説明

運転支援装置

【課題】より実際の運転者の健康状態に応じた運転支援を行うことができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】運転支援装置10のECU20が、自車の運転者の健康状態を検出し、検出した健康状態に応じて運転者の運転を支援する。ECU20は、運転者に確認課題を与え、運転者による課題の達成度に基づいて運転者の健康状態を検出する。これにより、単に運転者の健康状態を脈拍等から受動的に検出する方法に比べて、運転者に与える課題によって様々な健康状態の運転者に対応することができるため、より実際の運転者の健康状態に応じた運転支援を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関し、特に運転者の健康状態に応じて運転者の運転を支援する運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会に対応するため、様々な疾病を抱えた運転者の健康状態に応じて運転者の運転を支援することへの要求が高まっている。例えば、特許文献1には、圧力センサからの信号により、ドライバーの着座を確認し、ドライバーの状態が安静状態にあるかどうかを、心拍数等により確認する健康管理支援システムが開示されている。特許文献1のシステムは、測定した心拍数等の身体情報に基づいて、健康状態を判定する。特許文献1のシステムは、取得した活動状況の情報に基づいて、活動状況を判定する。特許文献1のシステムは、健康状態の判定結果と活動状況の判定結果とに基づいて、ドライバー等に対する適切なアドバイスを選択する。特許文献1のシステムでは、選択されたアドバイスを、表示部に表示したり、音声にて出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−234009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、運転者の健康状態は同じ心拍数等であったとしても、運転者ごとに異なる。例えば、平均よりも高い心拍数であったとしても、正常な運転が可能な運転者も存在する。一方で、平均的な心拍数であっても、正常な運転が不可能となる運転者も存在する。上記のような技術では、測定された運転者の生理的状態に基づいて一律に運転者の健康状態を検出し、それに基づいた運転支援を行なっている。そのため、運転者によっては不要な運転支援となったり、逆に必要な運転支援がなされない可能性があり、改善が望まれている。
【0005】
本発明は、このような実情を考慮してなされたものであり、その目的は、より実際の運転者の健康状態に応じた運転支援を行うことができる運転支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車の運転者の健康状態を検出する健康状態検出手段と、健康状態検出手段が検出した健康状態に応じて運転者の運転を支援する運転支援手段とを備え、健康状態検出手段は、運転者に課題を与え、運転者による課題の達成度に基づいて運転者の健康状態を検出する運転支援装置である。
【0007】
この構成によれば、健康状態検出手段が自車の運転者の健康状態を検出し、運転支援手段は、状態検出手段が検出した健康状態に応じて運転者の運転を支援する。健康状態検出手段は、運転者に課題を与え、運転者による課題の達成度に基づいて運転者の健康状態を検出する。これにより、単に運転者の健康状態を脈拍等から受動的に検出する方法に比べて、運転者に与える課題によって様々な健康状態の運転者に対応することができるため、より実際の運転者の健康状態に応じた運転支援を行うことができる。
【0008】
この場合、健康状態検出手段は、運転者が自車を運転している状況に応じた課題を与えることが好適である。
【0009】
運転者が自車を運転している状況によって、運転者の運転や自車周囲の他車等に悪影響を与えないで済む課題は異なる。この構成によれば、健康状態検出手段は、運転者が自車を運転している状況に応じた課題を与える。これにより、運転者に課題を与えることによって、運転者の運転や自車周囲の他車等に悪影響を与えることを防止できる。
【0010】
また、健康状態検出手段は、運転者が自車を運転している状況に応じて運転者による課題の達成度を評価する基準を変更することが好適である。
【0011】
