運動変換伝達装置
【課題】運動や力の伝達の特性を広い範囲に亘り所望の特性に設定することが可能でコンパクトな運動変換伝達装置を提供すること。
【解決手段】軸線12に整合して互いに嵌合し且つ軸線に整合して相対運動する入力部材14と中間部材86と出力部材90とを有し、軸線に沿う直線運動及び軸線の周りの回転運動の一方を第一の運動とし、直線運動及び回転運動の他方を第二の運動として、入力部材の第一の運動を第二の運動に変換して中間部材に伝達する第一の伝達手段54と、中間部材の第二の運動を第一の運動に変換して出力部材に伝達する第二の伝達手段56とを有し、第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方は運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させる。
【解決手段】軸線12に整合して互いに嵌合し且つ軸線に整合して相対運動する入力部材14と中間部材86と出力部材90とを有し、軸線に沿う直線運動及び軸線の周りの回転運動の一方を第一の運動とし、直線運動及び回転運動の他方を第二の運動として、入力部材の第一の運動を第二の運動に変換して中間部材に伝達する第一の伝達手段54と、中間部材の第二の運動を第一の運動に変換して出力部材に伝達する第二の伝達手段56とを有し、第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方は運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動を変換し伝達する装置に係り、更に詳細には運動を変換すると共に所望の伝達比にて伝達する運動変換伝達装置に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のブレーキ装置に於いては、運転者がブレーキペダルを踏み込むことにより制動操作が行われ、ブレーキペダルのストロークがマスタシリンダのピストンへそのストロークとして伝達される。そしてマスタシリンダによってブレーキペダルに与えられた踏力に対応する制動液圧に変換され、制動液圧に対応する制動力が発生される。
【0003】
一般に、自動車等の車両のブレーキ装置に於いては、ブレーキペダルのストローク及び踏力の伝達特性は非線形の特性であることが好ましい。ブレーキペダルのストローク及び踏力の伝達特性を所望の非線形の特性にするための構造として、従来より種々の構成のブレーキペダル装置が提案されており、例えば下記の特許文献1にはレバー比可変式のブレーキペダル装置が記載されている。
【特許文献1】特開平11−115699号公報
【発明の開示】
【0004】
上述の如きレバー比可変式のブレーキペダル装置に於いては、揺動リンクや連結リンクを含むリンク機構によりレバー比を変化させるようになっているため、リンクの運動を可能にするための比較的大きいスペースが必要である。またリンクの長さや相互関係によってレバー比の変化が一義的に決定されるため、レバー比の変化の態様が限定され、そのため運動や力の伝達の特性を広い範囲に亘り所望の特性に設定することが困難である。尚、上述の問題はレバー比可変式のブレーキペダル装置に限られるものではなく、一般的なカム機構等により運動や力の伝達特性を可変にする他の従来の運動伝達装置に於いても同様に存在する。
本発明は、従来の運動伝達装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、軸線に整合して互いに嵌合する部在間に於いて回転運動と直線運動との間の運動変換及び直線運動と回転運動との間の運動変換を行わせることにより、運動や力の伝達の特性を広い範囲に亘り所望の特性に設定することが可能でコンパクトな運動変換伝達装置を提供することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
【0005】
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち軸線に整合して互いに嵌合し且つ前記軸線に整合して相対運動する入力部材と中間部材と出力部材とを有し、前記軸線に沿う直線運動及び前記軸線の周りの回転運動の一方を第一の運動とし、前記二種類の運動の他方を第二の運動として、前記入力部材の前記第一の運動を前記第二の運動に変換して前記中間部材に伝達する第一の伝達手段と、前記中間部材の前記第二の運動を前記第一の運動に変換して前記出力部材に伝達する第二の伝達手段とを有し、前記第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方は運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を前記運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることを特徴とする運動変換伝達装置によって達成される。
【0006】
上記請求項1の構成によれば、第一の伝達手段が入力部材の第一の運動を第二の運動に変換して中間部材に伝達し、第二の伝達手段が中間部材の第二の運動を第一の運動に変換して出力部材に伝達し、第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方は運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるので、中間部材の第二の運動を介して入力部材の第一の運動を出力部材の第一の運動に変換すると共に、入力部材の運動量に対する出力部材の運動量の比を確実に入力部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることができ、これにより入力部材及び出力部材の運動の全域に亘り入力部材の運動量と出力部材の運動量との関係を所望の連続的な非線形特性にすることができる。
【0007】
また上記請求項1の構成によれば、入力部材、中間部材、出力部材は軸線に整合して互いに嵌合し且つ軸線に整合して相対運動するので、入力部材及び出力部材が互いに異なる軸線に沿って直線運動する構造や入力部材若しくは出力部材が中間部材に嵌合していない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置を確実にコンパクト化することができる。
【0008】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記第一の伝達手段は前記入力部材の前記軸線に沿う直線運動を前記軸線の周りの回転運動に変換して前記中間部材に伝達し、前記第二の伝達手段は前記中間部材の前記軸線の周りの回転運動を前記軸線に沿う直線運動に変換して前記出力部材に伝達するよう構成される(請求項2の構成)。
【0009】
上記請求項2の構成によれば、入力部材の軸線に沿う直線運動が第一の伝達手段により軸線の周りの回転運動に変換されて中間部材に伝達され、中間部材の軸線の周りの回転運動が第二の伝達手段により軸線に沿う直線運動に変換されて出力部材に伝達されるので、入力部材の直線運動量に対する出力部材の直線運動量の比を確実に入力部材の直線運動量に応じて連続的に非線形に変化させつつ入力部材の直線運動を出力部材に直線運動として伝達させることができる。
【0010】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記第一の伝達手段は前記入力部材の前記軸線の周りの回転運動を前記軸線に沿う直線運動に変換して前記中間部材に伝達し、前記第二の伝達手段は前記中間部材の前記軸線に沿う直線運動を前記軸線の周りの回転運動に変換して前記出力部材に伝達するよう構成される(請求項3の構成)。
【0011】
上記請求項3の構成によれば、入力部材の軸線の周りの回転運動が第一の伝達手段により軸線に沿う直線運動に変換されて中間部材に伝達され、中間部材の軸線に沿う直線運動が第二の伝達手段により軸線の周りの回転運動に変換されて出力部材に伝達されるので、入力部材の回転運動量に対する出力部材の回転運動量の比を確実に入力部材の回転運動量に応じて連続的に非線形に変化させつつ入力部材の回転運動を出力部材に回転運動として伝達させることができる。
【0012】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至3の何れかの構成に於いて、前記第一の伝達手段は前記入力部材の運動量に対する前記中間部材の運動量の比を前記入力部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成されており、前記第二の伝達手段は前記中間部材の運動量に対する前記出力部材の運動量の比を前記中間部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成される(請求項4の構成)。
【0013】
上記請求項4の構成によれば、第一の伝達手段により入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比が入力部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化され、第二の伝達手段により中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比が中間部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化されるので、第一の伝達手段及び第二の伝達手段の何れか一方のみにより運動量の比が連続的に非線形に変化される構造の場合に比して、第一の伝達手段及び第二の伝達手段の各々が達成すべき運動量の比の変化量を小さくすることができる。
【0014】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至4の何れかの構成に於いて、前記中間部材の運動量に対する前記出力部材の運動量の比は前記入力部材の運動量に対する前記中間部材の運動量の比よりも大きいよう構成される(請求項5の構成)。
【0015】
上記請求項5の構成によれば、中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比は入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比よりも大きいので、中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比が入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比よりも小さい構造の場合に比して、同一の連続的な非線形特性を達成する上で必要な中間部材の運動量を小さくすることができる。
【0016】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至5の何れかの構成に於いて、前記第一及び第二の伝達手段は前記運動伝達元の部材に設けられたカムと、前記運動伝達先の部材に設けられ前記カムに係合するカムフォロアとを有し、前記カムフォロアが前記カムに従動することにより前記運動伝達元の部材の運動量に対する前記運動伝達先の部材の運動量の比を前記運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成される(請求項6の構成)。
【0017】
上記請求項6の構成によれば、運動伝達先の部材に設けられたカムフォロアが運動伝達先の部材に設けられたカムに従動することにより運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比が運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化されるので、運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を確実に運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることができると共に、カム及びカムフォロアの設定によって所望の連続的な非線形特性を達成することができる。
【0018】
また本発明によれば、上記請求項6の構成に於いて、前記カム及び前記カムフォロアの一方はカム溝であり、前記カム及び前記カムフォロアの他方は前記カム溝に係合し前記カム溝に沿って移動するカム溝係合部材であり、前記第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方の前記カム溝は前記軸線の周りに周方向に対し傾斜して延在し且つ周方向に対する傾斜角が連続的に漸次変化するよう湾曲しているよう構成される(請求項7の構成)。
【0019】
上記請求項7の構成によれば、第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方のカム溝は軸線の周りに周方向に対し傾斜して延在し且つ周方向に対する傾斜角が連続的に漸次変化するよう湾曲しているので、カム溝係合部材がカム溝に係合した状態にてカム溝に沿って移動することにより運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることができ、従ってカム溝の湾曲形状の設定によって所望の連続的な非線形特性を達成することができる。
【0020】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項7の構成に於いて、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記入力部材の運動量が0であるときに前記カム溝係合部材が前記カム溝に係合する位置に於いて周方向に対し同一の傾斜角を有するよう構成される(請求項8の構成)。
【0021】
上記請求項8の構成によれば、第一及び第二の伝達手段のカム溝は入力部材の運動量が0であるときにカム溝係合部材がカム溝に係合する位置に於いて周方向に対し同一の傾斜角を有するので、入力部材の運動量が0であるときにカム溝係合部材がカム溝に係合する位置に於いて第一及び第二の伝達手段のカム溝が周方向に対しなす傾斜角が互いに異なる構造の場合に比して、入力部材の直線運動の開始時及び終了時に於ける中間部材の回転運動を円滑に開始及び終了させることができ、これにより入力部材と中間部材との間及び中間部材と出力部材との間に於ける運動変換及び反力の伝達を円滑に行わせることができる。
【0022】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2又は4乃至8の何れかの構成に於いて、前記運動変換伝達装置は前記入力部材、前記中間部材、前記出力部材を収容するハウジングを有し、前記中間部材は前記軸線の周りに前記入力部材及び前記出力部材を囲繞する状態にてこれらに嵌合し且つ前記入力部材及び前記出力部材を前記軸線に沿って直線運動可能に支持しており、前記ハウジングは前記軸線の周りに前記中間部材を囲繞する状態にてこれに嵌合し且つ前記中間部材を回転可能に支持しており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記中間部材に設けられ、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記入力部材及び前記出力部材に設けられ、前記ハウジングは前記軸線に沿って延在するガイド溝を有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝を貫通して径方向に延在し且つ前記ガイド溝に沿って移動可能に前記ガイド溝に係合しているよう構成される(請求項9の構成)。
【0023】
上記請求項9の構成によれば、中間部材は軸線の周りに入力部材及び出力部材を囲繞する状態にてこれらに嵌合し且つ入力部材及び出力部材を軸線に沿って往復動可能に支持しているので、入力部材及び出力部材が互いに異なる軸線に沿って直線運動する構造や中間部材が入力部材若しくは出力部材に嵌合していない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置をコンパクト化することができる。またハウジングは軸線の周りに中間部材を囲繞する状態にてこれに嵌合し且つ中間部材を回転可能に支持しているので、直線運動又は回転運動する部材が露呈することを防止することができると共に、ハウジングを支持手段に固定することにより運動変換伝達装置を容易に且つ確実に支持手段に固定することができる。
【0024】
また上記請求項9の構成によれば、ハウジングは軸線に沿って延在するガイド溝を有し、第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材はそれぞれ第一及び第二の伝達手段のカム溝を貫通して径方向に延在しガイド溝に嵌入しているので、第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材をガイド溝により確実に軸線に沿って案内させることができ、これによりハウジングにガイド溝が設けられていない構造の場合に比して、入力部材の直線運動と中間部材の回転運動との間の運動変換及び中間部材の回転運動と出力部材の直線運動との間の運動変換を円滑に行わせることができる。また入力部材の直線運動と中間部材の回転運動との間の運動変換及び中間部材の回転運動と出力部材の直線運動との間の運動変換に伴い第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材が受ける応力の一部をハウジングにより担持させることができ、従ってハウジングにガイド溝が設けられていない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の耐久性を向上させることができる。
【0025】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2又は4乃至9の何れかの構成に於いて、前記第一及び第二の伝達手段は前記出力部材を前記軸線に沿って前記入力部材と同一の方向へ直線運動させるよう構成されているよう構成される(請求項10の構成)。
【0026】
上記請求項10の構成によれば、出力部材は軸線に沿って入力部材と同一の方向へ直線運動するので、上記請求項17の構成の場合に比して入力部材の直線運動量が0であるときの入力部材と出力部材との間の距離を小さくすることができ、これにより上記請求項17の構成の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線に沿う方向の長さを小さくすることができる。
【0027】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項10の構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材は前記入力部材の運動量が0であるときには互いに当接するよう構成される(請求項11の構成)。
【0028】
上記請求項11の構成によれば、入力部材及び出力部材は入力部材の運動量が0であるときには互いに当接するので、入力部材の運動量が0であるときにも入力部材及び出力部材が互いに隔置される構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線に沿う方向の長さを小さくすることができると共に、入力部材の運動量が0であるときに於ける入力部材及び出力部材のがたつきを確実に低減することができる。
【0029】
また本発明によれば、上記請求項9乃至11の何れかの構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線の周りの同一の位置にて前記軸線に沿って互いに隔置されており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれらに共通のガイド溝に係合しているよう構成される(請求項12の構成)。
【0030】
上記請求項12の構成によれば、第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材はそれらに共通のガイド溝に係合しているので、入力部材及び出力部材が軸線の周りの互いに異なる位置に設けられ、第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材がそれぞれ個別のガイド溝に係合する構造の場合に比して、ガイド溝の数を低減し、運動変換伝達装置の構造を簡略化することができる。
【0031】
また本発明によれば、上記請求項2又は4乃至12の何れかの構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線に沿って互いに係合する部分を有し、前記第一及び第二の伝達手段は前記互いに係合する部分に設けられ且つ前記軸線の周りの周方向に互いに隔置されているよう構成される(請求項13の構成)。
【0032】
上記請求項13の構成によれば、入力部材及び出力部材は軸線に沿って互いに係合する部分を有し、第一及び第二の伝達手段は互いに係合する部分に設けられ且つ軸線の周りの周方向に互いに隔置されているので、入力部材及び出力部材が軸線に沿って互いに係合する部分を有さず且つ第一及び第二の伝達手段が軸線に沿って互いに隔置されている構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置をコンパクト化することができる。
【0033】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項13の構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材はそれぞれ前記軸線に沿って他方の部材へ向けて延在する一対のアーム部を有し、前記入力部材の一対のアーム部及び前記出力部材の一対のアーム部は前記軸線の周りの周方向に見て交互に配設され、前記入力部材及び前記出力部材の前記軸線に沿う相対直線運動を許しつつ前記軸線の周りの相対回転運動を阻止するよう構成される(請求項14の構成)。
【0034】
上記請求項14の構成によれば、入力部材及び出力部材はそれぞれ軸線に沿って他方の部材へ向けて延在する一対のアーム部を有し、入力部材の一対のアーム部及び出力部材の一対のアーム部は軸線の周りの周方向に見て交互に配設され、入力部材及び出力部材の軸線に沿う相対直線運動を許容しつつ軸線の周りの相対回転運動を阻止するので、入力部材の直線運動が中間部材の回転運動に変換される際に入力部材が中間部材より受ける回転反力及び中間部材の回転運動が出力部材の直線運動に変換される際に中間部材が出力部材より受ける回転反力は互いに軸線の周りの逆方向になる。
【0035】
従って直線運動と回転運動との間の運動変換により生じる回転反力の少なくとも一部を入力部材及び出力部材により担持することができ、これにより第一及び第二の伝達手段が担持すべき回転反力を低減することができるので、入力部材の一対のアーム部及び出力部材の一対のアーム部が入力部材及び出力部材の軸線の周りの相対回転運動を阻止するよう構成されていない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の耐久性を向上させることができる。
【0036】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項14の構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材は同一の形状を有し、前記軸線に沿って互いに他に対し逆向きに配設されているよう構成される(請求項15の構成)。
【0037】
上記請求項15の構成によれば、入力部材及び出力部材は同一の形状を有し、軸線に沿って互いに他に対し逆向きに配設されているので、入力部材及び出力部材を共通の部材とすることができ、これにより入力部材及び出力部材が互いに異なる形状を有する別部材である構造の場合に比して、必要な部品点数を低減し、運動変換伝達装置のコストを低減することができる。
【0038】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項13の構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材の一方は前記軸線に沿って他方の部材へ向けて延在する軸部を有し、前記他方の部材は前記軸線に沿って延在し前記軸部を前記軸線に沿って相対直線運動可能に受けるリセスを有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材は前記軸部及び前記リセスの周囲の部分に設けられ且つ前記軸線の周りの周方向に互いに隔置されており、前記リセスの周囲の部分は前記軸部に設けられた前記カム溝係合部材が前記リセスの周囲の部分に対し相対的に前記軸線に沿って直線運動することを許すスリットを有するよう構成される(請求項16の構成)。
【0039】
上記請求項16の構成によれば、入力部材及び出力部材の一方に設けられた軸部が他方の部材に設けられたリセスに軸線に沿って相対直線運動可能に受けられているので、入力部材及び出力部材の一方に設けられた軸部が他方の部材に設けられたリセスに軸線に沿って相対直線運動可能に受けられていない構造の場合に比して、入力部材及び出力部材のがたつきを確実に低減することができる。
【0040】
また第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材は軸部及びリセスの周囲の部分に設けられ且つ軸線の周りの周方向に互いに隔置されており、リセスの周囲の部分は軸部に設けられたカム溝係合部材がリセスの周囲の部分に対し相対的に軸線に沿って直線運動することを許すスリットを有するので、入力部材及び出力部材が軸部及びリセスを有さず、第一及び第二の伝達手段が軸線に沿って互いに隔置されている構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置をコンパクト化することができる。
【0041】
またリセスの周囲の部分は軸部に設けられたカム溝係合部材がリセスの周囲の部分に対し相対的に軸線に沿って直線運動することを許すスリットを有するので、カム溝係合部材がリセスの周囲の部分に対し相対的に軸線に沿って直線運動することがリセスの周囲の部分によって阻害されることを確実に防止することができる。
【0042】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2又は4乃至9の何れかの構成に於いて、前記第一及び第二の伝達手段は前記出力部材を前記軸線に沿って前記入力部材とは逆の方向へ直線運動させるよう構成される(請求項17の構成)。
【0043】
上記請求項17の構成によれば、出力部材は軸線に沿って入力部材とは逆の方向へ直線運動するので、直線運動の方向を逆転して入力部材の直線運動を出力部材に伝達させることができる。
【0044】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2又は4乃至17の何れかの構成に於いて、前記出力部材は他の部材と共働して前記軸線に沿う両側に液体にて充填された容積可変の二つのシリンダ室を郭定しており、前記出力部材は前記二つのシリンダ室を連通接続するオリフィスを有し、前記出力部材の直線運動に伴って前記液体が一方のシリンダ室より前記オリフィスを経て他方のシリンダ室へ流動するよう構成される(請求項18の構成)。
【0045】
上記請求項18の構成によれば、出力部材の直線運動に伴って液体が一方のシリンダ室よりオリフィスを経て他方のシリンダ室へ流動するので、液体がオリフィスを経て流動することによる減衰力が出力部材に対しその運動方向とは逆方向に作用し、従って入力部材の直線運動の速度が高いほど出力部材に作用する減衰力が高くなることにより、入力部材の直線運動の速度が高いほど反力が高くなるよう入力部材の直線運動の速度に応じた反力を発生させることができる。
【0046】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項7乃至18の何れかの構成に於いて、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝の前記軸線に沿う方向の延在範囲は前記軸線の周りの周方向に見て少なくとも部分的に互いにオーバラップしているよう構成される(請求項19の構成)。
【0047】
上記請求項19の構成によれば、第一及び第二の伝達手段のカム溝の軸線に沿う方向の延在範囲は軸線の周りの周方向に見て少なくとも部分的に互いにオーバラップしているので、第一及び第二の伝達手段のカム溝の軸線に沿う方向の延在範囲が軸線の周りの周方向に見て互いにオーバラップしていない構造の場合に比して、第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材の軸線に沿う方向の間隔を小さくすることができ、これにより操作シミュレータの軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置をコンパクト化することができる。
【0048】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項3の構成に於いて、前記運動変換伝達装置は前記入力部材、前記中間部材、前記出力部材を収容するハウジングを有し、前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線の周りに前記中間部材を囲繞する状態にてこれらに嵌合し且つ前記中間部材を前記軸線に沿って直線運動可能に支持しており、前記ハウジングは前記軸線の周りに前記入力部材及び前記出力部材を囲繞する状態にてこれに嵌合し且つ前記入力部材及び前記出力部材を前記軸線の周りに回転可能に支持しており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記入力部材及び前記出力部材に設けられ、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材は前記中間部材に設けられ、前記ハウジングは前記軸線に沿って延在するガイド溝を有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝を貫通して径方向に延在し且つ前記ガイド溝に沿って移動可能に前記ガイド溝に係合しているよう構成される(請求項20の構成)。
【0049】
上記請求項20の構成によれば、上記請求項9の構成の場合と同様、ハウジングにガイド溝が設けられていない構造の場合に比して、入力部材の回転運動と中間部材の直線運動との間の運動変換及び中間部材の直線運動と出力部材の回転運動との間の運動変換を円滑に行わせることができる。また入力部材の回転運動と中間部材の直線運動との間の運動変換及び中間部材の直線運動と出力部材の回転運動との間の運動変換に伴い第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材が受ける応力の一部をハウジングにより担持させることができ、従ってハウジングにガイド溝が設けられていない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の耐久性を向上させることができる。
【0050】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項7乃至202の何れかの構成に於いて、前記カム溝係合部材は対応する部材に固定され径方向に延在する軸部材と、前記軸部材に回転可能に支持され前記カム溝の壁面に転動可能に係合するカムローラとを有するよう構成される(請求項21の構成)。
【0051】
上記請求項21の構成によれば、カム溝係合部材は対応する部材に固定され径方向に延在する軸部材と、軸部材に回転可能に支持されカム溝の壁面に転動可能に係合するカムローラとを有するので、カム溝係合部材がカム溝の壁面に転動可能に係合していない構造の場合に比して、カム溝係合部材とカム溝の壁面との間の摩擦を低減し、運動伝達元の運動と運動伝達先の運動との間の運動変換を円滑に行わせることができる。
【0052】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項21の構成に於いて、前記カム溝係合部材は前記軸部材に回転可能に支持され前記入力部材の直線運動の方向に沿って延在するガイド溝の壁面に転動可能に係合するガイドローラを有するよう構成される(請求項22の構成)。
【0053】
上記請求項22の構成によれば、カム溝係合部材は軸部材に回転可能に支持され入力部材の直線運動の方向に沿って延在するガイド溝の壁面に転動可能に係合するガイドローラを有するので、ガイド溝の壁面に転動可能に係合するガイドローラを有しない構造の場合に比して、軸部材を確実に入力部材の直線運動の方向に沿って移動させることができ、これにより運動伝達元の運動と運動伝達先の運動との間の運動変換を円滑に行わせることができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
【0054】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至22の何れかの構成に於いて、第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方は運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比が運動伝達元の部材の運動量の増大につれて漸次増大するよう、運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成される(好ましい態様1)。
【0055】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至22の何れかに於いて、第一の伝達手段は入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比が入力部材の運動量の増大につれて漸次増大するよう、入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比を入力部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成され、第二の伝達手段は中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比が中間部材の運動量の増大につれて漸次増大するよう、中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比を中間部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成される(好ましい態様2)。
【0056】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至22の何れか又は上記好ましい態様1又は2の構成に於いて、軸線の周りに等間隔に隔置された複数のカム溝及びカム溝係合部材が設けられているよう構成される(好ましい態様3)。
【0057】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至22又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、入力部材の運動量の増大に伴う中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比の増大率は入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比の増大率よりも大きいよう構成される(好ましい態様4)。
【0058】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3乃至8又は請求項20乃至22又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、第一及び第二の伝達手段は出力部材を軸線の周りに入力部材と同一の方向へ回転運動させるよう構成される(好ましい態様5)。
