説明

連鎖端子

【課題】本発明は、金型によるプレス成形のみによって信号導体と接続可能な連鎖端子を提供する。
【解決手段】長手方向に延びる一端部に矩形状の矩形片12が連設されたキャリア11を、該矩形片12をプレス成形するための金型40、50に配置し、電線Wの一端において露出した信号導体W1を矩形片上12に配置し、信号導体W1を包むように矩形片12を金型40、50によってプレス成形することにより、信号導体W1に接続された端子20を形成し、キャリア11と端子20の接続箇所を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ケーブルなどのシールド導体を有するケーブルに接続される端子に関し、特に、端子と信号導体の容易な接続を実現する連鎖端子の構造、およびその端子と信号導体の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2、3に開示されているように、同軸ケーブルなどのシールド導体を有するケーブルの信号導体を端子に接続する際には、端子に形成されたバレル(特許文献1では圧着バレル31b、特許文献2では圧着片32d、特許文献3では圧着片11c)によって信号導体を圧着していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−159312号公報
【特許文献2】特開2006−302790号公報
【特許文献3】特開2003−317882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように信号導体を端子に接続するためにバレルを圧着するとなると、プレス成形によって形成した端子を金型から取り出し、その端子をアンビルおよびクリンパを備える端子圧着装置に配置する必要がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、金型によるプレス成形のみによって信号導体と接続可能な連鎖端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る連鎖端子は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) キャリアと、該キャリアの長手方向に延びる一端部に複数連設された、矩形状の矩形片と、を備えた連鎖端子であって、
前記矩形片が、電線の一端において露出した信号導体を包むようにプレス成形されることによって、中空筒状の端子に形成される、
ことを特徴とする連鎖端子。
(2) 前記矩形片は、前記キャリアの一端部と該矩形片の一端部を結ぶキャリアツナギを介して、前記キャリアの一端部に連設され、
前記キャリアツナギは、前記矩形片を前記キャリアを含む平面よりも高い位置に配置する形状である、
ことを特徴とする上記(1)に記載の連鎖端子。
(3) 前記キャリアの幅は、前記信号導体における露出した部分の長手方向の長さよりも小さいことを特徴とする上記(1)に記載の連鎖端子。
(4) 前記キャリアは、前記信号導体における露出した部分の長手方向の長さよりも幅が小さい幅狭部と、前記幅狭部の幅方向の長さよりも幅が大きい幅広部と、を有し、
前記矩形片は、前記幅狭部の一端部に連設される、
ことを特徴とする上記(1)に記載の連鎖端子。
【0007】
上記(1)の構成の連鎖端子によれば、端子の形状にプレス成形する工程と、端子と電線の信号導体を接続する工程と、をプレス成形によって同時に行うことができる。
上記(2)〜(4)の構成の連鎖端子によれば、キャリアと矩形片の切断位置を端子の後端に位置することができるため、端子の先端に相手端子との効率的な接触を妨げるバリが形成されてしまうことを避けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の連鎖端子によれば、金型によるプレス成形のみによって信号導体と端子を接続することができる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)〜(f)は、本発明の第1の実施形態の端子がプレス成形される一連の工程を説明する図である。