運転者が自車を運転している状況によって、同じ課題であっても運転者が課題を達成する難易度は異なる。この構成によれば、健康状態検出手段は、運転者が自車を運転している状況に応じて運転者による課題の達成度を評価する基準を変更する。これにより、運転者が自車を運転している状況に対応して、実際の運転者の健康状態に応じた運転支援を行うことができる。
【0012】
また、健康状態検出手段は、運転者の運転に関する複数の運転機能それぞれに対応した課題を与えることが好適である。
【0013】
運転に関する運転機能には、運転者の手足による操作動作を行う機能から、運転者の頭脳による運転意図に忠実な運転計画の立案等を行う機能まで多岐にわたる。運転者によって、複数の運転機能のいずれが低下しているかは異なる。この構成によれば、健康状態検出手段は、運転者の運転に関する複数の運転機能それぞれに対応した課題を与えるため、運転者の運転機能のいずれが低下しているかを検出することができる。
【0014】
また、健康状態検出手段は、運転者の所定の種類の生理的状態に基づいて課題を与えることを開始することが好適である。
【0015】
この構成によれば、健康状態検出手段は、運転者の所定の種類の生理的状態に基づいて課題を与えることを開始するため、常に運転者に課題が与えられて運転者に煩わしさを感じさせることを防止することができる。
【0016】
この場合、健康状態検出手段は、運転者の生理的状態の履歴及び病歴のいずれかに応じて生理的状態の種類を決定することが好適である。
【0017】
運転者によって、同じ生理的状態であっても、運転機能が低下するか否かは異なる。この構成によれば、健康状態検出手段は、運転者の生理的状態の履歴及び病歴のいずれかに応じて生理的状態の種類を決定するため、運転者の特性に対応して課題を与えることの開始時期を決定することができる。
【0018】
また、運転支援手段は、健康状態検出手段が検出した健康状態と、運転者が自車を運転している状況とに応じて、運転の支援の運転者による解除を許可するか否かを決定することが好適である。
【0019】
将来に発生する危険の程度は、運転者の健康状態と周囲の状況とによって異なる。この構成によれば、運転支援手段は、健康状態検出手段が検出した健康状態と、運転者が自車を運転している状況とに応じて、運転の支援の運転者による解除を許可するか否かを決定する。これにより、将来に発生する危険度に対応して運転の支援の解除を認めるか否かを決定することができる。
【0020】
また、運転支援手段は、健康状態検出手段が検出した健康状態に応じて自車を減速させる運転の支援を行うことが好適である。
【0021】
この構成によれば、運転支援手段は、健康状態検出手段が検出した健康状態に応じて自車を減速させる運転の支援を行う。これにより、自車は運転者の健康状態に応じて減速されるため、安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の運転支援装置によれば、より実際の運転者の健康状態に応じた運転支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態に係る運転支援装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る運転支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】運転状況に対する運転機能項目ごとの難易度を示す表である。
【図4】運転機能項目ごとの確認課題例を示す表である。
【図5】運転状況に対する運転機能項目ごとの確認課題例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る運転支援装置について説明する。本実施形態の運転支援装置は車両に搭載され、運転者の健康状態に応じて運転者の運転を支援するためのものである。図1に示すように、本実施形態の運転支援装置10は、通信装置11、生体センサ類12、GPS13、レーダ14、走行状態センサ15、操作状態センサ16、個人認証装置17、ECU20、ドライバ状態履歴データベース30、ディスプレイ41、スピーカ42、アクチュエータ類43、反力アクチュエータ類44及び解除スイッチ45を備えている。
【0025】
通信装置11は、自車と所定の医療施設との間で通信を行うためのものである。通信装置11は、自車の運転者の音声やデータ入力により医療施設と通信を行う他、検出された運転者の健康状態に関する情報を自動的に医療施設に送信する。
【0026】