【0059】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3乃至8又は請求項20乃至22又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、第一及び第二の伝達手段は出力部材を軸線の周りに入力部材とは逆の方向へ回転運動させるよう構成される(好ましい態様6)。
【0060】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2又は請求項4乃至19又は請求項21又は22又は上記好ましい態様1乃至4の何れかの構成に於いて、運動変換伝達装置はオペレータによる操作手段の運動を他の部材へ伝達するよう構成される(好ましい態様7)。
【0061】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2又は請求項4乃至19又は請求項21又は22又は上記好ましい態様1乃至4の何れかの構成に於いて、運動変換伝達装置は車両の運転者により操作されるブレーキ操作手段とブレーキ操作手段に与えられる操作力を液圧に変換する手段との間に配設されるよう構成される(好ましい態様8)。
【0062】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項17又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、運動変換伝達装置は車輪と共に上下動する部材と車体との間に配設され、入力部材及び出力部材はサスペンションスプリングを支持するスプリングシートに連結されるよう構成される(好ましい態様9)。
【0063】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、運動変換伝達装置は車両の操舵装置のステアリングホイールと回転運動を操舵輪の転舵運動に変換する運動変換機構との間に配設されるよう構成される(好ましい態様10)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施例について詳細に説明する。
【0065】
まず実施例の説明に先立ち、ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の後述の第一乃至第五の実施例が適用されてよい自動車等の車両のブレーキ装置の一つの適用例について図12を参照して説明する。
【0066】
図12はブレーキストロークシミュレータの実施例が適用されてよい一つの適用例として油圧式のブレーキ装置210を示しており、ブレーキ装置210は運転者によるブレーキペダル212の踏み込み操作に応答してブレーキオイルを圧送するマスタシリンダ214を有している。ブレーキペダル212は枢軸212Aにより枢支され、オペレーションロッド216によりマスタシリンダ214のピストンに連結されている。
【0067】
マスタシリンダ214は第一のマスタシリンダ室214Aと第二のマスタシリンダ室214Bとを有し、これらのマスタシリンダ室にはそれぞれ左前輪用のブレーキ油圧供給導管218及び右前輪用のブレーキ油圧制御導管220の一端が接続されている。ブレーキ油圧制御導管218及び220の他端にはそれぞれ左前輪及び右前輪の制動力を制御するホイールシリンダ222FL及び222FRが接続されている。
【0068】
ブレーキ油圧供給導管218及び220の途中にはそれぞれ連通制御弁として機能する常開型の電磁開閉弁(所謂マスタカット弁)224L及び224Rが設けられ、電磁開閉弁224L及び224Rはそれぞれ第一のマスタシリンダ室214A及び第二のマスタシリンダ室214Bと対応するホイールシリンダ222FL及び222FRとの連通を制御する遮断弁として機能する。また第一のマスタシリンダ214Aには途中に常閉型の電磁開閉弁(常閉弁)226を有する導管228Aにより本発明に従って構成されたブレーキストロークシミュレータ10が接続されている。
【0069】
マスタシリンダ214にはリザーバ230が接続されており、リザーバ230には油圧供給導管232の一端が接続されている。油圧供給導管232の途中には電動機234により駆動されるオイルポンプ236が設けられており、オイルポンプ236の吐出側の油圧供給導管232には高圧の油圧を蓄圧するアキュムレータ238が接続されている。リザーバ230とオイルポンプ236との間の油圧供給導管232には油圧排出導管240の一端が接続されている。リザーバ230、オイルポンプ236、アキュムレータ238等は後述の如くホイールシリンダ222FL、222FR、222RL、222RR内の圧力を増圧するための高圧の圧力源として機能する。
【0070】
尚図12には示されていないが、オイルポンプ236の吸入側の油圧供給導管232と吐出側の油圧供給導管232とを連通接続する導管が設けられ、該導管の途中にはアキュムレータ238内の圧力が基準値を越えた場合に開弁し吐出側の油圧供給導管232より吸入側の油圧供給導管232へオイルを戻すリリーフ弁が設けられている。
【0071】
オイルポンプ236の吐出側の油圧供給導管232は、油圧制御導管242により電磁開閉弁224Lとホイールシリンダ222FLとの間のブレーキ油圧供給導管218に接続され、油圧制御導管244により電磁開閉弁224Rとホイールシリンダ222FRとの間のブレーキ油圧供給導管220に接続され、油圧制御導管246により左後輪用のホイールシリンダ222RLに接続され、油圧制御導管248により右後輪用のホイールシリンダ222RRに接続されている。
【0072】
油圧制御導管242、244、246、248の途中にはそれぞれ常閉型の電磁式のリニア弁250FL、250FR、250RL、250RRが設けられている。リニア弁250FL、250FR、250RL、250RRに対しホイールシリンダ222FL、222FR、222RL、222RRの側の油圧制御導管242、244、246、248はそれぞれ油圧制御導管252、254、256、258により油圧排出導管240に接続されており、油圧制御導管252、254の途中にはそれぞれ常閉型の電磁式のリニア弁260FL、260FRが設けられ、また油圧制御導管256、258の途中にはそれぞれ常閉型の電磁式のリニア弁よりも低廉な常開型の電磁式のリニア弁260RL、260RRが設けられている。
【0073】
リニア弁250FL、250FR、250RL、250RRはそれぞれホイールシリンダ222FL、222FR、222RL、222RRに対する増圧弁(保持弁)として機能し、リニア弁260FL、260FR、260RL、260RRはそれぞれホイールシリンダ222FL、222FR、222RL、222RRに対する減圧弁として機能し、従ってこれらのリニア弁は互いに共働してアキュムレータ238内より各ホイールシリンダに対する高圧のオイルの給排を制御する増減圧制御弁を構成している。
【0074】
尚各電磁開閉弁、各リニア弁及び電動機234に駆動電流が供給されない非制御時には電磁開閉弁224L及び224Rは開弁状態に維持され、電磁開閉弁226、リニア弁250FL〜250RR、リニア弁260FL及び260FRは閉弁状態に維持され、リニア弁260RL及び260RRは開弁状態に維持され(非制御モード)、これにより左右前輪のホイールシリンダ内の圧力は直接マスタシリンダ214により制御される。
【0075】
図12に示されている如く、第一のマスタシリンダ室214Aと電磁開閉弁224Lとの間のブレーキ油圧制御導管218には該制御導管内の圧力を第一のマスタシリンダ圧力Pm1として検出する第一の圧力センサ266が設けられている。同様に第二のマスタシリンダ室214Bと電磁開閉弁224Rとの間のブレーキ油圧制御導管220には該制御導管内の圧力を第二のマスタシリンダ圧力Pm2として検出する第二の圧力センサ268が設けられている。ブレーキペダル212には運転者によるブレーキペダルの踏み込みストロークStを検出するストロークセンサ270が設けられ、オイルポンプ234の吐出側の油圧供給導管232には該導管内の圧力をアキュムレータ圧力Paとして検出する圧力センサ272が設けられている。
【0076】
それぞれ電磁開閉弁224L及び224Rとホイールシリンダ222FL及び222FRとの間のブレーキ油圧供給導管218及び220には、対応する導管内の圧力をホイールシリンダ222FL及び222FR内の圧力Pfl、Pfrとして検出する圧力センサ274FL及び274FRが設けられている。またそれぞれ電磁開閉弁250RL及び250RRとホイールシリンダ222RL及び222RRとの間の油圧制御導管246及び248には、対応する導管内の圧力をホイールシリンダ222RL及び222RR内の圧力Prl、Prrとして検出する圧力センサ274RL及び274RRが設けられている。
【0077】
電磁開閉弁224L及び224R、電磁開閉弁226、電動機234、リニア弁250FL〜250RR、リニア弁260FL〜260RRは図12には示されていない電子制御装置により制御される。
【0078】
電子制御装置には、圧力センサ266及び268よりそれぞれ第一のマスタシリンダ圧力Pm1及び第二のマスタシリンダ圧力Pm2を示す信号、ストロークセンサ270よりブレーキペダル212の踏み込みストロークStを示す信号、圧力センサ272よりアキュムレータ圧力Paを示す信号、圧力センサ274FL〜274RRよりそれぞれホイールシリンダ222FL〜222RR内の圧力Pi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力される。
【0079】
電子制御装置は、ブレーキペダル212が踏み込まれると電磁開閉弁226を開弁すると共に、電磁開閉弁224L及び224Rを閉弁し、その状態にて圧力センサ266、268により検出されたマスタシリンダ圧力Pm1、Pm2及びストロークセンサ270より検出された踏み込みストロークStに基づき車輌の目標減速度Gtを演算し、車輌の目標減速度Gtに基づき各車輪の目標ホイールシリンダ圧力Pti(i=fl、fr、rl、rr)をマスタシリンダ圧力Pm1、Pm2よりも高い値に演算し、各車輪の制動圧Piが目標ホイールシリンダ圧力Ptiになるよう各リニア弁250FL〜250RR及び260FL〜260RRを制御する。
【0080】
以上の説明より解る如く、電子制御装置は運転者の制動操作量に基づき各車輪の目標ホイールシリンダ圧力をマスタシリンダ圧力Pm1、Pm2よりも高い値に演算し、電磁開閉弁224L及び224R、電磁開閉弁226、電動機234、リニア弁250FL〜250RR、リニア弁260FL〜260RR、圧力センサ266等の各センサと共働して高圧の圧力源の圧力を使用して電磁開閉弁224L及び224Rを閉弁させた状態で各車輪のホイールシリンダ圧力が対応する目標ホイールシリンダ圧力になるようリニア弁250FL〜250RR及びリニア弁260FL〜260RRを制御する。
【0081】
この場合ブレーキストロークシミュレータ10は、電磁開閉弁224L及び224Rが閉弁されることによりマスタシリンダ214とホイールシリンダ222FL、222FRとの連通が遮断された状況に於いて、運転者によるブレーキペダル212の踏み込みストロークを許容すると共に、所望の連続的な非線形特性にてブレーキペダル212を介して運転者に反力を付与する。
[第一の実施例]
【0082】
図1はブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第一の実施例を示す軸線に沿う断面図、図2は第一の実施例の出力ロータを平面に展開して示す展開図である。
【0083】
これらの図に於いて、10はブレーキストロークシミュレータを全体的に示しており、ストロークシミュレータ10は軸線12に沿って延在し軸線12に沿って直線運動可能な入力部材としての入力ピストン14と、軸線12に沿って延在し軸線12の周りに回転運動可能な中間部材としての中間ロータ86と、軸線12に沿って延在し軸線12に沿って直線運動可能な出力部材としての出力ピストン90とを有している。入力ピストン14、中間ロータ86、出力ピストン90はハウジング16内に配置されており、ハウジング16は円筒状の本体16Aとその両端に圧入等の手段により固定されたエンドキャップ22A及び22Bにて形成されている。
【0084】
中間ロータ86はハウジング16の内側にてこれに嵌合し、その軸線に沿う両端部にてハウジング16との間に設けられたアンギュラベアリング42及び44によりハウジング16に対し相対的に軸線12の周りに回転可能に支持されている。アンギュラベアリング42及び44は中間ロータ86がハウジング16に対し相対的に軸線12の周りに回転することを許すが、中間ロータ86がハウジング16に対し相対的に軸線12に沿って移動することを阻止する。アンギュラベアリング42及び44に対し軸線方向外側には軸線12の周りに環状に延在するカップシール46及び48が装着されている。カップシール46及び48はゴムの如き弾性材よりなり、中間ロータ86がハウジング16に対し相対的に軸線12の周りに回転することを許しつつアンギュラベアリング42及び44に粉塵や泥水等の異物が侵入することを阻止するようになっている。
【0085】
入力ピストン14及び出力ピストン90は中間ロータ86の内側にてこれに嵌合し、中間ロータ86によりこれに対し相対的に軸線12に沿って往復動可能に支持されている。また入力ピストン14はハウジング16のエンドキャップ22A及び出力ピストン90と共働して容積可変の第一のシリンダ室18を郭定している。エンドキャップ22Aには連通孔20が設けられており、第一のシリンダ室18は連通孔20及び導管228Aを介して第一のマスタシリンダ室214Aに連通接続され、これによりオイルにて充填されている。入力ピストン14は第一のシリンダ室18内の液圧が上昇すると、該液圧に応じて図1で見て左方へ軸線12に沿って移動する。
【0086】
また入力ピストン14は中間ロータ86及び出力ピストン90と共働して容積可変の第二のシリンダ室24を郭定している。入力ピストン14の一端の外周にはカップシール88が装着されており、カップシール88は入力ピストン14と中間ロータ86の内壁面との間をシールし、これにより第一のシリンダ室18と第二のシリンダ室24との連通を遮断している。入力ピストン14の他端の外周にはテフロン(登録商標)リングの如き減摩リング28が装着されており、減摩リング28は入力ピストン14が中間ロータ86に対し相対的に直線運動する際の摩擦抵抗を低減する。尚図1及び図2には示されていないが、ストロークシミュレータ10はハウジング16若しくはエンドキャップ22A又は22Bが車体に取り付けられることにより車体に固定されている。
【0087】
出力ピストン90はハウジング16のエンドキャップ22B及び中間ロータ86と共働して容積可変の第三のシリンダ室106を郭定している。出力ピストン90の両端部の外周面には減摩リング28と同様の減摩リング28A及び28Bが装着されている。図示の実施例に於いては、入力ピストン14及び出力ピストン90はエンドキャップ22Bへ向けて開いたカップ形の断面形状を有し、出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間の第三のシリンダ室106には反力発生手段としての圧縮コイルばね92が配置されている。
【0088】
荷重伝達ロッド30が入力ピストン14を貫通して軸線12に垂直に延在し、圧入等の手段により入力ピストン14に固定されている。荷重伝達ロッド30の両端部はハウジング16の本体16Aに設けられたガイド溝32を貫通して中間ロータ86に設けられたカム溝36内まで延在している。また荷重伝達ロッド30の両端部は実質的に球形のガイドローラ38及びカムローラ40を自らの軸線30Aの周りに回転可能に支持している。各ガイドローラ38は対応するガイド溝32の壁面に転動可能に係合し、各カムローラ40はカム溝36の壁面に転動可能に係合している。ガイド溝32及びカム溝36の幅はそれぞれガイドローラ38及びカムローラ40の最大直径よりも極僅かに大きい値に設定されている。
【0089】
同様に、荷重伝達ロッド94が出力ピストン90を貫通して軸線12に垂直に延在し、圧入等の手段により出力ピストン90に固定されている。荷重伝達ロッド94の軸線94Aは荷重伝達ロッド30の軸線30Aと平行に延在しているが、軸線94Aは軸線12に垂直である限り、軸線12に沿って見て軸線30Aに対し傾斜していてもよい。荷重伝達ロッド94の両端部は中間ロータ86に設けられたカム溝96を貫通してハウジング16の本体16Aに設けられたガイド溝32内まで延在している。また荷重伝達ロッド94の両端部はガイドローラ98及びカムローラ100を自らの軸線102の周りに回転可能に支持している。各ガイドローラ98はガイド溝32の壁面に転動可能に係合し、各カムローラ100は中間ロータ86に設けられたカム溝96の壁面に転動可能に係合している。ガイド溝32及びカム溝96の幅はそれぞれガイドローラ98及びカムローラ100の最大直径よりも極僅かに大きい値に設定されている。
【0090】
ガイド溝32はガイドローラ36及び98の最大直径よりも極僅かに大きい値に設定されており、カム溝34及び96の幅はそれぞれカムローラ38及び100の最大直径よりも極僅かに大きい値に設定されている。カム溝34及び96はそれぞれ第二のシリンダ室24及び第三のシリンダ室106と常時連通しており、またハウジング16の本体16Aと中間ロータ86との間の間隙を介してガイド溝32と常時連通している。ガイド溝32はガイドローラ38及び98に共通のガイド溝として機能するよう軸線12に沿って延在している。ハウジング16の本体16Aの外周には円筒状のカバー104が圧入等の手段により固定されている。カバー104は本体16Aに密に嵌合し、ガイド溝32を外界より遮断している。ガイド溝32はカバー104に設けられた連通孔41及び導管228Bを介してリザーバ230と常時連通している。
【0091】
二つのガイド溝32は軸線12の周りに互いに180°隔置されると共に軸線12に平行に直線的に延在しており、従ってガイドローラ38は荷重伝達ロッド30の周りの回転運動を除けば、ガイド溝32内を軸線12に沿って直線的にのみ運動可能である。二つのカム溝36も軸線12の周りに互いに180°隔置されているが、図2に示されている如く、カム溝36は軸線12及び周方向に対し傾斜した状態にて湾曲して延在している。従ってカムローラ40は荷重伝達ロッド30の周りの回転運動を除けば、カム溝36内を軸線12及び周方向に対し傾斜し湾曲した運動軌跡に沿ってのみ運動可能である。
【0092】
カム溝96も軸線12及び周方向に対し傾斜して延在しているが、図2で見て右端より左端へ向かうにつれて周方向に対する傾斜角が漸次大きくなるようカム溝36とは逆の方向へ湾曲して延在している。カム溝96の図2で見て右端部はカム溝36の図2で見て左端部と軸線方向の位置が互いにオーバラップしている。またカム溝96の軸線12に沿う方向の延在長さはカム溝36の軸線12に沿う方向の延在長さよりも大きい値に設定されている。更にカム溝36及び96の図2で見た右端部の軸線12に対する傾斜角θ1及びθ2は同一の角度をなしている。
【0093】
図1に示されている如く、非制動時には、カムローラ40及び100はそれぞれカム溝36及び96の図7で見て右端に当接する初期位置に位置するようになっている。そしてカムローラ40及び100が初期位置にあるときには、入力ピストン14は第一のシリンダ室18の容積が最小になる初期位置に位置し、出力ピストン90は入力ピストン14に当接する初期位置に位置し、これにより圧縮コイルばね92の圧縮変形量が最小になるようになっている。また非制動時には、圧縮コイルばね92のばね力により荷重伝達ロッド30及び94が図6で見て右方へ付勢されることにより、入力ピストン14及び出力ピストン90が初期位置に位置決めされ、入力ピストン14及び出力ピストン90は初期位置にあるときには互いに当接するようになっている。
【0094】
尚入力ピストン14が初期位置にあるときの入力ピストン14の図1で見て左端は、カム溝36の図6で見て左端よりも第一のシリンダ室18の側に位置する。また上述の如くカム溝96の図7で見て右端部はカム溝36の図2で見て左端部と軸線方向の位置が互いにオーバラップしている。従って入力ピストン14と出力ピストン90との間の第二のシリンダ室24は入力ピストン14と出力ピストン90との間の間隙を経てカム溝36及び96と連通し、オイルにて充填されている。また出力ピストン90が初期位置にあるときの出力ピストン90の図1で見て左端は、カム溝96の図1で見て左端よりも第一のシリンダ室18の側に位置する。従って出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間の第三のシリンダ室106はカム溝96と連通し、オイルにて充填されている。
【0095】
かくして図示の第一の実施例に於いては、荷重伝達ロッド30、ガイド溝32、カム溝36、ガイドローラ38、カムローラ40等は、互いに共働して入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動を軸線12の周りの回転運動に変換して中間ロータ86に伝達すると共に、後述の如く中間ロータ86に伝達される反力トルクを軸線12に沿う方向の反力として入力ピストン14に伝達する第一の伝達手段54として機能する。また第一の伝達手段54は、入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動量に対する中間ロータ86の回転運動量の比を入力ピストン14の直線運動量の増大につれて漸次増大させる。
【0096】
また荷重伝達ロッド94、ガイド溝32、カム溝96、ガイドローラ98、カムローラ100等は、互いに共働して中間ロータ86の回転運動を軸線12に沿う直線運動に変換して出力ピストン90に伝達し、出力ピストン90を介して圧縮コイルばね92を圧縮変形させると共に、圧縮コイルばね92の反力を軸線12の周りの反力トルクとして中間ロータ86に伝達する第二の伝達手段56として機能する。また第二の伝達手段56は、中間ロータ86の回転運動量に対する出力ピストン90の軸線12に沿う直線運動量の比を中間ロータ86の回転運動量の増大につれて漸次増大させ、これにより入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動量に対する出力ピストン90の軸線12に沿う直線運動量の比を入力ピストン14の直線運動量の増大につれて漸次増大させる。
【0097】
上述の如く構成された第一の実施例に於いて、マスタシリンダ214内の液圧が上昇し、入力ピストン14が軸線12に沿って図1で見て左方へ直線運動すると、第一の伝達手段54により入力ピストン14の直線運動が軸線12の周りの回転運動に変換されて中間ロータ86に伝達され、第二の伝達手段56により中間ロータ86の回転運動が軸線12に沿う直線運動に変換されて出力ピストン90に伝達される。よって入力ピストン14の直線運動量に対する出力ピストン90の直線運動量の比は第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の両者の作用によって決定されるので、入力ピストン14の直線運動量に対する圧縮コイルばね92の圧縮変形量の比も第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の両者の作用によって決定される。
【0098】
ここで入力ピストン14の直線運動量と中間ロータ86の回転運動量との関係が図13に示されている如き関係であり、中間ロータ86の回転運動量と出力ピストン90の直線運動量との関係が図14に示されている如き関係であるとすると、入力ピストン14の直線運動量と出力ピストン90の直線運動量との関係は図15に示されている如き関係になり、よってブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性は図16に示されている如き特性になる。尚力の伝達率は運動(変位)の伝達率の逆数になるので、軸線12に沿って入力ピストン14に作用する力と軸線12に沿って出力ピストン90に作用する力との関係は図17に示されている如き関係になる。
【0099】
従って図示の第一の実施例によれば、所望の伝達特性に応じてカム溝36及び96の形状を適宜に設定することにより、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、また出力ピストン90により変形される圧縮コイルばね92のばね特性は線形のばね特性であるが、ブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0100】
尚図示の第一の実施例に於いて、入力ピストン14が軸線12に沿って図1で見て左方へ直線運動すると、上述の如く出力ピストン90も軸線12に沿って図1で見て左方へ直線運動するが、出力ピストン90の直線運動量は入力ピストン14の直線運動量よりも大きい。従って第二のシリンダ室24の容積は増大するが、第三のシリンダ室106の容積は減少する。逆に入力ピストン14が軸線12に沿って図1で見て右方へ直線運動すると、第二のシリンダ室24の容積は減少し、第三のシリンダ室106の容積は増大する。
【0101】
上述の如く第二のシリンダ室24はカム溝36と連通しているので、第二のシリンダ室24の容積が増減する際には第二のシリンダ室24とカム溝36との間にオイルが流通する。また上述の如く第三のシリンダ室106はカム溝96と連通しているので、第三のシリンダ室106の容積が増減する際には第三のシリンダ室106とカム溝96との間にオイルが流通する。
【0102】
また上述の第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の両者の作用、即ち入力ピストン14の直線運動を中間ロータ86の回転運動に変換し、中間ロータ86の回転運動を出力ピストン90の直線運動に変換する作動、入力ピストン14の直線運動量に対する出力ピストン90の直線運動量の比を決定する作動、圧縮コイルばね92の反力を出力ピストン90及び中間ロータ86を介して入力ピストン14へ伝達する作動は、後述の第二乃至第五の実施例についても同様である。
【0103】
特に図示の第一の実施例によれば、ストロークシミュレータ10はマスタシリンダとホイールシリンダとが遮断されているような状況に於いても運転者によるブレーキペダル212の踏み込みストロークを許容すると共に、ブレーキペダル212の踏み込み量の増大につれて運転者が感じる制動操作反力を連続的な非線形の特性にて増大させ、これにより最適な制動操作フィーリングを達成することができる。
【0104】
また図示の第一の実施例によれば、第一の伝達手段54により入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動が中間ロータ86の軸線12の周りの回転運動に変換され、第二の伝達手段56により中間ロータ86の回転運動が出力ピストン90の軸線12に沿う直線運動に変換され、圧縮コイルばね92が軸線12に沿って圧縮変形されるので、軸線12を基準にして全ての構成部材を配設することができる。尚このことは後述の他の実施例についても同様である。
【0105】
また図示の第一の実施例によれば、入力ピストン14が初期位置にあるときには、出力ピストン90が圧縮コイルばね92によって図1で見て右方へ付勢されることにより、荷重伝達ロッド30、94等が右端の初期位置に位置決めされると共に、出力ピストン90が入力ピストン14に当接するので、非制動時に入力ピストン14及び出力ピストン90ががたつくことを効果的に防止することができる。
[第二の実施例]
【0106】
図3はブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第二の実施例を示す軸線に沿う断面図、図4は第二の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。尚図3及び図4に於いて図1及び図2に示された部材と同一の部材には図1及び図2に於いて付された符号と同一の符号が付されており、このことは後述の他の実施例についても同様である。
【0107】
この第二の実施例に於いては、荷重伝達ロッド30及び94はそれぞれ径方向に二分割され、それぞれ径方向内端部にて入力ピストン14及び出力ピストン90により片持支持されている。第二のシリンダ室24内には軸線12に沿って延在する引張りコイルばね108が配置されている。引張りコイルばね108は一端にて入力ピストン14に固定され、他端にて出力ピストン90に固定され、これにより入力ピストン14及び出力ピストン90に対しそれらを互いに引き寄せる荷重を付与するようになっている。
【0108】
入力ピストン14の軸線方向長さは上述の第一の実施例の場合よりも短く設定されており、これにより入力ピストン14及び出力ピストン90が初期位置にあるときにも、入力ピストン14の図3で見て左端は出力ピストン90より隔置されるようになっている。逆に出力ピストン90の軸線方向長さは上述の第一の実施例の場合よりも長く設定されており、これにより第三のシリンダ室106は出力ピストン90が初期位置にあるときにも減摩リング28Bによりカム溝96より遮断されるようになっている。
【0109】
出力ピストン90には軸線12に整合して延在するオリフィス110が設けられており、これにより第三のシリンダ室106はオリフィス110及び第二のシリンダ室24を介してカム溝36と常時連通している。エンドキャップ22Bとアンギュラベアリング44との間にはカップシール48が配置されており、これによりアンギュラベアリング44を経て第三のシリンダ室106とカム溝36との間にオイルが流通することがないようになっている。カム溝36及び96は上述の第一の実施例の場合よりも大きい距離軸線12に沿って互いに隔置されており、これにより図7で見てカム溝96の右端部及びカム溝36の左端部は軸線方向の位置が互いにオーバラップしていないが、カム溝36及び96は上述の第一の実施例の場合と同様に互いにオーバラップしていてもよい。この第二の実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されている。
【0110】
この第二の実施例に於いては、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は上述の第一の実施例の場合と同様に機能するので、入力ピストン14が軸線12に沿って図3で見て左方へ直線運動すると、出力ピストン90も軸線12に沿って図3で見て左方へ直線運動するが、出力ピストン90の直線運動量は入力ピストン14の直線運動量よりも大きい。よって入力ピストン14と出力ピストン90との間の間隔は漸次増大するが、出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間の間隔は漸次減少する。
【0111】
従って出力部材としての出力ピストン90は、入力ピストン14が軸線12に沿って図3で見て左方へ直線運動する際には圧縮コイルばね92を圧縮変形させると共に引張りコイルばね108を引張り変形させるので、出力ピストン90には圧縮コイルばね92の圧縮変形の反力及び引張りコイルばね108の引張り変形の反力が作用し、これらの反力は入力ピストン14の図3で見て左方への直線運動量が増大するにつれて増大率が漸次増大するよう非線形的に増大する。
【0112】
逆に入力ピストン14が軸線12に沿って図3で見て右方へ直線運動すると、入力ピストン14と出力ピストン90との間の間隔は減少し、出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間の間隔は増大する。従って出力ピストン90は、入力ピストン14が軸線12に沿って図3で見て右方へ直線運動する際には圧縮コイルばね92の圧縮変形量を低減すると共に引張りコイルばね108の引張り変形量を低減するので、出力ピストン90に作用する圧縮コイルばね92の圧縮変形の反力及び引張りコイルばね108の引張り変形は入力ピストン14の図3で見て右方への直線運動量が増大するにつれて減少率が漸次減少するよう非線形的に減少する。
【0113】
尚引張りコイルばね108の引張り変形に伴うばね力は入力ピストン14に対しては入力ピストン14を直線運動させる力の反力を低減するよう作用するが、出力ピストン90に対しては反力を増大させるよう作用し、これらのばね力は方向が逆で大きさが同一であるので、引張りコイルばね108のばね力により反力が増減されることはない。
【0114】
かくして図示の第二の実施例によれば、上述の第一の実施例の場合と同様、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、またブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0115】
特に図示の第二の実施例によれば、出力ピストン90には第二のシリンダ室24と第三のシリンダ室106とを連通接続するオリフィス110が設けられており、ブレーキペダル212の踏み込み速度が高いほどオイルがオリフィス110を通過する際の流通抵抗が高くなり、流通抵抗は反力を増大する作用をなすので、ブレーキペダル212の踏み込み速度が高く、入力ピストン14の直線運動の速度が高いほど操作反力を高くすることができる。
【0116】
また図示の第二の実施例によれば、入力ピストン14と出力ピストン90との間には引張りコイルばね108が弾装されているので、入力ピストン14、出力ピストン90等ががたつくことを効果的に低減することができ、また入力ピストン14及び出力ピストン90は初期位置に於いても互いに隔置されるので、入力ピストン14及び出力ピストン90がそれらの初期位置へ復帰する際にそれらが互いに衝当することを確実に防止することができる。
[第三の実施例]
【0117】
図5はブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第三の実施例を示す軸線に沿う断面図、図6は第三の実施例の中間部材としての中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【0118】
この第三の実施例に於いては、荷重伝達ロッド30及び94は上述の第二の実施例の場合と同様にそれぞれ径方向に二分割され、それぞれ径方向内端部にて入力ピストン14及び出力ピストン90により片持支持されている。入力ピストン14はエンドキャップ22Bへ向けて開いたカップ形の断面形状を有しているが、出力ピストン90は入力ピストン14へ向けて開いたカップ形の断面形状を有している。反力発生手段としての圧縮コイルばね92は第二のシリンダ室24内に配置され、入力ピストン14と出力ピストン90との間に弾装されている。尚荷重伝達ロッド30及び94はそれぞれ入力ピストン14及び出力ピストン90を貫通して直径方向に延在する一つの棒材であってもよい。
【0119】
また図6に示されている如く、カム溝96は軸線12及び周方向に対し上述の第一及び第二の実施例に於けるカム溝96とは逆方向に傾斜して延在するよう中間ロータ86に設けられている。従って非制動時には、第一の伝達手段54を構成するガイドローラ38及びカムローラ40は、それぞれガイド溝32及びカム溝36の図5で見て右端に当接する初期位置に位置し、第二の伝達手段56を構成するガイドローラ98及びカムローラ100は、それぞれガイド溝32及びカム溝96の図5で見て左端に当接する初期位置に位置する。またガイドローラ38及びカムローラ40が初期位置にあるときには、入力ピストン14はエンドキャップ22Aに最も接近し、ガイドローラ98及びカムローラ100が初期位置にあるときには、出力ピストン90はエンドキャップ22Bに当接し、これにより第一のシリンダ室18及び第三のシリンダ室106の容積は最小になり、第二のシリンダ室24の容積は最大になる。
【0120】
