説明

運用監視システム、エージェントマシンの階層化方法およびプログラム

【課題】サブマネージャマシンを必要とせず、適切な構成でネットワーク上の管理情報の収集を行うことを可能とする運用監視システム等を提供する。
【解決手段】本発明に係る運用監視システム1は、相互に接続された少なくとも1台のマネージャマシン11と複数台のエージェントマシン12とで構成され、エージェントマシンが、ネットワークの運用に係る情報である管理情報を収集する管理情報収集手段125と、下位のエージェントマシンから管理情報を受信して上位に転送する情報転送手段124と、運用監視システムを構成する全てのエージェントマシンのIPアドレスを記憶する構造記憶手段122と、既存のエージェントマシンに対して情報伝達系統の情報伝達系統に空きがあるか否かを問い合わせてこの情報伝達系統で自らがどこに参加するかを決定した後にこの情報伝達系統に参加する参加部位処理手段121とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンピュータネットワークの運用監視システムに関し、特にそのような運用監視システムを構成するエージェントマシンの動作に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ同士を相互に接続してデータ通信を行うコンピュータネットワーク(以後単にネットワークという)は、既に企業活動のみならず社会全体の根幹をなす重要なインフラの一つとなっている。当然、ネットワークに発生するトラブルは、その企業もしくは組織の活動にとって大きな障害となるので、そのようなトラブルが発生しないよう、ネットワーク全体に対して適切な方法で常時監視を行う必要がある。
【0003】
ネットワークの管理において特に、資産管理やセキュリティ情報管理、稼動統計情報の収集などのような、情報伝達にリアルタイム性が必ずしも必須要件ではなく、ある程度の周期的なタイムスパンを持つ情報を、ここでは管理情報という。これらの情報は、ネットワークのトラブルの発生を未然に防ぎ、またパフォーマンスの低下を抑制する意味で、適切な方法で収集され、また分析されることが必要である。
【0004】
このため、ネットワークの管理情報を収集する従来の運用監視システムでは、管理情報の収集および分析の機能を担う専用または他の機能と兼用のコンピュータを、ネットワーク上に配置している。このようなコンピュータを、マネージャマシンという。そして、ネットワーク上で管理情報を収集してマネージャマシンに送付する機能を担う専用または他の機能と兼用のコンピュータを、エージェントマシンという。
【0005】
このような管理情報の収集に関連する技術文献として、次の各々がある。特許文献1には、情報を配信する際の遅れを抑制するため、複数のクライアントが階層構造の仮想ネットワークを形成するという情報配信方法が記載されている。特許文献2には、複数の無線センサーノードがバケツリレー方式で収集した情報を転送するという無線ネットワークが記載されている。
【0006】
特許文献3には、マネージャマシンにかかる負荷を軽減するため、その機能の一部をエージェントマシンが代行するというネットワーク管理システムが記載されている。特許文献4には、無線タグから情報を収集するリーダライタで、上位マネージャから必要な制御ロジックを入手して複数の多くのプロトコルに対応するというネットワーク管理システムが記載されている。
【0007】
特許文献5には、ネットワーク管理システムにおいて統合マネージャモジュールおよびサブマネージャモジュールを上位ネットワークから転送して動作させるという管理システムが記載されている。特許文献6および7には、ネットワークにサブマネージャを配置して階層化して管理する階層型ネットワーク管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−260244号公報
【特許文献2】特開2005−223497号公報
【特許文献3】特開2001−109686号公報
【特許文献4】特開2005−341444号公報
【特許文献5】特開平11−331160号公報
【特許文献6】特許3521955号公報
【特許文献7】特許3877557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ただし、マネージャマシンもネットワークに接続されたコンピュータである以上、エージェントマシンから受信できる管理情報の分量には物理的に限界がある。より具体的には、たとえば多数のエージェントマシンから同時に管理情報を送信された場合などで、ネットワークの同時接続限界を超えることがある。
【0010】
そのため、特許文献5〜7に示した技術では、ネットワークを階層化し、マネージャマシンとエージェントマシンとの間にサブマネージャマシンと呼ばれるコンピュータを配置している。これによって、ネットワークの同時接続限界などのような物理的な限界を超えることなく、多数のエージェントマシンから管理情報を収集できるようにしている。
【0011】
しかしながら、サブマネージャマシンを設けて階層化する方式では、一つのネットワーク内に多数のサブマネージャマシンを設ける必要がある。このため、単純にコストの増大となるばかりか、サブマネージャマシンをネットワーク上のどこに何台設けるかについて、当該ネットワークの性能状況などに応じて判断して決定する必要があったので、そのためのノウハウや手間も必要となる。このようなサブマネージャマシンを設けることによる問題点を解決しうる技術は、上記の特許文献1〜7のいずれにも記載されていない。
【0012】
本発明の目的は、サブマネージャマシンを必要とせず、ネットワークの同時接続限界などのような物理的な限界を超えることのない適切な構成でネットワーク上の管理情報の収集を行うことを可能とする運用監視システム、エージェントマシンの階層化方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る運用監視システムは、ネットワークを介して相互に接続された少なくとも1台のマネージャマシンと複数台のエージェントマシンとで構成される運用監視システムであって、複数台のエージェントマシンが予め定められた数の情報収集単位を構成し、この情報収集単位がネットワークを介してピラミッド状の情報伝達系統を構築すると共に、情報伝達系統の最上位にマネージャマシンが位置する構成とし、各エージェントマシンが、情報収集単位でネットワークの運用に係る他のエージェントマシンからの情報である管理情報を収集する管理情報収集手段と、情報伝達系統を構成する全てのエージェントマシンのIPアドレスおよび情報伝達系統における階層の順位を記憶する構造記憶手段と、情報伝達系統でより下位の情報を記憶したエージェントマシンから管理情報を受信して、自らの管理情報収集手段が収集した管理情報と共に情報伝達系統のより上位に転送する情報転送手段と、情報伝達系統に新たに参加しようとする際に既存のエージェントマシンに対して情報伝達系統の情報伝達系統に空きがあるか否かを問い合わせてこの情報伝達系統で自らがどこに参加するかを決定した後にこの情報伝達系統に参加する参加部位処理手段とを有することを