遊星差動ネジ型回転直動変換機構及びアクチュエータ
【課題】作動効率低下や耐久性低下を招くことなく部品点数低減や軽量化できる遊星差動ネジ型回転直動変換機構及びこの回転直動変換機構を備えたアクチュエータ。
【解決手段】ナット4から受ける回転力は前方プラネタリギヤ30が全プラネタリシャフト7,8に十分に伝達する。後方プラネタリギヤ32は一部のプラネタリシャフト7のみに存在するが、リテーナ12にて全ての後方軸部28bが回転可能に支持され全プラネタリシャフト7,8は相対的位相関係が保持されているので、全プラネタリシャフト7,8は常に均一な状態で過大な傾倒が抑制される。このように簡易な構成のリテーナ12にて一部の後方プラネタリギヤ32を省略できることで回転直動変換機構2は作動効率低下や耐久性低下を招くことなく部品点数低減あるいは軽量化ができる。これをアクチュエータとして組み込んだ内燃機関に対しても部品点数低減あるいは軽量化に貢献できる。
【解決手段】ナット4から受ける回転力は前方プラネタリギヤ30が全プラネタリシャフト7,8に十分に伝達する。後方プラネタリギヤ32は一部のプラネタリシャフト7のみに存在するが、リテーナ12にて全ての後方軸部28bが回転可能に支持され全プラネタリシャフト7,8は相対的位相関係が保持されているので、全プラネタリシャフト7,8は常に均一な状態で過大な傾倒が抑制される。このように簡易な構成のリテーナ12にて一部の後方プラネタリギヤ32を省略できることで回転直動変換機構2は作動効率低下や耐久性低下を招くことなく部品点数低減あるいは軽量化ができる。これをアクチュエータとして組み込んだ内燃機関に対しても部品点数低減あるいは軽量化に貢献できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンシャフト、プラネタリシャフト及びナットを備えてネジ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構に関するものであり、更にこの遊星差動ネジ型回転直動変換機構を備えたアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コントロールシャフトのスライドによって、バルブ特性の一つであるバルブ作用角を変更する内燃機関可変動弁機構用のアクチュエータが知られ、このようなアクチュエータにおいては遊星差動ネジ型回転直動変換機構を備えたものが知られている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0003】
これら特許文献に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、プラネタリシャフトにはナットからの回転力を平歯ギヤであるプラネタリギヤにて受けて、このプラネタリギヤと一体とされているプラネタリネジを回転させて、サンシャフトに軸方向への直動推進力を与えている。
【0004】
特に特許文献1では、一端側のプラネタリギヤについては回転力をプラネタリネジに伝達させるためにプラネタリネジに対して自由回転しないように固定されているが、他端側のプラネタリギヤについてはプラネタリネジに対して自由回転可能に軸支されている。これは他端側についてはサンシャフト周方向での位相位置に余裕を持たせてプラネタリシャフトの公転状態に或る程度の遊びを与えることが、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の作動効率などの観点から好ましいからである。
【0005】
特許文献2,3では、サンシャフト周方向でのプラネタリシャフトの過剰な傾倒及びプラネタリシャフト間での不均一な傾倒が作動効率低下や耐久性低下を招くことから、全てのプラネタリシャフトを2つのリテーナで相対的位相関係を保持したり、厚みのあるリテーナにて保持することで、過剰な傾倒抑制あるいは補償する機能を設けている。
【0006】
特許文献4では、プラネタリシャフトの過剰な傾倒及びプラネタリシャフト間での不均一な傾倒抑制のために、サンシャフトとナットとの間に複雑な構成の軸受部材を配置して、プラネタリシャフトを軸支している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−2588号公報(第10−13頁、図5,6)
【特許文献2】特開2007−192388号公報(第6−10頁、図1−7)
【特許文献3】特開2007−187228号公報(第6−8頁、図2−4)
【特許文献4】特開2009−115194号公報(第8−10頁、図2−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしいずれの遊星差動ネジ型回転直動変換機構も、全てのプラネタリシャフトにプラネタリギヤが2つ必要であったり(特許文献1)、過剰な傾倒抑制のためにリテーナの複雑化・重量化が生じていたり(特許文献2〜4)することで、部品点数増加や重量化を招いていた。
【0009】
本発明は、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、部品点数低減あるいは軽量化できる遊星差動ネジ型回転直動変換機構、及びこの遊星差動ネジ型回転直動変換機構を備えたアクチュエータを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構は、サンネジとサンギヤとを有するサンシャフト、プラネタリネジとプラネタリギヤとを有して前記サンシャフトの周上に配列された複数のプラネタリシャフト、及び内ネジと内ギヤとを有して前記プラネタリシャフトの配列外側に配置されたナットを備え、ネジ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構であって、前記プラネタリギヤには、全ての前記プラネタリシャフトに設けられて前記プラネタリネジと一体に回転するシャフト一体回転ギヤと、一部の前記プラネタリシャフトに設けられて前記プラネタリネジに対して自由回転する自由回転ギヤとの2種類が存在すると共に、前記サンシャフトの周上にて全ての前記プラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持するリテーナが備えられたことを特徴とする。
【0011】
シャフト一体回転ギヤは全てのプラネタリシャフトに設けられていることにより、全てのプラネタリシャフトはそのプラネタリネジに十分に回転力を伝達できる。
そして全てのプラネタリシャフトはリテーナにてサンシャフトの周上にてプラネタリシャフト間の相対的位相関係が保持されていることから、自由回転ギヤは一部のプラネタリシャフトに存在すれば良く、他のプラネタリシャフトについては省略できる。
【0012】
すなわち自由回転ギヤが存在する一部のプラネタリシャフトにより、リテーナを介して自由回転ギヤが存在しない他のプラネタリシャフトに対しても、過剰な傾倒を防止しつつ、サンシャフト周方向での位相位置に余裕を持たせてプラネタリシャフトの公転状態に或る程度の遊びを与えることができる。しかもこのような過剰傾倒防止効果と遊びとを全プラネタリシャフトに対して均一状態で与えることができる。
【0013】
したがって自由回転ギヤが設けられていないプラネタリシャフトが一部に存在しても遊星差動ネジ型回転直動変換機構の作動効率を低下させることがない。
そしてリテーナ自身は、プラネタリシャフト間での相対的位相関係を保持すれば良いことから、厚くしたり複雑な構成を採用する必要はない。
【0014】
このことにより本発明の遊星差動ネジ型回転直動変換機構は、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、かつ部品点数低減あるいは軽量化が可能となる。
請求項2に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトは前記サンネジの軸方向両側に前記サンギヤが配置され、前記ナットは前記内ネジの軸方向両側に前記内ギヤが配置され、全ての前記プラネタリシャフトは前記プラネタリネジの一端側に前記シャフト一体回転ギヤが配置され、一部の前記プラネタリシャフトは前記プラネタリネジの他端側に前記自由回転ギヤが配置されていることを特徴とする。
【0015】
サンシャフト及びナットにおけるネジとギヤとの配置は、ネジの両端にギヤを配置する構成とし、プラネタリシャフトは、全て一端側にシャフト一体回転ギヤが配置され、一部のプラネタリシャフトの他端側に自由回転ギヤが配置された構成とする。このことで全てのプラネタリシャフトにおいて、その公転状態における或る程度の遊びと過剰な傾倒抑制効果とをより適切なものとできる。こうして遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、かつ部品点数低減あるいは軽量化できる効果を高めることができる。
【0016】
請求項3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項2に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、プラネタリネジにおける前記他端側又は前記他端側の近傍にて、全ての前記プラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持していることを特徴とする。
【0017】
更にリテーナは、全てのプラネタリシャフトのプラネタリネジにおける他端側すなわち自由回転ギヤが配置されている側あるいはその近傍にて、これらのプラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持していることにより、前述したごとくの或る程度の遊びと過剰な傾倒抑制効果とを十分にかつ均一に生じさせることができる。
