説明

遊技機

【課題】 排出機構全体の大型化や部品増によるコストアップを回避しつつ賞球と貸球の確実な計数管理を実現する。
【解決手段】 排出機構は、単一の駆動源としての球排出モータと、球排出モータによって駆動され、賞球払出及び球貸しを行なうために遊技球を下流方向へ送る一対の球送り部材と、一対の球送り部材に駆動力を伝達する伝達機構と、一対の球送り部材によって排出される遊技球を検出する球排出センサ装置と、球排出センサ装置によって検出される遊技球の数をカウントするために設けられる球排出センサ基板と、球排出モータ、一対の球送り部材、伝達機構、球排出センサ装置及び球排出センサ基板を収容し、内部に賞球払出及び球貸しを行なうための遊技球が流下する二条の遊技球通路を一体的に形成してなるケースと、を含む一つのユニットとして形成されていることを特徴とする遊技機とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賞球払出及び球貸しを行なう排出機構を備えた遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
賞球払出及び球貸しを行なう排出機構に関しては、さまざまな発明が出願され、また実施に至っている。大まかに分けても、払出個数を一気に払い出すもの、逆に一つずつ払い出すもの、払出の機構をソレノイドで駆動するもの、モータで駆動するもの、また複数の球流路によりそれぞれ球送りするもの、等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−347211号公報
【特許文献2】特開平11−300000号公報
【特許文献3】特開平5−57052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら多くの様式においては、賞球と貸球の区別が不明瞭であり、遊技者に排出球が賞球であるのか貸球であるのかの事由報知や、賞球累積数情報を報知したいと意図する場合に難点があり、またホールの出球管理の上で必要な総払出賞球数の計数に課題を有していた。
【0005】
それらに関しては払出機構の制御時に出される信号から、ソフト的に計数管理する方法と、賞球と貸球の払出流路を区別して検知するという機構的な方法があるが、確実性に関する限り後者の機構的な方法が優っていると考えられ、例えば特開平11−347211号公報の発明のように、1つの球流路からの流下球を1つの球送り機構によって賞球路と貸球路に振分けるものが開示されている。しかしこの構造では、球送り部に球が入りかかったとき反転すると、球が分岐部の通路壁と球送り部の間に噛み込まれることも考えられ、そのような場合には払出の停止や機構の破損なども起こりかねない。
一方、タンクレールの末端などで球流路を分流し、その2流路をそれぞれ球送りする機構も開示されており、例えば特開平11−300000号公報などでは球流路を2つに分け、係止片をもって係止・貯留し、ソレノイドの駆動によって払出しを行なっている。しかしこの形態においては払出し個数を限定するような機構を流路上流に設ける必要があり、またその部分での該機構と球とのブリッジにも留意しなければならず、排出機構全体としてみると必然的に大型化を免れないという問題がある。そうした点の改善として、二条の球流路をそれぞれ賞球払出しと球貸しに充当して歯車タイプの払出し機構を有するものが特開平5−57052号公報に開示されているが、二つの球送り機構の駆動をそれぞれ対応するモータを二つ備えて別駆動のものとしたため、結果的に装置はやはり大型化し、同時にコスト高が問題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、賞球払出及び球貸しを行なう排出機構を備えた遊技機において、
前記排出機構は、
単一の駆動源としての球排出モータと、
前記球排出モータによって駆動され、賞球払出及び球貸しを行なうために遊技球を下流方向へ送る一対の球送り部材と、
前記一対の球送り部材に駆動力を伝達する伝達機構と、
前記一対の球送り部材によって排出される遊技球を検出する球排出センサ装置と、
前記球排出センサ装置によって検出される遊技球の数をカウントするために設けられる球排出センサ基板と、
前記球排出モータ、一対の球送り部材、伝達機構、球排出センサ装置及び球排出センサ基板を収容し、内部に賞球払出及び球貸しを行なうための遊技球が流下する二条の遊技球通路を一体的に形成してなるケースと、
を含む一つのユニットとして形成されていることを特徴とする遊技機である。