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るエージェントマシンの階層化方法は、少なくとも1台のマネージャマシンおよび複数台の同種のエージェントマシンをネットワークを介して相互に接続し、エージェントマシンが予め定められた数の情報収集単位を構成し、この情報収集単位がピラミッド状の情報伝達系統を構築すると共に、情報伝達系統の最上位にマネージャマシンが位置する構成の情報伝達系統を構成する運用監視システムにあって、全てのエージェントマシンが情報伝達系統を構成する全てのエージェントマシンのIPアドレスおよび情報伝達系統における階層の順位をあらかじめ記憶し、情報伝達系統に新たに参加しようとするエージェントマシンが他のエージェントマシンに対して情報伝達系統に空きがあるか否かを問い合わせ、この問い合わせに対する他のエージェントマシンからの返答に応じてこの情報伝達系統で自らがどこに参加するかを決定してこの情報伝達系統に参加し、情報収集単位でネットワークの運用に係る他のエージェントマシンからの情報である管理情報を収集し、情報伝達系統でより下位のエージェントマシンから管理情報を受信し、受信した管理情報と自らが収集した管理情報とを合わせて情報伝達系統のより上位に転送することを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係るエージェントマシンの階層化プログラムは、少なくとも1台のマネージャマシンおよび複数台の同種のエージェントマシンをネットワークを介して相互に接続し、エージェントマシンが予め定められた数の情報収集単位を構成し、この情報収集単位がピラミッド状の情報伝達系統を構築すると共に、情報伝達系統の最上位にマネージャマシンが位置する構成の情報伝達系統を構成しており、かつエージェントマシンが情報伝達系統を構成する全てのエージェントマシンのIPアドレスおよび情報伝達系統における階層の順位をあらかじめ記憶している運用監視システムにあって、情報伝達系統に新たに参加しようとするエージェントマシンが他のエージェントマシンに対して情報伝達系統に空きがあるか否かを問い合わせる手順と、この問い合わせに対する他のエージェントマシンからの返答に応じてこの情報伝達系統で自らがどこに参加するかを決定してこの情報伝達系統に参加する手順と、情報収集単位でネットワークの運用に係る他のエージェントマシンからの情報である管理情報を収集する手順と、情報伝達系統でより下位のエージェントマシンから管理情報を受信する手順と、受信した管理情報と自らが収集した管理情報とを合わせて情報伝達系統のより上位に転送する手順とをエージェントマシンが有するコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述したように、多数のエージェントマシンが自律的にピラミッド状の情報伝達系統を形成するように構成したので、サブマネージャマシンを設けなくても物理的な限界を超えずに管理情報を収集でき、かつ構成を決定する手間を省くこともできる。これによって、サブマネージャマシンを必要とせず、適切な構成でネットワーク上の管理情報の収集を行うことが可能であるという、優れた特徴を持つ運用監視システム、エージェントマシンの階層化方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る運用監視システムの、ソフトウェアの動作における構成を示す説明図である。
【図2】図1に示した運用監視システムの物理的なネットワーク構成を示す説明図である。
【図3】図1〜2に示したマネージャマシンおよびエージェントマシンとして機能するコンピュータ装置のハードウェアとしての構成を示す説明図である。
【図4】図1〜2に示した運用監視システムにおける情報収集単位間の関連について示す説明図である。
【図5】図1〜4に示したエージェントマシンが行う、管理情報を収集および送信する動作について示すフローチャートである。
【図6】図1〜4に示したエージェントマシンが行う、下位単位から管理情報を受信して上位単位に送信する動作について示すフローチャートである。
【図7】図1〜4に示した運用監視システムに新しくエージェントマシンが追加される際に、新しく追加されるエージェントマシンが行う動作について示すフローチャートである。
【図8】図1〜4に示した運用監視システムに新規エージェントマシンが追加された際に、図7のステップS302の問い合わせに反応して既存エージェントマシンの空き応答部が行う動作について示すフローチャートである。
【図9】図1〜4に示した運用監視システムに新規エージェントマシンが追加された際に、図7のステップS305の問い合わせに反応して既存エージェントマシンの空き応答部が行う動作について示すフローチャートである。
【図10】図3に示した運用監視システムで、エージェントマシンの構造テーブルの記憶内容について示す説明図である。
【図11】図3に示した運用監視システムで、マネージャマシンの構造テーブルの記憶内容について示す説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る運用監視システムのソフトウェアの動作における構成を示す説明図である。
【図13】図12に示したエージェントマシンが行う、管理情報を収集および送信する動作について示すフローチャートである。
【図14】図13のステップS607および609で延べた、収集した情報を上位単位に送信する際の動作の詳細について示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態の構成について添付図1に基づいて説明する。
最初に、本実施形態の基本的な内容について説明し、その後でより具体的な内容について説明する。
本実施形態に係る運用監視システム1は、ネットワーク10を介して相互に接続された少なくとも1台のマネージャマシン11と複数台のエージェントマシン12とで構成される運用監視システムであり、複数台のエージェントマシンが予め定められた数の情報収集単位を構成し、この情報収集単位がネットワークを介してピラミッド状の情報伝達系統を構築し、情報伝達系統の最上位にマネージャマシンが位置するという構成である。各々のエージェントマシン12は、情報収集単位でネットワークの運用に係る他のエージェントマシンからの情報である管理情報を収集する管理情報収集手段125と、情報伝達系統を構成する全てのエージェントマシンのIPアドレスおよび情報伝達系統における階層の順位を記憶する構造記憶手段122と、情報伝達系統でより下位の情報を記憶したエージェントマシンから管理情報を受信して、自らの管理情報収集手段が収集した管理情報と共に情報伝達系統のより上位に転送する情報転送手段124と、情報伝達系統に新たに参加しようとする際に既存のエージェントマシンに対して情報伝達系統の情報伝達系統に空きがあるか否かを問い合わせてこの情報伝達系統で自らがどこに参加するかを決定した後にこの情報伝達系統に参加する参加部位処理手段121とを有する。
【0019】
ここで、エージェントマシンの情報転送手段124は、情報伝達系統においてより上位の情報収集単位に属するエージェントマシンのいずれかに管理情報を転送する。
【0020】
