連続鋳造設備
【課題】鋳片の中心線をストランド中心線に一致させ、かつ、多種の断面サイズの鋳片にも対応可能な鋳片センタリング装置を備える連続鋳造設備を提供する。
【解決手段】引抜矯正装置2の上流側と下流側の近傍に鋳片センタリング装置A,Bが設置され、鋳片センタリング装置A,Bは、鋳片Sの両側を挟む一対のロール23a,23bと、一対のロール23a,23bをストランド中心線Cを挟んで対称に開閉動作させるロール間隔調整手段30とを備えている。鋳片Sの両側を一対のロール23a,23bで挟んで加圧することで、鋳片Sの中心線をストランド中心線Cに一致させることができる。多種の断面サイズの鋳片Sにも対応することができる。短時間で効率的にセンタリングすることができ、鋳片Sに加わる力を小さくでき、装置の機械的強度を頑強にしなくてもよい。
【解決手段】引抜矯正装置2の上流側と下流側の近傍に鋳片センタリング装置A,Bが設置され、鋳片センタリング装置A,Bは、鋳片Sの両側を挟む一対のロール23a,23bと、一対のロール23a,23bをストランド中心線Cを挟んで対称に開閉動作させるロール間隔調整手段30とを備えている。鋳片Sの両側を一対のロール23a,23bで挟んで加圧することで、鋳片Sの中心線をストランド中心線Cに一致させることができる。多種の断面サイズの鋳片Sにも対応することができる。短時間で効率的にセンタリングすることができ、鋳片Sに加わる力を小さくでき、装置の機械的強度を頑強にしなくてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造設備に関する。さらに詳しくは、鋳片の中心線をストランド中心線に一致させるように案内する鋳片センタリング装置を備える連続鋳造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の連続鋳造設備には、鋳型から引抜矯正装置までの間に、鋳片の中心線をストランドの中心線に一致させるように案内するローラや板が設置されていなかったため、鋳片が一方向に偏ったり蛇行したりして進行することが多かった。そのため、二次冷却帯において鋳片冷却が不均一になり鋳片の形状変形や品質不良の原因となっていた。
【0003】
これに対して、鋳片の側面に接触して案内する固定式サイドガイドが設置される場合があるが(例えば特許文献1)、固定式サイドガイドが設置されると鋳片の断面サイズが多種にわたる場合には、サイズを変えるたびにガイド幅を設定し直す必要があり、取り扱いが煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−178765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、鋳片の中心線をストランド中心線に一致させ、かつ、多種の断面サイズの鋳片にも対応可能な鋳片センタリング装置を備える連続鋳造設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の連続鋳造設備は、鋳片を引き抜き直線状に矯正する引抜矯正装置を有した連続鋳造設備であって、前記引抜矯正装置の上流側および/または下流側の近傍に鋳片センタリング装置が設置されており、該鋳片センタリング装置は、前記鋳片の両側を挟む一対のロールを備えるロールユニットと、前記一対のロールの間隔を調整するロール間隔調整手段とを備えていることを特徴とする。
第2発明の連続鋳造設備は、第1発明において、前記ロール間隔調整手段は、前記一対のロールのそれぞれをストランド中心線を挟んで対称に移動させるロール移動同調機構を有することを特徴とする。
第3発明の連続鋳造設備は、第1発明において、前記ロールユニットが、フレームに回動自在に軸支された一対の支軸と、該一対の支軸にアームを介して支持された前記一対のロールと、該一対の支軸を回動させるアクチュエータとからなることを特徴とする。
第4発明の連続鋳造設備は、第3発明において、前記ロール間隔調整手段が、前記一対の支軸に設けられた一対のアームと、該一対のアームにそれぞれの一端がピン連結された一対のリンクと、該一対のリンクの他端同士を共に連結するピンと、該ピンに取り付けられたブッシュをガイドするガイドライナーとからなり、該ガイドライナーは、そのガイド方向がストランド中心線の方向と一致するように前記フレームに固定されていることを特徴とする。
第5発明の連続鋳造設備は、第3発明において、前記ロール間隔調整手段が、前記一対の支軸に設けられた一対のアームと、該一対のアームの先端同士を連結するリンクとからなり、前記一対のアームのうち、一方のアームは前記支軸よりも下流側で前記リンクの一端と連結されており、他方のアームは前記支軸よりも上流側で前記リンクの他端と連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、一対のロールの間隔を調整できるので、多種の断面サイズの鋳片にも対応することができる。さらに、引抜矯正装置の上流側と下流側で案内を行えば、短時間で効率的にセンタリングすることができ、装置を一つしか設けない場合に比べ、鋳片に加える力を小さくでき、鋳片への影響をより小さくしてセンタリングすることができる。
第2発明によれば、一対のロールはストランド中心線を挟んで対称に移動するので、鋳片の両側を一対のロールで挟んで加圧することで、鋳片の中心線をストランド中心線に一致させることができる。そのため、二次冷却帯において鋳片冷却が均一となり、鋳片の形状変形や品質不良の発生を防ぐことができる。
第3発明によれば、一対のロールは開閉動作するので、多種の断面サイズの鋳片にも対応することができる。
第4発明によれば、一対のロールはストランド中心線を挟んで対称に開閉動作するので、鋳片の両側を一対のロールで挟んで加圧することで、鋳片の中心線をストランド中心線に一致させることができる。そのため、二次冷却帯において鋳片冷却が均一となり、鋳片の形状変形や品質不良の発生を防ぐことができる。また、ロール間隔調整手段がストランド中心に配置されるので、鋳片センタリング装置の外側に張り出さず、設置スペースが小さくなる。そのため、隣り合うストライドの間隔を狭くできる。
第5発明によれば、一対のロールはストランド中心線を挟んで対称に開閉動作するので、鋳片の両側を一対のロールで挟んで加圧することで、鋳片の中心線をストランド中心線に一致させることができる。そのため、二次冷却帯において鋳片冷却が均一となり、鋳片の形状変形や品質不良の発生を防ぐことができる。また、ストランド中心に複雑な機構が配置されないので、耐久性が高くなり、メンテナンスが行いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係る連続鋳造設備の説明図であり(A)は側面図、(B)は部分平面図である。
