遊星差動ネジ型回転直動変換機構
【課題】遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性向上。
【解決手段】遊星差動ネジ型回転直動変換機構2では、サンシャフト6とプラネタリシャフト8とのギヤ6b,8b間の歯数比Aとネジ6a,8a間の条数比Bとの関係がA<Bであり、プラネタリギヤ8bの有効径Dgとプラネタリネジ8aの有効径Dsとの関係をDg>Dsとしている。このことで差動を生じるプラネタリネジ8aとサンネジ6aとの間の進み角の差は小さくなる。このことでプラネタリネジ8aとサンネジ6aとの間でのネジ歯の歯面間の接触面における極圧を低くでき、摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構2の耐久性を向上でき、更に変換効率も向上する。
【解決手段】遊星差動ネジ型回転直動変換機構2では、サンシャフト6とプラネタリシャフト8とのギヤ6b,8b間の歯数比Aとネジ6a,8a間の条数比Bとの関係がA<Bであり、プラネタリギヤ8bの有効径Dgとプラネタリネジ8aの有効径Dsとの関係をDg>Dsとしている。このことで差動を生じるプラネタリネジ8aとサンネジ6aとの間の進み角の差は小さくなる。このことでプラネタリネジ8aとサンネジ6aとの間でのネジ歯の歯面間の接触面における極圧を低くでき、摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構2の耐久性を向上でき、更に変換効率も向上する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンネジとサンギヤとを有するサンシャフト、プラネタリネジとプラネタリギヤとを有する複数のプラネタリシャフト、及び内ネジと内ギヤとを有するナットを備え、ネジ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星差動ネジ型回転直動変換機構が知られている(例えば特許文献1参照)。この遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、ネジ状歯車とハス歯状歯車とを組み合わせることにより、安定して効率的な回転直動変換を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−56952号公報(第19〜22頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、ハス歯状歯車(ギヤ)にてネジ状歯車の噛み合い状態が安定化されているが、差動を生じるネジ状歯車の噛み合いにおいては、ネジ歯の進み角が異なる噛み合いであるため、ネジ歯の歯面間接触における極圧が高く、摩耗が大きくなるおそれがある。又、ハス歯状歯車に比較してネジ状歯車は軸強度が低いという問題もある。
【0005】
したがって特許文献1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では耐久性が低くなるおそれがあり、耐久性の向上が求められている。
本発明は、ギヤとネジとにより構成されている遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構は、サンネジとサンギヤとを有するサンシャフト、プラネタリネジとプラネタリギヤとを有して前記サンシャフトの外周上に配列された複数のプラネタリシャフト、及び内ネジと内ギヤとを有して前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとを内周側に収納したナットを備え、ネジ間の差動により前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構であって、前記プラネタリシャフトは、前記プラネタリギヤの有効径と前記プラネタリネジの有効径とに差異を有し、この有効径の差異に対応して前記サンシャフトのサンネジ及びサンギヤの有効径と前記ナットの内ネジ及び内ギヤの有効径とが形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明ではプラネタリギヤの有効径とプラネタリネジの有効径とに差を設けている。すなわちプラネタリギヤの有効径とは独立にプラネタリネジの有効径を変化させている。このことにより特許文献1のごとくプラネタリギヤの有効径とプラネタリネジの有効径とを同一にしていた場合に比較して、プラネタリネジと差動を生じているネジ(サンネジ又は内ネジ)との間の噛み合いにおいて、その進み角の差を小さいものとする設計が可能となる。このことによりネジ歯の歯面間接触における極圧を低くでき、差動を生じているネジ間の摩耗を抑制できる。
【0008】
プラネタリネジとは差動を生じていない側のネジ(サンネジ又は内ネジ)との間の噛み合いにおいては進み角の差は大きくなるが、この進み角の差の増大は差動を生じていないネジ間であることから摩耗の増加は少ない。このことにより全体として摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0009】
又、上述したごとくプラネタリネジと差動を生じているネジとの間の進み角差の大小にかかわらずに、プラネタリネジの有効径を大きくする設計も可能となる。特許文献1のごとくプラネタリギヤの有効径とプラネタリネジの有効径とを同一の径にしていた場合にはプラネタリネジでの強度低下の問題を生じるおそれがある。
【0010】
しかし本発明では、プラネタリギヤの有効径とは独立に、プラネタリネジの有効径を大きくすることにより、例え進み角差が大きくなったとしても、プラネタリシャフト全体の強度向上が顕著となる。このことにより遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA<Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg>Dsとしたことを特徴とする。
【0012】
ここではプラネタリネジとサンネジとの間で差動を生じさせる構成である。この構成にて、サンシャフトとプラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比A(サンギヤ歯数/プラネタリギヤ歯数)とネジ間の条数比B(サンネジ条数/プラネタリネジ条数)との関係がA<Bである場合、プラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg>Dsとしている。
【0013】
このことは別の表現では、A<Bである場合、サンネジの有効径Srとプラネタリネジの有効径Dsとの比(Sr/Ds)を、Sr/Ds>Aとした構成である。
このことにより、差動を生じるプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差は小さくなるので、プラネタリネジとサンネジとの間のネジ歯の歯面間接触における極圧を低くでき、ネジ間の摩耗を抑制できる。一方、プラネタリネジと内ネジとの間の進み角の差は大きくなるが、差動を生じていないのでネジ間の摩耗の増加は少ない。このことにより全体として摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0014】
しかも差動を生じるプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差が小さくなることにより、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の変換効率も向上する。
請求項3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA>Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする。
【0015】
ここではプラネタリネジとサンネジとの間で差動を生じさせる構成である。この構成にて、サンシャフトとプラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比A(サンギヤ歯数/プラネタリギヤ歯数)とネジ間の条数比B(サンネジ条数/プラネタリネジ条数)との関係がA>Bである場合、プラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしている。
【0016】
このことは別の表現では、A>Bである場合、サンネジの有効径Srとプラネタリネジの有効径Dsとの比(Sr/Ds)を、Sr/Ds<Aとした構成である。
このことにより、差動を生じるプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差は小さくなるので、プラネタリネジとサンネジとの間のネジ歯の歯面間接触における極圧を低くでき、ネジ間の摩耗を抑制できる。一方、プラネタリネジと内ネジとの間の進み角の差は大きくなるが、差動を生じていないのでネジ間の摩耗の増加は少ない。このことにより全体として摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0017】
しかも、同時にプラネタリネジの有効径Dsはプラネタリギヤの有効径Dgに比較して大きくなっている。このため強度が弱くなる傾向にあるプラネタリネジを太くでき、プラネタリシャフト全体の強度向上が顕著となり、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性向上が特に高いものとなる。
【0018】
しかも差動を生じるプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差が小さくなることにより、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の変換効率も向上する。
請求項4に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項2又は3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンネジと前記プラネタリネジとの進み角の差と、前記内ネジと前記プラネタリネジとの進み角の差とが略同一となる関係に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとにおける前記関係を設定したことを特徴とする。
【0019】
特にプラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジの有効径Dsとの関係を、サンネジとプラネタリネジとの進み角の差と、内ネジとプラネタリネジとの進み角の差とが略同一となる関係にしても良い。
【0020】
このことによりプラネタリネジとサンネジとの間のネジ歯の歯面間接触における極圧を低くできると共に、プラネタリネジと内ネジとの間の極圧を適切に抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構全体での耐久性として、より好ましいものとなる。
【0021】
請求項5に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項4に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトの軸線を前記サンシャフトの周方向にて傾けることにより、前記サンネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差と前記内ネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差とをそれぞれ減少させ、あるいは解消させたことを特徴とする。
【0022】