また、参加部位処理手段121は、既存のエージェントマシンに対して情報伝達系統の情報収集単位に空きがあるか否かを問い合わせる空き問い合わせ部121aと、他のエージェントマシンからの問い合わせに対して応答する空き応答部121bと、問い合わせに対して情報収集単位に空きがある旨の応答があった場合に自らが所属する情報収集単位を決定してこの情報収集単位に参加する構成決定部121cと、問い合わせに対して情報収集単位に空きがある旨の応答がなかった場合に情報収集単位を新規に作成してこの情報収集単位に参加する情報収集単位作成部121dとを有する。
【0021】
この空き問い合わせ部121aは、情報収集単位作成部が情報収集単位を新規に作成した後で、既存のエージェントマシンに対して情報伝達系統において情報収集単位の下位に所属できる情報収集単位の数である下位収容数に空きがあるか否かを問い合わせる機能を有し、空き応答部121bはこの下位収容数に空きがあるか否かの問い合わせに対して応答する機能を有し、さらに構成決定部121cは下位収容数に係る問い合わせに対して応答があった情報収集単位の下位に参加する機能を有する。
【0022】
さらに、エージェントマシン12は情報収集単位に属する各々のエージェントマシンによって収集された管理情報を集約する情報集約手段123を有する。この情報集約手段は、情報収集単位に属する各々のエージェントマシンによって収集された管理情報を集約する情報集約部123aと、情報収集単位の中で管理情報の集約を担当するエージェントマシンである集約担当エージェントを決定する集約担当決定部123bとを有する。そして情報転送手段124は、情報伝達系統においてより下位のエージェントマシンから管理情報を受信する情報受信部124bと、情報受信部が管理情報を受信した場合に、自らの属する情報収集単位において集約担当エージェントが決定していればその集約担当エージェントに管理情報を転送する情報転送部124aとを有する。
【0023】
そしてマネージャマシン11は、エージェントマシンから管理情報を受信して解析する管理情報解析手段111と、エージェントマシンからの単位構成数および下位収容数に空きがあるか否かについての問い合わせに対して応答する参加部位処理手段112と、運用監視システムを構成する全てのエージェントマシンのIPアドレスを記憶する構造記憶手段113とを有する。
【0024】
以上の構成を備えることにより、本実施形態は、多数のエージェントマシンが自律的にピラミッド状の情報伝達系統を形成し、サブマネージャマシンを設けなくても物理的な限界を超えずに管理情報を収集でき、かつ構成を決定する手間を省くことが可能となる。
以下、これをより詳細に説明する。
【0025】
図2は、本発明の実施形態に係る運用監視システム1の物理的なネットワーク構成を示す説明図である。運用監視システム1は、通常のコンピュータネットワーク10(以後単にネットワーク10という)に、後述する複数のコンピュータが接続されて構成される。ネットワーク10には、原則として1台のマネージャマシン11と、マネージャマシン11によって管理される対象となる複数台のエージェントマシン12(以後これらを総称して、単にエージェントマシン12という)が相互に接続される。また図1の中で、ネットワーク10に新たに接続され、運用監視システム1に新しく参加しようとしているエージェントマシンを、特に新規エージェントマシン12aという(詳細は後述)。
【0026】
ネットワーク10の物理的な構成(いわゆるネットワークトポロジ)は、運用監視システム1に参加するマネージャマシン11および全てのエージェントマシン12が相互に通信可能であれば、どのようなものでもよい。
【0027】
図3は、図2に示したマネージャマシン11およびエージェントマシン12として機能するコンピュータ装置20のハードウェアとしての構成を示す説明図である。コンピュータ装置20は、コンピュータプログラムを実行する主体となるプロセッサ21と、コンピュータプログラムおよびデータを記憶する記憶手段22と、データの入出力を行う入出力手段23と、ネットワーク10を介して他のコンピュータ装置とのデータ通信を行う通信手段24とを備える。
【0028】
以後、マネージャマシン11が備えているプロセッサ21および記憶手段22を、各々プロセッサ21mおよび記憶手段22mという。また、エージェントマシン12が備えているプロセッサ21および記憶手段22を、各々プロセッサ21aおよび記憶手段22aという。
【0029】
図1は、図2に示したマネージャマシン11およびエージェントマシン12の、ソフトウェアの動作における構成を示す説明図である。エージェントマシン12は全て同一の構成を備えているので、図1には1台のみを詳細に表記し、他は簡略化した表記にしている。
【0030】
マネージャマシン11が備えるプロセッサ21では、管理情報解析手段111、参加部位処理手段112、構造記憶手段113といった各機能部が、コンピュータプログラムとして動作する。以後これらを総称してマネージャプログラムという。また、マネージャマシン11が備える記憶手段22には、構造テーブル114が記憶される。
【0031】
管理情報解析手段111は、エージェントマシン12から転送されてきた全ての管理情報を受信し、解析してその結果をネットワーク管理者などに対して出力する。参加部位処理手段112は、後述するエージェントマシン12からの単位構成数および下位収容数に空きがあるか否かについての問い合わせに対して応答する機能を有する。構造記憶手段113は、運用監視システム1を構成する全てのエージェントマシン12のIPアドレスを構造テーブル114に記憶する。
【0032】
エージェントマシン12が備えるプロセッサ21では、参加部位処理手段121、構造記憶手段122、情報集約手段123、情報転送手段124、管理情報収集手段125といった各機能部が、コンピュータプログラムとして動作する。以後これらを総称してエージェントプログラムという。また、エージェントマシン12が備える記憶手段22には、構造テーブル126が記憶される。以上で述べたマネージャプログラムおよびエージェントプログラムの各機能部の動作について、より詳しくは後述する。
【0033】
エージェントマシン12の各々で動作するエージェントプログラムは、他のエージェントマシン12で動作するエージェントプログラムと相互に連携して動作する。相互に連係して動作するエージェントマシン12のグループを情報収集単位という。また、1つの情報収集単位を構成するエージェントマシン12の台数を単位構成数という。単位構成数の取り得る最大値を最大単位構成数という。
【0034】
図4は、図1〜2に示した運用監視システム1における情報収集単位間の関連について示す説明図である。この図からわかるように、1つの情報収集単位の下には、下位に属する情報収集単位が存在する。情報収集単位はピラミッド状のヒエラルキーを構成しており、そのヒエラルキーの最上位にマネージャマシン11が位置する。各々の情報収集単位で収集された管理情報は、より上位の情報収集単位に送信され、最終的にはマネージャマシン11に運用監視システム1における全ての管理情報が集約され、解析される。
【0035】
