説明

運転適性診断装置及び運転適性診断方法

【課題】検査環境、被験者の体調や精神状態、検査者の恣意等の影響を受けにくく、被験者の運転適性を高い信頼度で診断することが可能である運転適性診断装置及び運転適性診断方法を提供すること。
【解決手段】被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査手段と、前記白質病変検査手段の検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断手段とを備えており、前記運転適性判断手段は、前記白質病変検査手段により検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に、被験者の運転適性を不適と判断することを特徴とする運転適性診断装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の運転適性を高い信頼度で診断することが可能である運転適性診断装置及び運転適性診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交通事故を減らすための方法の一つとして、運転免許の更新時において運転適性検査が行われている。
運転適性検査の項目としては、視力、聴力、色彩識別能力、運動能力等の身体的能力があるが、これらに加えて75歳以上の高齢者には認知機能検査(講習予備検査)が義務付けられている。この認知機能検査は、交通事故者中に占める高齢者の割合が高いことから、高齢者の事故を減少させることを目的として実施されているものである。
【0003】
この認知機能検査では、時間の見当識(検査時における年月日、曜日及び時間を回答させる)、手がかり再生(一定のイラストを記憶させ、採点には関係しない課題を行った後、記憶しているイラストをヒントなしに回答させ、さらにヒントをもとに回答させる)、時計描画(時計の文字盤を描かせ、さらにその文字盤に指定された時刻を表す針を描かせる)の3つの検査を行う。
しかしながら、この認知機能検査は、検査環境や、被験者の体調や精神状態(緊張度等)によって検査結果が変動するという欠点がある。
【0004】
また、他の認知機能検査として、MMSE(Mini-Mental State Examination)、HDR-R(長谷川式簡易知能評価スケール)、FAB(簡易前頭葉機能検査)等が知られている。
しかしながら、これらの検査は、いずれも検査者と被験者の面接形式であることから、検査環境、被験者の体調や精神状態(緊張度等)、検査者の恣意等の影響を受け、やはり検査結果が変動するという欠点がある。
【0005】
一方、下記特許文献1〜3には、運転適性診断装置に関する発明が開示されている。
特許文献1,2記載の装置の概要は以下の通りである。
被験者は、所定回数の判断時間測定テストと、所定回数の動作時間測定テストとを行い、判断時間測定テストによって被験者の判断+動作の合計時間(判断時間)が測定され、動作時間測定テストによって被験者の動作のみの時間(動作時間)が測定される。
判断時間測定テストでは、被験者が、表示画面に表示された記号を視認によって識別し、表示された記号に対応する入力ボタンを、記号の表示後できるだけ早く押下する。記号の表示から入力ボタンの押下までに要する時間が順次測定されて記憶され、その平均値が1回のテストの判断時間として算出される。このテストが3回行われ、最終的に3回のテストの平均値が被験者の判断時間として算出される。
動作時間測定テストでは、表示装置の表示画面に、テストの開始を報知する画像が表示され、所定時間経過後にテストの終了を報知する画像が表示される。その間に、被験者は、2つの入力ボタンを交互にできるだけ早く押下する。1つの入力ボタンの押下に要する時間が順次測定されて記憶され、その平均値が1回のテストの動作時間として算出される。そして、最終的に2回のテストの平均値が、被験者の動作時間として算出される。
制御部は、上記のテスト結果に基づいて被験者の運転適性を判断する。
【0006】
特許文献3記載の装置は、問診装置、実技診断装置、自動運転適性診断装置からなり、被験者は、問診装置を利用した性格テスト(TUPI)、安全態度テスト(S)、危険感受性テスト(R)を含む問診による診断テストと、実技診断装置を利用した平均見越反応時間計測テスト、重複作業反応測定テスト、処置判断測定テスト等を含む実技とを行い、自動運転適性診断装置がこれらのテスト結果に基づいて適性診断結果を出力する。
【0007】
上記特許文献1,2記載の装置は、被験者に複数のテストを行わせて得られたテスト結果に基づいて運転適性を診断するものであり、上記特許文献3記載の装置は問診とテストを組み合わせて運転適性を診断するものである。
そのため、これらの装置を用いた診断も、上述した従来の認知機能検査と同様に、検査環境や、被験者の体調や精神状態によって結果が変動するという欠点を有している。
【0008】
上述したように、従来の運転適性診断方法や装置は、検査環境、被験者の体調や精神状態、検査者の恣意等の影響を受けて結果が変動するという欠点を有するものであり、信頼性の高い診断結果が得られにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−206597号公報
【特許文献2】特開2008−148952号公報
【特許文献3】特開2008−83552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、検査環境、被験者の体調や精神状態、検査者の恣意等の影響を受けにくく、被験者の運転適性を高い信頼度で診断することが可能である運転適性診断装置及び運転適性診断方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査手段と、前記白質病変検査手段の検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断手段とを備えており、前記運転適性判断手段は、前記白質病変検査手段により検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に、被験者の運転適性を不適と判断することを特徴とする運転適性診断装置に関する。
【0012】
