説明

遊技機及び可動式ツメカバー

【課題】 部品数を増やすことなく、下パネル枠の取り外しを可能にするとともに、不正工具が筐体内に侵入するのを阻止する。
【解決手段】 筐体ドア3から取り外し可能な下パネル枠35を備えた遊技機1であって、下パネル枠35が、筐体ドア3のツメ通過孔343に挿入されるツメ部352を有し、筐体ドア3が、ツメ通過孔343の一方の開口部に挿入されて他方の開口部から露出したツメ部352の先端部の全体と、他方の開口部の外周縁の全体との双方を覆う可動式ツメカバー40を有し、この可動式ツメカバー40が、筐体ドア3に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下パネルを取り付けるための下パネル枠を備えた遊技機、及び、この遊技機に用いられる可動式ツメカバーに関し、特に、下パネル枠のツメ部が挿入される筐体ドアのツメ通過孔に不正工具を侵入させて筐体内で不正を行うといった悪質な行為を確実に防止するとともに、下パネル等の分解・組立時における部品数の増加を抑えるのに好適な遊技機及び可動式ツメカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
装飾や演出目的で筐体ドアの下部に印刷パネルを設置した遊技機は、そのパネルや内部照明器具の交換ができるように、パネル装着用の下パネル枠が取り外し可能となっている。
下パネル枠は、工具無しでも簡単に取り外しできるように、先端が鉤状の突設部(ツメ部)を有しており、筐体ドアのツメ通過孔に係止可能になっている。
【0003】
ところで、遊技機は、不正に遊技媒体であるメダル等を獲得しようとする不正行為者の標的となり易く、遊技機の不正防止対策が重要な課題となっている。
例えば、下パネル枠を外部から除去し、ツメ通過孔から不正工具を侵入させて、筐体を不正動作させる行為が発生している。
そこで、下パネル枠の取り外しを簡単には行えないようにして不正行為を防止する技術が提案されている。
【0004】
例えば、ツメ通過孔に挿入されたツメ部の下面とツメ通過孔の内壁下面との間の隙間に、ツメ部が挿入された方向とは逆の方向から挿入する挿入部を先端側に有した抜止ロック部材を取り付ける技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
これによれば、ツメ部の上面に形成された鉤部がツメ通過孔の縁部に係止した状態で抜止ロック部材の挿入部が前述の隙間に挿入されることで、ツメ部の係止を解除する側にツメ部が湾曲するのを抑制できる。しかも、抜止ロック部材は、筐体ドアの裏側から取り付けられる。このことから、筐体ドアを施錠した状態では抜止ロック部材を外すことができず、このため、下パネル枠を外すこともできなくなり、ツメ通過孔に不正工具を挿入するという不正行為を防止できる。
【特許文献1】特開2007−202856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術においては、次のような問題点があった。
例えば、抜止ロック部材の挿入部がツメ通過孔に挿入された状態であっても、その抜止ロック部材の上方は開放状態となっているため、針金状又は薄板状の不正工具が、ツメ部とツメ通過孔との隙間を通り、抜止ロック部材の上方開放部を通って筐体内に侵入してしまう。これにより、筐体内で不正行為が行われてしまうという問題があった。
【0006】
また、下パネルを交換する際には、下パネル枠の取り外し作業や取り付け作業の他に、抜止ロック部材を引き抜く作業や、挿入部を挿入する作業も必要となることから、作業工数が増えて手間がかかるという問題があった。
さらに、ツメ部がツメ通過孔に係止されれば下パネル枠自体は取り付けが完了することから、抜止ロック部材の挿入を忘れてしまうことがあった。そうすると、不正行為を阻止することができず、ホール側が損害を被ってしまうという問題があった。
【0007】
しかも、抜止ロック部材は、ツメ通過孔に着脱する構造となっているため、分解・組立時の部品数が多くなるという問題があった。