また、本明細書において参考的に開示する参考発明は、
賞球払出及び球貸しを行なう排出機構を備えた遊技機において、
前記排出機構は、
単一の駆動源としての球排出モータと、
前記球排出モータによって駆動され、賞球払出及び球貸しを行なうために遊技球を下流方向へ送る一対の球送り部材と、
前記一対の球送り部材に駆動力を伝達する伝達機構と、
前記一対の球送り部材によって排出される遊技球を検出する球排出センサ装置と、
前記球排出モータ、一対の球送り部材、伝達機構及び球排出センサ装置を収容し、内部に賞球払出及び球貸しを行なうための遊技球が流下する二条の遊技球通路を一体的に形成してなるケースと、
を含む一つのユニットとして形成されており、
前記駆動源は回転駆動源であり、順方向の駆動力と逆方向の駆動力の2方向の駆動力を発生することを特徴とする遊技機として構成してある。
【0007】
このようにすれば、単一の駆動源で賞球と貸球の両方の排出をなすことができるため、排出機構全体の大型化や部品増によるコストアップも回避しつつ賞球と貸球の確実な計数管理を実現することができる。また、排出機構を、球排出モータと、一対の球送り部材と、伝達機構と、球排出センサ装置と、これら球排出モータ、一対の球送り部材、伝達機構及び球排出センサ装置を収容し、内部に賞球払出及び球貸しを行なうための遊技球が流下する二条の遊技球通路を一体的に形成してなるケースとを含む一つのユニットとして形成しているので、装置の小型化とともに交換や整備を容易にすることができる。また、駆動源を順方向の駆動力と逆方向の駆動力の2方向の駆動力を発生する回転駆動源としているので、既存の部材や構成を好適に使用することが可能となる。
【0008】
そして、球送り部材を、賞球送り部材と貸球送り部材とし、伝達機構を、賞球送り部材に対し順方向駆動力を伝達する順方向伝達機構と、貸球送り部材に対し逆方向駆動力を伝達する逆方向伝達機構とすれば、既存の構成にそれぞれの球送り部材に対する伝達機構を付加するだけで良く、開発・製造のコストをアップさせずに済むことができる。また回転駆動源と球送り部材の位置関係の自由度が増し好適に各種の裏機構盤に対応する形状とする効果も望める。
【0009】
上記のような駆動力の伝達機構の具体的構成として、駆動源が順方向に駆動される際は順方向駆動力を賞球送り部材に伝達する一方で貸球送り部材に対しては順方向駆動力を伝達せず、駆動源が逆方向に駆動される際は、逆方向駆動力を貸球送り部材に伝達する一方で賞球送り部材に対しては逆方向駆動力を伝達しないワンウェイ噛合構造の伝達機構を提示できる。これによって、順方向駆動力により賞球払出しが行われ、逆方向駆動力により球貸しが行われるため、二つの流路に分けられた賞球と貸球の排出を、モータの反転駆動のみで明確に区別して実行することができる。
【0010】
ところで、ワンウェイ噛合構造は、駆動側から被駆動側への伝達は、噛合する方向へは有効であり逆向きは無効であるため、被駆動側が、逆方向即ち噛合する方向へと自転しようとすることに対しては、駆動側は噛合により係止するが、当然ながら、順方向すなわち噛合しない方向へは強い係止力を持たない。そこで排出機構に球送り制動機構を備えたものとすることが考えられる。これにより、排出機構の上流部分に貯留された球の自重によって、被駆動部材である球送り機構が押し回されるのを防止することができる。
【0011】
また、賞球払出し数と貸球数を明確に把握するために、駆動源が順方向駆動される際の賞球送り部材を通る球数を検出する賞球センサ部と、駆動源が逆方向に駆動される際の貸球送り部材を通る球数を検知する貸球センサ部を備える構成も考えられる。
【0012】
こうすれば課題の一つである、ホールの出球管理に必要とされる賞球数把握の明確化を実現する効果を兼ね備えた排出機構を有する遊技機とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上述のように構成された排出機構を備えた遊技機においては、単一の回転駆動源で賞球と貸球の両方の排出をなし、排出機構全体の大型化も部品増によるコストアップも回避しつつ賞球と貸球の確実な計数管理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の遊技機の正面図である。
【図2】遊技機の裏面図である。
【図3】裏機構盤の球流下部を示す図である。
【図4】球排出装置の分解斜視図である
【図5】球排出装置の垂直断面図である。
【図6】球送り部材の正面図である。