請求項2に係る発明は、被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査手段と、被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査手段と、前記注意機能反応速度検査手段及び前記白質病変検査手段の検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断手段とを備えており、前記運転適性判断手段は、前記注意機能反応速度検査手段により検査された注意機能反応速度が規定値以下であって、前記白質病変検査手段により検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に、被験者の運転適性を不適と判断することを特徴とする運転適性診断装置に関する。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記白質病変検査手段は、被験者の大脳白質病変の程度と発生部位とを検査し、前記運転適性判断手段は、更に前記白質病変検査手段により検査された白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件を満たした場合に、被験者の運転適性を不適と判断することを特徴とする請求項1又は2記載の運転適性診断装置に関する。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記白質病変検査手段が磁気共鳴画像装置であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の運転適性診断装置に関する。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記注意機能反応速度検査手段が、コグヘルス(登録商標)、仮名拾いテスト、TMT(トレイルメイキングテスト)、ストループ課題、D-CATの少なくとも1つの検査を実行可能な検査装置であることを特徴とする請求項2記載の運転適性診断装置に関する。
【0016】
請求項6に係る発明は、被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査段階と、前認白質病変検査段階における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階とからなり、前記運転適性判断段階において、前記白質病変検査段階において検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に、被験者の運転適性を不適と判断することを特徴とする運転適性診断方法に関する。
【0017】
請求項7に係る発明は、被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査段階と、前記注意機能反応速度検査段階において検査された注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを判断する運転適性予備判断段階と、前記運転適性予備判断段階において注意機能反応速度が規定値以下であると判断された被験者について、該被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査段階と、前記白質病変検査段階における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階とからなり、前記運転適性判断段階において、前記白質病変検査段階において検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に、被験者の運転適性を不適と判断することを特徴とする運転適性診断方法に関する。
【0018】
請求項8に係る発明は、被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査段階と、前記白質病変検査段階において検査された白質病変の程度が規定値以上であるか否かを判断する運転適性予備判断段階と、前記運転適性予備判断段階において白質病変の程度が規定値以上であると判断された被験者について、該被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査段階と、前記注意機能反応速度検査段階における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階とからなり、前記運転適性判断段階において、前記注意機能反応速度検査手段により検査された注意機能反応速度が規定値以下である場合に、被験者の運転適性を不適と判断することを特徴とする運転適性診断方法に関する。
【0019】
請求項9に係る発明は、前記白質病変検査段階において、被験者の大脳白質病変の程度と発生部位とを検査し、前記運転適性判断段階において、更に前記白質病変検査段階において検査された白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件を満たした場合に、被験者の運転適性を不適と判断することを特徴とする請求項6又は7記載の運転適性診断方法に関する。
【0020】
請求項10に係る発明は、前記白質病変検査段階において磁気共鳴画像診断により大脳白質病変の程度を検査することを特徴とする請求項6乃至9いずれかに記載の運転適性診断方法に関する。
【0021】
請求項11に係る発明は、前記注意機能反応速度検査段階において、コグヘルス(登録商標)、仮名拾いテスト、TMT(トレイルメイキングテスト)、ストループ課題、D-CATの少なくとも1つの検査を実行することにより被験者の注意機能反応速度を検査することを特徴とする請求項7又は8記載の運転適性診断方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る運転適性診断装置によれば、被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査手段を備えており、運転適性判断手段が白質病変検査手段により検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に被験者の運転適性を不適と判断することから、被験者の脳組織の状態に基づいて運転適性を診断することができる。そのため、検査環境、被験者の体調や精神状態、検査者の恣意等の影響を受けることなく、被験者の運転適性を高い信頼度で診断することが可能な診断装置となる。
【0023】
請求項2に係る運転適性診断装置によれば、被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査手段と、被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査手段を備えており、運転適性判断手段が注意機能反応速度検査手段により検査された注意機能反応速度が規定値以下であって且つ白質病変検査手段により検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に被験者の運転適性を不適と判断することから、被験者の脳組織の状態と注意機能反応速度に基づいて運転適性を診断することができる。脳組織の状態に基づく診断となることで検査環境、被験者の体調や精神状態、検査者の恣意等の影響を減らすことができるとともに、2種類の検査に基づく診断となることで、被験者の運転適性を非常に高い信頼度で診断することが可能な診断装置となる。
