説明

運動検出装置、電子機器、運動検出方法及びプログラム

【課題】意図しない振動等による誤判定を低減して、いずれの軸方向に運動したかを簡易な処理で正確に検出することができる運動検出装置、電子機器、運動検出方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】3軸加速度センサ12により、運動検出装置10に作用するX軸、Y軸、及びZ軸の加速度成分の各々を検出して加速度成分データを出力し、加速度成分データの各々を、ローパスフィルタ処理して得られる静止成分と、加速度成分データの各々から静止成分の各々を除いた動き成分とに分離する。静止成分が最大の軸を重力軸と判定し、最初に閾値を超えた動き成分に対応する軸が重力軸以外の場合に、その軸方向にシェイキングされたことを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動検出装置、電子機器、運動検出方法及びプログラムに係り、特に、3軸加速度センサを用いて運動を検出する運動検出装置、電子機器、運動検出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが意図する操作に伴う動き(モーション)を認識するモーション認識装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなモーション認識装置では、乗り物乗車時、歩行時、ランニング時等の意図しない振動をモーションとして認識しないように工夫する必要がある。そこで、特許文献1記載のモーション認識装置では、各軸方向の加速度の特徴点に基づいて、ユーザが意図する操作に伴って動いている可能性がある軸方向を検出し、その軸方向の加速度の特徴量を検出して解析することで、検出された軸方向の動きが、ユーザの意図する操作に伴う動きであるか否かを検証している。
【0003】
また、3次元空間を構成する3軸のうちの1つを重力軸と判定する重力軸判定装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2記載の重力軸判定装置では、3軸のうち少なくとも2軸方向における加速度を各々が表す少なくとも2つの軸加速度信号を生成し、軸加速度信号の各々を少なくとも2つの軸加速度データ列として取り込み、同一時間帯における軸加速度データ列のデータ値同士を比較して、3軸のうちのいずれか1を重力軸と判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−245176号公報
【特許文献2】特開2010−123040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、モーションを認識するために、加速度の特徴量を検出して解析するという複雑な処理を行っており、処理が煩雑である、という問題がある。
【0006】
また、特許文献2記載の技術では、装置が静止状態にある場合の重力軸を判定しているが、モーション入力などのように機器をシェイクするなどの運動を加える場合には、重力軸以外の加速度データも大きくなるため、正確に重力軸を判定することができない、という問題がある。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するために成されたものであり、意図しない振動等による誤判定を低減して、いずれの軸方向に運動したかを簡易な処理で正確に検出することができる運動検出装置、電子機器、運動検出方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の運動検出装置は、作用する加速度の三次元直交座標系の各軸の加速度成分の各々を検出して、加速度成分データの各々を出力する加速度検出手段と、前記加速度検出手段から出力された加速度成分データの各々を、ローパスフィルタ処理して得られた静止成分と、前記加速度成分データの各々から前記静止成分の各々を除いた動き成分とに分離する分離手段と、前記分離手段で分離された静止成分が最大となる軸を重力軸と判定する重力軸判定手段と、前記分離手段で分離された最大の値を示す動き成分に対応する軸が、前記重力軸判定手段により判定された重力軸以外の軸である場合に、前記最大の値を示す動き成分に基づいて、前記加速度検出手段が前記各軸のいずれの軸方向に運動したかを検出する運動検出手段と、を含んで構成されている。
【0009】
また、本発明の電子機器は、上記運動検出装置を備えた電子機器である。電子機器としては、例えば、携帯電話やゲーム機器のコントローラなどに適用することができる。
【0010】