加えて、抜止ロック部材をツメ通過孔から抜き取ったときにどこかへ適当に置いてしまうと、紛失する可能性があった。しかも、抜止ロック部材を紛失したために新たに取り寄せようとすると、この取り寄せに時間がかかり、この間不正行為を阻止することができなくなるという問題があった。さらに、この対応策として予備品を用意しておくことも考えられるが、この予備品を管理しなければならなくなり、保守管理が煩雑になるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、不正工具が筐体内に侵入するのを完全に阻止するとともに、下パネル枠の分解・組立の際に作業工数や部品数が増えるのを抑え、かつ、保守管理の煩雑さを解消し得る遊技機及び可動式ツメカバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明の遊技機は、筐体ドアから取り外し可能な下パネル枠を備えた遊技機であって、下パネル枠が、筐体ドアのツメ通過孔に挿入されるツメ部を有し、筐体ドアが、ツメ通過孔の一方の開口部に挿入されて他方の開口部から露出したツメ部の先端部の全体と、他方の開口部の外周縁の全体とを覆う可動式ツメカバーを有した構成としてある。
【0010】
遊技機をこのような構成とすると、ツメ通過孔に挿入されたツメ部の先端露出部全体と、ツメ通過孔の他方の開口部外周縁の全体が、可動式ツメカバーにより覆われるため、仮にツメ部とツメ通過孔との隙間から不正工具が侵入してきたとしても、必ず可動式ツメカバーに突き当たり、これ以上先への侵入ができなくなる。これにより、その不正工具を用いた不正行為を完全に防止できる。
【0011】
また、本発明の遊技機は、可動式ツメカバーを、筐体ドアに固定した構成とすることができる。
遊技機をこのような構成とすれば、可動式ツメカバーが筐体ドアに固定されているため、下パネル枠の分解・組立の際に、可動式ツメカバーの取り付けや取り外しを行う必要がない。このため、作業工数や部品数の増加を抑えることができる。
また、可動式ツメカバーが筐体ドアに固定されていることで、この可動式ツメカバーの付け忘れを回避できる。しかも、可動式ツメカバーは、常時固定されているため、不正行為がいつ起こっても完全に阻止できる。
しかも、下パネル枠の分解・組立の際に可動式ツメカバーが取り外されることがないため、その可動式ツメカバーの予備品を管理する必要がない。これにより、保守管理の煩雑さを解消できる。
【0012】
また、本発明の遊技機は、ツメ部が、鉤状に形成されてツメ通過孔の他方の開口部の外周縁に係止する係止部を有し、可動式ツメカバーが、他方の開口部の外周縁から係止部が外れる方向に当該係止部を押すツメ押下部と、係止部の外れる方向にツメ押下部が動くように弾性を与える弾性部材とを有した構成とすることができる。
【0013】
遊技機をこのような構成とすると、ツメ押下部を介してツメ部の係止部を押すことにより、係止が解除されて、下パネル枠を取り外すことができる。
しかも、可動式ツメカバーは、弾性部材を有しているため、筐体ドアに固定された状態でツメ押下部を動かすことができ、下パネル枠を取り外すことができる。これにより、分解・組立時の部品数の増加を抑えることができる。
【0014】
また、本発明の遊技機は、弾性部材を、板バネを含む構成とすることができる。
遊技機をこのような構成とすれば、板バネの弾性によってカバー部材を動かすことができる。しかも、板バネは、形状が簡易であることから、形成が容易である。さらに、材料によっては、固定部材やカバー部材と弾性部材との一体形成が可能である。
【0015】
また、本発明の可動式ツメカバーは、遊技機の筐体ドアに穿設されたツメ通過孔の一方の開口部に挿入されて他方の開口部から露出した下パネル枠のツメ部の先端部の全体と、前記他方の開口部の外周縁の全体とを覆うカバー部材を備えた構成とすることができる。
可動式ツメカバーをこのような構成とすれば、可動式ツメカバーのカバー部材が下パネル枠のツメ部先端部や筐体ドアのツメ通過孔の他方開口部外周縁を覆う構造になっているため、このツメ通過孔に不正工具が挿入されてもカバー部材に必ず突き当たってしまう。