【0024】
請求項3に係る運転適性診断装置によれば、白質病変検査手段は被験者の大脳白質病変の程度と発生部位とを検査し、運転適性判断手段は、更に白質病変検査手段により検査された白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件を満たした場合に被験者の運転適性を不適と判断することから、判断条件に白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件が加わることで信頼性がより向上した診断装置となる。
【0025】
請求項4に係る運転適性診断装置によれば、白質病変検査手段が磁気共鳴画像装置であることから、被験者の大脳白質病変の程度及び発生部位を正確に測定することができ、診断装置の信頼性に優れたものとなる。
【0026】
請求項5に係る運転適性診断装置によれば、注意機能反応速度検査手段が、コグヘルス(登録商標)、仮名拾いテスト、TMT(トレイルメイキングテスト)、ストループ課題、D-CATの少なくとも1つの検査を実行可能な検査装置であることから、被験者の注意機能反応速度を高い信頼度で検査することができ、診断装置の信頼性に優れたものとなる。
【0027】
請求項6に係る運転適性診断方法によれば、被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査段階を備えており、運転適性判断段階において白質病変検査段階により検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に被験者の運転適性を不適と判断することから、被験者の脳組織の状態に基づいて運転適性を診断することができる。そのため、検査環境、被験者の体調や精神状態、検査者の恣意等の影響を受けることなく、被験者の運転適性を高い信頼度で診断することが可能な診断方法となる。
【0028】
請求項7に係る運転適性診断方法によれば、被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査段階と、注意機能反応速度検査段階において検査された注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを判断する運転適性予備判断段階と、運転適性予備判断段階において注意機能反応速度が規定値以下であると判断された被験者について該被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査段階と備えており、運転適性判断段階において白質病変検査段階において検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に被験者の運転適性を不適と判断することから、被験者の脳組織の状態と注意機能反応速度に基づいて運転適性を診断することが可能となる。脳組織の状態に基づいて診断することで検査環境、被験者の体調や精神状態、検査者の恣意等の影響を減らすことができる。更に、注意機能反応速度が規定値以下である被験者について白質病変検査段階が行われるため、注意機能反応速度の検査結果を診断の1次フィルタとして使用することができ、診断の効率を高めることができるとともに、被験者の運転適性をより高い信頼度で診断することが可能な診断方法となる。
【0029】
請求項8に係る運転適性診断方法によれば、被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査段階と、白質病変検査段階において検査された白質病変の程度が規定値以上であるか否かを判断する運転適性予備判断段階と、運転適性予備判断段階において白質病変の程度が規定値以上であると判断された被験者について該被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査段階と、注意機能反応速度検査段階における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階とからなり、運転適性判断段階において、前記注意機能反応速度検査手段により検査された注意機能反応速度が規定値以下である場合に被験者の運転適性を不適と判断することから、被験者の脳組織の状態と注意機能反応速度に基づいて運転適性を診断することが可能となる。脳組織の状態に基づいて診断することで検査環境、被験者の体調や精神状態、検査者の恣意等の影響を減らすことができる。更に、白質病変の程度が規定値以上である被験者について注意機能反応速度検査段階が行われるため、白質病変検査の検査結果を診断の1次フィルタとして使用することができ、診断の効率を高めることができるとともに、被験者の運転適性をより高い信頼度で診断することが可能な診断方法となる。
【0030】
請求項9に係る運転適性診断方法によれば、白質病変検査段階において被験者の大脳白質病変の程度と発生部位とを検査し、運転適性判断段階において更に白質病変検査段階において検査された白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件を満たした場合に被験者の運転適性を不適と判断することから、判断条件に白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件が加わることで信頼性がより向上した診断方法となる。
【0031】
請求項10に係る運転適性診断方法によれば、白質病変検査段階において被験者の大脳白質病変の程度と発生部位とを検査し、運転適性予備判断段階において更に白質病変検査段階において検査された白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件を満たすか否かを判断し、注意機能反応速度検査段階において運転適性予備判断段階において白質病変の程度が規定値以上であって且つ白質病変の発生部位が前頭前野を含む前頭葉にあると判断された被験者について該被験者の注意機能反応速度を検査することから、判断条件に白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件が加わることで信頼性がより向上した診断方法となる。
【0032】
請求項11に係る運転適性診断方法によれば、白質病変検査段階において磁気共鳴画像診断により大脳白質病変の程度を検査することから、被験者の大脳白質病変の程度及び発生部位を正確に測定することができ、診断方法の信頼性に優れたものとなる。