以後、エージェントマシン12の属する情報収集単位より1段階上位の情報収集単位を、上位単位という。またエージェントマシン12の属する情報収集単位より1段階下位の情報収集単位を、下位単位という。1つの情報収集単位の1段階下位に位置することのできる下位単位の数を下位収容数といい、下位収容数の取り得る最大値を最大下位収容数という。
【0036】
本実施形態では、図3および図4で示すように最大単位構成数=4、最大下位収容数=3である例を示している。ただし、ヒエラルキーにおいて最下位の情報収集単位では、最大下位収容数=0となる。最大単位構成数および最大下位収容数は、構造テーブル114および126に記憶される。これについても詳細は後述する。
【0037】
ここでいう管理情報とは、たとえば資産管理やセキュリティ情報管理、稼動統計情報の収集などのような、情報伝達にリアルタイム性が特に要求されない情報である。そして、図4に示すヒエラルキーは、ネットワーク10の物理的なネットワークトポロジとは特に関係なく決定することができる。
【0038】
ここでいう情報収集単位についてさらに説明する。マネージャマシン11の直下には、U1、U2、U3という3つの情報収集単位が存在する。情報収集単位U1の下位単位はU11、U12、U13である。情報収集単位U2の下位単位はU21、U22、U23である。情報収集単位U3の下位単位はU31、U32、U33である。そして、情報収集単位U11の下位単位はU111、U112、U113である。以後同様に、n=最大下位収容数(本明細書で示す例では3)、かつiは1≦i≦nである任意の自然数として、「上位単位名の末尾にiを付ける」という命名規則で、U121〜U333の各々の情報収集単位が存在する。
【0039】
なお図4では、マネージャマシン11の直下を第1階層、第1階層の直下を第2階層、第2階層の直下を第3階層として定義している。また図面の錯綜を回避するため、第2〜第3階層については情報収集単位内のエージェントマシン12についての表記を省略し、また第3階層についてはU121〜U323の情報収集単位についての表記を省略している。また、運用監視システム1のヒエラルキーがとりうる最大の階層数を、最大階層数という。本実施形態では、最大階層数=3である例を示している。
【0040】
最大単位構成数、最大下位収容数、最大階層数は、デフォルト値がマネージャマシン11の構造テーブル114に記憶されている。これらのデフォルト値は、たとえばネットワークの同時接続限界や、管理情報の収集において許容しうる遅延時間などのような種々の物理的な限界値に応じて決定することができる。
【0041】
これに応じて、各々のエージェントマシン12が情報収集単位を新たに作成する際、自らの情報収集単位における最大単位構成数および最大下位収容数を決定する。通常はマネージャマシン11に記憶されたデフォルト値をそのまま使用するが、作成される情報収集単位の階層数が最大階層数に達している場合は、この情報収集単位に下位単位が従属することはできないので、最大下位収容数=0となる。また必要に応じて、デフォルト値とは異なる最大単位構成数および最大下位収容数を設定することもできる。
【0042】
図1に示したマネージャマシン11で、管理情報解析手段111は、エージェントマシン12から送信される管理情報を受信し、解析する。参加部位処理手段112は、新規に参加しようとするエージェントマシン12からの後述する空き問い合わせに応答する。構造記憶手段113は、管理情報解析手段111によって解析された最新の運用管理システム1内の単位の階層構造と、単位内のエージェントマシン12のIPアドレスと、前述の最大単位構成数、最大下位収容数、最大階層数のデフォルト値を、構造テーブル114に記憶する。
【0043】
図1に示したエージェントマシン12で、参加部位処理手段121は、空き問い合わせ部121a、空き応答部121b、構成決定部121c、および情報収集単位作成部121dを有する。空き問い合わせ部121aは、エージェントマシン12が新規に運用監視システム1に参加する際に、単位構成数および下位収容数に空きがあるか否かについて、既に運用監視システム1に参加しているエージェントマシン12に問合せする。
【0044】
空き応答部121bは、新規に参加しようとするエージェントマシン12の空き問い合わせ部121aからの問い合わせに応答する。構成決定部121cは、その応答に反応して、自らが運用監視システム1のどこに所属するかを決定する。
【0045】
情報収集単位作成部121dは、新規に所属できる情報収集単位がない場合に、新たに自らが所属する情報収集単位を作成する。この際に、前述したようにマネージャマシン11に記憶されている最大単位構成数、最大下位収容数、最大階層数のデフォルト値に応じて、新たに作る情報収集単位の最大単位構成数および最大下位収容数を決定して構造テーブル126に記憶する。
【0046】
構造記憶手段122は、各エージェントプログラムにおいて自単位内、収容する下位単位内、上位単位内の全てのエージェントマシンのIPアドレスを構造テーブル126に記憶する。
【0047】
情報集約手段123は、情報集約部123aおよび集約担当決定部123bを有する。情報集約部123aは、情報収集単位内における管理情報の集約、他エージェントから送付された管理情報の集約、および管理情報の集約が完了した場合の他エージェントへの通知を行う。集約担当決定部123bは後述する集約担当エージェントの決定に関わる動作を行う。
【0048】
情報転送手段124は、情報転送部124aおよび情報受信部124bを有する。情報転送部124aは、集約された管理情報または他エージェントから転送された管理情報を上位単位に転送する。情報受信部124bは、下位単位から転送された情報を受信する。管理情報収集手段125は、運用管理システム1内の管理情報を収集する。
【0049】
1つの情報収集単位の中で、実際には後述の動作によって決定される1台のエージェントマシン12(これを集約担当エージェントという)が、管理情報を収集し、下位から転送されてきた管理情報と共に上位に転送する。
【0050】
図5は、図1〜4に示したエージェントマシン12が行う、管理情報を収集および送信する動作について示すフローチャートである。ここでいう管理情報の収集は、たとえば1日に1度、もしくは1週間に一度などのような所定の日時に、運用管理システム1内のエージェントマシン12がある程度同時期に収集を行う。
【0051】
設定された日時になると、エージェントマシン12の管理情報収集手段125が、自らのエージェントマシン12内の管理情報を収集し(ステップS101)、収集完了すると情報集約手段123の情報集約部123aが同一情報収集単位内にある他の全てのエージェントマシン12に完了通知を発行すると共に(ステップS102)、同一情報収集単位内の他のエージェントマシン12が完了通知を発行しているか否かを判断する(ステップS103)。
【0052】
同一情報収集単位で他のエージェントマシン12が既に完了通知を発行している、即ち自分がその情報収集単位の中で最初に管理情報の収集を完了したエージェントマシン12でない場合は(ステップS103:YES)、既に集約担当エージェントが決定していることになるので、情報集約部123aはその集約担当エージェントに自らの収集した管理情報を送付して処理を完了する(ステップS104)。