また、ツメ通過孔を通過できたとしても、筐体内部まで到達できないことから、内部での不正工作が非常に困難となる。
このことから、不正工具のさらなる侵入を阻止して、この工具による不正行為の発生を完全に防止できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、ツメ通過孔に挿入されて露出したツメ部の先端部の全体と、ツメ通過孔の他方の開口部外周縁の全体が、可動式ツメカバーのカバー部材により覆われるため、筐体内部への不正工具の侵入を完全に阻止することができる。このため、その不正工具を用いた不正行為を完全に防止できる。
また、可動式ツメカバーが筐体ドアに固定した状態となっているため、下パネル枠を取り外したときにも、部品数が増えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る遊技機及び可動式ツメカバーの好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
[遊技機]
まず、本発明の遊技機の実施形態について、図1、図2を参照して説明する。
本実施形態では、可動式ツメカバーを備えた遊技機として、スロットマシンを適用している。
図1は、スロットマシンの概観を示す図であって、(i)は、正面図、(ii)は、側面図である。図2は、筐体ドアの裏面構成を示す詳細図である。
本実施形態のスロットマシンは、従来のスロットマシンと同様にスロットマシンに備えられた複数のリールを回転させることによって遊技媒体を獲得することができる回胴式遊技機を構成している。
【0019】
スロットマシン1は、内部にマイクロコンピュータ等で構成された主基板及び必要な機械、装置等を収納する正面側に開口した支持体2と、この支持体2の正面側を開閉可能に覆う筐体ドア3とで構成されている。
筐体ドア3は、支持体2にヒンジ等を介して開閉自在に取り付けられる扉で、この筐体ドア3に各種パネルやその他各部が備えられて正面部を構成している。
【0020】
筐体ドア3の前面側は、図1(i)に示すように、上パネル部31と下パネル部32とに略区分けすることができる。
そして、図2に示すように、筐体ドア3の下パネル部32の裏面における所定の位置に、本実施形態に係る可動式ツメカバー40が備えられる。
なお、スロットマシンを構成する各部・各所の機械、装置等やそれらの制御は、公知のものであり、ここではそれらの説明は省略し、以下、発明の特徴的な構成について詳細に説明する。
【0021】
[下パネル部]
下パネル部について、図3を参照して説明する。
同図に示すように、下パネル部32は、下パネル33と、筐体ドア下部34と、下パネル枠35とを有している。
下パネル33は、ゲーム内容やスロットマシンのモデルタイプなどを遊技者に認識させるために登場キャラクタなどが描かれた板状部材である。
筐体ドア下部34は、筐体ドア3の略下半分を構成する部材である。この筐体ドア下部34は、正面から筐体内部に向かって凹状に形成された凹部36を有しており、この凹部36内に下パネル照明部品37が取り付けられている。この下パネル照明部品37には、例えば蛍光灯を用いることができ、点灯することで、下パネル33に描かれたキャラクタ等をバック(背後)から明るく照らし出すことができる。
【0022】
また、筐体ドア下部34には、下パネル枠35のツメ部352(後述)が挿入されるツメ通過孔381を有したドア側凸部38が形成されている(図5参照)。
ドア側凸部38は、径方向断面がほぼ方形の筒状に形成されており、中空軸が水平方向となるように筐体ドア下部34の裏側に立設されている。このドア側凸部38において、ツメ部352が挿入される側(筐体ドア下部34の前面側)の開口部を第一の開口部(一方の開口部)382、挿入されたツメ部352の先端が露出する側(筐体ドア下部34の裏面側、可動式ツメカバー40によりカバーされる側)の開口部を第二の開口部(他方の開口部)383というものとする。
さらに、筐体ドア下部34には、下パネル枠35の引っ掛け部材357(後述)が挿入されて係止する引っ掛け部材通過孔341が形成されている(図6参照)。
【0023】