サンネジとプラネタリネジとの進み角の差と、内ネジとプラネタリネジとの進み角の差とが略同一となっている構成では、プラネタリシャフトの軸線をサンシャフトの周方向にて傾けることにより、サンネジとプラネタリネジとの配置角度の差と内ネジとプラネタリネジとの配置角度の差とをそれぞれ減少させ、あるいは解消させることができる。
【0023】
このように両方の噛み合い部分での角度の差をそれぞれ減少させ、あるいは解消させることにより、共に極圧が十分に小さくなり、より効果的に摩耗が低減され、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性と変換効率とが向上する。
【0024】
請求項6に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項5に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンギヤ及び前記内ギヤの両方がハス歯に、あるいは前記サンギヤ、前記プラネタリギヤ及び前記内ギヤがハス歯に、形成されていることにより、前記サンギヤと前記プラネタリギヤとの噛合、及び前記プラネタリギヤと前記内ギヤとの噛合は、ギヤ間の歯が平行に近づけられ、あるいは平行にされていることを特徴とする。
【0025】
更に、サンギヤ及び内ギヤの両方をハス歯として、あるいはサンギヤ、プラネタリギヤ及び内ギヤをハス歯とし、プラネタリシャフトの軸線をサンシャフトの周方向に傾けた場合に、ギヤ間の歯を平行に近づけたり、あるいは平行にするように構成することができる。このように構成することによりギヤ間の噛み合いも極圧が低くなり、より効果的に摩耗が低減され、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性と変換効率とが向上する。
【0026】
請求項7に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA<Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする。
【0027】
ここではプラネタリネジとサンネジとの間で差動を生じさせる構成である。この構成にて、サンシャフトとプラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比A(サンギヤ歯数/プラネタリギヤ歯数)とネジ間の条数比B(サンネジ条数/プラネタリネジ条数)との関係がA<Bである場合に、プラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしている。
【0028】
このような有効径Dg,Dsの関係では場合には、プラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差は大きくなる。更にプラネタリネジと内ネジとの間の進み角の差についても大きくなる。しかしプラネタリネジにおいてその有効径がプラネタリギヤよりも大きくなることにより、プラネタリシャフト全体の強度向上が顕著となる。このことにより、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0029】
請求項8に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする。
【0030】
プラネタリネジとサンネジとの間で差動を生じさせる構成にて、サンシャフトとプラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとの大小関係がいずれであっても、プラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしている。したがってプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差は大きくなる場合も小さくなる場合もある。プラネタリネジと内ネジとの間の進み角の差については大きくなる。
【0031】
しかしいずれにしてもプラネタリネジの有効径がプラネタリギヤよりも大きくできることにより、プラネタリシャフト全体の強度向上が顕著となる。このことにより、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0032】
請求項9に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項7又は8に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトの軸線を前記サンシャフトの周方向にて傾けることにより、前記サンネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差を減少させ、あるいは解消させたことを特徴とする。
【0033】
このようにプラネタリネジの有効径をプラネタリギヤよりも大きくして耐久性を向上させる場合、有効径の変化によりプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差が大きくなったとしても、プラネタリシャフトの軸線を傾けて配置角度差を減少させることにより、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性と変換効率とを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構の内部構成を示す破断斜視図。
【図2】実施の形態1のプラネタリシャフトの配置状態を示す破断斜視図。
【図3】実施の形態1のナット及びサンシャフトの構成を示す破断斜視図。
【図4】実施の形態1のプラネタリシャフトの構成を示す斜視図。
【図5】実施の形態1のプラネタリシャフトの分解斜視図。
【図6】(a),(b)実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構の作動状態説明図。
【図7】実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構との諸元説明図。
【図8】(A),(B),(a),(b)実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構とにおけるネジの進み角の関係を模式的に示す説明図。
【図9】実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構による回転直動の変換効率と、サンネジ−プラネタリネジ間におけるネジ歯面角度差との関係を示すグラフ。
【図10】(A),(B),(a),(b)実施の形態2の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構とにおけるネジの進み角と配置角度との関係を模式的に示す説明図。
【図11】実施の形態3の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構との諸元説明図。
【図12】(A),(B),(a),(b)実施の形態3の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構とにおけるネジの進み角の関係を模式的に示す説明図。
【図13】(A),(B),(a),(b)実施の形態4の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構とにおけるネジの進み角と配置角度との関係を模式的に示す説明図。
【図14】実施の形態5の遊星差動ネジ型回転直動変換機構における諸元説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[実施の形態1]
〈構成〉図1は上述した発明が適用された遊星差動ネジ型回転直動変換機構2の内部構成を示している。この遊星差動ネジ型回転直動変換機構2は、例えば内燃機関の可変動弁機構用アクチュエータとして用いられるものである。
【0036】
遊星差動ネジ型回転直動変換機構2は、外側を構成するナット4、ナット4の内周側に配置されたサンシャフト6、及びナット4とサンシャフト6との間に配列された複数のプラネタリシャフト8が主たる構成である。
【0037】
尚、本実施の形態では、図2にプラネタリシャフト8の配置状態を示すごとく、プラネタリシャフト8は、9本が、サンシャフト6の外周上に等位相(40°)間隔で配置されている。
【0038】
この遊星差動ネジ型回転直動変換機構2が内燃機関の可変動弁機構用アクチュエータとして用いられる場合には、ナット4の外側にロータが固定され、このロータに対向して外側にステータが配置される。このことにより電動モータが構成され、電動アクチュエータとして用いられる。
【0039】
したがってこのような電動アクチュエータとして用いられる場合には、ナット4が電動モータにより回転され、このナット4の回転によりプラネタリシャフト8がサンシャフト6の外周上で転動する。この転動時に生じるネジ間の差動によりサンシャフト6が軸方向に移動して、内燃機関の可変動弁機構を駆動することになる。
【0040】
ナット4は、図3にプラネタリシャフト8を除いて示すごとく、内ネジ4aと、この内ネジ4aの両側にてネジが形成されていない内周面に固定されたリングギヤ4b,4c(内ギヤに相当)とを備えている。内ネジ4aは5条からなる左ネジである。リングギヤ4b,4cは歯数が50である。
【0041】
サンシャフト6は、サンネジ6a、サンネジ6aの軸方向前後に配置されている平歯ギヤであるサンギヤ6b,6c、及びナット4より飛び出した位置にストレートスプライン6d(後述する図6に示す)を備えている。サンネジ6aは4条からなる右ネジである。サンギヤ6b,6cは歯数が31である。
【0042】
そしてプラネタリシャフト8は、前述したごとく9本が、ナット4及びサンシャフト6と軸方向を同一にしてナット4とサンシャフト6との間に等位相間隔で配列されている。
各プラネタリシャフト8は、図4,5に示すごとく、プラネタリネジ8a、プラネタリネジ8aの軸方向前方側(遊星差動ネジ型回転直動変換機構2ではサンシャフト6の突出側)に前方プラネタリギヤ8b、及びこれとは反対側である軸方向後方側には後方プラネタリギヤ8cを備えている。尚、前方プラネタリギヤ8bはプラネタリネジ8aとは一体に形成されているが、後方プラネタリギヤ8cはプラネタリネジ8aに対して自由回転可能に軸支されている。プラネタリネジ8aは1条からなる左ネジである。前方プラネタリギヤ8b及び後方プラネタリギヤ8cは共に歯数が10である。
【0043】
このように構成された遊星差動ネジ型回転直動変換機構2は、電動アクチュエータのハウジング内で、図6に示したごとくベアリングBrにて支えられた状態でナット4が回転駆動される。この回転駆動により、プラネタリシャフト8がサンシャフト6の周囲で転動する。サンシャフト6はストレートスプライン6dにより回転不能でかつ軸方向に移動可能に支持されている。このためプラネタリシャフト8の転動時にはプラネタリシャフト8のプラネタリネジ8aとサンシャフト6のサンネジ6aとの間で差動が生じ、サンシャフト6は、図6の(a)に示したごとくナット4から図示右側へ伸び出した状態と、(b)に示したごとくナット4内に引き込んだ状態との間で軸方向移動する。
【0044】
ここで回転直動変換を実現する部分である上述したナット4の内ネジ4a及び軸方向前方のリングギヤ4b、サンシャフト6のサンネジ6a及び軸方向前方のサンギヤ6b、プラネタリシャフト8のプラネタリネジ8a及び前方プラネタリギヤ8bの諸元を図7に[実施例]として示す。更に従来の構成における諸元を[比較例]として示す。
【0045】
[比較例]比較例のプラネタリシャフトのギヤとネジとの有効径は同一である。したがって、これに対応してサンシャフト及びナットにおいても、それぞれのギヤとネジとの有効径は同一である。すなわち、サンシャフトのギヤとネジとの有効径は共に12.7mm、プラネタリシャフトのギヤとネジとの有効径は共に4.2mm、ナットのギヤとネジとの有効径は共に21mmである。有効径比としてはサンシャフト:プラネタリシャフト:ナット=3:1:5である。