【0018】
請求項4に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記自由回転ギヤが配置されている前記プラネタリシャフトに対しては、前記プラネタリネジと前記自由回転ギヤとの間にて前記プラネタリシャフトを回転可能に支持し、前記自由回転ギヤが配置されていない前記プラネタリシャフトに対しては、前記プラネタリネジから突出している軸部にて前記プラネタリシャフトを回転可能に支持していることを特徴とする。
【0019】
リテーナは、このようにして全てのプラネタリシャフトに対して回転可能に支持することで全てのプラネタリシャフトについて前述したごとくの或る程度の遊びと過剰な傾倒抑制効果とを十分にかつ均一に生じさせることができる。
【0020】
請求項5に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、この中心孔を前記サンシャフトが貫通する円環体であり、前記中心孔の周りに前記プラネタリシャフトを回転可能に支持する支持孔を形成していることを特徴とする。
【0021】
このようにリテーナは、円環体に上述した支持孔を形成させたものにより容易に実現できる。したがってリテーナは厚くしたり複雑な構成とする必要はない。このことにより軽量化あるいは部品点数低減ができる遊星差動ネジ型回転直動変換機構を実現できる。
【0022】
請求項6に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1〜5のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトは6本が設けられ、この内の3本に前記自由回転ギヤが存在し、他のプラネタリシャフトは前記自由回転ギヤが存在しないことを特徴とする。
【0023】
このように6本のプラネタリシャフトの内で3本には自由回転ギヤを配置するが、他の3本は省略することで、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、部品点数低減あるいは軽量化できる。
【0024】
請求項7に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1〜5のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトは9本が設けられ、この内の3本又は6本に前記自由回転ギヤが存在し、他のプラネタリシャフトは前記自由回転ギヤが存在しないことを特徴とする。
【0025】
このように9本のプラネタリシャフトの内で3本又は6本に自由回転ギヤを配置し、他の6本又は3本は省略することで、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、部品点数低減あるいは軽量化できる。
【0026】
請求項8に記載のアクチュエータは、回転駆動源の回転を直線運動に変換して出力するアクチュエータであって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構を備え、前記ナットを前記回転駆動源にて回転させることにより、前記サンシャフトに接続された部材を直線運動させることを特徴とする。
【0027】
請求項1〜7にて述べた遊星差動ネジ型回転直動変換機構のいずれかを備えるアクチュエータとすることで、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、かつ部品点数低減あるいは軽量化できるアクチュエータとすることができる。
【0028】
請求項9に記載のアクチュエータでは、請求項8に記載のアクチュエータにおいて、前記部材は軸方向にスライドさせることによりバルブ特性を変更する内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトであることを特徴とする。
【0029】
前述したごとくアクチュエータは作動効率低下や耐久性低下を招くことなく部品点数低減あるいは軽量化できるので、内燃機関の部品点数低減あるいは軽量化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構の斜視図。
【図2】同じく正面図。
【図3】同じく右側面図。
【図4】同じく左側面図。
【図5】同じくカラーを除いて示す部分破断斜視図。
【図6】同じくプラネタリシャフトを除いて示す遊星差動ネジ型回転直動変換機構の部分破断斜視図。
【図7】実施の形態1のプラネタリシャフトとリテーナとの関係を示す正面図。
【図8】同じく左側面図。
【図9】同じく斜視図。
【図10】(a)〜(d)実施の形態1の一方のプラネタリシャフトの構成説明図。
【図11】実施の形態1の一方のプラネタリシャフトの分解斜視図。
【図12】実施の形態1の他方のプラネタリシャフトの正面図。
【図13】(a)〜(c)実施の形態1のリテーナの構成説明図。
【図14】実施の形態2のプラネタリシャフトとリテーナとの構成の一例を示す斜視図。
【図15】実施の形態2のプラネタリシャフトとリテーナとの構成の他の一例を示す斜視図。
【図16】(a)〜(c)実施の形態3のリテーナの構成の一例を示す構成説明図。
【図17】(a)〜(c)実施の形態3のリテーナの構成の他の一例を示す構成説明図。
【図18】実施の形態3のサンシャフト、プラネタリシャフト及びリテーナによる構成の一例を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[実施の形態1]
図1は内燃機関の可変動弁機構に用いられるアクチュエータに組み込まれる遊星差動ネジ型回転直動変換機構(以下「回転直動変換機構」と略す)2の斜視図、図2は正面図、図3は右側面図、図4は左側面図、図5は部分破断斜視図である。
【0032】
回転直動変換機構2は、ナット4、サンシャフト6、及び複数のプラネタリシャフト7,8を主体として構成されている。ナット4の前端側中央からはサンシャフト6の先端が突出している。ナット4の後端側はカラー10により閉塞されている。尚、図5ではカラー10を外してナット4を中心軸にて縦断して示している。
【0033】
ナット4の内部において、複数のプラネタリシャフト7,8、ここでは2種類のプラネタリシャフト7,8であり合計で6本がサンシャフト6の周上に配列されている。この6本のプラネタリシャフト7,8は、一方の種類の3本のプラネタリシャフト7がサンシャフト6の周上に均等の位相間隔(120°)にて配列され、更に他方の種類の3本のプラネタリシャフト8についてもサンシャフト6の周上に均等の位相間隔(120°)にて配列されている。
【0034】
2種類のプラネタリシャフト7,8は、図4に示したごとく40°の間隔に近接してペアが形成されており、この40°間隔の2種類のプラネタリシャフト7,8のペアが80°間隔にてサンシャフト6の周上に均等の位相間隔(120°)にて配列された状態となっている。尚、全てのプラネタリシャフト7,8は、後述するリテーナ12により前述した各位相間隔を維持することで、これらプラネタリシャフト7,8間の相対的位相関係を保持した状態にて回転可能に支持されている。
【0035】
図6にプラネタリシャフト7,8を除いた状態、すなわちサンシャフト6をナット4の中心軸位置に位置させた状態での回転直動変換機構2の斜視図を示す。図示するごとく、ナット4は、内ネジ14と、この内ネジ14の両側にてネジが形成されていない内周面に固定されたリングギヤ16,18(内ギヤに相当)とを備えている。内ネジ14はここでは5条からなる左ネジである。
【0036】
サンシャフト6は、サンギヤ(ここでは前方平歯ギヤ20、後方平歯ギヤ22)、前方平歯ギヤ20と後方平歯ギヤ22との間に設けられたサンネジ24、及びナット4より飛び出した位置にストレートスプライン26を備えている。サンネジ24は、ここでは4条からなる右ネジである。
【0037】
図5に示したごとくプラネタリシャフト7,8は、ナット4及びサンシャフト6と軸方向を同一にし、ナット4とサンシャフト6との間に、リテーナ12にて回転可能に保持された状態で配列されている。
【0038】
リテーナ12にて相対的位相関係が保持されている6本のプラネタリシャフト7,8の配列状態を、図7〜9に示す。図7はその正面図、図8はその左側面図、図9は斜視図である。
【0039】
ここで一方の種類のプラネタリシャフト7は、プラネタリネジ28、その一端側に前方プラネタリギヤ30、及び他端側に後方プラネタリギヤ32を備えたものであり、他方の種類のプラネタリシャフト8は、プラネタリネジ28、及びその一端側のみに前方プラネタリギヤ30を備えたものである。
【0040】
前方プラネタリギヤ30及び後方プラネタリギヤ32を備えたプラネタリシャフト7の構成を図10に、その分解斜視図を図11に、前方プラネタリギヤ30のみを備えたプラネタリシャフト8の構成を図12に示す。ここで図10の(a)はプラネタリシャフト7の正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は斜視図である。
【0041】
一方の種類のプラネタリシャフト7は、プラネタリネジ28と前方プラネタリギヤ30とは一体に形成されている。あるいはプラネタリネジ28に形成された前方軸部28aを前方プラネタリギヤ30の中心嵌合孔に嵌合することにより前方プラネタリギヤ30をプラネタリネジ28の前方軸部28aに固定した状態に形成されている。したがって前方プラネタリギヤ30はプラネタリネジ28と一体に回転するシャフト一体回転ギヤに相当する。尚、プラネタリネジ28は1条からなる左ネジである。
【0042】