【図2】図2(a)は、本発明の第1の実施形態の連鎖端子を製造するための金型の斜視図、図2(b)は、図2(a)の要部の拡大図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の連鎖端子の斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の連鎖端子の斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の連鎖端子の上面図である。(a)が端子が切断される前の上面図、(b)が連鎖端子から切り離された端子の上面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の連鎖端子の斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態の連鎖端子の上面図である。(a)が端子が切断される前の上面図、(b)が連鎖端子から切り離された端子の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明の第1の実施形態の端子が成形される過程を、その端子の形状の変化と併せて説明する。図1(a)〜(f)は、本発明の実施形態の端子がプレス成形される一連の工程を説明する図である。
【0012】
まず、平板状の金属板がプレス切断用の金型ブロックM1(金型ブロックの詳細については後述する。)に配置されプレスされることによって、図1(a)に示すように、帯形状のキャリア11と、該キャリア11の長手方向に延びる一端部に連設された矩形状の矩形片12と、が形成される。このとき、矩形片12は、後述するプレス成形によって電線の信号導体を包み込むことにより該信号導体と導通することになる矩形片本体121と、矩形片本体121とキャリア11を結ぶキャリアツナギ122と、矩形片本体121のキャリア11に臨む一端からキャリア11に向けて延設されたコンタクト123と、によって構成される。コンタクト123は、キャリアツナギ122の両側から2つ、キャリア11に向けて延設されている。また、コンタクト123は、矩形片12が端子となった際に該端子の先端(相手方端子と接触する部位)を形成することになる。以後、キャリアツナギ122を介してキャリア11に連設されている矩形片12において、キャリア11に近い側を先端側、キャリア11から遠い側を後端側、と称する。
【0013】
その後、金型ブロックM1によってプレス切断された矩形片12がプレス成形用の金型ブロックM2に配置されプレスされる。図1(b)では、矩形片12は、矩形片本体121のキャリアツナギ122を挟む両側および2つのコンタクト123が、矩形片本体121のキャリアツナギ122に連設された中央に対して折り曲げられる。このとき、矩形片12の断面は、矩形片本体121の中央を底辺としたとき、矩形片本体121の両側が該中央の両端からそれぞれ立設するほぼU字状に成形される。
【0014】
さらに、金型ブロックM2によってプレス成形された矩形片12がプレス成形用の金型ブロックM3に配置され、さらにプレスされる。図1(c)では、矩形片12は、矩形片本体121の先端側の略半分が閉じられる。すなわち、矩形片本体121の両側の端部のうちの先端側の略半分を近づけるように、矩形片本体121がプレス成形される。他方、矩形片本体121の後端側の略半分は、図1(b)と同様、上方が開いた状態、つまり、矩形片本体121の両側が矩形片本体121の中央の両端からそれぞれ立設するほぼU字形状となっている。
【0015】
さらに、図1(d)では、矩形片本体121の後端上に、電線Wの一端において露出した信号導体W1を配置する。このとき、矩形片本体121の後端側の略半分は、その上方が開いた状態にあるため、信号導体W1を矩形片本体121の中央に配置することができる。
【0016】
その後、金型ブロックM3によってプレス成形され、信号導体W1が矩形片本体121に載置された矩形片12がプレス成形用の金型ブロックM4に配置され、さらにプレスされる。図1(e)に示すように、矩形片12は、電線Wの信号導体W1が配置された矩形片本体121の後端側の略半分が閉じられる。すなわち、矩形片本体121の両側の端部のうちの後端側の略半分を近づけるように、矩形片本体121が成形される。
【0017】
