説明

連続2点かせ巻取装置

【課題】2点かせ巻取時において連続的に送り出される糸状体を停止させることによる停止時間及び巻き替え時に糸状体を放流し続けることにより発生する生産ロスを低減する。
【解決手段】一定速度で連続的に送り出される糸状体を2点かせ枠に巻き取る巻取装置において、巻取り中の枠から別の枠への巻き替えを自動で行い、送り出される糸状体を停止させることなく巻き取る2点かせ巻取装置であって、2点かせ枠で巻き取る装置(巻取り軸)が対向に配置され、巻取り軸に取り付けられた2点かせ枠に交互に自動で巻き変えながら巻き取る2点かせ巻取装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に送り出される糸状体を、直接、連続的に2点かせ枠に巻取る装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、連続的に送り出される糸状体を2点かせ取り機で巻き取る装置及び方法に関しては多く提案(例えば、特許文献1参照)されているが、必要回数巻いた後に連続的に巻き出される糸状体を停止させる事無く、巻き続ける提案はなされていない。
【特許文献1】特公平7−112529号公報
【0003】
連続的に送り出される糸状体を停止させた後に、2点かせ枠を取り替えて巻き替えることが出来るならば糸状体を捨てずにすむが、例えば、原料を溶解した後に金型口から連続的に押出し、凝固浴にて凝固させてなる糸状体を生産し続ける工程で2点かせ取りで巻き取る必要のある糸状体では、2点かせ枠を切り替えて巻き続けることが出来なければ、金型口からの吐出を停止するか、新しい2点かせ枠に巻き替えるまでの間、吐出した糸状体を巻き取らずに放流し続け、糸状体を捨てるしかない。金型口からの吐出を一旦停止させた場合には、再度糸を巻ける状態まで復旧するには数時間、早くても2時間はかかってしまう。また、放流する場合には数分単位、早くても約5分の巻き替え作業時間を要する。通常、2点かせ枠で巻き取る糸量は、一般に使用する円筒形のコア上に巻き取る糸量より少なく、巻取り時間は数十分、早ければ2分程度で巻き終わってしまう。5分で巻き替えることが出来たとしても、全生産量に対して捨てる糸量が多く、生産設備として現実的でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来技術の課題を背景になされたもので、2点かせ巻取時において連続的に送り出される糸状体を停止させることによる停止時間及び巻き替え時に糸状体を放流し続けることにより発生する生産ロスを低減することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに到った。即ち、本発明は下記の構成を有する。
(A)一定速度で連続的に送り出される糸状体を2点がせ枠に巻き取る巻取装置において、巻取り中の枠から別の枠への巻き替えを自動で行い、送り出される糸状体を停止させることなく巻き取る事を特徴とする2点かせ巻取装置。
(B)2点かせ枠で巻き取る装置(巻取り軸と呼ぶ)が対向に配置され、巻取り軸に取り付けられた2点かせ枠に交互に自動で巻き変えながら巻き取る2点かせ巻取装置。
(C)巻取り軸に取り付ける2点かせ枠が自由に取り外すことができる2点かせ巻取装置。
(D)糸状体を巻き取っている2点かせ枠(A軸)から別のかせ枠(B軸)に巻き替える時に、各軸の回転中心を結ぶ線と送り出される糸状体が垂直になるように配された後、ガイドによりA軸からB軸へ糸状体を移動させB軸へ巻き替えることを特徴とする2点かせ巻取装置。
(E)糸状体を巻き取っている2点かせ枠(A軸)から別のかせ枠(B軸)に巻き替える時に、各軸の回転中心を結ぶ線と送り出される糸状体が垂直になるように配された後、各軸の回転中心を結ぶ線上をA軸は糸状体の走行方向に垂直に離れる方向に移動し、B軸は糸状体の走行方向に垂直に糸状体に近づくように移動し、A軸からB軸へ糸状体を巻き替えることを特徴とする2点かせ巻取装置。
(F)糸状体を巻き取っている2点かせ枠(A軸)から別のかせ枠(B軸)に巻き替える時に、A軸とB軸にバンチ巻きを行なうことを特徴とする2点かせ巻取装置。
