説明

運動計測装置

【課題】消費電力を極力低減することができると共に、身体の動きが生じると同時に計測を開始して、計測の空白期間を生じさせることなく高精度に運動量を計測すること。
【解決手段】身体に作用する物理量を検出する運動センサ20と、該運動センサによる測定結果に基づいて、運動強度を演算する演算手段21と、該演算手段による演算結果を記憶する記憶手段25と、本体表面に設けられ、演算手段による演算結果を表示する表示部4と、身体が動いたときに、所定以上の振動を機械的に検出する振動センサ22と、該振動センサが振動を検出したときに、運動センサに電力を供給するように電源制御を行う電源制御手段24を備えている運動計測装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が身体の一部、例えば、手首に装着することで、運動量や歩行時或いは走行時の歩数や消費エネルギー等を計測することができる運動計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歩行動作に伴う振動を検出し、振動の回数を歩数としてカウントして表示したり、歩数から消費エネルギーを算出して表示したりする歩数計や、さらに細かく運動の状況を監視したりする健康管理のための各種の装置が、従来より数多く知られている。その1つとして、歩行に伴う振動の検出に加速度センサを使用した装置が知られている。この装置では、一般的に、身体の動作が不規則であるがゆえに、加速度センサに電力を常に供給して身体の動きのモニタリングを行い、動作状態の判断を行っている。
【0003】
ところが、常に加速度センサに電力を供給しているので、消費電力が大きく、電力効率の悪いものであった。そこで、このような不具合を解消するために、低消費電力化を図った装置が知られている。例えば、加速度センサを低消費電力化のために、常時駆動するのではなく、間欠的に駆動するようにした歩数計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−143048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の装置では以下の課題がまだ残されている。
即ち、特許文献1に記載されている歩数計は、加速度センサの駆動(センシング)を間欠的に行うことで消費電力の低減を図っているが、動いていないときや装着していないときであっても、加速度センサを間欠的に作動させている。そのため、無駄に電力を消費してしまい、依然として電力消費の無駄があった。また、間欠動作の合間に身体動作が起きてしまった場合には、計測できない空白期間が生じる可能性もあった。
【0005】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、消費電力を極力低減することができると共に、身体の動きが生じると同時に計測を開始して、計測の空白期間を生じさせることなく高精度に運動量を計測することができる運動計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明の運動計測装置は、本体と、該本体の下面を生体表面側に向けた状態で、該本体を身体に装着する固定手段と、前記身体に作用する物理量を検出する運動センサと、該運動センサによる測定結果に基づいて、運動強度を演算する演算手段と、該演算手段による演算結果を記憶する記憶手段と、前記本体表面に設けられ、前記演算手段による演算結果を表示する表示部と、前記身体が動いたときに、所定以上の振動を機械的に検出する振動センサと、該振動センサが振動を検出したときに、前記運動センサに電力を供給するように電源制御を行う電源制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
この発明に係る運動計測装置においては、まず、本体の下面を生体表面、即ち、皮膚側に向けた状態で、該本体を固定手段によって身体に装着する。この状態で体を動かして身体に所定以上の振動が発生すると、振動センサが該振動を検出してその旨を電源制御手段に出力する。なお、ほとんど体が動いていない静止状態では、振動センサは振動を検出しない。
一方、電源制御手段は、振動が検出されると同時に運動センサに電力を供給する。これにより、運動センサは、身体に作用する各種の物理量、例えば、加速度や角速度等の検出を始めると共に、検出結果を演算手段に出力する。演算手段は、送られてきた検出結果に基づいて、運動強度の演算を行う。また、この運動強度は、記憶手段に記憶されると共に表示部に表示される。
【0008】