【0046】
そして、ネジの条数が、サンシャフトが4、プラネタリシャフトが1、ナットが5である。このことにより、サンシャフトのネジの進み角が6.69°、プラネタリシャフトのネジの進み角が5.07°、ナットのネジの進み角が5.07°となる。
【0047】
したがって比較例において、ナットが回転してプラネタリシャフトがサンシャフトの周りで転動すると、プラネタリシャフトとサンシャフトとのネジ間で差動が生じて、サンシャフトが軸方向に移動することになる。
【0048】
[実施例]本実施の形態における実施例のプラネタリシャフト8のギヤ(前方プラネタリギヤ8b)とネジ(プラネタリネジ8a)との間には有効径に差異が設けられている。すなわち前方プラネタリギヤ8bの有効径は4.2mmであるが、プラネタリネジ8aの有効径は3.67mmである。
【0049】
そして、プラネタリシャフト8における有効径の差異に対応して、サンシャフト6のネジ(サンネジ6a)及びギヤ(サンギヤ6b)の有効径と、ナット4のネジ(内ネジ4a)及びギヤ(リングギヤ4b)の有効径とが形成されている。すなわち、サンシャフト6については、サンギヤ6bの有効径は12.7mmであるが、サンネジ6aの有効径は13.23とされている。ナット4については、リングギヤ4bの有効径は21mmであるが、内ネジ4aの有効径は20.57mmとされている。
〈作用〉上述したごとく本実施の形態のギヤ4b,6b,8bの有効径は、比較例におけるギヤの有効径と同一である。しかし本実施の形態のネジ4a,6a,8aの有効径は、比較例とは異なり、プラネタリシャフト8のプラネタリネジ8aの有効径は小さくされている。このことに対応してナット4の内ネジ4aの有効径は小さくされ、サンシャフト6のサンネジ6aの有効径は大きくされている。
【0050】
このように本実施の形態の遊星差動ネジ型回転直動変換機構2では、ギヤ4b,6b,8bとネジ4a,6a,8aとの間で有効径に差が設けられているが、各ネジ4a,6a,8aの条数などの他の諸元については同じである。このことから、ネジ4a,6a,8aの進み角は比較例の場合とは異なるものとなる。すなわちプラネタリシャフト8のプラネタリネジ8aでは進み角は5.80°、ナット4の内ネジ4aの進み角は5.17°、サンシャフト6のサンネジ6aの進み角は6.42°となる。
【0051】
したがって図8の(A)に示すごとく、実施例では、差動を生じるプラネタリシャフト8とサンシャフト6との間では、ネジ6a,8a間の進み角差は0.62°となる。図8の(a)に示す比較例では1.62°である。すなわち、差動を生じる部分での進み角差は、比較例に対して実施例では十分に小さくされている。
【0052】
尚、図8の(B)に示すごとく実施例では、差動を生じないプラネタリシャフト8とナット4との間では、ネジ8a,4a間の進み角差は0.63°となり、図8の(b)に示す比較例での0°より大きくなる。
【0053】
そしてこのように実施例の進み角が比較例に対して異なっていても、ナット4の回転量とサンシャフト6の軸方向のストローク量との関係は比較例と同じである。
尚、図8はプラネタリシャフトに対するサンシャフト及びナットのネジ進み角の関係を示した模式図であり、角度や角度差などを実際よりも誇張して示している。以下同様な模式図についても同じである。
【0054】
図9に遊星差動ネジ型回転直動変換機構2による回転直動の変換効率(%)と、サンネジ6a−プラネタリネジ8a間の進み角差(°)との関係を示す。本実施の形態では、プラネタリシャフト8とサンシャフト6との間で、ネジ6a,8a間の進み角差は、比較例の1.62°から0.62°に低下したことにより、十分な効率向上(dF)が生じている。
【0055】
尚、回転から直動への変換効率は、差動を生じるプラネタリシャフト8とサンシャフト6との間の進み角度差が寄与しており、差動を生じないナット4とプラネタリシャフト8との間での進み角度差の増加は影響ない。
〈効果〉(1)本実施の形態の遊星差動ネジ型回転直動変換機構2では、上述したごとくギヤ4b,6b,8bとネジ4a,6a,8aとの間の有効径に差異を設けている。
【0056】
このことにより前方プラネタリギヤ8bの有効径とは独立にプラネタリネジ8aの有効径を変化させることができる。
本実施の形態では、特にサンシャフト6とプラネタリシャフト8とのギヤ6b,8b間の歯数比A(=3.1/1)とネジ6a,8a間の条数比B(=4/1)との関係がA<Bである。そしてこの状態にて、プラネタリギヤ8bの有効径Dg(=4.2mm)とプラネタリネジ8aの有効径Ds(=3.67mm)との関係をDg>Dsとしている。
【0057】
尚、このことは別の表現では、A<Bである場合、サンネジの有効径Sr(=13.23mm)とプラネタリネジの有効径Ds(=3.67mm)との比(Sr/Ds=3.60)を、Sr/Ds>Aとした構成である。
【0058】
このことにより、差動を生じるプラネタリネジ8aとサンネジ6aとの間の進み角の差は図7,8に示したごとく小さくなる。このためプラネタリネジ8aとサンネジ6aとの間のネジ歯の歯面間接触における極圧を低くでき、ネジ6a,8a間の摩耗を抑制できる。
【0059】
一方、差動を生じないプラネタリネジ8aと内ネジ4aとの間の進み角の差は大きくなる。しかし差動を生じていないのでネジ4a,8a間の摩耗の増加は少ない。このことにより全体として摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構2の耐久性を向上させることができる。
【0060】
しかも差動を生じるプラネタリネジ8aとサンネジ6aとの間の進み角の差が小さくなることにより遊星差動ネジ型回転直動変換機構2の回転直動変換効率も向上させることができる。
【0061】
[実施の形態2]
〈構成〉本実施の形態では前記実施の形態1に示した遊星差動ネジ型回転直動変換機構2の構成において、図10の(A),(B)に示すごとく、プラネタリシャフト108の軸線Cpを、サンシャフト106及びナット104の軸線Caに対して、サンシャフト106の周方向に0.62°傾けて配置したものである。他の構成については前記実施の形態1と同じである。
〈作用〉前記図7に示したごとく、本実施の形態においても、プラネタリネジ108aの進み角は、サンシャフト106のサンネジ106aの進み角とは0.62°の差が存在し、ナット104の内ネジ104aの進み角とは0.63°の差が存在する。すなわち2つの進み角の差は略同一である。
【0062】
したがってプラネタリシャフト108の軸線Cpを、サンシャフト106及びナット104の軸線Caに対して周方向に0.62°傾けた配置角度とする。このことにより、図10の(A)に示すごとく、プラネタリネジ108aはサンシャフト106のサンネジ106aに対して平行に接触して噛合する。更にプラネタリネジ108aはナット104の内ネジ104aに対しては配置角度が0.01°となり、略平行に接触して噛合する。
〈効果〉上述のごとくプラネタリシャフト108の軸線Cpをサンシャフト106の周方向にて傾けることにより、サンネジ106aとプラネタリネジ108aとの配置角度の差と、内ネジ104aとプラネタリネジ108aとの配置角度の差とをそれぞれ同時に解消させることができる。
【0063】
このように両方の噛み合い部分での配置角度差を解消させることにより、共に極圧が十分に小さくなり、より効果的に摩耗が低減されて、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性が向上すると共に、回転直動変換効率も向上する。
【0064】
[実施の形態3]
〈構成〉本実施の形態の遊星差動ネジ型回転直動変換機構の諸元を図11に実施例として示す。図示するごとく、前記実施の形態1に示した遊星差動ネジ型回転直動変換機構2とは、サンシャフトの条数が2である点が異なり、これに関連して諸元が異なる。そして前記実施の形態1ではプラネタリネジの有効径がプラネタリギヤの有効径よりも小さくされていたが、本実施の形態では逆にプラネタリネジの有効径はプラネタリギヤの有効径よりも大きくされている。そしてこの有効径の差異に対応してサンシャフトのサンネジ及びサンギヤの有効径とナットの内ネジ及び内ギヤの有効径とが形成されている。
【0065】
尚、図11には、比較例として、ネジとギヤとの有効径が同一である遊星差動ネジ型回転直動変換機構の諸元を示す。
〈作用〉このような構成により、図11に示すごとく実施例での各ネジの進み角は比較例とは異なるものとなる。すなわちプラネタリシャフトのプラネタリネジでは進み角は4.22°、ナットの内ネジの進み角は4.85°、サンシャフトのサンネジの進み角は3.59°となる。
【0066】
したがって図12の(A)に示すごとく、実施例では、差動を生じるプラネタリシャフト208とサンシャフト206との間では、ネジ206a,208a間の進み角差は0.63°となる。図12の(a)に示す比較例では1.71°である。すなわち、差動を生じる部分での進み角差は、比較例に対して実施例では十分に小さくされている。
【0067】
尚、図12の(B)に示すごとく実施例ではプラネタリシャフト208とナット204との間では、ネジ208a,204a間の進み角差は0.63°となり、図12の(b)に示す比較例での0°より大きくなる。
【0068】
そしてこのように進み角が比較例に対して異なっていても、ナット204の回転量とサンシャフト206の軸方向のストローク量との関係は比較例と同じである。尚、本実施の形態ではサンシャフト206のサンネジ206aが2条であることから、ナット204の回転駆動に対するサンシャフト206の軸移動の方向は前記実施の形態1,2とは逆方向となる。
〈効果〉(1)このようにサンシャフト206のサンネジ206aの条数が2であることにより差動を生じる遊星差動ネジ型回転直動変換機構においても、前方プラネタリギヤの有効径とプラネタリネジ208aの有効径とに差を設けている。このことにより、前方プラネタリギヤの有効径とは独立にプラネタリネジ208aの有効径を変化させることができる。
【0069】
本実施の形態では、特にサンシャフト206とプラネタリシャフト208とのギヤ間の歯数比A(=3.1/1)とネジ206a,208a間の条数比B(=2/1)との関係がA>Bである。そしてこの状態にて、プラネタリギヤの有効径Dg(=4.2mm)とプラネタリネジ208aの有効径Ds(=5.044mm)との関係をDg<Dsとしている。
【0070】
尚、このことは別の表現では、A>Bである場合、サンネジの有効径Sr(=11.86mm)とプラネタリネジの有効径Ds(=5.044mm)との比(Sr/Ds=2.35)を、Sr/Ds<Aとした構成である。
【0071】
このことにより、差動を生じるプラネタリネジ208aとサンネジ206aとの間の進み角の差は図11,12に示したごとく小さくなる。このためプラネタリネジ208aとサンネジ206aとの間のネジ歯の歯面間接触における極圧を低くでき、ネジ206a,208a間の摩耗を抑制できる。
【0072】
一方、差動を生じないプラネタリネジ208aと内ネジ204aとの間の進み角の差は大きくなる。しかし差動を生じていないのでネジ204a,208a間の摩耗の増加は少ない。このことにより全体として摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0073】
しかも差動を生じるプラネタリネジ208aとサンネジ206aとの間の進み角の差が小さくなることにより遊星差動ネジ型回転直動変換機構の回転直動変換効率も向上させることができる。
【0074】
(2)更に前記実施の形態1,2ではプラネタリネジの有効径をプラネタリギヤより小さくしていたが、本実施の形態のプラネタリネジ208aは、逆にプラネタリギヤより有効径を大きくしている。このようにプラネタリネジ208aを太くすることができるので、プラネタリシャフト208全体の強度向上が顕著であり、遊星差動ネジ型回転直動変換機構として耐久性を一層高めることができる。