(G)かせ枠の糸状体を巻きつける部分に糸状体がある一定幅で巻き取れるようにガイドが設けられており、そのガイドの隣接する部分に糸状体を別のかせ枠に巻き替えるときに、及び別のかせ枠から巻き替えられるときに糸状体を把持できる構造のものを取り付けていることを特徴とする2点かせ巻取装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明による2点かせ巻取装置を用いると連続的に送り出される糸状体を新たな2点かせ枠に巻き替えるまでの間、糸状体を停止させず、または糸状体を放流し捨てる事無く2点かせ枠に巻き替えながら連続して巻き続けることにより大幅なコストダウン及び生産性を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。図1が本発明装置の全体の概略図である。装置は対向して同形のものが配置されている。かせ枠の構造は糸状体を巻きつけることができれば、どの様な構造でも良いが、図2に示すように軸と糸状態を巻きつける爪で構成するのが好ましい。さらに爪には糸状体の巻き幅を規制するためのガイド(規制ガイド)を取り付けるのが好ましい。規制ガイドを設けることで糸状体を一定幅で安定して巻くことが出来る。
【0008】
図1のA軸からB軸に糸状体を巻き替えるときには、B軸がA軸の回転中心線上まで移動し、同じ位相で回転し始めた後、ガイドにより糸状体をA軸からB軸へ巻き替える。ガイドの構造は、糸状体に損傷を与えずに糸状体の走行路(糸パス)を変更できるものならどの様な構造でも良いが、フッ素系のコーティングを行なった丸棒を用いるのが好ましい。さらに自由回転するロール4本を用いて図3に示す構造のものを用いるのがより好ましい。ロールを用いることで糸状態への損傷を抑えられ、ロールを図3のように構成することにより上下、左右何れの方向に糸状体が動いても糸状体の糸パスを規制することができる。
【0009】
A軸からB軸に規制ガイドを用いず、図4のようにA軸とB軸をA軸、B軸の回転中心線上を糸状体の走行方向(糸パス)に対してA軸は離れる方向に、B軸は近づく方向に移動させ糸状体を巻き替えてもよい。
【0010】
糸状態を別のかせ枠(軸)に巻き替えたあとは、例えばA軸からB軸に巻き替えた後にA軸の回転をとめ、A軸を糸パス方向に移動させることによりA軸とB軸に渡っている糸状体(渡り糸)に張力をかけ、具体的には糸状体の破断強度以上の張力をかけることにより切断するのが好ましい。糸条体の切断後、A軸の移動を止め、A軸からかせ枠を取り外し、新しいかせ枠を取り付けることができる。A軸からB軸に糸状態を巻き替えた後にA軸の回転を止めず、もしくはA軸の回転を止めた後にA軸とB軸に渡っている糸状体をはさみ状のもの、カッター状のもので切断してもよい。
【0011】
渡り糸を切断後、かせ取り機を回転し続けると切断された糸が回転によって巻き出され、糸が枠から離れてしまうため糸状体を巻き替える際、少なくとも巻き替える先のかせ枠の爪の同じ場所に糸状体を複数回巻きつけ(バンチ巻き)、渡り糸を切断後、糸がかせ枠から巻き出されないようにするのが好ましい。また、かせ枠の爪に取り付けられた規制ガイドに隣接するように渡り糸を把持する把持手段を取り付けるのが好ましい。把持する方法としては、粘着シートを取り付けたり、規制ガイドの隣に糸状体の太さよりも小さいスリットを構成するようにガイドを設けてそのスリット部で把持させたり、スリットを構成するものに板バネを用いるのもよい。
【実施例】
【0012】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0013】
(実施例1)
ポリエーテルスルホンからなる内径200μm、膜厚30μmの中空糸30本をまとめた1束を速度50m/minで連続して紡糸しながら、本発明の2点かせ取り機に長さ2mで10,000本を巻き取り、その後巻き替えを自動で行なった。巻き替えの方法は、中空糸の糸パスは変えず、巻き替える際に各軸を回転中心線上で移動させ、巻き替える際、かせ枠の規制ガイドに隣接する把持手段に中空糸を把持させる方法で行なった。また、渡り糸の切断は渡り糸に張力をかける方法で行なった。本発明装置を用いることで得られた中空糸長に対して約0.3%のロスで済んだ。
【0014】
(比較例1)