【図7】球送り動作に関する説明図である。
【図8】球と球送り部材に働く力を模式的に説明した図である。
【図9】球送り部材とカウントスイッチとの位置関係を示す模式図である。
【図10】球排出モータと球送り部材との位置関係を上方から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基いて説明する。図1に示すように、遊技機1は、裏面にガラス板が嵌められた前面枠2が中枠3に開閉可能に軸着され施錠装置5により開閉可能となっており、また、この中枠3が本体枠4に開閉可能に軸着されている。中枠3の下方には、上皿6及び下皿7が配置されている。上皿6及び下皿7には、それぞれに、遊技機1の内部から遊技球を排出するための排出口6a,7aがそれぞれ開口している。上皿6には複数の長孔を有するスピーカ面8が設けられており、その裏側には遊技状態に応じた効果音や警報音を発するブザーとしても兼用されているスピーカ(図示略)が装着されている。上皿6の上表面の右側には、操作パネル10が配置されている。操作パネル10にはプリペイドカードの残高表示とエラー表示を行う表示部と、遊技球の貸球を行う球貸しボタン10aやカード返却ボタン等各種操作ボタンが備えられている。下皿7には、上皿6から供給される遊技球を発射するための発射装置ユニット107(図2参照)を操作する発射ハンドル11が設けられている。この発射ハンドル11には遊技者がタッチしていることを検出するタッチスイッチ11aが装着され、発射ハンドル11の近傍には発射停止を一時的に指令する発射停止スイッチ11bが設けられている。
【0016】
前面枠2の上部には、枠飾りランプ12,13,14,15が設けられ、これらに対応して、枠飾りランプ基板16が設置されている。それらの左側上方には、賞球表示LED17及び賞球表示LED基板18が、右側上方にはストップ表示LED19及びストップ表示LED基板20が位置しており、これらは中枠3に装着されている。スピーカ面8の左方裏側には音量スイッチ基板(図示略)さらに、下皿7の排出口7aの内部には下皿満タンスイッチ(図示略)が設けられており、この下皿満タンスイッチは下皿7内の遊技球量が過度に増えたことを検出する。
【0017】
中枠3には、遊技盤24が背面側からが着脱自在に固定されている。遊技盤には外レール53、内レール54、ファール球防止部材52及び返しゴム56によって遊技領域25が区画形成されている。遊技領域25には、センター役物、普通図柄作動ゲート、液晶表示盤を含み構成された特別図柄表示装置28、条件装置として動作しアタッカーとも呼ばれる大入賞装置、第1種始動口(普通電動役物)、普通入賞口などの各種入賞口29、アウト口50などが設けられている。
【0018】
次に遊技機1の裏側構造を、図2を参照して説明する。中枠3は本体枠4にヒンジ60により開閉自在に支持されている。中枠3にはヒンジ61により機構盤62が着脱自在に固定されている。機構盤62は、中央部に特別図柄表示装置33を格納した角型の開口部と、その特別図柄表示装置33を蔽う裏蓋102を備えている。裏蓋102の下側に主制御部140が設けられている。主制御部140はユニット化されたもので、機構盤62の下側の部位に外付けされている。主制御部140の左側に発射装置制御部103、発射制御集合中継基板106が各々設けられている。発射装置制御部103には、タッチ感度調整つまみ104、球飛び強弱調整つまみ105が設けられている。機構盤62の左下側に発射装置ユニット107が設けられている。
【0019】
機構盤62の上部左側には、遊技球の荷重の有無によって遊技球の有無を検知するタンク球切れ検知スイッチ63を有する賞球タンク64が備えられている。この、賞球タンク64の下方にはタンクレール65が装着され、そのタンクレール65の右端は球抜き通路120に連通し(図3参照)、それを開閉する球抜きレバー66が設けられている。タンクレール65の右端の開口部85は、球排出装置99などを含み上皿導入口68及び下皿導入口69に到る球流下部70を備えている。(図3参照)
【0020】
機構盤62の右側には枠状態表示器108を備えた枠制御部150が設けられている。枠状態表示器108は、補給球詰まり、下受け皿満タン、主電源電圧異常、発射停止、主基板通信異常、球排出モータ異常などを7セグメントLED表示器を用いて表示するものである。枠制御部150は主制御部140の右下に位置している。
【0021】