下パネル枠35は、下パネル33を筐体ドア下部34に取り付けるための抑え枠である。
この下パネル枠35の上辺部材351には、ツメ部352が突設形成されている。
ツメ部352は、全体に鉤状に形成されており、上辺部材351から水平方向(下パネル枠35の取り付け方向)に向かって突設した板部材353と、この板部材353の一つの面(本実施形態においては、上面)の一部が段差をなして形成された係止部354とを有している。
また、係止部354の段差上端部からツメ部352の先端にかけては、傾斜面355が形成されている。
なお、本実施形態において、ツメ部352は、2つ設けられており、上辺部材351の両端からそれぞれ所定の位置に形成されている。ただし、ツメ部352は、2つに限るものではなく、3つ以上であってもよい。
【0024】
下パネル枠35の下辺部材356には、引っ掛け部材357が形成されている。
引っ掛け部材357は、ツメ部352と同様、全体に鉤状に形成されており、下辺部材356の奥側端部から下パネル枠35の取り付け方向に向かって突設形成されている。
これら上辺部材351のツメ部352と、下辺部材356の引っ掛け部材357が、それぞれ筐体ドア下部34の所定の位置に係止することで、下パネル33及び下パネル枠35が取り付けられる。
【0025】
なお、引っ掛け部材357は、弾性力が小さいことから、ツメ部352のように指などで押して湾曲させながら外すことは不可能となっている。つまり、下パネル枠35を外すときには、上辺部材351のツメ部352を外した後でなければ、引っ掛け部材357を外すことはできない。このように、引っ掛け部材357は、取り外すために人が力を加える部分ではないため、可動式ではなく固定式のカバーにて保護可能である。
【0026】
[可動式ツメカバー]
(構造)
次に、可動式ツメカバーの構造について、図4を参照して説明する。
同図に示すように、可動式ツメカバー40は、固定部材41と、弾性部材42と、カバー部材43とを有している。
【0027】
固定部材41は、平板で形成されており、中央には貫通した孔411が穿設されている。この孔411にネジ50を通し、さらに、このネジ50を筐体ドア下部34の肉厚部342(後述)に切られた下穴に螺入することで、可動式ツメカバー40が、筐体ドア下部34の裏面に固定される。
【0028】
弾性部材42は、例えば、図4に示すように、板バネを用いることができる。
この板バネは、側面形状が“⊂”の記号のように横U字状に形成されている。すなわち、上板部材421と下板部材422が湾曲部材423で連結されて横U字状をなしている。また、上板部材421の一辺(湾曲部材423が連結された辺に対向する辺)が、横U字状に対して外側(上方)へ湾曲し、カバー部材43の底面部材436の前面部材437側端辺に接続している。さらに、下板部材422の一辺(湾曲部材423が連結された辺に対向する辺)が、横U字状に対して外側(下方)へ湾曲し、固定部材41に接続している。
このような形状により、弾性部材42は、ばね(弾性体)として機能する。このため、固定部材41が固定された状態でも、カバー部材43がその弾性力で動かせるようになっている。
また、弾性部材42をこのような形状とすることで、必要以上にカバー部材43が押し込めないような構造となっており、弾性部材42の破壊が防止される。
【0029】
カバー部材43は、ボンネットバスの前半分のような形状に形成されており、ボンネット部分に相当する1段目(下段部431)と、屋根部に相当する2段目(上段部432)との間に傾斜面(ツメ押下部)433が形成されている。
上段部432は、右側方と左側方がそれぞれ一段高くなっており、中央がそれらに対して低くなっている。このように側方が高くなっているのは、筐体ドア下部34の裏面に形成されたドア側凸部38の周囲にリブ343が形成されており、可動式ツメカバー40を筐体ドア下部34に固定する際にリブ343を回避するためである。この上段部432の形状は、リブ343の立設位置に応じて変更可能である。
【0030】
底面部材436は、方形状の平板で形成されている。