これにより、使用者は現在の運動強度を容易に確認でき、運動量や身体状態の監視を行うことができる。特に、振動センサが所定の以上の振動を検出したときだけ、運動センサが作動するので、使用者が静止しているときには無駄な計測を行わない。そのため、消費電力の低減化を図ることができる。また、体が動いたと同時に運動センサによる計測を開始するので、従来のものとは異なり、計測の空白時間が発生することがない。そのため、体を動かした全ての状態で計測を行えるので、高精度に運動量を計測でき、計測の信頼性を向上することができる。
なお、振動センサは、単に振動したか否かを機械的に検出、例えば、ボールの転がり等により検出するだけであるので、加速度センサ等の運動センサに比較して僅かな(無視できる程度の)検出用の電流を供給するだけで済む。そのため、消費電力に多大な影響を与えることはない。
【0009】
上述したように、本発明に係る運動計測装置によれば、消費電力を極力低減することができると共に、身体の動きが生じると同時に計測を開始して、計測の空白期間を生じさせることなく高精度に運動量を計測することができる。
【0010】
また、本発明の運動計測装置は、上記本発明の運動計測装置において、前記本体の下面に設けられた少なくとも一対の電極を有し、該一対の電極間の電位差に基づいて本体が前記生体表面に接触しているか否かを検出する接触検出手段を備え、前記電源制御手段が、前記接触検出手段が非接触と判断したときに、前記運動センサ及び前記振動センサへの電力を遮断するように電源制御を行うことを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係る運動計測装置においては、本体を身体に装着すると、一対の電極が生体表面に接触し、該生体表面を通して放電が行われる。これにより、電極間の電位が低下する。よって、接触検出手段は、一対の電極間の電位差を検出することで、本体が身体に装着しているか否かを正確に検出することができる。
【0012】
なお、電極は、一対でなくとも良く、例えば、複数の電極を備えて、これら各電極の電位差に基づいて接触の有無を検出しても構わない。また、心電位検出手段は、一対の電極間の電位差を監視しているだけであるので、加速度センサ等の運動センサに比較して僅かな(無視できる程度の)検出用の電流を一対の電極に供給するだけで済む。そのため、振動センサと同時に消費電力に多大な影響を与えることはない。
【0013】
また、電源制御手段は、接触検出手段が非接触と判断したときに、運動センサ及び振動センサへの電力を遮断させる。つまり、使用者が本体を身体から取り外した場合には、自動的に運動センサ及び振動センサへの電力供給が停止する。よって、取り外された本体に対して、仮に何らかの原因により振動が伝わったとしても、無駄に作動することがない。よって、さらなる消費電力の低減化を測ることができると共に、誤動作を防止でき、計測結果の信頼性を向上することができる。
【0014】
また、本発明の運動計測装置は、上記本発明の運動計測装置において、前記電源制御部が、前記接触検出手段が接触と判断したときに、前記振動センサに電力を供給するように電源制御を行うことを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係る運動計測装置においては、接触検出手段が接触したと判断したときに、電源制御手段が振動センサに電力の供給を行って、振動検出待機状態にする。これにより、仮にこれ以降、使用者が静止状態であったとしても、確実に静止状態の開始時間をカウントすることができる。よって、本体を装着してから、使用者の静止時間(例えば、座って静かにしている時間等)と動作時間(動き回って何らかの作業をしている時間等)とを、明確に区別することができる。その結果、本体を装着している間の、使用者の活発度を調べることもできる。このように、より多角的な計測を行うことができ、計測種類のバリエーションを増すことができる。
【0016】
また、本発明の運動計測装置は、上記本発明のいずれかの運動計測装置において、前記本体の下面に設けられて前記生体表面に接触する第1の電極と、前記本体に設けられて指を接触可能な第2の電極とを有し、心電位を検出する心電位検出手段を備え、前記演算手段が、前記心電位に基づいて心拍数を演算し、前記電源制御手段が、前記振動センサと同じタイミングで前記心電位検出手段に電力を供給することを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る運動計測装置においては、まず、本体を身体に装着した時点で、第1の電極が生体表面に接触した状態となっている。また、振動センサが振動を検知し、電力が供給されたと同時に、心電位検出手段にも電力が供給される。そして、使用者が心拍数の計測を希望する場合には、本体に設けられた第2の電極に指を接触させる。これにより、心臓を間に挟んだ状態で閉回路が構成された状態になるので、心電位検出手段がそのときの心電位を検出できる。そして、演算手段が、この心電位から心拍数の演算を行う。また、この心拍数は、運動強度と同時に記憶手段に記憶されると共に表示部に表示される。