ポリエーテルスルホンからなる内径200μm、膜厚30μmの中空糸30本を纏めた1束を速度50m/minで連続して紡糸しながら本発明の2点かせ取り機に、長さ2mで10,000本を巻き取り、その後本発明の2点かせ取り機を停止させ、中空糸は床に放流し、その間にかせ枠を取替え、再度2点かせ取り機で巻き取った。中空糸を放流し中空糸を再度2点かせ取り機で巻き始めるまで約5分を要した。このようにして得られた中空糸長に対して約75%のロスが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、連続で供給される糸状体を2点かせ取り機で必要な長さ巻き続けることができ、2点かせ取り機で巻き取る際のロスを大幅に低減できるため産業界に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の2点かせ巻取装置の概略図である。
【図2】かせ枠先端部を拡大し、示した図である。
【図3】巻き替え時の糸パスを規制するガイドを示した図である。
【図4】本発明の2点かせ巻取装置の枠換え方法を示した図である。
【図5】本発明の2点かせ巻取装置の枠換え方法を示した図である。
【図6】2点かせ巻取装置で糸状体を巻き取っている様子を示した図である。
【符号の説明】
【0017】
1.A軸
2.B軸
3.かせ枠
4.つめ
5.規制ガイド
6.把持手段(スリット部)
7.移動用レール
8.糸状体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定速度で連続的に送り出される糸状体を2点かせ枠に巻き取る巻取装置において、巻取り中の枠から別の枠への巻き替えを自動で行い、送り出される糸状体を停止させることなく巻き取る事を特徴とする2点かせ巻取装置。
【請求項2】
該2点かせ枠で巻き取る装置(巻取り軸)が対向に配置され、巻取り軸に取り付けられた2点かせ枠に交互に自動で巻き変えながら巻き取ることを特徴とする請求項1記載の2点かせ巻取装置。
【請求項3】
該巻取り軸に取り付ける2点かせ枠が自由に取り外すことができることを特徴とする請求項1または2に記載の2点かせ巻取装置。
【請求項4】
該糸状体を巻き取っている2点かせ枠(A軸)から別のかせ枠(B軸)に巻き替える時に、各軸の回転中心を結ぶ線と送り出される糸状体が垂直になるように配された後、ガイドによりA軸からB軸へ糸状体を移動させB軸へ巻き替えることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の2点かせ巻取装置。
【請求項5】
該糸状体を巻き取っている2点かせ枠(A軸)から別のかせ枠(B軸)に巻き替える時に、各軸の回転中心を結ぶ線と送り出される糸状体が垂直になるように配された後、各軸の回転中心を結ぶ線上をA軸は糸状体の走行方向に垂直に離れる方向に移動し、B軸は糸状体の走行方向に垂直に糸状体に近づくように移動し、A軸からB軸へ糸状体を巻き替えることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の2点かせ巻取装置。
【請求項6】
該糸状体を巻き取っている2点かせ枠(A軸)から別のかせ枠(B軸)に巻き替える時に、A軸とB軸にバンチ巻きを行なうことを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の2点かせ巻取装置。
【請求項7】
該かせ枠の糸状体を巻きつける部分に糸状体が、ある一定幅で巻き取れるようにガイドが設けられており、そのガイドの隣接する部分に糸状体を別のかせ枠に巻き替えるとき、及び別のかせ枠から巻き替えられるときに糸状体を把持できる構造の把持手段が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の2点かせ巻取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−280110(P2008−280110A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124071(P2007−124071)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】