また、本発明の運動検出方法は、加速度検出手段により、前記加速度検出手段に作用する加速度の三次元直交座標系の各軸の加速度成分の各々を検出して、加速度成分データの各々を出力し、前記加速度検出手段から出力された加速度成分データの各々を、ローパスフィルタ処理して得られた静止成分と、前記加速度成分データの各々から前記静止成分の各々を除いた動き成分とに分離し、分離された静止成分が最大となる軸を重力軸と判定し、分離された最大の値を示す動き成分に対応する軸が、重力軸以外の軸である場合に、前記最大の値を示す動き成分に基づいて、前記加速度検出手段が前記各軸のいずれの軸方向に運動したかを検出する方法である。
【0011】
また、本発明の運動検出プログラムは、コンピュータを、作用する加速度の三次元直交座標系の各軸の加速度成分の各々を検出して、加速度成分データの各々を出力する加速度検出手段から出力された加速度成分データの各々を取得する取得手段、前記取得手段で取得された加速度成分データの各々を、ローパスフィルタ処理して得られた静止成分と、前記加速度成分データの各々から前記静止成分の各々を除いた動き成分とに分離する分離手段、前記分離手段で分離された静止成分が最大となる軸を重力軸と判定する重力軸判定手段、及び前記分離手段で分離された最大の値を示す動き成分に対応する軸が、前記重力軸判定手段により判定された重力軸以外の軸である場合に、前記最大の値を示す動き成分に基づいて、前記加速度検出手段が前記各軸のいずれの軸方向に運動したかを検出する運動検出手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、加速度成分データを静止成分と動き成分とに分離し、静止成分が最大の軸を重力軸として判定し、最大の値を示す動き成分が重力軸以外の軸に対応する場合に、加速度検出手段が各軸のいずれの軸方向に運動したかを検出するため、意図しない振動等による誤判定を低減して、いずれの軸方向に運動したかを簡易な処理で正確に検出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態の運動検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態の運動検出装置に用いられる3軸加速度センサを示す外観斜視図である。
【図3】シェイキングの縦持ち時の左右振りを説明するための図である。
【図4】シェイキングの縦持ち時の前後振りを説明するための図である。
【図5】シェイキングの横持ち時の左右振りを説明するための図である。
【図6】シェイキングの横持ち時の前後振りを説明するための図である。
【図7】シェイキングの縦持ち時の長手方向への振りを説明するための図である。
【図8】シェイキングの横持ち時の長手方向への振りを説明するための図である。
【図9】本実施の形態の運動検出装置における運動検出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図10】本実施の形態の運動検出装置における加速度分離処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図11】3軸加速度センサを水平に置いた状態から重力方向に複数回振ったときの加速度成分データを示す図である。
【図12】図11の加速度成分データをローパスフィルタ処理して得られた静止成分を示す図である。
【図13】図11の加速度成分データから図12の静止成分を減算して得られた動き成分を示す図である。
【図14】本実施の形態の運動検出装置におけるシェイキング検出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図15】(A)加速度成分データ、(B)静止成分、及び(C)動き成分の一例を示す図である。
【図16】本実施の形態におけるシェイキングの検出を説明するための(A)動き成分が先に閾値Thuを超えた場合、及び(B)動き成分が先に閾値Thd未満となった場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態の運動検出装置10は、直交座標系のX軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向の加速度成分を検出して、加速度成分データを出力する3軸加速度センサ12、及び運動検出装置10がどの軸方向に運動したかを検出し、検出された軸方向に応じた検出信号を出力するマイクロコンピュータ14を備えている。
【0016】
3軸加速度センサ12は、図2に示すような直交座標系のX軸、Y軸、及びZ軸の各軸方向の加速度成分を検出して、加速度成分データを出力する。加速度成分データは、その値の符号(”+”か”−”か)で加速度成分の方向を表し、その値の絶対値で加速度成分の大きさを表す。加速度成分の方向は、図2のX軸について、右方向が”+”、左方向が”−”となる。また、同図のY軸について、奥に向かう方向が”+”、手前に向かう方向が”−”となる。また、同図のZ軸について、下方向が”+”、上方向が”−”となる。これにより、X軸+方向、X軸−方向、Y軸+方向、Y軸−方向、Z軸+方向、及びZ軸−方向の6方向の加速度成分を検出することができる。
【0017】
