説明

遊間用止水装置および堰板

【課題】遊間に伸縮装置を装着する施工において、遊間処理作業を効率化するとともに、伸縮装置の支持強度の向上を図る。
【解決手段】橋桁端部に形成された箱抜き部24A(24B)の床版25A(25B)に設けられたアンカー26A(26B)にアンカーボルト22A(22B)を取り付ける。アンカーボルト22A(22B)の先端を遊間20に僅かに張り出し、その先端に堰板11A(11B)を取り付ける。堰板11A(11B)を硬質素材からなる堰板本体110A(110B)と軟質素材からなる可撓部111A(111B)から構成する。可撓部111A(111B)を堰板本体110A(110B)の下辺部から斜めに延出させる。遊間20を形成する橋桁21A(21B)の端部側壁に可撓部111A(111B)を押し当てて可撓部111A(111B)を不陸の存在する端部側壁に密接させ、コンクリート打設時の漏れを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁同士もしくは橋梁と橋台間の遊間に伸縮装置を設置するための施工に関し、特にこのときに遊間に設置される止水装置、あるいは堰板に関する。
【背景技術】
【0002】
橋桁同士、又は橋桁と橋台の端部間の遊間に簡易鋼製ジョイントやゴムジョイントなどの伸縮装置(伸縮継手)が設けられる場合、遊間を隔てて向かい合う橋桁の床版端部や橋台のパラペット端部は予め箱抜きされており、この箱抜き部に対して伸縮装置を設置した後、箱抜き部に対してコンクリートの打設が行われる。コンクリート打設時には、遊間へのコンクリート洩れを防止するために内型枠が使用される。内型枠としては、遊間に介挿される発泡スチロール等の部材と端部の壁面との間にコンパネを挟み込み固定する方法や、ウレタンフォーム等の伸縮性の部材を遊間に直接詰めて型枠とする方法が知られている。
【0003】
また、ジョイントと箱抜き部の床面との間に堰板を配置して、コンクリートの漏れを防止するとともに、堰板に止水用のゴム製シール板を取り付ける構成も知られている(特許文献1、2)。また、コンクリート漏れ防止の堰板ではないもののジョイントと箱抜き部の床面との間に固定板を配置して止水用の樋部材を取り付ける構成もある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3442362号公報
【特許文献2】特開平6−41909号公報
【特許文献3】特開平5−86604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、遊間を形成する側壁部は、必ずしも平らではなく、例えば側壁部と箱抜き部の床面とが形成する角部は必ずしも直角ではなく、部分的に角が欠けている場合がある。また、壁面自体も波打つなどしているため不陸が存在する。したがって、コンパネを用いる場合、不陸部においてコンパネと側壁部との間に隙間が生じ、流し込まれたコンクリートの押さえが効かず、遊間に漏れ出してしまうという問題がある。また、施工後に遊間が拡張されると、コンパネや発泡スチロールが落下するという問題がある。
【0006】
一方ウレタンフォーム等の伸縮性部材を遊間に詰める場合には、不陸に対しては追従することができるが、ウレタンフォームなどの伸縮性部材が箱抜き部にまで入り込んでしまい、本来ジョイントを支持すべきジョイント下部に伸縮性部材が回り込み、コンクリートがジョイント下部に行き渡らず、荷重支持が不十分となり施工不良が発生するという問題がある。また、堰板がジョイントの外側にある場合や2次止水のゴムシートなどの弾性体がジョイント下部にある場合にも、コンクリートによるジョイント下部の支持が不十分となる。
【0007】
本発明は、遊間に伸縮装置を装着する施工において、遊間処理作業を効率化するとともに、伸縮装置の支持強度の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の堰板は、コンクリート打設に型枠として用いられる堰板であって、コンクリート打設時、平板としての剛性を示す堰板本体と、堰板本体の少なくとも一辺に設けられ、不陸に追従可能な可撓部を備えたことを特徴としている。
【0009】