機構盤62の右上隅部には、外部情報端子部111、電源ターミナル基板160及び電源ケーブル116などが設けられている。枠制御部150から接続ケーブル110が上方に延び出し、電源ケーブル115を備えたプリぺイドカードユニット22に接続されている。機構盤62の下側に下皿用球通路部材118が設けられている。
【0022】
なお、図2の機構盤62右側面の下端側には、枠制御部150に備えられた押圧式のリセットスイッチ119が露出しているが、このリセットスイッチ119は一般的な自動復帰式の手動スイッチが採用されている。また、上述した以外の構成についても一般的なものが採用されているため、ここではそれらの図示や詳細な説明は省略する。
【0023】
次に図3を参照して球流下部70の構成を説明する。球流下部70には、賞球通路73及び貸球通路74が形成されるとともに、球排出装置99が装着されている。賞球通路73及び貸球通路74は機構盤62の前後方向に区画された2条の樋からなり、上部では各々上下にほぼ直線状に形成されて、互いにほぼ平行に延びており、その上端は、タンクレール65の右端下部の開口部85に接続されている。また、賞球通路73及び貸球通路74の上端部近傍の流路途中には、機構盤から着脱可能に嵌着された光センサ式の補給球切れ検知スイッチユニット86が配設されている。補給球切れ検知スイッチユニット86は押え部材86aによって支持されている。なお、補給球切れ検知スイッチには、球切れスイッチレバーの揺動によってON/OFFするような接触式の補給球切れ検知スイッチを採用しても良い。また、本実施形態においては、補給球切れ検知スイッチユニット86の光センサは、賞球通路73及び貸球通路74毎に別個に設置されており、賞球通路73及び貸球通路74の遊技球の球切れは個別に検出される。
【0024】
一方、賞球通路73及び貸球通路74の下方は、球排出装置99に接続されている。図4に示すように、上記球排出装置99は、直方体状のケース77内に、球排出モータ80、球送り部材76、モータ回転角検出歯車81、モータ回転角検出センサ82、賞球カウントスイッチ78、貸球カウントスイッチ79(図5参照)及び球排出装置センサ基板96を収容している。球送り部材76は賞球通路73に装着される賞球送り部材76aと、貸球通路に装着される貸球送り部材76bである。また、球排出モータ80は正逆回転可能なステッピングモータであり、前述の主制御部140及び枠制御部150の指令に基づいて動作する。
【0025】
図5に示すように、ケース77には二条の遊技球通路75が形成されている。この遊技球通路75は上端部及び下端部で賞球通路73及び貸球通路74に連通している。また図9に示すように遊技球通路75は途中に屈曲部75aを経たのち、上流側通路の延長に近い方向に戻りつつ、出口に通じ下流の賞球通路73及び貸球通路74に通じている。
【0026】
賞球送り部材76a及び貸球送り部材76bの下流側通路直近には、図9に示すように、排出される球を捉えて検出するような位置に、賞球カウントスイッチ78及び貸球カウントスイッチ79が装着され、球排出装置センサ基板96によって、各々の球排出数をカウントしている。賞球カウントスイッチ78及び貸球カウントスイッチ79は略コの字型に形成され、両端凸部に設けられた一対の投光器と中央凹部に設けられた受光器とを有する光センサが用いられている。
【0027】
球流下部70の右側には球抜き通路120が形成されており、この球抜き通路120はタンクレール65の下流側端部から分岐している。また、球流下部70の下流領域には、下皿7に通じる下皿導入口69が形成され、その途中に上皿6に通じる上皿導入口68が開口している。流下球は上皿6に優先して排出され、上皿6が満杯になると下皿賞球を下皿7に溢流させて、賞球を振り分ける。
【0028】
遊技球は、賞球タンク64、タンクレール65を経て、球流下部70に供給される。球流下部70において遊技球は、球切れ検知スイッチユニット86の内部通路を経て賞球通路73及び貸球通路74を流下する。その後賞球通路73及び貸球通路74の屈曲部を通過した遊技球は球排出装置99に達し、遊技球通路75に流入して球送り部材76に接する。後続の遊技球は先行の遊技球上に載置され、先行の遊技球の上に順に堆積する。また、賞球通路73及び貸球通路74の長さは、賞球送り部材76a及び貸球送り部材76bから球切れスイッチレバー90までの間の遊技球数が25個以上となるよう設定されている。この個数は単位貸球数(単位球貸し金額(ここでは100円)を球単価(ここでは4円)で除した値)に一致している。
【0029】