後方プラネタリギヤ32については、図11に示したごとくプラネタリネジ28の後方軸部28bに対して自由回転可能に軸支されている。したがって後方プラネタリギヤ32はプラネタリネジ28に対して自由回転する自由回転ギヤに相当する。
【0043】
他方の種類のプラネタリシャフト8は、前述した一方の種類のプラネタリシャフト7におけるプラネタリネジ28及び前方プラネタリギヤ30からなる構成と同一形状であり、プラネタリネジ28の後方軸部28bには後方プラネタリギヤ32は取り付けられていない構成である。したがって、この他方の種類のプラネタリシャフト8については、前記一方の種類のプラネタリシャフト7におけるプラネタリネジ28と前方プラネタリギヤ30とからなる構成がそのまま利用されている。
【0044】
図13にリテーナ12の構成を示す。図13の(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。リテーナ12は中心孔として中央にサンシャフト6が貫通できる貫通孔12aを有する板状の円環体をなし、貫通孔12aの周りに、各プラネタリシャフト7,8における後方軸部28bを軸支するための支持孔12bが9つ等位相間隔、ここでは40°毎に設けられている。
【0045】
この9つの支持孔12bの内で6つが前記プラネタリシャフト7,8の3ペアに対応して軸支のために用いられる。これら軸支に用いられる支持孔12bの間には、プラネタリシャフト7,8を支持していない支持孔12bが3つ存在する。このことにより前述した2種類のプラネタリシャフト7,8が、それぞれの間の相対的位相関係を保持してサンシャフト6の周上に配置されることになる。
【0046】
上述した各構成が、図5に示したごとくナット4とサンシャフト6との間に配置される。すなわち、プラネタリシャフト7,8の前方プラネタリギヤ30がナット4の内面に固定されている前方リングギヤ16に噛み合わされ、プラネタリシャフト7の後方プラネタリギヤ32がナット4の内面に固定されている後方リングギヤ18に噛み合わされる。このことによりプラネタリシャフト7,8とナット4との間の噛合状態が形成される。
【0047】
そしてプラネタリシャフト7,8の前方プラネタリギヤ30はサンシャフト6の前方平歯ギヤ20と噛み合わされ、プラネタリシャフト7の後方プラネタリギヤ32はサンシャフト6の後方平歯ギヤ22と噛み合わされる。このことによりプラネタリシャフト7,8とサンシャフト6との間に噛合状態が形成される。
【0048】
尚、サンシャフト6のストレートスプライン26は回転直動変換機構2がアクチュエータ内に配置されて内燃機関に固定される際には、アクチュエータのケースの開口部分に形成されているストレートスプラインに噛み合わされる。したがってサンシャフト6は、ストレートスプライン26にてケース側のストレートスプラインに対して摺動することで軸方向移動は許されるが軸回転は阻止されることになる。
【0049】
前述のごとく噛み合っているナット4の内ネジ14とプラネタリシャフト7,8のプラネタリネジ28とは、ピッチ円径の比とネジ条数の比とが同じく「5:1」である。したがってプラネタリシャフト7,8がナット4の内周面にて転動により自転しつつ公転してもナット4とプラネタリシャフト7,8との間で軸方向での相対的移動は生じない。
【0050】
一方、プラネタリシャフト7,8のプラネタリネジ28とサンシャフト6のサンネジ24とはピッチ円径比とネジ条数比とが異なる。すなわちピッチ円径の比は「1:3」であるが、プラネタリネジ28のネジ条数は1条であり、サンネジ24のネジ条数は4条であるので、ネジ条数比は「1:4」である。このためプラネタリシャフト7,8がナット4の回転によりサンシャフト6の周上で転動により自転しつつ公転すると、前述したごとく軸回転が規制されているサンシャフト6は、ナット4とプラネタリシャフト7,8とに対して軸方向での相対的移動を生じる。すなわち差動を生じる。
【0051】
尚、ナット4の回転は、例えばナット4の外面にロータを取り付け、ナット4の周辺にステータを配置して電動モータ(回転駆動源に相当)として構成することにより可能である。すなわちステータに対して電流制御を実行してロータを介してナット4に回転力を発生させることにより電導アクチュエータとして機能させることが可能である。
【0052】
そして回転直動変換機構2が前述したごとく構成されていることにより、ナット4が外部から受けた回転力は、前方リングギヤ16からプラネタリシャフト7,8の前方プラネタリギヤ30に伝達される。そして前方プラネタリギヤ30と一体のプラネタリネジ28がサンシャフト6のサンネジ24とナット4の内ネジ14との間で転動する動力となる。
【0053】
このことにより前述した差動が生じて、ナット4に対する回転力が、サンシャフト6を軸方向へ直線運動させる駆動力となる。すなわち電動モータの回転運動を直線運動に変換させることができる。
【0054】
この回転直動変換時において、一方の種類のプラネタリシャフト7における後方プラネタリギヤ32は、プラネタリネジ28及び前方プラネタリギヤ30に対しては自由回転状態である。このため一方の種類のプラネタリシャフト7については、過剰な傾倒を抑制しつつ、その公転状態に或る程度の遊びを与えられる。
【0055】
そして全てのプラネタリシャフト7,8は、リテーナ12により、これらの間での相対的位相関係が保持された状態で回転直動変換時に転動することになる。
尚、この回転直動変換機構2が用いられるアクチュエータは内燃機関の可変動弁機構に適用している。したがって電動モータの制御回路にて、ナット4の外側には配置した回転センサにて検出したデータから、サンシャフト6のスライド量を求め、このスライド量が目標値を示すようにナット4の回転量を調節することができ、内燃機関を制御できる。
【0056】
サンシャフト6の先端には可変動弁機構側のコントロールシャフト(請求項において、サンシャフトに接続された部材に相当)が接続されるので、前述した制御回路によりコントロールシャフトの軸方向位置が調節できる。このことにより、バルブ特性、例えば吸気バルブのバルブ作用角を調節でき、吸入空気量を制御して内燃機関の出力を調節できる。
【0057】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(1)2種類のプラネタリシャフト7,8は共にシャフト一体回転ギヤである前方プラネタリギヤ30をプラネタリネジ28の一端側に設けている。このことによりナット4から受ける回転力は、前方リングギヤ16を介して、6本全てのプラネタリシャフト7,8に十分に伝達される。したがって全てのプラネタリシャフト7,8におけるプラネタリネジ28により、サンシャフト6に対して軸方向へ直線運動させるための十分な駆動力を与えることができる。
【0058】
自由回転ギヤである後方プラネタリギヤ32については、6本全てのプラネタリシャフト7,8ではなく、一部の3本のプラネタリシャフト7のみにおいて、そのプラネタリネジ28の他端側に設けられている。残りの3本のプラネタリシャフト8には後方プラネタリギヤ32は設けられておらず、後方軸部28bのみである。
【0059】
しかしリテーナ12により全ての後方軸部28bが回転可能に支持されていることにより、全てのプラネタリシャフト7,8は、サンシャフト6の周上にてプラネタリシャフト7,8間の相対的位相関係が保持されている。このことにより後方プラネタリギヤ32が設けられていない3本のプラネタリシャフト8の傾きについても、リテーナ12を介して一方の種類のプラネタリシャフト7に存在する後方プラネタリギヤ32により規制されることになる。
【0060】
すなわち後方プラネタリギヤ32が存在しない3本のプラネタリシャフト8についても後方プラネタリギヤ32が存在する場合と同様に、その公転状態における或る程度の遊びと過剰傾倒抑制効果が生じるので、簡易な構成のリテーナ12にて後方プラネタリギヤ32が3つ省略できることになる。
【0061】
しかもこれら全てのプラネタリシャフト7,8における公転状態の或る程度の遊びと過剰傾倒抑制効果はリテーナ12により常に均一な状態となる。
このようなリテーナ12は、全てのプラネタリシャフト7,8間の相対的位相関係を保持するものであれば良いことから、前述したごとく支持孔12bが存在する円環体で十分であり、これを厚くしたりあるいは複雑な構成を採用したりする必要はない。
【0062】
このことにより本実施の形態の回転直動変換機構2は、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、部品点数低減あるいは軽量化ができる。
(2)後方プラネタリギヤ32が存在するプラネタリシャフト7と、後方プラネタリギヤ32が存在しないプラネタリシャフト8とでそれぞれ独立して均等の位相間隔にてサンシャフト6の周上に配置されている。それぞれのプラネタリシャフト7,8が均等位相間隔に配置されることで、部品点数低減を実行しても回転直動変換機構2の作動効率低下や耐久性低下をより効果的に防止できる。
【0063】
(3)本実施の形態では、回転直動変換機構2をアクチュエータ(ここでは電動アクチュエータ)に組み込み、このアクチュエータにて内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトの駆動をさせている。
【0064】
このことで、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、内燃機関の部品点数低減あるいは軽量化に貢献できる。
[実施の形態2]
図14に本実施の形態における2種類のプラネタリシャフト107,108の配置例を示す。尚、サンシャフト及びナットは取り外した状態で示している。
【0065】