【0075】
[実施の形態4]
〈構成〉本実施の形態では前記実施の形態3に示した遊星差動ネジ型回転直動変換機構に対して、図13の(A),(B)に実施例として示すごとく、プラネタリシャフト308の軸線Cpを、サンシャフト306及びナット304の軸線Caに対して、サンシャフト306の周方向に0.63°傾けて配置したものである。他の構成については前記実施の形態3と同じである。図13の比較例(a),(b)は図12の比較例と同じである。
〈作用〉前記図11に示したごとく、本実施の形態においてもプラネタリシャフト308におけるプラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジ308aの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしている。このためプラネタリネジ308aの進み角は、サンシャフト306のサンネジ306aの進み角とは0.63°の差が存在し、ナット304の内ネジ304aの進み角とも0.63°の差が存在する。すなわち2つの進み角の差は同一である。
【0076】
したがってプラネタリシャフト308の軸線Cpを、サンシャフト306及びナット304の軸線Caに対して0.63°傾けた配置角度とする。このことにより、図13の(A)に示すごとく、プラネタリネジ308aはサンシャフト306のサンネジ306aに対して平行に接触して噛合する。更にプラネタリネジ308aはナット304の内ネジ304aに対しても平行に接触して噛合する。
〈効果〉プラネタリシャフト308の軸線Cpをサンシャフト306の周方向にて傾けることにより、サンネジ306aとプラネタリネジ308aとの配置角度差と、内ネジ304aとプラネタリネジ308aとの配置角度差とをそれぞれ同時に解消させることができる。
【0077】
このように両方の噛み合い部分での配置角度差を同時に解消させることにより、共に極圧が十分に小さくなり、より効果的に摩耗が低減されて、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性が向上すると共に、回転直動変換効率も向上する。
【0078】
しかも前記実施の形態3と同様に、プラネタリネジ308aをプラネタリギヤよりも太くできるのでプラネタリシャフト308全体の強度向上が顕著であり、遊星差動ネジ型回転直動変換機構としても耐久性を一層高めることができる。
【0079】
[実施の形態5]
〈構成〉本実施の形態の遊星差動ネジ型回転直動変換機構の諸元を図14に示す。図示するごとく、前記実施の形態1に示した遊星差動ネジ型回転直動変換機構とは、各ネジの有効径が異なり、これに関連して諸元が異なる。
【0080】
前記実施の形態1ではプラネタリシャフトのプラネタリネジの有効径がプラネタリギヤの有効径よりも小さくされていたが、本実施の形態では逆にプラネタリシャフトのプラネタリネジの有効径はプラネタリギヤの有効径よりも大きくされている。そしてこの有効径の差異に対応してサンシャフトのサンネジ及びサンギヤの有効径とナットの内ネジ及び内ギヤの有効径とが形成されている。
【0081】
更に本実施の形態では、プラネタリシャフトについては、その軸線をサンシャフトの周方向で傾けることにより、プラネタリネジの配置角度をサンネジの配置角度に近づけている。例えば0.66°以上傾けることにより、図7に示した比較例の配置角度差(1.62°)の場合よりもプラネタリネジとサンネジとの配置角度差を同等あるいは小さくしている。他の構成については前記実施の形態1と同じである。
〈作用〉プラネタリネジの有効径がプラネタリギヤの有効径よりも大きくされていることにより、本実施の形態での各ネジの進み角は、プラネタリネジでは進み角は4.63°、ナットの内ネジの進み角は4.95°、サンシャフトのサンネジの進み角は6.91°となる。
【0082】
したがってプラネタリネジは、サンネジ及び内ネジとの進み角差は図7に示した比較例よりも大きくなる。ただしプラネタリシャフトの周方向での傾きにより、プラネタリネジの配置角度をサンネジの配置角度に近づけている。
【0083】
このプラネタリシャフトの傾斜により、プラネタリネジとナットの内ネジとの配置角度差は逆に0.98°となり大きくなるが、差動を生じないプラネタリネジとナットの内ネジとの間であるので摩耗の増加は少ない。
〈効果〉(1)本実施の形態では、サンネジの条数が4である遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前方プラネタリギヤの有効径よりもプラネタリネジの有効径を大きくすることにより有効径に差を設けている。
【0084】
すなわちサンシャフトとプラネタリシャフトとのギヤ間の歯数比A(=3.1/1)とネジ間の条数比B(=4/1)との関係がA<Bである。そしてこの状態にて、プラネタリギヤの有効径Dg(=4.2mm)とプラネタリネジの有効径Ds(=4.6mm)との関係をDg<Dsとしている。
【0085】
このことにより、プラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差は大きくなるが、前述したごとくプラネタリシャフトの傾きにより、変換効率を向上できる。
そして本実施の形態では、プラネタリネジの有効径をプラネタリギヤよりも大きくしていることから、プラネタリシャフト全体の強度向上が顕著となる。このことにより遊星差動ネジ型回転直動変換機構としても耐久性を高めることができる。
【0086】
[その他の実施の形態]
・前記実施の形態2,4においては、プラネタリシャフトの軸線をサンシャフトの周方向にて傾けることにより、サンネジとプラネタリネジとの配置角度差、及び内ネジとプラネタリネジとの配置角度差とをそれぞれ解消させていたが、このように差を略0として解消するのではなく、或る程度、差を減少させたものでも良い。このことによっても、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の変換効率を上げ、更に耐摩耗性も向上させることができる。
【0087】
前記実施の形態5においては、プラネタリシャフトの周方向での軸線の傾きによりプラネタリネジの配置角度をサンネジの配置角度に近づけあるいは同一としていたが、プラネタリシャフトの軸線を傾かせずに、サンシャフト及びナットの軸線に平行に配置しても良い。この構成でも、プラネタリネジの有効径をプラネタリギヤよりも大きくしているのでプラネタリシャフト全体の強度向上が生じ、遊星差動ネジ型回転直動変換機構としても耐久性を高めることができる。
【0088】
・実施の形態2,4,5において、プラネタリシャフトの軸線の傾きに対応して、更に、サンギヤ及び内ギヤの両方をハス歯として、あるいはサンギヤ、プラネタリギヤ及び内ギヤをハス歯とし、ギヤ間の歯を平行に近づけたり、あるいは平行にするように構成しても良い。このことによりギヤ間の噛み合いも極圧が低くなり、より効果的に摩耗が低減され、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の変換効率及び耐久性が向上する。
【符号の説明】
【0089】
2…遊星差動ネジ型回転直動変換機構、4…ナット、4a…内ネジ、4b,4c…リングギヤ、6…サンシャフト、6a…サンネジ、6b,6c…サンギヤ、6d…ストレートスプライン、8…プラネタリシャフト、8a…プラネタリネジ、8b…前方プラネタリギヤ、8c…後方プラネタリギヤ、104…ナット、104a…内ネジ、106…サンシャフト、106a…サンネジ、108…プラネタリシャフト、108a…プラネタリネジ、204…ナット、204a…内ネジ、206…サンシャフト、206a…サンネジ、208…プラネタリシャフト、208a…プラネタリネジ、304…ナット、304a…内ネジ、306…サンシャフト、306a…サンネジ、308…プラネタリシャフト、308a…プラネタリネジ、Br…ベアリング、Ca,Cp…軸線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンネジとサンギヤとを有するサンシャフト、プラネタリネジとプラネタリギヤとを有する複数のプラネタリシャフト、及び内ネジと内ギヤとを有するナットを備え、ネジ間の差動によりナットとサンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星差動ネジ型回転直動変換機構が知られている(例えば特許文献1参照)。この遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、ネジ状歯車とハス歯状歯車とを組み合わせることにより、安定して効率的な回転直動変換を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−56952号公報(第19〜22頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、ハス歯状歯車(ギヤ)にてネジ状歯車の噛み合い状態が安定化されているが、差動を生じるネジ状歯車の噛み合いにおいては、ネジ歯の進み角が異なる噛み合いであるため、ネジ歯の歯面間接触における極圧が高く、摩耗が大きくなるおそれがある。又、ハス歯状歯車に比較してネジ状歯車は軸強度が低いという問題もある。
【0005】
したがって特許文献1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では耐久性が低くなるおそれがあり、耐久性の向上が求められている。
本発明は、ギヤとネジとにより構成されている遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構は、サンネジとサンギヤとを有するサンシャフト、プラネタリネジとプラネタリギヤとを有して前記サンシャフトの外周上に配列された複数のプラネタリシャフト、及び内ネジと内ギヤとを有して前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとを内周側に収納したナットを備え、ネジ間の差動により前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構であって、前記プラネタリシャフトは、前記プラネタリギヤの有効径と前記プラネタリネジの有効径とに差異を有し、この有効径の差異に対応して前記サンシャフトのサンネジ及びサンギヤの有効径と前記ナットの内ネジ及び内ギヤの有効径とが形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明ではプラネタリギヤの有効径とプラネタリネジの有効径とに差を設けている。すなわちプラネタリギヤの有効径とは独立にプラネタリネジの有効径を変化させている。このことにより特許文献1のごとくプラネタリギヤの有効径とプラネタリネジの有効径とを同一にしていた場合に比較して、プラネタリネジと差動を生じているネジ(サンネジ又は内ネジ)との間の噛み合いにおいて、その進み角の差を小さいものとする設計が可能となる。このことによりネジ歯の歯面間接触における極圧を低くでき、差動を生じているネジ間の摩耗を抑制できる。
【0008】
プラネタリネジとは差動を生じていない側のネジ(サンネジ又は内ネジ)との間の噛み合いにおいては進み角の差は大きくなるが、この進み角の差の増大は差動を生じていないネジ間であることから摩耗の増加は少ない。このことにより全体として摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0009】
又、上述したごとくプラネタリネジと差動を生じているネジとの間の進み角差の大小にかかわらずに、プラネタリネジの有効径を大きくする設計も可能となる。特許文献1のごとくプラネタリギヤの有効径とプラネタリネジの有効径とを同一の径にしていた場合にはプラネタリネジでの強度低下の問題を生じるおそれがある。