生体センサ類12は、自車の運転者の生理的情報を検出するためのものである。生体センサ類12は、具体的には、運転者の脈拍、血圧、体温、発汗量、体重、体脂肪率、脳波、視線方向及び血糖値等を検出する。
【0027】
GPS(Global Positioning System)13は、自車の測位を行うためのものである。GPS13は、自車の測位を行う他、記憶された地図情報と合わせて自車が走行している道路の形状等の状況を把握するために用いられる。レーダ14は、自車の周辺に存在する他車等の物体を検出するためのものである。レーダ14は、自車が走行している状況を把握するために用いられる。走行状態センサ15は、具体的には車速センサ及びヨーレートセンサ等であり、自車が物理的にどのような状態で走行しているかを検出するためのものである。
【0028】
操作状態センサ16は、運転者の運転操作の状況を検出するためのセンサである。操作状態センサ16は、具体的には、操舵角、操舵力、操舵速度、アクセルペダル踏量、アクセルペダル踏力、アクセルペダル操作速度、ブレーキペダル踏量、ブレーキペダル踏力、ブレーキペダル操作速度、トランスミッションのシフトレバーのシフト位置、トランスミッションのシフトレバーの操作力及びトランスミッションのシフトレバーの操作速度等を検出する。
【0029】
個人認証装置17は、自車の運転者それぞれの認証を行うためのものである。個人認証装置17は、パスワードや、認証用のカードや、指紋、血管、網膜、虹彩等の生体認証により、自車の運転者を認証する。
【0030】
ECU(Electronic Control Unit)20は、後述するような運転支援装置10全体の動作を制御するためのものである。
【0031】
ドライバ状態履歴データベース30は、自車の運転者の疾病の病歴や、過去に検出された生理的状態の履歴や、確認課題によって検出されたドライバーの運転機能に関する情報が記憶されているデータベースである。また、ドライバ状態履歴データベース30には、後述するように、運転者の健康状態を推定するための確認課題に関する情報が記憶されている。
【0032】
ディスプレイ41は、自車の運転者に映像により情報を提供したり指示を与えることにより、運転者の運転を支援するためのものである。スピーカ42は、自車の運転者に音声により情報を提供したり指示を与えることにより、運転者の運転を支援するためのものである。また、ディスプレイ41及びスピーカ42は、運転者に所定の確認課題を与えるためにも用いられる。
【0033】
アクチュエータ類43は、運転機能が低下した自車の運転者の運転に介入し、ステアリング、ブレーキ、アクセル及びトランスミッション等の操作を行うためのものである。反力アクチュエータ類44は、自車の運転者のステアリングホイール、ブレーキペダル、アクセルペダル及びトランスミッションのシフトレバーの操作に対して反力を与え、運転者の運転を誘導するためのものである。また、反力アクチュエータ類44は、運転者に所定の確認課題を与えるためにも用いられる。
【0034】
解除スイッチ45は、運転支援装置10により運転者の運転を支援する支援モードの実行を解除するためのものである。
【0035】
以下、本実施形態の運転支援装置10の動作について説明する。図2に示すように、運転支援装置10の個人認証装置17は、運転者の認証を行う(S11)。ECU20は、ドライバ状態履歴データベース30から、運転者の脈拍、血圧、体温、発汗量、体重、体脂肪率、脳波、視線方向及び血糖値等の生理的状態の履歴を取得する(S12)。ECU20は、ドライバ状態履歴データベース30に記憶されたドライバーの生理的状態の履歴から、運転者の脈拍等の生理的状態の計測対象の重み付けを行う(S13)。ECU20は、運転者の病歴や、ある計測対象の計測値が変動した場合に運転機能が低下する傾向がある場合は、当該計測対象の優先度を上げる。例えば、運転者に心血管系についての疾病の病歴がある場合や、当該運転者が脈拍数や血圧が高くなると運転機能が低下する傾向がある場合は、ECU20は、脈拍数や血圧の優先順位を高くする。
【0036】
ECU20は、生体センサ類12により運転者の生理的状態を計測する(S14)。ECU20は、S13で決定された優先度に従い、優先度が所定の順位より高い計測対象が所定の閾値を超えて変動したか否かにより、支援モードに移行すべきか否かを判定する(S15)。支援モードに移行すべきであると判定されたときは(S15)、ECU20は、GPS13、レーダ14、走行状態センサ15及び操作状態センサ16を用いて自車の運転者の運転状況を検知する(S16)。