また、3軸加速度センサ12は、図2に示すような向きで静止状態にある場合には、X軸及びY軸については加速度成分データ「0g」、Z軸については加速度成分データ「+1g」を出力する。なお、「g」は、加速度成分データの単位を表す重力加速度である。
【0018】
マイクロコンピュータ14は、運動検出装置10全体の制御を司るCPU20、後述する運動検出プログラム等各種プログラムを記憶した記憶媒体としてのROM22、ワークエリアとしてデータを一時的に格納するRAM24、各種情報が記憶された記憶手段としてのメモリ26、I/O(入出力)ポート28、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。I/Oポート28には、3軸加速度センサ12が接続されている。
【0019】
次に、本実施の形態の運動検出装置10の動作について説明する。本実施の形態では、運動検出装置10をいずれかの軸方向に沿って振った場合に、運動検出装置10がいずれの軸方向に振られたかを検出する。なお、本実施の形態において、このように3軸加速度センサ12のいずれかの軸方向へ運動検出装置10を振ることを「シェイキング」という。
【0020】
図3〜図8を参照して、本実施の形態の運動検出装置10が設けられた携帯電話を用いたシェイキングについて説明する。図3は、携帯電話を縦方向に持った(縦持ち)場合の左右方向のシェイキングである。図4は、縦持ちの場合の前後方向のシェイキングである。図5は、携帯電話を横方向に持った(横持ち)場合の左右方向のシェイキングである。図6は、横持ちの場合の前後方向のシェイキングである。図7は、縦持ちの場合の長手方向へのシェイキングである。図8は、横持ちの場合の長手方向へのシェイキングである。
【0021】
次に、図9を参照して、本実施の形態の運動検出装置10における運動検出処理ルーチンについて説明する。本ルーチンは、ROM22に記憶された運動検出プログラムをCPU20が実行することにより行われる。
【0022】
ステップ100で、加速度成分データを静止成分と動き成分とに分離する加速度分離処理を実行する。ここで、図10を参照して、加速度分離処理ルーチンについて説明する。
【0023】
ステップ120で、3軸加速度センサ12から各軸についての加速度成分データを取得する。取得された加速度成分データの一例を図11に示す。この状態から、どの軸方向に運動検出装置10が振られたかを検出する必要があるが、図中Sで示す箇所(○で囲んだ箇所)では、3軸の加速度成分データの各々が同程度の値を示している点が複数あり、この点においては、どの軸方向に振られたかを検出することが困難となる場合がある。
【0024】
そこで、次に、ステップ122へ移行して、取得した加速度成分データの各々に対して、ローパスフィルタ処理を施す。ローパスフィルタ処理を施したデータを図12に示す。図12に示すように、ローパスフィルタ処理後の加速度成分データは、略「0g」を示すX軸及びY軸と、略「+1g」を示すZ軸とが完全に分離できている。このように、取得された加速度成分データにローパスフィルタ処理を施すことにより抽出されたデータを、加速度成分データの「静止成分」という。
【0025】
次に、ステップ124で、X軸、Y軸、及びZ軸のそれぞれについて、上記ステップ120で取得された加速度成分データから、上記ステップ122で抽出された静止成分のデータを減算する。減算後のデータを図13に示す。このように、取得された加速度成分データからローパスフィルタ処理後のデータを減算することにより抽出されたデータを、加速度成分データの「動き成分」という。この方法により、高度なハイパスフィルタ処理を行わなくても、加速度成分データを簡易な処理で静止成分と動き成分とに分離することができる。
【0026】
次に、図9のステップ102に戻って、加速度分離処理(図10)のステップ122で抽出された静止成分に基づいて、重力方向に対応する軸(以下、「重力軸」という)を判定する。例えば、図12に示すような静止成分が抽出された場合には、Z軸の静止成分が最大の値となる「+1g」を示しているため、Z軸が重力軸であると判定される。
【0027】
次に、ステップ104で、シェイキングを検出するシェイキング検出処理を実行する。ここで、図14を参照して、シェイキング検出処理ルーチンについて説明する。
【0028】
ステップ140で、3軸の各々について、加速度分離処理(図10)のステップ124で抽出された動き成分aを時系列に観測開始する。
【0029】
次に、ステップ142で、いずれかの軸の動き成分aが、予め定めた+方向の閾値Thu、または−方向の閾値Thdのいずれかを超えたか否かを判定する。閾値Thuは所定範囲の上限値であり、閾値Thdは所定範囲の下限値である。なお、ここで閾値Thdに対して「閾値を超える」とは、動き成分aの値が閾値Thd未満になることである。また、運動検出装置10が搭載される電子機器の搭載位置等によって、シェイキングによる動き成分の波形が異なるため、搭載位置等を考慮して、閾値Thu及び閾値Thdはそれぞれ別に設定できるようにしておく。いずれかの動き成分aがいずれかの閾値を超えた場合には、ステップ144へ移行し、いずれも超えない場合には、本ステップの判定を繰り返す。