【0033】
請求項12に係る運転適性診断方法によれば、グヘルス(登録商標)、仮名拾いテスト、TMT(トレイルメイキングテスト)、ストループ課題、D-CATの少なくとも1つの検査を実行することにより、被験者の注意機能反応速度を検査することから、被験者の注意機能反応速度を高い信頼性で検査することができ、診断方法の信頼性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る運転適性診断装置の第一実施形態を示すブロック図である。
【図2】白質病変検査手段の概略構成を示すブロック図である。
【図3】大脳白質病変のグレード(G0〜G4)を示す写真である。
【図4】運転適性判断手段の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る運転適性診断方法の第一実施形態を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る運転適性診断方法の第二実施形態を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る運転適性診断装置の第二実施形態を示すブロック図である。
【図8】注意機能反応速度検査手段の概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る運転適性診断方法の第三実施形態を示すフローチャートである。
【図10】本発明に係る運転適性診断方法の第四実施形態を示すフローチャートである。
【図11】本発明に係る運転適性診断方法の第五実施形態を示すフローチャートである。
【図12】本発明に係る運転適性診断方法の第六実施形態を示すフローチャートである。
【図13】事故型に応じた白質病変グレード別の割合の分析結果を示す表である。
【図14】「大きな事故」を起こした人についての分析結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る運転適性診断装置及び運転適性診断方法について、図面を適宜参照しながら説明する。
図1は本発明に係る運転適性診断装置の第一実施形態を示すブロック図である。
第一実施形態に係る運転適性診断装置は、被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査手段(1)と、この白質病変検査手段(1)の検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断手段(2)とを備えている。
【0036】
図2は白質病変検査手段(1)の概略構成を示すブロック図である。
白質病変検査手段(1)は、被験者の大脳白質病変の程度及び発生部位を検査することが可能な機能を有する装置であって、被験者の脳の画像データを取得する画像データ取得手段(11)と、画像データ取得手段(11)により取得された画像データを処理する画像データ処理手段(12)と、画像データ処理手段(12)の処理により得られた画像を表示する画像表示手段(ディスプレイ)(13)と、前記画像データと所定のプログラムを記憶する内部メモリ又は外部メモリからなる記憶手段(14)と、画像データ処理手段(12)の処理により得られた画像に基づいて大脳白質病変の程度及び発生部位を評価する評価手段(15)を備えている。
【0037】
白質病変検査手段(1)の具体例としては、MRI(磁気共鳴画像装置)やCT(コンピュータ断層撮影装置)等を例示することができる。特にMRIは高精度の検査が可能であるために好適に使用される。
画像データ取得手段(11)、画像データ処理手段(12)、画像表示手段(13)、記憶手段(14)、評価手段(15)は、一体の装置として構成してもよいが、複数の装置を接続して構成してもよい。例えば、MRIやCTを使用する場合、画像分析プログラムを記憶する記憶手段(14)や評価手段(15)は、MRIやCTに内蔵されたコンピュータに設けてもよいが、外部に接続したコンピュータに設けてもよい。
【0038】
白質病変検査手段(1)の評価手段(15)は、画像データ処理手段(12)の処理により得られた画像に基づいて、被験者の大脳白質病変の程度をグレード0〜4の5段階(グレードが大きいほど病状が進行していることを示す)で評価するとともに、大脳白質病変の発生部位がどこにあるか(前頭前野を含む前頭葉であるかそれ以外の部位であるか)を評価する。
【0039】
図3は大脳白質病変のグレードを示す写真である。具体的には、MRIを使用して取得された被験者の脳の横断面の画像データを処理して得られた画像の写真であり、大脳白質病変のグレードが0〜4(G0〜G4)の場合を示している。
図3中に矢印で指している白い部位が白質病変の発生部位であり、G0では白質病変の発生部位は確認されないが、G1,G2,G3,G4とグレードが上がるに従って白質病変の発生部位が大きくなっていることが分かる。G2以上から左右の大脳白質に広がる病変となる。
【0040】
評価手段(15)による被験者の大脳白質病変の程度(グレード)及び発生部位の評価は、大脳白質病変の発生部位は図3(フレア画像)に示したように画像上で高信号域となる(白く映る)ことから、高信号域部分の面積及び場所を求めることにより行うことが可能である。尚、図3では代表してフレア画像のみを示しているが、大脳白質病変はフレア画像及びT2強調画像では高信号域、T1強調画像では低信号域として表れる。そのため、評価手段(15)による大脳白質病変の程度(グレード)及び発生部位の評価は、これら3種類の画像を総合して行うことが好ましい。
具体的には、評価手段(15)が、画像データ処理手段(12)の処理により得られた画像(フレア画像、T1強調画像、T2強調画像)を、記憶手段(14)に記憶された画像分析プログラムを使用して分析することにより、フレア画像及びT2強調画像では高信号域部分の面積及び場所、T1強調画像では低信号域部分の面積及び場所を求め、夫々を予め評価手段(15)に記憶された大脳白質病変の程度(グレード)及び部位を定義する基準データと比較することにより行うことができる。
評価手段(15)による評価結果は、後述する運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。入力手段(21)への入力は、無線又は有線の通信回線を介したデータ送信により行うことが好ましいが、記憶媒体を介して行ってもよいし、手入力により行ってもよい。
【0041】
ここで、大脳白質病変とは、加齢や動脈硬化性変化のために大脳白質内の神経繊維やオリゴデンドロサイト等のグリア細胞や毛細血管網を形成する血管内皮細胞等が消失して生じた細胞間隙である。脳梗塞とは異なるが、循環不全部位と考えられ、脳梗塞予備群ともみなされている。白質病変は、高齢者に高頻度に見られることから、広範囲の白質病変は認知症や脳卒中を起こしやすいと考えられる。