【0037】
ECU20は、S16で検知された自車の運転者の運転状況と、S14で検知された運転者の状態に合わせた確認課題を運転者に与える。図4及び図5に示すように、本実施形態では、ドライバ状態履歴データベース30に、「運転意図」、「注意配分判断」、「運転操作判断」、「知覚器」及び「操作動作」といった複数の種類の運転機能項目が設定されている。
【0038】
「運転意図」とは、運転者が自車の進行する経路を企画する機能である。「注意配分判断」とは、運転者が自車の対面している状況に応じて自己の注意を適切に配分する機能である。「運転操作判断」とは、運転者がステアリング操作、アクセルペダル操作、ブレーキペダル操作及びトランスミッションのシフトレバー操作等を適切なタイミングと手順で行う機能である。「知覚器」とは、運転者が視覚や聴覚により、自車の周囲の状況を把握する機能である。「操作動作」とは、運転者がステアリング操作、アクセルペダル操作、ブレーキペダル操作及びトランスミッションのシフトレバー操作等を行うための手足の操作速度、操作力、操作を滑らかに行う等の機能である。これらの運転機能項目は、「運転意図」から「操作動作」に至るについて、頭脳的な機能から肉体的な機能となる。
【0039】
図4に示すように、本実施形態では、ドライバ状態履歴データベース30に、運転機能項目ごとに運転者に与える確認課題が設定されている。また、図5に示すように、確認課題は、自車が対面している「追従走行」、「車線変更」、「右折」及び「出会い頭」といった運転状況ごとに設定されている。
【0040】
例えば、自車の運転者が対面している運転状況が時間に余裕があり、運転者の運転や他車の走行に悪影響を与えない「追従走行」である場合には、運転機能項目の「運転意図」についての確認課題として、運転者が選択した経路について、その根拠や他の経路の選択の是非等についての質問がディスプレイ41やスピーカ42により与えられ、運転者を質問に対する適切な回答を求められる。あるいは、自車の運転者が対面している運転状況が「追従走行」である場合には、運転機能項目の「操作動作」についての確認課題として、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダルに対して反力アクチュエータ類44により所定の反力が与えられ、運転者には当該反力に対向し得る操作力でステアリングホイール等を操作することが求められる。なお、図5に示すように、自車の運転者が対面している運転状況が「出会い頭」や「右折」のように時間に余裕がなく、自車の運転や他車の走行に悪影響を与える可能性のある状況の場合は、「運転意図」といった頭脳的な運転機能項目については、確認課題を与えることが難しいため、当該運転機能項目については課題の提示や判定が行われないものとできる。
【0041】
また、判定される運転機能項目は、S14で検知された運転者の状態に合わせたものとできる。例えば、運転者の状態が手足の動作に主に障害をもたらす種類のものである場合には、「操作動作」といった運転機能項目について優先的に確認課題が与えられる。また、運転者の状態が精神的な活動に主に障害をもたらす種類のものである場合には、「運転意図」といった運転機能項目について優先的に確認課題が与えられる。さらに、運転者の状態が視力や聴力に主に障害をもたらす種類のものである場合には、「運転意図」といった運転機能項目について優先的に確認課題が与えられる。
【0042】
ECU20は、運転者に与えた確認課題の達成度に応じて、運転者の運転機能の不活性度を判定する(S18)。図3に示すように、本実施形態では、ドライバ状態履歴データベース30に、運転状況ごとに運転機能項目の難易度が設定されている。例えば、「追従走行」のように運転状況が時間に余裕がある状況では、運転機能項目それぞれについて比較的に低い難易度が設定される。したがって、難易度が低い運転状況では、運転者が確認課題を達成したとしても、運転機能は低い状態ではないが高い状態とも言えないと判定される。また、難易度が低い運転状況では、運転者が確認課題を達成できない場合には、運転機能は低い状態であると判定される。
【0043】