【0030】
ステップ144では、上記ステップ142でいずれかの閾値を超えたと判定された動き成分aに対応する軸が、図9のステップ102で判定された重力軸以外か否かを判定する。本実施の形態のような運動検出装置10を搭載した携帯電話等を携帯した状態で、乗り物に乗車したり、歩行したり、ランニングしたりすると、その振動により加速度が検出されて、いずれかの軸の動き成分が閾値Thuまたは閾値Thdを超えてしまい、意図しないシェイキングが検出されてしまう場合がある。そこで、乗り物乗車時、歩行時、ランニング時等には、主に重力軸方向への振動が生じることに鑑み、重力軸に対応する動き成分の値が閾値を超えた場合には、意図しない振動によるものであると判定して、シェイキングとして検出しないようにするものである。いずれかの閾値を超えた動き成分aに対応する軸が重力軸以外の場合には、ステップ146へ移行し、重力軸の場合には、シェイキングとして検出することなくステップ142へ戻り、動き成分aの観測を継続する。
【0031】
例えば、3軸加速度センサ12のX軸が重力方向になるように胸ポケットに入れた状態で5回ジャンプした際の加速度成分データを図15(A)に示す。この加速度成分データに対して、加速度分離処理を実行することにより同図(B)に示すような静止成分、及び同図(C)に示すような動き成分が得られる。この静止成分からX軸が重力軸であると判定できる。この場合、X軸の動き成分がいずれかの閾値を超えたことが検出されたとしても、X軸は重力軸であるので、シェイキングとして検出しない。
【0032】
ステップ146では、第1のシェイク時間が所定時間Δt1を超えたか否かを判定する。第1のシェイク時間とは、図16(A)に示すように、動き成分が閾値Thdより先に閾値Thuを超えた場合には、閾値Thuを超えた時点から閾値Thdを超えるまでの時間であり、同図(B)に示すように、動き成分が閾値Thuより先にThdを超えた場合には、閾値Thdを超えた時点から閾値Thuを超えるまでの時間である。また、Δt1は、シェイク無効時間であり、乗り物乗車時、歩行時、ランニング時等には、第1のシェイク時間が通常時より短い傾向にあることに基づいて、第1のシェイク時間がΔt1以下の場合には、シェイキングとして検出しないようにするための所定時間である。第1のシェイク時間がΔt1を超えた場合には、ステップ148へ移行し、Δt1以下の場合には、シェイキングとして検出することなくステップ142へ戻り、動き成分aの観測を継続する。
【0033】
ステップ148では、第2のシェイク時間が所定時間Δt2未満か否かを判定する。第2のシェイク時間とは、図16(A)に示すように、動き成分が閾値Thdより先に閾値Thuを超えた場合には、閾値Thuを超えた時点から閾値Thdを超えた後に所定範囲内の値となるまでの時間であり、同図(B)に示すように、動き成分が閾値Thuより先にThdを超えた場合には、閾値Thdを超えた時点から閾値Thuを超えた後に所定範囲内の値となるまでの時間である。また、Δt2は、シェイク有効時間であり、モーション入力を意図したシェイキングでは、第2のシェイク時間はある程度定まった所定時間内となる傾向が強いが、第2のシェイキング時間がΔt2を超える場合には、乗り物乗車時、歩行時、ランニング時等を含む意図しない運動である可能性が高いため、シェイキングとして検出しないようにするための所定時間である。第2のシェイク時間がΔt2未満の場合には、ステップ150へ移行し、Δt2を超えた場合には、シェイキングとして検出することなくステップ142へ戻り、動き成分aの観測を継続する。
【0034】
なお、第1のシェイク時間及び第2のシェイク時間は、タイマでカウントしてもよいし、シェイク時間内の動き成分aの測定回数から演算してもよい。
【0035】
ステップ150では、第2のシェイク時間内のベクトル積分値が判定閾値ΔThを超えたか否かを判定する。ベクトル積分値は、第2のシェイク時間内に検出された動き成分aの大きさの積分値であり、図16(A)及び(B)に示す斜線部分に相当する。また、ΔThは、乗り物乗車時、歩行時、ランニング時等には、第2のシェイク時間内のベクトル積分値が通常時より小さい傾向にあることに基づいて、第2のシェイク時間内のベクトル積分値がΔTh以下の場合には、シェイキングとして検出しないようにするための判定閾値である。第2のシェイク時間内のベクトル積分値がΔThを超えた場合には、ステップ152へ移行し、ΔTh以下の場合には、シェイキングとして検出することなくステップ142へ戻り、動き成分aの観測を継続する。
【0036】