また、前頭前野を含む前頭葉は、脳の様々な場所から送信されてくる感覚、記憶、感情等の知覚情報を統合する部分であって、主要な機能は、A.思考力・言葉や文章の構成、B.即時的な作業記憶の保持、C.注意の配分や集中力の形成・維持、D.機敏な反応動作の発動と短絡的な思考や衝動的な行動の抑制、E.内省力・検討力・熟考力の形成、である。これらの機能のうち、「機敏な反応動作の発動」は運転時の状況判断行動に関係し、前頭前野を含む前頭葉の機能に障害が生じると交通事故を起こしやすくなると考えられる。
【0042】
本発明者は、後述する分析により、大脳白質病変の程度(グレード)と人身事故等の大きな交通事故との間に高い相関性があること、より具体的には、人身事故等の大きな交通事故を起こした人には、大脳白質病変の程度(グレード)が高い人が多いことを知得した。更に、人身事故等の大きな交通事故を起こした人には、大脳白質病変の程度(グレード)が高く且つ大脳白質病変が前頭前野を含む前頭葉にある人が多いことを知得した。
【0043】
図4は運転適性判断手段(2)の概略構成を示すブロック図である。
運転適性判断手段(2)は、白質病変検査手段(1)の評価手段(15)により評価された白質病変の程度及び発生部位が入力される入力手段(21)と、入力された白質病変の程度及び発生部位に基づいて被験者の運転適性を判断するCPU等からなる判断手段(22)と、判断手段(22)が判断を行うための所定のプログラム等を記憶する内部メモリ又は外部メモリからなる記憶手段(23)と、判断手段(22)による判断結果を出力するディスプレイからなる表示手段(24)からなる。
運転適性判断手段(2)としては、例えばパソコンを使用することができる。
【0044】
運転適性判断手段(2)の判断手段(22)は、記憶手段(23)に記憶された判断プログラムを使用して、白質病変検査手段(1)により検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に被験者の運転適性を不適と判断する。
具体的には、白質病変のグレードが2以上(両側白質病変)の場合に被験者の運転適性を不適と判断することが好ましい。これは、後述する本発明者の分析によって、白質病変のグレードが2以上の人は人身事故等の大きな交通事故を起こす可能性が高いことが確認されているためである。但し、白質病変のグレードが3以上の場合や4以上の場合に、被験者の運転適性を不適と判断するようにしてもよい。
【0045】
また、判断手段(22)は、更に白質病変検査手段(1)により検査された白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件を満たした場合に、被験者の運転適性を不適と判断するように構成することもできる。
言い換えると、判断手段(22)が、白質病変検査手段(1)により検査された白質病変の程度が規定値以上であって且つ白質病変が前頭前野を含む前頭葉にある場合に、被験者の運転適性を不適と判断するように構成することもできる。
【0046】
図5は本発明に係る運転適性診断方法の第一実施形態を示すフローチャートである。
第一実施形態の運転適性診断方法は、上記第一実施形態の運転適性診断装置を使用して行うことができる。
【0047】
以下、図5に基づいて第一実施形態の運転適性診断方法を説明する。
第一実施形態の運転適性診断方法は、白質病変検査段階(S1)と、白質病変検査段階(S1)における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階(S2)とからなる。
白質病変検査段階(S1)では、白質病変検査手段(1)により被験者の大脳白質病変の程度を検査する。評価手段(15)は、被験者の大脳白質病変の程度を評価し、評価結果は運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。
運転適性判断段階(S2)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、入力手段(21)から入力された白質病変検査手段(1)の評価手段(15)による評価結果(白質病変のグレード)に基づいて、白質病変の程度が規定値以上であるか否か(例えばグレード2以上であるか否か)を判定し、規定値以上である場合には被験者の運転適性を不適と判断し、規定値未満である場合には被験者の運転適性を適と判断する。判断結果は表示手段(24)に表示される。
【0048】
上述したように、大脳白質病変の程度(グレード)と人身事故等の大きな交通事故との間に高い相関性があり、人身事故等の大きな交通事故を起こした人には大脳白質病変の程度(グレード)が高い人が多い。
第一実施形態の運転適性診断方法によれば、白質病変検査段階において白質病変検査手段により被験者の大脳白質病変の程度(グレード)を検査し、運転適性判断段階において白質病変の程度が規定値以上である場合には被験者の運転適性を不適と判断することから、検査環境、被験者の体調や精神状態、検査者の恣意等の影響を受けることなく、被験者の運転適性を高い信頼度で診断することが可能となる。
【0049】
図6は本発明に係る運転適性診断方法の第二実施形態を示すフローチャートである。
第二実施形態の運転適性診断方法も、上記第一実施形態の運転適性診断装置を使用して行うことができる。
【0050】
以下、図6に基づいて第二実施形態の運転適性診断方法を説明する。
第二実施形態の運転適性診断方法は、白質病変検査段階(S1)と、白質病変検査段階(S1)における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階(S2、S3)とからなる。
【0051】
白質病変検査段階(S1)では、白質病変検査手段(1)により被験者の大脳白質病変の程度及び発生部位を検査する。評価手段(15)は、被験者の大脳白質病変の程度(グレード)及び発生部位を評価し、評価結果は運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。
運転適性判断段階(S2)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、入力手段(21)から入力された白質病変検査手段(1)の評価手段(15)による評価結果(白質病変のグレード)に基づいて白質病変の程度が規定値以上であるか否か(例えばグレード2以上であるか否か)を判定し、白質病変の程度が規定値未満である場合には被験者の運転適性を適と判断する。一方、白質病変の程度が規定値以上である場合は運転適性判断段階(S3)に移行する。