【0053】
同一情報収集単位で既に完了通知を発行しているエージェントマシン12が存在しない、即ち自分がその情報収集単位の中で最初に管理情報の収集を完了したエージェントマシン12である場合は(ステップS103:NO)、集約担当決定部123bが自らを集約担当エージェントとして、その旨を同一情報収集単位内の他のエージェントマシン12に通知する(ステップS105)。
【0054】
ここで、全く同時に収集が完了したなどの理由でステップS105の通知が重複した場合は、該当するエージェントマシン12の情報集約手段123間で調整を行ない、1つの情報収集単位内での集約担当エージェントを必ず1つのみに絞り込む。集約担当エージェントとなったエージェントマシン12で、情報集約手段123は、情報収集単位内の他のエージェントマシン12、および下位単位からの管理情報を収集し、収集された情報を上位単位に送信する機能を担う。
【0055】
情報集約部123aは、情報収集単位内の他のエージェントマシン12、および下位単位からの管理情報が全て集まったか否かを判断し(ステップS106)、全て集まった場合は情報転送手段124にそれらを上位単位に送信させて処理を完了する(ステップS107)。その際、送信先となるエージェントマシンは上位単位内のいずれのエージェントマシン12でもよく、必ずしも集約担当エージェントである必要はない。
【0056】
ステップS106で管理情報が全て集まっていない場合は、情報集約部123aは所定の制限時間、他のエージェントマシン12および下位単位から管理情報が届くのを待ち合わせ、制限時間が経過していなければステップS107に戻って処理を継続する(ステップS108)。制限時間を経過してもなお収集できていない管理情報がある場合、ここまでで収集済みである情報と、収集できていない管理情報が存在する旨のエラー情報を情報転送手段124に上位単位に送信させて処理を完了する(ステップS109)。このエラー情報には、管理情報を収集できていないエージェントマシン12もしくは下位単位の箇所を特定する情報を含む。
【0057】
図6は、図1〜4に示したエージェントマシン12が行う、下位単位から管理情報を受信して上位単位に送信する動作について示すフローチャートである。前述のように、下位単位から管理情報を受信するエージェントマシン12は、必ずしもその情報収集単位で集約担当エージェントであるとは限らない。そこで、情報受信部124bが下位単位から管理情報を受信すると(ステップS201)、情報転送部124aはまず自らの情報収集単位で集約担当エージェントが確定しているか否かを判断する(ステップS202)。
【0058】
ステップS202で、集約担当エージェントが確定していれば、情報転送部124aがその集約担当エージェントに管理情報を転送して処理を終了する(ステップS203)。この場合、自身が集約担当エージェントである可能性もあるが、その場合は情報集約手段123が受信した管理情報に対して、図5に示した処理を行う。集約担当エージェントが確定していなければ、ステップS202に戻り(ステップS204)、集約担当エージェントが確定するのを待ち合わせる。それまで、収集した下位単位から受信した管理情報は保持する。
【0059】
図7は、図1〜4に示した運用監視システム1に新しくエージェントマシン12が追加される際に、新しく追加されるエージェントマシン12が行う動作について示すフローチャートである。ここで、運用監視システム1に新しく追加されるエージェントマシンを新規エージェントマシン12a、運用監視システム1に既に参加しているエージェントマシンを既存エージェントマシン12bという。
【0060】
新規エージェントマシン12aの空き問い合わせ部121aは、情報収集単位内に空きがある、即ち単位構成数が最大単位構成数に達していない情報収集単位が存在するか否かを、全ての既存エージェントマシン12bに問い合わせる(ステップS301)。この問い合わせは、ブロードキャスト通信などの手段を利用して、運用監視システム1で通信可能な範囲全体に対して行う。
【0061】
空き問い合わせ部121aは、この問い合わせに対して所定の時間内に空き応答があったか否かを判断して(ステップS302)、空き応答があった場合は構成決定部121cによってその情報収集単位に参加する(ステップS303)。この際、空き応答部121bは、新たに情報収集単位に参加した新規エージェントマシン12aに対して、運用監視システム1に属する全ての既存エージェントマシン12bのIPアドレス一覧を送信する。
【0062】
新規エージェントマシン12aの構成決定部121cは、このIPアドレス一覧を受信して、構造記憶手段122を介して構造テーブル126に記憶する。また、既存エージェントマシン12bの構成決定部121cも、新規エージェントマシン12aのIPアドレスを構造記憶手段122を介して構造テーブル126に記憶する。ここで、複数の情報収集単位から空き応答があった場合には、たとえばより上位の情報収集単位に参加するなどのような優先順位をあらかじめ決めておいて、構成決定部121cがその優先順位に基づいてどの情報収集単位に参加するかを決定するようにしてもよい。
【0063】
ステップS302で問い合わせに対して所定の時間内に空き応答がなかった場合は、通信可能な範囲内に空きのある情報収集単位が1つもないと判断できる(ステップS302:NO)。そこで情報収集単位作成部121dは、自ら(新規エージェントマシン12a)のために新たな情報収集単位を作成する(ステップS304)。そして、空き問い合わせ部121aは、下位収容数に空きがある、即ち下位収容数が最大下位収容数に達していない情報収集単位が存在するか否かを、ステップS301と同様に運用監視システム1で通信可能な範囲全体の既存エージェントマシン12bに問い合わせる(ステップS305)。
【0064】
構成決定部121cは、この問い合わせに対して所定の時間内に空き応答があったか否かを判断して(ステップS306)、空き応答があった場合はその情報収集単位の下位に参加する(ステップS307)。この場合、既存エージェントマシン12bの空き応答部121bは、新たな情報収集単位を作成した新規エージェントマシン12aに対して、自らの単位および上位単位に属する全ての既存エージェントマシン12bのIPアドレス一覧を送信する。
【0065】
新規エージェントマシン12aおよび既存エージェントマシン12bの構成決定部121cは、このIPアドレス一覧を受信して、構造記憶手段122を介して構造テーブル126に記憶する。ここで、複数の情報収集単位から空き応答があった場合には、たとえばより上位の情報収集単位の直下に参加するなどのような優先順位をあらかじめ決めておいて、構成決定部121cがその優先順位に基づいてどの情報収集単位に参加するかを決定するようにしてもよい。
【0066】
ステップS306で問い合わせに対して所定の時間内に空き応答がなかった場合は、通信可能な範囲内に下位収容数に空きのある情報収集単位が1つもないと判断できる(ステップS306:NO)。この場合は、運用管理システム1のヒエラルキーの最上位に位置するマネージャマシン11の直下に、情報収集単位作成部121dがステップS304で作成した新たな情報収集単位が属することとなる(ステップS308)。