【図2】同連続鋳造設備の引抜矯正装置の上流側に設置される鋳片センタリング装置の側面図である。
【図3】図2におけるIII-III線矢視図である。
【図4】図2におけるIV-IV線矢視断面図である。
【図5】図4におけるV-V線矢視断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る連続鋳造設備の引抜矯正装置の下流側に設置される鋳片センタリング装置の側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る連続鋳造設備の引抜矯正装置の上流側に設置される鋳片センタリング装置の側面図である。
【図8】図7におけるVIII-VIII線矢視図である。
【図9】図7におけるIX-IX線矢視図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る連続鋳造設備の引抜矯正装置の下流側に設置される鋳片センタリング装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1において、1は連続鋳造設備CCにおける鋳型、Sは二次冷却帯としての湾曲経路を通る鋳片、2は引抜矯正装置で、湾曲した鋳片案内通路の下流側端に設けられている。引抜矯正装置2は、対となるロール2a,2bを複数対備えており、これらのロール2a,2bにより鋳片Sの湾曲面(上面と下面)を挾み込み締め付けると共に回転駆動力で鋳片Sに引抜力を付与し、かつ、湾曲した鋳片Sを直線状に矯正して送り出すことができる公知の装置である。本発明の連続鋳造設備CCは、鋳片センタリング装置A,Bがこの引抜矯正装置2の上流側と下流側の近傍2か所に設置される。ここで、上流側とは引抜矯正装置2からみて鋳型1側、下流側とはその逆側を意味する。
【0010】
まず、引抜矯正装置2の上流側に設置される鋳片センタリング装置Aについて説明する。
図2に示すように、鋳片センタリング装置Aはフレーム10の前後(図2における左右)にダミーバーの下方垂れガイド11,12が設けられている。鋳片センタリング装置Aは湾曲経路の下流側端部に設置されるため、下方垂れガイド11,12は湾曲経路に沿うように鋳片Sが通過するストランドの上流側が高くなるように設けられている。また、鋳片センタリング装置Aは後述のごとく鋳片Sの両側面を挟む一対の円筒形竪ロール23a,23bを備えているが、この円筒形竪ロール23a,23bの回転軸はその上側が垂直方向よりも下流側に傾いており、鋳片Sの上下面に対して垂直となるように設けられている。
【0011】
図3に示すように、フレーム10には一対の支軸21a,21bが回動自在に軸支されている。この支軸21a,21bはストランドの中心線Cを挟んで対称となる位置に設けられている。また、支軸21a,21bにはそれぞれアーム22a,22bの一端が固定されており、アーム22a,22bの他端には一対の円筒形竪ロール23a,23bが回転自在に軸支されている。さらに、支軸21a,21bにはそれぞれアーム24a,24bの一端が固定されており、アーム24a,24bの他端には油圧シリンダ25のロッド側端部およびシリンダ側端部がピンで回動自在に連結されている。なお、油圧シリンダ25はストランド上流側の下方垂れガイド11より下方に位置しており、鋳片Sの進路を妨げないようになっている(図2参照)。
これら、支軸21a,21b、アーム22a,22b,24a,24b、円筒形竪ロール23a,23b、油圧シリンダ25によりロールユニット20が構成されている。
【0012】
このような構成であるから、油圧シリンダ25が伸長することにより、支軸21a,21bが回転し、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cに接近する閉動作をする(図3における二点鎖線)。また、油圧シリンダ25が収縮することにより、支軸21a,21bが逆回転し、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cから離間する開動作をする(図3における実線)。
【0013】
図4に示すように、支軸21a,21bには、円筒形竪ロール23a,23bの間隔を調整するためのロール間隔調整手段30が取り付けられている。
支軸21a,21bにはそれぞれアーム31a,31bの一端が固定されており、アーム31a,31bの他端には一対のリンク32a,32bの一端が連結ピンで回動自在に連結されている。リンク32a,32bの他端同士はピン33で回動自在に連結されている。
【0014】
図5に示すように、ピン33の両端にはブシュ34,34が嵌め込まれている。ブシュ34,34の外側には溝を有するガイドライナー35,35が対向して設けられており、ブシュ34,34はその溝内を摺動するようになっている。ガイドライナー35,35はその溝の方向がストランド中心線Cの方向と一致するようにフレーム10に固定されている(図4参照)。
これら、アーム31a,31b、リンク32a,32b、ピン33、ブシュ34,34、ガイドライナー35,35によりロール間隔調整手段30が構成されている。
【0015】
このような構成であるから、油圧シリンダ25の伸縮運動による支軸21a,21bの回動運動は、互いに逆回転かつ同角度となり、一対の円筒形竪ロール23a,23bは、ストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作することになる。すなわち、アーム31a,31b、リンク32a,32b、ピン33、ブシュ34,34、ガイドライナー35,35は、特許請求の範囲に記載の「ロール移動同調機構」も兼ねている。
【0016】
つぎに、引抜矯正装置2の下流側に設置される鋳片センタリング装置Bについて説明する。
図6に示すように、鋳片センタリング装置Bはフレーム10の前後(図6における左右)にダミーバーの下方垂れガイド11,12が設けられている。鋳片センタリング装置Bは引抜矯正装置2の下流側に設置されるため、下方垂れガイド11,12は水平に設けられている。また、円筒形竪ロール23a,23bの回転軸は垂直となっており、水平に進行する鋳片Sの上下面に対して垂直となるように設けられている。
【0017】
その余の構成は引抜矯正装置2の上流側に設置される鋳片センタリング装置Aと同様であり、ロールユニット20およびロール間隔調整手段30を備えている。したがって、一対の円筒形竪ロール23a,23bは、ストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作することができる。