運転適性判断段階(S3)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、入力手段(21)から入力された白質病変検査手段(1)の評価手段(15)による評価結果(白質病変の発生部位)に基づいて白質病変の発生部位が前頭前野を含む前頭葉にあるか否かを判定し、前頭前野を含む前頭葉にある場合には被験者の運転適性を不適と判断し、前頭前野を含む前頭葉にない場合には被験者の運転適性を適と判断する。判断結果は表示手段(24)に表示される。
【0052】
上述したように、大脳白質病変の程度(グレード)と人身事故等の大きな交通事故との間に高い相関性があり、人身事故等の大きな交通事故を起こした人には大脳白質病変の程度(グレード)が高い人が多い。また、前頭前野を含む前頭葉の機能に障害が生じると交通事故を起こしやすくなると考えられる。
第二実施形態の運転適性診断方法によれば、白質病変検査段階において白質病変検査手段により被験者の大脳白質病変の程度及び発生部位を検査し、運転適性判断段階において白質病変の程度が規定値以上であり且つ前頭前野を含む前頭葉にある場合に被験者の運転適性を不適と判断することから、第一実施形態の運転適性診断方法よりも更に高い信頼度で被験者の運転適性を診断することが可能となる。
【0053】
図7は本発明に係る運転適性診断装置の第二実施形態を示すブロック図である。
第二実施形態に係る運転適性診断装置は、被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査手段(1)と、被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査手段(3)と、白質病変検査手段(1)及び注意機能反応速度検査手段(3)の検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断手段(2)とを備えている。
【0054】
白質病変検査手段(1)の構成は第一実施形態と同じであるため説明を省略する。
運転適性判断手段(2)は、全体構成は第一実施形態と同じであるが、入力手段(21)及び判断手段(22)の内容のみが第一実施形態と若干異なる。以下、異なる点を説明する。
入力手段(21)からは、白質病変検査手段(1)の評価手段(15)により評価された評価結果(白質病変の程度及び発生部位)と、注意機能反応速度検査手段(3)による検査結果が入力される。
判断手段(22)は、記憶手段(22)に記憶された判断プログラムを利用して、入力手段(21)から入力された白質病変検査手段(1)の評価手段(15)により評価された評価結果及び注意機能反応速度検査手段(3)による検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する。
【0055】
運転適性判断手段(2)の判断手段(22)は、注意機能反応速度検査手段(3)により検査された注意機能反応速度が規定値以下であって且つ白質病変検査手段(1)により検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に、被験者の運転適性を不適と判断する。
白質病変の程度の規定値については第一実施形態と同じ設定とすることができる。
また第一実施形態と同じく、判断手段(22)が、更に白質病変検査手段(1)により検査された白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件を満たした場合に、被験者の運転適性を不適と判断するように構成することもできる。
【0056】
図8は注意機能反応速度検査手段(3)の概略構成を示すブロック図である。
注意機能反応速度検査手段(3)は、注意機能反応速度検査の実行及び結果評価を行うための所定のプログラムを記憶する内部メモリ又は外部メモリからなる記憶手段(31)と、記憶手段(31)に記憶されたプログラムに基づいて注意機能反応速度検査を実行するCPU等からなる処理手段(32)と、処理手段(32)により実行される注意機能反応速度検査の実行画面及び検査結果が表示されるディスプレイ等からなる表示手段(33)と、被験者が注意機能反応速度検査の入力を行うためのボタン等からなる入力手段(34)と、記憶手段(31)に記憶された評価プログラムに基づいて被験者の注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを評価する評価手段(35)を備えている。
注意機能反応速度検査手段としては、例えばパソコンや携帯電話やコンピュータを使用したゲーム機器を使用することができる。
【0057】
注意機能反応速度検査手段(3)の評価手段(35)は、記憶手段(31)に記憶された評価プログラムに基づいて、被験者の注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを評価し、評価結果は運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。入力手段(21)への入力は、無線又は有線の通信回線を介したデータ送信により行うことが最も好ましいが、記憶媒体を介して行ってもよいし、手入力により行ってもよい。
【0058】
ここで、注意機能とは、高次脳機能におけるカテゴリの一つである。
注意機能は, 第一段階の情報処理として, 覚醒水準や記憶機能とともにある特定の認知機能が適切に機能するために必要不可欠であると言われており、大きく以下の5つのコンポーネントに分かれていると考えられている。
(a)注意の集中(Focused attention)
(b)注意の維持(Sustained attention)
(c)選択的注意(Selective attention)
(d)注意の切り替え(Alternating attention)
(e)注意の分割あるいは分散(Divided attention)
【0059】
注意機能反応速度検査手段(3)としては、記憶手段(31)にコグヘルス(COGHEALTH:登録商標)の実行及び結果評価を行うためのプロクラムを記憶したコグヘルス検査装置が好適に使用される。
但し、本発明においては、注意機能反応速度検査手段(3)として、コグヘルス以外の注意機能反応速度検査(例えば、仮名拾いテスト、TMT(トレイルメイキングテスト)、ストループ課題、D-CAT等)を行うことができる検査装置を使用することもできる。この場合、記憶手段(31)にコグヘルス以外の注意機能反応速度検査の実行及び結果評価を行うためのプログラムが記憶される。
【0060】
ここで、上述した本発明において好適に使用される注意機能反応速度検査について説明する。