図6は球送り部材76の正面図である。球送り部材76は合成樹脂の成形品であり、ボス76cと球送り羽根76dからなる。一方、球排出モータ80の出力を伝達するワンウェイ駆動伝達部80eは、軸心80aと中間伝達部80cとそれぞれ大きさの異なる伝達球80b、及び伝達球80bを収納して一端を狭く、他端を広く形成し、広く形成した端には弾性部材を配した伝達球収納部80dから構成されている。
【0030】
このワンウェイ駆動伝達部80eは球排出モータ80が右回りに駆動すると、軸心80aが中間伝達部80cとともに回転し、大きさの順にならんだ伝達球80aを狭い方の端に押し付け、それによってボス部76cとの摩擦により球送り部材76を回転させる。逆に球排出モータ80を左回りに駆動すると、伝達球は広い方に転がされるとともに端部に備えられた弾性部材によって遊動するため、駆動力はボス部76cには伝達されず球送り部材76は静止したままとなる。このような構成のいわゆるワンウェイ歯車によって、賞球送り部材76a球排出モータ80の順方向の駆動力だけを伝達されるように、逆に貸球送り部材76bは球排出モータ80の逆方向の駆動力だけを伝達されるように球排出モータ80の出力軸に噛合装着されている。
【0031】
また賞球通路73及び貸球通路74は球排出装置99の直前において屈曲しているため、賞球通路73及び貸球通路74に堆積した遊技球の重量は多方向に分散され、球送り部材76に過度の負荷が作用することが防止されている。さらに球排出装置99内部の遊技球通路75が球送り部材76と接触する直前で横向きの通路形状とされているため、球は球送り部材76に接触した時点では、図8(a)に示すような力を後続球と通路壁及び球送り部材76から受けている。図8(b)はこれらの力の和を模式的に示したものである。このように球送り部材に戴置された球が後続球と通路壁から受ける力の合力によって、球送り部材を払い出し回転方向とは逆に付勢するような通路形状として構成してあるため、球重量の負荷による球送り部材76を押し回しすることを防止している。なお、球送り部材の押し回しの防止に関しては、球送り部材76に定常的に摩擦力を働かせるなどの手法も可能であり、それらを単独で用いることも、本実施例の通路形状と併せて用いることも可能である。また、被駆動部が駆動に因らず自転してしまうことを防止できるワンウェイ噛合構造を採用した場合には、これら球送り部材76が球による押し回されるのを防止する構造を省略することもできる。
【0032】
なお、図10は球排出モータ80、賞球ならびに貸球流路に装着される球送り部材76を流路上方から見た模式図である。本実施例においては(a)の形態となっているが、(b)のように外接する歯車機構を経て駆動力を伝達する機構や、(c)のように、単一の球送り歯車を正逆回転して二つの排出装置を択一駆動する機構、さらには(d)のように、球送り部材の軸部にワンウェイの伝達機構を設けるのでなく、球排出モータ80と軸着する2本の駆動軸をワンウェイ噛合とし、球排出モータ80の正逆回転にそれぞれ対応して駆動するように構成するなど、さまざまな例が考えられるが、これらは装着すべき機構盤等に応じて適宜対応して設計製作することが可能である。
【0033】
次に払出し動作について説明する。賞球排出が行われる場合には、球排出装置99の球排出モータ80は、枠制御部150により正方向に駆動され、賞球送り部材76aが図7(a)に示すように反時計回りに回転する。賞球送り部材76aの回転に伴い、賞球通路73の遊技球は払出し機構の下流の賞球通路73に放出される。放出された遊技球は、その直後に賞球カウントスイッチ78を通過して個々に検出される。そして、これらの遊技球は、球流下部70から流出して上皿導入口68から上皿6に放出される。
【0034】
ところで、上記の払出し動作時において、制御は次のようになされている。まず主制御部140が各種入賞口29への入賞球を検知すると、賞球数情報を枠制御部150へ送信し、所定数の賞球の排出を要求する。この時、主制御部140から取得されたコマンドにより、6個、15個の順で払い出すべき賞球数が確認されて、6個、15個、10個のいずれかの賞球数に対応したメモリが「1」加算される。枠制御部150は、主制御部140から要求された賞球数に応じて、球排出モータ80を正方向に駆動させる。排出された賞球は賞球カウントスイッチ78によって検出され、検出結果が主制御部140へ送られる。主制御部140は、賞球カウントスイッチ78の計数値に基づいて、要求通りの数の賞球が排出されたか否かを確認し、処理を終了する。