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遊離グルタミン酸高含量ブナシメジ新菌株とその培養および栽培方法
説明

遊離グルタミン酸高含量ブナシメジ新菌株とその培養および栽培方法

【課題】 遊離グルタミン酸高含量のブナシメジ新菌株、該ブナシメジ新菌株の培養方法、及び該ブナシメジ新菌株の子実体の栽培方法を提供する。
【解決手段】 遊離グルタミン酸高含量の野生株と高収量性を示す栽培種を交配し、子実体中の遊離アミノ酸含量を測定、遊離グルタミン酸含量が通常の菌株より1500mg/100g乾物以上高い1菌株を選抜し、選抜株について様々な環境下で反復栽培し、形態や収量および遊離グルタミン酸含量が安定していることを確認(固定)し、新菌株を見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブナシメジ(ハラタケ目キシメジ科シロタモギタケ属;Hypsizigus marmoreus(Peck)Bigelow)の新規な菌株に関する。さらに詳しくは、本発明は、グルタミン酸高含量のブナシメジ新菌株、該ブナシメジ新菌株の培養方法、及び該ブナシメジ新菌株の子実体の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブナシメジは日本に多く自生し、野生のブナシメジを採取して交配育種に利用する手法が多く採用されている。本発明者らも全国から多くの野生種を採取し、その特性を調査して、優良形質の導入を行っている。
【0003】
ブナシメジの人工栽培は、鋸屑とコメヌカなど栄養源を混合した培地で行われており、その栽培技術は確立されている。また、栽培されている品種も多数育種されているが、そのほとんどが、栽培的特性、収量性および形態形状での区別性に着目して育成されており(例えば、特許文献1または特許文献2参照)、子実体そのものに含まれる成分に着目して育成された菌株は、テルペン(苦味成分)含量が低い菌株(例えば、特許文献3参照)を除いて見あたらない。
【特許文献1】特開平6−34660号公報
【特許文献2】特開2003−92927公報
【特許文献3】特開平5−268942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の課題は、上記現状に鑑み、うま味成分であるグルタミン酸を多く含む、食べておいしいブナシメジ新菌株を提供することにある。さらに本発明の目的は、該ブナシメジ新菌株の菌糸体の培養方法、および子実体の栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこのような課題を解決するため、野生種の菌株200株の中から、収量性は低く実用栽培には不向きであるが、子実体に含まれる遊離グルタミン酸含量の高い1菌株を選抜した。この菌株を利用しながら鋭意交配育種を進めることで、遊離グルタミン酸高含量の菌株作出を達成しようと考え、以下の手順で新菌株を見いだし創製した。
【0006】
(1)遊離グルタミン酸高含量の野生株と高収量性を示す栽培種(長野農工研B−1号(登録品種))の交配により、約200菌株を作出した。これら菌株の栽培試験を行い、発生状況、子実体の特性などの調査を行った。この中で高収量性を示し、かつ形状が優れた実用性菌株10菌株について、子実体中の遊離アミノ酸含量を測定し、1500mg/100g乾物以上と遊離グルタミン酸含量が通常の菌株より高い1菌株を選抜した。
【0007】
(2)選抜株について、様々な環境下で反復栽培し、形態や収量および遊離グルタミン酸含量が安定していることを確認(固定)し、新菌株を見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、人工栽培を行った際に、子実体に含まれる遊離グルタミン酸含量が1500mg/100g乾物以上のブナシメジ新菌株である。
【0009】
また、本発明は、受領番号がFERM AP−20104であるブナシメジ新菌株である。
【0010】
さらに、上記ブナシメジ新菌株の菌種を培地に接種し、菌糸体を生成させることを特徴とするブナシメジ新菌株の菌糸体の培養方法である。
【0011】
さらにまた、上記ブナシメジ新菌株の菌種を培地に接種し、子実体を形成させることを
特徴とするブナシメジ新菌株の子実体の栽培方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、遊離グルタミン酸含量が高く、よりおいしい高品質なブナシメジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