【0018】
以上の様な構成であるから、鋳片センタリング装置A,Bの油圧シリンダ25を伸長し、鋳片Sの両側面を一対の円筒形竪ロール23a,23bで挟んで加圧することで、鋳片Sの中心線をストランド中心線Cに一致させる(センタリングする)ことができる。より詳細には、一対の円筒形竪ロール23a,23bはストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作するので、鋳片Sの中心線がストランド中心線Cと一致していない場合、偏っている方の側面が円筒形竪ロール23aもしくは23bに押され、鋳片Sの中心線とストランド中心線Cとが一致するように修正される。
そのため、二次冷却帯域での鋳片Sへのスプレイ冷却が均一に行われるようになるので、不均一冷却を主因とする鋳片Sの形状変形や品質不良の発生を防ぐことができる。
なお、鋳込みの初めからダミーバーをセンタリングしておけば、ダミーバーから鋳片Sに遷移した後も鋳片Sをセンタリングすることができ、常に鋳片Sをセンタリングした状態とすることができる。
【0019】
また、一対の円筒形竪ロール23a,23bは開閉動作するので、開閉量を調整することで多種の断面サイズの鋳片Sにも対応することができ、異サイズ鋳片を鋳込む場合でもサイズを変えるたびに煩雑な設定を必要としない。
【0020】
さらに、本実施形態に係る鋳片センタリング装置A,Bは、ストランド中心にロール間隔調整手段30および油圧シリンダ25が配置されるので、これらの部材が鋳片センタリング装置A,Bの外側に張り出さず、設置スペースが小さくなる。そのため、多数のストランドを平行して設置する場合、隣り合うストライドの間隔を狭くできる。
【0021】
なお、上記実施形態ではロールユニット20の開閉動作および加圧力を得るために油圧シリンダ25を用いたが、他のアクチュエータ用いてもよい。例えば、支軸21a,21bの双方または一方を回動させるサーボモータを用いてもよい。
【0022】
(第2実施形態)
つぎに、本発明の第2実施形態に係る連続鋳造設備CC´について説明する。
本実施形態に係る連続鋳造設備CC´では、第1実施形態における鋳片センタリング装置Aに代えて、その構成が異なる鋳片センタリング装置A´が引抜矯正装置2の上流側に設置され、鋳片センタリング装置Bに代えて、その構成が異なる鋳片センタリング装置B´が引抜矯正装置2の下流側に設置される。
【0023】
まず、引抜矯正装置2の上流側に設置される鋳片センタリング装置A´について説明する。なお、第1実施形態における鋳片センタリング装置Aと同一部材については同一符号を付している。
図7に示すように、鋳片センタリング装置A´はフレーム10の前後(図7における左右)にダミーバーの下方垂れガイド11,12が設けられている。鋳片センタリング装置A´は湾曲経路の下流側端部に設置されるため、下方垂れガイド11,12は湾曲経路に沿うように鋳片Sが通過するストランドの上流側が高くなるように設けられている。また、円筒形竪ロール23a,23bの回転軸はその上側が垂直方向よりも下流側に傾いており、鋳片Sの上下面に対して垂直となるように設けられている。
【0024】
図8に示すように、フレーム10には一対の支軸21a,21bが回動自在に軸支されている。この支軸21a,21bはストランド中心線Cを挟んで対称となる位置に設けられている。また、支軸21a,21bにはそれぞれアーム22a,22bの一端が固定されており、アーム22a,22bの他端には一対の円筒形竪ロール23a,23bが回転自在に軸支されている。さらに、支軸21a,21bにはそれぞれアーム24a´,24b´の一端が固定されており、片方のアーム24b´の他端には油圧シリンダ25のロッド側端部がピンで回動自在に連結されている。この油圧シリンダ25は、そのシリンダ側がフレーム10固定された支持アーム26の先端にピンで回動自在に連結されている。
これら、支軸21a,21b、アーム22a,22b,24a´,24b´、円筒形竪ロール23a,23b、油圧シリンダ25によりロールユニット20´が構成されている。
【0025】
なお、アーム24a´,24b´は第1実施形態に係る鋳片センタリング装置Aに設けられたアーム24a,24b(図3参照)とは異なり、その長尺方向がストランド中心線Cに対してほぼ直行するように設けられている。また、支持アーム26もその長尺方向がストランド中心線Cに対してほぼ直行するように設けられている。そのため、油圧シリンダ25は、鋳片センタリング装置A´の側方のストランド中心線Cから離れた位置に設けられている。
【0026】
図9に示すように、支軸21a,21bには、円筒形竪ロール23a,23bの間隔を調整するためのロール間隔調整手段40が取り付けられている。
支軸21a,21bにはそれぞれアーム41a,41bの一端が固定されており、それぞれのアーム41a,41bの他端は、連結ピンを介してリンク42で連結されている。これら、アーム41a,41b、リンク42によりロール間隔調整手段40が構成されている。
ここで、アーム41a,41bは、その長尺方向がストランド中心線Cに対してほぼ平行に設けられており、一方のアーム41aは支軸21aから下流側に、他方のアーム41bは、支軸21bから上流側に設けられている。すなわち、一方のアーム41aは支軸21aよりも下流側でリンク42の一端と連結されており、他方のアーム41bは支軸21bよりも上流側でリンク42の他端と連結されている。そのため、ロール間隔調整手段40は平面視Z形のリンク機構となっている。
【0027】
このような構成であるから、支軸21a,21bの回動運動は、互いに逆回転かつ同角度となり、一対の円筒形竪ロール23a,23bは、ストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作することになる。すなわち、アーム41a,41b、リンク42は、特許請求の範囲に記載の「ロール移動同調機構」も兼ねている。
【0028】
なお、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作するためには、アーム41aとアーム41bとがほぼ平行になるように構成することが好ましい。より詳細には、円筒形竪ロール23a,23bを最大開閉量と最小開閉量のちょうど中間の開閉量に調整したときに、アーム41a,41bの長尺方向がストランド中心線Cに対して平行になるように構成することが好ましい。このように構成すれば、円筒形竪ロール23a,23bをストランド中心線Cに接近させるように調整するとアーム41a,41bが上流側に開いたハの字形となり、円筒形竪ロール23a,23bをストランド中心線Cから離間させるように調整するとアーム41a,41bが下流側に開いた逆ハの字形となるが、アーム41a,41bの可動範囲においてアーム41aとアーム41bとのなす角の変化量が最も小さくなるからである。