【0010】
しかし本発明では、プラネタリギヤの有効径とは独立に、プラネタリネジの有効径を大きくすることにより、例え進み角差が大きくなったとしても、プラネタリシャフト全体の強度向上が顕著となる。このことにより遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA<Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg>Dsとしたことを特徴とする。
【0012】
ここではプラネタリネジとサンネジとの間で差動を生じさせる構成である。この構成にて、サンシャフトとプラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比A(サンギヤ歯数/プラネタリギヤ歯数)とネジ間の条数比B(サンネジ条数/プラネタリネジ条数)との関係がA<Bである場合、プラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg>Dsとしている。
【0013】
このことは別の表現では、A<Bである場合、サンネジの有効径Srとプラネタリネジの有効径Dsとの比(Sr/Ds)を、Sr/Ds>Aとした構成である。
このことにより、差動を生じるプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差は小さくなるので、プラネタリネジとサンネジとの間のネジ歯の歯面間接触における極圧を低くでき、ネジ間の摩耗を抑制できる。一方、プラネタリネジと内ネジとの間の進み角の差は大きくなるが、差動を生じていないのでネジ間の摩耗の増加は少ない。このことにより全体として摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0014】
しかも差動を生じるプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差が小さくなることにより、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の変換効率も向上する。
請求項3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA>Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする。
【0015】
ここではプラネタリネジとサンネジとの間で差動を生じさせる構成である。この構成にて、サンシャフトとプラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比A(サンギヤ歯数/プラネタリギヤ歯数)とネジ間の条数比B(サンネジ条数/プラネタリネジ条数)との関係がA>Bである場合、プラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしている。
【0016】
このことは別の表現では、A>Bである場合、サンネジの有効径Srとプラネタリネジの有効径Dsとの比(Sr/Ds)を、Sr/Ds<Aとした構成である。
このことにより、差動を生じるプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差は小さくなるので、プラネタリネジとサンネジとの間のネジ歯の歯面間接触における極圧を低くでき、ネジ間の摩耗を抑制できる。一方、プラネタリネジと内ネジとの間の進み角の差は大きくなるが、差動を生じていないのでネジ間の摩耗の増加は少ない。このことにより全体として摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0017】
しかも、同時にプラネタリネジの有効径Dsはプラネタリギヤの有効径Dgに比較して大きくなっている。このため強度が弱くなる傾向にあるプラネタリネジを太くでき、プラネタリシャフト全体の強度向上が顕著となり、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性向上が特に高いものとなる。
【0018】
しかも差動を生じるプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差が小さくなることにより、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の変換効率も向上する。
請求項4に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項2又は3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンネジと前記プラネタリネジとの進み角の差と、前記内ネジと前記プラネタリネジとの進み角の差とが略同一となる関係に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとにおける前記関係を設定したことを特徴とする。
【0019】
特にプラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジの有効径Dsとの関係を、サンネジとプラネタリネジとの進み角の差と、内ネジとプラネタリネジとの進み角の差とが略同一となる関係にしても良い。
【0020】
このことによりプラネタリネジとサンネジとの間のネジ歯の歯面間接触における極圧を低くできると共に、プラネタリネジと内ネジとの間の極圧を適切に抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構全体での耐久性として、より好ましいものとなる。
【0021】
請求項5に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項4に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトの軸線を前記サンシャフトの周方向にて傾けることにより、前記サンネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差と前記内ネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差とをそれぞれ減少させ、あるいは解消させたことを特徴とする。
【0022】
サンネジとプラネタリネジとの進み角の差と、内ネジとプラネタリネジとの進み角の差とが略同一となっている構成では、プラネタリシャフトの軸線をサンシャフトの周方向にて傾けることにより、サンネジとプラネタリネジとの配置角度の差と内ネジとプラネタリネジとの配置角度の差とをそれぞれ減少させ、あるいは解消させることができる。
【0023】
このように両方の噛み合い部分での角度の差をそれぞれ減少させ、あるいは解消させることにより、共に極圧が十分に小さくなり、より効果的に摩耗が低減され、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性と変換効率とが向上する。
【0024】
請求項6に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項5に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンギヤ及び前記内ギヤの両方がハス歯に、あるいは前記サンギヤ、前記プラネタリギヤ及び前記内ギヤがハス歯に、形成されていることにより、前記サンギヤと前記プラネタリギヤとの噛合、及び前記プラネタリギヤと前記内ギヤとの噛合は、ギヤ間の歯が平行に近づけられ、あるいは平行にされていることを特徴とする。
【0025】
更に、サンギヤ及び内ギヤの両方をハス歯として、あるいはサンギヤ、プラネタリギヤ及び内ギヤをハス歯とし、プラネタリシャフトの軸線をサンシャフトの周方向に傾けた場合に、ギヤ間の歯を平行に近づけたり、あるいは平行にするように構成することができる。このように構成することによりギヤ間の噛み合いも極圧が低くなり、より効果的に摩耗が低減され、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性と変換効率とが向上する。
【0026】
請求項7に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA<Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする。
【0027】
ここではプラネタリネジとサンネジとの間で差動を生じさせる構成である。この構成にて、サンシャフトとプラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比A(サンギヤ歯数/プラネタリギヤ歯数)とネジ間の条数比B(サンネジ条数/プラネタリネジ条数)との関係がA<Bである場合に、プラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしている。
【0028】
このような有効径Dg,Dsの関係では場合には、プラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差は大きくなる。更にプラネタリネジと内ネジとの間の進み角の差についても大きくなる。しかしプラネタリネジにおいてその有効径がプラネタリギヤよりも大きくなることにより、プラネタリシャフト全体の強度向上が顕著となる。このことにより、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0029】
請求項8に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする。
【0030】
プラネタリネジとサンネジとの間で差動を生じさせる構成にて、サンシャフトとプラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとの大小関係がいずれであっても、プラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしている。したがってプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差は大きくなる場合も小さくなる場合もある。プラネタリネジと内ネジとの間の進み角の差については大きくなる。
【0031】
しかしいずれにしてもプラネタリネジの有効径がプラネタリギヤよりも大きくできることにより、プラネタリシャフト全体の強度向上が顕著となる。このことにより、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0032】
請求項9に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構では、請求項7又は8に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトの軸線を前記サンシャフトの周方向にて傾けることにより、前記サンネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差を減少させ、あるいは解消させたことを特徴とする。
【0033】
このようにプラネタリネジの有効径をプラネタリギヤよりも大きくして耐久性を向上させる場合、有効径の変化によりプラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差が大きくなったとしても、プラネタリシャフトの軸線を傾けて配置角度差を減少させることにより、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性と変換効率とを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構の内部構成を示す破断斜視図。