従来のブナシメジの遊離グルタミン酸含量は約500〜1000mg/100g乾物であり(例えば、「きのこハンドブック」、朝倉書店、2000年、p.212、表3参照)、本発明にかかるブナシメジ新菌株の遊離グルタミン酸含量は1500mg/100g乾物以上、好ましくは1500〜1760mg/100g乾物の遊離グルタミン酸含量を有する。
【0014】
本発明の新菌株の育種について説明する。
1.交配親の選抜
(1)自然界に発生していたブナシメジ200個の子実体より組織分離を行い、純粋分離した菌糸体164菌株を得た。次にこれら164菌株の栽培試験を実施し、子実体を形成した116菌株について子実体の水煮品による官能検査を実施し、旨味の強さを基準に10菌株を一次選抜した。
【0015】
(2)一次選抜株10菌株について、再度栽培試験を実施し、得られた子実体の遊離グルタミン酸含量を測定した。測定の結果、遊離グルタミン酸含量が最も高かった1菌株(ブナシメジ 1814)を交配親として選抜した。
【0016】
2.交配育種
本発明の新菌株を交配育種により得た。特開2002−369635公報に記載のように、ブナシメジ 長野農工研B−1号は熟成工程を必要とせず、収量性および子実体の形態に優れたブナシメジ新菌株の交配育種の親株として非常に優れた性状を有している。このブナシメジ 長野農工研B−1号と前出の遊離グルタミン酸含量が高い菌株(ブナシメジ 1814)を親株として交配育種を行った。なお、ブナシメジ 長野農工研B−1号は、産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P−18338として平成13年5月22日に寄託されている。
【0017】
以下、ブナシメジ 長野農工研B−1号とブナシメジ 1814の交配方法を詳述する。
32本の850mlポリプロピレン製栽培ビンに、1本あたり杉オガコ60g(乾物重量)とコメヌカ60g、フスマ20g、マメカワ20g、コーンコブミール30g、ニョキデール(商品名:JA全農長野が販売)2.5gをよく混合し、水道水を水分含有率65%になるように加えた培養基を作製し、120℃で30分間高圧蒸気殺菌した。この培養基を冷却した後、ブナシメジ 長野農工研B−1号の固体種菌10gを接種し、暗所にて温度21℃、湿度60%の条件下で70日間培養を続けた後、定法に従って子実体を発生させた。同子実体の菌傘部より得た胞子をポテト・グルコース平板培地で発芽させ、単胞子分離して一核菌糸(「一次菌糸」とも言う)15株を得た。同様にして、ブナシメジ 1814の一核菌糸も15株得た。
【0018】
次にブナシメジ 長野農工研B−1号の一核菌糸とブナシメジ 1814の一核菌糸を1株ずつポテト・グルコース平板培地上に対峙させて接種し、温度25℃にて30日間培養して交配を行い、交配株200株を得た。次に、前述した栽培方法と同様の方法で子実体を発生させ、菌傘が八分開きになった段階で収穫し、収量および子実体の形質を調査した。同時に、収穫後の子実体の水煮品を用いて官能検査を実施し、旨味の強さ、収量および形質を基準に一次選抜を行い、10菌株を選抜した。
【0019】
さらに、これら10菌株を前述した栽培方法と同様の方法で子実体を発生させ、定法に従って各子実体の遊離グルタミン酸含量を測定し、遊離グルタミン酸含量が非常に高く、収量性および形質に優れた1菌株を選抜した。この選抜株について条件を変えながら反復栽培を行い、遊離グルタミン酸含量の高さ、高収量性および子実体の形質が安定していることを確認し、該新菌株を得た。
【0020】
本発明に係る新菌株の子実体および胞子の特徴は以下の通りである。
子実体は叢生、傘は径3.0〜10cm、円形又は不正形でまんじゅう型で表面は平滑、湿潤、濃灰褐色から灰褐色を呈しており、傘中心は細かい大理石模様の斑紋がある。肉は白色で粉臭がある。ヒダは白色で密、茎は傘に偏心生又は中心生で3〜8cm×1〜2cm、白色、根本に少し軟毛が見られる。胞子は球形、平滑、無色、4〜5.5μm×3.5〜4.5μm、胞子紋は白色である。
【0021】
以上の特徴を今関六也、木郷次雄編著「原色日本新菌類図鑑I」1988年、保育社、東京の記載と比較すると、本菌はブナシメジであることが明瞭である。
【0022】