本実施の形態では、合計で9本のプラネタリシャフト107,108が等位相間隔(40°間隔)でサンシャフトの周上に配置される。2種類のプラネタリシャフト107,108は前記実施の形態1と同じ構成であり、一方の種類のプラネタリシャフト107は、3本が等位相間隔(120°間隔)に配置されている。この一方の種類のプラネタリシャフト107は、プラネタリネジ128の前方に前方プラネタリギヤ130が固定され、後方軸部128bには後方プラネタリギヤ132が自由回転可能に軸支されている。他方の種類のプラネタリシャフト108は、6本が2本ずつペアとされて、このペアが等位相間隔(120°間隔)に配置されている。この他方の種類のプラネタリシャフト108は、プラネタリネジ128の前方に前方プラネタリギヤ130が固定されているが、後方軸部128bには後方プラネタリギヤ132は存在しない。
【0066】
そして前記実施の形態1と同形のリテーナ112にて9つ全ての後方軸部128bが軸支されて、9本全てのプラネタリシャフト107,108の相対的位相関係が保持されている。
【0067】
このように用途によって出力あるいは耐久性などを考慮して、プラネタリシャフト107,108が合計で9本必要な場合においても、後方プラネタリギヤ132とリテーナ112との組み合わせにより、後方プラネタリギヤ132の数を前方プラネタリギヤ130よりも少なくできる。したがって作動効率低下や耐久性低下を招くことなく部品点数低減あるいは軽量化できるので、内燃機関の部品点数低減あるいは軽量化に貢献できる。
【0068】
尚、図15に示すごとく、後方プラネタリギヤ132を有するプラネタリシャフト107を6本として2本ずつのペアを等位相間隔(120°間隔)に配置し、後方プラネタリギヤ132を有しないプラネタリシャフト108は3本として等位相間隔(120°間隔)に配置しても良い。
【0069】
この場合も同様に、後方プラネタリギヤ132の数を前方プラネタリギヤ130よりも少なくでき、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、部品点数低減あるいは軽量化できるので、内燃機関の部品点数低減あるいは軽量化に貢献できる。
【0070】
[実施の形態3]
本実施の形態のリテーナ212を図16に示す。図16の(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。他の構成であるナット、サンシャフト、プラネタリシャフトの構成は前記実施の形態1あるいは前記実施の形態2と同じである。
【0071】
本実施の形態のリテーナ212は、中心部分にサンシャフトの貫通孔212aがあり、その周囲にプラネタリシャフトの支持孔212bが存在する円環体である点については、前記実施の形態1,2にて示したリテーナ12,112と基本的には同じであるが、支持孔212b間の領域については極力減肉して軽量化している。
【0072】
リテーナ212は全てのプラネタリシャフトの一端を軸支して、プラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持するためのものであるので、特に径方向において減肉して軽量化しても問題がない。
【0073】
尚、特に実施の形態1においては、プラネタリシャフトは6本が図8,9に示したごとく配置されていることから、これに対応して図17に示すリテーナ312のごとく、支持孔312bを6つのみ配置した構成としても良い。図17の(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。
【0074】
このリテーナ312を用いることにより、図18に示すごとくサンシャフト306の周りに2種類のプラネタリシャフト307,308を前記実施の形態1と同様に配置することができる。
【0075】
これらのリテーナ212,312を用いることにより前記実施の形態1,2に比較して回転直動変換機構、アクチュエータ及び内燃機関の更なる軽量化に貢献できる。
[その他の実施の形態]
・前記各実施の形態において、回転直動変換機構は、プラネタリネジと一体に回転するプラネタリギヤを、サンシャフトの駆動力出力方向(前方)に配置し、プラネタリネジに対して自由回転するプラネタリギヤを、これとは反対側の後方に配置する構成であった。これとは逆にプラネタリネジと一体に回転するプラネタリギヤを後方に配置し、プラネタリネジに対して自由回転するプラネタリギヤを前方に配置する構成としても良い。
【0076】
・前記各実施の形態ではプラネタリシャフトは6本と9本が用いられている例を示したが、これ以外の複数本用いられているものでも、本発明の適用により、自由回転ギヤであるプラネタリギヤの数を低減させることができ、前記各実施の形態に述べたごとくの効果を生じさせることができる。
【0077】
・前記各実施の形態では、回転直動変換機構はアクチュエータに組み込んで内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトの駆動を行うものであるが、これ以外の用途にも用いることができる。
【0078】
・前記各実施の形態では、ナットを電動モータなどで回転することにより、サンシャフトに直動駆動力を出力させていたが、逆にサンシャフトを外部の駆動力源により直線運動させ、これを回転直動変換機構によりナットの回転運動に変換するものとして用いても良い。
【符号の説明】
【0079】
2…回転直動変換機構、4…ナット、6…サンシャフト、7,8…プラネタリシャフト、10…カラー、12…リテーナ、12a…貫通孔、12b…支持孔、14…内ネジ、16…前方リングギヤ、18…後方リングギヤ、20…前方平歯ギヤ、22…後方平歯ギヤ、24…サンネジ、26…ストレートスプライン、28…プラネタリネジ、28a…前方軸部、28b…後方軸部、30…前方プラネタリギヤ、32…後方プラネタリギヤ、107,108…プラネタリシャフト、112…リテーナ、128…プラネタリネジ、128b…後方軸部、130…前方プラネタリギヤ、132…後方プラネタリギヤ、212…リテーナ、212a…貫通孔、212b…支持孔、306…サンシャフト、307,308…プラネタリシャフト、312…リテーナ、312b…支持孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンシャフト、プラネタリシャフト及びナットを備えてネジ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構に関するものであり、更にこの遊星差動ネジ型回転直動変換機構を備えたアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コントロールシャフトのスライドによって、バルブ特性の一つであるバルブ作用角を変更する内燃機関可変動弁機構用のアクチュエータが知られ、このようなアクチュエータにおいては遊星差動ネジ型回転直動変換機構を備えたものが知られている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0003】
これら特許文献に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、プラネタリシャフトにはナットからの回転力を平歯ギヤであるプラネタリギヤにて受けて、このプラネタリギヤと一体とされているプラネタリネジを回転させて、サンシャフトに軸方向への直動推進力を与えている。
【0004】
特に特許文献1では、一端側のプラネタリギヤについては回転力をプラネタリネジに伝達させるためにプラネタリネジに対して自由回転しないように固定されているが、他端側のプラネタリギヤについてはプラネタリネジに対して自由回転可能に軸支されている。これは他端側についてはサンシャフト周方向での位相位置に余裕を持たせてプラネタリシャフトの公転状態に或る程度の遊びを与えることが、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の作動効率などの観点から好ましいからである。
【0005】
特許文献2,3では、サンシャフト周方向でのプラネタリシャフトの過剰な傾倒及びプラネタリシャフト間での不均一な傾倒が作動効率低下や耐久性低下を招くことから、全てのプラネタリシャフトを2つのリテーナで相対的位相関係を保持したり、厚みのあるリテーナにて保持することで、過剰な傾倒抑制あるいは補償する機能を設けている。
【0006】
特許文献4では、プラネタリシャフトの過剰な傾倒及びプラネタリシャフト間での不均一な傾倒抑制のために、サンシャフトとナットとの間に複雑な構成の軸受部材を配置して、プラネタリシャフトを軸支している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−2588号公報(第10−13頁、図5,6)
【特許文献2】特開2007−192388号公報(第6−10頁、図1−7)
【特許文献3】特開2007−187228号公報(第6−8頁、図2−4)
【特許文献4】特開2009−115194号公報(第8−10頁、図2−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしいずれの遊星差動ネジ型回転直動変換機構も、全てのプラネタリシャフトにプラネタリギヤが2つ必要であったり(特許文献1)、過剰な傾倒抑制のためにリテーナの複雑化・重量化が生じていたり(特許文献2〜4)することで、部品点数増加や重量化を招いていた。
【0009】