ステップ152では、上記ステップ142で閾値Thuまたは閾値Thdを超えたと判定された動き成分aに対応する軸方向、第1のシェイク時間、第2のシェイク時間、及び第2のシェイク時間内のベクトル積分値を、シェイキングの検出結果として、所定の記憶領域に一旦記憶する。なお、軸方向は、閾値Thuまたは閾値Thdのいずれの閾値を先に超えたかにより、その軸の+方向の振りか−方向の振りかを判定する。図16(A)に示すように、動き成分aが閾値Thuを先に超えた場合には+方向の振り、同図(B)に示すように、閾値Thdを先に超えた場合には−方向の振りと判定する。
【0037】
次に、図9のステップ106へ戻って、シェイキング検出処理(図14)のステップ152で記憶された検出結果に基づいて検出信号を生成して出力する。
【0038】
例えば、本実施の形態の運動検出装置10を、長手方向上向きにX軸+方向、下向きにX軸−方向、幅方向左向きにY軸+方向、右向きにY軸−方向、厚み方向奥向きにZ軸+方向、手前向きにZ軸−方向となるように携帯電話に設けた場合について説明する。
【0039】
左方向へのシェイキングは音量をアップ、右方向では音量ダウン、前方向ではワンセグのチャンネル変更(戻る)、後方向ではワンセグのチャンネル変更(進む)、下方向ではアドレス帳の次ページへ進む、上方向ではアドレス帳の前ページへ戻る、などのように、種々の操作入力の内容とシェイキングの方向とを対応付けておくことができる。従って、本ステップでは、この対応付けに応じた検出信号を出力する。例えば、検出結果がY軸+方向の場合には、音量アップの操作入力を指示する検出信号が出力される。
【0040】
また、第1のシェイク時間、第2のシェイク時間、及び第2のシェイク時間内のベクトル積分値に対して、判定時間または判定閾値を複数設けて、いずれの判定時間または判定閾値を超えたかにより、操作入力の度合いを示す検出信号を出力するようにしてもよい。例えば、音量のアップダウンを示す検出信号を出力する場合、第1シェイク時間に対して、判定時間としてΔt11及びΔt12(Δt1<Δt11<Δt12)を設定し、シェイク時間がΔt11以下であれば1段階分、Δt11〜Δt12であれば2段階分、Δt12以上であれば3段階分のアップまたはダウンを示す検出信号とすることができる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態の運動検出装置によれば、3軸加速度センサから取得した加速度成分データのローパスフィルタ処理後のデータを静止成分、取得した加速度成分データから静止成分のデータを減算したデータを動き成分として分離し、静止成分が最大の軸を重力軸として判定し、3軸の動き成分のうち最初に閾値Thuまたは閾値Thdを超えた動き成分が重力軸以外であれば、シェイキングとして検出するための処理を行うため、乗り物乗車時、歩行時、ランニング時等に生じやすい重力方向の意図しない振動による誤判定を低減して、いずれの軸方向にシェイキングされたかを簡易な処理で正確に検出することができる。
【0042】
また、意図しない振動による動き成分の変化か、シェイキングとして検出されるべき動き成分の変化かを、第1のシェイク時間、第2のシェイク時間、第2のシェイク時間内のベクトル積分値を用いて判定するため、重力軸の判定の精度が低い場合でも、意図しない振動による誤判定を低減することができる。
【0043】
なお、上記実施の形態では、シェイキングとして検出するか否かの判定として、重力軸か否かの判定、第1のシェイク時間による判定、第2のシェイク時間による判定、第2のシェイク時間内のベクトル積分値による判定の全てを行う場合について説明したが、重力軸か否かの判定だけを行うようにしてもよいし、重力軸か否かの判定と、第1のシェイク時間による判定、第2のシェイク時間による判定、第2のシェイク時間内のベクトル積分値による判定の少なくとも1つとを組み合わせて行うようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態では、3軸加速度センサとマイクロコンピュータとが一体となった場合について説明したが、3軸加速度センサのみを電子機器内に設け、マイクロコンピュータを電子機器の外部に設けるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 運動検出装置
12 3軸加速度センサ
14 マイクロコンピュータ
20 CPU
22 ROM
24 RAM
26 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用する加速度の三次元直交座標系の各軸の加速度成分の各々を検出して、加速度成分データの各々を出力する加速度検出手段と、
前記加速度検出手段から出力された加速度成分データの各々を、ローパスフィルタ処理して得られた静止成分と、前記加速度成分データの各々から前記静止成分の各々を除いた動き成分とに分離する分離手段と、
前記分離手段で分離された静止成分が最大となる軸を重力軸と判定する重力軸判定手段と、