この第三の実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されており、従って第一の伝達手段54は上述の第一の実施例の場合と同様に機能し、第二の伝達手段56は中間ロータ86の回転運動の方向に対する出力ピストン90の直線運動の方向の関係が逆である点を除き上述の第一の実施例の場合と同様に機能する。
【0121】
従って入力ピストン14が軸線12に沿って図5で見て左方へ直線運動すると、出力ピストン90は軸線12に沿って図5で見て右方へ直線運動し、入力ピストン14及び出力ピストン90は互いに共働して圧縮コイルばね92を圧縮変形する。この場合入力ピストン14の図5で見て左方への直線運動量が増大するにつれて入力ピストン14と出力ピストン90との間の距離の減少率が増大するので、入力ピストン14に作用する圧縮コイルばね92の反力は入力ピストン14の図5で見て左方への直線運動量が増大するにつれて増大率が漸次増大するよう非線形的に増大する。
【0122】
逆に入力ピストン14が軸線12に沿って図5で見て右方へ直線運動すると、入力ピストン14と出力ピストン90との間の間隔が増大し、圧縮コイルばね92の圧縮変形量が低減するので、入力ピストン14に作用する圧縮コイルばね92の反力は入力ピストン14の図5で見て右方への直線運動量が増大するにつれて減少率が漸次減少するよう非線形的に減少する。
【0123】
かくして図示の第三の実施例によれば、上述の第一及び第二の実施例の場合と同様、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、またブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0124】
特に図示の第三の実施例によれば、圧縮コイルばね92の圧縮変形に伴う反力は中間ロータ86等を介して入力ピストン14に伝達されるだけでなく、直接入力ピストン14に作用するので、上述の第一、第二の実施例や後述の第四、第五の実施例の場合に比して荷重伝達ロッド30、94等に作用する荷重を低減し、これによりブレーキストロークシミュレータ10の耐久性を向上させることができる。
[第四の実施例]
【0125】
図7はブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第四の実施例を軸線に於いて直角に接する二つの切断面に沿って切断して示す断面図、図8は図7の線A−Aに沿う入力ピストン及び出力ピストンの横断面図、図9は第四の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【0126】
この第四の実施例に於いては、入力ピストン14は中間ロータ86に嵌合する実質的に円柱形の本体部より軸線12に沿って出力ピストン90へ向けて突出する一対のアーム部14Aを有し、一対のアーム部14Aは軸線12に対し径方向に互いに隔置されている。同様に出力ピストン90は中間ロータ86に嵌合する実質的に円柱形の本体部より軸線12に沿って入力ピストン14へ向けて突出する一対のアーム部90Aを有し、一対のアーム部90Aは軸線12に対し径方向に互いに隔置されている。各アーム部14A及び90Aの軸線12に垂直な断面は円弧状の外径線及び内径線を有し中心角が実質的に90°の扇形をなしている。特に図示の実施例に於いては、入力ピストン14及び出力ピストン90は互いに逆向きに配置された同一の部材である。
【0127】
各アーム部14Aは軸線12の周りの周方向に見てアーム部90Aの間に位置し、これにより入力ピストン14及び出力ピストン90は軸線12に沿って互いに他に対し相対的に直線運動可能であるが、軸線12の周りに互いに他に対し相対的に回転運動することがないよう、互いに係合している。上述の第一の実施例と同様、反力発生手段としての圧縮コイルばね92は出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間に弾装されており、入力ピストン14及び出力ピストン90が初期位置にあるときには、アーム部14A及び90Aの先端がそれぞれ出力ピストン90及び入力ピストン14の本体部に相互に押圧する状態にて当接するようになっている。
【0128】
上述の第二及び第三の実施例と同様、荷重伝達ロッド30及び94はそれぞれ径方向に二分割され、それぞれ径方向内端部にて入力ピストン14のアーム部14A及び出力ピストン90のアーム部90Aにより片持支持されている。特に図示の実施例に於いては荷重伝達ロッド30及び94は軸線12に沿う方向の位置として同一の軸線方向位置に位置しており、これによりこれらの荷重伝達ロッドは軸線12に垂直な平面に沿って軸線12の周りの周方向に交互に90°の角度にて互いに隔置されている。尚荷重伝達ロッド30及び94は互いに異なる軸線方向位置にあってもよい。
【0129】
図9に示されている如く、上述の第一の実施例と同様、カム溝36及び96は上述の第一及び第二の実施例に於けるカム溝36及び96と同一の形態をなしているが、周方向に交互に配列されている。特に図示の実施例に於いては、カム溝36及び96の図にて右端部は互いに同一の軸線方向位置に位置し、カム溝36の軸線12に沿う方向の延在範囲はカム溝96の軸線12に沿う方向の延在範囲とオーバラップしている。
【0130】
またガイドローラ38及び98はハウジング16の本体16Aに設けられたガイド溝32A及び32Bにそれぞれ係合しており、ガイド溝32A及び32Bは軸線12に沿って直線的に延在すると共に、軸線12の周りの周方向に交互に90°の角度にて互いに隔置されている。図7に示されている如く、ガイド溝32Bの長さはガイド溝32Aの長さよりも大きく設定されている。この第四の実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されている。
【0131】
この第四の実施例に於いては、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は上述の第一の実施例の場合と同様に機能するので、入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動が軸線12の周りの回転運動に変換されて中間ロータ86へ伝達され、中間ロータ86の回転運動が軸線12に沿う直線運動に変換されて出力ピストン90へ伝達される。また出力ピストン90が圧縮コイルばね92を圧縮変形させることにより発生する軸線12に沿う方向の反力は出力ピストン90より反力トルクに変換されて中間ロータ86へ伝達され、中間ロータ86の反力トルクは軸線12に沿う方向の反力に変換されて入力ピストン14へ伝達される。また入力ピストン14の直線運動量に対する出力ピストン90の直線運動量の比の特性も上述の他の実施例の場合と同様の非線形の特性になる。
【0132】
かくして図示の第四の実施例によれば、上述の第一乃至第三の実施例の場合と同様、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、またブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0133】
特に図示の第四の実施例によれば、入力ピストン14のアーム部14A及び出力ピストン90のアーム部90Aは軸線12に沿って互いに他に対し相対的に直線運動可能であるが、軸線12の周りに互いに他に対し相対的に回転運動することがないよう互いに係合しているので、アーム部14A及び90Aによっても軸線12に沿う入力ピストン14及び出力ピストン90の相対運動が案内されると共に軸線12の周りの入力ピストン14及び出力ピストン90の相対回転が阻止されるので、上述の第一及び第二の実施例の場合に比して入力ピストン14及び出力ピストン90の相対直線運動を円滑に行わせることができる。
【0134】
また図示の第四の実施例によれば、入力ピストン14及び出力ピストン90は互いに逆向きに配置された同一の部材であるので、入力ピストン14及び出力ピストン90が互いに異なる他の実施例の場合に比して部品点数を低減し、ストロークシミュレータ10のコストを低減することができる。
[第五の実施例]
【0135】
図10はブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第五の実施例を示す軸線に沿う断面図、図11は第五の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【0136】
この第五の実施例に於いては、入力ピストン14は中間ロータ86に嵌合する実質的に円柱形をなしているが、軸線12に整合して延在し出力ピストン90へ向けて開いた円筒形のリセス14Bを有している。これに対し出力ピストン90は中間ロータ86に嵌合する実質的に円柱形の本体部より軸線12に整合して入力ピストン14へ向けて突出する断面円形の軸部90Bを有し、軸部90Bは軸線12に沿って相対変位可能にリセス14Bに嵌入している。反力発生手段としての圧縮コイルばね92は出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間に弾装されており、入力ピストン14及び出力ピストン90が初期位置にあるときには、入力ピストン14及び出力ピストン90は相互に押圧する状態にて当接するようになっている。
【0137】
また上述の第二乃至第四の実施例と同様、荷重伝達ロッド30及び94はそれぞれ径方向に二分割されており、荷重伝達ロッド30は径方向内端部にて入力ピストン14のリセス14Bの周りの部分により片持支持され、荷重伝達ロッド94は出力ピストン90の軸部90Bにより片持支持されている。上述の第四の実施例と同様、荷重伝達ロッド30及び94は同一の軸線方向位置に位置しており、これによりこれらの荷重伝達ロッドは軸線12に垂直な平面に沿って軸線12の周りの周方向に交互に90°の角度にて互いに隔置されている。
【0138】
また入力ピストン14は軸線12の周りに荷重伝達ロッド30に対し90°の角度をなす位置に出力ピストン90へ向けて開いた一対のスリット14Cを有し、荷重伝達ロッド94は軸線12に沿って入力ピストン14に対し相対的に直線運動可能にスリット14Cに遊嵌状態にて挿通されている。この第五の実施例の他の点は上述の第四の実施例と同様に構成されている。尚この実施例に於いても荷重伝達ロッド30及び94は互いに異なる軸線方向位置にあってもよい。また荷重伝達ロッド94は出力ピストン90の軸部90B及び入力ピストン14の一対のスリット14Cを貫通して直径方向に延在する一つの棒材であってもよい。
【0139】
この第五の実施例に於いても、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は上述の第一の実施例の場合と同様に機能するので、入力ピストン14、中間ロータ86、出力ピストン90の間に於ける運動の変換伝達及び圧縮コイルばね92の反力の伝達は上述の第一の実施例の場合と同様に達成される。また入力ピストン14の直線運動量に対する出力ピストン90の直線運動量の比の特性も上述の他の実施例の場合と同様の非線形の特性になる。
【0140】
かくして図示の第五の実施例によれば、上述の第一乃至第四の実施例の場合と同様、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、またブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0141】
特に図示の第五の実施例によれば、出力ピストン90の軸部90Bが入力ピストン14のリセス14Bに嵌合し、軸部90B及びリセス14Bによっても軸線12に沿う入力ピストン14及び出力ピストン90の相対運動が案内されるので、上述の第一及び第二の実施例の場合に比して入力ピストン14及び出力ピストン90の相対直線運動を円滑に行わせることができる。
【0142】
尚図示の第四及び第五の実施例によれば、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は軸線12の周りに隔置された位置にて軸線12に沿う同一の軸線方向位置に設けられているので、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56が軸線12に沿って互いに隔置されている上述の第一乃至第三の実施例の場合に比して、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の運動変換に伴い中間ロータ86に作用するこじりを低減し、これによりストロークシミュレータ10の作動を円滑に行わせると共にその耐久性を向上させることができ、また軸線12に沿う方向のストロークシミュレータ10の長さを小さくし、車両に対する搭載性を向上させることができる。
【0143】
また以上の説明より解る如く、上述の第一乃至第五の実施例によれば、入力ピストン14、中間ロータ86、出力ピストン90は軸線12に整合して互いに嵌合し且つ軸線12に整合して相対運動するようになっているので、リンク機構等により運動や力の伝達特性が所望の特性になるよう構成される場合に比して、運動変換伝達装置としてのストロークシミュレータ10を確実にコンパクトにすることができる。
[第六の実施例]
【0144】
図18はブレーキ装置の踏力伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第六の実施例を示す断面図、図19は第六の実施例の踏力伝達装置を示す軸線に沿う拡大断面図である。
【0145】
これらの図に於いて、ブレーキ装置210はブレーキブースタ112を有し、踏力伝達装置114はブレーキブースタ112とブレーキペダル212との間に配設されている。ブレーキブースタ112、マスタシリンダ214、リザーバ230はダッシュパネル116に対しブレーキペダル212の側とは反対の側に配置されている。ダッシュパネル116にはステー118が固定されており、ステー118には図には示されていないボルトによりブラケット120の上端が取り付けられている。ブラケット120の下端は踏力伝達装置114のハウジング16に溶接等の手段により固定されている。ブラケット120はブレーキペダル212を枢支する枢軸212Aを支持している。
【0146】
踏力伝達装置114は上述の第一の実施例のストロークシミュレータ10と実質的に同一の構造を有しているが、ハウジング16は一端にて開口するコの字形の断面形状を有し、軸線12に沿って延在する円筒形をなしている。ハウジング16の開口端にはフランジ16Bが一体に形成されており、フランジ16Bはブレーキブースタ112に固定されたボルト122及びこれに螺合するナット124によりブレーキブースタ112と共にダッシュパネル116に取り付けられている。
【0147】
入力ピストン14の図にて右端にはソケット126が形成されており、ソケット126にはリンク128の一端に設けられたボール130が嵌め込まれており、これによりリンク128はその一端にて入力ピストン14に対し枢動自在に連結されている。リンク128はハウジング16の端壁を貫通して軸線12に沿って延在し、他端にて枢軸ピン132によりブレーキペダル212のアーム部212Bに枢着されている。入力ピストン14の両端近傍の外周には上述の第一の実施例に於ける減摩リング28と同様の減摩リング26及び28が装着されている。
【0148】
またこの実施例に於いては、上述の第一の実施例に於ける圧縮コイルばね92及びエンドキャップ22Bにそれぞれ相当する圧縮コイルばね及びエンドキャップは設けられておらず、出力ピストン90には軸線12に沿って延在するブレーキブースタ112のオペレーションロッド134の先端が圧入等の手段により一体的に連結されている。各シリンダ室にはオイルは充填されておらず、カバー104には連通孔41に相当する連通孔は設けられていない。この実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されている。
【0149】
図示の第六の実施例に於いて、運転者によりブレーキペダル212に踏力が与えられブレーキペダル212が踏み込まれると、入力ピストン14が軸線12に沿って図18で見て左方へ駆動され、上述の第一の実施例と同様の要領にて第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56による運動変換が行われることにより出力ピストン90が軸線12に沿って図18で見て左方へ駆動され、これによりブレーキブースタ112のオペレーションロッド134が制動力増大方向へ駆動される。
【0150】
またマスタシリンダ214より各ホイールシリンダ222FL〜222RRへ制動液圧が供給されることにより発生する反力はホイールシリンダより液圧としてマスタシリンダ214を経てブレーキブースタ112へ伝達され、オペレーションロッド134が図18で見て右方へ押圧されることにより、上述の第一の実施例と同様の要領にて入力ピストン14へ伝達される。そして反力は入力ピストン14よりリンク128を経てブレーキペダル212へ伝達される。
【0151】
この場合第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は上述の第一実施例の場合と同様に機能するので、図示の第六の実施例によれば、上述の第一乃至第五の実施例の場合と同様、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、またブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0152】
特に図示の第六の実施例によれば、踏力伝達装置114はブレーキブースタ112とブレーキペダル212との間に配設されているので、従来のペダル比可変式のブレーキペダルの場合と同様、運転者によるブレーキペダルの操作量とマスタシリンダやブレーキブースタに対する入力変位量との関係を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0153】
尚上述の第一乃至第六の実施例によれば、中間ロータ86はハウジング16内にてハウジング16により回転可能に支持され、入力ピストン14及び出力ピストン90は中間ロータ86により直線運動可能に支持されており、可動部材や反力発生部材はハウジング16外に露呈していないので、可動部材である出力ピストンや反力発生部材がハウジング16外に露呈している場合に比して、車両等に対する良好な搭載性を確保することができ、また可動部材とハウジングとの間に異物が侵入したりすることによる作動不良の虞れを低減することができる。
【0154】
尚上述の第一乃至第三の実施例及び第六の実施例によれば、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は軸線12の周りの同一の位置にて軸線12に沿って互いに隔置された位置し、これにより荷重伝達ロッド30及び94は軸線12の周りの同一の位置に位置しており、ガイド溝32は第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56に共通の溝であるので、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56のそれぞれにガイド溝が設けられる後述の第一及び第五の実施例の場合に比してガイド溝32の加工工程を少なくすることができる。
[第七の実施例]
【0155】
図20は自動車等の車両の操舵系に於ける操舵運動変換伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第七の実施例を示す軸線に沿う断面図、図21は第七の実施例の入力ロータの第一の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図、図22は第七の実施例の出力ロータの第二の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図、図23は第七の実施例が組み込まれた操舵系を示す説明図である。
【0156】
図23に示されている如く、操舵運動変換伝達装置136は図23には示されていない車体により軸線12に周りに回転可能に支持されたアッパメインシャフト268とロアメインシャフト270との間に配設されている。アッパメインシャフト268は上端にてステアリングホイール272に一体的に連結され、下端にて操舵運動変換伝達装置136の上端に連結されている。ロアメインシャフト270は上端にて操舵運動変換伝達装置136の下端に連結され、下端にてユニバーサルジョイント274によりインターミーディエットシャフト276の上端に枢着されている。
【0157】
インターミーディエットシャフト276の下端はユニバーサルジョイント278によりラックアンドピニオン式のステアリング装置280のピニオンシャフト282に枢着されている。ステアリング装置280のラックバー284の両端はボールジョイント286L及び286Rによりそれぞれタイロッド288L及び288Rの内端に枢着されている。タイロッド288L及び288Rの外端はそれぞれボールジョイント294L及び294Rにより左右の操舵輪290L及び290Rを回転可能に支持する車輪支持部材292L及び292Rのナックルアーム296L及び296Rに枢着されている。
【0158】
従って運転者によりステアリングホイール272に与えられる操舵トルク及び操舵の回転運動はアッパメインシャフト268より操舵運動変換伝達装置136を経てロアメインシャフト270へ伝達され、ロアメインシャフト270よりインターミーディエットシャフト276を経てピニオンシャフト282へ伝達される。ピニオンシャフト282のトルク及び回転運動はステアリング装置280によりラックバー284の車両横方向の力及び直線運動に変換され、ラックバー284の車両横方向の力及び直線運動はタイロッド288L、288R及びナックルアーム296L、296Rにより図には示されていないキングピン軸周りのトルク及び回転運動に変換されて車輪支持部材292L、292R及び操舵輪290L、290Rへ伝達され、これにより操舵輪290L、290Rが操舵される。
【0159】
逆に操舵反力は操舵輪290L、290Rより車輪支持部材292L、292R及びナックルアーム296L、296Rにより軸力としてタイロッド288L、288R及びラックバー284へ伝達される。ラックバー284の軸力はステアリング装置280によりピニオンシャフト282のトルクに変換され、ピニオンシャフト282のトルクはインターミーディエットシャフト276、ロアメインシャフト270、操舵運動変換伝達装置136、アッパメインシャフト268、ステアリングホイール272を経てステアリングホイール272へ伝達される。
【0160】
図20に示されている如く、この第七の実施例の操舵運動変換伝達装置136も軸線12に沿って互いに隔置された第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56を有している。第一の伝達手段54は軸線12の周りに回転可能な入力ロータ138と軸線12に沿って往復動可能な中間ピストン140とを有し、第二の伝達手段56は中間ピストン140と軸線12の周りに回転可能な出力ロータ142とを有している。
【0161】
入力ロータ138はハウジング16Aの内側にてアンギュラベアリング42A及び42Bによりハウジング16Aに対し相対的に軸線12の周りに回転可能に支持されている。同様に出力ロータ142はハウジング16Bの内側にてアンギュラベアリング44A及び44Bによりハウジング16Bに対し相対的に軸線12の周りに回転可能に支持されている。ハウジング16A及び16Bは互いに当接しており、それらの外側に配置された円筒形のカバー104により一体的に連結されている。またハウジング16A及び16Bはそれぞれ取り付けブラケット144A及び144Bにより車体の一部であるインストルメントパネル146に固定されている。
【0162】
入力ロータ138及び出力ロータ142は軸線12に沿って僅かに互いに隔置されている。入力ロータ138は出力ロータ142とは反対側の端部に於いてアッパメインシャフト268の下端に一体的に連結されており、出力ロータ142は入力ロータ138とは反対側の端部に於いてロアメインシャフト270の上端に一体的に連結されている。中間ピストン140は入力ロータ138及び出力ロータ142の内側に配置され、入力ロータ138及び出力ロータ142によりこれらに対し相対的に軸線12に沿って往復動可能に支持されている。
【0163】
第一の伝達手段54の荷重伝達ロッド30及び第二の伝達手段56の荷重伝達ロッド94は軸線12に沿って互いに隔置された状態にて中間ピストン140に固定されており、荷重伝達ロッド30の軸線30A及び荷重伝達ロッド94の軸線94Aは同一の平面内に位置している。第一の伝達手段54のガイドローラ38はハウジング16Aに設けられたガイド溝32Aの壁面に転動可能に係合し、第二の伝達手段56のガイドローラ98はハウジング16Bに設けられたガイド溝32Bの壁面に転動可能に係合している。中間ピストン140の両端近傍の外周には上述の第一の実施例に於ける減摩リング28、28A、28Bと同様の減摩リング28A、28Bが装着されている。
【0164】
また図21に示されている如く、第一の伝達手段54のカム溝36は上述の第一の実施例のカム溝36とは逆方向に湾曲した二つのカム溝が接続されたS字形をなしており、ステアリングホイール272が中立位置、即ち車両の直進位置にあるときには、荷重伝達ロッド30の軸線30Aはカム溝36の中央の中立位置に位置するようになっている。図22に示されている如く、第二の伝達手段56のカム溝96は上述の第一の実施例のカム溝36と同一方向に湾曲した二つのカム溝が接続されたS字形をなし、ステアリングホイール272が中立位置にあるときには、荷重伝達ロッド94の軸線94Aはカム溝96の中央の中立位置に位置するようになっている。図21と図22との比較より解る如く、中立位置近傍に於けるカム溝36の周方向に対する傾斜角はカム溝96の傾斜角よりも小さい値に設定されている。この第七の実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されている。
【0165】
この第七の実施例に於いて、ステアリングホイール272が車両の右旋回方向へ回転される方向を正の回転方向とすると、ステアリングホイール272が正の方向へ回転されることにより、アッパメインシャフト268が軸線12の周りに正の方向へ回転されると、入力ロータ138も軸線12の周りに正の方向へ回転する。入力ロータ138の正の方向への回転は第一の伝達手段54により図20で見て左方への軸線12に沿う直線運動に変換されて中間ピストン140へ伝達される。中間ピストン140の左方へ直線運動は第二の伝達手段56により軸線12の周りの正の方向の回転に変換されて出力ロータ142に伝達され、これによりロアメインシャフト270が軸線12の周りに正の方向へ回転する。
【0166】
ステアリングホイール272が車両の左旋回方向へ回転される場合にも、入力ロータ138及び出力ロータ142の回転方向が上記方向とは逆の負の方向であり、中間ピストン140の直線運動の方向が図20で見て右方である点を除き、同様の要領にてステアリングホイール272の回転運動が操舵運動変換伝達装置136を経てロアメインシャフト270へ伝達される。
【0167】
これらの場合に於いて、カム溝36及び96は上述の如くS字形をなしているので、ステアリング系の回転方向の遊びを無視すると、入力ロータ138の回転運動量と中間ピストン140の直線運動量との関係は図24に示されている如き関係になり、中間ピストン140の直線運動量と出力ロータ142の回転運動量との関係は図25に示されている如き関係になる。図24及び図25より解る如く、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の何れの運動伝達についても、正の回転方向及び負の回転方向を問わず、ステアリングホイール272の中立位置に対応する回転位置を基準位置として、運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比が運動伝達元の部材の運動量の増大につれて漸次増大する。
【0168】
従ってステアリングホイール272の中立位置よりの回転角度θinとロアメインシャフト270の回転角度θoutとの関係は図26に示されている如き関係になる。即ちステアリングホイール272が何れの方向へ回転される場合にも、ステアリングホイール272の回転運動量に対するロアメインシャフト270の回転運動量の比はステアリングホイール272の回転運動量の増大につれて連続的に非線形に増大する。尚ステアリングホイール272より操舵運動変換伝達装置136を経てロアメインシャフト270へ伝達されるトルクの伝達特性は図27に示されている如き特性になる。
【0169】
かくして図示の第七の実施例によれば、所望の伝達特性に応じてカム溝36及び96の形状を適宜に設定することにより、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ロータ138より出力ロータ142へ回転運動及び力を伝達することができ、これにより操舵の全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にてステアリングホイール272より操舵輪へ操舵運動及び操舵力を伝達させることができる。
【0170】
特に図示の第七の実施例によれば、ステアリングホイール272の回転運動量に対するロアメインシャフト270の回転運動量の比はステアリングホイール272の回転運動量の増大につれて連続的に非線形に増大するので、ステアリングホイール272の回転運動量に対する操舵輪の転舵量の比をステアリングホイール272の回転運動量の増大につれて連続的に非線形に増大させることができる。従って例えばステアリングホイール272の中立位置近傍に於けるステアリングギヤ比を1よりも小さい値に設定し、ステアリングホイール272の切れ角が大きい領域に於けるステアリングギヤ比を従来の一般的な操舵装置の場合よりも大きい値に設定することができ、これにより従来の一般的な操舵装置の場合に比して、車両の良好な直進走行の操縦安定性を確保しつつ据え切り時等に於ける操縦性を向上させることができる。
[第八の実施例]
【0171】
図28は自動車等の車両のサスペンションストローク伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第八の実施例を軸線に於いて直角に接する二つの切断面に沿って切断して示す断面図、図29は第八の実施例の中間ロータの第一の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図、図30は第八の実施例の中間ロータの第二の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図、図31は第八の実施例が組み込まれたサスペンションを示す説明図である。
【0172】
図31に於いて、符号306は車輪を示しており、車輪支持部材308により回転軸線308Aの周りに回転可能に支持されている。図31に示されたサスペンションはダブルウイッシュボーン式のサスペンションであり、車輪支持部材308の上端及び下端にはそれぞれボールジョイント310及び312によりアッパアーム314及びロアアーム316の外端が枢着されている。アッパアーム314及びロアアーム316の内端はそれぞれゴムブッシュ装置318及び320により車体322に枢着されている。ロアアーム316と車体322との間には第八の実施例によるサスペンションストローク伝達装置148が配設され、サスペンションストローク伝達装置148の上端及び下端はそれぞれアッパマウント326及びボールジョイント328により車体322及びロアアーム316に枢着されている。
【0173】
図28に示されている如く、サスペンションストローク伝達装置148も軸線12に沿って互いに隔置された第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56を有している。第一の伝達手段54は軸線12に沿って往復動可能な入力ピストン150と軸線12の周りに回転可能な中間ロータ152とを有し、第二の伝達手段56は中間ロータ152と軸線12に沿って往復動可能な出力ピストン154とを有している。
【0174】
中間ロータ152はハウジング16の内側にてアンギュラベアリング42A及び42Bによりハウジング16に対し相対的に軸線12の周りに回転可能に支持されている。出力ピストン154はハウジング16を囲繞するようこれに嵌合する円筒形をなし、ハウジング16に対し相対的に軸線12に沿って往復動可能に支持されている。ハウジング16の上端にはエンドキャップ156が圧入等の手段により固定されており、エンドキャップ156はそれに固定されたアッパマウント326を介して車体322に連結されている。
【0175】
入力ピストン150は中間ロータ152に嵌入し、中間ロータ152に対し相対的に軸線12に沿って往復動可能にハウジング16及び中間ロータ152により支持されている。図示の実施例に於いては、サスペンションストローク伝達装置148はショックアブソーバ内蔵型のサスペンションストローク伝達装置であり、入力ピストン150は下向きに開いた円筒形をなし、ショックアブソーバ158のシリンダとして機能するようになっている。
【0176】
入力ピストン150の下端には上向きに開いた有底円筒形をなすエンドキャップ160が圧入等の手段により固定されており、エンドキャップ160内にはフリーピストン162が軸線12に沿って往復動可能に配置されている。フリーピストン162はエンドキャップ160と共働してガス室164を郭定しており、ガス室164には高圧のガスが封入されている。エンドキャップ160の上端の内面にはCリング166が取り付けられており、Cリング166によりフリーピストン162がそれらより上方へ移動することが阻止されるようになっている。尚図28に示されていないが、エンドキャップ160の下端にはボールジョイント328が設けられている。
【0177】
入力ピストン150はショックアブソーバ158のピストン168を軸線12に沿って往復動可能に受け入れている。ピストン168は入力ピストン150と共働してシリンダ上室170及びシリンダ下室172を郭定しており、シリンダ上室170及びシリンダ下室172にはオイルの如き粘性液体が封入されている。図28に於いては、サスペンションストローク伝達装置148は自由状態、即ちアッパマウント326と入力ピストン150との間に車体重量が作用していない状態にて図示されており、ショックアブソーバ158のピストン168がシリンダとしての入力ピストン150に対し伸びきった状態にあり、そのためシリンダ上室170の容積は0である。
【0178】
ピストン168のピストン部168Aにはシリンダ上室170とシリンダ下室172とを連通接続する複数のオリフィス174が設けられている。ピストン168のロッド部168Bは入力ピストン150の端壁を貫通して軸線12に沿って上方へ延在し、上端にてアッパマウント326に連結されている。入力ピストン150とハウジング16との間にはOリングシール176が配設され、入力ピストン150とピストン168のロッド部168Bとの間にはOリングシール178が配設されている。
【0179】
出力ピストン154の上端には径方向外方へ突出し軸線12の周りに環状に延在するアッパスプリングシート180が一体に形成されており、入力ピストン150の下端には径方向外方へ突出し軸線12の周りに環状に延在するロアスプリングシート182が一体に形成されている。アッパスプリングシート180とロアスプリングシート182との間にはサスペンションストローク伝達装置148を囲繞し軸線12に沿って延在するサスペンションスプリングとしての圧縮コイルばね184が弾装されている。
【0180】
サスペンションストローク伝達装置148の外側にてサスペンションスプリングの内側にはダストブーツ186が配置されており、ダストブーツ186は上端にて出力ピストン154の下端に連結され、下端にてハウジング16の下端に連結されている。尚図28には示されていないが、ハウジング16の上端には出力ピストン154、従ってアッパスプリングシート180の図にて上方への移動を規制するストッパが設けられている。