本発明は、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、部品点数低減あるいは軽量化できる遊星差動ネジ型回転直動変換機構、及びこの遊星差動ネジ型回転直動変換機構を備えたアクチュエータを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構は、サンネジとサンギヤとを有するサンシャフト、プラネタリネジとプラネタリギヤとを有して前記サンシャフトの周上に配列された複数のプラネタリシャフト、及び内ネジと内ギヤとを有して前記プラネタリシャフトの配列外側に配置されたナットを備え、ネジ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構であって、前記プラネタリギヤには、全ての前記プラネタリシャフトに設けられて前記プラネタリネジと一体に回転するシャフト一体回転ギヤと、一部の前記プラネタリシャフトに設けられて前記プラネタリネジに対して自由回転する自由回転ギヤとの2種類が存在すると共に、前記サンシャフトの周上にて全ての前記プラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持するリテーナが備えられたことを特徴とする。
【0011】
シャフト一体回転ギヤは全てのプラネタリシャフトに設けられていることにより、全てのプラネタリシャフトはそのプラネタリネジに十分に回転力を伝達できる。
そして全てのプラネタリシャフトはリテーナにてサンシャフトの周上にてプラネタリシャフト間の相対的位相関係が保持されていることから、自由回転ギヤは一部のプラネタリシャフトに存在すれば良く、他のプラネタリシャフトについては省略できる。
【0012】
すなわち自由回転ギヤが存在する一部のプラネタリシャフトにより、リテーナを介して自由回転ギヤが存在しない他のプラネタリシャフトに対しても、過剰な傾倒を防止しつつ、サンシャフト周方向での位相位置に余裕を持たせてプラネタリシャフトの公転状態に或る程度の遊びを与えることができる。しかもこのような過剰傾倒防止効果と遊びとを全プラネタリシャフトに対して均一状態で与えることができる。
【0013】
したがって自由回転ギヤが設けられていないプラネタリシャフトが一部に存在しても遊星差動ネジ型回転直動変換機構の作動効率を低下させることがない。
そしてリテーナ自身は、プラネタリシャフト間での相対的位相関係を保持すれば良いことから、厚くしたり複雑な構成を採用する必要はない。
【0014】
このことにより本発明の遊星差動ネジ型回転直動変換機構は、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、かつ部品点数低減あるいは軽量化が可能となる。
請求項2に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトは前記サンネジの軸方向両側に前記サンギヤが配置され、前記ナットは前記内ネジの軸方向両側に前記内ギヤが配置され、全ての前記プラネタリシャフトは前記プラネタリネジの一端側に前記シャフト一体回転ギヤが配置され、一部の前記プラネタリシャフトは前記プラネタリネジの他端側に前記自由回転ギヤが配置されていることを特徴とする。
【0015】
サンシャフト及びナットにおけるネジとギヤとの配置は、ネジの両端にギヤを配置する構成とし、プラネタリシャフトは、全て一端側にシャフト一体回転ギヤが配置され、一部のプラネタリシャフトの他端側に自由回転ギヤが配置された構成とする。このことで全てのプラネタリシャフトにおいて、その公転状態における或る程度の遊びと過剰な傾倒抑制効果とをより適切なものとできる。こうして遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、かつ部品点数低減あるいは軽量化できる効果を高めることができる。
【0016】
請求項3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項2に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、プラネタリネジにおける前記他端側又は前記他端側の近傍にて、全ての前記プラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持していることを特徴とする。
【0017】
更にリテーナは、全てのプラネタリシャフトのプラネタリネジにおける他端側すなわち自由回転ギヤが配置されている側あるいはその近傍にて、これらのプラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持していることにより、前述したごとくの或る程度の遊びと過剰な傾倒抑制効果とを十分にかつ均一に生じさせることができる。
【0018】
請求項4に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記自由回転ギヤが配置されている前記プラネタリシャフトに対しては、前記プラネタリネジと前記自由回転ギヤとの間にて前記プラネタリシャフトを回転可能に支持し、前記自由回転ギヤが配置されていない前記プラネタリシャフトに対しては、前記プラネタリネジから突出している軸部にて前記プラネタリシャフトを回転可能に支持していることを特徴とする。
【0019】
リテーナは、このようにして全てのプラネタリシャフトに対して回転可能に支持することで全てのプラネタリシャフトについて前述したごとくの或る程度の遊びと過剰な傾倒抑制効果とを十分にかつ均一に生じさせることができる。
【0020】
請求項5に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、この中心孔を前記サンシャフトが貫通する円環体であり、前記中心孔の周りに前記プラネタリシャフトを回転可能に支持する支持孔を形成していることを特徴とする。
【0021】
このようにリテーナは、円環体に上述した支持孔を形成させたものにより容易に実現できる。したがってリテーナは厚くしたり複雑な構成とする必要はない。このことにより軽量化あるいは部品点数低減ができる遊星差動ネジ型回転直動変換機構を実現できる。
【0022】
請求項6に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1〜5のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトは6本が設けられ、この内の3本に前記自由回転ギヤが存在し、他のプラネタリシャフトは前記自由回転ギヤが存在しないことを特徴とする。
【0023】
このように6本のプラネタリシャフトの内で3本には自由回転ギヤを配置するが、他の3本は省略することで、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、部品点数低減あるいは軽量化できる。
【0024】
請求項7に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1〜5のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトは9本が設けられ、この内の3本又は6本に前記自由回転ギヤが存在し、他のプラネタリシャフトは前記自由回転ギヤが存在しないことを特徴とする。
【0025】
このように9本のプラネタリシャフトの内で3本又は6本に自由回転ギヤを配置し、他の6本又は3本は省略することで、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、部品点数低減あるいは軽量化できる。
【0026】
請求項8に記載のアクチュエータは、回転駆動源の回転を直線運動に変換して出力するアクチュエータであって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構を備え、前記ナットを前記回転駆動源にて回転させることにより、前記サンシャフトに接続された部材を直線運動させることを特徴とする。
【0027】
請求項1〜7にて述べた遊星差動ネジ型回転直動変換機構のいずれかを備えるアクチュエータとすることで、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、かつ部品点数低減あるいは軽量化できるアクチュエータとすることができる。
【0028】
請求項9に記載のアクチュエータでは、請求項8に記載のアクチュエータにおいて、前記部材は軸方向にスライドさせることによりバルブ特性を変更する内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトであることを特徴とする。
【0029】
前述したごとくアクチュエータは作動効率低下や耐久性低下を招くことなく部品点数低減あるいは軽量化できるので、内燃機関の部品点数低減あるいは軽量化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構の斜視図。
【図2】同じく正面図。
【図3】同じく右側面図。
【図4】同じく左側面図。
【図5】同じくカラーを除いて示す部分破断斜視図。
【図6】同じくプラネタリシャフトを除いて示す遊星差動ネジ型回転直動変換機構の部分破断斜視図。
【図7】実施の形態1のプラネタリシャフトとリテーナとの関係を示す正面図。
【図8】同じく左側面図。
【図9】同じく斜視図。
【図10】(a)〜(d)実施の形態1の一方のプラネタリシャフトの構成説明図。
【図11】実施の形態1の一方のプラネタリシャフトの分解斜視図。
【図12】実施の形態1の他方のプラネタリシャフトの正面図。
【図13】(a)〜(c)実施の形態1のリテーナの構成説明図。
【図14】実施の形態2のプラネタリシャフトとリテーナとの構成の一例を示す斜視図。
【図15】実施の形態2のプラネタリシャフトとリテーナとの構成の他の一例を示す斜視図。
【図16】(a)〜(c)実施の形態3のリテーナの構成の一例を示す構成説明図。