【0018】
このように、使用者は必要な時に簡単に指を第2の電極に触れて、心拍数の確認を行える。特に、両電極による心電位に基づいて心拍数を計測するので、体動ノイズの影響を受けることなく、運動中であっても高精度に心拍数を計測することができる。よって、使用者は、運動中であっても自身の心拍数を正確に把握することができる。また、使用者が第2の電極に触れたときだけ心拍数を測定するので、消費電力を極力抑えることができる。
【0019】
また、表示部には、心拍数と共に上述した運動強度も表示されるため、使用者は現在の運動量(運動負荷)が適正であるか否かを判断することができる。例えば、他人と同じ運動を行っているが、心拍数が高いので自分にとっては運動量が高く負荷が大きい運動である等、客観的に判断することができる。このように、運動強度と心拍数とを関係付けながら、身体状態を監視することができる。また、演算された運動強度及び心拍数は、記憶手段に記憶されているので、過去の身体状態を確認することも可能である。
【0020】
また、本発明の運動計測装置は、上記本発明のいずれかの運動計測装置において、前記振動センサが、常閉式であり、所定以上の振動が作用したときの接点の開信号により振動を検知することを特徴とするものである。
【0021】
この発明に係る運動計測装置においては、振動センサが常閉式であり、所定以上の振動が作用したときの接点の開信号で振動を検知するので、振動を高精度に検出でき、誤検出を防止することができる。そのため、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0022】
また、本発明の運動計測装置は、上記本発明のいずれかの運動計測装置において、前記振動センサが、常開式であり、所定以上の振動が作用したときの接点の閉信号により振動を検知することを特徴とするものである。
【0023】
この発明に係る運動計測装置においては、振動センサが常開式であり、所定以上の振動が作用したときの接点の閉信号で振動を検知するので、静止状態では、微弱な振動検出用の電流でさえも流れることはない。よって、さらなる消費電力化を図ることができる。
【0024】
また、本発明の運動計測装置は、上記本発明のいずれかの運動計測装置において、前記本体が、前記固定手段によって腕に装着可能とされた腕時計型であることを特徴とするものである。
【0025】
この発明に係る運動計測装置は、固定手段によって本体を手首(腕)に装着でき、腕時計のように使用することができるので、装着後の違和感や圧迫感がなく、長時間(例えば一日中)装着しても疲れない。よって、使用者の負担を低減することができると共に、長時間に亘る計測を容易に行える。
【0026】
また、本発明の運動計測装置は、上記本発明のいずれかの運動計測装置において、前記本体が、内部への液体の侵入を防止する水密構造とされていることを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係る運動計測装置においては、本体が水密構造とされているので、使用者が水の中にいたとしても、計測を行うことができる。例えば、水泳中や入浴中であっても、計測を行うことができる。このように使用範囲を広げることができ、使い易さが向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る運動計測装置によれば、さらなる消費電力の削減を図ることができると共に、身体の動きが生じると同時に計測を開始して、計測の空白期間が生まることなく高精度に運動量を計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る運動計測装置の第1実施形態を、図1から図6を参照して説明する。本実施形態の運動計測装置1は、腕時計型のものであって、手首(腕)に装着した状態で、運動強度や心拍数を計測するものである。この運動計測装置1は、図1から図3に示すように、各種の電子部品を内蔵したハウジング(本体)2と、ハウジング2の下面を生体表面側、即ち、皮膚側に向けた状態でハウジング2を手首に装着する固定手段3とを備えている。