一方、例えば、「出会い頭」のように運転状況が時間に余裕がない状況では、運転機能項目それぞれについて比較的に高い難易度が設定される。したがって、難易度が高い運転状況では、運転者が確認課題を達成した場合は、運転機能は高い状態であると判定される。また、難易度が高い運転状況では、運転者が確認課題を達成できない場合であっても、運転機能は高い状態ではないが低い状態であるとも言えないと判定される。
【0044】
ECU20は、S18で判定された運転機能不活性度とS16で検出された運転状況とに基づいて、支援内容及び当該支援モードを継続するか否かを判定する(S19)。支援モードを継続するか否かの判定は、例えば、図3に示すような運転状況と運転機能項目とにおける難易度を考慮して、運転者が当該難易度において運転機能項目それぞれにおける確認課題を達成できる場合には、支援モードの解除を許可するものとできる。
【0045】
また、支援内容については、運転機能が閾値以下と低い場合には原則として、自車を減速させつつ安全な場所に停車させるような支援内容とされる。あるいは、運転機能が閾値を超えて比較的に高い場合には、所定の医療機関まで自車を走行させるような支援内容とされる。運転支援は、運転者の運転機能が運転状況に対して比較的に高いときは、ディスプレイ41及びスピーカ42による情報の提示及び誘導が行われる。また、運転支援は、運転者の運転機能が運転状況に対して比較的に低いときは、アクチュエータ類43による運転者の運転への介入や、反力アクチュエータ44による誘導が行われる。
【0046】
支援モードを継続すべきときは(S20)、ECU20は上記のような決定された支援内容により、運転者の運転の支援を行なう(S21)。この場合、ECU20は、運転者により解除スイッチ45が操作されたとしても、支援モードの解除を許可せず、支援モードを続行する。例えば、運転機能不活性度が高く、心臓疾患や高血圧が疑われる場合には、将来的には運転者の脳機能に影響を与える可能性もあるため、このような場合にはECU20は、運転者による解除スイッチ45への操作があったとしても、当該支援モードの解除を拒否する。
【0047】
また、本実施形態では、原則として、運転支援装置10は運転者の運転支援は行なうが、医療的な判断については通信装置11により所定の医療機関に情報を送信して、当該医療機関の指示を要求し、当該指示に従う(S22)。従って、もし、運転支援装置10のECU20が支援モードの解除を許可したとしても、医療機関の判断により支援モードの解除が望ましくない場合は、支援モードの解除を許可せず、支援モードを続行する。
【0048】
支援モードを継続すべきではないときは(S20)、ECU20は支援モードを解除する(S23)。この場合、ECU20は、ディスプレイ41及びスピーカ42等により運転者に対して支援モードの解除を許可する旨を表示し、運転者の解除スイッチ45の操作がなされた後に支援モードを解除しても良い。
【0049】
本実施形態によれば、運転支援装置10のECU20が、自車の運転者の健康状態を検出し、検出した健康状態に応じて運転者の運転を支援する。ECU20は、運転者に確認課題を与え、運転者による課題の達成度に基づいて運転者の健康状態を検出する。これにより、単に運転者の健康状態を脈拍等から受動的に検出する方法に比べて、運転者に与える課題によって様々な健康状態の運転者に対応することができるため、より実際の運転者の健康状態に応じた運転支援を行うことができる。
【0050】
ここで、運転者が自車を運転している状況によって、運転者の運転や自車周囲の他車等に悪影響を与えないで済む課題は異なる。本実施形態によれば、ECU20は、運転者が自車を運転している運転状況に応じた課題を与える。これにより、運転者に確認課題を与えることによって、運転者の運転や自車周囲の他車等に悪影響を与えることを防止できる。
【0051】
また、運転者が自車を運転している状況によって、同じ確認課題であっても運転者が確認課題を達成する難易度は異なる。本実施形態によれば、ECU20は、運転者が自車を運転している状況に応じて運転者による確認課題の達成度を評価する基準を変更する。これにより、運転者が自車を運転している運転状況に対応して、実際の運転者の健康状態に応じた運転支援を行うことができる。
【0052】
また、運転に関する運転機能には、運転者の手足による操作動作を行う「操作動作」の機能から、運転者の頭脳による運転意図に忠実な運転計画の立案等を行う「運転意図」の機能まで多岐にわたる。運転者によって、複数の運転機能のいずれが低下しているかは異なる。本実施形態によれば、ECU20は、運転者の運転に関する複数の運転機能それぞれに対応した確認課題を与えるため、運転者の運転機能のいずれが低下しているかを検出することができる。