【0181】
第一の伝達手段54は軸線12の周りに互いに180°隔置された位置に於いて入力ピストン150の上端に圧入等の手段により片持支持され且つ径方向外方へ延在する荷重伝達ロッド30を有している。荷重伝達ロッド30の先端部は中間ロータ152に設けられたカム溝36を貫通してハウジング16の円筒部に設けられたガイド溝32Aまで延在している。また荷重伝達ロッド30の先端部は実質的に球形のガイドローラ38及びカムローラ40を自らの軸線30Aの周りに回転可能に支持している。各ガイドローラ38は対応するガイド溝32Aの壁面に転動可能に係合し、各カムローラ40はカム溝36の壁面に転動可能に係合している。
【0182】
同様に第二の伝達手段56は軸線12の周りに荷重伝達ロッド30に対し180°隔置された位置に於いて出力ピストン154の下端部に圧入等の手段により片持支持され且つ径方向内方へ延在する荷重伝達ロッド94を有している。荷重伝達ロッド94の先端部はハウジング16の円筒部に設けられたガイド溝32Bを貫通して中間ロータ152に設けられたカム溝96まで延在している。また荷重伝達ロッド94の先端部は実質的に球形のガイドローラ98及びカムローラ100を自らの軸線94Aの周りに回転可能に支持している。各ガイドローラ98は対応するガイド溝32Bの壁面に転動可能に係合し、各カムローラ100はカム溝96の壁面に転動可能に係合している。
【0183】
図29及び図30に於いて、332及び334はそれぞれカム溝36及び96の軸線12の方向の基準線を示し、336及び338はそれぞれカム溝36及び96の周方向の基準線を示している。図29に示されている如く、カム溝36はS字形の形態をなしているが、図30に示されている如く、カム溝96はカム溝36とは傾斜方向が逆のS字形の形態をなしている。図28に於いては、サスペンションストローク伝達装置148はそれに圧縮力が作用していない状態にて示されているが、車両の積載荷重が標準の積載荷重であり車輪306がバウンドもリバウンドもしていない中立位置にあるときには、荷重伝達ロッド30及び94の軸線30A及び94Aはそれぞれカム溝36及び96の中央の標準位置、即ち基準線112及び114と基準線336及び338との交点P1及びP2に位置するようになっている。
【0184】
また図29及び図30に於いて、カム溝36の基準線336より上側の部分は車輪306のバウンドストロークに対応する部分であり、カム溝36の基準線3316より下側の部分は車輪306のリバウンドストロークに対応する部分である。これに対しカム溝96の基準線338より上側の部分は車輪306のリバウンドストロークに対応する部分であり、カム溝96の基準線338より下側の部分は車輪306のバウンドストロークに対応する部分である。
【0185】
図29に示されている如く、カム溝362は基準線332及び336に対し傾斜して延在すると共に、交点P1より離れるにつれて周方向の基準線336に対する傾斜角が漸次減少するよう湾曲している。特に交点P1よりの距離が車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域を除く領域に対応する範囲に於いては、車輪306のバウンド側のカム溝36が周方向の基準線336に対しなす傾斜角は車輪306のリバウンド側のカム溝36が周方向の基準線336に対しなす傾斜角よりも大きく設定されている。しかし交点P1よりの距離が車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域に対応する範囲に於いては、車輪306のバウンド側のカム溝36が周方向の基準線336に対しなす傾斜角は車輪306のリバウンド側のカム溝36が周方向の基準線336に対しなす傾斜角よりも小さく設定されている。
【0186】
図29と図30との比較より解る如く、カム溝96はカム溝36を周方向の基準線336に対し反転させると共に湾曲方向を逆にした形態と同一の形態をなしており、従ってカム溝36を交点P1の周りに90°反時計廻り方向へ回転させた形態と同様の形態をなしている。
【0187】
即ち図30に示されている如く、カム溝96は基準線334及び338に対しカム溝36とは逆方向に傾斜して延在すると共に、交点P2より離れるにつれて周方向の基準線336に対する傾斜角が漸次増大するよう湾曲している。特に交点P2よりの距離が車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域を除く領域に対応する範囲に於いては、車輪306のバウンド側のカム溝96が周方向の基準線338に対しなす傾斜角は車輪306のリバウンド側のカム溝96が周方向の基準線338に対しなす傾斜角よりも小さく設定されている。しかし交点P2よりの距離が車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域に対応する範囲に於いては、車輪306のバウンド側のカム溝106が周方向の基準線118に対しなす傾斜角は車輪4のリバウンド側のカム溝96が周方向の基準線338に対しなす傾斜角よりも大きく設定されている。
【0188】
カムローラ40は荷重伝達ロッド30の周りの回転運動を除けば、カム溝36内を基準線332及び336に対し傾斜し湾曲したS形の運動軌跡に沿ってのみ運動可能である。同様にカムローラ100は荷重伝達ロッド94の周りの回転運動を除けば、カム溝96内を基準線334及び338に対し傾斜し湾曲したS形の運動軌跡に沿ってのみ運動可能である。
【0189】
図示の第八の実施例に於いて、車輪306がバウンドし、入力ピストン150が軸線12に沿って中間ロータ152及びハウジング16に対し相対的に上方へ直線運動すると、入力ピストン150の直線運動は第一の伝達手段54により軸線12の周りの回転運動に変換されて中間ロータ152へ伝達される。カム溝36及び96は上述の如く互いに逆向きのS字形をなしているので、中間ロータ152の回転運動は第二の伝達手段56により入力ピストン150の直線運動の方向とは逆方向の直線運動に変換されて出力ピストン154へ伝達され、これによりアッパスプリングシート180はハウジング16に対し相対的に下方へ変位する。
【0190】
また車輪306がバウンドし、入力ピストン150が軸線12に沿って中間ロータ152及びハウジング16に対し相対的に下方へ直線運動すると、中間ロータ152の回転運動の方向及び出力ピストン154の直線運動の方向が車輪306のバウンドの場合とは逆である点を除き同一の要領にて第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56による運動変換及び伝達が行われ、これによりアッパスプリングシート180はハウジング16に対し相対的に上方へ変位する。
【0191】
従って車輪306のバウンド時の各部材の運動方向を正の方向とすると、入力ピストン150の直線運動量と中間ロータ152の回転運動量との関係は図32に示された関係になり、中間ロータ152の回転運動量と出力ピストン154の直線運動量との関係は図33に示された関係になるので、入力ピストン150の直線運動量と出力ピストン154の直線運動量との関係は図34に示された関係になり、車輪306がバウンドする場合及びリバウンドする場合の何れの場合にも、入力ピストン150の直線運動量の増大につれて出力ピストン154の直線運動量の増大率が漸次増大する。
【0192】
また車輪306がバウンドする場合には、入力ピストン150が上方へ移動することによりロアスプリングシート182も上方へ移動するが、アッパスプリングシート180はハウジング16に対し相対的に下方へ移動し、これによりアッパスプリングシート180が下方へ移動しない場合に比して圧縮コイルばね184の圧縮変形量が増大する。逆に車輪306がリバウンドする場合には、入力ピストン150が下方へ移動することによりロアスプリングシート182も下方へ移動するが、アッパスプリングシート180はハウジング16に対し相対的に上方へ移動し、これによりアッパスプリングシート180が上方へ移動しない場合に比して圧縮コイルばね184の圧縮変形量の減少量が増大する。
【0193】
従って車輪306のストロークと圧縮コイルばね184の圧縮変形量との関係は図35に示された関係になる。即ち車輪306がバウンドする場合には、車輪306の中立位置よりのバウンドストロークの増大につれて圧縮コイルばね184の圧縮変形量が漸次大きくなると共に、圧縮コイルばね184の圧縮変形量の増大率も漸次大きくなる。また車輪306がリバウンドする場合には、車輪306の中立位置よりのリバウンドストロークの増大につれて圧縮コイルばね184の圧縮変形量が漸次減少と共に、圧縮コイルばね184の圧縮変形量の減少率も漸次大きくなる。
【0194】
また図35の第一象限と第三象限との比較より解る如く、車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域を除く領域の範囲に於いては、車輪306のバウンドストロークの増大に伴う圧縮コイルばね184の圧縮変形量の増大率は車輪306のリバウンドストロークの増大に伴う圧縮コイルばね184の圧縮変形量の減少率の大きさよりも小さい。これに対し車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域の範囲に於いては、車輪306のバウンドストロークの増大に伴う圧縮コイルばね184の圧縮変形量の増大率は車輪306のリバウンドストロークの増大に伴う圧縮コイルばね184の圧縮変形量の減少率の大きさよりも大きい。
【0195】
かくして図示の第八の実施例によれば、所望の伝達特性に応じてカム溝36及び96の形状を適宜に設定することにより、車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの何れについてもそれらの全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン150より出力ピストン154へ直線運動及び力を伝達することができ、これによりサスペンションのリンク機構の運動の制約を受けることなく所望のプログレッシブなばね特性を達成することができる。
【0196】
図36は従来の一般的なダブルウイッシュボーン式のサスペンションを示しており、図31に示された部材に対応する部材には図31に於いて付された符号と同一の符号が付されている。図36に於いて、サスペンションスプリング340は車体322に取り付けられたアッパサポート326に固定されたアッパシート342とロアアーム316に取り付けられたロアサポート344に固定されたロアシート346との間に弾装されている。
【0197】
ロアアーム316は車輪306のバウンド、リバウンドに伴って内端の周りに上下方向へ枢動するので、ロアシート346もロアアーム316の内端を中心とする円弧状の軌跡に沿って上下方向へ運動する。そのため車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークが増大するにつれて車輪306のストロークの増大量に対するサスペンションスプリング340の弾性変形量の変化量の比が漸次減少し、車輪306のストロークとホイールレート(車輪306の位置に作用するサスペンションスプリング340のばね力のばね定数)との関係は、図37に於いて例えば破線にて示されている如き上向きに凸状の関係になる。
【0198】
図示の実施例によれば、車輪306のバウンドストロークの増大につれて圧縮コイルばね184の弾性変形量の増大率が漸次増大し、車輪306のリバウンドストロークの増大につれて圧縮コイルばね184の弾性変形量の減少率が漸次増大するので、車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの何れについても車輪306のストロークの増大につれてホイールレートを漸次大きくすることができ、これにより車輪4のストロークとホイールレートとの関係を図37に於いて実線にて示されている如き下向きに凸状の関係にすることができる。従って従来の一般的なサスペンションの場合に比して、通常の走行時に於ける良好な乗り心地性を確保しつつ、旋回時、加減速時、悪路走行時等に於ける車輪のバウンド、リバウンド量を低減して車体の姿勢変化を低減し車両の走行安定性を向上させることができる。
【0199】
また図示の第八の実施例によれば、サスペンションストローク伝達装置148はショックアブソーバ内蔵型のサスペンションストローク伝達装置であり、入力ピストン150はショックアブソーバ158のシリンダとして機能するようになっているので、サスペンションストローク伝達装置がショックアブソーバを内蔵していない構造の場合に比して、サスペンションストローク伝達装置及びショックアブソーバの車両への搭載性を向上させることができる。
【0200】
尚上述の第一乃至第八の実施例によれば、入力部材としての入力ピストン14及び入力ロータ138、中間部材としての中間ロータ86及び中間ピストン140、出力部材としての出力ピストン90及び出力ロータ142は軸線12に整合して互いに嵌合し且つ軸線12に整合して相対運動するようになっているので、入力部材及び出力部材が互いに異なる軸線に沿って直線運動する構造や入力部材若しくは出力部材が中間部材に嵌合していない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置を確実にコンパクト化することができる。
【0201】
また上述の第一乃至第八の実施例によれば、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56が設けられ、第一の伝達手段54は入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動量に対する中間ロータ86の回転運動量の比を入力ピストン14の直線運動量の増大につれて漸次増大させ、第二の伝達手段56は中間ロータ86の回転運動量に対する出力ピストン90の軸線12に沿う直線運動量の比を中間ロータ86の回転運動量の増大につれて漸次増大させるようになっているので、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の一方のみが運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量の増大につれて漸次増大させる構造の場合に比して、カム溝の湾曲度合を低減することができ、これにより第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56による運動変換及び反力の伝達を円滑に行わせることができる。
【0202】
また上述の第一乃至第八の実施例によれば、第一の伝達手段54の荷重伝達ロッド30を軸線12に沿って案内するガイド溝32又は32A、32Bが設けられると共に、第二の伝達手段56の荷重伝達ロッド90を軸線12に沿って案内するガイド溝32又は32Bが設けられているので、ガイド溝が設けられていない構造の場合に比して、軸線12の周りの入力ピストン14や出力ピストン90の回転を確実に防止することができ、これにより入力ピストン14と出力ピストン90との間の直線運動及び力の伝達特性を確実に且つ正確に所望の非線形の特性にすることができる。
【0203】
また上述の第一乃至第八の実施例によれば、複数の可動部材及び反力発生部材は軸線12に整合して配設され、軸線12に沿って又は軸線12の周りに運動するようになっているので、複数の可動部材や反力発生部材がそれぞれ互いに異なる個別の軸線に整合して配設された構造の場合に比して、ストロークシミュレータ10の構造を単純化することができると共に、運動や反力の伝達を最適に行わせることができる。
【0204】
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0205】
例えば上述の第一乃至第三の実施例に於いては、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は軸線12の周りの同一の位置にて軸線12に沿って互いに隔置された位置し、これによりガイド溝32は第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56に共通の溝であるが、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は軸線12の周りの互いに異なる位置に設けられてもよい。
【0206】
また上述の第一乃至第六の実施例に於いては、第一の伝達手段54が入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動量に対する中間ロータ86の回転運動量の比を入力ピストン14の直線運動量の増大につれて漸次増大させ、第二の伝達手段56が中間ロータ86の回転運動量に対する出力ピストン90の軸線12に沿う直線運動量の比を中間ロータ86の回転運動量の増大につれて漸次増大させるようになっているが、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の一方のみが運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量の増大につれて漸次増大させるよう修正されてもよい。
【0207】
また上述の第三の実施例に於いては、入力ピストン14及び出力ピストン90は軸線12に沿って常時互いに隔置された状態にあるが、入力ピストン14及び出力ピストン90は圧縮コイルばね92の径方向内側又は外側に上述の第四及び第五の実施例の如く軸線12に沿って相対直線運動可能に係合する部分を有していてもよい。
【0208】
また上述の第四の実施例に於いては、入力ピストン14及び出力ピストン90はそれぞれ扇形の断面形状を有する一対のアーム部14A及び90Aを有しているが、アーム部14A及び90Aの断面形状は例えば半円形の如き任意の形状に設定されてよい。同様に上述の第八の実施例に於いては、入力ピストン14及び出力ピストン90はそれぞれ円形の断面形状を有するリセス14B及び軸部90Bを有しているが、リセス14B及び軸部90Bの断面形状は任意の形状に設定されてよく、リセス14B及び軸部90Bは軸線12に沿って相対直線運動可能に且つ軸線12の周りに相対回転不能に互いに係合する平面部を備えていてもよい。
【0209】
また第二のシリンダ室24と第三のシリンダ室106とを連通接続するオリフィス110は上述の第二の実施例の出力ピストン90にしか設けられていないが、オリフィス110と同様のオリフィスが上述の第一、第三乃至第五の実施例の出力ピストン90に設けられてもよい。
【0210】
また上述の第一乃至第五の実施例に於いては、運動変換伝達装置はブレーキストロークシミュレータ10であり、出力ピストン90は圧縮コイルばね92に押圧作用を及ぼすようになっているが、第一乃至第五の実施例の構造の運動変換伝達装置は出力ピストン90が任意の他の部材に運動や力を伝達する任意の装置に適用されてよい。また上述の第六の実施例に於ける踏力伝達装置114は上述の第一の実施例と同様の構造を有しているが、踏力伝達装置は上述の第二、第四、第五の実施例と同様の構造を有していてもよい。
【0211】
また上述の第七の実施例に於いては、入力ロータ138の回転運動が同一方向の回転運動として出力ロータ142へ伝達されるようになっているが、回転運動を直線運動に変換し、直線運動を回転運動に変換して伝達する本発明による運動変換伝達装置は、例えばカム溝36及び96の湾曲方向を互いに逆方向に設定することにより、回転方向を逆転して回転運動を伝達するよう構成されてもよく、また操舵運動の伝達以外の用途に適用されてもよい。
【0212】
更に上述の第八の実施例のサスペンションストローク伝達装置はショックアブソーバ内蔵型のサスペンションストローク伝達装置であるが、ショックアブソーバがサスペンションストローク伝達装置とは独立のサスペンション部材であるようサスペンションストローク伝達装置が構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第一の実施例を示す軸線に沿う断面図である。
【図2】第一の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【図3】ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第二の実施例を示す軸線に沿う断面図である。
【図4】第二の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【図5】ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第三の実施例を示す軸線に沿う断面図である。
【図6】第三の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【図7】ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第四の実施例を軸線に於いて直角に接する二つの切断面に沿って切断して示す断面図である。
【図8】図7の線A−Aに沿う入力ピストン及び出力ピストンの横断面図である。
【図9】第四の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【図10】ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による操作シミュレータの第五の実施例を示す軸線に沿う断面図である。
【図11】第五の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【図12】ブレーキストロークシミュレータの実施例が適用されてよい一つの適用例として油圧式のブレーキ装置を示す概略構成図である。
【図13】入力ピストンの直線運動量と中間ロータの回転運動量との間の関係を示すグラフである。
【図14】中間ロータの回転運動量と出力ピストンの直線運動量との間の関係を示すグラフである。
【図15】入力ピストンの直線運動量と出力ピストンの直線運動量との間の関係を示すグラフである。
【図16】ブレーキペダルの踏み込み量とペダル反力との間の関係を示すグラフである。
【図17】入力ピストンに作用する力と出力ピストンに作用する力との間の関係を示すグラフである。
【図18】ブレーキ装置の踏力伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第六の実施例を示す断面図である。
【図19】第六の実施例の踏力伝達装置を示す軸線に沿う拡大断面図である。
【図20】自動車等の車両の操舵系に於ける操舵運動変換伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第七の実施例を示す軸線に沿う断面図である。
【図21】第七の実施例の入力ロータの第一の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図である。
【図22】第七の実施例の出力ロータの第二の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図である。
【図23】第七の実施例が組み込まれた操舵系を示す説明図である。
【図24】第七の実施例に於ける入力ロータの回転運動量と中間ピストンの直線運動量との関係を示すグラフである。
【図25】第七の実施例に於ける中間ピストンの直線運動量と出力ロータの回転運動量との関係を示すグラフである。
【図26】第七の実施例に於けるステアリングホイールの中立位置よりの回転角度θinとロアメインシャフト270の回転角度θoutとの関係を示すグラフである。
【図27】第七の実施例に於いてステアリングホイールより操舵運動変換伝達装置を経てロアメインシャフトへ伝達されるトルクの伝達特性を示すグラフである。
【図28】自動車等の車両のサスペンションストローク伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第八の実施例を軸線に於いて直角に接する二つの切断面に沿って切断して示す断面図である。
【図29】第八の実施例の中間ロータの第一の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図である。
【図30】第八の実施例の中間ロータの第二の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図である。
【図31】第八の実施例が組み込まれたサスペンションを示す説明図である。
【図32】第八の実施例に於ける入力ロータの直線運動量と中間ピストンの回転運動量との関係を示すグラフである。
【図33】第八の実施例に於ける中間ピストンの回転運動量と出力ロータの直線運動量との関係を示すグラフである。
【図34】第八の実施例に於ける入力ロータの直線運動量と出力ロータの直線運動量との関係を示すグラフである。
【図35】第八の実施例に於ける車輪のストロークと圧縮コイルばねの弾性変形量の変化量との関係を示すグラフである。
【図36】従来の一般的なダブルウイッシュボーン式のサスペンションを示す説明図である。
【図37】第八の実施例及び従来の一般的なサスペンションのホイールレートと車輪のバウンド、リバウンドの変位量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0214】
10…ブレーキストロークシミュレータ、14…入力ピストン、16…ハウジング、18…第一のシリンダ室、24…第二のシリンダ室、30…荷重伝達ロッド、32…ガイド溝、34…出力ロータ、36…カム溝、38…ガイドローラ、40…カムローラ、52…トーションばね、54…第一の伝達手段、56…第二の伝達手段、86…中間ロータ、90…出力ピストン、92…圧縮コイルばね、94…荷重伝達ロッド、96…カム溝、98…ガイドローラ、100…カムローラ、106…第三のシリンダ室、108…引張りコイルばね、110…オリフィス、112…ブレーキブースタ、114…踏力伝達装置、148…サスペンションストローク伝達装置、150…入力ピストン、152…中間ロータ、154…出力ピストン、158…ショックアブソーバ、184…圧縮コイルばね、212…ブレーキペダル、136…操舵運動変換伝達装置、268…アッパメインシャフト、270…ロアメインシャフト、272…ステアリングホイール、314…アッパアーム、316…ロアアーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動を変換し伝達する装置に係り、更に詳細には運動を変換すると共に所望の伝達比にて伝達する運動変換伝達装置に係る。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のブレーキ装置に於いては、運転者がブレーキペダルを踏み込むことにより制動操作が行われ、ブレーキペダルのストロークがマスタシリンダのピストンへそのストロークとして伝達される。そしてマスタシリンダによってブレーキペダルに与えられた踏力に対応する制動液圧に変換され、制動液圧に対応する制動力が発生される。
【0003】
一般に、自動車等の車両のブレーキ装置に於いては、ブレーキペダルのストローク及び踏力の伝達特性は非線形の特性であることが好ましい。ブレーキペダルのストローク及び踏力の伝達特性を所望の非線形の特性にするための構造として、従来より種々の構成のブレーキペダル装置が提案されており、例えば下記の特許文献1にはレバー比可変式のブレーキペダル装置が記載されている。
【特許文献1】特開平11−115699号公報
【発明の開示】
【0004】
上述の如きレバー比可変式のブレーキペダル装置に於いては、揺動リンクや連結リンクを含むリンク機構によりレバー比を変化させるようになっているため、リンクの運動を可能にするための比較的大きいスペースが必要である。またリンクの長さや相互関係によってレバー比の変化が一義的に決定されるため、レバー比の変化の態様が限定され、そのため運動や力の伝達の特性を広い範囲に亘り所望の特性に設定することが困難である。尚、上述の問題はレバー比可変式のブレーキペダル装置に限られるものではなく、一般的なカム機構等により運動や力の伝達特性を可変にする他の従来の運動伝達装置に於いても同様に存在する。
本発明は、従来の運動伝達装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、軸線に整合して互いに嵌合する部在間に於いて回転運動と直線運動との間の運動変換及び直線運動と回転運動との間の運動変換を行わせることにより、運動や力の伝達の特性を広い範囲に亘り所望の特性に設定することが可能でコンパクトな運動変換伝達装置を提供することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
【0005】
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち軸線に整合して互いに嵌合し且つ前記軸線に整合して相対運動する入力部材と中間部材と出力部材とを有し、前記軸線に沿う直線運動及び前記軸線の周りの回転運動の一方を第一の運動とし、前記二種類の運動の他方を第二の運動として、前記入力部材の前記第一の運動を前記第二の運動に変換して前記中間部材に伝達する第一の伝達手段と、前記中間部材の前記第二の運動を前記第一の運動に変換して前記出力部材に伝達する第二の伝達手段とを有し、前記第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方は運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を前記運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることを特徴とする運動変換伝達装置によって達成される。
【0006】
上記請求項1の構成によれば、第一の伝達手段が入力部材の第一の運動を第二の運動に変換して中間部材に伝達し、第二の伝達手段が中間部材の第二の運動を第一の運動に変換して出力部材に伝達し、第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方は運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるので、中間部材の第二の運動を介して入力部材の第一の運動を出力部材の第一の運動に変換すると共に、入力部材の運動量に対する出力部材の運動量の比を確実に入力部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることができ、これにより入力部材及び出力部材の運動の全域に亘り入力部材の運動量と出力部材の運動量との関係を所望の連続的な非線形特性にすることができる。
【0007】
また上記請求項1の構成によれば、入力部材、中間部材、出力部材は軸線に整合して互いに嵌合し且つ軸線に整合して相対運動するので、入力部材及び出力部材が互いに異なる軸線に沿って直線運動する構造や入力部材若しくは出力部材が中間部材に嵌合していない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置を確実にコンパクト化することができる。
【0008】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記第一の伝達手段は前記入力部材の前記軸線に沿う直線運動を前記軸線の周りの回転運動に変換して前記中間部材に伝達し、前記第二の伝達手段は前記中間部材の前記軸線の周りの回転運動を前記軸線に沿う直線運動に変換して前記出力部材に伝達するよう構成される(請求項2の構成)。
【0009】
上記請求項2の構成によれば、入力部材の軸線に沿う直線運動が第一の伝達手段により軸線の周りの回転運動に変換されて中間部材に伝達され、中間部材の軸線の周りの回転運動が第二の伝達手段により軸線に沿う直線運動に変換されて出力部材に伝達されるので、入力部材の直線運動量に対する出力部材の直線運動量の比を確実に入力部材の直線運動量に応じて連続的に非線形に変化させつつ入力部材の直線運動を出力部材に直線運動として伝達させることができる。
【0010】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記第一の伝達手段は前記入力部材の前記軸線の周りの回転運動を前記軸線に沿う直線運動に変換して前記中間部材に伝達し、前記第二の伝達手段は前記中間部材の前記軸線に沿う直線運動を前記軸線の周りの回転運動に変換して前記出力部材に伝達するよう構成される(請求項3の構成)。
【0011】
上記請求項3の構成によれば、入力部材の軸線の周りの回転運動が第一の伝達手段により軸線に沿う直線運動に変換されて中間部材に伝達され、中間部材の軸線に沿う直線運動が第二の伝達手段により軸線の周りの回転運動に変換されて出力部材に伝達されるので、入力部材の回転運動量に対する出力部材の回転運動量の比を確実に入力部材の回転運動量に応じて連続的に非線形に変化させつつ入力部材の回転運動を出力部材に回転運動として伝達させることができる。
【0012】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至3の何れかの構成に於いて、前記第一の伝達手段は前記入力部材の運動量に対する前記中間部材の運動量の比を前記入力部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成されており、前記第二の伝達手段は前記中間部材の運動量に対する前記出力部材の運動量の比を前記中間部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成される(請求項4の構成)。
【0013】
上記請求項4の構成によれば、第一の伝達手段により入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比が入力部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化され、第二の伝達手段により中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比が中間部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化されるので、第一の伝達手段及び第二の伝達手段の何れか一方のみにより運動量の比が連続的に非線形に変化される構造の場合に比して、第一の伝達手段及び第二の伝達手段の各々が達成すべき運動量の比の変化量を小さくすることができる。
【0014】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至4の何れかの構成に於いて、前記中間部材の運動量に対する前記出力部材の運動量の比は前記入力部材の運動量に対する前記中間部材の運動量の比よりも大きいよう構成される(請求項5の構成)。
【0015】
上記請求項5の構成によれば、中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比は入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比よりも大きいので、中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比が入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比よりも小さい構造の場合に比して、同一の連続的な非線形特性を達成する上で必要な中間部材の運動量を小さくすることができる。
【0016】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1乃至5の何れかの構成に於いて、前記第一及び第二の伝達手段は前記運動伝達元の部材に設けられたカムと、前記運動伝達先の部材に設けられ前記カムに係合するカムフォロアとを有し、前記カムフォロアが前記カムに従動することにより前記運動伝達元の部材の運動量に対する前記運動伝達先の部材の運動量の比を前記運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成される(請求項6の構成)。