【0030】
ハウジング2は、プラスチックやアルミニウム等の金属材料からなり、所定の厚みを持って、例えば、上面視略長方形状に形成されている。この際、ハウジング2は、適宜図示しないOリングやシール等によって内部に液体が侵入しないようになっている。つまり、水密構造とされている。
また、ハウジング2の表面には、後述する演算手段21による演算結果を始めとする各種の情報を表示する表示部4と、使用者が演算条件や判断条件等の各種のデータを入力可能な複数のボタン5、6からなる入力手段7と、使用者が指を接触可能な心電位計測用のタッチ電極(第2の電極)8とが設けられている。
【0031】
また、ハウジング2の側面には、表示部4の内部に組み込まれたライト4aをON/OFF操作するライトボタン9が設けられており、ハウジング2の下面には、皮膚に常に接触する心電位計測用の下面電極(第1の電極)10が設けられている。この下面電極10と上記タッチ電極8とで、心電位を検出する心電位検出手段11を構成している。
【0032】
上記固定手段3は、ハウジング2に基端側が取り付けられて手首に装着可能な第1のバンド15及び第2のバンド16を有している。第1のバンド15及び第2のバンド16は、ハウジング2の長手方向に、該ハウジング2を挟んで対向するように設けられている。また、両バンド15、16は、伸縮自在な弾性材料により形成されている。
第1のバンド15には、先端にバックル15a及びタング15bが取り付けられている。また、第2のバンド16には、タング15bが挿入される挿入孔16aが該第2のバンド16の長手方向に沿って複数形成されている。これにより、使用者の手首の太さに応じて第1のバンド15及び第2のバンド16の長さを調整することができるようになっている。これにより、ハウジング2を装着している間、下面電極10を確実に皮膚に接触させることができるようになっている。
【0033】
また、ハウジング2内には、図4に示すように、ハウジング2に作用する3軸方向にベクトルを持った加速度(物理量)を検出する3軸加速度センサ(運動センサ)20と、該3軸加速度センサ20により検出された各方向の加速度をスカラ量に変換すると共に、該スカラ量に基づいて運動強度を演算する演算手段21と、手首(身体)が動いたときに、所定以上の振動を機械的に検出する振動センサ22と、該振動センサ22が所定以上の振動を検出したときに、上記3軸加速度センサ20を有する主要回路部23に電力を供給するように電源制御を行う電源制御手段24と、演算手段21による演算結果を記憶するメモリ(記憶手段)25と、演算手段21から出力された信号を受信したときに音声を出力する音声出力部26とが内蔵されている。
また、上記演算手段21は、運動強度の演算を行うと共に、心電位検出手段11により検出された心電位に基づいて心拍数を演算するようになっている。
【0034】
また、ハウジング2内には、通常の運動計測機能を果たす上記主要回路部23と、上記電源制御手段24を有する体動検出回路部27とが内蔵されている。
主要回路部23は、演算手段21及びメモリ25の他、計測時間を計る計時手段30及び計測データ保存手段31からなる制御回路32を有している。この制御回路32には、複数のボタン5、6からなる入力手段7、表示部4、ライトボタン9でON/OFF操作されるライト4a及び音声出力部26が接続されている。また、制御回路32には、3軸加速度センサ20で検出された加速度データが、増幅手段33及びA/D変換手段34を介して入力されると共に、心電位検出手段11で検出された心電位データが、フィルタ手段35、増幅手段36及び上記A/D変換手段34を介して入力されるようになっている。なお、増幅手段36の増幅率は、増幅率設定手段37により適宜に調整されるようになっている。
【0035】
3軸加速度センサ20は、3次元、即ち、3軸(X・Y・Z)方向の加速度を検出するもので、例えば、ピエゾ抵抗型の3軸加速度センサである。特に、ピエゾ抵抗効果を利用して検出するタイプのものは、近年、マイクロマシニング技術により、信号増幅回路やA/D変換回路、温度補償回路まで含めて、ワンパッケージの小型薄型モジュールとして安価に市場に提供されている。また、その検出原理は、例えば、上面にピエゾ抵抗素子を有する薄いシリコンの梁(ビーム)によって錘を支え、加速度によって錘が動いた時の、ピエゾ抵抗素子の抵抗変化に基づいて加速度を検出するというものである。
【0036】