【図2】実施の形態1のプラネタリシャフトの配置状態を示す破断斜視図。
【図3】実施の形態1のナット及びサンシャフトの構成を示す破断斜視図。
【図4】実施の形態1のプラネタリシャフトの構成を示す斜視図。
【図5】実施の形態1のプラネタリシャフトの分解斜視図。
【図6】(a),(b)実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構の作動状態説明図。
【図7】実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構との諸元説明図。
【図8】(A),(B),(a),(b)実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構とにおけるネジの進み角の関係を模式的に示す説明図。
【図9】実施の形態1の遊星差動ネジ型回転直動変換機構による回転直動の変換効率と、サンネジ−プラネタリネジ間におけるネジ歯面角度差との関係を示すグラフ。
【図10】(A),(B),(a),(b)実施の形態2の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構とにおけるネジの進み角と配置角度との関係を模式的に示す説明図。
【図11】実施の形態3の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構との諸元説明図。
【図12】(A),(B),(a),(b)実施の形態3の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構とにおけるネジの進み角の関係を模式的に示す説明図。
【図13】(A),(B),(a),(b)実施の形態4の遊星差動ネジ型回転直動変換機構と比較例の遊星差動ネジ型回転直動変換機構とにおけるネジの進み角と配置角度との関係を模式的に示す説明図。
【図14】実施の形態5の遊星差動ネジ型回転直動変換機構における諸元説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[実施の形態1]
〈構成〉図1は上述した発明が適用された遊星差動ネジ型回転直動変換機構2の内部構成を示している。この遊星差動ネジ型回転直動変換機構2は、例えば内燃機関の可変動弁機構用アクチュエータとして用いられるものである。
【0036】
遊星差動ネジ型回転直動変換機構2は、外側を構成するナット4、ナット4の内周側に配置されたサンシャフト6、及びナット4とサンシャフト6との間に配列された複数のプラネタリシャフト8が主たる構成である。
【0037】
尚、本実施の形態では、図2にプラネタリシャフト8の配置状態を示すごとく、プラネタリシャフト8は、9本が、サンシャフト6の外周上に等位相(40°)間隔で配置されている。
【0038】
この遊星差動ネジ型回転直動変換機構2が内燃機関の可変動弁機構用アクチュエータとして用いられる場合には、ナット4の外側にロータが固定され、このロータに対向して外側にステータが配置される。このことにより電動モータが構成され、電動アクチュエータとして用いられる。
【0039】
したがってこのような電動アクチュエータとして用いられる場合には、ナット4が電動モータにより回転され、このナット4の回転によりプラネタリシャフト8がサンシャフト6の外周上で転動する。この転動時に生じるネジ間の差動によりサンシャフト6が軸方向に移動して、内燃機関の可変動弁機構を駆動することになる。
【0040】
ナット4は、図3にプラネタリシャフト8を除いて示すごとく、内ネジ4aと、この内ネジ4aの両側にてネジが形成されていない内周面に固定されたリングギヤ4b,4c(内ギヤに相当)とを備えている。内ネジ4aは5条からなる左ネジである。リングギヤ4b,4cは歯数が50である。
【0041】
サンシャフト6は、サンネジ6a、サンネジ6aの軸方向前後に配置されている平歯ギヤであるサンギヤ6b,6c、及びナット4より飛び出した位置にストレートスプライン6d(後述する図6に示す)を備えている。サンネジ6aは4条からなる右ネジである。サンギヤ6b,6cは歯数が31である。
【0042】
そしてプラネタリシャフト8は、前述したごとく9本が、ナット4及びサンシャフト6と軸方向を同一にしてナット4とサンシャフト6との間に等位相間隔で配列されている。
各プラネタリシャフト8は、図4,5に示すごとく、プラネタリネジ8a、プラネタリネジ8aの軸方向前方側(遊星差動ネジ型回転直動変換機構2ではサンシャフト6の突出側)に前方プラネタリギヤ8b、及びこれとは反対側である軸方向後方側には後方プラネタリギヤ8cを備えている。尚、前方プラネタリギヤ8bはプラネタリネジ8aとは一体に形成されているが、後方プラネタリギヤ8cはプラネタリネジ8aに対して自由回転可能に軸支されている。プラネタリネジ8aは1条からなる左ネジである。前方プラネタリギヤ8b及び後方プラネタリギヤ8cは共に歯数が10である。
【0043】
このように構成された遊星差動ネジ型回転直動変換機構2は、電動アクチュエータのハウジング内で、図6に示したごとくベアリングBrにて支えられた状態でナット4が回転駆動される。この回転駆動により、プラネタリシャフト8がサンシャフト6の周囲で転動する。サンシャフト6はストレートスプライン6dにより回転不能でかつ軸方向に移動可能に支持されている。このためプラネタリシャフト8の転動時にはプラネタリシャフト8のプラネタリネジ8aとサンシャフト6のサンネジ6aとの間で差動が生じ、サンシャフト6は、図6の(a)に示したごとくナット4から図示右側へ伸び出した状態と、(b)に示したごとくナット4内に引き込んだ状態との間で軸方向移動する。
【0044】
ここで回転直動変換を実現する部分である上述したナット4の内ネジ4a及び軸方向前方のリングギヤ4b、サンシャフト6のサンネジ6a及び軸方向前方のサンギヤ6b、プラネタリシャフト8のプラネタリネジ8a及び前方プラネタリギヤ8bの諸元を図7に[実施例]として示す。更に従来の構成における諸元を[比較例]として示す。
【0045】
[比較例]比較例のプラネタリシャフトのギヤとネジとの有効径は同一である。したがって、これに対応してサンシャフト及びナットにおいても、それぞれのギヤとネジとの有効径は同一である。すなわち、サンシャフトのギヤとネジとの有効径は共に12.7mm、プラネタリシャフトのギヤとネジとの有効径は共に4.2mm、ナットのギヤとネジとの有効径は共に21mmである。有効径比としてはサンシャフト:プラネタリシャフト:ナット=3:1:5である。
【0046】
そして、ネジの条数が、サンシャフトが4、プラネタリシャフトが1、ナットが5である。このことにより、サンシャフトのネジの進み角が6.69°、プラネタリシャフトのネジの進み角が5.07°、ナットのネジの進み角が5.07°となる。
【0047】
したがって比較例において、ナットが回転してプラネタリシャフトがサンシャフトの周りで転動すると、プラネタリシャフトとサンシャフトとのネジ間で差動が生じて、サンシャフトが軸方向に移動することになる。
【0048】
[実施例]本実施の形態における実施例のプラネタリシャフト8のギヤ(前方プラネタリギヤ8b)とネジ(プラネタリネジ8a)との間には有効径に差異が設けられている。すなわち前方プラネタリギヤ8bの有効径は4.2mmであるが、プラネタリネジ8aの有効径は3.67mmである。
【0049】
そして、プラネタリシャフト8における有効径の差異に対応して、サンシャフト6のネジ(サンネジ6a)及びギヤ(サンギヤ6b)の有効径と、ナット4のネジ(内ネジ4a)及びギヤ(リングギヤ4b)の有効径とが形成されている。すなわち、サンシャフト6については、サンギヤ6bの有効径は12.7mmであるが、サンネジ6aの有効径は13.23とされている。ナット4については、リングギヤ4bの有効径は21mmであるが、内ネジ4aの有効径は20.57mmとされている。
〈作用〉上述したごとく本実施の形態のギヤ4b,6b,8bの有効径は、比較例におけるギヤの有効径と同一である。しかし本実施の形態のネジ4a,6a,8aの有効径は、比較例とは異なり、プラネタリシャフト8のプラネタリネジ8aの有効径は小さくされている。このことに対応してナット4の内ネジ4aの有効径は小さくされ、サンシャフト6のサンネジ6aの有効径は大きくされている。
【0050】
このように本実施の形態の遊星差動ネジ型回転直動変換機構2では、ギヤ4b,6b,8bとネジ4a,6a,8aとの間で有効径に差が設けられているが、各ネジ4a,6a,8aの条数などの他の諸元については同じである。このことから、ネジ4a,6a,8aの進み角は比較例の場合とは異なるものとなる。すなわちプラネタリシャフト8のプラネタリネジ8aでは進み角は5.80°、ナット4の内ネジ4aの進み角は5.17°、サンシャフト6のサンネジ6aの進み角は6.42°となる。
【0051】
したがって図8の(A)に示すごとく、実施例では、差動を生じるプラネタリシャフト8とサンシャフト6との間では、ネジ6a,8a間の進み角差は0.62°となる。図8の(a)に示す比較例では1.62°である。すなわち、差動を生じる部分での進み角差は、比較例に対して実施例では十分に小さくされている。
【0052】
尚、図8の(B)に示すごとく実施例では、差動を生じないプラネタリシャフト8とナット4との間では、ネジ8a,4a間の進み角差は0.63°となり、図8の(b)に示す比較例での0°より大きくなる。
【0053】
そしてこのように実施例の進み角が比較例に対して異なっていても、ナット4の回転量とサンシャフト6の軸方向のストローク量との関係は比較例と同じである。
尚、図8はプラネタリシャフトに対するサンシャフト及びナットのネジ進み角の関係を示した模式図であり、角度や角度差などを実際よりも誇張して示している。以下同様な模式図についても同じである。
【0054】
図9に遊星差動ネジ型回転直動変換機構2による回転直動の変換効率(%)と、サンネジ6a−プラネタリネジ8a間の進み角差(°)との関係を示す。本実施の形態では、プラネタリシャフト8とサンシャフト6との間で、ネジ6a,8a間の進み角差は、比較例の1.62°から0.62°に低下したことにより、十分な効率向上(dF)が生じている。
【0055】
尚、回転から直動への変換効率は、差動を生じるプラネタリシャフト8とサンシャフト6との間の進み角度差が寄与しており、差動を生じないナット4とプラネタリシャフト8との間での進み角度差の増加は影響ない。
〈効果〉(1)本実施の形態の遊星差動ネジ型回転直動変換機構2では、上述したごとくギヤ4b,6b,8bとネジ4a,6a,8aとの間の有効径に差異を設けている。
【0056】
このことにより前方プラネタリギヤ8bの有効径とは独立にプラネタリネジ8aの有効径を変化させることができる。
本実施の形態では、特にサンシャフト6とプラネタリシャフト8とのギヤ6b,8b間の歯数比A(=3.1/1)とネジ6a,8a間の条数比B(=4/1)との関係がA<Bである。そしてこの状態にて、プラネタリギヤ8bの有効径Dg(=4.2mm)とプラネタリネジ8aの有効径Ds(=3.67mm)との関係をDg>Dsとしている。
【0057】
尚、このことは別の表現では、A<Bである場合、サンネジの有効径Sr(=13.23mm)とプラネタリネジの有効径Ds(=3.67mm)との比(Sr/Ds=3.60)を、Sr/Ds>Aとした構成である。
【0058】
このことにより、差動を生じるプラネタリネジ8aとサンネジ6aとの間の進み角の差は図7,8に示したごとく小さくなる。このためプラネタリネジ8aとサンネジ6aとの間のネジ歯の歯面間接触における極圧を低くでき、ネジ6a,8a間の摩耗を抑制できる。
【0059】