矩形片12は、上述した図1(a)〜(e)に示す工程を経て、電線Wの信号導体W1が矩形片本体121に接続されると同時に、端子の形状に形成される。その後、金型ブロックM4によってプレス成形された矩形片12がプレス切断用の金型ブロックM5に配置され、図1(f)に示すようにキャリアツナギ122が切断される。こうして、電線Wの信号導体W1に接続された状態の端子20が形成される。
【0018】
以上、本発明の実施形態の端子によれば、矩形片12を端子の形状にプレス成形する工程と、端子と電線Wの信号導体W1を接続する工程と、を同時に行うことができる。すなわち、従来のように、プレス成形によって形成した端子を金型から取り出し、その端子をアンビルおよびクリンパを備える端子圧着装置に配置する必要がない。このため、端子が組み付けられた電線を生産する上で、その作業の効率化を図ることができる。
【0019】
続いて、図2を参照して、本発明の第1の実施形態の端子の構造を適用した連鎖端子を製造する方法について説明する。図2(a)は、本発明の第1の実施形態の連鎖端子を製造するための金型の斜視図、図2(b)は、図2(a)の要部の拡大図である。
【0020】
図2(a)に示すように、連鎖端子30を製造するために、下側金型40および上側金型50を用いる。下側金型40には、連鎖端子30が載置される端子収容溝41、上側金型50が落下したときに電線Wを押し潰さないための、電線Wを収容する電線収容溝42、上側金型50のボス53を収容するボス穴43、が形成されている。
【0021】
特に、端子収容溝41には、連鎖端子30のキャリア11が載置されるキャリア台座411が形成され、そのキャリア台座411と各電線収容溝42を架橋するように連鎖端子の矩形片12が載置される矩形片台座412が複数個形成されている。図2(b)に示す図面左方の矩形片台座412は、図1を説明した際に述べたプレス切断用の金型ブロックM1に相当し、以降、その右隣の矩形片台座412がプレス成形用の金型ブロックM2、さらにその右隣の矩形片台座412がプレス成形用の金型ブロックM3、さらにその右隣の矩形片台座412がプレス成形用の金型ブロックM4、さらにその右隣の矩形片台座412がプレス切断用の金型ブロックM5、にそれぞれ相当する。金型ブロックは、矩形片台座412単位で形成される型であり、その型の形状は矩形片台座412によって決まる。金型ブロックM1の矩形片台座412の形状は、平板状の金属板から矩形片本体121、キャリアツナギ122、およびコンタクト123を有する矩形片12の形状をくり抜く形状であり、金型ブロックM2〜M4の矩形片台座412の形状は、矩形片12の矩形片本体121を適宜折り曲げる形状であり、金型ブロックM5の矩形片台座412の形状は、キャリアツナギ122を切断する形状である。このように並んだ金型ブロックM1〜M5に対して、図2(b)の図面右方向にスライドする連鎖端子30が金型ブロックM1〜M5上に順に載置されることにより、各矩形片12は図1を参照して説明したように端子の形状にプレス成形されることになる。図3に、本発明の実施形態の連鎖端子の斜視図を示す。図3に示すように、ある一時点において、矩形片12の形状は、図面右方に進むにつれて端子の形状に近くなっていることがわかる。
【0022】
また、電線収容溝42は、金型ブロックM3以降の矩形片台座412の位置に対応して形成されている。より詳細には、電線収容溝42に載置された電線Wの信号導体W1が矩形片台座412の略中央に位置するように、電線収容溝42は位置決めされている。この電線収容溝42に電線Wを載置することにより、金型ブロックM3によるプレス成形によって上方が開いた状態にある矩形片本体121の後端側に、該電線Wの信号導体W1を載置することができる。矩形片本体121の後端側に電線Wの信号導体W1が載置された後、その状態で以降の金型ブロックに移動する必要があるため、金型ブロックM4、M5の矩形片台座412の位置に対応して電線収容溝42が同様に形成されている。
【0023】
なお、本発明の実施形態では、金型M1〜M5を利用した5度のプレス成形によって矩形片12を端子の形状に成形するよう説明したが、この回数に限るものではない。回数を増やすことは言うに及ばず、矩形片12を形作るためのプレス切断用の金型ブロック、および端子の形状に成形するためのプレス成形用の金型ブロック、キャリアツナギ122を切断するためのプレス切断用の金型ブロック、が有りさえすればよい。
【0024】