【図17】(a)〜(c)実施の形態3のリテーナの構成の他の一例を示す構成説明図。
【図18】実施の形態3のサンシャフト、プラネタリシャフト及びリテーナによる構成の一例を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[実施の形態1]
図1は内燃機関の可変動弁機構に用いられるアクチュエータに組み込まれる遊星差動ネジ型回転直動変換機構(以下「回転直動変換機構」と略す)2の斜視図、図2は正面図、図3は右側面図、図4は左側面図、図5は部分破断斜視図である。
【0032】
回転直動変換機構2は、ナット4、サンシャフト6、及び複数のプラネタリシャフト7,8を主体として構成されている。ナット4の前端側中央からはサンシャフト6の先端が突出している。ナット4の後端側はカラー10により閉塞されている。尚、図5ではカラー10を外してナット4を中心軸にて縦断して示している。
【0033】
ナット4の内部において、複数のプラネタリシャフト7,8、ここでは2種類のプラネタリシャフト7,8であり合計で6本がサンシャフト6の周上に配列されている。この6本のプラネタリシャフト7,8は、一方の種類の3本のプラネタリシャフト7がサンシャフト6の周上に均等の位相間隔(120°)にて配列され、更に他方の種類の3本のプラネタリシャフト8についてもサンシャフト6の周上に均等の位相間隔(120°)にて配列されている。
【0034】
2種類のプラネタリシャフト7,8は、図4に示したごとく40°の間隔に近接してペアが形成されており、この40°間隔の2種類のプラネタリシャフト7,8のペアが80°間隔にてサンシャフト6の周上に均等の位相間隔(120°)にて配列された状態となっている。尚、全てのプラネタリシャフト7,8は、後述するリテーナ12により前述した各位相間隔を維持することで、これらプラネタリシャフト7,8間の相対的位相関係を保持した状態にて回転可能に支持されている。
【0035】
図6にプラネタリシャフト7,8を除いた状態、すなわちサンシャフト6をナット4の中心軸位置に位置させた状態での回転直動変換機構2の斜視図を示す。図示するごとく、ナット4は、内ネジ14と、この内ネジ14の両側にてネジが形成されていない内周面に固定されたリングギヤ16,18(内ギヤに相当)とを備えている。内ネジ14はここでは5条からなる左ネジである。
【0036】
サンシャフト6は、サンギヤ(ここでは前方平歯ギヤ20、後方平歯ギヤ22)、前方平歯ギヤ20と後方平歯ギヤ22との間に設けられたサンネジ24、及びナット4より飛び出した位置にストレートスプライン26を備えている。サンネジ24は、ここでは4条からなる右ネジである。
【0037】
図5に示したごとくプラネタリシャフト7,8は、ナット4及びサンシャフト6と軸方向を同一にし、ナット4とサンシャフト6との間に、リテーナ12にて回転可能に保持された状態で配列されている。
【0038】
リテーナ12にて相対的位相関係が保持されている6本のプラネタリシャフト7,8の配列状態を、図7〜9に示す。図7はその正面図、図8はその左側面図、図9は斜視図である。
【0039】
ここで一方の種類のプラネタリシャフト7は、プラネタリネジ28、その一端側に前方プラネタリギヤ30、及び他端側に後方プラネタリギヤ32を備えたものであり、他方の種類のプラネタリシャフト8は、プラネタリネジ28、及びその一端側のみに前方プラネタリギヤ30を備えたものである。
【0040】
前方プラネタリギヤ30及び後方プラネタリギヤ32を備えたプラネタリシャフト7の構成を図10に、その分解斜視図を図11に、前方プラネタリギヤ30のみを備えたプラネタリシャフト8の構成を図12に示す。ここで図10の(a)はプラネタリシャフト7の正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図、(d)は斜視図である。
【0041】
一方の種類のプラネタリシャフト7は、プラネタリネジ28と前方プラネタリギヤ30とは一体に形成されている。あるいはプラネタリネジ28に形成された前方軸部28aを前方プラネタリギヤ30の中心嵌合孔に嵌合することにより前方プラネタリギヤ30をプラネタリネジ28の前方軸部28aに固定した状態に形成されている。したがって前方プラネタリギヤ30はプラネタリネジ28と一体に回転するシャフト一体回転ギヤに相当する。尚、プラネタリネジ28は1条からなる左ネジである。
【0042】
後方プラネタリギヤ32については、図11に示したごとくプラネタリネジ28の後方軸部28bに対して自由回転可能に軸支されている。したがって後方プラネタリギヤ32はプラネタリネジ28に対して自由回転する自由回転ギヤに相当する。
【0043】
他方の種類のプラネタリシャフト8は、前述した一方の種類のプラネタリシャフト7におけるプラネタリネジ28及び前方プラネタリギヤ30からなる構成と同一形状であり、プラネタリネジ28の後方軸部28bには後方プラネタリギヤ32は取り付けられていない構成である。したがって、この他方の種類のプラネタリシャフト8については、前記一方の種類のプラネタリシャフト7におけるプラネタリネジ28と前方プラネタリギヤ30とからなる構成がそのまま利用されている。
【0044】
図13にリテーナ12の構成を示す。図13の(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。リテーナ12は中心孔として中央にサンシャフト6が貫通できる貫通孔12aを有する板状の円環体をなし、貫通孔12aの周りに、各プラネタリシャフト7,8における後方軸部28bを軸支するための支持孔12bが9つ等位相間隔、ここでは40°毎に設けられている。
【0045】
この9つの支持孔12bの内で6つが前記プラネタリシャフト7,8の3ペアに対応して軸支のために用いられる。これら軸支に用いられる支持孔12bの間には、プラネタリシャフト7,8を支持していない支持孔12bが3つ存在する。このことにより前述した2種類のプラネタリシャフト7,8が、それぞれの間の相対的位相関係を保持してサンシャフト6の周上に配置されることになる。
【0046】
上述した各構成が、図5に示したごとくナット4とサンシャフト6との間に配置される。すなわち、プラネタリシャフト7,8の前方プラネタリギヤ30がナット4の内面に固定されている前方リングギヤ16に噛み合わされ、プラネタリシャフト7の後方プラネタリギヤ32がナット4の内面に固定されている後方リングギヤ18に噛み合わされる。このことによりプラネタリシャフト7,8とナット4との間の噛合状態が形成される。
【0047】
そしてプラネタリシャフト7,8の前方プラネタリギヤ30はサンシャフト6の前方平歯ギヤ20と噛み合わされ、プラネタリシャフト7の後方プラネタリギヤ32はサンシャフト6の後方平歯ギヤ22と噛み合わされる。このことによりプラネタリシャフト7,8とサンシャフト6との間に噛合状態が形成される。
【0048】
尚、サンシャフト6のストレートスプライン26は回転直動変換機構2がアクチュエータ内に配置されて内燃機関に固定される際には、アクチュエータのケースの開口部分に形成されているストレートスプラインに噛み合わされる。したがってサンシャフト6は、ストレートスプライン26にてケース側のストレートスプラインに対して摺動することで軸方向移動は許されるが軸回転は阻止されることになる。
【0049】
前述のごとく噛み合っているナット4の内ネジ14とプラネタリシャフト7,8のプラネタリネジ28とは、ピッチ円径の比とネジ条数の比とが同じく「5:1」である。したがってプラネタリシャフト7,8がナット4の内周面にて転動により自転しつつ公転してもナット4とプラネタリシャフト7,8との間で軸方向での相対的移動は生じない。
【0050】
一方、プラネタリシャフト7,8のプラネタリネジ28とサンシャフト6のサンネジ24とはピッチ円径比とネジ条数比とが異なる。すなわちピッチ円径の比は「1:3」であるが、プラネタリネジ28のネジ条数は1条であり、サンネジ24のネジ条数は4条であるので、ネジ条数比は「1:4」である。このためプラネタリシャフト7,8がナット4の回転によりサンシャフト6の周上で転動により自転しつつ公転すると、前述したごとく軸回転が規制されているサンシャフト6は、ナット4とプラネタリシャフト7,8とに対して軸方向での相対的移動を生じる。すなわち差動を生じる。
【0051】
尚、ナット4の回転は、例えばナット4の外面にロータを取り付け、ナット4の周辺にステータを配置して電動モータ(回転駆動源に相当)として構成することにより可能である。すなわちステータに対して電流制御を実行してロータを介してナット4に回転力を発生させることにより電導アクチュエータとして機能させることが可能である。
【0052】
そして回転直動変換機構2が前述したごとく構成されていることにより、ナット4が外部から受けた回転力は、前方リングギヤ16からプラネタリシャフト7,8の前方プラネタリギヤ30に伝達される。そして前方プラネタリギヤ30と一体のプラネタリネジ28がサンシャフト6のサンネジ24とナット4の内ネジ14との間で転動する動力となる。
【0053】
このことにより前述した差動が生じて、ナット4に対する回転力が、サンシャフト6を軸方向へ直線運動させる駆動力となる。すなわち電動モータの回転運動を直線運動に変換させることができる。
【0054】
この回転直動変換時において、一方の種類のプラネタリシャフト7における後方プラネタリギヤ32は、プラネタリネジ28及び前方プラネタリギヤ30に対しては自由回転状態である。このため一方の種類のプラネタリシャフト7については、過剰な傾倒を抑制しつつ、その公転状態に或る程度の遊びを与えられる。
【0055】