本実施形態の運動計測装置1は、運動センサとして上記3軸加速度センサ20のみを使用し、角速度センサ等の他のセンサは全く使用していない。また、心電位検出手段11は、タッチ電極8及び下面電極10により、心臓の活動に伴って発生する微小な起電力を、R−R間隔(心室が収縮する間隔)で計測することで、心電位の検出を行っている。
【0037】
また、本実施形態の運動計測装置1は、演算手段21が演算された心拍数が予め設定された範囲内であるか否かを判断すると共に、範囲外であると判断したときに、その旨を音声により報知するように音声出力部26に信号を出力するようになっている。
【0038】
上記体動検出回路部27は、図4及び図5に示すように、電源部40、振動センサ22、インバータ41、信号平滑化手段42及び電源制御手段24から構成されており、振動センサ22が所定以上の振動を検出したときだけ、3軸加速度センサ20を有する主要回路部23への電源をONにするようになっている。また、主要回路部23の電源がONすることで、振動センサ22の作動タイミングと心電位検出手段11の作動タイミングが同期するようになっている。
【0039】
この振動センサ22は、通常時に閉回路(ノーマルクローズ)、即ち、常閉式のものであり、所定以上の振動が作用したときの接点の開信号によって振動を検知するように、体動検出回路部27に組み込まれている。
具体的に説明すると振動センサ22は、図6に示すように、一定の間隔を空けた状態で対向配置された、凹部を有する一対の電極部材45と、この状態を維持したまま一対の電極部材45を固着する成形絶縁物46と、該成形絶縁物46と一対の電極部材45とで形成される空室47内に転動自在に収納された2個の導電性球体48とを備えている。
【0040】
2個の導電性球体48は、静止状態ではその姿勢に関わらず常に互いに接触した状態で、一対の電極部材45の内面にも接触するようになっている。これにより、一対の電極部材45は、導電性球体48を介して相互に導通状態となっている。そして、身体を動かして振動が伝わると、2個の導電性球体48が空室47内で互いに擦れながら転動する。これにより、一対の電極部材45と導電性球体48との間の接点が、導通、非導通を繰り返すようなっている。
その結果、振動センサ22を流れる電流は、波形が乱れた状後でインバータ41に入力する。ここで、インバータ41は、一定のレベル以下の電流をカットすると共にチャタリング信号に変換している。これにより、所定以上の振動以外による電流の乱れをカットしている。また。インバータ41を通過したチャタリング信号は、信号平滑化手段42によって安定した信号になり、電源制御手段24に入力する。
【0041】
次に、上述した運動計測装置1により、使用者の手首に装着された状態で運動強度及び心拍数を計測する場合について説明する。
まず、使用者の手首を巻回するように両バンドを巻き、手首の太さに応じて第1のバンド15のタング15bを第2のバンド16の挿入孔16a内に挿入して、ハウジング2を手首に装着する。これにより、下面電極10を確実に皮膚に接触させることができる。
【0042】
この状態の後、使用者がほとんど動かず静止している場合には、2個の導電性球体48が動かないので、振動センサ22が振動を検出せず、主要回路部23に電源が入らない。また、僅かに動いたことによって、2個の導電性球体48が転動して電流の波形が若干乱れたとしても、インバータ41でカットされる。このように、所定以上の振動以外では、主要回路部23に電源が入らない。
【0043】
一方、ハウジング2を装着後、何らかの運動を行った場合には、2個の導電性球体48が空室47内で激しく転動して電流が乱れる。この乱れた電流は、インバータ41を通過した後、チャタリング信号となって信号平滑化手段42を介して電源制御手段24に入力する。電源制御手段24は、この信号を受けて主要回路部23に電力を供給して作動させる。つまり、3軸加速度センサ20及び心電位検出手段11が、作動を開始する。但し、心電位検出手段11に関しては、タッチ電極8に触れるまで待機状態となっている。
【0044】
作動した3軸加速度センサ20は、手首に作用する各方向(XYZ方向)の加速度を検出して、増幅手段33に送る。増幅手段33は、この各方向の加速度を処理し易い大きさに増幅した後、A/D変換手段34に出力する。A/D変換手段34は、増幅された各方向の加速度をデジタル信号に変換して、3次元(X、Y、Z)データを生成する。また、A/D変換手段34は、生成した3次元データを演算手段21に出力する。
【0045】
演算手段21は、送られてきた3次元データをスカラ量に変換し、該スカラ量を適宜所定処理しながら運動強度を演算する。この演算された運動強度は、メモリ25に記憶されると共に表示部4に表示される。これにより、使用者は現在の運動強度を容易に確認することができ、運動量や身体状態の監視を行うことができる。