【0029】
このような構成であるから、油圧シリンダ25が伸長することにより、支軸21a,21bが回転し、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cに接近する閉動作をする(図8における二点鎖線)。また、油圧シリンダ25が収縮することにより、支軸21a,21bが逆回転し、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cから離間する開動作をする(図8における実線)。
【0030】
つぎに、引抜矯正装置2の下流側に設置される鋳片センタリング装置B´について説明する。
図10に示すように、鋳片センタリング装置B´はフレーム10の前後(図10における左右)にダミーバーの下方垂れガイド11,12が設けられている。鋳片センタリング装置B´は引抜矯正装置2の下流側に設置されるため、下方垂れガイド11,12は水平に設けられている。また、円筒形竪ロール23a,23bの回転軸は垂直となっており、水平に進行する鋳片Sの上下面に対して垂直となるように設けられている。
【0031】
その余の構成は引抜矯正装置2の上流側に設置される鋳片センタリング装置A´と同様であり、ロールユニット20´およびロール間隔調整手段40を備えている。したがって、一対の円筒形竪ロール23a,23bは、ストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作することができる。
【0032】
以上の様な構成であるから、鋳片センタリング装置A´,B´の油圧シリンダ25を伸長し、鋳片Sの両側面を一対の円筒形竪ロール23a,23bで挟んで加圧することで、鋳片Sの中心線をストランド中心線Cに一致させる(センタリングする)ことができる。
そのため、二次冷却帯域での鋳片Sへのスプレイ冷却が均一に行われるようになるので、不均一冷却を主因とする鋳片Sの形状変形や品質不良の発生を防ぐことができる。
【0033】
また、一対の円筒形竪ロール23a,23bは開閉動作するので、開閉量を調整することで多種の断面サイズの鋳片Sにも対応することができ、異サイズ鋳片を鋳込む場合でもサイズを変えるたびに煩雑な設定を必要としない。
【0034】
ところで、ストランド中心は、鋳片Sからスケールやロール冷却水が落下し、鋳片Sからの輻射熱が高く、過酷な環境である。本実施形態に係る鋳片センタリング装置A´,B´は、ストランド中心にはリンク42のみが配置され、油圧シリンダ25はストランド中心から離れた位置に設けられているので、スケールやロール冷却水の落下による影響や、輻射熱の影響が少なく、耐久性が高くなり、メンテナンスが行いやすい。また、ロール間隔調整手段40の部品点数も少ないので、点検や部品の交換等のメンテナンスが容易である。
【0035】
なお、上記実施形態では、油圧シリンダ25を一方(図8における右側)のアーム24b´に連結したが、他方(図8における左側)のアーム24a´に連結するようにしてもよい。これは、多数のストランドを平行して設置する場合に、隣り合うストライドの位置関係やメンテナンスのし易さから選択すればよい。また、油圧シリンダ25が連結されないアーム24a´(24b´)を設けないようにしてもよい。
【0036】
(その他の実施形態)
ロール間隔調整手段は上記実施形態の機構に限られず、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作するように制限する機構であればよい。
【0037】
また、本発明に係る連続鋳造設備は角鋳片の他、丸鋳片等の他の形状の鋳片も製造することができる。丸鋳片を製造する場合、円筒形竪ロール23a,23bを鼓形のロールとすることが好ましい。
【0038】
さらに、鋳片センタリング装置を引抜矯正装置2の上流側と下流側に設ける以外にも、上流側または下流側の一方に設けるようにしてもよい。この場合、上流側に鋳片センタリング装置を設けた方が、センタリングが行いやすいので好ましい。
ただし、鋳片センタリング装置は引抜矯正装置2の上流側と下流側に設ければ、2か所でセンタリングを行うので、短時間で効率的にセンタリングすることができる。鋳片センタリング装置を一つしか設けない場合に比べ、鋳片センタリング装置一個当たりの鋳片Sに加える力を小さくでき、鋳片Sへの影響をより小さくしてセンタリングすることができる。そして、鋳片センタリング装置の機械的強度を頑強にしなくてもよく、油圧シリンダ25の加圧力を小さい力ですませることができる。
【符号の説明】
【0039】
2 引抜矯正装置
20 ロールユニット
21a,21b 支軸
22a,22b アーム
23a,23b 円筒形竪ロール
24a,24b アーム
24a´,24b´ アーム
25 油圧シリンダ
30 ロール間隔調整手段
31a,31b アーム
32a,32b リンク
33 ピン
34 ブシュ
35 ガイドライナー
40 ロール間隔調整手段
41a,41b アーム
42 リンク
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造設備に関する。さらに詳しくは、鋳片の中心線をストランド中心線に一致させるように案内する鋳片センタリング装置を備える連続鋳造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の連続鋳造設備には、鋳型から引抜矯正装置までの間に、鋳片の中心線をストランドの中心線に一致させるように案内するローラや板が設置されていなかったため、鋳片が一方向に偏ったり蛇行したりして進行することが多かった。そのため、二次冷却帯において鋳片冷却が不均一になり鋳片の形状変形や品質不良の原因となっていた。
【0003】
これに対して、鋳片の側面に接触して案内する固定式サイドガイドが設置される場合があるが(例えば特許文献1)、固定式サイドガイドが設置されると鋳片の断面サイズが多種にわたる場合には、サイズを変えるたびにガイド幅を設定し直す必要があり、取り扱いが煩雑であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−178765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、鋳片の中心線をストランド中心線に一致させ、かつ、多種の断面サイズの鋳片にも対応可能な鋳片センタリング装置を備える連続鋳造設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の連続鋳造設備は、鋳片を引き抜き直線状に矯正する引抜矯正装置を有した連続鋳造設備であって、前記引抜矯正装置の上流側および/または下流側の近傍に鋳片センタリング装置が設置されており、該鋳片センタリング装置は、前記鋳片の両側を挟む一対のロールを備えるロールユニットと、前記一対のロールの間隔を調整するロール間隔調整手段とを備えていることを特徴とする。