右側面部材434と左側面部材435は、それぞれ上段部432,傾斜面433,下段部431,前面部材437,底面部材436に沿った形状に形成されている。
【0031】
背面部438は、開口になっている。これにより、ドア側凸部38がカバー部材43の内部に挿入可能となる。また、このドア側凸部38のツメ通過孔381に挿入された下パネル枠35のツメ部352もカバー部材43の内部に挿入可能となるため、それらドア側凸部38の第二の開口部383の外周縁384と、ツメ部352の先端部がカバー部材43により覆われる。
なお、カバー部材43において、開口は、この背面部438のみである。
【0032】
このような形状により、カバー部材43は、ドア側凸部38を保護するととともに、分解作業等において可動式ツメカバー40を取り外すことなく、下パネル枠35のツメ部352を外すことができる。
なお、可動式ツメカバー40は、容易に破壊されないだけの強度を有する樹脂材料にて製造される。
【0033】
(可動式ツメカバーの固定)
次に、可動式ツメカバーの固定について、図5を参照して説明する。
可動式ツメカバー40の固定は、ネジ50を用いて行われる。
上述したように、可動式ツメカバー40の固定部材41には、孔411が穿設されている。一方、筐体ドア下部34の裏面には、ドア側凸部38の下方の離間した位置に、筒状の肉厚部342が設けてある。この肉厚部342には下穴が切られており、ネジ50が螺入可能になっている。
このような構造において、固定部材41の孔411にネジ50の足部51を通し、さらに、このネジ50を、筐体ドア下部34の肉厚部342に螺着することで、可動式ツメカバー40を筐体ドア下部34に固定できる。
【0034】
また、肉厚部342の周囲には、一又は二以上のリブ344(344−1〜344−3)が立設してある。リブ344は、可動式ツメカバー40の固定が安定するように固定部材41の面に当接して支持するもの(リブ344−1、344−2)と、可動式ツメカバー40がネジ50を中心に回転しないように固定部材41を側方から支持するもの(リブ344−3)とがある。
【0035】
なお、本実施形態においては、可動式ツメカバーの固定方法としてネジを用いているが、ネジに限るものではなく、例えば、嵌め込み、溶接、接着など、任意好適な方法を用いることができる。
【0036】
[下パネル枠の取り付け・取り外し]
(下パネル枠の取り付け)
次に、下パネル枠の取り付けについて、図3、図6を参照して説明する。
図6は、下パネル及び下パネル枠が筐体ドア下部に取り付けられた状態を示す側方断面図である。
まず、図3に示すように、下パネル33及び下パネル枠35は、筐体ドア下部34から分解された状態にあるものとする。
下パネル枠35の枠内に下パネル33がセットされる(または、筐体ドア下部34の凹部36を蓋するように下パネル33がセットされる)。
【0037】
次いで、下パネル枠35を筐体ドア下部34に取り付けるにあたり、下パネル枠35の下辺部材356の引っ掛け部材357が、筐体ドア下部34の引っ掛け部材通過孔341に通されて引っ掛けられる(係止する)。
続いて、下パネル枠35の上辺部材351のツメ部352が、筐体ドア下部34のツメ通過孔381の第一開口部382に挿入される。挿入されたツメ部352は、その先端の係止部354がツメ通過孔381の第二開口部383から露出する。そして、係止部354の段差部分がドア側凸部38の第二開口部383側の開口部外周縁384に係止する。これにより、下パネル33及び下パネル枠35の取り付けが完了する。
【0038】
図6に示すように、下パネル33及び下パネル枠35が筐体ドア下部34に取り付けられた状態において、可動式ツメカバー40のカバー部材43は、少なくとも、ドア側凸部38の第二開口部383の外周縁384の全体と、この第二開口部383から露出したツメ部352の先端部分の全体とを内包する(覆う)。
これにより、ツメ通過孔381の内壁とツメ部352の板部材353の表面との間の隙間から不正工具が通されたとしても、その不正工具はカバー部材43に必ず突き当たることから、それ以上筐体内に侵入できなくなる。このため、その不正工具を用いた不正行為を防止できる。
【0039】