特に、振動センサ22が所定以上の振動を検出したときだけ、3軸加速度センサ20が作動するので、使用者が静止しているときには無駄な計測を行わない。そのため、消費電力の低減化を図ることができる。また、体が動いたと同時に3軸加速度センサ20による計測を開始するので、従来のものとは異なり、計測の空白時間が発生することがない。そのため、体を動かした全ての状態で計測を行えるので、高精度に運動量を計測でき、計測の信頼性を向上することができる。
【0046】
また、ハウジング2は、腕時計タイプであるので、違和感なく装着することができる。よって、長時間(例えば、1日中)装着したとしても、不快感や拘束感を感じることなく、連続的な計測を容易に行うことができる。
なお、振動センサ22は、単に振動したか否かを機械的に検出だけであるので、従来の加速度センサ等と比較して、僅かな(無視できる程度の)検出用の電流を供給するだけで済む。そのため、消費電力に多大な影響を与えることはない。
【0047】
一方、心拍数を測定する場合には、使用者はハウジング2のタッチ電極8に指先を接触させる。これにより、心臓を間に挟んだ閉回路が構成された状態になるので、心電位検出手段11がこのときの心電位を検出できる。そして、心電位検出手段11は、検出した心電位をフィルタ手段35に出力する。フィルタ手段35は、検出した心電位をフィルタ処理して余分な信号を取り除いた後、増幅手段36に出力する。増幅手段36は、心電位を処理し易い大きさに増幅した後、A/D変換手段34に出力する。A/D変換手段34は、増幅された心電位をデジタル信号に変換して、心電位データを生成した後、演算手段21に出力する。
そして、演算手段21が、送られてきた心電位データをR−R間隔で計測すると共に、1分間の心拍数に換算する。換算された心拍数は、運動強度と共にメモリ25に記憶されると共に表示部4に表示される。
【0048】
これにより、使用者は、心拍数を確認することができる。特に、ハウジング2が腕時計タイプであるので、使用者は必要なときに簡単に指をタッチ電極8に触れて心拍数の確認を行える。また、下面電極10及びタッチ電極8による心電位に基づいて心拍数を計測するので、光電脈波を検出するものとは異なり、体動ノイズの影響を受けることなく、運動中であっても高精度に心拍数を計測することができる。よって、使用者は、運動中であっても自身の心拍数を正確に把握することができる。また、使用者がタッチ電極8に触れたときだけ心拍数の計測を行うので、消費電力を極力抑えることができる。
【0049】
また、表示部4には、心拍数と共に上述した運動強度も表示されるため、使用者は現在の運動量(運動負荷)が適正であるか否かを判断することができる。例えば、他人と同じ運動を行っているが、心拍数が高いので自分にとっては運動量が高く負荷が大きい運動である等、客観的に判断することができる。このように、運動強度と心拍数とを関係付けながら、身体状態を監視することができ、運動負荷が個々人に適しているか否かの評価を簡単に行うことができる。また、演算された運動強度及び心拍数は、メモリ25に記憶されているので、過去の身体状態を確認することも可能である。
【0050】
また、演算手段21は、演算した心拍数が予め設定された範囲内であるか否かを判断して、範囲外であると判断したときに音声主力部に信号を出力する。音声出力部26は、この信号を受けて音を鳴らしてその旨を使用者に知らせて報知する。これにより、使用者は現在の運動がどの程度心臓に負荷をかけているかを速やかに知ることができる。
【0051】
上述したように本実施形態の運動計測装置1によれば、消費電力を極力低減することができると共に、身体の動きが生じると同時に計測を開始して、計測の空白期間を生じさせることなく高精度に運動量及び心拍数を計測することができる。なお、使用者が予め入力手段7により、様々な演算条件及び判断条件のパラメータ、例えば、年齢、性別や体重等の個人データを入力しておくことで、より正確な運動強度の演算も可能となる。
【0052】
また、振動センサ22が、振動を高精度に検出するので誤検出を防止することができる。また、ハウジング2が、腕時計タイプであるので、装着後の違和感や圧迫感がなく、長時間(例えば、一日中)装着しても疲れない。よって、使用者の負担を低減することができると共に、長時間に亘る計測を容易に行える。また、ハウジング2が水密構造とされているので、使用者が水泳中や入浴中であっても、計測を行うことができる。よって、使用範囲を広げることができ、使いや易さが向上する。