この新菌株は、「Hypsizigus marmoreus NN-11」と表示し、独立行政法人産業技術総合研究所の特許生物寄託センターに寄託申請がなされ、同センターは平成16年6月25日に受領番号「FERM AP−20104」として受領している。
【0023】
次にブナシメジ新菌株と他のブナシメジ株との異同判定として、両菌糸が持っている遺伝的因子が異なればその菌糸は互いに異なる菌糸であるという菌類分類学的事実に基づき、遺伝的因子の異同を寒天培地上における対峙培養によって調査した。供試したブナシメジ株は栽培市販品種で「宝の華M8171」、「宝の華K0259」、「ホクト株式会社生産」および「博多ブナシメジ」である。結果を以下の表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示したように、上記各菌株は、本新菌株との対峙培養ですべて帯線を生じ、このことから、本新菌株は新しい株であることが明らかである。
【0026】
新菌株の培養的、菌学的性質は以下の通りである。
(1)麦芽エキス寒天培地(25℃)での生育状態
旺盛な生育を示し、7日間の菌糸伸長量は28mm、白色で密な菌糸、気菌糸を多量に生じる。
(2)ポテト・グルコース寒天培地(25℃)での生育状態
旺盛な生育を示し、7日間の菌糸伸長量は29mm、白色で密な菌糸、気菌糸を多量に生じる。
【0027】
(3)最適生育温度
ポテト・グルコース寒天培地に直径5mmの種菌を接種し、5〜35℃の間の5℃間隔で培養した。7日後に菌系伸長量を測定したところ、最も伸長の速かった培養温度は25℃であった。また、35℃ではほとんど生育しなかった。
(4)最適生育pH
ポテト・グルコース寒天培地を酸またはアルカリでpH4.0〜8.0の間で0.5間隔で調整した後、直径5mmの種菌を接種し、25℃で培養した。7日後に菌糸伸長量を測定したところ、最適生育pHは5.0〜5.5であった。また、pH7.0以上では生育が極端に遅くなった。
【0028】
次に本新菌株の特徴である遊離グルタミン酸含量が高い特徴について説明する。試験条件は以下の通りである。
32本の850mlポリプロピレン製栽培ビンに、1本あたり杉オガコ60g(乾物重量)とコメヌカ60g、フスマ20g、マメカワ20g、コーンコブミール30g、ニョキデール2.5gをよく混合し、水道水を加えて水分含有率を65%に調整した培地を圧詰めしてビン口部中央より下方に向かい直径2cmの穴をあけた後、栽培専用キャップで打栓した。該培養基を120℃で30分間高圧蒸気滅菌した後、ブナシメジ新菌株の種菌を接種した。暗所22℃、湿度60%の条件下で該培養基を35日培養すると菌まわしが完了した。次いで該培養基を菌かき(発生処理)し、15℃、湿度95%以上、照度100ルクス以内の環境で子実体原基を形成させ、その後さらに照度を1000ルクスに上げて子実体を形成させた。菌かき後、傘が八分開きになった段階で子実体を収穫した。収穫した子実体は、遊離アミノ酸について定法により分析し、その結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
本発明の新菌株は、遊離グルタミン酸含量が他の品種と比較し、1.5〜1.9倍と高い。
【0031】
そして、本発明に係る新菌株の菌糸体の培養方法および新菌株の子実体の栽培方法を以下に説明する。
32本の850mlポリプロピレン製栽培ビンに、1本あたり杉オガコ60g(乾物重量)とコメヌカ60g、フスマ20g、マメカワ20g、コーンコブミール30g、ニョキデール2.5gをよく混合し、水道水を加えて水分含有率を65%に調整した培地を圧詰めしてビン口部中央より下方に向かい直径2cmの穴をあけた後、栽培専用キャップで打栓した。該培養基を120℃で30分間高圧蒸気滅菌した後、ブナシメジ新菌株の種菌を接種した。暗所22℃、湿度60%の条件下で該培養基を35日培養すると菌まわしが完了した。次いで接種から70日目に該培養基を菌かき(発生処理)し、15℃、湿度95%以上、照度100ルクス以内の環境で子実体原基を形成させ、その後さらに照度を1000ルクスに上げて子実体を形成させた。菌かき後、傘が八分開き以上になった段階で子実体を収穫した。
【実施例】
【0032】
以下に本発明によるブナシメジ新菌株の各種培地による人工栽培によって得られた子実体の遊離グルタミン酸含量の分析値を示す。
〔実施例1〕