例えば堰板本体は硬質素材からなり、可撓部は軟質素材からなる。堰板は、遊間の両側に形成される箱抜き部のコンクリート打設の内型枠として用いられ、可撓部は遊間を形成する側壁面に押し当てられ、側壁面の不陸に追従して側壁面に密接する。可撓部は堰板本体に対して斜めに設けられ、好ましくは堰板本体に対する可撓部の角度は30〜60°である。また、可撓部の先端はテーパ状に形成されることが好ましい。
【0010】
堰板は更に、遊間における止水用のシート部材を堰板本体との間に挟み込むための押さえ部と、この押さえ部と堰板本体とを連絡する湾曲部とを備える。湾曲部は例えば軟質部材から形成され、または例えばくびれ部として形成され、撓曲可能である。また、湾曲部は硬質部材もしくは軟質部材から形成され、予め湾曲した形状で成形される。
【0011】
本発明の止水装置は、遊間に取り付けられる止水装置であって、シート部と一対の堰板部と可撓部とを備え、シート部の両長辺端部が堰板部の各々に連結され、シート部と可撓部が軟質素材から構成され、堰板部が硬質素材から構成され、シート部、堰板部、可撓部とが一体的に構成されたことを特徴としている。
【0012】
可撓部が一対の堰板部の各々の一辺から外側に向けて斜めに延出し、可撓部と堰板部のなす角度は例えば30〜60°である。またシート部と可撓部は同一素材から一体的に成形されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、遊間に伸縮装置を装着する施工において、遊間処理作業を効率化するとともに、伸縮装置の支持強度の向上を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】橋梁間あるいは橋梁と橋台間の遊間に設置される第1実施形態の堰板と止水装置の一部を示す斜視図である。
【図2】図1に示される堰板と止水装置の側面図である。
【図3】図1、2に示された堰板と止水装置を簡易鋼製ジョイントとともに、遊間に設置した状態(コンクリート打設前の状態)を示す側断面図である。
【図4】第1実施形態の止水ゴムと堰板を、波形の鋼板を用いた鋼製縦型ジョイントと組み合わせたときの側断面図である。
【図5】第1実施形態の止水ゴムと堰板を、ゴムジョイントと組み合わせたときの側断面図である(コンクリート打設後の状態)。
【図6】堰板と橋桁との関係を拡大して示す側断面図である。
【図7】第2実施形態の堰板が止水ゴムとともにアンカーボルトに取り付けられた状態を示す側面図である。
【図8】第2実施形態の堰板の側断面図である。
【図9】第2実施形態の第1変形例の堰板の側断面図である。
【図10】第2実施形態の第2変形例の堰板の側断面図である。
【図11】第3実施形態の堰板一体型止水装置の側面図である。
【図12】第3実施形態の変形例の堰板一体型止水装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、橋梁間あるいは橋梁と橋台間の遊間に設置される第1実施形態の堰板と止水装置の一部を示す斜視図である。また、図2は、図1に示される堰板と止水装置の側面図であり、図3は、図1、2に示された堰板と止水装置を簡易鋼製ジョイントとともに、遊間に設置した状態(コンクリート打設前の状態)を側断面図として示す。
【0016】
本実施形態において、止水装置10はゴムシート(シート部材)からなり(以下止水ゴムと呼ぶ)、止水ゴム10は、遊間20において、橋桁21A、21Bの幅員方向に延在し、橋桁21A、21Bの間の遊間20からの水漏れを防止する。止水ゴム10は、長尺のゴムシートをU字形に幅方向に撓曲したものであり、その両長辺端10A、10Bは、それぞれ堰板11A、11Bに取り付けられる。
【0017】
堰板11A、11Bは、橋桁21A、21Bの幅員に方向に延在し、幅員方向に所定の間隔で複数の取付穴が設けられる。取付穴には、橋桁21A、21Bの幅員方向に所定の間隔で配置されるアンカーボルト22A、22Bがそれぞれ挿通される。また、アンカーボルト22A、22Bには、アンカーボルト22A、22Bに対応して取付穴が形成された止水ゴム10の長辺端10A、10Bが取り付けられる。アンカーボルト22A、22Bには更に、橋桁21A、21Bの幅員に沿って延在する押さえ板23A、23Bが取り付けられる。なお、押さえ板23A、23Bには、堰板11A、11Bと同様に、アンカーボルト22A、22Bに対応した取付穴が形成される。