【0017】
上記請求項6の構成によれば、運動伝達先の部材に設けられたカムフォロアが運動伝達先の部材に設けられたカムに従動することにより運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比が運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化されるので、運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を確実に運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることができると共に、カム及びカムフォロアの設定によって所望の連続的な非線形特性を達成することができる。
【0018】
また本発明によれば、上記請求項6の構成に於いて、前記カム及び前記カムフォロアの一方はカム溝であり、前記カム及び前記カムフォロアの他方は前記カム溝に係合し前記カム溝に沿って移動するカム溝係合部材であり、前記第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方の前記カム溝は前記軸線の周りに周方向に対し傾斜して延在し且つ周方向に対する傾斜角が連続的に漸次変化するよう湾曲しているよう構成される(請求項7の構成)。
【0019】
上記請求項7の構成によれば、第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方のカム溝は軸線の周りに周方向に対し傾斜して延在し且つ周方向に対する傾斜角が連続的に漸次変化するよう湾曲しているので、カム溝係合部材がカム溝に係合した状態にてカム溝に沿って移動することにより運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることができ、従ってカム溝の湾曲形状の設定によって所望の連続的な非線形特性を達成することができる。
【0020】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項7の構成に於いて、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記入力部材の運動量が0であるときに前記カム溝係合部材が前記カム溝に係合する位置に於いて周方向に対し同一の傾斜角を有するよう構成される(請求項8の構成)。
【0021】
上記請求項8の構成によれば、第一及び第二の伝達手段のカム溝は入力部材の運動量が0であるときにカム溝係合部材がカム溝に係合する位置に於いて周方向に対し同一の傾斜角を有するので、入力部材の運動量が0であるときにカム溝係合部材がカム溝に係合する位置に於いて第一及び第二の伝達手段のカム溝が周方向に対しなす傾斜角が互いに異なる構造の場合に比して、入力部材の直線運動の開始時及び終了時に於ける中間部材の回転運動を円滑に開始及び終了させることができ、これにより入力部材と中間部材との間及び中間部材と出力部材との間に於ける運動変換及び反力の伝達を円滑に行わせることができる。
【0022】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2又は4乃至8の何れかの構成に於いて、前記運動変換伝達装置は前記入力部材、前記中間部材、前記出力部材を収容するハウジングを有し、前記中間部材は前記軸線の周りに前記入力部材及び前記出力部材を囲繞する状態にてこれらに嵌合し且つ前記入力部材及び前記出力部材を前記軸線に沿って直線運動可能に支持しており、前記ハウジングは前記軸線の周りに前記中間部材を囲繞する状態にてこれに嵌合し且つ前記中間部材を回転可能に支持しており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記中間部材に設けられ、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記入力部材及び前記出力部材に設けられ、前記ハウジングは前記軸線に沿って延在するガイド溝を有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝を貫通して径方向に延在し且つ前記ガイド溝に沿って移動可能に前記ガイド溝に係合しているよう構成される(請求項9の構成)。
【0023】
上記請求項9の構成によれば、中間部材は軸線の周りに入力部材及び出力部材を囲繞する状態にてこれらに嵌合し且つ入力部材及び出力部材を軸線に沿って往復動可能に支持しているので、入力部材及び出力部材が互いに異なる軸線に沿って直線運動する構造や中間部材が入力部材若しくは出力部材に嵌合していない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置をコンパクト化することができる。またハウジングは軸線の周りに中間部材を囲繞する状態にてこれに嵌合し且つ中間部材を回転可能に支持しているので、直線運動又は回転運動する部材が露呈することを防止することができると共に、ハウジングを支持手段に固定することにより運動変換伝達装置を容易に且つ確実に支持手段に固定することができる。
【0024】
また上記請求項9の構成によれば、ハウジングは軸線に沿って延在するガイド溝を有し、第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材はそれぞれ第一及び第二の伝達手段のカム溝を貫通して径方向に延在しガイド溝に嵌入しているので、第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材をガイド溝により確実に軸線に沿って案内させることができ、これによりハウジングにガイド溝が設けられていない構造の場合に比して、入力部材の直線運動と中間部材の回転運動との間の運動変換及び中間部材の回転運動と出力部材の直線運動との間の運動変換を円滑に行わせることができる。また入力部材の直線運動と中間部材の回転運動との間の運動変換及び中間部材の回転運動と出力部材の直線運動との間の運動変換に伴い第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材が受ける応力の一部をハウジングにより担持させることができ、従ってハウジングにガイド溝が設けられていない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の耐久性を向上させることができる。
【0025】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2又は4乃至9の何れかの構成に於いて、前記第一及び第二の伝達手段は前記出力部材を前記軸線に沿って前記入力部材と同一の方向へ直線運動させるよう構成されているよう構成される(請求項10の構成)。
【0026】
上記請求項10の構成によれば、出力部材は軸線に沿って入力部材と同一の方向へ直線運動するので、上記請求項17の構成の場合に比して入力部材の直線運動量が0であるときの入力部材と出力部材との間の距離を小さくすることができ、これにより上記請求項17の構成の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線に沿う方向の長さを小さくすることができる。
【0027】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項10の構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材は前記入力部材の運動量が0であるときには互いに当接するよう構成される(請求項11の構成)。
【0028】
上記請求項11の構成によれば、入力部材及び出力部材は入力部材の運動量が0であるときには互いに当接するので、入力部材の運動量が0であるときにも入力部材及び出力部材が互いに隔置される構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線に沿う方向の長さを小さくすることができると共に、入力部材の運動量が0であるときに於ける入力部材及び出力部材のがたつきを確実に低減することができる。
【0029】
また本発明によれば、上記請求項9乃至11の何れかの構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線の周りの同一の位置にて前記軸線に沿って互いに隔置されており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれらに共通のガイド溝に係合しているよう構成される(請求項12の構成)。
【0030】
上記請求項12の構成によれば、第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材はそれらに共通のガイド溝に係合しているので、入力部材及び出力部材が軸線の周りの互いに異なる位置に設けられ、第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材がそれぞれ個別のガイド溝に係合する構造の場合に比して、ガイド溝の数を低減し、運動変換伝達装置の構造を簡略化することができる。
【0031】
また本発明によれば、上記請求項2又は4乃至12の何れかの構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線に沿って互いに係合する部分を有し、前記第一及び第二の伝達手段は前記互いに係合する部分に設けられ且つ前記軸線の周りの周方向に互いに隔置されているよう構成される(請求項13の構成)。
【0032】
上記請求項13の構成によれば、入力部材及び出力部材は軸線に沿って互いに係合する部分を有し、第一及び第二の伝達手段は互いに係合する部分に設けられ且つ軸線の周りの周方向に互いに隔置されているので、入力部材及び出力部材が軸線に沿って互いに係合する部分を有さず且つ第一及び第二の伝達手段が軸線に沿って互いに隔置されている構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置をコンパクト化することができる。
【0033】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項13の構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材はそれぞれ前記軸線に沿って他方の部材へ向けて延在する一対のアーム部を有し、前記入力部材の一対のアーム部及び前記出力部材の一対のアーム部は前記軸線の周りの周方向に見て交互に配設され、前記入力部材及び前記出力部材の前記軸線に沿う相対直線運動を許しつつ前記軸線の周りの相対回転運動を阻止するよう構成される(請求項14の構成)。
【0034】
上記請求項14の構成によれば、入力部材及び出力部材はそれぞれ軸線に沿って他方の部材へ向けて延在する一対のアーム部を有し、入力部材の一対のアーム部及び出力部材の一対のアーム部は軸線の周りの周方向に見て交互に配設され、入力部材及び出力部材の軸線に沿う相対直線運動を許容しつつ軸線の周りの相対回転運動を阻止するので、入力部材の直線運動が中間部材の回転運動に変換される際に入力部材が中間部材より受ける回転反力及び中間部材の回転運動が出力部材の直線運動に変換される際に中間部材が出力部材より受ける回転反力は互いに軸線の周りの逆方向になる。
【0035】
従って直線運動と回転運動との間の運動変換により生じる回転反力の少なくとも一部を入力部材及び出力部材により担持することができ、これにより第一及び第二の伝達手段が担持すべき回転反力を低減することができるので、入力部材の一対のアーム部及び出力部材の一対のアーム部が入力部材及び出力部材の軸線の周りの相対回転運動を阻止するよう構成されていない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の耐久性を向上させることができる。
【0036】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項14の構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材は同一の形状を有し、前記軸線に沿って互いに他に対し逆向きに配設されているよう構成される(請求項15の構成)。
【0037】
上記請求項15の構成によれば、入力部材及び出力部材は同一の形状を有し、軸線に沿って互いに他に対し逆向きに配設されているので、入力部材及び出力部材を共通の部材とすることができ、これにより入力部材及び出力部材が互いに異なる形状を有する別部材である構造の場合に比して、必要な部品点数を低減し、運動変換伝達装置のコストを低減することができる。
【0038】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項13の構成に於いて、前記入力部材及び前記出力部材の一方は前記軸線に沿って他方の部材へ向けて延在する軸部を有し、前記他方の部材は前記軸線に沿って延在し前記軸部を前記軸線に沿って相対直線運動可能に受けるリセスを有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材は前記軸部及び前記リセスの周囲の部分に設けられ且つ前記軸線の周りの周方向に互いに隔置されており、前記リセスの周囲の部分は前記軸部に設けられた前記カム溝係合部材が前記リセスの周囲の部分に対し相対的に前記軸線に沿って直線運動することを許すスリットを有するよう構成される(請求項16の構成)。
【0039】
上記請求項16の構成によれば、入力部材及び出力部材の一方に設けられた軸部が他方の部材に設けられたリセスに軸線に沿って相対直線運動可能に受けられているので、入力部材及び出力部材の一方に設けられた軸部が他方の部材に設けられたリセスに軸線に沿って相対直線運動可能に受けられていない構造の場合に比して、入力部材及び出力部材のがたつきを確実に低減することができる。
【0040】
また第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材は軸部及びリセスの周囲の部分に設けられ且つ軸線の周りの周方向に互いに隔置されており、リセスの周囲の部分は軸部に設けられたカム溝係合部材がリセスの周囲の部分に対し相対的に軸線に沿って直線運動することを許すスリットを有するので、入力部材及び出力部材が軸部及びリセスを有さず、第一及び第二の伝達手段が軸線に沿って互いに隔置されている構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置をコンパクト化することができる。
【0041】
またリセスの周囲の部分は軸部に設けられたカム溝係合部材がリセスの周囲の部分に対し相対的に軸線に沿って直線運動することを許すスリットを有するので、カム溝係合部材がリセスの周囲の部分に対し相対的に軸線に沿って直線運動することがリセスの周囲の部分によって阻害されることを確実に防止することができる。
【0042】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2又は4乃至9の何れかの構成に於いて、前記第一及び第二の伝達手段は前記出力部材を前記軸線に沿って前記入力部材とは逆の方向へ直線運動させるよう構成される(請求項17の構成)。
【0043】
上記請求項17の構成によれば、出力部材は軸線に沿って入力部材とは逆の方向へ直線運動するので、直線運動の方向を逆転して入力部材の直線運動を出力部材に伝達させることができる。
【0044】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項2又は4乃至17の何れかの構成に於いて、前記出力部材は他の部材と共働して前記軸線に沿う両側に液体にて充填された容積可変の二つのシリンダ室を郭定しており、前記出力部材は前記二つのシリンダ室を連通接続するオリフィスを有し、前記出力部材の直線運動に伴って前記液体が一方のシリンダ室より前記オリフィスを経て他方のシリンダ室へ流動するよう構成される(請求項18の構成)。
【0045】
上記請求項18の構成によれば、出力部材の直線運動に伴って液体が一方のシリンダ室よりオリフィスを経て他方のシリンダ室へ流動するので、液体がオリフィスを経て流動することによる減衰力が出力部材に対しその運動方向とは逆方向に作用し、従って入力部材の直線運動の速度が高いほど出力部材に作用する減衰力が高くなることにより、入力部材の直線運動の速度が高いほど反力が高くなるよう入力部材の直線運動の速度に応じた反力を発生させることができる。
【0046】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項7乃至18の何れかの構成に於いて、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝の前記軸線に沿う方向の延在範囲は前記軸線の周りの周方向に見て少なくとも部分的に互いにオーバラップしているよう構成される(請求項19の構成)。
【0047】
上記請求項19の構成によれば、第一及び第二の伝達手段のカム溝の軸線に沿う方向の延在範囲は軸線の周りの周方向に見て少なくとも部分的に互いにオーバラップしているので、第一及び第二の伝達手段のカム溝の軸線に沿う方向の延在範囲が軸線の周りの周方向に見て互いにオーバラップしていない構造の場合に比して、第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材の軸線に沿う方向の間隔を小さくすることができ、これにより操作シミュレータの軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置をコンパクト化することができる。
【0048】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項3の構成に於いて、前記運動変換伝達装置は前記入力部材、前記中間部材、前記出力部材を収容するハウジングを有し、前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線の周りに前記中間部材を囲繞する状態にてこれらに嵌合し且つ前記中間部材を前記軸線に沿って直線運動可能に支持しており、前記ハウジングは前記軸線の周りに前記入力部材及び前記出力部材を囲繞する状態にてこれに嵌合し且つ前記入力部材及び前記出力部材を前記軸線の周りに回転可能に支持しており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記入力部材及び前記出力部材に設けられ、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材は前記中間部材に設けられ、前記ハウジングは前記軸線に沿って延在するガイド溝を有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝を貫通して径方向に延在し且つ前記ガイド溝に沿って移動可能に前記ガイド溝に係合しているよう構成される(請求項20の構成)。
【0049】
上記請求項20の構成によれば、上記請求項9の構成の場合と同様、ハウジングにガイド溝が設けられていない構造の場合に比して、入力部材の回転運動と中間部材の直線運動との間の運動変換及び中間部材の直線運動と出力部材の回転運動との間の運動変換を円滑に行わせることができる。また入力部材の回転運動と中間部材の直線運動との間の運動変換及び中間部材の直線運動と出力部材の回転運動との間の運動変換に伴い第一及び第二の伝達手段のカム溝係合部材が受ける応力の一部をハウジングにより担持させることができ、従ってハウジングにガイド溝が設けられていない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の耐久性を向上させることができる。
【0050】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項7乃至202の何れかの構成に於いて、前記カム溝係合部材は対応する部材に固定され径方向に延在する軸部材と、前記軸部材に回転可能に支持され前記カム溝の壁面に転動可能に係合するカムローラとを有するよう構成される(請求項21の構成)。
【0051】
上記請求項21の構成によれば、カム溝係合部材は対応する部材に固定され径方向に延在する軸部材と、軸部材に回転可能に支持されカム溝の壁面に転動可能に係合するカムローラとを有するので、カム溝係合部材がカム溝の壁面に転動可能に係合していない構造の場合に比して、カム溝係合部材とカム溝の壁面との間の摩擦を低減し、運動伝達元の運動と運動伝達先の運動との間の運動変換を円滑に行わせることができる。
【0052】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項21の構成に於いて、前記カム溝係合部材は前記軸部材に回転可能に支持され前記入力部材の直線運動の方向に沿って延在するガイド溝の壁面に転動可能に係合するガイドローラを有するよう構成される(請求項22の構成)。
【0053】
上記請求項22の構成によれば、カム溝係合部材は軸部材に回転可能に支持され入力部材の直線運動の方向に沿って延在するガイド溝の壁面に転動可能に係合するガイドローラを有するので、ガイド溝の壁面に転動可能に係合するガイドローラを有しない構造の場合に比して、軸部材を確実に入力部材の直線運動の方向に沿って移動させることができ、これにより運動伝達元の運動と運動伝達先の運動との間の運動変換を円滑に行わせることができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
【0054】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至22の何れかの構成に於いて、第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方は運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比が運動伝達元の部材の運動量の増大につれて漸次増大するよう、運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成される(好ましい態様1)。
【0055】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至22の何れかに於いて、第一の伝達手段は入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比が入力部材の運動量の増大につれて漸次増大するよう、入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比を入力部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成され、第二の伝達手段は中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比が中間部材の運動量の増大につれて漸次増大するよう、中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比を中間部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成される(好ましい態様2)。
【0056】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至22の何れか又は上記好ましい態様1又は2の構成に於いて、軸線の周りに等間隔に隔置された複数のカム溝及びカム溝係合部材が設けられているよう構成される(好ましい態様3)。
【0057】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1乃至22又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、入力部材の運動量の増大に伴う中間部材の運動量に対する出力部材の運動量の比の増大率は入力部材の運動量に対する中間部材の運動量の比の増大率よりも大きいよう構成される(好ましい態様4)。
【0058】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3乃至8又は請求項20乃至22又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、第一及び第二の伝達手段は出力部材を軸線の周りに入力部材と同一の方向へ回転運動させるよう構成される(好ましい態様5)。
【0059】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項3乃至8又は請求項20乃至22又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、第一及び第二の伝達手段は出力部材を軸線の周りに入力部材とは逆の方向へ回転運動させるよう構成される(好ましい態様6)。
【0060】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2又は請求項4乃至19又は請求項21又は22又は上記好ましい態様1乃至4の何れかの構成に於いて、運動変換伝達装置はオペレータによる操作手段の運動を他の部材へ伝達するよう構成される(好ましい態様7)。
【0061】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2又は請求項4乃至19又は請求項21又は22又は上記好ましい態様1乃至4の何れかの構成に於いて、運動変換伝達装置は車両の運転者により操作されるブレーキ操作手段とブレーキ操作手段に与えられる操作力を液圧に変換する手段との間に配設されるよう構成される(好ましい態様8)。
【0062】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項17又は上記好ましい態様1乃至3の何れかの構成に於いて、運動変換伝達装置は車輪と共に上下動する部材と車体との間に配設され、入力部材及び出力部材はサスペンションスプリングを支持するスプリングシートに連結されるよう構成される(好ましい態様9)。
【0063】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、運動変換伝達装置は車両の操舵装置のステアリングホイールと回転運動を操舵輪の転舵運動に変換する運動変換機構との間に配設されるよう構成される(好ましい態様10)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施例について詳細に説明する。
【0065】
まず実施例の説明に先立ち、ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の後述の第一乃至第五の実施例が適用されてよい自動車等の車両のブレーキ装置の一つの適用例について図12を参照して説明する。
【0066】
図12はブレーキストロークシミュレータの実施例が適用されてよい一つの適用例として油圧式のブレーキ装置210を示しており、ブレーキ装置210は運転者によるブレーキペダル212の踏み込み操作に応答してブレーキオイルを圧送するマスタシリンダ214を有している。ブレーキペダル212は枢軸212Aにより枢支され、オペレーションロッド216によりマスタシリンダ214のピストンに連結されている。
【0067】
マスタシリンダ214は第一のマスタシリンダ室214Aと第二のマスタシリンダ室214Bとを有し、これらのマスタシリンダ室にはそれぞれ左前輪用のブレーキ油圧供給導管218及び右前輪用のブレーキ油圧制御導管220の一端が接続されている。ブレーキ油圧制御導管218及び220の他端にはそれぞれ左前輪及び右前輪の制動力を制御するホイールシリンダ222FL及び222FRが接続されている。
【0068】
ブレーキ油圧供給導管218及び220の途中にはそれぞれ連通制御弁として機能する常開型の電磁開閉弁(所謂マスタカット弁)224L及び224Rが設けられ、電磁開閉弁224L及び224Rはそれぞれ第一のマスタシリンダ室214A及び第二のマスタシリンダ室214Bと対応するホイールシリンダ222FL及び222FRとの連通を制御する遮断弁として機能する。また第一のマスタシリンダ214Aには途中に常閉型の電磁開閉弁(常閉弁)226を有する導管228Aにより本発明に従って構成されたブレーキストロークシミュレータ10が接続されている。
【0069】
マスタシリンダ214にはリザーバ230が接続されており、リザーバ230には油圧供給導管232の一端が接続されている。油圧供給導管232の途中には電動機234により駆動されるオイルポンプ236が設けられており、オイルポンプ236の吐出側の油圧供給導管232には高圧の油圧を蓄圧するアキュムレータ238が接続されている。リザーバ230とオイルポンプ236との間の油圧供給導管232には油圧排出導管240の一端が接続されている。リザーバ230、オイルポンプ236、アキュムレータ238等は後述の如くホイールシリンダ222FL、222FR、222RL、222RR内の圧力を増圧するための高圧の圧力源として機能する。
【0070】
尚図12には示されていないが、オイルポンプ236の吸入側の油圧供給導管232と吐出側の油圧供給導管232とを連通接続する導管が設けられ、該導管の途中にはアキュムレータ238内の圧力が基準値を越えた場合に開弁し吐出側の油圧供給導管232より吸入側の油圧供給導管232へオイルを戻すリリーフ弁が設けられている。
【0071】
オイルポンプ236の吐出側の油圧供給導管232は、油圧制御導管242により電磁開閉弁224Lとホイールシリンダ222FLとの間のブレーキ油圧供給導管218に接続され、油圧制御導管244により電磁開閉弁224Rとホイールシリンダ222FRとの間のブレーキ油圧供給導管220に接続され、油圧制御導管246により左後輪用のホイールシリンダ222RLに接続され、油圧制御導管248により右後輪用のホイールシリンダ222RRに接続されている。
【0072】
油圧制御導管242、244、246、248の途中にはそれぞれ常閉型の電磁式のリニア弁250FL、250FR、250RL、250RRが設けられている。リニア弁250FL、250FR、250RL、250RRに対しホイールシリンダ222FL、222FR、222RL、222RRの側の油圧制御導管242、244、246、248はそれぞれ油圧制御導管252、254、256、258により油圧排出導管240に接続されており、油圧制御導管252、254の途中にはそれぞれ常閉型の電磁式のリニア弁260FL、260FRが設けられ、また油圧制御導管256、258の途中にはそれぞれ常閉型の電磁式のリニア弁よりも低廉な常開型の電磁式のリニア弁260RL、260RRが設けられている。
【0073】
リニア弁250FL、250FR、250RL、250RRはそれぞれホイールシリンダ222FL、222FR、222RL、222RRに対する増圧弁(保持弁)として機能し、リニア弁260FL、260FR、260RL、260RRはそれぞれホイールシリンダ222FL、222FR、222RL、222RRに対する減圧弁として機能し、従ってこれらのリニア弁は互いに共働してアキュムレータ238内より各ホイールシリンダに対する高圧のオイルの給排を制御する増減圧制御弁を構成している。
【0074】
尚各電磁開閉弁、各リニア弁及び電動機234に駆動電流が供給されない非制御時には電磁開閉弁224L及び224Rは開弁状態に維持され、電磁開閉弁226、リニア弁250FL〜250RR、リニア弁260FL及び260FRは閉弁状態に維持され、リニア弁260RL及び260RRは開弁状態に維持され(非制御モード)、これにより左右前輪のホイールシリンダ内の圧力は直接マスタシリンダ214により制御される。
【0075】
図12に示されている如く、第一のマスタシリンダ室214Aと電磁開閉弁224Lとの間のブレーキ油圧制御導管218には該制御導管内の圧力を第一のマスタシリンダ圧力Pm1として検出する第一の圧力センサ266が設けられている。同様に第二のマスタシリンダ室214Bと電磁開閉弁224Rとの間のブレーキ油圧制御導管220には該制御導管内の圧力を第二のマスタシリンダ圧力Pm2として検出する第二の圧力センサ268が設けられている。ブレーキペダル212には運転者によるブレーキペダルの踏み込みストロークStを検出するストロークセンサ270が設けられ、オイルポンプ234の吐出側の油圧供給導管232には該導管内の圧力をアキュムレータ圧力Paとして検出する圧力センサ272が設けられている。
【0076】
それぞれ電磁開閉弁224L及び224Rとホイールシリンダ222FL及び222FRとの間のブレーキ油圧供給導管218及び220には、対応する導管内の圧力をホイールシリンダ222FL及び222FR内の圧力Pfl、Pfrとして検出する圧力センサ274FL及び274FRが設けられている。またそれぞれ電磁開閉弁250RL及び250RRとホイールシリンダ222RL及び222RRとの間の油圧制御導管246及び248には、対応する導管内の圧力をホイールシリンダ222RL及び222RR内の圧力Prl、Prrとして検出する圧力センサ274RL及び274RRが設けられている。
【0077】
電磁開閉弁224L及び224R、電磁開閉弁226、電動機234、リニア弁250FL〜250RR、リニア弁260FL〜260RRは図12には示されていない電子制御装置により制御される。
【0078】
電子制御装置には、圧力センサ266及び268よりそれぞれ第一のマスタシリンダ圧力Pm1及び第二のマスタシリンダ圧力Pm2を示す信号、ストロークセンサ270よりブレーキペダル212の踏み込みストロークStを示す信号、圧力センサ272よりアキュムレータ圧力Paを示す信号、圧力センサ274FL〜274RRよりそれぞれホイールシリンダ222FL〜222RR内の圧力Pi(i=fl、fr、rl、rr)を示す信号が入力される。
【0079】
電子制御装置は、ブレーキペダル212が踏み込まれると電磁開閉弁226を開弁すると共に、電磁開閉弁224L及び224Rを閉弁し、その状態にて圧力センサ266、268により検出されたマスタシリンダ圧力Pm1、Pm2及びストロークセンサ270より検出された踏み込みストロークStに基づき車輌の目標減速度Gtを演算し、車輌の目標減速度Gtに基づき各車輪の目標ホイールシリンダ圧力Pti(i=fl、fr、rl、rr)をマスタシリンダ圧力Pm1、Pm2よりも高い値に演算し、各車輪の制動圧Piが目標ホイールシリンダ圧力Ptiになるよう各リニア弁250FL〜250RR及び260FL〜260RRを制御する。
【0080】
以上の説明より解る如く、電子制御装置は運転者の制動操作量に基づき各車輪の目標ホイールシリンダ圧力をマスタシリンダ圧力Pm1、Pm2よりも高い値に演算し、電磁開閉弁224L及び224R、電磁開閉弁226、電動機234、リニア弁250FL〜250RR、リニア弁260FL〜260RR、圧力センサ266等の各センサと共働して高圧の圧力源の圧力を使用して電磁開閉弁224L及び224Rを閉弁させた状態で各車輪のホイールシリンダ圧力が対応する目標ホイールシリンダ圧力になるようリニア弁250FL〜250RR及びリニア弁260FL〜260RRを制御する。
【0081】
この場合ブレーキストロークシミュレータ10は、電磁開閉弁224L及び224Rが閉弁されることによりマスタシリンダ214とホイールシリンダ222FL、222FRとの連通が遮断された状況に於いて、運転者によるブレーキペダル212の踏み込みストロークを許容すると共に、所望の連続的な非線形特性にてブレーキペダル212を介して運転者に反力を付与する。
[第一の実施例]
【0082】
図1はブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第一の実施例を示す軸線に沿う断面図、図2は第一の実施例の出力ロータを平面に展開して示す展開図である。