【0067】
図8は、図1〜4に示した運用監視システム1に新規エージェントマシン12aが追加された際に、図7のステップS302の問い合わせに反応して既存エージェントマシン12bの空き応答部121bが行う動作について示すフローチャートである。新規エージェントマシン12aから、図7のステップS302に示した単位内の空きの有無についての問い合わせがあった場合に(ステップS401)、空き応答部121bは自らの情報収集単位について構造テーブル126を参照して、単位構成数が最大単位構成数に達しているか否かを判断する(ステップS402)。達していれば特に何もせずに処理を終了する。達していなければ、空き応答を返信して処理を終了する(ステップS403)。
【0068】
図9は、図1〜4に示した運用監視システム1に新規エージェントマシン12aが追加された際に、図7のステップS305の問い合わせに反応して既存エージェントマシン12bの空き応答部121bが行う動作について示すフローチャートである。新規エージェントマシン12aから、図7のステップS305に示した下位収容数の空きの有無についての問い合わせがあった場合に(ステップS451)、空き応答部121bは下位収容数について構造記憶手段122を参照して、下位収容数が最大下位収容数に達しているか否かを判断する(ステップS452)。達していれば特に何もせずに処理を終了する。達していなければ、空き応答を返信して処理を終了する(ステップS453)。
【0069】
図10は、図3に示した運用監視システム1で、エージェントマシン12の構造テーブル126の記憶内容について示す説明図である。エージェントマシン12の構造テーブル126には、運用監視システム1に属する自らを除く全てのエージェントマシン12の分類126a、単位名126b、マシン名126c、IPアドレス126d、および自らの情報収集単位での最大下位収容数および最大単位構成数の設定値126eが記憶されている。
【0070】
分類126aには、そのエージェントマシン12が自らと同一の情報収集単位に属していることを示す「自単位」、自らと同一ではないが同一レベルの情報収集単位に属していることを示す「同位」、自らよりも上位の情報収集単位に属していることを示す「上位」、自らよりも下位の情報収集単位に属していることを示す「下位」、以上のうちいずれかのデータが入る。
【0071】
単位名126bは、図4で説明した情報収集単位の名称が入る。マシン名126cおよびIPアドレス126dは、そのエージェントマシン12のマシン名およびIPアドレスが入る。
【0072】
図11は、図3に示した運用監視システム1で、マネージャマシン11の構造テーブル114の記憶内容について示す説明図である。マネージャマシン11の構造テーブル114には、単位名114a、マシン名114b、IPアドレス114cが記憶されている。これらは各々、エージェントマシン12の構造テーブル126の単位名126b、マシン名126c、IPアドレス126dに対応する。
【0073】
また、マネージャマシン11の構造テーブル114には、これに加えて運用監視システム1全体における最大下位収容数、最大単位構成数、および最大階層数のデフォルト設定値114dも記憶されている。
【0074】
通常は、情報収集単位作成部121dが新たに情報収集単位を作成する際(図7のステップS304)、エージェントマシン12での最大下位収容数および最大単位構成数の設定値126eは、マネージャマシン11のデフォルト設定値114dに従って決定される。しかしながら、階層数が最大階層数に達している情報収集単位では最大下位収容数=0となる。これ以外でも、各々の情報収集単位で必要に応じて、最大下位収容数および最大単位構成数について独自の設定値126eを設定することができる。
【0075】
(第1の実施形態の全体的な動作)
次に、上記の実施形態の全体的な動作について説明する。本実施形態に係る方法は、少なくとも1台のマネージャマシンおよび複数台の同種のエージェントマシンをネットワークを介して相互に接続し、エージェントマシンが予め定められた数の情報収集単位を構成し、この情報収集単位がピラミッド状の情報伝達系統を構築すると共に、情報伝達系統の最上位にマネージャマシンが位置する構成の情報伝達系統を構成する運用監視システムにあって、全てのエージェントマシンが情報伝達系統を構成する全てのエージェントマシンのIPアドレスおよび情報伝達系統における階層の順位をあらかじめ記憶し、情報伝達系統に新たに参加しようとするエージェントマシンが他のエージェントマシンに対して情報伝達系統に空きがあるか否かを問い合わせ(図7:ステップS301)、この問い合わせに対する既存のエージェントマシンからの返答に応じてこの情報伝達系統で自らがどこに参加するかを決定した後にこの情報伝達系統に参加し(図7:ステップS302〜303)、情報収集単位でネットワークの運用に係る他のエージェントマシンからの情報である管理情報を収集し(図5:ステップS101)、情報伝達系統でより下位のエージェントマシンから管理情報を受信し(図5:ステップS106)、受信した管理情報と自らが収集した管理情報とを合わせて情報伝達系統のより上位に転送する(図5:ステップS107)。
【0076】
ここで、上記各動作ステップについては、これをコンピュータで実行可能にプログラム化し、これらを前記各ステップを直接実行するコンピュータであるエージェントマシンに実行させるようにしてもよい。
この構成および動作により、本実施形態は以下のような効果を奏する。
【0077】
本実施形態では、エージェントマシンが自律的にピラミッド状の情報伝達系統を形成して運用監視システムを構成する。従って、従来技術にあったサブマネージャマシンを設けなくても物理的な限界を超えずに管理情報を収集でき、かつ構成を決定する手間を省くこともできる。
【0078】
さらに、エージェントマシンが多くなり、運用監視システムの規模が大きくなる場合にも、同じようにエージェントマシンが自律的にピラミッド状の情報伝達系統を形成するので、運用監視システムに拡大する際にかかる管理者の負担を軽減することができる。管理者はただ、新たなエージェントマシンにエージェントプログラムをインストールして、そしてネットワークに接続するだけでよい。
【0079】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、既に説明した第1の実施形態に加えて、さらに情報転送手段が、情報伝達系統においてより上位のエージェントマシンへの管理情報の転送が正常に行えない場合に、情報伝達系統全体に管理情報の受信が可能か否かを問い合わせる問い合わせ部と、管理情報の受信についての問い合わせに対して返答する問い合わせ返答部とを有する。そして情報転送手段が、問い合わせに対する返答のあった他のエージェントマシンに管理情報を転送する。
【0080】
この構成により本実施形態は、第1の実施形態の特徴に加えて、上位単位に管理情報を転送する際にその上位単位を構成するエージェントマシンが全て稼働していないとしても、これを回避して他のエージェントマシンに管理情報を転送して動作を続行するということが可能となる。