【0018】
すなわち、各アンカーボルト22A、22Bには、ナット220が装着された後、堰板11A(11B)、止水ゴム10の端部10A(10B)、押さえ板23A(23B)の順でそれぞれが装着され、最後にナット221により各部材がナット220、221の間に挟まれて固定される。なお、堰板11A(11B)、止水ゴム10の端部10A(10B)、押さえ板23A(23B)の位置は、ナット220の位置により調整可能である。
【0019】
各アンカーボルト22A、22Bは、橋桁21A、21Bの床版端部に形成された箱抜き部24A、24Bの床面25A、25Bに埋設されたアンカー26A、26Bに溶接され固定される。アンカーボルト22A、22Bは、橋桁の軸に沿って配置され、それぞれ遊間20に向けて僅かに延出する。
【0020】
また、アンカー26A、26Bの上方には、例えば一対のフィンガープレート30A、30Bからなる簡易鋼製ジョイント30が取り付けられ、止水ゴム10の上には、例えば遊間を埋めるウレタンフォーム27が充填される。
【0021】
なお、本実施形態では、アンカーボルト22A(22B)に、2つのナット220、221を用い、ナット220、221間に堰板11A(11B)、止水ゴム10、および押さえ板23A(23B)を挟むことにより、各部材をアンカーボルト22A、22Bに取り付けたが、例えばナット221をアンカーボルト22A(22B)のボルトヘッドに置き換え、ボルトヘッドとナット220の間に各部材を固定してもよい。この場合、図2のように各部材がアンカーボルト22A、22Bに組み付けられた後、アンカーボルト22A、22Bが床面25A、25Bに埋設されたアンカー26A、26Bに溶接などの手段を用いて取り付けられる。
【0022】
図1〜図3に示されるように、堰板11A(11B)は、堰板本体110A(110B)と可撓部111A(111B)を備える。堰板本体110A(110B)は例えば板状の一定の剛性を備えた部材からなり、コンクリート打設時に変形することなくコンクリートの流出を防止する。堰板本体110A(110B)には例えば硬質素材が用いられる。硬質素材としては、例えば鋼板(SUSやSS、SUP等)や硬質ゴム(JISK6253における硬度A70以上のCRやEPT等)、硬質樹脂(硬質塩化ビニルやPP等)が挙げられる。一方、可撓部111A(111B)は、不陸などの凹凸に追従・密着可能な可撓性を備えた板部材からなる。可撓部111A(111B)には、例えば軟質素材が用いられる。なお、軟質素材としては、例えば軟質ゴム(硬度A70以下のCRやEPT等)や軟質樹脂(軟質塩化ビニルやTPO等)が挙げられる。また。可撓部111A(111B)には薄鋼板(SUSやSUP等)などを用いることもできる。
【0023】
可撓部111A(111B)は、堰板11A(11B)の長手方向に沿って堰板本体110A(110B)の下側に設けられた部材であり、例えば堰板本体110A(110B)の下辺端部から延出し、その先端は例えばテーパ状に成形される。また、可撓部111A(111B)は堰板本体110A(110B)に斜めに取り付けられ、堰板11A(11B)の側断面は「へ」の字形をなす。図2に示されるように、可撓部111A(111B)の、堰板本体110A(110B)の面に対する傾き角をθとすると、θは0〜90°の範囲で設定され、好ましくは30〜60°に設定される。なお、堰板11A、11Bは、遊間20において可撓部111A、111Bが外側に向けて張り出して「ハ」の字を形成するように配置される。
【0024】
なお、堰板11A(11B)や止水ゴム10は、例えば幅員方向にジョイント毎の長さを単位として構成されたものでもよいが、全幅員に渡って一体的でもよく、その単位は任意である。
【0025】
図4は、本実施形態の止水ゴム10と堰板11A、11Bを、波形の鋼板を用いた鋼製縦型ジョイント40と組み合わせた例を示すものである。この場合も、止水ゴム10と堰板11A、11Bの取り付に関わる構成は図3に示される例と同様である。また、図5に本実施形態の止水ゴム10と堰板11A、11Bとゴムジョイント70を組み合わせた例を示す。なお、図5の例では、箱抜き部へのコンクリート打設が終了し、ゴムジョイント70が取り付けられた状態が示される。床面25A、25Bには、堰板11A、11Bのためのアンカーボルト22A、22Bが固定されるアンカー26A、26Bの他に、アンカー26C、26Dがそれぞれ埋設されており、アンカー26C、26Dにはゴムジョイント70を取り付けるためのアンカーボルト71A、71Bが固定される。