上述したような金型ブロックを端子収容溝41に嵌め込み可能な形状としておき、矩形片12のプレス成形に必要な金型ブロックを適宜、端子収容溝41に嵌め込むようにしておけば、仕様に応じた形状に端子をプレス成形することも可能である。
【0025】
一方、上側金型50には、下側金型40まで該上側金型50が落下したときに電線Wを押し潰さないための、電線Wを収容する電線収容溝52、下側金型40のボス穴に嵌合するボス53、が形成されている。さらには、上側金型50の下面には、下側金型40の各金型ブロックに対応する位置に該金型ブロックと対になる金型ブロックが装着されている(図示せず)。上側金型50の金型ブロックもまた嵌め込み可能な形状としておき、矩形片12のプレス成形に必要な金型ブロックを適宜、嵌め込むようにしておけば、仕様に応じた形状に端子をプレス成形することが可能である。
【0026】
以上、本発明の実施形態の連鎖端子によれば、矩形片12を端子の形状にプレス成形する工程と、端子と電線Wの信号導体W1を接続する工程と、を同時に行うことができる。すなわち、従来のように、プレス成形によって形成した端子を金型から取り出し、その端子をアンビルおよびクリンパを備える端子圧着装置に配置する必要がない。このため、端子が組み付けられた電線を生産する上で、その作業の効率化を図ることができる。
【0027】
なお、本発明の実施の形態では、矩形片本体121の先端側の略半分を金型ブロックM3によって閉じた後、矩形片本体121の後端側に電線Wの信号導体W1を載置した状態でその後端側の略半分を金型ブロックM4によって閉じる方法について説明した。このように信号導体W1を受ける受け部を予め形成しておくことにより、確実に矩形片本体121上に信号導体W1を載置することができる。この受け部を利用した他例としては、例えば、金型ブロックM2によって矩形片本体121の両側が該矩形片本体121中央の両端からそれぞれ立設するほぼU字状に矩形片12を成形した後、矩形片本体121の後端側に電線Wの信号導体W1を載置した状態で矩形片本体121全体を閉じるようにしてもよい。一方で、このような受け部を用いる構成は必須ではない。例えば、金型ブロックM1によってプレス切断して矩形片12を形成した後、矩形片本体121の後端側に電線Wの信号導体W1を載置した状態で矩形片本体121全体を閉じるようにプレス成形するようにしてもよい。
【0028】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、図1、図2に示すように、矩形片12の後端側(キャリア11から遠い側)に電線Wの信号導体W1の先端を載置する際、電線Wがキャリア11を横断しないように、つまり、キャリア11と電線Wの間に矩形片12が挟まれるようにしている。第1の実施形態のようにキャリア11を横断しないように電線Wを矩形片12に載置するようにすると、プレス成形の際に電線Wがキャリア11と金型によって挟まれ、押し潰されることを考慮する必要がなくなるため、下側金型40および上側金型50の型の形状をより単純なものにすることができる。さらに言うならば、電線Wの径が大きくなればなるほど電線Wがキャリア11と金型によって挟まれることを考慮する必要があるが、それが解消される。一方、キャリア11を横断しないように電線Wを矩形片12に載置する第1の実施形態では、キャリア11と矩形片12の切断位置(つまり、キャリアツナギ122の一部分)が端子20の先端に位置することになる。このため、端子20の先端に相手端子との効率的な接触を妨げるバリが形成されてしまうことが避けられない。
【0029】
そこで、本発明の第2の実施形態では、キャリアとの切断によって形成されるバリが端子の後端に形成される連鎖端子80、およびその連鎖端子を構成する端子70について説明する。
【0030】
第2の実施形態の端子70もまた、第1の実施形態と同様、並んだ金型ブロックに対して、スライドする連鎖端子80が金型ブロック上に順に載置されることにより、各矩形片62は図4に示すように端子の形状にプレス成形されることになる。以下、図4を参照して、本発明の第2の実施形態の端子が成形される過程を、その端子の形状の変化と併せて説明する。
【0031】