前記分離手段で分離された最大の値を示す動き成分に対応する軸が、前記重力軸判定手段により判定された重力軸以外の軸である場合に、前記最大の値を示す動き成分に基づいて、前記加速度検出手段が前記各軸のいずれの軸方向に運動したかを検出する運動検出手段と、
を含む運動検出装置。
【請求項2】
前記運動検出手段は、前記分離手段により分離された動き成分の各々のうち、0を含む所定範囲の上限値を最初に超えた動き成分、または最初に前記所定範囲の下限値未満となった動き成分を、前記最大の値を示す動き成分として検出する請求項1記載の運動検出装置。
【請求項3】
前記運動検出手段は、前記最大の値を示す動き成分が、前記下限値未満となるより先に前記上限値を超えた場合には、前記上限値を超えた時点から前記下限値未満となるまでの時間、前記上限値を超えるより先に前記下限値未満となった場合には、前記下限値未満となった時点から前記上限値を超えるまでの時間を第1の時間として検出し、該第1の時間が予め定めた第1の閾値を超える場合に、前記加速度検出手段が前記最大の値を示す動き成分に対応する軸方向に運動したことを検出する請求項2記載の運動検出装置。
【請求項4】
前記運動検出手段は、前記第1の時間に基づいて、運動の大きさを検出する請求項3記載の運動検出装置。
【請求項5】
前記運動検出手段は、前記最大の値を示す動き成分が、前記下限値未満となるより先に前記上限値を超えた場合には、前記上限値を超えた時点から前記下限値未満となった後に前記所定範囲内の値となるまでの時間、前記上限値を超えるより先に前記下限値未満となった場合には、前記下限値未満となった時点から前記上限値を超えた後に前記所定範囲内の値となるまでの時間を第2の時間として検出し、該第2の時間が予め定めた第2の閾値未満の場合に、前記加速度検出手段が前記最大の値を示す動き成分に対応する軸方向に運動したことを検出する請求項2〜請求項4のいずれか1項記載の運動検出装置。
【請求項6】
前記運動検出手段は、前記第2の時間に基づいて、運動の大きさを検出する請求項5記載の運動検出装置。
【請求項7】
前記運動検出手段は、前記最大の値を示す動き成分が、前記下限値未満となるより先に前記上限値を超えた場合には、前記上限値を超えた時点から前記下限値未満となった後に前記所定範囲内の値となるまでの時間内の前記動き成分の大きさの積分値、前記上限値を超えるより先に前記下限値未満となった場合には、前記下限値未満となった時点から前記上限値を超えた後に前記所定範囲内の値となるまでの時間内の前記動き成分の大きさの積分値が、予め定めた第3の閾値を超える場合に、前記加速度検出手段が前記最大の値を示す動き成分に対応する軸方向に運動したことを検出する請求項2〜請求項6のいずれか1項記載の運動検出装置。
【請求項8】
前記運動検出手段は、前記動き成分の大きさの積分値に基づいて、運動の大きさを検出する請求項7記載の運動検出装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の運動検出装置を備えた電子機器。
【請求項10】
加速度検出手段により、前記加速度検出手段に作用する加速度の三次元直交座標系の各軸の加速度成分の各々を検出して、加速度成分データの各々を出力し、
前記加速度検出手段から出力された加速度成分データの各々を、ローパスフィルタ処理して得られた静止成分と、前記加速度成分データの各々から前記静止成分の各々を除いた動き成分とに分離し、
分離された静止成分が最大となる軸を重力軸と判定し、
分離された最大の値を示す動き成分に対応する軸が、重力軸以外の軸である場合に、前記最大の値を示す動き成分に基づいて、前記加速度検出手段が前記各軸のいずれの軸方向に運動したかを検出する
運動検出方法。
【請求項11】
コンピュータを、
作用する加速度の三次元直交座標系の各軸の加速度成分の各々を検出して、加速度成分データの各々を出力する加速度検出手段から出力された加速度成分データの各々を取得する取得手段、
前記取得手段で取得された加速度成分データの各々を、ローパスフィルタ処理して得られた静止成分と、前記加速度成分データの各々から前記静止成分の各々を除いた動き成分とに分離する分離手段、
前記分離手段で分離された静止成分が最大となる軸を重力軸と判定する重力軸判定手段、及び
前記分離手段で分離された最大の値を示す動き成分に対応する軸が、前記重力軸判定手段により判定された重力軸以外の軸である場合に、前記最大の値を示す動き成分に基づいて、前記加速度検出手段が前記各軸のいずれの軸方向に運動したかを検出する運動検出手段
として機能させるための運動検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−98254(P2012−98254A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248536(P2010−248536)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】