第2発明の連続鋳造設備は、第1発明において、前記ロール間隔調整手段は、前記一対のロールのそれぞれをストランド中心線を挟んで対称に移動させるロール移動同調機構を有することを特徴とする。
第3発明の連続鋳造設備は、第1発明において、前記ロールユニットが、フレームに回動自在に軸支された一対の支軸と、該一対の支軸にアームを介して支持された前記一対のロールと、該一対の支軸を回動させるアクチュエータとからなることを特徴とする。
第4発明の連続鋳造設備は、第3発明において、前記ロール間隔調整手段が、前記一対の支軸に設けられた一対のアームと、該一対のアームにそれぞれの一端がピン連結された一対のリンクと、該一対のリンクの他端同士を共に連結するピンと、該ピンに取り付けられたブッシュをガイドするガイドライナーとからなり、該ガイドライナーは、そのガイド方向がストランド中心線の方向と一致するように前記フレームに固定されていることを特徴とする。
第5発明の連続鋳造設備は、第3発明において、前記ロール間隔調整手段が、前記一対の支軸に設けられた一対のアームと、該一対のアームの先端同士を連結するリンクとからなり、前記一対のアームのうち、一方のアームは前記支軸よりも下流側で前記リンクの一端と連結されており、他方のアームは前記支軸よりも上流側で前記リンクの他端と連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、一対のロールの間隔を調整できるので、多種の断面サイズの鋳片にも対応することができる。さらに、引抜矯正装置の上流側と下流側で案内を行えば、短時間で効率的にセンタリングすることができ、装置を一つしか設けない場合に比べ、鋳片に加える力を小さくでき、鋳片への影響をより小さくしてセンタリングすることができる。
第2発明によれば、一対のロールはストランド中心線を挟んで対称に移動するので、鋳片の両側を一対のロールで挟んで加圧することで、鋳片の中心線をストランド中心線に一致させることができる。そのため、二次冷却帯において鋳片冷却が均一となり、鋳片の形状変形や品質不良の発生を防ぐことができる。
第3発明によれば、一対のロールは開閉動作するので、多種の断面サイズの鋳片にも対応することができる。
第4発明によれば、一対のロールはストランド中心線を挟んで対称に開閉動作するので、鋳片の両側を一対のロールで挟んで加圧することで、鋳片の中心線をストランド中心線に一致させることができる。そのため、二次冷却帯において鋳片冷却が均一となり、鋳片の形状変形や品質不良の発生を防ぐことができる。また、ロール間隔調整手段がストランド中心に配置されるので、鋳片センタリング装置の外側に張り出さず、設置スペースが小さくなる。そのため、隣り合うストライドの間隔を狭くできる。
第5発明によれば、一対のロールはストランド中心線を挟んで対称に開閉動作するので、鋳片の両側を一対のロールで挟んで加圧することで、鋳片の中心線をストランド中心線に一致させることができる。そのため、二次冷却帯において鋳片冷却が均一となり、鋳片の形状変形や品質不良の発生を防ぐことができる。また、ストランド中心に複雑な機構が配置されないので、耐久性が高くなり、メンテナンスが行いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態に係る連続鋳造設備の説明図であり(A)は側面図、(B)は部分平面図である。
【図2】同連続鋳造設備の引抜矯正装置の上流側に設置される鋳片センタリング装置の側面図である。
【図3】図2におけるIII-III線矢視図である。
【図4】図2におけるIV-IV線矢視断面図である。
【図5】図4におけるV-V線矢視断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る連続鋳造設備の引抜矯正装置の下流側に設置される鋳片センタリング装置の側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る連続鋳造設備の引抜矯正装置の上流側に設置される鋳片センタリング装置の側面図である。
【図8】図7におけるVIII-VIII線矢視図である。
【図9】図7におけるIX-IX線矢視図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る連続鋳造設備の引抜矯正装置の下流側に設置される鋳片センタリング装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
図1において、1は連続鋳造設備CCにおける鋳型、Sは二次冷却帯としての湾曲経路を通る鋳片、2は引抜矯正装置で、湾曲した鋳片案内通路の下流側端に設けられている。引抜矯正装置2は、対となるロール2a,2bを複数対備えており、これらのロール2a,2bにより鋳片Sの湾曲面(上面と下面)を挾み込み締め付けると共に回転駆動力で鋳片Sに引抜力を付与し、かつ、湾曲した鋳片Sを直線状に矯正して送り出すことができる公知の装置である。本発明の連続鋳造設備CCは、鋳片センタリング装置A,Bがこの引抜矯正装置2の上流側と下流側の近傍2か所に設置される。ここで、上流側とは引抜矯正装置2からみて鋳型1側、下流側とはその逆側を意味する。
【0010】
まず、引抜矯正装置2の上流側に設置される鋳片センタリング装置Aについて説明する。
図2に示すように、鋳片センタリング装置Aはフレーム10の前後(図2における左右)にダミーバーの下方垂れガイド11,12が設けられている。鋳片センタリング装置Aは湾曲経路の下流側端部に設置されるため、下方垂れガイド11,12は湾曲経路に沿うように鋳片Sが通過するストランドの上流側が高くなるように設けられている。また、鋳片センタリング装置Aは後述のごとく鋳片Sの両側面を挟む一対の円筒形竪ロール23a,23bを備えているが、この円筒形竪ロール23a,23bの回転軸はその上側が垂直方向よりも下流側に傾いており、鋳片Sの上下面に対して垂直となるように設けられている。
【0011】