まず、平板状の金属板がプレス切断用の金型ブロックM11に配置されプレスされることによって、帯形状のキャリア61と、該キャリア61の長手方向に延びる一端部に連設された矩形状の矩形片62と、が形成される。このとき、矩形片62は、プレス成形によって電線の信号導体を包み込むことにより該信号導体と導通することになる矩形片本体621と、矩形片本体621とキャリア61を結ぶキャリアツナギ622と、矩形片本体621のキャリアツナギ622に連設された一端とは反対側の一端からキャリア61とは離れる方向に延設されたコンタクト623と、によって構成される。以後、キャリアツナギ622を介してキャリア61に連設されている矩形片62において、キャリア61から遠い側を先端側、キャリア61に近い側を後端側、と称する(第1の実施形態とは先端側および後端側の定義が異なることに注意されたい。)。キャリアツナギ622は、矩形片本体621の後端側から二又に分かれ、それぞれがキャリア61に繋がる構造である。さらにキャリアツナギ622の形状は、その一部が矩形片本体621を含む水平面から垂直に折れ曲がっていることによって、矩形片本体621をキャリア61を含む水平面よりも高い位置に配置する形状である。矩形片本体621とキャリア61の高さの差は、矩形片本体621に載置する電線の径の大きさに応じたもの、より具体的には、該電線の径の半分程度である。また、コンタクト623は、矩形片本体621の両側から2つ、キャリア61から離れる方向にて延設されており、矩形片62が端子となった際に該端子の先端(相手方端子と接触する部位)を形成することになる。
【0032】
その後、金型ブロックM11によってプレス切断された矩形片62がプレス成形用の金型ブロックM12に配置されプレスされる。このとき、矩形片62は、矩形片本体621の両側および2つのコンタクト623が、矩形片本体621の中央に対して折り曲げられる。このとき、矩形片62の断面は、矩形片本体621の中央を底辺としたとき、矩形片本体621の両側が該中央の両端からそれぞれ立設するほぼU字状に成形される。
【0033】
さらに、金型ブロックM12によって矩形片本体621の両側が該矩形片本体621中央の両端からそれぞれ立設するほぼU字状に矩形片62を成形した後、矩形片本体621の後端上に、電線Wの一端において露出した信号導体W1を配置する。このとき、電線Wは、図5(a)の本発明の第2の実施形態の連鎖端子の上面図に示すように、電線Wがキャリア61を横断するとともに、信号導体W1がキャリアツナギ622を横断するように、配置される。このように電線Wを配置した場合であっても、矩形片本体621とキャリア61の高さの差が電線Wの径の半分程度であるため、信号導体W1を矩形片本体621に載置する過程において、信号導体W1が矩形片本体621およびキャリアツナギ622に接触する前に電線Wがキャリア61に接触して、信号導体W1と矩形片本体621およびキャリアツナギ622の接触を妨げることがない。
【0034】
その後、信号導体W1が矩形片本体621に載置された矩形片62がプレス成形用の金型ブロックM13に配置され、さらにプレスされる。このとき、矩形片62は、電線Wの信号導体W1が配置された矩形片本体621全体が閉じられる。すなわち、矩形片本体621の両側の端部を近づけるように、矩形片本体621が成形される。
【0035】
矩形片62は、上述した工程を経て、電線Wの信号導体W1が矩形片本体621に接続されると同時に、端子の形状に形成される。その後、金型ブロックM13によってプレス成形された矩形片62がプレス切断用の金型ブロックM14に配置され、図5(a)に示すキャリア切断位置、つまり、電線Wの長手方向に平行な、該電線Wの両脇に位置する切断面、にてキャリア61およびキャリアツナギ622が切断される。このように切断して形成される端子70は、図5(b)に示すように、キャリアの一部とみなすことができるキャリアツナギ622の一部が後端に形成されることになる。こうして、電線Wの信号導体W1に接続された状態の端子70が形成される。
【0036】
以上、本発明の第2の実施形態の連鎖端子、およびその連鎖端子を構成する端子によれば、矩形片62を端子の形状にプレス成形する工程と、端子と電線Wの信号導体W1を接続する工程と、を同時に行うことができる。すなわち、従来のように、プレス成形によって形成した端子を金型から取り出し、その端子をアンビルおよびクリンパを備える端子圧着装置に配置する必要がない。このため、端子が組み付けられた電線を生産する上で、その作業の効率化を図ることができる。