【0083】
これらの図に於いて、10はブレーキストロークシミュレータを全体的に示しており、ストロークシミュレータ10は軸線12に沿って延在し軸線12に沿って直線運動可能な入力部材としての入力ピストン14と、軸線12に沿って延在し軸線12の周りに回転運動可能な中間部材としての中間ロータ86と、軸線12に沿って延在し軸線12に沿って直線運動可能な出力部材としての出力ピストン90とを有している。入力ピストン14、中間ロータ86、出力ピストン90はハウジング16内に配置されており、ハウジング16は円筒状の本体16Aとその両端に圧入等の手段により固定されたエンドキャップ22A及び22Bにて形成されている。
【0084】
中間ロータ86はハウジング16の内側にてこれに嵌合し、その軸線に沿う両端部にてハウジング16との間に設けられたアンギュラベアリング42及び44によりハウジング16に対し相対的に軸線12の周りに回転可能に支持されている。アンギュラベアリング42及び44は中間ロータ86がハウジング16に対し相対的に軸線12の周りに回転することを許すが、中間ロータ86がハウジング16に対し相対的に軸線12に沿って移動することを阻止する。アンギュラベアリング42及び44に対し軸線方向外側には軸線12の周りに環状に延在するカップシール46及び48が装着されている。カップシール46及び48はゴムの如き弾性材よりなり、中間ロータ86がハウジング16に対し相対的に軸線12の周りに回転することを許しつつアンギュラベアリング42及び44に粉塵や泥水等の異物が侵入することを阻止するようになっている。
【0085】
入力ピストン14及び出力ピストン90は中間ロータ86の内側にてこれに嵌合し、中間ロータ86によりこれに対し相対的に軸線12に沿って往復動可能に支持されている。また入力ピストン14はハウジング16のエンドキャップ22A及び出力ピストン90と共働して容積可変の第一のシリンダ室18を郭定している。エンドキャップ22Aには連通孔20が設けられており、第一のシリンダ室18は連通孔20及び導管228Aを介して第一のマスタシリンダ室214Aに連通接続され、これによりオイルにて充填されている。入力ピストン14は第一のシリンダ室18内の液圧が上昇すると、該液圧に応じて図1で見て左方へ軸線12に沿って移動する。
【0086】
また入力ピストン14は中間ロータ86及び出力ピストン90と共働して容積可変の第二のシリンダ室24を郭定している。入力ピストン14の一端の外周にはカップシール88が装着されており、カップシール88は入力ピストン14と中間ロータ86の内壁面との間をシールし、これにより第一のシリンダ室18と第二のシリンダ室24との連通を遮断している。入力ピストン14の他端の外周にはテフロン(登録商標)リングの如き減摩リング28が装着されており、減摩リング28は入力ピストン14が中間ロータ86に対し相対的に直線運動する際の摩擦抵抗を低減する。尚図1及び図2には示されていないが、ストロークシミュレータ10はハウジング16若しくはエンドキャップ22A又は22Bが車体に取り付けられることにより車体に固定されている。
【0087】
出力ピストン90はハウジング16のエンドキャップ22B及び中間ロータ86と共働して容積可変の第三のシリンダ室106を郭定している。出力ピストン90の両端部の外周面には減摩リング28と同様の減摩リング28A及び28Bが装着されている。図示の実施例に於いては、入力ピストン14及び出力ピストン90はエンドキャップ22Bへ向けて開いたカップ形の断面形状を有し、出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間の第三のシリンダ室106には反力発生手段としての圧縮コイルばね92が配置されている。
【0088】
荷重伝達ロッド30が入力ピストン14を貫通して軸線12に垂直に延在し、圧入等の手段により入力ピストン14に固定されている。荷重伝達ロッド30の両端部はハウジング16の本体16Aに設けられたガイド溝32を貫通して中間ロータ86に設けられたカム溝36内まで延在している。また荷重伝達ロッド30の両端部は実質的に球形のガイドローラ38及びカムローラ40を自らの軸線30Aの周りに回転可能に支持している。各ガイドローラ38は対応するガイド溝32の壁面に転動可能に係合し、各カムローラ40はカム溝36の壁面に転動可能に係合している。ガイド溝32及びカム溝36の幅はそれぞれガイドローラ38及びカムローラ40の最大直径よりも極僅かに大きい値に設定されている。
【0089】
同様に、荷重伝達ロッド94が出力ピストン90を貫通して軸線12に垂直に延在し、圧入等の手段により出力ピストン90に固定されている。荷重伝達ロッド94の軸線94Aは荷重伝達ロッド30の軸線30Aと平行に延在しているが、軸線94Aは軸線12に垂直である限り、軸線12に沿って見て軸線30Aに対し傾斜していてもよい。荷重伝達ロッド94の両端部は中間ロータ86に設けられたカム溝96を貫通してハウジング16の本体16Aに設けられたガイド溝32内まで延在している。また荷重伝達ロッド94の両端部はガイドローラ98及びカムローラ100を自らの軸線102の周りに回転可能に支持している。各ガイドローラ98はガイド溝32の壁面に転動可能に係合し、各カムローラ100は中間ロータ86に設けられたカム溝96の壁面に転動可能に係合している。ガイド溝32及びカム溝96の幅はそれぞれガイドローラ98及びカムローラ100の最大直径よりも極僅かに大きい値に設定されている。
【0090】
ガイド溝32はガイドローラ36及び98の最大直径よりも極僅かに大きい値に設定されており、カム溝34及び96の幅はそれぞれカムローラ38及び100の最大直径よりも極僅かに大きい値に設定されている。カム溝34及び96はそれぞれ第二のシリンダ室24及び第三のシリンダ室106と常時連通しており、またハウジング16の本体16Aと中間ロータ86との間の間隙を介してガイド溝32と常時連通している。ガイド溝32はガイドローラ38及び98に共通のガイド溝として機能するよう軸線12に沿って延在している。ハウジング16の本体16Aの外周には円筒状のカバー104が圧入等の手段により固定されている。カバー104は本体16Aに密に嵌合し、ガイド溝32を外界より遮断している。ガイド溝32はカバー104に設けられた連通孔41及び導管228Bを介してリザーバ230と常時連通している。
【0091】
二つのガイド溝32は軸線12の周りに互いに180°隔置されると共に軸線12に平行に直線的に延在しており、従ってガイドローラ38は荷重伝達ロッド30の周りの回転運動を除けば、ガイド溝32内を軸線12に沿って直線的にのみ運動可能である。二つのカム溝36も軸線12の周りに互いに180°隔置されているが、図2に示されている如く、カム溝36は軸線12及び周方向に対し傾斜した状態にて湾曲して延在している。従ってカムローラ40は荷重伝達ロッド30の周りの回転運動を除けば、カム溝36内を軸線12及び周方向に対し傾斜し湾曲した運動軌跡に沿ってのみ運動可能である。
【0092】
カム溝96も軸線12及び周方向に対し傾斜して延在しているが、図2で見て右端より左端へ向かうにつれて周方向に対する傾斜角が漸次大きくなるようカム溝36とは逆の方向へ湾曲して延在している。カム溝96の図2で見て右端部はカム溝36の図2で見て左端部と軸線方向の位置が互いにオーバラップしている。またカム溝96の軸線12に沿う方向の延在長さはカム溝36の軸線12に沿う方向の延在長さよりも大きい値に設定されている。更にカム溝36及び96の図2で見た右端部の軸線12に対する傾斜角θ1及びθ2は同一の角度をなしている。
【0093】
図1に示されている如く、非制動時には、カムローラ40及び100はそれぞれカム溝36及び96の図7で見て右端に当接する初期位置に位置するようになっている。そしてカムローラ40及び100が初期位置にあるときには、入力ピストン14は第一のシリンダ室18の容積が最小になる初期位置に位置し、出力ピストン90は入力ピストン14に当接する初期位置に位置し、これにより圧縮コイルばね92の圧縮変形量が最小になるようになっている。また非制動時には、圧縮コイルばね92のばね力により荷重伝達ロッド30及び94が図6で見て右方へ付勢されることにより、入力ピストン14及び出力ピストン90が初期位置に位置決めされ、入力ピストン14及び出力ピストン90は初期位置にあるときには互いに当接するようになっている。
【0094】
尚入力ピストン14が初期位置にあるときの入力ピストン14の図1で見て左端は、カム溝36の図6で見て左端よりも第一のシリンダ室18の側に位置する。また上述の如くカム溝96の図7で見て右端部はカム溝36の図2で見て左端部と軸線方向の位置が互いにオーバラップしている。従って入力ピストン14と出力ピストン90との間の第二のシリンダ室24は入力ピストン14と出力ピストン90との間の間隙を経てカム溝36及び96と連通し、オイルにて充填されている。また出力ピストン90が初期位置にあるときの出力ピストン90の図1で見て左端は、カム溝96の図1で見て左端よりも第一のシリンダ室18の側に位置する。従って出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間の第三のシリンダ室106はカム溝96と連通し、オイルにて充填されている。
【0095】
かくして図示の第一の実施例に於いては、荷重伝達ロッド30、ガイド溝32、カム溝36、ガイドローラ38、カムローラ40等は、互いに共働して入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動を軸線12の周りの回転運動に変換して中間ロータ86に伝達すると共に、後述の如く中間ロータ86に伝達される反力トルクを軸線12に沿う方向の反力として入力ピストン14に伝達する第一の伝達手段54として機能する。また第一の伝達手段54は、入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動量に対する中間ロータ86の回転運動量の比を入力ピストン14の直線運動量の増大につれて漸次増大させる。
【0096】
また荷重伝達ロッド94、ガイド溝32、カム溝96、ガイドローラ98、カムローラ100等は、互いに共働して中間ロータ86の回転運動を軸線12に沿う直線運動に変換して出力ピストン90に伝達し、出力ピストン90を介して圧縮コイルばね92を圧縮変形させると共に、圧縮コイルばね92の反力を軸線12の周りの反力トルクとして中間ロータ86に伝達する第二の伝達手段56として機能する。また第二の伝達手段56は、中間ロータ86の回転運動量に対する出力ピストン90の軸線12に沿う直線運動量の比を中間ロータ86の回転運動量の増大につれて漸次増大させ、これにより入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動量に対する出力ピストン90の軸線12に沿う直線運動量の比を入力ピストン14の直線運動量の増大につれて漸次増大させる。
【0097】
上述の如く構成された第一の実施例に於いて、マスタシリンダ214内の液圧が上昇し、入力ピストン14が軸線12に沿って図1で見て左方へ直線運動すると、第一の伝達手段54により入力ピストン14の直線運動が軸線12の周りの回転運動に変換されて中間ロータ86に伝達され、第二の伝達手段56により中間ロータ86の回転運動が軸線12に沿う直線運動に変換されて出力ピストン90に伝達される。よって入力ピストン14の直線運動量に対する出力ピストン90の直線運動量の比は第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の両者の作用によって決定されるので、入力ピストン14の直線運動量に対する圧縮コイルばね92の圧縮変形量の比も第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の両者の作用によって決定される。
【0098】
ここで入力ピストン14の直線運動量と中間ロータ86の回転運動量との関係が図13に示されている如き関係であり、中間ロータ86の回転運動量と出力ピストン90の直線運動量との関係が図14に示されている如き関係であるとすると、入力ピストン14の直線運動量と出力ピストン90の直線運動量との関係は図15に示されている如き関係になり、よってブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性は図16に示されている如き特性になる。尚力の伝達率は運動(変位)の伝達率の逆数になるので、軸線12に沿って入力ピストン14に作用する力と軸線12に沿って出力ピストン90に作用する力との関係は図17に示されている如き関係になる。
【0099】
従って図示の第一の実施例によれば、所望の伝達特性に応じてカム溝36及び96の形状を適宜に設定することにより、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、また出力ピストン90により変形される圧縮コイルばね92のばね特性は線形のばね特性であるが、ブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0100】
尚図示の第一の実施例に於いて、入力ピストン14が軸線12に沿って図1で見て左方へ直線運動すると、上述の如く出力ピストン90も軸線12に沿って図1で見て左方へ直線運動するが、出力ピストン90の直線運動量は入力ピストン14の直線運動量よりも大きい。従って第二のシリンダ室24の容積は増大するが、第三のシリンダ室106の容積は減少する。逆に入力ピストン14が軸線12に沿って図1で見て右方へ直線運動すると、第二のシリンダ室24の容積は減少し、第三のシリンダ室106の容積は増大する。
【0101】
上述の如く第二のシリンダ室24はカム溝36と連通しているので、第二のシリンダ室24の容積が増減する際には第二のシリンダ室24とカム溝36との間にオイルが流通する。また上述の如く第三のシリンダ室106はカム溝96と連通しているので、第三のシリンダ室106の容積が増減する際には第三のシリンダ室106とカム溝96との間にオイルが流通する。
【0102】
また上述の第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の両者の作用、即ち入力ピストン14の直線運動を中間ロータ86の回転運動に変換し、中間ロータ86の回転運動を出力ピストン90の直線運動に変換する作動、入力ピストン14の直線運動量に対する出力ピストン90の直線運動量の比を決定する作動、圧縮コイルばね92の反力を出力ピストン90及び中間ロータ86を介して入力ピストン14へ伝達する作動は、後述の第二乃至第五の実施例についても同様である。
【0103】
特に図示の第一の実施例によれば、ストロークシミュレータ10はマスタシリンダとホイールシリンダとが遮断されているような状況に於いても運転者によるブレーキペダル212の踏み込みストロークを許容すると共に、ブレーキペダル212の踏み込み量の増大につれて運転者が感じる制動操作反力を連続的な非線形の特性にて増大させ、これにより最適な制動操作フィーリングを達成することができる。
【0104】
また図示の第一の実施例によれば、第一の伝達手段54により入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動が中間ロータ86の軸線12の周りの回転運動に変換され、第二の伝達手段56により中間ロータ86の回転運動が出力ピストン90の軸線12に沿う直線運動に変換され、圧縮コイルばね92が軸線12に沿って圧縮変形されるので、軸線12を基準にして全ての構成部材を配設することができる。尚このことは後述の他の実施例についても同様である。
【0105】
また図示の第一の実施例によれば、入力ピストン14が初期位置にあるときには、出力ピストン90が圧縮コイルばね92によって図1で見て右方へ付勢されることにより、荷重伝達ロッド30、94等が右端の初期位置に位置決めされると共に、出力ピストン90が入力ピストン14に当接するので、非制動時に入力ピストン14及び出力ピストン90ががたつくことを効果的に防止することができる。
[第二の実施例]
【0106】
図3はブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第二の実施例を示す軸線に沿う断面図、図4は第二の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。尚図3及び図4に於いて図1及び図2に示された部材と同一の部材には図1及び図2に於いて付された符号と同一の符号が付されており、このことは後述の他の実施例についても同様である。
【0107】
この第二の実施例に於いては、荷重伝達ロッド30及び94はそれぞれ径方向に二分割され、それぞれ径方向内端部にて入力ピストン14及び出力ピストン90により片持支持されている。第二のシリンダ室24内には軸線12に沿って延在する引張りコイルばね108が配置されている。引張りコイルばね108は一端にて入力ピストン14に固定され、他端にて出力ピストン90に固定され、これにより入力ピストン14及び出力ピストン90に対しそれらを互いに引き寄せる荷重を付与するようになっている。
【0108】
入力ピストン14の軸線方向長さは上述の第一の実施例の場合よりも短く設定されており、これにより入力ピストン14及び出力ピストン90が初期位置にあるときにも、入力ピストン14の図3で見て左端は出力ピストン90より隔置されるようになっている。逆に出力ピストン90の軸線方向長さは上述の第一の実施例の場合よりも長く設定されており、これにより第三のシリンダ室106は出力ピストン90が初期位置にあるときにも減摩リング28Bによりカム溝96より遮断されるようになっている。
【0109】
出力ピストン90には軸線12に整合して延在するオリフィス110が設けられており、これにより第三のシリンダ室106はオリフィス110及び第二のシリンダ室24を介してカム溝36と常時連通している。エンドキャップ22Bとアンギュラベアリング44との間にはカップシール48が配置されており、これによりアンギュラベアリング44を経て第三のシリンダ室106とカム溝36との間にオイルが流通することがないようになっている。カム溝36及び96は上述の第一の実施例の場合よりも大きい距離軸線12に沿って互いに隔置されており、これにより図7で見てカム溝96の右端部及びカム溝36の左端部は軸線方向の位置が互いにオーバラップしていないが、カム溝36及び96は上述の第一の実施例の場合と同様に互いにオーバラップしていてもよい。この第二の実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されている。
【0110】
この第二の実施例に於いては、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は上述の第一の実施例の場合と同様に機能するので、入力ピストン14が軸線12に沿って図3で見て左方へ直線運動すると、出力ピストン90も軸線12に沿って図3で見て左方へ直線運動するが、出力ピストン90の直線運動量は入力ピストン14の直線運動量よりも大きい。よって入力ピストン14と出力ピストン90との間の間隔は漸次増大するが、出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間の間隔は漸次減少する。
【0111】
従って出力部材としての出力ピストン90は、入力ピストン14が軸線12に沿って図3で見て左方へ直線運動する際には圧縮コイルばね92を圧縮変形させると共に引張りコイルばね108を引張り変形させるので、出力ピストン90には圧縮コイルばね92の圧縮変形の反力及び引張りコイルばね108の引張り変形の反力が作用し、これらの反力は入力ピストン14の図3で見て左方への直線運動量が増大するにつれて増大率が漸次増大するよう非線形的に増大する。
【0112】
逆に入力ピストン14が軸線12に沿って図3で見て右方へ直線運動すると、入力ピストン14と出力ピストン90との間の間隔は減少し、出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間の間隔は増大する。従って出力ピストン90は、入力ピストン14が軸線12に沿って図3で見て右方へ直線運動する際には圧縮コイルばね92の圧縮変形量を低減すると共に引張りコイルばね108の引張り変形量を低減するので、出力ピストン90に作用する圧縮コイルばね92の圧縮変形の反力及び引張りコイルばね108の引張り変形は入力ピストン14の図3で見て右方への直線運動量が増大するにつれて減少率が漸次減少するよう非線形的に減少する。
【0113】
尚引張りコイルばね108の引張り変形に伴うばね力は入力ピストン14に対しては入力ピストン14を直線運動させる力の反力を低減するよう作用するが、出力ピストン90に対しては反力を増大させるよう作用し、これらのばね力は方向が逆で大きさが同一であるので、引張りコイルばね108のばね力により反力が増減されることはない。
【0114】
かくして図示の第二の実施例によれば、上述の第一の実施例の場合と同様、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、またブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0115】
特に図示の第二の実施例によれば、出力ピストン90には第二のシリンダ室24と第三のシリンダ室106とを連通接続するオリフィス110が設けられており、ブレーキペダル212の踏み込み速度が高いほどオイルがオリフィス110を通過する際の流通抵抗が高くなり、流通抵抗は反力を増大する作用をなすので、ブレーキペダル212の踏み込み速度が高く、入力ピストン14の直線運動の速度が高いほど操作反力を高くすることができる。
【0116】
また図示の第二の実施例によれば、入力ピストン14と出力ピストン90との間には引張りコイルばね108が弾装されているので、入力ピストン14、出力ピストン90等ががたつくことを効果的に低減することができ、また入力ピストン14及び出力ピストン90は初期位置に於いても互いに隔置されるので、入力ピストン14及び出力ピストン90がそれらの初期位置へ復帰する際にそれらが互いに衝当することを確実に防止することができる。
[第三の実施例]
【0117】
図5はブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第三の実施例を示す軸線に沿う断面図、図6は第三の実施例の中間部材としての中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【0118】
この第三の実施例に於いては、荷重伝達ロッド30及び94は上述の第二の実施例の場合と同様にそれぞれ径方向に二分割され、それぞれ径方向内端部にて入力ピストン14及び出力ピストン90により片持支持されている。入力ピストン14はエンドキャップ22Bへ向けて開いたカップ形の断面形状を有しているが、出力ピストン90は入力ピストン14へ向けて開いたカップ形の断面形状を有している。反力発生手段としての圧縮コイルばね92は第二のシリンダ室24内に配置され、入力ピストン14と出力ピストン90との間に弾装されている。尚荷重伝達ロッド30及び94はそれぞれ入力ピストン14及び出力ピストン90を貫通して直径方向に延在する一つの棒材であってもよい。
【0119】
また図6に示されている如く、カム溝96は軸線12及び周方向に対し上述の第一及び第二の実施例に於けるカム溝96とは逆方向に傾斜して延在するよう中間ロータ86に設けられている。従って非制動時には、第一の伝達手段54を構成するガイドローラ38及びカムローラ40は、それぞれガイド溝32及びカム溝36の図5で見て右端に当接する初期位置に位置し、第二の伝達手段56を構成するガイドローラ98及びカムローラ100は、それぞれガイド溝32及びカム溝96の図5で見て左端に当接する初期位置に位置する。またガイドローラ38及びカムローラ40が初期位置にあるときには、入力ピストン14はエンドキャップ22Aに最も接近し、ガイドローラ98及びカムローラ100が初期位置にあるときには、出力ピストン90はエンドキャップ22Bに当接し、これにより第一のシリンダ室18及び第三のシリンダ室106の容積は最小になり、第二のシリンダ室24の容積は最大になる。
【0120】
この第三の実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されており、従って第一の伝達手段54は上述の第一の実施例の場合と同様に機能し、第二の伝達手段56は中間ロータ86の回転運動の方向に対する出力ピストン90の直線運動の方向の関係が逆である点を除き上述の第一の実施例の場合と同様に機能する。
【0121】
従って入力ピストン14が軸線12に沿って図5で見て左方へ直線運動すると、出力ピストン90は軸線12に沿って図5で見て右方へ直線運動し、入力ピストン14及び出力ピストン90は互いに共働して圧縮コイルばね92を圧縮変形する。この場合入力ピストン14の図5で見て左方への直線運動量が増大するにつれて入力ピストン14と出力ピストン90との間の距離の減少率が増大するので、入力ピストン14に作用する圧縮コイルばね92の反力は入力ピストン14の図5で見て左方への直線運動量が増大するにつれて増大率が漸次増大するよう非線形的に増大する。
【0122】
逆に入力ピストン14が軸線12に沿って図5で見て右方へ直線運動すると、入力ピストン14と出力ピストン90との間の間隔が増大し、圧縮コイルばね92の圧縮変形量が低減するので、入力ピストン14に作用する圧縮コイルばね92の反力は入力ピストン14の図5で見て右方への直線運動量が増大するにつれて減少率が漸次減少するよう非線形的に減少する。
【0123】
かくして図示の第三の実施例によれば、上述の第一及び第二の実施例の場合と同様、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、またブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0124】
特に図示の第三の実施例によれば、圧縮コイルばね92の圧縮変形に伴う反力は中間ロータ86等を介して入力ピストン14に伝達されるだけでなく、直接入力ピストン14に作用するので、上述の第一、第二の実施例や後述の第四、第五の実施例の場合に比して荷重伝達ロッド30、94等に作用する荷重を低減し、これによりブレーキストロークシミュレータ10の耐久性を向上させることができる。
[第四の実施例]
【0125】
図7はブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第四の実施例を軸線に於いて直角に接する二つの切断面に沿って切断して示す断面図、図8は図7の線A−Aに沿う入力ピストン及び出力ピストンの横断面図、図9は第四の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【0126】
この第四の実施例に於いては、入力ピストン14は中間ロータ86に嵌合する実質的に円柱形の本体部より軸線12に沿って出力ピストン90へ向けて突出する一対のアーム部14Aを有し、一対のアーム部14Aは軸線12に対し径方向に互いに隔置されている。同様に出力ピストン90は中間ロータ86に嵌合する実質的に円柱形の本体部より軸線12に沿って入力ピストン14へ向けて突出する一対のアーム部90Aを有し、一対のアーム部90Aは軸線12に対し径方向に互いに隔置されている。各アーム部14A及び90Aの軸線12に垂直な断面は円弧状の外径線及び内径線を有し中心角が実質的に90°の扇形をなしている。特に図示の実施例に於いては、入力ピストン14及び出力ピストン90は互いに逆向きに配置された同一の部材である。
【0127】
各アーム部14Aは軸線12の周りの周方向に見てアーム部90Aの間に位置し、これにより入力ピストン14及び出力ピストン90は軸線12に沿って互いに他に対し相対的に直線運動可能であるが、軸線12の周りに互いに他に対し相対的に回転運動することがないよう、互いに係合している。上述の第一の実施例と同様、反力発生手段としての圧縮コイルばね92は出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間に弾装されており、入力ピストン14及び出力ピストン90が初期位置にあるときには、アーム部14A及び90Aの先端がそれぞれ出力ピストン90及び入力ピストン14の本体部に相互に押圧する状態にて当接するようになっている。
【0128】
上述の第二及び第三の実施例と同様、荷重伝達ロッド30及び94はそれぞれ径方向に二分割され、それぞれ径方向内端部にて入力ピストン14のアーム部14A及び出力ピストン90のアーム部90Aにより片持支持されている。特に図示の実施例に於いては荷重伝達ロッド30及び94は軸線12に沿う方向の位置として同一の軸線方向位置に位置しており、これによりこれらの荷重伝達ロッドは軸線12に垂直な平面に沿って軸線12の周りの周方向に交互に90°の角度にて互いに隔置されている。尚荷重伝達ロッド30及び94は互いに異なる軸線方向位置にあってもよい。
【0129】
図9に示されている如く、上述の第一の実施例と同様、カム溝36及び96は上述の第一及び第二の実施例に於けるカム溝36及び96と同一の形態をなしているが、周方向に交互に配列されている。特に図示の実施例に於いては、カム溝36及び96の図にて右端部は互いに同一の軸線方向位置に位置し、カム溝36の軸線12に沿う方向の延在範囲はカム溝96の軸線12に沿う方向の延在範囲とオーバラップしている。
【0130】
またガイドローラ38及び98はハウジング16の本体16Aに設けられたガイド溝32A及び32Bにそれぞれ係合しており、ガイド溝32A及び32Bは軸線12に沿って直線的に延在すると共に、軸線12の周りの周方向に交互に90°の角度にて互いに隔置されている。図7に示されている如く、ガイド溝32Bの長さはガイド溝32Aの長さよりも大きく設定されている。この第四の実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されている。
【0131】
この第四の実施例に於いては、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は上述の第一の実施例の場合と同様に機能するので、入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動が軸線12の周りの回転運動に変換されて中間ロータ86へ伝達され、中間ロータ86の回転運動が軸線12に沿う直線運動に変換されて出力ピストン90へ伝達される。また出力ピストン90が圧縮コイルばね92を圧縮変形させることにより発生する軸線12に沿う方向の反力は出力ピストン90より反力トルクに変換されて中間ロータ86へ伝達され、中間ロータ86の反力トルクは軸線12に沿う方向の反力に変換されて入力ピストン14へ伝達される。また入力ピストン14の直線運動量に対する出力ピストン90の直線運動量の比の特性も上述の他の実施例の場合と同様の非線形の特性になる。
【0132】
かくして図示の第四の実施例によれば、上述の第一乃至第三の実施例の場合と同様、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、またブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0133】
特に図示の第四の実施例によれば、入力ピストン14のアーム部14A及び出力ピストン90のアーム部90Aは軸線12に沿って互いに他に対し相対的に直線運動可能であるが、軸線12の周りに互いに他に対し相対的に回転運動することがないよう互いに係合しているので、アーム部14A及び90Aによっても軸線12に沿う入力ピストン14及び出力ピストン90の相対運動が案内されると共に軸線12の周りの入力ピストン14及び出力ピストン90の相対回転が阻止されるので、上述の第一及び第二の実施例の場合に比して入力ピストン14及び出力ピストン90の相対直線運動を円滑に行わせることができる。
【0134】
また図示の第四の実施例によれば、入力ピストン14及び出力ピストン90は互いに逆向きに配置された同一の部材であるので、入力ピストン14及び出力ピストン90が互いに異なる他の実施例の場合に比して部品点数を低減し、ストロークシミュレータ10のコストを低減することができる。
[第五の実施例]
【0135】
図10はブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第五の実施例を示す軸線に沿う断面図、図11は第五の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【0136】
この第五の実施例に於いては、入力ピストン14は中間ロータ86に嵌合する実質的に円柱形をなしているが、軸線12に整合して延在し出力ピストン90へ向けて開いた円筒形のリセス14Bを有している。これに対し出力ピストン90は中間ロータ86に嵌合する実質的に円柱形の本体部より軸線12に整合して入力ピストン14へ向けて突出する断面円形の軸部90Bを有し、軸部90Bは軸線12に沿って相対変位可能にリセス14Bに嵌入している。反力発生手段としての圧縮コイルばね92は出力ピストン90とエンドキャップ22Bとの間に弾装されており、入力ピストン14及び出力ピストン90が初期位置にあるときには、入力ピストン14及び出力ピストン90は相互に押圧する状態にて当接するようになっている。
【0137】
また上述の第二乃至第四の実施例と同様、荷重伝達ロッド30及び94はそれぞれ径方向に二分割されており、荷重伝達ロッド30は径方向内端部にて入力ピストン14のリセス14Bの周りの部分により片持支持され、荷重伝達ロッド94は出力ピストン90の軸部90Bにより片持支持されている。上述の第四の実施例と同様、荷重伝達ロッド30及び94は同一の軸線方向位置に位置しており、これによりこれらの荷重伝達ロッドは軸線12に垂直な平面に沿って軸線12の周りの周方向に交互に90°の角度にて互いに隔置されている。
【0138】
また入力ピストン14は軸線12の周りに荷重伝達ロッド30に対し90°の角度をなす位置に出力ピストン90へ向けて開いた一対のスリット14Cを有し、荷重伝達ロッド94は軸線12に沿って入力ピストン14に対し相対的に直線運動可能にスリット14Cに遊嵌状態にて挿通されている。この第五の実施例の他の点は上述の第四の実施例と同様に構成されている。尚この実施例に於いても荷重伝達ロッド30及び94は互いに異なる軸線方向位置にあってもよい。また荷重伝達ロッド94は出力ピストン90の軸部90B及び入力ピストン14の一対のスリット14Cを貫通して直径方向に延在する一つの棒材であってもよい。
【0139】
この第五の実施例に於いても、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は上述の第一の実施例の場合と同様に機能するので、入力ピストン14、中間ロータ86、出力ピストン90の間に於ける運動の変換伝達及び圧縮コイルばね92の反力の伝達は上述の第一の実施例の場合と同様に達成される。また入力ピストン14の直線運動量に対する出力ピストン90の直線運動量の比の特性も上述の他の実施例の場合と同様の非線形の特性になる。
【0140】
かくして図示の第五の実施例によれば、上述の第一乃至第四の実施例の場合と同様、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、またブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0141】
特に図示の第五の実施例によれば、出力ピストン90の軸部90Bが入力ピストン14のリセス14Bに嵌合し、軸部90B及びリセス14Bによっても軸線12に沿う入力ピストン14及び出力ピストン90の相対運動が案内されるので、上述の第一及び第二の実施例の場合に比して入力ピストン14及び出力ピストン90の相対直線運動を円滑に行わせることができる。