【0053】
また、本実施形態では、ECU20は、運転者の所定の種類の生理的状態に基づいて確認課題を与えることを開始するため、常に運転者に確認課題が与えられて運転者に煩わしさを感じさせることを防止することができる。
【0054】
ここで、運転者によって、同じ生理的状態であっても、運転機能が低下するか否かは異なる。本実施形態によれば、ECU20は、運転者の生理的状態の履歴及び病歴のいずれかに応じて生理的状態の種類を決定するため、運転者の特性に対応して確認課題を与えることの開始時期を決定することができる。
【0055】
また、将来に発生する危険の程度は、運転者の健康状態と周囲の状況とによって異なる。本実施形態によれば、ECU20は、検出した健康状態と、運転者が自車を運転している運転状況とに応じて、支援モードの運転者による解除を許可するか否かを決定する。これにより、将来に発生する危険度に対応して支援モードの解除を認めるか否かを決定することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、ECU20は、検出した健康状態に応じて自車を減速させる運転の支援を行う。これにより、自車は運転者の健康状態に応じて減速されるため、安全性を高めることができる。
【0057】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
10…運転支援装置、11…通信装置、12…生体センサ類、13…GPS、14…レーダ、15…走行状態センサ、16…操作状態センサ、17…個人認証装置、20…ECU、30…ドライバ状態履歴データベース、41…ディスプレイ、42…スピーカ、43…アクチュエータ類、44…反力アクチュエータ類、45…解除スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の運転者の健康状態を検出する健康状態検出手段と、
前記健康状態検出手段が検出した前記健康状態に応じて前記運転者の運転を支援する運転支援手段と、
を備え、
前記健康状態検出手段は、前記運転者に課題を与え、前記運転者による前記課題の達成度に基づいて前記運転者の前記健康状態を検出する、運転支援装置。
【請求項2】
前記健康状態検出手段は、前記運転者が前記自車を運転している状況に応じた前記課題を与える、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記健康状態検出手段は、前記運転者が前記自車を運転している状況に応じて前記運転者による前記課題の達成度を評価する基準を変更する、請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記健康状態検出手段は、前記運転者の運転に関する複数の運転機能それぞれに対応した前記課題を与える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記健康状態検出手段は、前記運転者の所定の種類の生理的状態に基づいて前記課題を与えることを開始する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記健康状態検出手段は、前記運転者の前記生理的状態の履歴及び病歴のいずれかに応じて前記生理的状態の種類を決定する、請求項5に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記運転支援手段は、前記健康状態検出手段が検出した前記健康状態と、前記運転者が前記自車を運転している状況とに応じて、運転の支援の前記運転者による解除を許可するか否かを決定する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記運転支援手段は、前記健康状態検出手段が検出した前記健康状態に応じて前記自車を減速させる運転の支援を行う、請求項1〜7のいずれか1項に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−238133(P2011−238133A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110472(P2010−110472)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】