32本の850mlポリプロピレン製栽培ビンに、1本あたり杉オガコ95g(乾物重量)とコメヌカ95gをよく混合し、水道水を加えて水分含有率を63%に調整した培地を32本の850mlポリプロピレン製栽培ビンに圧詰めして、ビン口部中央より下方に向かい直径2cmの穴をあけた後、栽培専用キャップで打栓した。該培養基を120℃で30分間高圧蒸気滅菌した後、ブナシメジ新菌株の種菌を接種した。対照として、「宝の華K0259」、「カヤノヒメ(市販品種)」を接種した。暗所22℃、湿度60%の条件下で該培養基を35日培養すると菌まわしが完了した。次いで接種から70日目に該培養基を菌かき(発生処理)し、15℃、湿度95%以上、照度100ルクス以内の環境で子実体原基を形成させ、その後さらに照度を1000ルクスに上げて子実体を形成させた。菌かき後、傘が八分開き以上になった段階で子実体を収穫した。収穫した子実体の遊離グルタミン酸含量の結果を表3に示した。新菌株の遊離グルタミン酸含量は、1754mg/100g乾物であり、宝の華K0259の約2倍、カヤノヒメの3.7倍であった。
【0033】
【表3】

【0034】
〔実施例2〕
32本の850mlポリプロピレン製栽培ビンに、1本あたり杉オガコ60g(乾物重量)とコメヌカ60g、フスマ20g、マメカワ20g、コーンコブミール30g、ニョキデール(商品名:JA全農長野が販売)2.5gをよく混合し、水道水を加えて水分含有率を65%に調整した培地を圧詰めしてビン口部中央より下方に向かい直径2cmの穴をあけた後、栽培専用キャップで打栓した。該培養基を120℃で30分間高圧蒸気滅菌した後、ブナシメジ新菌株の種菌を接種した。対照として、「宝の華K0259」、「カヤノヒメ」、「博多ブナシメジ」を接種した。暗所22℃、湿度60%の条件下で該培養基を35日培養すると菌まわしが完了した。次いで接種から70日目に該培養基を菌かき(発生処理)し、15℃、湿度95%以上、照度100ルクス以内の環境で子実体原基を形成させ、その後さらに照度を1000ルクスに上げて子実体を形成させた。菌かき後、傘が八分開き以上になった段階で子実体を収穫した。収穫した子実体の遊離グルタミン酸含量の結果を表4に示した。新菌株の遊離グルタミン酸含量は、1562mg/100g乾物であり、宝の華K0259の約2倍、カヤノヒメの3倍、博多ブナシメジの4倍であった。
【0035】
【表4】

【0036】
〔実施例3〕
32本の850mlポリプロピレン製栽培ビンに、1本あたり杉オガコ60g(乾物重量)とコメヌカ50g、マメカワ35g、コーンコブミール30g、コットンハル10g、ニョキデール2.5gをよく混合し、水道水を加えて水分含有率を65%に調整した培地を圧詰めしてビン口部中央より下方に向かい直径2cmの穴をあけた後、栽培専用キャップで打栓した。該培養基を120℃で30分間高圧蒸気滅菌した後、ブナシメジ新菌株の種菌を接種した。対照として、「宝の華K0259」を接種した。暗所22℃、湿度60%の条件下で該培養基を35日培養すると菌まわしが完了した。次いで接種から70日目に該培養基を菌かき(発生処理)し、15℃、湿度95%以上、照度100ルクス以内の環境で子実体原基を形成させ、その後さらに照度を1000ルクスに上げて子実体を形成させた。菌かき後、傘が八分開き以上になった段階で子実体を収穫した。収穫した子実体の遊離グルタミン酸含量の結果を表5に示した。新菌株の遊離グルタミン酸含量は、1514mg/100g乾物であり、宝の華K0259の約3倍であった。
【0037】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工栽培を行った際に、子実体に含まれる遊離グルタミン酸含量が1500mg/100g乾物以上のブナシメジ新菌株。
【請求項2】
受領番号がFERM AP−20104である請求項1記載のブナシメジ新菌株。
【請求項3】
請求項1または2記載のブナシメジ新菌株の菌種を培地に接種し、菌糸体を生成させることを特徴とするブナシメジ新菌株の菌糸体の培養方法。
【請求項4】
請求項1または2記載のブナシメジ新菌株の菌種を培地に接種し、子実体を形成させることを特徴とするブナシメジ新菌株の子実体の栽培方法。

【公開番号】特開2006−25619(P2006−25619A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205013(P2004−205013)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(591062146)社団法人長野県農村工業研究所 (12)
【出願人】(500149522)中野市農業協同組合 (13)
【Fターム(参考)】