(下パネル枠の取り外し)
次に、下パネル枠の取り外しについて、図6〜図9を参照して説明する。
図7は、可動式ツメカバーのカバー部材を押し込んだ状態を示す断面図、図8は、カバー部材の押し込みにより係止が解除されたときの状態を示す断面図、図9は、下パネル枠が取り外された後の可動式ツメカバー及びその周辺の状態を示す断面図である。
【0040】
図6に示すように、筐体ドア下部34に下パネル枠35が取り付けられた状態では、ツメ部352がドア側凸部38の第二開口部383の外周縁384に係止している。この状態において、ツメ部352の傾斜面355は、カバー部材43の傾斜面433の裏面に接近又は接触した状態にある。また、ドア側凸部38の外周上面385は、カバー部材43の上段部432の裏面から離間した位置にあり、ツメ通過孔381の外周下面386は、カバー部材43の底面部材436の上面に接近又は接触している。
【0041】
下パネル枠35を取り外すときは、図7に示すように、可動式ツメカバー40のカバー部材43の下段部431又は傾斜面433の一方又は双方を上から下に向かって押し込む。
これにより、傾斜面433の裏面がツメ部352の傾斜面355に当接して押し下げる。さらに押し下げると、図8に示すように、ツメ部352の係止部354が、ツメ通過孔381の第二開口部383の外周縁384から外れて係止が解除される。この係止が解除されることで、下パネル枠35は取り外し可能な状態となる。
【0042】
下パネル枠35や下パネル33が取り外され、カバー部材43の押し込みを止めると、図9に示すように、弾性部材42の弾性力により、カバー部材43が元の位置に復帰する。
この図から判るように、この状態でも、仮に不正工具がツメ通過孔381に挿入されたとしても、ツメ通過孔381の第二開口部383がカバー部材43により覆われているため、ここから先への不正工具の侵入が阻止される。
さらに、ドア側凸部38とカバー部材43との間の隙間は、カバー部材43が動作するための最小限の隙間しかなく、この隙間を通って外部から筐体内部へ侵入する経路も複雑となっている。このため、不正工具の侵入は、非常に困難となっている。
しかも、同図の状態での不正工具の侵入を阻止できることから、ツメ通過孔381にツメ部352が挿入された状態でも、同様に、カバー部材43により不正工具の侵入を阻止できる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の遊技機及び可動式ツメカバーによれば、ツメ通過孔の第二開口部を覆うように可動式ツメカバーが設けられるため、そのツメ通過孔に不正工具を侵入させたとしても、可動式ツメカバーより先への侵入が阻止されることから、不正行為を防止できる。
また、カバー部材の動作のために必要な隙間は最小限となっていて、不正工具の通過が困難な上、通過できたとしても侵入経路が複雑となり、内部での不正操作は非常に困難となっている。
【0044】
さらに、カバー部材の内部にはドア側凸部が入り込んでおり、カバー部材とドア側凸部との間は最小限の隙間しか空いていないため、不正工具で押されてカバー部材が傾いたとしても、カバー部材の内部のどこかが必ずドア側凸部に当たってそれ以上傾倒できなくなり、カバー部材がドア側凸部から外れるという事態を回避できるようになっている。
加えて、可動式ツメカバーは、筐体ドアに固定されるとともに、下パネル枠を取り外す際にはその固定されたままの状態で、ツメ部の係止を解除できることから、下パネル枠や下パネルの分解・組立時に部品数が増えることがない。
【0045】
しかも、下パネルの交換時に可動式ツメカバーの取り外しや取り付けは行われないことから、作業工数の増加を抑えることができる。
そして、可動式ツメカバーが筐体ドアに固定されることで、下パネルの交換時に紛失する心配がない。このため、予備品の用意が不要となり、保守管理が軽減される。
【0046】