以下、これをより詳細に説明する。
【0081】
本発明の第2の実施形態は、1つの情報収集単位内で全てのエージェントマシン512が稼働していない場合にこれを回避して管理情報の収集および転送を続行できる。本実施形態に係る運用監視システム501の全体の構成、およびハードウェアとしての構成は第1の実施形態として示した図2〜3と同一であるが、動作するソフトウェアの構成が異なる。
【0082】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る運用監視システム501のソフトウェアの動作における構成を示す説明図である。図1で示した第1の実施形態に係る運用監視システム1の構成と比べて、エージェントマシン512が備えるプロセッサ21で動作する情報転送手段の動作のみが異なる。
【0083】
以後、運用監視システム501に係るエージェントマシンをエージェントマシン512、情報転送手段を情報転送手段524という。これ以外は全て、運用監視システム501の構成は図1〜2で示した第1の実施形態に係る運用監視システム1の構成と、エージェントマシン12がエージェントマシン512に入れ替わる以外は全て同一である。エージェントマシン512の構成は後述の点を除いては第1の実施形態に係るエージェントマシン12と同一であり、また運用監視システム501における情報収集単位間の関連も図4で示したヒエラルキーと同一である。
【0084】
情報転送手段524は、情報転送部524aおよび情報受信部524bに加えて(これらの機能は第1の実施形態で説明した情報転送部124aおよび情報受信部124bとおおよそ同一であるが、詳しくは後述する)、情報の転送を受付可能なエージェントマシン512が存在するか否かを問い合わせる問い合わせ部524cと、問い合わせ部524cからの問い合わせに返答する問い合わせ返答部524dとを有する。これらの機能について詳しくは後述する。
【0085】
図13は、図12に示したエージェントマシン512が行う、管理情報を収集および送信する動作について示すフローチャートである。基本的な動作は図5で示した第1の実施形態に係る動作と同一であるので、同一の動作には全て同一の参照番号を付けている。相違点は、ステップS107および109で、収集した情報を上位単位に送信する際の動作である。これらの各ステップをステップS607および609として、その動作の詳細は以下の図14で延べる。
【0086】
図14は、図13のステップS607および609で延べた、収集した情報を上位単位に送信する際の動作の詳細について示す説明図である。上位単位への情報の転送を開始した情報転送部524aは(ステップS701)、その情報の転送が時間内に正常に完了したか否かを判断する(ステップS702)。
【0087】
転送が正常に完了していればそこで処理は終了するが、正常に完了しない場合に情報転送部524aは構造記憶手段122を介して構造テーブル126を参照し、上位単位に未送信のエージェントマシン512が存在するか否かを判断して(ステップS703)、未送信のエージェントマシン512があればそこに情報を転送する(ステップS704)。
【0088】
ステップS603で上位単位に未送信のエージェントマシン512が存在せず、またこれでもなお転送が正常に完了しない場合、問い合わせ部524cは上位単位のエージェントマシン512が全て稼働していないと判断して、その上位単位と同位の情報収集単位が存在するか否かについて運用監視システム501全体にブロードキャスト通信などによって問い合わせ(ステップS705)、これに対して他のエージェントマシン512の問い合わせ返答部524dから時間内に応答があるか否かを判断する(ステップS706)。
【0089】
時間内に応答があれば、情報転送部524aはそこに情報を転送して処理を終了する(ステップS707)。時間内に応答がなければ、情報転送部524aはマネージャマシン11に直接転送して処理を終了する(ステップS708)。
【0090】
問い合わせ返答部524dは、このステップS705〜706の問い合わせに応答する。そして情報受信部524bは、自らの下位単位以外のエージェントマシン512からのステップS707の情報転送を受け付ける。
【0091】
以上の動作によって、本実施形態に係る運用監視システム501は、上位単位の全てのエージェントマシン512が稼働していなかったとしても、この情報収集単位を回避してその他の稼働しているエージェントマシン512に情報を転送して、管理情報の収集に係る動作を続行させることができる。
【0092】
ここまでで延べた第1および第2の実施形態で、運用監視システムの中でマネージャマシンは原則として1台のみとしたが、ネットワークの構成によっては複数のマネージャマシンが存在しても構わない。
【0093】
これまで本発明について図面に示した特定の実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、ネットワークにおけるトラブルの発生の予防およびパフォーマンスの低下の抑制に利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1、501 運用監視システム
10 ネットワーク
11 マネージャマシン
12、512 エージェントマシン
12a 新規エージェントマシン
12b 既存エージェントマシン
20 コンピュータ装置
21、21a、21m プロセッサ
22、22a、22m 記憶手段
23 入出力部
24 通信部
111 管理情報解析手段
112 参加部位処理手段
113 構造記憶手段
114 構造テーブル
121 参加部位処理手段
121a 空き問い合わせ部
121b 空き応答部
121c 構成決定部
121d 情報収集単位作成部
122 構造記憶手段
123 情報集約手段
123a 情報集約部
123b 集約担当決定部
124、524 情報転送手段
124a、524a 情報転送部
124b、524b 情報受信部
524c 問い合わせ部
524d 問い合わせ返答部
125 管理情報収集手段
126 構造テーブル
U1〜U3、U11〜U33、U111〜U333 情報収集単位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して相互に接続された少なくとも1台のマネージャマシンと複数台のエージェントマシンとで構成される運用監視システムであって、
前記複数台のエージェントマシンが予め定められた数の情報収集単位を構成し、この情報収集単位がネットワークを介してピラミッド状の情報伝達系統を構築すると共に、前記情報伝達系統の最上位に前記マネージャマシンが位置する構成とし、
前記各エージェントマシンが、
前記情報収集単位で前記ネットワークの運用に係る他の前記エージェントマシンからの情報である管理情報を収集する管理情報収集手段と、
前記情報伝達系統を構成する全ての前記エージェントマシンのIPアドレスおよび前記情報伝達系統における階層の順位を記憶する構造記憶手段と、
前記情報伝達系統でより下位の情報を記憶した前記エージェントマシンから前記管理情報を受信して、自らの前記管理情報収集手段が収集した前記管理情報と共に前記情報伝達系統のより上位に転送する情報転送手段と、