枠制御部150も排出数を確認し、排出数が主制御部140からの要求数に対して不足している場合は、枠制御部150は球排出モータ80を、排出数管理情報に従って、図7(a)のように順方向に再試行動作させ賞球送り部材76aだけを駆動して、不足分の賞球排出を行い、処理を終了する。その排出数管理は具体的には、賞球スイッチ情報がONになっているか否かを判断し、ONであれば排出総個数メモリを「1」減算し、排出カウンタが「0」になったか否かが判断され「0」になっていれば、排出数が主制御部140からの要求数に対して充足している事を意味し、賞球排出中フラグがクリアされて処理を終了する。またモータ回転角検出センサが検出するモータ回転角検出歯車81の回転を検出して、その結果とも照合している。
【0035】
一方、球貸しが行われる場合には、操作パネル10の球貸ボタン10aが押下されると、枠制御部150が球貸要求を受信する。枠制御部150は、25個の貸球が排出されるよう、球排出モータ80を逆方向に駆動させる。排出された貸球は貸球カウントスイッチ79によって検出され、枠制御部150は貸球カウントスイッチ78の計数値に基づいて、要求通りの数の貸球が排出されたか否かを確認する。検出された貸球数が25個に満たない場合には、枠制御部150は球排出モータ80を、図7(b)のように賞球払出しとは逆方向に回転し、賞球払出しの場合と同様に排出数が主制御部140からの要求数に対して不足している場合は、枠制御部150は球排出モータ80を排出数管理情報に従って再試行動作させ、貸球送り部材76bの方だけで貸球を排出して不足分の貸球排出を行い、処理を終了する。例えば500円分の球貸しが行われる場合は、上述の動作が5回繰返される。検出された貸球数が25個以上の場合には、処理を終了する。なお、球貸しの場合は、球排出モータ80の回転量は単位貸球数(ここでは25個)に応じて決定される。さらに、100円分を越える球貸しが行われる場合には、25個の球貸しを一単位とした複数単位の球貸しが行われる。
【0036】
このように賞球排出及び球貸しの制御は、主制御部140によって行われ、球貸処理は賞球排出処理に優先して行われる。つまり、例えば複数の入賞球が記憶されるとともに、記憶された入賞球に対応する賞球排出が行われている最中に球貸しの必要が生じた場合には、その時点で排出中の単位賞球数の賞球排出が終了した後に球貸しが実行され、球貸し完了後に、残りの入賞球に対応する賞球排出が再開される。
【符号の説明】
【0037】
1 遊技機
10 操作パネル
10a 球貸しボタン
70 球流下部
73 賞球通路
74 貸球通路
76 球送り部材
76a 賞球送り部材
76b 貸球送り部材
78 賞球カウントスイッチ
79 貸球カウントスイッチ
80 球排出モータ
80e ワンウェイ駆動伝達部
99 球排出装置
140 主制御部
150 枠制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
賞球払出及び球貸しを行なう排出機構を備えた遊技機において、
前記排出機構は、
単一の駆動源としての球排出モータと、
前記球排出モータによって駆動され、賞球払出及び球貸しを行なうために遊技球を下流方向へ送る一対の球送り部材と、
前記一対の球送り部材に駆動力を伝達する伝達機構と、
前記一対の球送り部材によって排出される遊技球を検出する球排出センサ装置と、
前記球排出センサ装置によって検出される遊技球の数をカウントするために設けられる球排出センサ基板と、
前記球排出モータ、一対の球送り部材、伝達機構、球排出センサ装置及び球排出センサ基板を収容し、内部に賞球払出及び球貸しを行なうための遊技球が流下する二条の遊技球通路を一体的に形成してなるケースと、
を含む一つのユニットとして形成されていることを特徴とする遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−200713(P2011−200713A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153533(P2011−153533)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【分割の表示】特願2009−264823(P2009−264823)の分割
【原出願日】平成12年5月19日(2000.5.19)
【出願人】(000204262)タイヨーエレック株式会社 (1,095)
【Fターム(参考)】