図3に示すように、フレーム10には一対の支軸21a,21bが回動自在に軸支されている。この支軸21a,21bはストランドの中心線Cを挟んで対称となる位置に設けられている。また、支軸21a,21bにはそれぞれアーム22a,22bの一端が固定されており、アーム22a,22bの他端には一対の円筒形竪ロール23a,23bが回転自在に軸支されている。さらに、支軸21a,21bにはそれぞれアーム24a,24bの一端が固定されており、アーム24a,24bの他端には油圧シリンダ25のロッド側端部およびシリンダ側端部がピンで回動自在に連結されている。なお、油圧シリンダ25はストランド上流側の下方垂れガイド11より下方に位置しており、鋳片Sの進路を妨げないようになっている(図2参照)。
これら、支軸21a,21b、アーム22a,22b,24a,24b、円筒形竪ロール23a,23b、油圧シリンダ25によりロールユニット20が構成されている。
【0012】
このような構成であるから、油圧シリンダ25が伸長することにより、支軸21a,21bが回転し、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cに接近する閉動作をする(図3における二点鎖線)。また、油圧シリンダ25が収縮することにより、支軸21a,21bが逆回転し、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cから離間する開動作をする(図3における実線)。
【0013】
図4に示すように、支軸21a,21bには、円筒形竪ロール23a,23bの間隔を調整するためのロール間隔調整手段30が取り付けられている。
支軸21a,21bにはそれぞれアーム31a,31bの一端が固定されており、アーム31a,31bの他端には一対のリンク32a,32bの一端が連結ピンで回動自在に連結されている。リンク32a,32bの他端同士はピン33で回動自在に連結されている。
【0014】
図5に示すように、ピン33の両端にはブシュ34,34が嵌め込まれている。ブシュ34,34の外側には溝を有するガイドライナー35,35が対向して設けられており、ブシュ34,34はその溝内を摺動するようになっている。ガイドライナー35,35はその溝の方向がストランド中心線Cの方向と一致するようにフレーム10に固定されている(図4参照)。
これら、アーム31a,31b、リンク32a,32b、ピン33、ブシュ34,34、ガイドライナー35,35によりロール間隔調整手段30が構成されている。
【0015】
このような構成であるから、油圧シリンダ25の伸縮運動による支軸21a,21bの回動運動は、互いに逆回転かつ同角度となり、一対の円筒形竪ロール23a,23bは、ストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作することになる。すなわち、アーム31a,31b、リンク32a,32b、ピン33、ブシュ34,34、ガイドライナー35,35は、特許請求の範囲に記載の「ロール移動同調機構」も兼ねている。
【0016】
つぎに、引抜矯正装置2の下流側に設置される鋳片センタリング装置Bについて説明する。
図6に示すように、鋳片センタリング装置Bはフレーム10の前後(図6における左右)にダミーバーの下方垂れガイド11,12が設けられている。鋳片センタリング装置Bは引抜矯正装置2の下流側に設置されるため、下方垂れガイド11,12は水平に設けられている。また、円筒形竪ロール23a,23bの回転軸は垂直となっており、水平に進行する鋳片Sの上下面に対して垂直となるように設けられている。
【0017】
その余の構成は引抜矯正装置2の上流側に設置される鋳片センタリング装置Aと同様であり、ロールユニット20およびロール間隔調整手段30を備えている。したがって、一対の円筒形竪ロール23a,23bは、ストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作することができる。
【0018】
以上の様な構成であるから、鋳片センタリング装置A,Bの油圧シリンダ25を伸長し、鋳片Sの両側面を一対の円筒形竪ロール23a,23bで挟んで加圧することで、鋳片Sの中心線をストランド中心線Cに一致させる(センタリングする)ことができる。より詳細には、一対の円筒形竪ロール23a,23bはストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作するので、鋳片Sの中心線がストランド中心線Cと一致していない場合、偏っている方の側面が円筒形竪ロール23aもしくは23bに押され、鋳片Sの中心線とストランド中心線Cとが一致するように修正される。
そのため、二次冷却帯域での鋳片Sへのスプレイ冷却が均一に行われるようになるので、不均一冷却を主因とする鋳片Sの形状変形や品質不良の発生を防ぐことができる。
なお、鋳込みの初めからダミーバーをセンタリングしておけば、ダミーバーから鋳片Sに遷移した後も鋳片Sをセンタリングすることができ、常に鋳片Sをセンタリングした状態とすることができる。
【0019】
また、一対の円筒形竪ロール23a,23bは開閉動作するので、開閉量を調整することで多種の断面サイズの鋳片Sにも対応することができ、異サイズ鋳片を鋳込む場合でもサイズを変えるたびに煩雑な設定を必要としない。
【0020】
さらに、本実施形態に係る鋳片センタリング装置A,Bは、ストランド中心にロール間隔調整手段30および油圧シリンダ25が配置されるので、これらの部材が鋳片センタリング装置A,Bの外側に張り出さず、設置スペースが小さくなる。そのため、多数のストランドを平行して設置する場合、隣り合うストライドの間隔を狭くできる。
【0021】
なお、上記実施形態ではロールユニット20の開閉動作および加圧力を得るために油圧シリンダ25を用いたが、他のアクチュエータ用いてもよい。例えば、支軸21a,21bの双方または一方を回動させるサーボモータを用いてもよい。
【0022】
(第2実施形態)
つぎに、本発明の第2実施形態に係る連続鋳造設備CC´について説明する。
本実施形態に係る連続鋳造設備CC´では、第1実施形態における鋳片センタリング装置Aに代えて、その構成が異なる鋳片センタリング装置A´が引抜矯正装置2の上流側に設置され、鋳片センタリング装置Bに代えて、その構成が異なる鋳片センタリング装置B´が引抜矯正装置2の下流側に設置される。
【0023】
まず、引抜矯正装置2の上流側に設置される鋳片センタリング装置A´について説明する。なお、第1実施形態における鋳片センタリング装置Aと同一部材については同一符号を付している。
図7に示すように、鋳片センタリング装置A´はフレーム10の前後(図7における左右)にダミーバーの下方垂れガイド11,12が設けられている。鋳片センタリング装置A´は湾曲経路の下流側端部に設置されるため、下方垂れガイド11,12は湾曲経路に沿うように鋳片Sが通過するストランドの上流側が高くなるように設けられている。また、円筒形竪ロール23a,23bの回転軸はその上側が垂直方向よりも下流側に傾いており、鋳片Sの上下面に対して垂直となるように設けられている。