【0053】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る運動計測装置の第2実施形態を、図7及び図8を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第2実施形態では、第1実施形態の構成に加え、ハウジング2が装着されたか否かを検出する接触検出手段を付加した点である。
【0054】
即ち、本実施形態の運動計測装置50は、図7及び図8に示すように、ハウジング2の下面に設けられた少なくとも一対の電極51、52を有し、該一対の電極51、52間の電位差に基づいてハウジング2が皮膚に接触しているか否かを検出する接触検出手段53を備えている。なお、本実施形態では、一対の電極51、52のうち、一方の電極51が、第1実施形態で示した下面電極10の役割も果たす共通電極となっている。また、一方の電極51と他方の電極52との間は、楕円状に形成された絶縁体54によって電気的に絶縁した状態となっている。
【0055】
また、本実施形態の電源制御手段24は、接触検出手段53が非接触と判断したときに、3軸加速度センサ20及び振動センサ22への電力を遮断するように電源制御を行うと共に、接触検出手段53が接触と判断したときに、振動センサ22に電力を供給するように電源制御を行うようになっている。
【0056】
このように構成された運動計測装置50においては、ハウジング2を手首に装着すると、一対の電極51、52が皮膚に接触するので、皮膚を通じて放電が行われる。これにより、一対の電極51、52間の電位が低下する。よって、接触検出手段53は、一対の電極51、52間の電位を検出することで、ハウジング2が装着されたか否かを正確に検出することができる。
なお、心電位検出手段11は、一対の電極51、52間の電位差を監視しているだけであるので、3軸加速度センサ20と比較して僅かな(無視できる程度の)検出用の電流を一対の電極51、52に供給するだけで済む。そのため、振動センサ22と同様に、消費電力に多大な影響を与えることはない。
【0057】
また、電源制御手段24は、接触検出手段53が非接触と判断したときに、3軸加速度センサ20を有する主要回路部23及び振動センサ22への電力を遮断する。つまり、使用者がハウジング2を手首から取り外した場合には、自動的に主要回路部23及び振動センサ22への電力供給が停止する。よって、取り外されたハウジング2に対して、仮に何らかの原因により振動が伝わったとしても、無駄に作動することがない。よって、さらなる消費電力の低減化を図ることができると主に、誤動作を防止でき、計測結果の信頼性を向上することができる。
【0058】
更に、電源制御手段24は、接触検出手段53が接触したと判断したときに振動センサ22に電力の供給を行って、振動検出待機状態にする。これにより、仮にこれ以降、使用者が静止状態であったとしても、確実に静止状態の開始時間をカウントすることができる。よって、ハウジング2を装着してから、使用者の静止時間(例えば、座って静かにしている時間等)と動作時間(動き回って何らかの作業をしている時間等)とを、明確に区別することができる。その結果、ハウジング2を装着している間の、使用者の活発度を調べることもできる。このように、より多角的な計測を行うことができ、計測種類のバリエーションを増すことができる。
【0059】
なお、本実施形態では、一方の電極51が、心電位検出用の電極(第1実施形態における下面電極10)を兼ねた共通電極であるので、電極数を極力減らすことができ、構成の簡略化を図ることができる。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0061】
例えば、上記各実施形態では、常閉式の振動センサ22を使用した場合を説明したが、この場合に限られず、例えば、図9に示すように、所定以上の振動が作用したときの接点の閉信号により振動を検知する常開式の振動センサ60を使用して、体動検出回路61を構成しても構わない。このように常開式の振動センサ60を使用することにより、静止状態では、微弱な振動検出用の電流でさえも流れることがないので、より無駄な消費電力を減らすことができる。
【0062】
また、上記各実施形態では、運動センサとして3軸加速度センサを例にして説明したが、3軸加速度センサに限られず、単なる加速度センサでも構わないし、角速度センサでも構わない。また、振動センサは、上述した例に限定されるものではなく、機械的に振動を検出できるものであれば構わない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の係る運動計測装置の第1実施形態を示す、全体外観図である。