【0142】
尚図示の第四及び第五の実施例によれば、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は軸線12の周りに隔置された位置にて軸線12に沿う同一の軸線方向位置に設けられているので、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56が軸線12に沿って互いに隔置されている上述の第一乃至第三の実施例の場合に比して、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の運動変換に伴い中間ロータ86に作用するこじりを低減し、これによりストロークシミュレータ10の作動を円滑に行わせると共にその耐久性を向上させることができ、また軸線12に沿う方向のストロークシミュレータ10の長さを小さくし、車両に対する搭載性を向上させることができる。
【0143】
また以上の説明より解る如く、上述の第一乃至第五の実施例によれば、入力ピストン14、中間ロータ86、出力ピストン90は軸線12に整合して互いに嵌合し且つ軸線12に整合して相対運動するようになっているので、リンク機構等により運動や力の伝達特性が所望の特性になるよう構成される場合に比して、運動変換伝達装置としてのストロークシミュレータ10を確実にコンパクトにすることができる。
[第六の実施例]
【0144】
図18はブレーキ装置の踏力伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第六の実施例を示す断面図、図19は第六の実施例の踏力伝達装置を示す軸線に沿う拡大断面図である。
【0145】
これらの図に於いて、ブレーキ装置210はブレーキブースタ112を有し、踏力伝達装置114はブレーキブースタ112とブレーキペダル212との間に配設されている。ブレーキブースタ112、マスタシリンダ214、リザーバ230はダッシュパネル116に対しブレーキペダル212の側とは反対の側に配置されている。ダッシュパネル116にはステー118が固定されており、ステー118には図には示されていないボルトによりブラケット120の上端が取り付けられている。ブラケット120の下端は踏力伝達装置114のハウジング16に溶接等の手段により固定されている。ブラケット120はブレーキペダル212を枢支する枢軸212Aを支持している。
【0146】
踏力伝達装置114は上述の第一の実施例のストロークシミュレータ10と実質的に同一の構造を有しているが、ハウジング16は一端にて開口するコの字形の断面形状を有し、軸線12に沿って延在する円筒形をなしている。ハウジング16の開口端にはフランジ16Bが一体に形成されており、フランジ16Bはブレーキブースタ112に固定されたボルト122及びこれに螺合するナット124によりブレーキブースタ112と共にダッシュパネル116に取り付けられている。
【0147】
入力ピストン14の図にて右端にはソケット126が形成されており、ソケット126にはリンク128の一端に設けられたボール130が嵌め込まれており、これによりリンク128はその一端にて入力ピストン14に対し枢動自在に連結されている。リンク128はハウジング16の端壁を貫通して軸線12に沿って延在し、他端にて枢軸ピン132によりブレーキペダル212のアーム部212Bに枢着されている。入力ピストン14の両端近傍の外周には上述の第一の実施例に於ける減摩リング28と同様の減摩リング26及び28が装着されている。
【0148】
またこの実施例に於いては、上述の第一の実施例に於ける圧縮コイルばね92及びエンドキャップ22Bにそれぞれ相当する圧縮コイルばね及びエンドキャップは設けられておらず、出力ピストン90には軸線12に沿って延在するブレーキブースタ112のオペレーションロッド134の先端が圧入等の手段により一体的に連結されている。各シリンダ室にはオイルは充填されておらず、カバー104には連通孔41に相当する連通孔は設けられていない。この実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されている。
【0149】
図示の第六の実施例に於いて、運転者によりブレーキペダル212に踏力が与えられブレーキペダル212が踏み込まれると、入力ピストン14が軸線12に沿って図18で見て左方へ駆動され、上述の第一の実施例と同様の要領にて第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56による運動変換が行われることにより出力ピストン90が軸線12に沿って図18で見て左方へ駆動され、これによりブレーキブースタ112のオペレーションロッド134が制動力増大方向へ駆動される。
【0150】
またマスタシリンダ214より各ホイールシリンダ222FL〜222RRへ制動液圧が供給されることにより発生する反力はホイールシリンダより液圧としてマスタシリンダ214を経てブレーキブースタ112へ伝達され、オペレーションロッド134が図18で見て右方へ押圧されることにより、上述の第一の実施例と同様の要領にて入力ピストン14へ伝達される。そして反力は入力ピストン14よりリンク128を経てブレーキペダル212へ伝達される。
【0151】
この場合第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は上述の第一実施例の場合と同様に機能するので、図示の第六の実施例によれば、上述の第一乃至第五の実施例の場合と同様、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン14より出力ピストン90へ直線運動及び力を伝達することができ、またブレーキペダル212の踏み込み量に対するペダル反力の特性を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0152】
特に図示の第六の実施例によれば、踏力伝達装置114はブレーキブースタ112とブレーキペダル212との間に配設されているので、従来のペダル比可変式のブレーキペダルの場合と同様、運転者によるブレーキペダルの操作量とマスタシリンダやブレーキブースタに対する入力変位量との関係を所望の連続的な非線形の特性にすることができる。
【0153】
尚上述の第一乃至第六の実施例によれば、中間ロータ86はハウジング16内にてハウジング16により回転可能に支持され、入力ピストン14及び出力ピストン90は中間ロータ86により直線運動可能に支持されており、可動部材や反力発生部材はハウジング16外に露呈していないので、可動部材である出力ピストンや反力発生部材がハウジング16外に露呈している場合に比して、車両等に対する良好な搭載性を確保することができ、また可動部材とハウジングとの間に異物が侵入したりすることによる作動不良の虞れを低減することができる。
【0154】
尚上述の第一乃至第三の実施例及び第六の実施例によれば、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は軸線12の周りの同一の位置にて軸線12に沿って互いに隔置された位置し、これにより荷重伝達ロッド30及び94は軸線12の周りの同一の位置に位置しており、ガイド溝32は第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56に共通の溝であるので、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56のそれぞれにガイド溝が設けられる後述の第一及び第五の実施例の場合に比してガイド溝32の加工工程を少なくすることができる。
[第七の実施例]
【0155】
図20は自動車等の車両の操舵系に於ける操舵運動変換伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第七の実施例を示す軸線に沿う断面図、図21は第七の実施例の入力ロータの第一の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図、図22は第七の実施例の出力ロータの第二の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図、図23は第七の実施例が組み込まれた操舵系を示す説明図である。
【0156】
図23に示されている如く、操舵運動変換伝達装置136は図23には示されていない車体により軸線12に周りに回転可能に支持されたアッパメインシャフト268とロアメインシャフト270との間に配設されている。アッパメインシャフト268は上端にてステアリングホイール272に一体的に連結され、下端にて操舵運動変換伝達装置136の上端に連結されている。ロアメインシャフト270は上端にて操舵運動変換伝達装置136の下端に連結され、下端にてユニバーサルジョイント274によりインターミーディエットシャフト276の上端に枢着されている。
【0157】
インターミーディエットシャフト276の下端はユニバーサルジョイント278によりラックアンドピニオン式のステアリング装置280のピニオンシャフト282に枢着されている。ステアリング装置280のラックバー284の両端はボールジョイント286L及び286Rによりそれぞれタイロッド288L及び288Rの内端に枢着されている。タイロッド288L及び288Rの外端はそれぞれボールジョイント294L及び294Rにより左右の操舵輪290L及び290Rを回転可能に支持する車輪支持部材292L及び292Rのナックルアーム296L及び296Rに枢着されている。
【0158】
従って運転者によりステアリングホイール272に与えられる操舵トルク及び操舵の回転運動はアッパメインシャフト268より操舵運動変換伝達装置136を経てロアメインシャフト270へ伝達され、ロアメインシャフト270よりインターミーディエットシャフト276を経てピニオンシャフト282へ伝達される。ピニオンシャフト282のトルク及び回転運動はステアリング装置280によりラックバー284の車両横方向の力及び直線運動に変換され、ラックバー284の車両横方向の力及び直線運動はタイロッド288L、288R及びナックルアーム296L、296Rにより図には示されていないキングピン軸周りのトルク及び回転運動に変換されて車輪支持部材292L、292R及び操舵輪290L、290Rへ伝達され、これにより操舵輪290L、290Rが操舵される。
【0159】
逆に操舵反力は操舵輪290L、290Rより車輪支持部材292L、292R及びナックルアーム296L、296Rにより軸力としてタイロッド288L、288R及びラックバー284へ伝達される。ラックバー284の軸力はステアリング装置280によりピニオンシャフト282のトルクに変換され、ピニオンシャフト282のトルクはインターミーディエットシャフト276、ロアメインシャフト270、操舵運動変換伝達装置136、アッパメインシャフト268、ステアリングホイール272を経てステアリングホイール272へ伝達される。
【0160】
図20に示されている如く、この第七の実施例の操舵運動変換伝達装置136も軸線12に沿って互いに隔置された第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56を有している。第一の伝達手段54は軸線12の周りに回転可能な入力ロータ138と軸線12に沿って往復動可能な中間ピストン140とを有し、第二の伝達手段56は中間ピストン140と軸線12の周りに回転可能な出力ロータ142とを有している。
【0161】
入力ロータ138はハウジング16Aの内側にてアンギュラベアリング42A及び42Bによりハウジング16Aに対し相対的に軸線12の周りに回転可能に支持されている。同様に出力ロータ142はハウジング16Bの内側にてアンギュラベアリング44A及び44Bによりハウジング16Bに対し相対的に軸線12の周りに回転可能に支持されている。ハウジング16A及び16Bは互いに当接しており、それらの外側に配置された円筒形のカバー104により一体的に連結されている。またハウジング16A及び16Bはそれぞれ取り付けブラケット144A及び144Bにより車体の一部であるインストルメントパネル146に固定されている。
【0162】
入力ロータ138及び出力ロータ142は軸線12に沿って僅かに互いに隔置されている。入力ロータ138は出力ロータ142とは反対側の端部に於いてアッパメインシャフト268の下端に一体的に連結されており、出力ロータ142は入力ロータ138とは反対側の端部に於いてロアメインシャフト270の上端に一体的に連結されている。中間ピストン140は入力ロータ138及び出力ロータ142の内側に配置され、入力ロータ138及び出力ロータ142によりこれらに対し相対的に軸線12に沿って往復動可能に支持されている。
【0163】
第一の伝達手段54の荷重伝達ロッド30及び第二の伝達手段56の荷重伝達ロッド94は軸線12に沿って互いに隔置された状態にて中間ピストン140に固定されており、荷重伝達ロッド30の軸線30A及び荷重伝達ロッド94の軸線94Aは同一の平面内に位置している。第一の伝達手段54のガイドローラ38はハウジング16Aに設けられたガイド溝32Aの壁面に転動可能に係合し、第二の伝達手段56のガイドローラ98はハウジング16Bに設けられたガイド溝32Bの壁面に転動可能に係合している。中間ピストン140の両端近傍の外周には上述の第一の実施例に於ける減摩リング28、28A、28Bと同様の減摩リング28A、28Bが装着されている。
【0164】
また図21に示されている如く、第一の伝達手段54のカム溝36は上述の第一の実施例のカム溝36とは逆方向に湾曲した二つのカム溝が接続されたS字形をなしており、ステアリングホイール272が中立位置、即ち車両の直進位置にあるときには、荷重伝達ロッド30の軸線30Aはカム溝36の中央の中立位置に位置するようになっている。図22に示されている如く、第二の伝達手段56のカム溝96は上述の第一の実施例のカム溝36と同一方向に湾曲した二つのカム溝が接続されたS字形をなし、ステアリングホイール272が中立位置にあるときには、荷重伝達ロッド94の軸線94Aはカム溝96の中央の中立位置に位置するようになっている。図21と図22との比較より解る如く、中立位置近傍に於けるカム溝36の周方向に対する傾斜角はカム溝96の傾斜角よりも小さい値に設定されている。この第七の実施例の他の点は上述の第一の実施例と同様に構成されている。
【0165】
この第七の実施例に於いて、ステアリングホイール272が車両の右旋回方向へ回転される方向を正の回転方向とすると、ステアリングホイール272が正の方向へ回転されることにより、アッパメインシャフト268が軸線12の周りに正の方向へ回転されると、入力ロータ138も軸線12の周りに正の方向へ回転する。入力ロータ138の正の方向への回転は第一の伝達手段54により図20で見て左方への軸線12に沿う直線運動に変換されて中間ピストン140へ伝達される。中間ピストン140の左方へ直線運動は第二の伝達手段56により軸線12の周りの正の方向の回転に変換されて出力ロータ142に伝達され、これによりロアメインシャフト270が軸線12の周りに正の方向へ回転する。
【0166】
ステアリングホイール272が車両の左旋回方向へ回転される場合にも、入力ロータ138及び出力ロータ142の回転方向が上記方向とは逆の負の方向であり、中間ピストン140の直線運動の方向が図20で見て右方である点を除き、同様の要領にてステアリングホイール272の回転運動が操舵運動変換伝達装置136を経てロアメインシャフト270へ伝達される。
【0167】
これらの場合に於いて、カム溝36及び96は上述の如くS字形をなしているので、ステアリング系の回転方向の遊びを無視すると、入力ロータ138の回転運動量と中間ピストン140の直線運動量との関係は図24に示されている如き関係になり、中間ピストン140の直線運動量と出力ロータ142の回転運動量との関係は図25に示されている如き関係になる。図24及び図25より解る如く、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の何れの運動伝達についても、正の回転方向及び負の回転方向を問わず、ステアリングホイール272の中立位置に対応する回転位置を基準位置として、運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比が運動伝達元の部材の運動量の増大につれて漸次増大する。
【0168】
従ってステアリングホイール272の中立位置よりの回転角度θinとロアメインシャフト270の回転角度θoutとの関係は図26に示されている如き関係になる。即ちステアリングホイール272が何れの方向へ回転される場合にも、ステアリングホイール272の回転運動量に対するロアメインシャフト270の回転運動量の比はステアリングホイール272の回転運動量の増大につれて連続的に非線形に増大する。尚ステアリングホイール272より操舵運動変換伝達装置136を経てロアメインシャフト270へ伝達されるトルクの伝達特性は図27に示されている如き特性になる。
【0169】
かくして図示の第七の実施例によれば、所望の伝達特性に応じてカム溝36及び96の形状を適宜に設定することにより、全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ロータ138より出力ロータ142へ回転運動及び力を伝達することができ、これにより操舵の全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にてステアリングホイール272より操舵輪へ操舵運動及び操舵力を伝達させることができる。
【0170】
特に図示の第七の実施例によれば、ステアリングホイール272の回転運動量に対するロアメインシャフト270の回転運動量の比はステアリングホイール272の回転運動量の増大につれて連続的に非線形に増大するので、ステアリングホイール272の回転運動量に対する操舵輪の転舵量の比をステアリングホイール272の回転運動量の増大につれて連続的に非線形に増大させることができる。従って例えばステアリングホイール272の中立位置近傍に於けるステアリングギヤ比を1よりも小さい値に設定し、ステアリングホイール272の切れ角が大きい領域に於けるステアリングギヤ比を従来の一般的な操舵装置の場合よりも大きい値に設定することができ、これにより従来の一般的な操舵装置の場合に比して、車両の良好な直進走行の操縦安定性を確保しつつ据え切り時等に於ける操縦性を向上させることができる。
[第八の実施例]
【0171】
図28は自動車等の車両のサスペンションストローク伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第八の実施例を軸線に於いて直角に接する二つの切断面に沿って切断して示す断面図、図29は第八の実施例の中間ロータの第一の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図、図30は第八の実施例の中間ロータの第二の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図、図31は第八の実施例が組み込まれたサスペンションを示す説明図である。
【0172】
図31に於いて、符号306は車輪を示しており、車輪支持部材308により回転軸線308Aの周りに回転可能に支持されている。図31に示されたサスペンションはダブルウイッシュボーン式のサスペンションであり、車輪支持部材308の上端及び下端にはそれぞれボールジョイント310及び312によりアッパアーム314及びロアアーム316の外端が枢着されている。アッパアーム314及びロアアーム316の内端はそれぞれゴムブッシュ装置318及び320により車体322に枢着されている。ロアアーム316と車体322との間には第八の実施例によるサスペンションストローク伝達装置148が配設され、サスペンションストローク伝達装置148の上端及び下端はそれぞれアッパマウント326及びボールジョイント328により車体322及びロアアーム316に枢着されている。
【0173】
図28に示されている如く、サスペンションストローク伝達装置148も軸線12に沿って互いに隔置された第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56を有している。第一の伝達手段54は軸線12に沿って往復動可能な入力ピストン150と軸線12の周りに回転可能な中間ロータ152とを有し、第二の伝達手段56は中間ロータ152と軸線12に沿って往復動可能な出力ピストン154とを有している。
【0174】
中間ロータ152はハウジング16の内側にてアンギュラベアリング42A及び42Bによりハウジング16に対し相対的に軸線12の周りに回転可能に支持されている。出力ピストン154はハウジング16を囲繞するようこれに嵌合する円筒形をなし、ハウジング16に対し相対的に軸線12に沿って往復動可能に支持されている。ハウジング16の上端にはエンドキャップ156が圧入等の手段により固定されており、エンドキャップ156はそれに固定されたアッパマウント326を介して車体322に連結されている。
【0175】
入力ピストン150は中間ロータ152に嵌入し、中間ロータ152に対し相対的に軸線12に沿って往復動可能にハウジング16及び中間ロータ152により支持されている。図示の実施例に於いては、サスペンションストローク伝達装置148はショックアブソーバ内蔵型のサスペンションストローク伝達装置であり、入力ピストン150は下向きに開いた円筒形をなし、ショックアブソーバ158のシリンダとして機能するようになっている。
【0176】
入力ピストン150の下端には上向きに開いた有底円筒形をなすエンドキャップ160が圧入等の手段により固定されており、エンドキャップ160内にはフリーピストン162が軸線12に沿って往復動可能に配置されている。フリーピストン162はエンドキャップ160と共働してガス室164を郭定しており、ガス室164には高圧のガスが封入されている。エンドキャップ160の上端の内面にはCリング166が取り付けられており、Cリング166によりフリーピストン162がそれらより上方へ移動することが阻止されるようになっている。尚図28に示されていないが、エンドキャップ160の下端にはボールジョイント328が設けられている。
【0177】
入力ピストン150はショックアブソーバ158のピストン168を軸線12に沿って往復動可能に受け入れている。ピストン168は入力ピストン150と共働してシリンダ上室170及びシリンダ下室172を郭定しており、シリンダ上室170及びシリンダ下室172にはオイルの如き粘性液体が封入されている。図28に於いては、サスペンションストローク伝達装置148は自由状態、即ちアッパマウント326と入力ピストン150との間に車体重量が作用していない状態にて図示されており、ショックアブソーバ158のピストン168がシリンダとしての入力ピストン150に対し伸びきった状態にあり、そのためシリンダ上室170の容積は0である。
【0178】
ピストン168のピストン部168Aにはシリンダ上室170とシリンダ下室172とを連通接続する複数のオリフィス174が設けられている。ピストン168のロッド部168Bは入力ピストン150の端壁を貫通して軸線12に沿って上方へ延在し、上端にてアッパマウント326に連結されている。入力ピストン150とハウジング16との間にはOリングシール176が配設され、入力ピストン150とピストン168のロッド部168Bとの間にはOリングシール178が配設されている。
【0179】
出力ピストン154の上端には径方向外方へ突出し軸線12の周りに環状に延在するアッパスプリングシート180が一体に形成されており、入力ピストン150の下端には径方向外方へ突出し軸線12の周りに環状に延在するロアスプリングシート182が一体に形成されている。アッパスプリングシート180とロアスプリングシート182との間にはサスペンションストローク伝達装置148を囲繞し軸線12に沿って延在するサスペンションスプリングとしての圧縮コイルばね184が弾装されている。
【0180】
サスペンションストローク伝達装置148の外側にてサスペンションスプリングの内側にはダストブーツ186が配置されており、ダストブーツ186は上端にて出力ピストン154の下端に連結され、下端にてハウジング16の下端に連結されている。尚図28には示されていないが、ハウジング16の上端には出力ピストン154、従ってアッパスプリングシート180の図にて上方への移動を規制するストッパが設けられている。
【0181】
第一の伝達手段54は軸線12の周りに互いに180°隔置された位置に於いて入力ピストン150の上端に圧入等の手段により片持支持され且つ径方向外方へ延在する荷重伝達ロッド30を有している。荷重伝達ロッド30の先端部は中間ロータ152に設けられたカム溝36を貫通してハウジング16の円筒部に設けられたガイド溝32Aまで延在している。また荷重伝達ロッド30の先端部は実質的に球形のガイドローラ38及びカムローラ40を自らの軸線30Aの周りに回転可能に支持している。各ガイドローラ38は対応するガイド溝32Aの壁面に転動可能に係合し、各カムローラ40はカム溝36の壁面に転動可能に係合している。
【0182】
同様に第二の伝達手段56は軸線12の周りに荷重伝達ロッド30に対し180°隔置された位置に於いて出力ピストン154の下端部に圧入等の手段により片持支持され且つ径方向内方へ延在する荷重伝達ロッド94を有している。荷重伝達ロッド94の先端部はハウジング16の円筒部に設けられたガイド溝32Bを貫通して中間ロータ152に設けられたカム溝96まで延在している。また荷重伝達ロッド94の先端部は実質的に球形のガイドローラ98及びカムローラ100を自らの軸線94Aの周りに回転可能に支持している。各ガイドローラ98は対応するガイド溝32Bの壁面に転動可能に係合し、各カムローラ100はカム溝96の壁面に転動可能に係合している。
【0183】
図29及び図30に於いて、332及び334はそれぞれカム溝36及び96の軸線12の方向の基準線を示し、336及び338はそれぞれカム溝36及び96の周方向の基準線を示している。図29に示されている如く、カム溝36はS字形の形態をなしているが、図30に示されている如く、カム溝96はカム溝36とは傾斜方向が逆のS字形の形態をなしている。図28に於いては、サスペンションストローク伝達装置148はそれに圧縮力が作用していない状態にて示されているが、車両の積載荷重が標準の積載荷重であり車輪306がバウンドもリバウンドもしていない中立位置にあるときには、荷重伝達ロッド30及び94の軸線30A及び94Aはそれぞれカム溝36及び96の中央の標準位置、即ち基準線112及び114と基準線336及び338との交点P1及びP2に位置するようになっている。
【0184】
また図29及び図30に於いて、カム溝36の基準線336より上側の部分は車輪306のバウンドストロークに対応する部分であり、カム溝36の基準線3316より下側の部分は車輪306のリバウンドストロークに対応する部分である。これに対しカム溝96の基準線338より上側の部分は車輪306のリバウンドストロークに対応する部分であり、カム溝96の基準線338より下側の部分は車輪306のバウンドストロークに対応する部分である。
【0185】
図29に示されている如く、カム溝362は基準線332及び336に対し傾斜して延在すると共に、交点P1より離れるにつれて周方向の基準線336に対する傾斜角が漸次減少するよう湾曲している。特に交点P1よりの距離が車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域を除く領域に対応する範囲に於いては、車輪306のバウンド側のカム溝36が周方向の基準線336に対しなす傾斜角は車輪306のリバウンド側のカム溝36が周方向の基準線336に対しなす傾斜角よりも大きく設定されている。しかし交点P1よりの距離が車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域に対応する範囲に於いては、車輪306のバウンド側のカム溝36が周方向の基準線336に対しなす傾斜角は車輪306のリバウンド側のカム溝36が周方向の基準線336に対しなす傾斜角よりも小さく設定されている。
【0186】
図29と図30との比較より解る如く、カム溝96はカム溝36を周方向の基準線336に対し反転させると共に湾曲方向を逆にした形態と同一の形態をなしており、従ってカム溝36を交点P1の周りに90°反時計廻り方向へ回転させた形態と同様の形態をなしている。
【0187】
即ち図30に示されている如く、カム溝96は基準線334及び338に対しカム溝36とは逆方向に傾斜して延在すると共に、交点P2より離れるにつれて周方向の基準線336に対する傾斜角が漸次増大するよう湾曲している。特に交点P2よりの距離が車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域を除く領域に対応する範囲に於いては、車輪306のバウンド側のカム溝96が周方向の基準線338に対しなす傾斜角は車輪306のリバウンド側のカム溝96が周方向の基準線338に対しなす傾斜角よりも小さく設定されている。しかし交点P2よりの距離が車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域に対応する範囲に於いては、車輪306のバウンド側のカム溝106が周方向の基準線118に対しなす傾斜角は車輪4のリバウンド側のカム溝96が周方向の基準線338に対しなす傾斜角よりも大きく設定されている。
【0188】
カムローラ40は荷重伝達ロッド30の周りの回転運動を除けば、カム溝36内を基準線332及び336に対し傾斜し湾曲したS形の運動軌跡に沿ってのみ運動可能である。同様にカムローラ100は荷重伝達ロッド94の周りの回転運動を除けば、カム溝96内を基準線334及び338に対し傾斜し湾曲したS形の運動軌跡に沿ってのみ運動可能である。
【0189】
図示の第八の実施例に於いて、車輪306がバウンドし、入力ピストン150が軸線12に沿って中間ロータ152及びハウジング16に対し相対的に上方へ直線運動すると、入力ピストン150の直線運動は第一の伝達手段54により軸線12の周りの回転運動に変換されて中間ロータ152へ伝達される。カム溝36及び96は上述の如く互いに逆向きのS字形をなしているので、中間ロータ152の回転運動は第二の伝達手段56により入力ピストン150の直線運動の方向とは逆方向の直線運動に変換されて出力ピストン154へ伝達され、これによりアッパスプリングシート180はハウジング16に対し相対的に下方へ変位する。
【0190】
また車輪306がバウンドし、入力ピストン150が軸線12に沿って中間ロータ152及びハウジング16に対し相対的に下方へ直線運動すると、中間ロータ152の回転運動の方向及び出力ピストン154の直線運動の方向が車輪306のバウンドの場合とは逆である点を除き同一の要領にて第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56による運動変換及び伝達が行われ、これによりアッパスプリングシート180はハウジング16に対し相対的に上方へ変位する。
【0191】
従って車輪306のバウンド時の各部材の運動方向を正の方向とすると、入力ピストン150の直線運動量と中間ロータ152の回転運動量との関係は図32に示された関係になり、中間ロータ152の回転運動量と出力ピストン154の直線運動量との関係は図33に示された関係になるので、入力ピストン150の直線運動量と出力ピストン154の直線運動量との関係は図34に示された関係になり、車輪306がバウンドする場合及びリバウンドする場合の何れの場合にも、入力ピストン150の直線運動量の増大につれて出力ピストン154の直線運動量の増大率が漸次増大する。
【0192】
また車輪306がバウンドする場合には、入力ピストン150が上方へ移動することによりロアスプリングシート182も上方へ移動するが、アッパスプリングシート180はハウジング16に対し相対的に下方へ移動し、これによりアッパスプリングシート180が下方へ移動しない場合に比して圧縮コイルばね184の圧縮変形量が増大する。逆に車輪306がリバウンドする場合には、入力ピストン150が下方へ移動することによりロアスプリングシート182も下方へ移動するが、アッパスプリングシート180はハウジング16に対し相対的に上方へ移動し、これによりアッパスプリングシート180が上方へ移動しない場合に比して圧縮コイルばね184の圧縮変形量の減少量が増大する。
【0193】
従って車輪306のストロークと圧縮コイルばね184の圧縮変形量との関係は図35に示された関係になる。即ち車輪306がバウンドする場合には、車輪306の中立位置よりのバウンドストロークの増大につれて圧縮コイルばね184の圧縮変形量が漸次大きくなると共に、圧縮コイルばね184の圧縮変形量の増大率も漸次大きくなる。また車輪306がリバウンドする場合には、車輪306の中立位置よりのリバウンドストロークの増大につれて圧縮コイルばね184の圧縮変形量が漸次減少と共に、圧縮コイルばね184の圧縮変形量の減少率も漸次大きくなる。
【0194】
また図35の第一象限と第三象限との比較より解る如く、車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域を除く領域の範囲に於いては、車輪306のバウンドストロークの増大に伴う圧縮コイルばね184の圧縮変形量の増大率は車輪306のリバウンドストロークの増大に伴う圧縮コイルばね184の圧縮変形量の減少率の大きさよりも小さい。これに対し車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの終端領域の範囲に於いては、車輪306のバウンドストロークの増大に伴う圧縮コイルばね184の圧縮変形量の増大率は車輪306のリバウンドストロークの増大に伴う圧縮コイルばね184の圧縮変形量の減少率の大きさよりも大きい。
【0195】
かくして図示の第八の実施例によれば、所望の伝達特性に応じてカム溝36及び96の形状を適宜に設定することにより、車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの何れについてもそれらの全範囲に亘り所望の連続的な非線形の伝達特性にて入力ピストン150より出力ピストン154へ直線運動及び力を伝達することができ、これによりサスペンションのリンク機構の運動の制約を受けることなく所望のプログレッシブなばね特性を達成することができる。
【0196】
図36は従来の一般的なダブルウイッシュボーン式のサスペンションを示しており、図31に示された部材に対応する部材には図31に於いて付された符号と同一の符号が付されている。図36に於いて、サスペンションスプリング340は車体322に取り付けられたアッパサポート326に固定されたアッパシート342とロアアーム316に取り付けられたロアサポート344に固定されたロアシート346との間に弾装されている。
【0197】
ロアアーム316は車輪306のバウンド、リバウンドに伴って内端の周りに上下方向へ枢動するので、ロアシート346もロアアーム316の内端を中心とする円弧状の軌跡に沿って上下方向へ運動する。そのため車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークが増大するにつれて車輪306のストロークの増大量に対するサスペンションスプリング340の弾性変形量の変化量の比が漸次減少し、車輪306のストロークとホイールレート(車輪306の位置に作用するサスペンションスプリング340のばね力のばね定数)との関係は、図37に於いて例えば破線にて示されている如き上向きに凸状の関係になる。
【0198】