一方、差動を生じないプラネタリネジ8aと内ネジ4aとの間の進み角の差は大きくなる。しかし差動を生じていないのでネジ4a,8a間の摩耗の増加は少ない。このことにより全体として摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構2の耐久性を向上させることができる。
【0060】
しかも差動を生じるプラネタリネジ8aとサンネジ6aとの間の進み角の差が小さくなることにより遊星差動ネジ型回転直動変換機構2の回転直動変換効率も向上させることができる。
【0061】
[実施の形態2]
〈構成〉本実施の形態では前記実施の形態1に示した遊星差動ネジ型回転直動変換機構2の構成において、図10の(A),(B)に示すごとく、プラネタリシャフト108の軸線Cpを、サンシャフト106及びナット104の軸線Caに対して、サンシャフト106の周方向に0.62°傾けて配置したものである。他の構成については前記実施の形態1と同じである。
〈作用〉前記図7に示したごとく、本実施の形態においても、プラネタリネジ108aの進み角は、サンシャフト106のサンネジ106aの進み角とは0.62°の差が存在し、ナット104の内ネジ104aの進み角とは0.63°の差が存在する。すなわち2つの進み角の差は略同一である。
【0062】
したがってプラネタリシャフト108の軸線Cpを、サンシャフト106及びナット104の軸線Caに対して周方向に0.62°傾けた配置角度とする。このことにより、図10の(A)に示すごとく、プラネタリネジ108aはサンシャフト106のサンネジ106aに対して平行に接触して噛合する。更にプラネタリネジ108aはナット104の内ネジ104aに対しては配置角度が0.01°となり、略平行に接触して噛合する。
〈効果〉上述のごとくプラネタリシャフト108の軸線Cpをサンシャフト106の周方向にて傾けることにより、サンネジ106aとプラネタリネジ108aとの配置角度の差と、内ネジ104aとプラネタリネジ108aとの配置角度の差とをそれぞれ同時に解消させることができる。
【0063】
このように両方の噛み合い部分での配置角度差を解消させることにより、共に極圧が十分に小さくなり、より効果的に摩耗が低減されて、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性が向上すると共に、回転直動変換効率も向上する。
【0064】
[実施の形態3]
〈構成〉本実施の形態の遊星差動ネジ型回転直動変換機構の諸元を図11に実施例として示す。図示するごとく、前記実施の形態1に示した遊星差動ネジ型回転直動変換機構2とは、サンシャフトの条数が2である点が異なり、これに関連して諸元が異なる。そして前記実施の形態1ではプラネタリネジの有効径がプラネタリギヤの有効径よりも小さくされていたが、本実施の形態では逆にプラネタリネジの有効径はプラネタリギヤの有効径よりも大きくされている。そしてこの有効径の差異に対応してサンシャフトのサンネジ及びサンギヤの有効径とナットの内ネジ及び内ギヤの有効径とが形成されている。
【0065】
尚、図11には、比較例として、ネジとギヤとの有効径が同一である遊星差動ネジ型回転直動変換機構の諸元を示す。
〈作用〉このような構成により、図11に示すごとく実施例での各ネジの進み角は比較例とは異なるものとなる。すなわちプラネタリシャフトのプラネタリネジでは進み角は4.22°、ナットの内ネジの進み角は4.85°、サンシャフトのサンネジの進み角は3.59°となる。
【0066】
したがって図12の(A)に示すごとく、実施例では、差動を生じるプラネタリシャフト208とサンシャフト206との間では、ネジ206a,208a間の進み角差は0.63°となる。図12の(a)に示す比較例では1.71°である。すなわち、差動を生じる部分での進み角差は、比較例に対して実施例では十分に小さくされている。
【0067】
尚、図12の(B)に示すごとく実施例ではプラネタリシャフト208とナット204との間では、ネジ208a,204a間の進み角差は0.63°となり、図12の(b)に示す比較例での0°より大きくなる。
【0068】
そしてこのように進み角が比較例に対して異なっていても、ナット204の回転量とサンシャフト206の軸方向のストローク量との関係は比較例と同じである。尚、本実施の形態ではサンシャフト206のサンネジ206aが2条であることから、ナット204の回転駆動に対するサンシャフト206の軸移動の方向は前記実施の形態1,2とは逆方向となる。
〈効果〉(1)このようにサンシャフト206のサンネジ206aの条数が2であることにより差動を生じる遊星差動ネジ型回転直動変換機構においても、前方プラネタリギヤの有効径とプラネタリネジ208aの有効径とに差を設けている。このことにより、前方プラネタリギヤの有効径とは独立にプラネタリネジ208aの有効径を変化させることができる。
【0069】
本実施の形態では、特にサンシャフト206とプラネタリシャフト208とのギヤ間の歯数比A(=3.1/1)とネジ206a,208a間の条数比B(=2/1)との関係がA>Bである。そしてこの状態にて、プラネタリギヤの有効径Dg(=4.2mm)とプラネタリネジ208aの有効径Ds(=5.044mm)との関係をDg<Dsとしている。
【0070】
尚、このことは別の表現では、A>Bである場合、サンネジの有効径Sr(=11.86mm)とプラネタリネジの有効径Ds(=5.044mm)との比(Sr/Ds=2.35)を、Sr/Ds<Aとした構成である。
【0071】
このことにより、差動を生じるプラネタリネジ208aとサンネジ206aとの間の進み角の差は図11,12に示したごとく小さくなる。このためプラネタリネジ208aとサンネジ206aとの間のネジ歯の歯面間接触における極圧を低くでき、ネジ206a,208a間の摩耗を抑制できる。
【0072】
一方、差動を生じないプラネタリネジ208aと内ネジ204aとの間の進み角の差は大きくなる。しかし差動を生じていないのでネジ204a,208a間の摩耗の増加は少ない。このことにより全体として摩耗を抑制できるので、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性を向上させることができる。
【0073】
しかも差動を生じるプラネタリネジ208aとサンネジ206aとの間の進み角の差が小さくなることにより遊星差動ネジ型回転直動変換機構の回転直動変換効率も向上させることができる。
【0074】
(2)更に前記実施の形態1,2ではプラネタリネジの有効径をプラネタリギヤより小さくしていたが、本実施の形態のプラネタリネジ208aは、逆にプラネタリギヤより有効径を大きくしている。このようにプラネタリネジ208aを太くすることができるので、プラネタリシャフト208全体の強度向上が顕著であり、遊星差動ネジ型回転直動変換機構として耐久性を一層高めることができる。
【0075】
[実施の形態4]
〈構成〉本実施の形態では前記実施の形態3に示した遊星差動ネジ型回転直動変換機構に対して、図13の(A),(B)に実施例として示すごとく、プラネタリシャフト308の軸線Cpを、サンシャフト306及びナット304の軸線Caに対して、サンシャフト306の周方向に0.63°傾けて配置したものである。他の構成については前記実施の形態3と同じである。図13の比較例(a),(b)は図12の比較例と同じである。
〈作用〉前記図11に示したごとく、本実施の形態においてもプラネタリシャフト308におけるプラネタリギヤの有効径Dgとプラネタリネジ308aの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしている。このためプラネタリネジ308aの進み角は、サンシャフト306のサンネジ306aの進み角とは0.63°の差が存在し、ナット304の内ネジ304aの進み角とも0.63°の差が存在する。すなわち2つの進み角の差は同一である。
【0076】
したがってプラネタリシャフト308の軸線Cpを、サンシャフト306及びナット304の軸線Caに対して0.63°傾けた配置角度とする。このことにより、図13の(A)に示すごとく、プラネタリネジ308aはサンシャフト306のサンネジ306aに対して平行に接触して噛合する。更にプラネタリネジ308aはナット304の内ネジ304aに対しても平行に接触して噛合する。
〈効果〉プラネタリシャフト308の軸線Cpをサンシャフト306の周方向にて傾けることにより、サンネジ306aとプラネタリネジ308aとの配置角度差と、内ネジ304aとプラネタリネジ308aとの配置角度差とをそれぞれ同時に解消させることができる。
【0077】
このように両方の噛み合い部分での配置角度差を同時に解消させることにより、共に極圧が十分に小さくなり、より効果的に摩耗が低減されて、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の耐久性が向上すると共に、回転直動変換効率も向上する。
【0078】
しかも前記実施の形態3と同様に、プラネタリネジ308aをプラネタリギヤよりも太くできるのでプラネタリシャフト308全体の強度向上が顕著であり、遊星差動ネジ型回転直動変換機構としても耐久性を一層高めることができる。
【0079】
[実施の形態5]
〈構成〉本実施の形態の遊星差動ネジ型回転直動変換機構の諸元を図14に示す。図示するごとく、前記実施の形態1に示した遊星差動ネジ型回転直動変換機構とは、各ネジの有効径が異なり、これに関連して諸元が異なる。
【0080】
前記実施の形態1ではプラネタリシャフトのプラネタリネジの有効径がプラネタリギヤの有効径よりも小さくされていたが、本実施の形態では逆にプラネタリシャフトのプラネタリネジの有効径はプラネタリギヤの有効径よりも大きくされている。そしてこの有効径の差異に対応してサンシャフトのサンネジ及びサンギヤの有効径とナットの内ネジ及び内ギヤの有効径とが形成されている。
【0081】
更に本実施の形態では、プラネタリシャフトについては、その軸線をサンシャフトの周方向で傾けることにより、プラネタリネジの配置角度をサンネジの配置角度に近づけている。例えば0.66°以上傾けることにより、図7に示した比較例の配置角度差(1.62°)の場合よりもプラネタリネジとサンネジとの配置角度差を同等あるいは小さくしている。他の構成については前記実施の形態1と同じである。
〈作用〉プラネタリネジの有効径がプラネタリギヤの有効径よりも大きくされていることにより、本実施の形態での各ネジの進み角は、プラネタリネジでは進み角は4.63°、ナットの内ネジの進み角は4.95°、サンシャフトのサンネジの進み角は6.91°となる。
【0082】
したがってプラネタリネジは、サンネジ及び内ネジとの進み角差は図7に示した比較例よりも大きくなる。ただしプラネタリシャフトの周方向での傾きにより、プラネタリネジの配置角度をサンネジの配置角度に近づけている。
【0083】
このプラネタリシャフトの傾斜により、プラネタリネジとナットの内ネジとの配置角度差は逆に0.98°となり大きくなるが、差動を生じないプラネタリネジとナットの内ネジとの間であるので摩耗の増加は少ない。
〈効果〉(1)本実施の形態では、サンネジの条数が4である遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前方プラネタリギヤの有効径よりもプラネタリネジの有効径を大きくすることにより有効径に差を設けている。
【0084】
すなわちサンシャフトとプラネタリシャフトとのギヤ間の歯数比A(=3.1/1)とネジ間の条数比B(=4/1)との関係がA<Bである。そしてこの状態にて、プラネタリギヤの有効径Dg(=4.2mm)とプラネタリネジの有効径Ds(=4.6mm)との関係をDg<Dsとしている。
【0085】
このことにより、プラネタリネジとサンネジとの間の進み角の差は大きくなるが、前述したごとくプラネタリシャフトの傾きにより、変換効率を向上できる。
そして本実施の形態では、プラネタリネジの有効径をプラネタリギヤよりも大きくしていることから、プラネタリシャフト全体の強度向上が顕著となる。このことにより遊星差動ネジ型回転直動変換機構としても耐久性を高めることができる。