そして全てのプラネタリシャフト7,8は、リテーナ12により、これらの間での相対的位相関係が保持された状態で回転直動変換時に転動することになる。
尚、この回転直動変換機構2が用いられるアクチュエータは内燃機関の可変動弁機構に適用している。したがって電動モータの制御回路にて、ナット4の外側には配置した回転センサにて検出したデータから、サンシャフト6のスライド量を求め、このスライド量が目標値を示すようにナット4の回転量を調節することができ、内燃機関を制御できる。
【0056】
サンシャフト6の先端には可変動弁機構側のコントロールシャフト(請求項において、サンシャフトに接続された部材に相当)が接続されるので、前述した制御回路によりコントロールシャフトの軸方向位置が調節できる。このことにより、バルブ特性、例えば吸気バルブのバルブ作用角を調節でき、吸入空気量を制御して内燃機関の出力を調節できる。
【0057】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(1)2種類のプラネタリシャフト7,8は共にシャフト一体回転ギヤである前方プラネタリギヤ30をプラネタリネジ28の一端側に設けている。このことによりナット4から受ける回転力は、前方リングギヤ16を介して、6本全てのプラネタリシャフト7,8に十分に伝達される。したがって全てのプラネタリシャフト7,8におけるプラネタリネジ28により、サンシャフト6に対して軸方向へ直線運動させるための十分な駆動力を与えることができる。
【0058】
自由回転ギヤである後方プラネタリギヤ32については、6本全てのプラネタリシャフト7,8ではなく、一部の3本のプラネタリシャフト7のみにおいて、そのプラネタリネジ28の他端側に設けられている。残りの3本のプラネタリシャフト8には後方プラネタリギヤ32は設けられておらず、後方軸部28bのみである。
【0059】
しかしリテーナ12により全ての後方軸部28bが回転可能に支持されていることにより、全てのプラネタリシャフト7,8は、サンシャフト6の周上にてプラネタリシャフト7,8間の相対的位相関係が保持されている。このことにより後方プラネタリギヤ32が設けられていない3本のプラネタリシャフト8の傾きについても、リテーナ12を介して一方の種類のプラネタリシャフト7に存在する後方プラネタリギヤ32により規制されることになる。
【0060】
すなわち後方プラネタリギヤ32が存在しない3本のプラネタリシャフト8についても後方プラネタリギヤ32が存在する場合と同様に、その公転状態における或る程度の遊びと過剰傾倒抑制効果が生じるので、簡易な構成のリテーナ12にて後方プラネタリギヤ32が3つ省略できることになる。
【0061】
しかもこれら全てのプラネタリシャフト7,8における公転状態の或る程度の遊びと過剰傾倒抑制効果はリテーナ12により常に均一な状態となる。
このようなリテーナ12は、全てのプラネタリシャフト7,8間の相対的位相関係を保持するものであれば良いことから、前述したごとく支持孔12bが存在する円環体で十分であり、これを厚くしたりあるいは複雑な構成を採用したりする必要はない。
【0062】
このことにより本実施の形態の回転直動変換機構2は、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、部品点数低減あるいは軽量化ができる。
(2)後方プラネタリギヤ32が存在するプラネタリシャフト7と、後方プラネタリギヤ32が存在しないプラネタリシャフト8とでそれぞれ独立して均等の位相間隔にてサンシャフト6の周上に配置されている。それぞれのプラネタリシャフト7,8が均等位相間隔に配置されることで、部品点数低減を実行しても回転直動変換機構2の作動効率低下や耐久性低下をより効果的に防止できる。
【0063】
(3)本実施の形態では、回転直動変換機構2をアクチュエータ(ここでは電動アクチュエータ)に組み込み、このアクチュエータにて内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトの駆動をさせている。
【0064】
このことで、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、内燃機関の部品点数低減あるいは軽量化に貢献できる。
[実施の形態2]
図14に本実施の形態における2種類のプラネタリシャフト107,108の配置例を示す。尚、サンシャフト及びナットは取り外した状態で示している。
【0065】
本実施の形態では、合計で9本のプラネタリシャフト107,108が等位相間隔(40°間隔)でサンシャフトの周上に配置される。2種類のプラネタリシャフト107,108は前記実施の形態1と同じ構成であり、一方の種類のプラネタリシャフト107は、3本が等位相間隔(120°間隔)に配置されている。この一方の種類のプラネタリシャフト107は、プラネタリネジ128の前方に前方プラネタリギヤ130が固定され、後方軸部128bには後方プラネタリギヤ132が自由回転可能に軸支されている。他方の種類のプラネタリシャフト108は、6本が2本ずつペアとされて、このペアが等位相間隔(120°間隔)に配置されている。この他方の種類のプラネタリシャフト108は、プラネタリネジ128の前方に前方プラネタリギヤ130が固定されているが、後方軸部128bには後方プラネタリギヤ132は存在しない。
【0066】
そして前記実施の形態1と同形のリテーナ112にて9つ全ての後方軸部128bが軸支されて、9本全てのプラネタリシャフト107,108の相対的位相関係が保持されている。
【0067】
このように用途によって出力あるいは耐久性などを考慮して、プラネタリシャフト107,108が合計で9本必要な場合においても、後方プラネタリギヤ132とリテーナ112との組み合わせにより、後方プラネタリギヤ132の数を前方プラネタリギヤ130よりも少なくできる。したがって作動効率低下や耐久性低下を招くことなく部品点数低減あるいは軽量化できるので、内燃機関の部品点数低減あるいは軽量化に貢献できる。
【0068】
尚、図15に示すごとく、後方プラネタリギヤ132を有するプラネタリシャフト107を6本として2本ずつのペアを等位相間隔(120°間隔)に配置し、後方プラネタリギヤ132を有しないプラネタリシャフト108は3本として等位相間隔(120°間隔)に配置しても良い。
【0069】
この場合も同様に、後方プラネタリギヤ132の数を前方プラネタリギヤ130よりも少なくでき、作動効率低下や耐久性低下を招くことなく、部品点数低減あるいは軽量化できるので、内燃機関の部品点数低減あるいは軽量化に貢献できる。
【0070】
[実施の形態3]
本実施の形態のリテーナ212を図16に示す。図16の(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。他の構成であるナット、サンシャフト、プラネタリシャフトの構成は前記実施の形態1あるいは前記実施の形態2と同じである。
【0071】
本実施の形態のリテーナ212は、中心部分にサンシャフトの貫通孔212aがあり、その周囲にプラネタリシャフトの支持孔212bが存在する円環体である点については、前記実施の形態1,2にて示したリテーナ12,112と基本的には同じであるが、支持孔212b間の領域については極力減肉して軽量化している。
【0072】
リテーナ212は全てのプラネタリシャフトの一端を軸支して、プラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持するためのものであるので、特に径方向において減肉して軽量化しても問題がない。
【0073】
尚、特に実施の形態1においては、プラネタリシャフトは6本が図8,9に示したごとく配置されていることから、これに対応して図17に示すリテーナ312のごとく、支持孔312bを6つのみ配置した構成としても良い。図17の(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は斜視図である。
【0074】
このリテーナ312を用いることにより、図18に示すごとくサンシャフト306の周りに2種類のプラネタリシャフト307,308を前記実施の形態1と同様に配置することができる。
【0075】
これらのリテーナ212,312を用いることにより前記実施の形態1,2に比較して回転直動変換機構、アクチュエータ及び内燃機関の更なる軽量化に貢献できる。
[その他の実施の形態]
・前記各実施の形態において、回転直動変換機構は、プラネタリネジと一体に回転するプラネタリギヤを、サンシャフトの駆動力出力方向(前方)に配置し、プラネタリネジに対して自由回転するプラネタリギヤを、これとは反対側の後方に配置する構成であった。これとは逆にプラネタリネジと一体に回転するプラネタリギヤを後方に配置し、プラネタリネジに対して自由回転するプラネタリギヤを前方に配置する構成としても良い。
【0076】
・前記各実施の形態ではプラネタリシャフトは6本と9本が用いられている例を示したが、これ以外の複数本用いられているものでも、本発明の適用により、自由回転ギヤであるプラネタリギヤの数を低減させることができ、前記各実施の形態に述べたごとくの効果を生じさせることができる。
【0077】
・前記各実施の形態では、回転直動変換機構はアクチュエータに組み込んで内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトの駆動を行うものであるが、これ以外の用途にも用いることができる。
【0078】
・前記各実施の形態では、ナットを電動モータなどで回転することにより、サンシャフトに直動駆動力を出力させていたが、逆にサンシャフトを外部の駆動力源により直線運動させ、これを回転直動変換機構によりナットの回転運動に変換するものとして用いても良い。