コグヘルスとは、パソコンのディスプレイに映し出されるトランプを見て、被験者にボタンを押してもらう検査であり、「単純反応」、「選択反応」、「作動記憶」、「遅延再生」、「注意分散」の5つの項目の検査を行う。各検査項目の内容は以下の通りである。
「単純反応」・・・トランプが裏から表にひっくり返ったらボタンを押す。
「選択反応」・・・裏から表にひっくり返ったトランプが赤か黒かを判断してボタンを押す。
「作動記憶」・・・ひっくり返ったトランプがひとつ前のトランプと同じかどうかを判断してボタンを押す。
「遅延再生」・・・ひっくり返ったトランプが遅延再生課題中に出てきたことのあるトランプかどうかを判断してボタンを押す。
「注意分散」・・・同じ高さに並んだ5枚のトランプが夫々上下に動き、一枚でもトランプの上下にある線に触れたらボタンを押す。
【0061】
仮名拾いテストとは、かな書きのおとぎ話を読んでいき、文の意味を読み取りながら、同時に「あ・い・う・え・お」の文字を拾い○をつける。制限時間2分間で何個拾えたかで成績を判定する。見落とした数と、意味把握の有無が判定の基準となる。
年代別に平均値と境界値が設定されており、20代−44(30)、30代−42(29)、40代−36(21)、50代−32(15)、60代−24(10)、70代−22(9)、80代−19(8)である。尚、夫々左側の数値が平均値、右側の括弧内の数値が境界値である。
【0062】
TMT(トレイルメイキングテスト)とは、ランダムに配置された数字や仮名を順に繋いで行く時間を測定するテストである。年齢により異なるが、パートAは30秒〜50秒、パートBは60秒〜120秒で正常である。
【0063】
ストループ課題とは、ストループ効果を利用した注意機能テストである。ストループ効果とは、例えば、色名を答える質問を行った場合、赤インクで書かれた「あか」の色名を答える場合よりも青インクで書かれた「あか」の色名(「あお」)を答える場合の方が時間がかかる事をいう。「赤・青・緑」の10行×10行の場合は、50代で所要時間の平均が120.79秒(SD38.07)である。
【0064】
D-CATとは、数字抹消により注意の焦点化と維持、処理速度を測定する注意機能テストであり、平均点は50点である。
注意の焦点化とは、特定の感情刺激に直接反応する能力である。注意の焦点化された刺激は効率よく処理されるので情報処理速度を反映する。
注意の維持とは、連続或いは繰り返して一貫した反応を行う能力である。
【0065】
注意機能反応速度検査手段(3)は、上記した5種類の注意機能反応速度検査のうちの少なくとも1つの検査を実行可能な装置(実行可能なプログラムを記憶した装置(パソコン等))であることが好ましい。
上述したように、注意機能反応速度検査手段(3)の評価手段(35)は、記憶手段(31)に記憶された評価プログラムに基づいて、被験者の注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを評価するが、このときの規定値は、注意機能反応速度検査の種類に応じて最適な値に設定される。例えば、上記した各検査の平均(正常)値を規定値として設定してもよい。
【0066】
注意機能反応速度検査手段(3)としては、コグヘルス検査を実行可能な装置であることがより好ましい。
コグヘルス検査を実行可能な装置(コグヘルス検査装置)を使用する場合、上記5つの項目の検査のうち少なくとも「注意分散」の検査を実行可能な装置であればよい。
「注意分散」の検査により、被験者の物事に対する注意力(周りに注意を払う力)や空間認識力が分かり、これらの能力は、例えば小道から出てくる車や人に反応する能力と関係する。
本発明者は、「注意分散」の検査により分かる注意機能反応速度と、人身事故等の大きな交通事故との間に高い相関性があること、より具体的には、人身事故等の大きな交通事故を起こした人には注意機能反応速度が低い人が多いことを、後述する分析によって知得した。
【0067】
注意機能反応速度検査手段(3)がコグヘルス検査装置である場合、評価手段(35)は、被験者の注意機能反応速度が87.5以下であるか否かを評価するように構成することが好ましい。即ち、87.5を規定値として設定することが好ましい。
これは、後述する本発明者の分析によって、注意機能反応速度が87.5以下である人は、人身事故等の大きな交通事故を起こす可能性が高いことが確認されているためである。
【0068】
但し、本発明において、注意機能反応速度検査手段(3)により実行される注意機能反応速度検査は、上記した5種類の注意機能反応速度検査には必ずしも限定されず、例えば以下の(A)又は(B)の検査としてもよい。
(A)パソコンのディスプレイ上に境界(線、丸、四角等の任意の形状)と、この境界内で移動する物体(点、丸、棒等)を表示する。被験者は物体が境界を越えた時にボタンを押し、実際に物体が境界を越えた時とボタンが押された時の時間差(反応時間)を測定する。
(B)パソコンのディスプレイ上に物体(点、丸、棒等)を急に表示する。被験者は物体が表示された時にボタンを押し、実際に物体が表示された時とボタンが押された時の時間差(反応時間)を測定する。
【0069】
図9は本発明に係る運転適性診断方法の第三実施形態を示すフローチャートである。
第三実施形態の運転適性診断方法は、上記第二実施形態の運転適性診断装置を使用して行うことができる。
【0070】
以下、図9に基づいて第三実施形態の運転適性診断方法を説明する。
第三実施形態の運転適性診断方法は、注意機能反応速度検査段階(S1)と、注意機能反応速度検査段階(S1)において検査された注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを判断する運転適性予備判断段階(S2)と、運転適性予備判断段階(S2)において注意機能反応速度が規定値以下であると判断された被験者について該被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査段階(S3)と、白質病変検査段階(S3)における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階(S4)とからなる。
【0071】
注意機能反応速度検査段階(S1)では、注意機能反応速度検査手段(3)により被験者の注意機能反応速度を検査する。評価手段(35)は、注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを評価し、評価結果は運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。