以上、本発明の遊技機及び可動式ツメカバーの好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る遊技機及び可動式ツメカバーは上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、本発明の可動式ツメカバーが備えられる遊技機は、上述した実施形態で示したスロットマシンに限らず、パチンコ機でもよく、どのような遊技機であっても適用が可能である。この種の遊技機としては、スロットマシン(パチロット、パロットを含む)やパチンコ機の他、例えば、アレンジボール機、雀球機等、各種の遊技機があり、いずれも本発明の適用対象とすることができる。
また、上記の実施形態においては、可動式ツメカバーの弾性部材を板バネで形成したが、板バネに限るものではなく、例えば、ブロック型のゴムや螺旋状のコイルバネなどを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、遊技機内部に不正工具を侵入させる可動式ツメカバーとして広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】スロットマシンの概観を示す図であって、(i)は、正面図、(ii)は、側面図である。
【図2】筐体ドアの裏面構成を示す詳細図である。
【図3】筐体ドア下部、下パネル、下パネル枠の構造を示す斜視図である。
【図4】可動式ツメカバーの構造を示す斜視図である。
【図5】下パネル枠のツメ部周辺、筐体ドア下部の凸部周辺、及び、可動式ツメカバーの固定位置を示す斜視図である。
【図6】下パネル及び下パネル枠が筐体ドア下部に取り付けられた状態を示す断面図である。
【図7】可動式ツメカバーのカバー部材を押し込んだ状態を示す断面図である。
【図8】カバー部材の押し込みにより係止が解除されたときの状態を示す断面図である。
【図9】下パネル枠が取り外された後の可動式ツメカバー及びその周辺の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 遊技機(スロットマシン)
3 筐体ドア
32 下パネル部
33 下パネル
34 筐体ドア下部
35 下パネル枠
352 ツメ部
354 係止部
355 傾斜面
38 ドア側凸部
381 ツメ通過孔
382 第一開口部
383 第二開口部
384 外周縁
40 可動式ツメカバー
41 固定部材
42 弾性部材
43 カバー部材
431 下段部
432 上段部
433 傾斜面
438 背面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体ドアから取り外し可能な下パネル枠を備えた遊技機であって、
前記下パネル枠が、前記筐体ドアのツメ通過孔に挿入されるツメ部を有し、
前記筐体ドアが、
前記ツメ通過孔の一方の開口部に挿入されて他方の開口部から露出した前記ツメ部の先端部の全体と、前記他方の開口部の外周縁の全体とを覆う可動式ツメカバーを有した
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記可動式ツメカバーが、前記筐体ドアに固定された
ことを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記ツメ部が、鉤状に形成されて前記ツメ通過孔の他方の開口部の外周縁に係止する係止部を有し、
前記可動式ツメカバーが、
前記他方の開口部の外周縁から前記係止部が外れる方向に当該係止部を押すツメ押下部と、
前記係止部の外れる方向に前記ツメ押下部が動くように弾性を与える弾性部材とを有した
ことを特徴とする請求項1又は2記載の遊技機。
【請求項4】
前記弾性部材が、板バネを含む
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遊技機。
【請求項5】
遊技機の筐体ドアに穿設されたツメ通過孔の一方の開口部に挿入されて他方の開口部から露出した下パネル枠のツメ部の先端部の全体と、前記他方の開口部の外周縁の全体とを覆うカバー部材を備えた
ことを特徴とする可動式ツメカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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