【符号の説明】
【0079】
2…回転直動変換機構、4…ナット、6…サンシャフト、7,8…プラネタリシャフト、10…カラー、12…リテーナ、12a…貫通孔、12b…支持孔、14…内ネジ、16…前方リングギヤ、18…後方リングギヤ、20…前方平歯ギヤ、22…後方平歯ギヤ、24…サンネジ、26…ストレートスプライン、28…プラネタリネジ、28a…前方軸部、28b…後方軸部、30…前方プラネタリギヤ、32…後方プラネタリギヤ、107,108…プラネタリシャフト、112…リテーナ、128…プラネタリネジ、128b…後方軸部、130…前方プラネタリギヤ、132…後方プラネタリギヤ、212…リテーナ、212a…貫通孔、212b…支持孔、306…サンシャフト、307,308…プラネタリシャフト、312…リテーナ、312b…支持孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンネジとサンギヤとを有するサンシャフト、プラネタリネジとプラネタリギヤとを有して前記サンシャフトの周上に配列された複数のプラネタリシャフト、及び内ネジと内ギヤとを有して前記プラネタリシャフトの配列外側に配置されたナットを備え、ネジ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構であって、
前記プラネタリギヤには、全ての前記プラネタリシャフトに設けられて前記プラネタリネジと一体に回転するシャフト一体回転ギヤと、一部の前記プラネタリシャフトに設けられて前記プラネタリネジに対して自由回転する自由回転ギヤとの2種類が存在すると共に、
前記サンシャフトの周上にて全ての前記プラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持するリテーナが備えられたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトは前記サンネジの軸方向両側に前記サンギヤが配置され、前記ナットは前記内ネジの軸方向両側に前記内ギヤが配置され、全ての前記プラネタリシャフトは前記プラネタリネジの一端側に前記シャフト一体回転ギヤが配置され、一部の前記プラネタリシャフトは前記プラネタリネジの他端側に前記自由回転ギヤが配置されていることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項3】
請求項2に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、プラネタリネジにおける前記他端側又は前記他端側の近傍にて、全ての前記プラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持していることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項4】
請求項3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記自由回転ギヤが配置されている前記プラネタリシャフトに対しては、前記プラネタリネジと前記自由回転ギヤとの間にて前記プラネタリシャフトを回転可能に支持し、前記自由回転ギヤが配置されていない前記プラネタリシャフトに対しては、前記プラネタリネジから突出している軸部にて前記プラネタリシャフトを回転可能に支持していることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、この中心孔を前記サンシャフトが貫通する円環体であり、前記中心孔の周りに前記プラネタリシャフトを回転可能に支持する支持孔を形成していることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトは6本が設けられ、この内の3本に前記自由回転ギヤが存在し、他のプラネタリシャフトは前記自由回転ギヤが存在しないことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトは9本が設けられ、この内の3本又は6本に前記自由回転ギヤが存在し、他のプラネタリシャフトは前記自由回転ギヤが存在しないことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項8】
回転駆動源の回転を直線運動に変換して出力するアクチュエータであって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構を備え、前記ナットを前記回転駆動源にて回転させることにより、前記サンシャフトに接続された部材を直線運動させることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項9】
請求項8に記載のアクチュエータにおいて、前記部材は軸方向にスライドさせることによりバルブ特性を変更する内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトであることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項1】
サンネジとサンギヤとを有するサンシャフト、プラネタリネジとプラネタリギヤとを有して前記サンシャフトの周上に配列された複数のプラネタリシャフト、及び内ネジと内ギヤとを有して前記プラネタリシャフトの配列外側に配置されたナットを備え、ネジ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構であって、
前記プラネタリギヤには、全ての前記プラネタリシャフトに設けられて前記プラネタリネジと一体に回転するシャフト一体回転ギヤと、一部の前記プラネタリシャフトに設けられて前記プラネタリネジに対して自由回転する自由回転ギヤとの2種類が存在すると共に、
前記サンシャフトの周上にて全ての前記プラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持するリテーナが備えられたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトは前記サンネジの軸方向両側に前記サンギヤが配置され、前記ナットは前記内ネジの軸方向両側に前記内ギヤが配置され、全ての前記プラネタリシャフトは前記プラネタリネジの一端側に前記シャフト一体回転ギヤが配置され、一部の前記プラネタリシャフトは前記プラネタリネジの他端側に前記自由回転ギヤが配置されていることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項3】
請求項2に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、プラネタリネジにおける前記他端側又は前記他端側の近傍にて、全ての前記プラネタリシャフト間の相対的位相関係を保持していることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項4】
請求項3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、前記自由回転ギヤが配置されている前記プラネタリシャフトに対しては、前記プラネタリネジと前記自由回転ギヤとの間にて前記プラネタリシャフトを回転可能に支持し、前記自由回転ギヤが配置されていない前記プラネタリシャフトに対しては、前記プラネタリネジから突出している軸部にて前記プラネタリシャフトを回転可能に支持していることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記リテーナは、この中心孔を前記サンシャフトが貫通する円環体であり、前記中心孔の周りに前記プラネタリシャフトを回転可能に支持する支持孔を形成していることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトは6本が設けられ、この内の3本に前記自由回転ギヤが存在し、他のプラネタリシャフトは前記自由回転ギヤが存在しないことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトは9本が設けられ、この内の3本又は6本に前記自由回転ギヤが存在し、他のプラネタリシャフトは前記自由回転ギヤが存在しないことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項8】
回転駆動源の回転を直線運動に変換して出力するアクチュエータであって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構を備え、前記ナットを前記回転駆動源にて回転させることにより、前記サンシャフトに接続された部材を直線運動させることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項9】
請求項8に記載のアクチュエータにおいて、前記部材は軸方向にスライドさせることによりバルブ特性を変更する内燃機関の可変動弁機構に設けられたコントロールシャフトであることを特徴とするアクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−158068(P2011−158068A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22320(P2010−22320)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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