【0037】
さらに、キャリア61と矩形片62の切断位置が端子70の後端に位置することになるため、その切断に伴って形成されるバリもまた、端子70の後端に形成されることになる。この結果、端子70の先端に相手端子との効率的な接触を妨げるバリが形成されてしまうことを避けることができる。
【0038】
さらに、矩形片本体621とキャリア61の高さに差が設けられているため、プレス成形の際に電線Wがキャリア61と金型によって挟まれ、押し潰されることもない。
【0039】
(第3の実施形態)
第3の実施形態もまた、キャリアとの切断によって形成されるバリが端子の後端に形成される連鎖端子110、およびその連鎖端子を構成する端子100について説明する。第2の実施形態では、電線Wがキャリア61と金型によって挟まれ、押し潰されることを回避するために、矩形片本体621とキャリア61の高さに差を設けたが、第3の実施形態では、同じ事柄を回避するために、キャリア61の幅方向の長さに特徴を持たせる。
【0040】
第3の実施形態の端子100もまた、第1、第2の実施形態と同様、並んだ金型ブロックに対して、スライドする連鎖端子110が金型ブロック上に順に載置されることにより、各矩形片92は図6に示すように端子の形状にプレス成形されることになる。以下、図6を参照して、本発明の第3の実施形態の端子が成形される過程を、その端子の形状の変化と併せて説明する。
【0041】
まず、平板状の金属板がプレス切断用の金型ブロックM21に配置されプレスされることによって、幅が小さい幅狭部911と幅が大きい幅広部912が交互に長手方向に並ぶのこぎぎり刃状のキャリア91と、該キャリア91の長手方向に延びる一端部のうちの幅狭部911に連設された矩形状の矩形片92と、が形成される。このとき、キャリア91の幅狭部911の幅は、電線Wの一端において露出した信号導体W1の長手方向の長さよりも小さく、幅広部912の幅は、幅狭部911の幅方向の長さよりも大きい。また、幅狭部911および幅広部912は、その幅方向の一方側に揃った状態で交互に連結されている。なお、第3の実施形態では、幅広部912の幅は、幅狭部911の幅方向の長さよりも大きいものとしたが、任意の幅のものであってもよく、要は、矩形片92が連設される部分(第3の実施形態では幅狭部911に相当。)におけるキャリア91の幅が、電線Wの一端において露出した信号導体W1の長手方向の長さよりも小さければよい。また、第3の実施形態では、幅狭部911および幅広部912がその幅方向の一方側に揃った状態で連結されているものを説明するが、本発明は幅狭部911および幅広部912の連結箇所の位置によって限定されるものではない。
【0042】
また、矩形片92は、プレス成形によって電線の信号導体を包み込むことにより該信号導体と導通することになる矩形片本体921と、矩形片本体921のキャリア91に連設された一端とは反対側の一端からキャリア91とは離れる方向に延設されたコンタクト923と、によって構成される。以後、キャリア91に連設されている矩形片92において、キャリア91から遠い側を先端側、キャリア91に近い側を後端側、と称する(第1の実施形態とは先端側および後端側の定義が異なることに注意されたい。)。コンタクト923は、矩形片本体921の両側から2つ、キャリア91から離れる方向にて延設されており、矩形片92が端子となった際に該端子の先端(相手方端子と接触する部位)を形成することになる。
【0043】
その後、金型ブロックM21によってプレス切断された矩形片92がプレス成形用の金型ブロックM22に配置されプレスされる。このとき、矩形片92は、矩形片本体921の両側および2つのコンタクト923が、矩形片本体921の中央に対して折り曲げられる。このとき、矩形片92の断面は、矩形片本体921の中央を底辺としたとき、矩形片本体921の両側が該中央の両端からそれぞれ立設するほぼU字状に成形される。
【0044】
さらに、金型ブロックM22によって矩形片本体921の両側が該矩形片本体921中央の両端からそれぞれ立設するほぼU字状に矩形片92を成形した後、矩形片本体921の後端上に、電線Wの一端において露出した信号導体W1を配置する。このとき、電線Wは、図7(a)の本発明の第3の実施形態の連鎖端子の上面図に示すように、電線Wの一端において露出する信号導体W1が幅狭部911を横断するように、配置される。このように電線Wをキャリア91に配置した場合、電線Wがキャリア91に接触することがない。