【0024】
図8に示すように、フレーム10には一対の支軸21a,21bが回動自在に軸支されている。この支軸21a,21bはストランド中心線Cを挟んで対称となる位置に設けられている。また、支軸21a,21bにはそれぞれアーム22a,22bの一端が固定されており、アーム22a,22bの他端には一対の円筒形竪ロール23a,23bが回転自在に軸支されている。さらに、支軸21a,21bにはそれぞれアーム24a´,24b´の一端が固定されており、片方のアーム24b´の他端には油圧シリンダ25のロッド側端部がピンで回動自在に連結されている。この油圧シリンダ25は、そのシリンダ側がフレーム10固定された支持アーム26の先端にピンで回動自在に連結されている。
これら、支軸21a,21b、アーム22a,22b,24a´,24b´、円筒形竪ロール23a,23b、油圧シリンダ25によりロールユニット20´が構成されている。
【0025】
なお、アーム24a´,24b´は第1実施形態に係る鋳片センタリング装置Aに設けられたアーム24a,24b(図3参照)とは異なり、その長尺方向がストランド中心線Cに対してほぼ直行するように設けられている。また、支持アーム26もその長尺方向がストランド中心線Cに対してほぼ直行するように設けられている。そのため、油圧シリンダ25は、鋳片センタリング装置A´の側方のストランド中心線Cから離れた位置に設けられている。
【0026】
図9に示すように、支軸21a,21bには、円筒形竪ロール23a,23bの間隔を調整するためのロール間隔調整手段40が取り付けられている。
支軸21a,21bにはそれぞれアーム41a,41bの一端が固定されており、それぞれのアーム41a,41bの他端は、連結ピンを介してリンク42で連結されている。これら、アーム41a,41b、リンク42によりロール間隔調整手段40が構成されている。
ここで、アーム41a,41bは、その長尺方向がストランド中心線Cに対してほぼ平行に設けられており、一方のアーム41aは支軸21aから下流側に、他方のアーム41bは、支軸21bから上流側に設けられている。すなわち、一方のアーム41aは支軸21aよりも下流側でリンク42の一端と連結されており、他方のアーム41bは支軸21bよりも上流側でリンク42の他端と連結されている。そのため、ロール間隔調整手段40は平面視Z形のリンク機構となっている。
【0027】
このような構成であるから、支軸21a,21bの回動運動は、互いに逆回転かつ同角度となり、一対の円筒形竪ロール23a,23bは、ストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作することになる。すなわち、アーム41a,41b、リンク42は、特許請求の範囲に記載の「ロール移動同調機構」も兼ねている。
【0028】
なお、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作するためには、アーム41aとアーム41bとがほぼ平行になるように構成することが好ましい。より詳細には、円筒形竪ロール23a,23bを最大開閉量と最小開閉量のちょうど中間の開閉量に調整したときに、アーム41a,41bの長尺方向がストランド中心線Cに対して平行になるように構成することが好ましい。このように構成すれば、円筒形竪ロール23a,23bをストランド中心線Cに接近させるように調整するとアーム41a,41bが上流側に開いたハの字形となり、円筒形竪ロール23a,23bをストランド中心線Cから離間させるように調整するとアーム41a,41bが下流側に開いた逆ハの字形となるが、アーム41a,41bの可動範囲においてアーム41aとアーム41bとのなす角の変化量が最も小さくなるからである。
【0029】
このような構成であるから、油圧シリンダ25が伸長することにより、支軸21a,21bが回転し、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cに接近する閉動作をする(図8における二点鎖線)。また、油圧シリンダ25が収縮することにより、支軸21a,21bが逆回転し、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cから離間する開動作をする(図8における実線)。
【0030】
つぎに、引抜矯正装置2の下流側に設置される鋳片センタリング装置B´について説明する。
図10に示すように、鋳片センタリング装置B´はフレーム10の前後(図10における左右)にダミーバーの下方垂れガイド11,12が設けられている。鋳片センタリング装置B´は引抜矯正装置2の下流側に設置されるため、下方垂れガイド11,12は水平に設けられている。また、円筒形竪ロール23a,23bの回転軸は垂直となっており、水平に進行する鋳片Sの上下面に対して垂直となるように設けられている。
【0031】
その余の構成は引抜矯正装置2の上流側に設置される鋳片センタリング装置A´と同様であり、ロールユニット20´およびロール間隔調整手段40を備えている。したがって、一対の円筒形竪ロール23a,23bは、ストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作することができる。
【0032】
以上の様な構成であるから、鋳片センタリング装置A´,B´の油圧シリンダ25を伸長し、鋳片Sの両側面を一対の円筒形竪ロール23a,23bで挟んで加圧することで、鋳片Sの中心線をストランド中心線Cに一致させる(センタリングする)ことができる。
そのため、二次冷却帯域での鋳片Sへのスプレイ冷却が均一に行われるようになるので、不均一冷却を主因とする鋳片Sの形状変形や品質不良の発生を防ぐことができる。
【0033】
また、一対の円筒形竪ロール23a,23bは開閉動作するので、開閉量を調整することで多種の断面サイズの鋳片Sにも対応することができ、異サイズ鋳片を鋳込む場合でもサイズを変えるたびに煩雑な設定を必要としない。
【0034】
ところで、ストランド中心は、鋳片Sからスケールやロール冷却水が落下し、鋳片Sからの輻射熱が高く、過酷な環境である。本実施形態に係る鋳片センタリング装置A´,B´は、ストランド中心にはリンク42のみが配置され、油圧シリンダ25はストランド中心から離れた位置に設けられているので、スケールやロール冷却水の落下による影響や、輻射熱の影響が少なく、耐久性が高くなり、メンテナンスが行いやすい。また、ロール間隔調整手段40の部品点数も少ないので、点検や部品の交換等のメンテナンスが容易である。