【0026】
なお、本実施形態の止水ゴム10、堰板11A、11Bと伸縮装置(ジョイント)との組み合わせは、本実施形態に限らず、あらゆる伸縮装置との組み合わせが可能である。
【0027】
次に、図6を参照して、本実施形態における堰板11A(11B)の機能について説明する。図6は、堰板11Aと橋桁21Aとの関係を拡大して示す側断面図であるが、堰板11Bと橋桁21Bについても同様であるので、ここでは、堰板11Aと橋桁21Aの関係についてのみ説明する。
【0028】
一般に、橋桁21Aの端部側壁210には不陸が存在する。図6においては、端部側壁210に存在する不陸が実線と破線とで模式的に示される。すなわち、図6においては、端部側壁210において、面の高さが異なる2つの位置に対応する断面が、一方は実線で、他方は破線で描かれている。
【0029】
可撓部111Aは、端部側壁210に向けて張り出しているため、その先端は端部側壁210に押し当てられる。このとき、可撓部111Aは軟質素材から形成されるので、端部側壁210の面の高さに追従して変形し、端部側壁210の形状に合わせて端部側壁210の各位置で側壁面にぴったりと密接する。すなわち、実線で描かれる端部側壁210の位置では、可撓部111Aは斜線が施されて表されるように側壁面に当接し、破線で描かれる端部側壁210の位置に対しては、破線で描かれるように側壁面に当接する。
【0030】
以上のように、コンクリート打設時において、形状(例えば平板としての形状)を維持するのに十分な剛性を備える堰板本体から、不陸に追従して変形可能な可撓性を備える可撓部を斜めに延出させ、堰板の断面を「へ」の字形に形成することにより、可撓部が遊間を形成する側壁端部面の不陸に追従して、壁面にぴったりと密接するため、箱抜き部へのコンクリート打設時にコンクリートが不陸を介して洩れ出すことがない。すなわち、本実施形態の堰板によれば遊間の不陸に対しても追従できる内型枠を提供できる。特に本実施形態では、可撓部の先端がテーパ状とされているため、不陸への可撓部の適応性は更に向上される。
【0031】
また、本実施形態の堰板を用いた場合、堰板を箱抜き部内に配置する必要がないので、伸縮装置を支持する位置に十分にコンクリートを打設することができるので、伸縮装置の支持強度の向上を図ることができる。また、堰板の素材に劣化に強いものを用いることにより、埋め殺しとすることができるので、伸縮装置の下側コンクリートは、堰板が取り付けられたアンカーにより補強されることとなり、強度をより高めることができる。
【0032】
なお、第1実施形態の堰板は2次止水用の止水ゴムとともに用いられたが、単独で用いることも可能である。この場合、堰板はアンカーボルトに溶接により固定されてもよい。
【0033】
次に、図7、8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図7は、止水ゴムと第2実施形態の堰板がアンカーボルトに取り付けられた状態を示す側面図であり、図8は第2実施形態の堰板の側断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同一参照符号を用いその説明を省略する。
【0034】
図7、図8に示されるように、第2実施形態の堰板50A(50B)は、堰板本体110A(110B)と可撓部111A(111B)の他に、押さえ部112A(112B)と湾曲部113A(113B)を備える。湾曲部113A(113B)は、堰板本体110A(110B)と押さえ部112A(112B)とを連絡する部材であり、例えば、可撓部111A(111B)と同様に軟質素材からなり、その素材としては、可撓部111A(111B)と同様の素材を用いることができる。一方、押さえ部112A(112B)の素材は限定されるものではないが、例えば硬質素材からなり、堰板本体110A(110B)と同様の素材を用いることができる。