【0045】
その後、信号導体W1が矩形片本体921に載置された矩形片92がプレス成形用の金型ブロックM23に配置され、さらにプレスされる。このとき、矩形片92は、電線Wの信号導体W1が配置された矩形片本体921全体が閉じられる。すなわち、矩形片本体921の両側の端部を近づけるように、矩形片本体921が成形される。
【0046】
矩形片92は、上述した工程を経て、電線Wの信号導体W1が矩形片本体921に接続されると同時に、端子の形状に形成される。その後、金型ブロックM23によってプレス成形された矩形片92がプレス切断用の金型ブロックM24に配置され、図7(a)に示すキャリア切断位置、つまり、電線Wの長手方向に平行な、該電線Wの信号導体W1の両脇に位置する切断面、にてキャリア91の幅狭部911が切断される。このように切断して形成される端子100は、図7(b)に示すように、キャリアの一部とみなすことができる幅狭部911の一部が後端に形成されることになる。こうして、電線Wの信号導体W1に接続された状態の端子100が形成される。
【0047】
以上、本発明の第3の実施形態の連鎖端子、およびその連鎖端子を構成する端子によれば、矩形片92を端子の形状にプレス成形する工程と、端子と電線Wの信号導体W1を接続する工程と、を同時に行うことができる。すなわち、従来のように、プレス成形によって形成した端子を金型から取り出し、その端子をアンビルおよびクリンパを備える端子圧着装置に配置する必要がない。このため、端子が組み付けられた電線を生産する上で、その作業の効率化を図ることができる。
【0048】
さらに、キャリア91と矩形片92の切断位置が端子100の後端に位置することになるため、その切断に伴って形成されるバリもまた、端子100の後端に形成されることになる。この結果、端子100の先端に相手端子との効率的な接触を妨げるバリが形成されてしまうことを避けることができる。
【0049】
さらに、キャリア91の幅狭部911に連設された矩形片92に信号導体W1を載置する構成であるため、プレス成形の際に電線Wがキャリア91と金型によって挟まれ、押し潰されることもない。
【符号の説明】
【0050】
11、61、91 キャリア
12、62、92 矩形片
121、621、921 矩形片本体
122、622 キャリアツナギ
123、623、923 コンタクト
20、70、100 端子
30、80、110 連鎖端子
40 下側金型
50 上側金型
911 幅狭部
912 幅広部
W 電線
W1 信号導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアと、該キャリアの長手方向に延びる一端部に複数連設された、矩形状の矩形片と、を備えた連鎖端子であって、
前記矩形片が、電線の一端において露出した信号導体を包むようにプレス成形されることによって、中空筒状の端子に形成される、
ことを特徴とする連鎖端子。
【請求項2】
前記矩形片は、前記キャリアの一端部と該矩形片の一端部を結ぶキャリアツナギを介して、前記キャリアの一端部に連設され、
前記キャリアツナギは、前記矩形片を前記キャリアを含む平面よりも高い位置に配置する形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載の連鎖端子。
【請求項3】
前記キャリアの幅は、前記信号導体における露出した部分の長手方向の長さよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の連鎖端子。
【請求項4】
前記キャリアは、前記信号導体における露出した部分の長手方向の長さよりも幅が小さい幅狭部と、前記幅狭部の幅方向の長さよりも幅が大きい幅広部と、を有し、
前記矩形片は、前記幅狭部の一端部に連設される、
ことを特徴とする請求項1に記載の連鎖端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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