲内にあることを特徴とする連続鋳造用の浸漬ノズル。
【請求項2】
浸漬ノズル上端と吐出孔上端との間の浸漬ノズル内壁に、浸漬ノズルと軸心が一致した溶鋼の流路を狭める浸漬ノズル内径よりも径の小さい円筒状の段差を有しており、
浸漬ノズルの内径と段差部のノズル内径との差の1/2を段差高さH1[mm]とし、吐出孔上端から段差部下端までの距離を段差位置H2[mm]とし、段差部のノズル円筒軸方向の長さを段差長さH3[mm]とし、段差部下端とノズル内壁を結ぶ傾斜部の鉛直方向長さを傾斜長さH4[mm]としたときに、前記H1〜H4が下記の式(1)〜(4)を満たしていることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造用の浸漬ノズル。
2≦H1≦25 ・・・(1)
50≦H2≦500 ・・・(2)
20≦H3≦300 ・・・(3)
0≦H4≦H1 ・・・(4)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−5665(P2010−5665A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168822(P2008−168822)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】