【図2】図1に示す運動計測装置のハウジング周辺を、斜め上方から見た外観図である。
【図3】図1に示す運動計測装置のハウジング周辺を、斜め下方から見た外観図である。
【図4】図1に示すハウジング内の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示す振動センサを有する体動検出回路部の構成図である。
【図6】図5に示す振動センサの断面図である。
【図7】本発明の係る運動計測装置の第2実施形態を示す図であって、ハウジング周辺を斜め下方から見た外観図である。
【図8】図7に示すハウジング内の概略構成を示すブロック図である。
【図9】常開式の振動センサを有する体動検出回路部の構成図である。
【符号の説明】
【0064】
1、50 運動計測装置
2 ハウジング(本体)
3 固定手段
8 タッチ電極(第2の電極)
10 下面電極(第1の電極)
11 心電位検出手段
20 3軸加速度センサ(運動センサ)
21 演算手段
22、60 振動センサ
24 電源制御手段
25 メモリ(記録手段)
51、52 一対の電極
53 接触検出手段







【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
該本体の下面を生体表面側に向けた状態で、該本体を身体に装着する固定手段と、
前記身体に作用する物理量を検出する運動センサと、
該運動センサによる測定結果に基づいて、運動強度を演算する演算手段と、
該演算手段による演算結果を記憶する記憶手段と、
前記本体表面に設けられ、前記演算手段による演算結果を表示する表示部と、
前記身体が動いたときに、所定以上の振動を機械的に検出する振動センサと、
該振動センサが振動を検出したときに、前記運動センサに電力を供給するように電源制御を行う電源制御手段を備えていることを特徴とする運動計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運動計測装置において、
前記本体の下面に設けられた少なくとも一対の電極を有し、該一対の電極間の電位差に基づいて本体が前記生体表面に接触しているか否かを検出する接触検出手段を備え、
前記電源制御手段は、前記接触検出手段が非接触と判断したときに、前記運動センサ及び前記振動センサへの電力を遮断するように電源制御を行うことを特徴とする運動計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の運動計測装置において、
前記電源制御部は、前記接触検出手段が接触と判断したときに、前記振動センサに電力を供給するように電源制御を行うことを特徴とする運動計測装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の運動計測装置において、
前記本体の下面に設けられて前記生体表面に接触する第1の電極と、前記本体に設けられて指を接触可能な第2の電極とを有し、心電位を検出する心電位検出手段を備え、
前記演算手段は、前記心電位に基づいて心拍数を演算し、
前記電源制御手段は、前記振動センサと同じタイミングで前記心電位検出手段に電力を供給することを特徴とする運動計測装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の運動計測装置において、
前記振動センサは、常閉式であり、所定以上の振動が作用したときの接点の開信号により振動を検知することを特徴とする運動計測装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の運動計測装置において、
前記振動センサは、常開式であり、所定以上の振動が作用したときの接点の閉信号により振動を検知することを特徴とする運動計測装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の運動計測装置において、
前記本体は、前記固定手段によって腕に装着可能とされた腕時計型であることを特徴とする運動計測装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の運動計測装置において、
前記本体は、内部への液体の侵入を防止する水密構造とされていることを特徴とする運動計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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