【0086】
[その他の実施の形態]
・前記実施の形態2,4においては、プラネタリシャフトの軸線をサンシャフトの周方向にて傾けることにより、サンネジとプラネタリネジとの配置角度差、及び内ネジとプラネタリネジとの配置角度差とをそれぞれ解消させていたが、このように差を略0として解消するのではなく、或る程度、差を減少させたものでも良い。このことによっても、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の変換効率を上げ、更に耐摩耗性も向上させることができる。
【0087】
前記実施の形態5においては、プラネタリシャフトの周方向での軸線の傾きによりプラネタリネジの配置角度をサンネジの配置角度に近づけあるいは同一としていたが、プラネタリシャフトの軸線を傾かせずに、サンシャフト及びナットの軸線に平行に配置しても良い。この構成でも、プラネタリネジの有効径をプラネタリギヤよりも大きくしているのでプラネタリシャフト全体の強度向上が生じ、遊星差動ネジ型回転直動変換機構としても耐久性を高めることができる。
【0088】
・実施の形態2,4,5において、プラネタリシャフトの軸線の傾きに対応して、更に、サンギヤ及び内ギヤの両方をハス歯として、あるいはサンギヤ、プラネタリギヤ及び内ギヤをハス歯とし、ギヤ間の歯を平行に近づけたり、あるいは平行にするように構成しても良い。このことによりギヤ間の噛み合いも極圧が低くなり、より効果的に摩耗が低減され、遊星差動ネジ型回転直動変換機構の変換効率及び耐久性が向上する。
【符号の説明】
【0089】
2…遊星差動ネジ型回転直動変換機構、4…ナット、4a…内ネジ、4b,4c…リングギヤ、6…サンシャフト、6a…サンネジ、6b,6c…サンギヤ、6d…ストレートスプライン、8…プラネタリシャフト、8a…プラネタリネジ、8b…前方プラネタリギヤ、8c…後方プラネタリギヤ、104…ナット、104a…内ネジ、106…サンシャフト、106a…サンネジ、108…プラネタリシャフト、108a…プラネタリネジ、204…ナット、204a…内ネジ、206…サンシャフト、206a…サンネジ、208…プラネタリシャフト、208a…プラネタリネジ、304…ナット、304a…内ネジ、306…サンシャフト、306a…サンネジ、308…プラネタリシャフト、308a…プラネタリネジ、Br…ベアリング、Ca,Cp…軸線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンネジとサンギヤとを有するサンシャフト、プラネタリネジとプラネタリギヤとを有して前記サンシャフトの外周上に配列された複数のプラネタリシャフト、及び内ネジと内ギヤとを有して前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとを内周側に収納したナットを備え、ネジ間の差動により前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構であって、
前記プラネタリシャフトは、前記プラネタリギヤの有効径と前記プラネタリネジの有効径とに差異を有し、この有効径の差異に対応して前記サンシャフトのサンネジ及びサンギヤの有効径と前記ナットの内ネジ及び内ギヤの有効径とが形成されていることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、
前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA<Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg>Dsとしたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項3】
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、
前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA>Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンネジと前記プラネタリネジとの進み角の差と、前記内ネジと前記プラネタリネジとの進み角の差とが略同一となる関係に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとにおける前記関係を設定したことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項5】
請求項4に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトの軸線を前記サンシャフトの周方向にて傾けることにより、前記サンネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差と前記内ネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差とをそれぞれ減少させ、あるいは解消させたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項6】
請求項5に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンギヤ及び前記内ギヤの両方がハス歯に、あるいは前記サンギヤ、前記プラネタリギヤ及び前記内ギヤがハス歯に、形成されていることにより、前記サンギヤと前記プラネタリギヤとの噛合、及び前記プラネタリギヤと前記内ギヤとの噛合は、ギヤ間の歯が平行に近づけられ、あるいは平行にされていることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項7】
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、
前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA<Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項8】
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、
前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトの軸線を前記サンシャフトの周方向にて傾けることにより、前記サンネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差を減少させ、あるいは解消させたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項1】
サンネジとサンギヤとを有するサンシャフト、プラネタリネジとプラネタリギヤとを有して前記サンシャフトの外周上に配列された複数のプラネタリシャフト、及び内ネジと内ギヤとを有して前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとを内周側に収納したナットを備え、ネジ間の差動により前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行う遊星差動ネジ型回転直動変換機構であって、
前記プラネタリシャフトは、前記プラネタリギヤの有効径と前記プラネタリネジの有効径とに差異を有し、この有効径の差異に対応して前記サンシャフトのサンネジ及びサンギヤの有効径と前記ナットの内ネジ及び内ギヤの有効径とが形成されていることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、
前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA<Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg>Dsとしたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項3】
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、
前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA>Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンネジと前記プラネタリネジとの進み角の差と、前記内ネジと前記プラネタリネジとの進み角の差とが略同一となる関係に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとにおける前記関係を設定したことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項5】
請求項4に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトの軸線を前記サンシャフトの周方向にて傾けることにより、前記サンネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差と前記内ネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差とをそれぞれ減少させ、あるいは解消させたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項6】
請求項5に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンギヤ及び前記内ギヤの両方がハス歯に、あるいは前記サンギヤ、前記プラネタリギヤ及び前記内ギヤがハス歯に、形成されていることにより、前記サンギヤと前記プラネタリギヤとの噛合、及び前記プラネタリギヤと前記内ギヤとの噛合は、ギヤ間の歯が平行に近づけられ、あるいは平行にされていることを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項7】
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、
前記ギヤ間の歯数比Aと前記ネジ間の条数比Bとの関係がA<Bである場合に、前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項8】
請求項1に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記サンシャフトと前記プラネタリシャフトとの間で、ギヤ間の歯数比Aとネジ間の条数比Bとが異なることにより、前記ナットと前記サンシャフトとの間で回転直動間の変換を行うと共に、
前記プラネタリギヤの有効径Dgと前記プラネタリネジの有効径Dsとの関係をDg<Dsとしたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の遊星差動ネジ型回転直動変換機構において、前記プラネタリシャフトの軸線を前記サンシャフトの周方向にて傾けることにより、前記サンネジと前記プラネタリネジとの配置角度の差を減少させ、あるいは解消させたことを特徴とする遊星差動ネジ型回転直動変換機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−163176(P2012−163176A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25125(P2011−25125)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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