図示の実施例によれば、車輪306のバウンドストロークの増大につれて圧縮コイルばね184の弾性変形量の増大率が漸次増大し、車輪306のリバウンドストロークの増大につれて圧縮コイルばね184の弾性変形量の減少率が漸次増大するので、車輪306のバウンドストローク及びリバウンドストロークの何れについても車輪306のストロークの増大につれてホイールレートを漸次大きくすることができ、これにより車輪4のストロークとホイールレートとの関係を図37に於いて実線にて示されている如き下向きに凸状の関係にすることができる。従って従来の一般的なサスペンションの場合に比して、通常の走行時に於ける良好な乗り心地性を確保しつつ、旋回時、加減速時、悪路走行時等に於ける車輪のバウンド、リバウンド量を低減して車体の姿勢変化を低減し車両の走行安定性を向上させることができる。
【0199】
また図示の第八の実施例によれば、サスペンションストローク伝達装置148はショックアブソーバ内蔵型のサスペンションストローク伝達装置であり、入力ピストン150はショックアブソーバ158のシリンダとして機能するようになっているので、サスペンションストローク伝達装置がショックアブソーバを内蔵していない構造の場合に比して、サスペンションストローク伝達装置及びショックアブソーバの車両への搭載性を向上させることができる。
【0200】
尚上述の第一乃至第八の実施例によれば、入力部材としての入力ピストン14及び入力ロータ138、中間部材としての中間ロータ86及び中間ピストン140、出力部材としての出力ピストン90及び出力ロータ142は軸線12に整合して互いに嵌合し且つ軸線12に整合して相対運動するようになっているので、入力部材及び出力部材が互いに異なる軸線に沿って直線運動する構造や入力部材若しくは出力部材が中間部材に嵌合していない構造の場合に比して、運動変換伝達装置の軸線方向の長さを低減し、運動変換伝達装置を確実にコンパクト化することができる。
【0201】
また上述の第一乃至第八の実施例によれば、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56が設けられ、第一の伝達手段54は入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動量に対する中間ロータ86の回転運動量の比を入力ピストン14の直線運動量の増大につれて漸次増大させ、第二の伝達手段56は中間ロータ86の回転運動量に対する出力ピストン90の軸線12に沿う直線運動量の比を中間ロータ86の回転運動量の増大につれて漸次増大させるようになっているので、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の一方のみが運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量の増大につれて漸次増大させる構造の場合に比して、カム溝の湾曲度合を低減することができ、これにより第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56による運動変換及び反力の伝達を円滑に行わせることができる。
【0202】
また上述の第一乃至第八の実施例によれば、第一の伝達手段54の荷重伝達ロッド30を軸線12に沿って案内するガイド溝32又は32A、32Bが設けられると共に、第二の伝達手段56の荷重伝達ロッド90を軸線12に沿って案内するガイド溝32又は32Bが設けられているので、ガイド溝が設けられていない構造の場合に比して、軸線12の周りの入力ピストン14や出力ピストン90の回転を確実に防止することができ、これにより入力ピストン14と出力ピストン90との間の直線運動及び力の伝達特性を確実に且つ正確に所望の非線形の特性にすることができる。
【0203】
また上述の第一乃至第八の実施例によれば、複数の可動部材及び反力発生部材は軸線12に整合して配設され、軸線12に沿って又は軸線12の周りに運動するようになっているので、複数の可動部材や反力発生部材がそれぞれ互いに異なる個別の軸線に整合して配設された構造の場合に比して、ストロークシミュレータ10の構造を単純化することができると共に、運動や反力の伝達を最適に行わせることができる。
【0204】
以上に於いては本発明を特定の実施例について詳細に説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施例が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0205】
例えば上述の第一乃至第三の実施例に於いては、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は軸線12の周りの同一の位置にて軸線12に沿って互いに隔置された位置し、これによりガイド溝32は第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56に共通の溝であるが、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56は軸線12の周りの互いに異なる位置に設けられてもよい。
【0206】
また上述の第一乃至第六の実施例に於いては、第一の伝達手段54が入力ピストン14の軸線12に沿う直線運動量に対する中間ロータ86の回転運動量の比を入力ピストン14の直線運動量の増大につれて漸次増大させ、第二の伝達手段56が中間ロータ86の回転運動量に対する出力ピストン90の軸線12に沿う直線運動量の比を中間ロータ86の回転運動量の増大につれて漸次増大させるようになっているが、第一の伝達手段54及び第二の伝達手段56の一方のみが運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を運動伝達元の部材の運動量の増大につれて漸次増大させるよう修正されてもよい。
【0207】
また上述の第三の実施例に於いては、入力ピストン14及び出力ピストン90は軸線12に沿って常時互いに隔置された状態にあるが、入力ピストン14及び出力ピストン90は圧縮コイルばね92の径方向内側又は外側に上述の第四及び第五の実施例の如く軸線12に沿って相対直線運動可能に係合する部分を有していてもよい。
【0208】
また上述の第四の実施例に於いては、入力ピストン14及び出力ピストン90はそれぞれ扇形の断面形状を有する一対のアーム部14A及び90Aを有しているが、アーム部14A及び90Aの断面形状は例えば半円形の如き任意の形状に設定されてよい。同様に上述の第八の実施例に於いては、入力ピストン14及び出力ピストン90はそれぞれ円形の断面形状を有するリセス14B及び軸部90Bを有しているが、リセス14B及び軸部90Bの断面形状は任意の形状に設定されてよく、リセス14B及び軸部90Bは軸線12に沿って相対直線運動可能に且つ軸線12の周りに相対回転不能に互いに係合する平面部を備えていてもよい。
【0209】
また第二のシリンダ室24と第三のシリンダ室106とを連通接続するオリフィス110は上述の第二の実施例の出力ピストン90にしか設けられていないが、オリフィス110と同様のオリフィスが上述の第一、第三乃至第五の実施例の出力ピストン90に設けられてもよい。
【0210】
また上述の第一乃至第五の実施例に於いては、運動変換伝達装置はブレーキストロークシミュレータ10であり、出力ピストン90は圧縮コイルばね92に押圧作用を及ぼすようになっているが、第一乃至第五の実施例の構造の運動変換伝達装置は出力ピストン90が任意の他の部材に運動や力を伝達する任意の装置に適用されてよい。また上述の第六の実施例に於ける踏力伝達装置114は上述の第一の実施例と同様の構造を有しているが、踏力伝達装置は上述の第二、第四、第五の実施例と同様の構造を有していてもよい。
【0211】
また上述の第七の実施例に於いては、入力ロータ138の回転運動が同一方向の回転運動として出力ロータ142へ伝達されるようになっているが、回転運動を直線運動に変換し、直線運動を回転運動に変換して伝達する本発明による運動変換伝達装置は、例えばカム溝36及び96の湾曲方向を互いに逆方向に設定することにより、回転方向を逆転して回転運動を伝達するよう構成されてもよく、また操舵運動の伝達以外の用途に適用されてもよい。
【0212】
更に上述の第八の実施例のサスペンションストローク伝達装置はショックアブソーバ内蔵型のサスペンションストローク伝達装置であるが、ショックアブソーバがサスペンションストローク伝達装置とは独立のサスペンション部材であるようサスペンションストローク伝達装置が構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第一の実施例を示す軸線に沿う断面図である。
【図2】第一の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【図3】ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第二の実施例を示す軸線に沿う断面図である。
【図4】第二の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【図5】ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第三の実施例を示す軸線に沿う断面図である。
【図6】第三の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【図7】ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による運動変換伝達装置の第四の実施例を軸線に於いて直角に接する二つの切断面に沿って切断して示す断面図である。
【図8】図7の線A−Aに沿う入力ピストン及び出力ピストンの横断面図である。
【図9】第四の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【図10】ブレーキストロークシミュレータとして構成された本発明による操作シミュレータの第五の実施例を示す軸線に沿う断面図である。
【図11】第五の実施例の中間ロータを平面に展開して示す展開図である。
【図12】ブレーキストロークシミュレータの実施例が適用されてよい一つの適用例として油圧式のブレーキ装置を示す概略構成図である。
【図13】入力ピストンの直線運動量と中間ロータの回転運動量との間の関係を示すグラフである。
【図14】中間ロータの回転運動量と出力ピストンの直線運動量との間の関係を示すグラフである。
【図15】入力ピストンの直線運動量と出力ピストンの直線運動量との間の関係を示すグラフである。
【図16】ブレーキペダルの踏み込み量とペダル反力との間の関係を示すグラフである。
【図17】入力ピストンに作用する力と出力ピストンに作用する力との間の関係を示すグラフである。
【図18】ブレーキ装置の踏力伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第六の実施例を示す断面図である。
【図19】第六の実施例の踏力伝達装置を示す軸線に沿う拡大断面図である。
【図20】自動車等の車両の操舵系に於ける操舵運動変換伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第七の実施例を示す軸線に沿う断面図である。
【図21】第七の実施例の入力ロータの第一の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図である。
【図22】第七の実施例の出力ロータの第二の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図である。
【図23】第七の実施例が組み込まれた操舵系を示す説明図である。
【図24】第七の実施例に於ける入力ロータの回転運動量と中間ピストンの直線運動量との関係を示すグラフである。
【図25】第七の実施例に於ける中間ピストンの直線運動量と出力ロータの回転運動量との関係を示すグラフである。
【図26】第七の実施例に於けるステアリングホイールの中立位置よりの回転角度θinとロアメインシャフト270の回転角度θoutとの関係を示すグラフである。
【図27】第七の実施例に於いてステアリングホイールより操舵運動変換伝達装置を経てロアメインシャフトへ伝達されるトルクの伝達特性を示すグラフである。
【図28】自動車等の車両のサスペンションストローク伝達装置として構成された本発明による運動変換伝達装置の第八の実施例を軸線に於いて直角に接する二つの切断面に沿って切断して示す断面図である。
【図29】第八の実施例の中間ロータの第一の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図である。
【図30】第八の実施例の中間ロータの第二の伝達手段のカム溝の領域を平面に展開して示す部分展開図である。
【図31】第八の実施例が組み込まれたサスペンションを示す説明図である。
【図32】第八の実施例に於ける入力ロータの直線運動量と中間ピストンの回転運動量との関係を示すグラフである。
【図33】第八の実施例に於ける中間ピストンの回転運動量と出力ロータの直線運動量との関係を示すグラフである。
【図34】第八の実施例に於ける入力ロータの直線運動量と出力ロータの直線運動量との関係を示すグラフである。
【図35】第八の実施例に於ける車輪のストロークと圧縮コイルばねの弾性変形量の変化量との関係を示すグラフである。
【図36】従来の一般的なダブルウイッシュボーン式のサスペンションを示す説明図である。
【図37】第八の実施例及び従来の一般的なサスペンションのホイールレートと車輪のバウンド、リバウンドの変位量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0214】
10…ブレーキストロークシミュレータ、14…入力ピストン、16…ハウジング、18…第一のシリンダ室、24…第二のシリンダ室、30…荷重伝達ロッド、32…ガイド溝、34…出力ロータ、36…カム溝、38…ガイドローラ、40…カムローラ、52…トーションばね、54…第一の伝達手段、56…第二の伝達手段、86…中間ロータ、90…出力ピストン、92…圧縮コイルばね、94…荷重伝達ロッド、96…カム溝、98…ガイドローラ、100…カムローラ、106…第三のシリンダ室、108…引張りコイルばね、110…オリフィス、112…ブレーキブースタ、114…踏力伝達装置、148…サスペンションストローク伝達装置、150…入力ピストン、152…中間ロータ、154…出力ピストン、158…ショックアブソーバ、184…圧縮コイルばね、212…ブレーキペダル、136…操舵運動変換伝達装置、268…アッパメインシャフト、270…ロアメインシャフト、272…ステアリングホイール、314…アッパアーム、316…ロアアーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線に整合して互いに嵌合し且つ前記軸線に整合して相対運動する入力部材と中間部材と出力部材とを有し、前記軸線に沿う直線運動及び前記軸線の周りの回転運動の一方を第一の運動とし、前記二種類の運動の他方を第二の運動として、前記入力部材の前記第一の運動を前記第二の運動に変換して前記中間部材に伝達する第一の伝達手段と、前記中間部材の前記第二の運動を前記第一の運動に変換して前記出力部材に伝達する第二の伝達手段とを有し、前記第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方は運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を前記運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることを特徴とする運動変換伝達装置。
【請求項2】
前記第一の伝達手段は前記入力部材の前記軸線に沿う直線運動を前記軸線の周りの回転運動に変換して前記中間部材に伝達し、前記第二の伝達手段は前記中間部材の前記軸線の周りの回転運動を前記軸線に沿う直線運動に変換して前記出力部材に伝達することを特徴とする請求項1に記載の運動変換伝達装置。
【請求項3】
前記第一の伝達手段は前記入力部材の前記軸線の周りの回転運動を前記軸線に沿う直線運動に変換して前記中間部材に伝達し、前記第二の伝達手段は前記中間部材の前記軸線に沿う直線運動を前記軸線の周りの回転運動に変換して前記出力部材に伝達することを特徴とする請求項1に記載の運動変換伝達装置。
【請求項4】
前記第一の伝達手段は前記入力部材の運動量に対する前記中間部材の運動量の比を前記入力部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成されており、前記第二の伝達手段は前記中間部材の運動量に対する前記出力部材の運動量の比を前記中間部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項5】
前記中間部材の運動量に対する前記出力部材の運動量の比は前記入力部材の運動量に対する前記中間部材の運動量の比よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項6】
前記第一及び第二の伝達手段は運動伝達元の部材に設けられたカムと、運動伝達先の部材に設けられ前記カムに係合するカムフォロアとを有し、前記カムフォロアが前記カムに従動することにより前記運動伝達元の部材の運動量に対する前記運動伝達先の部材の運動量の比を前記運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項7】
前記カム及び前記カムフォロアの一方はカム溝であり、前記カム及び前記カムフォロアの他方は前記カム溝に係合し前記カム溝に沿って移動するカム溝係合部材であり、前記第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方の前記カム溝は前記軸線の周りに周方向に対し傾斜して延在し且つ周方向に対する傾斜角が連続的に漸次変化するよう湾曲していることを特徴とする請求項6に記載の運動変換伝達装置。
【請求項8】
前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記入力部材の運動量が0であるときに前記カム溝係合部材が前記カム溝に係合する位置に於いて周方向に対し同一の傾斜角を有することを特徴とする請求項7に記載の運動変換伝達装置。
【請求項9】
前記運動変換伝達装置は前記入力部材、前記中間部材、前記出力部材を収容するハウジングを有し、前記中間部材は前記軸線の周りに前記入力部材及び前記出力部材を囲繞する状態にてこれらに嵌合し且つ前記入力部材及び前記出力部材を前記軸線に沿って直線運動可能に支持しており、前記ハウジングは前記軸線の周りに前記中間部材を囲繞する状態にてこれに嵌合し且つ前記中間部材を回転可能に支持しており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記中間部材に設けられ、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記入力部材及び前記出力部材に設けられ、前記ハウジングは前記軸線に沿って延在するガイド溝を有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝を貫通して径方向に延在し且つ前記ガイド溝に沿って移動可能に前記ガイド溝に係合していることを特徴とする請求項2又は4乃至8の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項10】
前記第一及び第二の伝達手段は前記出力部材を前記軸線に沿って前記入力部材と同一の方向へ直線運動させるよう構成されていることを特徴とする請求項2又は4乃至9の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項11】
前記入力部材及び前記出力部材は前記入力部材の運動量が0であるときには互いに当接することを特徴とする請求項10に記載の運動変換伝達装置。
【請求項12】
前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線の周りの同一の位置にて前記軸線に沿って互いに隔置されており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれらに共通のガイド溝に係合していることを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項13】
前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線に沿って互いに係合する部分を有し、前記第一及び第二の伝達手段は前記互いに係合する部分に設けられ且つ前記軸線の周りの周方向に互いに隔置されていることを特徴とする請求項2又は4乃至22の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項14】
前記入力部材及び前記出力部材はそれぞれ前記軸線に沿って他方の部材へ向けて延在する一対のアーム部を有し、前記入力部材の一対のアーム部及び前記出力部材の一対のアーム部は前記軸線の周りの周方向に見て交互に配設され、前記入力部材及び前記出力部材の前記軸線に沿う相対直線運動を許容しつつ前記軸線の周りの相対回転運動を阻止することを特徴とする請求項13に記載の運動変換伝達装置。
【請求項15】
前記入力部材及び前記出力部材は同一の形状を有し、前記軸線に沿って互いに他に対し逆向きに配設されていることを特徴とする請求項14に記載の運動変換伝達装置。
【請求項16】
前記入力部材及び前記出力部材の一方は前記軸線に沿って他方の部材へ向けて延在する軸部を有し、前記他方の部材は前記軸線に沿って延在し前記軸部を前記軸線に沿って相対直線運動可能に受けるリセスを有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材は前記軸部及び前記リセスの周囲の部分に設けられ且つ前記軸線の周りの周方向に互いに隔置されており、前記リセスの周囲の部分は前記軸部に設けられた前記カム溝係合部材が前記リセスの周囲の部分に対し相対的に前記軸線に沿って直線運動することを許すスリットを有することを特徴とする請求項15に記載の運動変換伝達装置。
【請求項17】
前記第一及び第二の伝達手段は前記出力部材を前記軸線に沿って前記入力部材とは逆の方向へ直線運動させるよう構成されていることを特徴とする請求項2又は4乃至9の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項18】
前記出力部材は他の部材と共働して前記軸線に沿う両側に液体にて充填された容積可変の二つのシリンダ室を郭定しており、前記出力部材は前記二つのシリンダ室を連通接続するオリフィスを有し、前記出力部材の直線運動に伴って前記液体が一方のシリンダ室より前記オリフィスを経て他方のシリンダ室へ流動することを特徴とする請求項2又は4乃至17の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項19】
前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝の前記軸線に沿う方向の延在範囲は前記軸線の周りの周方向に見て少なくとも部分的に互いにオーバラップしていることを特徴とする請求項7乃至18の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項20】
前記運動変換伝達装置は前記入力部材、前記中間部材、前記出力部材を収容するハウジングを有し、前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線の周りに前記中間部材を囲繞する状態にてこれらに嵌合し且つ前記中間部材を前記軸線に沿って直線運動可能に支持しており、前記ハウジングは前記軸線の周りに前記入力部材及び前記出力部材を囲繞する状態にてこれに嵌合し且つ前記入力部材及び前記出力部材を前記軸線の周りに回転可能に支持しており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記入力部材及び前記出力部材に設けられ、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材は前記中間部材に設けられ、前記ハウジングは前記軸線に沿って延在するガイド溝を有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝を貫通して径方向に延在し且つ前記ガイド溝に沿って移動可能に前記ガイド溝に係合していることを特徴とする請求項3に記載の運動変換伝達装置。
【請求項21】
前記カム溝係合部材は対応する部材に固定され径方向に延在する軸部材と、前記軸部材に回転可能に支持され前記カム溝の壁面に転動可能に係合するカムローラとを有することを特徴とする請求項7乃至20の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項22】
前記カム溝係合部材は前記軸部材に回転可能に支持され前記入力部材の直線運動の方向に沿って延在するガイド溝の壁面に転動可能に係合するガイドローラを有することを特徴とする請求項21に記載の運動変換伝達装置。
【請求項1】
軸線に整合して互いに嵌合し且つ前記軸線に整合して相対運動する入力部材と中間部材と出力部材とを有し、前記軸線に沿う直線運動及び前記軸線の周りの回転運動の一方を第一の運動とし、前記二種類の運動の他方を第二の運動として、前記入力部材の前記第一の運動を前記第二の運動に変換して前記中間部材に伝達する第一の伝達手段と、前記中間部材の前記第二の運動を前記第一の運動に変換して前記出力部材に伝達する第二の伝達手段とを有し、前記第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方は運動伝達元の部材の運動量に対する運動伝達先の部材の運動量の比を前記運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることを特徴とする運動変換伝達装置。
【請求項2】
前記第一の伝達手段は前記入力部材の前記軸線に沿う直線運動を前記軸線の周りの回転運動に変換して前記中間部材に伝達し、前記第二の伝達手段は前記中間部材の前記軸線の周りの回転運動を前記軸線に沿う直線運動に変換して前記出力部材に伝達することを特徴とする請求項1に記載の運動変換伝達装置。
【請求項3】
前記第一の伝達手段は前記入力部材の前記軸線の周りの回転運動を前記軸線に沿う直線運動に変換して前記中間部材に伝達し、前記第二の伝達手段は前記中間部材の前記軸線に沿う直線運動を前記軸線の周りの回転運動に変換して前記出力部材に伝達することを特徴とする請求項1に記載の運動変換伝達装置。
【請求項4】
前記第一の伝達手段は前記入力部材の運動量に対する前記中間部材の運動量の比を前記入力部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成されており、前記第二の伝達手段は前記中間部材の運動量に対する前記出力部材の運動量の比を前記中間部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させるよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項5】
前記中間部材の運動量に対する前記出力部材の運動量の比は前記入力部材の運動量に対する前記中間部材の運動量の比よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項6】
前記第一及び第二の伝達手段は運動伝達元の部材に設けられたカムと、運動伝達先の部材に設けられ前記カムに係合するカムフォロアとを有し、前記カムフォロアが前記カムに従動することにより前記運動伝達元の部材の運動量に対する前記運動伝達先の部材の運動量の比を前記運動伝達元の部材の運動量に応じて連続的に非線形に変化させることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項7】
前記カム及び前記カムフォロアの一方はカム溝であり、前記カム及び前記カムフォロアの他方は前記カム溝に係合し前記カム溝に沿って移動するカム溝係合部材であり、前記第一及び第二の伝達手段の少なくとも一方の前記カム溝は前記軸線の周りに周方向に対し傾斜して延在し且つ周方向に対する傾斜角が連続的に漸次変化するよう湾曲していることを特徴とする請求項6に記載の運動変換伝達装置。
【請求項8】
前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記入力部材の運動量が0であるときに前記カム溝係合部材が前記カム溝に係合する位置に於いて周方向に対し同一の傾斜角を有することを特徴とする請求項7に記載の運動変換伝達装置。
【請求項9】
前記運動変換伝達装置は前記入力部材、前記中間部材、前記出力部材を収容するハウジングを有し、前記中間部材は前記軸線の周りに前記入力部材及び前記出力部材を囲繞する状態にてこれらに嵌合し且つ前記入力部材及び前記出力部材を前記軸線に沿って直線運動可能に支持しており、前記ハウジングは前記軸線の周りに前記中間部材を囲繞する状態にてこれに嵌合し且つ前記中間部材を回転可能に支持しており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記中間部材に設けられ、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記入力部材及び前記出力部材に設けられ、前記ハウジングは前記軸線に沿って延在するガイド溝を有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝を貫通して径方向に延在し且つ前記ガイド溝に沿って移動可能に前記ガイド溝に係合していることを特徴とする請求項2又は4乃至8の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項10】
前記第一及び第二の伝達手段は前記出力部材を前記軸線に沿って前記入力部材と同一の方向へ直線運動させるよう構成されていることを特徴とする請求項2又は4乃至9の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項11】
前記入力部材及び前記出力部材は前記入力部材の運動量が0であるときには互いに当接することを特徴とする請求項10に記載の運動変換伝達装置。
【請求項12】
前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線の周りの同一の位置にて前記軸線に沿って互いに隔置されており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれらに共通のガイド溝に係合していることを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項13】
前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線に沿って互いに係合する部分を有し、前記第一及び第二の伝達手段は前記互いに係合する部分に設けられ且つ前記軸線の周りの周方向に互いに隔置されていることを特徴とする請求項2又は4乃至22の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項14】
前記入力部材及び前記出力部材はそれぞれ前記軸線に沿って他方の部材へ向けて延在する一対のアーム部を有し、前記入力部材の一対のアーム部及び前記出力部材の一対のアーム部は前記軸線の周りの周方向に見て交互に配設され、前記入力部材及び前記出力部材の前記軸線に沿う相対直線運動を許容しつつ前記軸線の周りの相対回転運動を阻止することを特徴とする請求項13に記載の運動変換伝達装置。
【請求項15】
前記入力部材及び前記出力部材は同一の形状を有し、前記軸線に沿って互いに他に対し逆向きに配設されていることを特徴とする請求項14に記載の運動変換伝達装置。
【請求項16】
前記入力部材及び前記出力部材の一方は前記軸線に沿って他方の部材へ向けて延在する軸部を有し、前記他方の部材は前記軸線に沿って延在し前記軸部を前記軸線に沿って相対直線運動可能に受けるリセスを有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材は前記軸部及び前記リセスの周囲の部分に設けられ且つ前記軸線の周りの周方向に互いに隔置されており、前記リセスの周囲の部分は前記軸部に設けられた前記カム溝係合部材が前記リセスの周囲の部分に対し相対的に前記軸線に沿って直線運動することを許すスリットを有することを特徴とする請求項15に記載の運動変換伝達装置。
【請求項17】
前記第一及び第二の伝達手段は前記出力部材を前記軸線に沿って前記入力部材とは逆の方向へ直線運動させるよう構成されていることを特徴とする請求項2又は4乃至9の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項18】
前記出力部材は他の部材と共働して前記軸線に沿う両側に液体にて充填された容積可変の二つのシリンダ室を郭定しており、前記出力部材は前記二つのシリンダ室を連通接続するオリフィスを有し、前記出力部材の直線運動に伴って前記液体が一方のシリンダ室より前記オリフィスを経て他方のシリンダ室へ流動することを特徴とする請求項2又は4乃至17の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項19】
前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝の前記軸線に沿う方向の延在範囲は前記軸線の周りの周方向に見て少なくとも部分的に互いにオーバラップしていることを特徴とする請求項7乃至18の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項20】
前記運動変換伝達装置は前記入力部材、前記中間部材、前記出力部材を収容するハウジングを有し、前記入力部材及び前記出力部材は前記軸線の周りに前記中間部材を囲繞する状態にてこれらに嵌合し且つ前記中間部材を前記軸線に沿って直線運動可能に支持しており、前記ハウジングは前記軸線の周りに前記入力部材及び前記出力部材を囲繞する状態にてこれに嵌合し且つ前記入力部材及び前記出力部材を前記軸線の周りに回転可能に支持しており、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝は前記入力部材及び前記出力部材に設けられ、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材は前記中間部材に設けられ、前記ハウジングは前記軸線に沿って延在するガイド溝を有し、前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝係合部材はそれぞれ前記第一及び第二の伝達手段の前記カム溝を貫通して径方向に延在し且つ前記ガイド溝に沿って移動可能に前記ガイド溝に係合していることを特徴とする請求項3に記載の運動変換伝達装置。
【請求項21】
前記カム溝係合部材は対応する部材に固定され径方向に延在する軸部材と、前記軸部材に回転可能に支持され前記カム溝の壁面に転動可能に係合するカムローラとを有することを特徴とする請求項7乃至20の何れかに記載の運動変換伝達装置。
【請求項22】
前記カム溝係合部材は前記軸部材に回転可能に支持され前記入力部材の直線運動の方向に沿って延在するガイド溝の壁面に転動可能に係合するガイドローラを有することを特徴とする請求項21に記載の運動変換伝達装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2008−143343(P2008−143343A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332449(P2006−332449)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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