前記情報伝達系統に新たに参加しようとする際に既存の前記エージェントマシンに対して前記情報伝達系統の前記情報伝達系統に空きがあるか否かを問い合わせてこの情報伝達系統で自らがどこに参加するかを決定した後にこの情報伝達系統に参加する参加部位処理手段と
を有することを特徴とする運用監視システム。
【請求項2】
前記エージェントマシンの前記情報転送手段が、前記情報伝達系統においてより上位の前記情報収集単位に属する前記エージェントマシンのいずれかに前記管理情報を転送することを特徴とする、請求項1に記載の運用監視システム。
【請求項3】
前記エージェントマシンの前記参加部位処理手段が、
既存の前記エージェントマシンに対して前記情報伝達系統の前記情報収集単位に空きがあるか否かを問い合わせる空き問い合わせ部と、
他の前記エージェントマシンからの前記問い合わせに対して応答する空き応答部と、
前記問い合わせに対して前記情報収集単位に空きがある旨の応答があった場合に自らが所属する前記情報収集単位を決定してこの情報収集単位に参加する構成決定部と、
前記問い合わせに対して前記情報収集単位に空きがある旨の応答がなかった場合に前記情報収集単位を新規に作成してこの情報収集単位に参加する情報収集単位作成部とを有することを特徴とする、請求項2に記載の運用監視システム。
【請求項4】
前記空き問い合わせ部が、前記情報収集単位作成部が前記情報収集単位を新規に作成した後で、既存の前記エージェントマシンに対して前記情報伝達系統において前記情報収集単位の下位に所属できる前記情報収集単位の数である下位収容数に空きがあるか否かを問い合わせる機能を有し、
前記空き応答部がこの下位収容数に空きがあるか否かの問い合わせに対して応答する機能を有し、
前記構成決定部が前記下位収容数に係る問い合わせに対して応答があった情報収集単位の下位に参加する機能を有することを特徴とする、請求項3に記載の運用監視システム。
【請求項5】
前記エージェントマシンが、前記情報収集単位に属する各々の前記エージェントマシンによって収集された前記管理情報を集約する情報集約手段を有することを特徴とする、請求項2に記載の運用監視システム。
【請求項6】
前記エージェントマシンの前記情報集約手段が、
前記情報収集単位に属する各々の前記エージェントマシンによって収集された前記管理情報を集約する情報集約手段と、
前記情報収集単位の中で前記管理情報の集約を担当する前記エージェントマシンである集約担当エージェントを決定する集約担当決定手段とを有することを特徴とする、請求項5に記載の運用監視システム。
【請求項7】
前記エージェントマシンの前記情報転送手段が、
前記情報伝達系統においてより下位の前記エージェントマシンから管理情報を受信する情報受信部と、
前記情報受信部が管理情報を受信した場合に、自らの属する前記情報収集単位において前記集約担当エージェントが決定していればその集約担当エージェントに前記管理情報を転送する情報転送部とを有することを特徴とする、請求項6に記載の運用監視システム。
【請求項8】
前記エージェントマシンの前記情報転送手段が、
前記情報伝達系統においてより上位の前記エージェントマシンへの前記管理情報の転送が正常に行えない場合に、前記情報伝達系統全体に前記管理情報の受信が可能か否かを問い合わせる問い合わせ部と、
前記管理情報の受信についての前記問い合わせに対して返答する問い合わせ返答部とを有し、
前記情報転送部が前記問い合わせに対する前記返答のあった他の前記エージェントマシンに前記管理情報を転送することを特徴とする、請求項7に記載の運用監視システム。
【請求項9】
前記マネージャマシンが、
前記エージェントマシンから管理情報を受信して解析する管理情報解析手段と、
前記エージェントマシンからの単位構成数および下位収容数に空きがあるか否かについての問い合わせに対して応答する参加部位処理手段と、
前記運用監視システムを構成する全ての前記エージェントマシンのIPアドレスを記憶する構造記憶手段とを有することを特徴とする、請求項2に記載の運用監視システム。
【請求項10】
少なくとも1台のマネージャマシンおよび複数台の同種のエージェントマシンをネットワークを介して相互に接続し、前記エージェントマシンが予め定められた数の情報収集単位を構成し、この情報収集単位がピラミッド状の情報伝達系統を構築すると共に、前記情報伝達系統の最上位に前記マネージャマシンが位置する構成の情報伝達系統を構成する運用監視システムにあって、
全ての前記エージェントマシンが前記情報伝達系統を構成する全ての前記エージェントマシンのIPアドレスおよび前記情報伝達系統における階層の順位をあらかじめ記憶し、
前記情報伝達系統に新たに参加しようとする前記エージェントマシンが他の前記エージェントマシンに対して前記情報伝達系統に空きがあるか否かを問い合わせ、
この問い合わせに対する前記他のエージェントマシンからの返答に応じてこの情報伝達系統で自らがどこに参加するかを決定してこの情報伝達系統に参加し、
前記情報収集単位で前記ネットワークの運用に係る他の前記エージェントマシンからの情報である管理情報を収集し、
前記情報伝達系統でより下位の前記エージェントマシンから前記管理情報を受信し、
受信した前記管理情報と自らが収集した前記管理情報とを合わせて前記情報伝達系統のより上位に転送する
ことを特徴とする階層化方法。
【請求項11】
少なくとも1台のマネージャマシンおよび複数台の同種のエージェントマシンをネットワークを介して相互に接続し、前記エージェントマシンが予め定められた数の情報収集単位を構成し、この情報収集単位がピラミッド状の情報伝達系統を構築すると共に、前記情報伝達系統の最上位に前記マネージャマシンが位置する構成の情報伝達系統を構成しており、かつ前記エージェントマシンが前記情報伝達系統を構成する全ての前記エージェントマシンのIPアドレスおよび前記情報伝達系統における階層の順位をあらかじめ記憶している運用監視システムにあって、
前記情報伝達系統に新たに参加しようとする前記エージェントマシンが他の前記エージェントマシンに対して前記情報伝達系統に空きがあるか否かを問い合わせる手順と、
この問い合わせに対する前記他のエージェントマシンからの返答に応じてこの情報伝達系統で自らがどこに参加するかを決定してこの情報伝達系統に参加する手順と、
前記情報収集単位で前記ネットワークの運用に係る他の前記エージェントマシンからの情報である管理情報を収集する手順と、
前記情報伝達系統でより下位の前記エージェントマシンから前記管理情報を受信する手順と、
受信した前記管理情報と自らが収集した前記管理情報とを合わせて前記情報伝達系統のより上位に転送する手順と
を前記エージェントマシンが有するコンピュータに実行させることを特徴とする階層化プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−28385(P2011−28385A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171363(P2009−171363)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】