【0035】
なお、上記実施形態では、油圧シリンダ25を一方(図8における右側)のアーム24b´に連結したが、他方(図8における左側)のアーム24a´に連結するようにしてもよい。これは、多数のストランドを平行して設置する場合に、隣り合うストライドの位置関係やメンテナンスのし易さから選択すればよい。また、油圧シリンダ25が連結されないアーム24a´(24b´)を設けないようにしてもよい。
【0036】
(その他の実施形態)
ロール間隔調整手段は上記実施形態の機構に限られず、一対の円筒形竪ロール23a,23bがストランド中心線Cを挟んで対称に同量ずつ開閉動作するように制限する機構であればよい。
【0037】
また、本発明に係る連続鋳造設備は角鋳片の他、丸鋳片等の他の形状の鋳片も製造することができる。丸鋳片を製造する場合、円筒形竪ロール23a,23bを鼓形のロールとすることが好ましい。
【0038】
さらに、鋳片センタリング装置を引抜矯正装置2の上流側と下流側に設ける以外にも、上流側または下流側の一方に設けるようにしてもよい。この場合、上流側に鋳片センタリング装置を設けた方が、センタリングが行いやすいので好ましい。
ただし、鋳片センタリング装置は引抜矯正装置2の上流側と下流側に設ければ、2か所でセンタリングを行うので、短時間で効率的にセンタリングすることができる。鋳片センタリング装置を一つしか設けない場合に比べ、鋳片センタリング装置一個当たりの鋳片Sに加える力を小さくでき、鋳片Sへの影響をより小さくしてセンタリングすることができる。そして、鋳片センタリング装置の機械的強度を頑強にしなくてもよく、油圧シリンダ25の加圧力を小さい力ですませることができる。
【符号の説明】
【0039】
2 引抜矯正装置
20 ロールユニット
21a,21b 支軸
22a,22b アーム
23a,23b 円筒形竪ロール
24a,24b アーム
24a´,24b´ アーム
25 油圧シリンダ
30 ロール間隔調整手段
31a,31b アーム
32a,32b リンク
33 ピン
34 ブシュ
35 ガイドライナー
40 ロール間隔調整手段
41a,41b アーム
42 リンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳片を引き抜き直線状に矯正する引抜矯正装置を有した連続鋳造設備であって、
前記引抜矯正装置の上流側および/または下流側の近傍に鋳片センタリング装置が設置されており、
該鋳片センタリング装置は、
前記鋳片の両側を挟む一対のロールを備えるロールユニットと、
前記一対のロールの間隔を調整するロール間隔調整手段とを備えている
ことを特徴とする連続鋳造設備。
【請求項2】
前記ロール間隔調整手段は、前記一対のロールのそれぞれをストランド中心線を挟んで対称に移動させるロール移動同調機構を有する
ことを特徴とする請求項1記載の連続鋳造設備。
【請求項3】
前記ロールユニットが、
フレームに回動自在に軸支された一対の支軸と、
該一対の支軸にアームを介して支持された前記一対のロールと、
該一対の支軸を回動させるアクチュエータとからなる
ことを特徴とする請求項1記載の連続鋳造設備。
【請求項4】
前記ロール間隔調整手段が、
前記一対の支軸に設けられた一対のアームと、
該一対のアームにそれぞれの一端がピン連結された一対のリンクと、
該一対のリンクの他端同士を共に連結するピンと、
該ピンに取り付けられたブッシュをガイドするガイドライナーとからなり、
該ガイドライナーは、そのガイド方向がストランド中心線の方向と一致するように前記フレームに固定されている
ことを特徴とする請求項3記載の連続鋳造設備。
【請求項5】
前記ロール間隔調整手段が、
前記一対の支軸に設けられた一対のアームと、
該一対のアームの先端同士を連結するリンクとからなり、
前記一対のアームのうち、一方のアームは前記支軸よりも下流側で前記リンクの一端と連結されており、他方のアームは前記支軸よりも上流側で前記リンクの他端と連結されている
ことを特徴とする請求項3記載の連続鋳造設備。
【請求項1】
鋳片を引き抜き直線状に矯正する引抜矯正装置を有した連続鋳造設備であって、
前記引抜矯正装置の上流側および/または下流側の近傍に鋳片センタリング装置が設置されており、
該鋳片センタリング装置は、
前記鋳片の両側を挟む一対のロールを備えるロールユニットと、
前記一対のロールの間隔を調整するロール間隔調整手段とを備えている
ことを特徴とする連続鋳造設備。
【請求項2】
前記ロール間隔調整手段は、前記一対のロールのそれぞれをストランド中心線を挟んで対称に移動させるロール移動同調機構を有する
ことを特徴とする請求項1記載の連続鋳造設備。
【請求項3】
前記ロールユニットが、
フレームに回動自在に軸支された一対の支軸と、
該一対の支軸にアームを介して支持された前記一対のロールと、
該一対の支軸を回動させるアクチュエータとからなる
ことを特徴とする請求項1記載の連続鋳造設備。
【請求項4】
前記ロール間隔調整手段が、
前記一対の支軸に設けられた一対のアームと、
該一対のアームにそれぞれの一端がピン連結された一対のリンクと、
該一対のリンクの他端同士を共に連結するピンと、
該ピンに取り付けられたブッシュをガイドするガイドライナーとからなり、
該ガイドライナーは、そのガイド方向がストランド中心線の方向と一致するように前記フレームに固定されている
ことを特徴とする請求項3記載の連続鋳造設備。
【請求項5】
前記ロール間隔調整手段が、
前記一対の支軸に設けられた一対のアームと、
該一対のアームの先端同士を連結するリンクとからなり、
前記一対のアームのうち、一方のアームは前記支軸よりも下流側で前記リンクの一端と連結されており、他方のアームは前記支軸よりも上流側で前記リンクの他端と連結されている
ことを特徴とする請求項3記載の連続鋳造設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−55971(P2012−55971A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123062(P2011−123062)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(502235326)住友重機械テクノフォート株式会社 (122)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(502235326)住友重機械テクノフォート株式会社 (122)
【Fターム(参考)】
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