【0035】
図7に示されるように、アンカーボルト22A(22B)への装着時、堰板50A(50B)の湾曲部113A(113B)は折り曲げられ、堰板本体110A(110B)と押さえ部112A(112B)の間に止水ゴム10の長辺端部10A(10B)が挟み込まれる。すなわち、押さえ部112A(112B)においても、アンカーボルト22A(22B)に挿通するための取付穴が設けられており、各アンカーボルト22A(22B)には、ナット220が装着された後、堰板11A(11B)、止水ゴム10の長辺端部10A(10B)、押さえ部112A(112B)の順でそれぞれが装着され、最後にナット221により各部材がナット220、221の間に挟まれて固定される。したがって、押さえ部112A(112B)は、第1実施形態における押さえ板23A(23B)の役割を果たすとともに、止水ゴム10の長辺端部10A(10B)の上部は、湾曲部113A(113B)によって覆われる。
【0036】
以上により、第2実施形態の堰板によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、止水ゴムの長辺端部の上部が湾曲部により覆われるため、止水ゴムと堰板本体や押さえ板との間からの水が漏れを確実に防止できる。また、押さえ板と堰板が一体化されるため、部品点数を削減することができ、取付効率も向上する。
【0037】
図9に第2実施形態の第1変形例を示す。第2実施形態では、湾曲部に軟質素材の部材を用いたが、本変形例の堰板60B(60A)では、湾曲部114B(114A)をくびれ部として構成している。すなわち、本変形例においては、湾曲部114B(114A)を薄く形成することにより、その可撓性を高め、装着時に湾曲可能としている。したがって、第1変形例では、第2実施形態と同様の効果が得られるとともに、堰板本体、湾曲部、押さえ部を例えば同一素材から構成することができるので、製造コストを低く抑えることが可能となる。
【0038】
また図10に第2実施形態の第2変形例を示す。第2変形例では、堰板本体80B(A)、湾曲部115B(115A)、押さえ部112B(112A)が一体的に同一素材から形成され、湾曲部115B(115A)は、初めから湾曲した形状で成形される。なお、湾曲の程度は、堰板本体80B(A)と押さえ部112B(112A)との隙間が止水ゴムの厚さに適合するように設定される。第2変形例の構成によれば、第1変形例と同様の効果を得られるとともに、湾曲部が予め湾曲されているため、組立時に湾曲部を湾曲させる必要がなく、組立作業の効率を高めることができる。
【0039】
なお、第1、第2実施形態、およびその変形例では、可撓部は軟質素材から構成され、堰板本体や押さえ部などは硬質素材から構成されたが、堰板全体を同一素材から構成し、その厚さや形状を調整することにより、堰板本体や押さえ部に剛性を与え、可撓部に可撓性を与えることも可能である。すなわち、堰板本体をコンクリート打設時に堰板(平板)として十分に機能する程度の剛性を示す厚さまたは形状とし、軟質部を不陸に追従・密接するのに十分な可撓性を示す厚さまたは形状とすることも可能である。
【0040】
同一樹脂素材を用いて堰板を構成し、厚さを調整して剛性や可撓性を与える場合、押さえ部は例えば厚さ1mm以上の板部材とされ、好ましくは厚さ3mm以上の板部材とされ、堰板本体は例えば厚さ2mm以上、好ましくは6mm以上とされ、可撓部は例えば厚さ3mm以上、好ましくは6mm以上とされる。このとき、可撓部はその断面がテーパ状とされることが好ましい。また、可撓部の断面形状がテーパ状とされない場合(例えば均一の厚みとされる場合)には、堰板本体の厚みが可撓部の厚さの1.5倍以上とされることが望ましい。
【0041】
また、同一金属材料(例えばSUP等のバネ鋼)を用いて堰板を構成する場合には、堰板本体および可撓部の厚さは例えば厚さ1mm以下とされる。バネ鋼などの金属材料を用いる場合には、可撓部は例えば厚さ均一の板部材とされる。
【0042】
次に図11を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。第1および第2実施形態では、堰板と、止水装置である止水ゴムは別体として構成されたが、第3実施形態は、これらを一体成型したものである。なお、第1および第2実施形態と同様の構成については、同一参照符号を用いるとともにその説明を省略する。
【0043】
図11は、第3実施形態の堰板一体型止水装置60の側面図であり、図に示されるように、U字形とされた止水ゴム61には可撓部61A、61Bが一体的に設けられる。U字形の止水ゴム61の両端の側壁面には、硬質素材からなる堰板62A、62Bが貼着される。すなわち、止水ゴム61、可撓部61A、61B、堰板62A、62Bは一体的に形成される。なお、止水ゴム61と可撓部61A、61Bは例えば同一素材から形成される。
【0044】
また可撓部61A、61Bは、堰板62A、62Bの下辺部から外側に向けて延出し、その先端部はテーパ状に形成される。堰板62A、62Bと可撓部61A、61Bのなす角は第1および第2実施形態と同様に0〜90°であり、好ましくは30〜60°である。なお、本実施形態では、堰板62A、62Bは鋼製であり、アンカーボルト22A、22Bにそれぞれ溶接により固定されるが、第1、第2実施形態と同様にボルトによる固定であってもよく、この場合堰板62A、62Bはゴムや樹脂などからなる硬質板であってもよい。
【0045】
次に図12に第3実施形態の変形例を示す。図12の変形例における堰板一体型止水装置63では、止水ゴム64は逆U字形に成型され、可撓部64A、64Bは逆U字の長辺端部の先端から「ハ」の字状に外側に延出する。また、堰板62A、62Bとの貼着を行う貼着部65A、65Bが逆U字形のゴムシートの両側に設けられる。なおその他の構成は第3実施形態と同様である。
【0046】
以上のように、第3実施形態およびその変形例によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、止水装置と堰板が一体化されているため、押さえ板を設ける必要がなくなり、部品点数を少なくすることができる。また施工の効率も向上される。
【0047】
なお、本実施形態では、可撓部が堰板の一辺に設けられたが、可撓部を堰板の複数の辺に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
10、61、64 止水ゴム
11A、11B 堰板
23A、23B 押さえ板
30 簡易鋼製ジョイント
40 鋼製縦型ジョイント
60、63 堰板一体型止水装置
61A、61B 可撓部
62A、62B 堰板
64A、64B 可撓部
70 ゴムジョイント
80A、80B 堰板
110A、110B 堰板本体
111A、111B 可撓部
112A、112B 押さえ部
113A、113B 湾曲部
114A、114B 湾曲部(くびれ部)
115A、115B 湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊間に取り付けられる止水ゴムであって、長辺両端部の側壁面が一対の堰板の各々に貼着されるシート部と、前記シート部から延出する可撓部とを備え、前記シート部と前記可撓部が一体的に軟質素材から構成されることを特徴とする止水ゴム。
【請求項2】
前記可撓部が、前記シート部の前記側壁面が前記一対の堰板に貼着されたときに前記堰板の各々の一辺から外側に向けて斜めに延出するように前記シート部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の止水ゴム。
【請求項3】
前記シート部の前記側壁面が前記一対の堰板に貼着されたとき、前記可撓部と前記堰板のなす角度が30〜60°であることを特徴とする請求項2に記載の止水ゴム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−87619(P2012−87619A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27290(P2012−27290)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【分割の表示】特願2006−318349(P2006−318349)の分割
【原出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】