運転適性予備判断段階(S2)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、入力手段(21)から入力された注意機能反応速度検査手段(3)の評価手段(35)による評価結果に基づいて、注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを判定し、規定値を超える場合には被験者の運転適性を適と判断して表示手段(24)に表示し、規定値以下の場合には白質病変検査段階(S3)へと移行する。
白質病変検査段階(S3)では、注意機能反応速度検査段階(S1)において検査された注意機能反応速度が規定値以下である被験者について、白質病変検査手段(1)により被験者の大脳白質病変の程度を検査する。評価手段(15)は、被験者の大脳白質病変の程度(グレード)を評価し、評価結果は運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。
運転適性判断段階(S4)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、白質病変検査手段(1)の評価手段(15)による評価結果に基づいて、白質病変の程度が規定値以上であるか否か(例えばグレード2以上であるか否か)を判定し、規定値以上である場合には被験者の運転適性を不適と判断し、規定値未満である場合には被験者の運転適性を適と判断する。判断結果は表示手段(24)に表示される。
【0072】
第三実施形態の運転適性診断方法によれば、第一実施形態の方法と同じく、白質病変検査段階において白質病変検査手段により被験者の大脳白質病変の程度を検査し、運転適性判断段階において白質病変の程度が規定値以上である場合には被験者の運転適性を不適と判断することから、検査環境、被験者の体調や精神状態、検査者の恣意等の影響を受けることなく、被験者の運転適性を高い信頼度で診断することが可能となる。
加えて、注意機能反応速度が規定値以下である被験者について白質病変検査段階が行われるため、注意機能反応速度の検査結果を診断の1次フィルタとして使用することができ、診断の効率を高めることができるとともに、被験者の運転適性をより高い信頼度で診断することが可能となる。
【0073】
図10は本発明に係る運転適性診断方法の第四実施形態を示すフローチャートである。
第四実施形態の運転適性診断方法も、上記第二実施形態の運転適性診断装置を使用して行うことができる。
【0074】
以下、図10に基づいて第四実施形態の運転適性診断方法を説明する。
第四実施形態の運転適性診断方法は、注意機能反応速度検査段階(S1)と、注意機能反応速度検査段階(S1)において検査された注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを判断する運転適性予備判断段階(S2)と、運転適性予備判断段階(S2)において注意機能反応速度が規定値以下であると判断された被験者について該被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査段階(S3)と、白質病変検査段階(S3)における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階(S4、S5)とからなる。
【0075】
注意機能反応速度検査段階(S1)では、注意機能反応速度検査手段(3)により被験者の注意機能反応速度を検査する。評価手段(35)は、注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを評価し、評価結果は運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。
運転適性予備判断段階(S2)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、入力手段(21)から入力された注意機能反応速度検査手段(3)の評価手段(35)による評価結果に基づいて、注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを判定し、規定値を超える場合には被験者の運転適性を適と判断して表示手段(24)に表示し、規定値以下の場合には白質病変検査段階(S3)へと移行する。
白質病変検査段階(S3)では、注意機能反応速度検査段階(S1)において検査された注意機能反応速度が規定値以下である被験者について、白質病変検査手段(1)により被験者の大脳白質病変の程度及び発生部位を検査する。評価手段(15)は、被験者の大脳白質病変の程度(グレード)及び発生部位を評価し、評価結果は運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。
運転適性判断段階(S4)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、白質病変検査手段(1)の評価手段(15)による評価結果に基づいて、白質病変の程度が規定値以上であるか否か(例えばグレード2以上であるか否か)を判定し、白質病変の程度が規定値未満である場合には被験者の運転適性を適と判断し、規定値以上である場合は運転適性判断段階(S5)に移行する。
運転適性判断段階(S5)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、白質病変検査手段(1)の評価手段(15)による評価結果に基づいて、白質病変の発生部位が前頭前野を含む前頭葉にあるか否かを判定し、前頭前野を含む前頭葉にある場合には被験者の運転適性を不適と判断し、規定値未満である場合には被験者の運転適性を適と判断する。判断結果は表示手段(24)に表示される。
【0076】
第四実施形態の運転適性診断方法によれば、白質病変検査段階において白質病変検査手段により被験者の大脳白質病変の程度及び発生部位を検査し、運転適性判断段階において白質病変の程度が規定値以上であり且つ前頭前野を含む前頭葉にある場合に被験者の運転適性を不適と判断することから、第三実施形態の運転適性診断方法よりも更に高い信頼度で被験者の運転適性を診断することが可能となる。
【0077】
図11は本発明に係る運転適性診断方法の第五実施形態を示すフローチャートである。
第五実施形態の運転適性診断方法は、上記第二実施形態の運転適性診断装置を使用して行うことができる。
【0078】
以下、図11に基づいて第五実施形態の運転適性診断方法を説明する。
第五実施形態の運転適性診断方法は、白質病変検査段階(S1)と、白質病変検査段階(S1)において検査された白質病変の程度が規定値以上であるか否かを判断する運転適性予備判断段階(S2)と、運転適性予備判断段階(S2)において白質病変の程度が規定値以上であると判断された被験者について該被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査段階(S3)と、注意機能反応速度検査段階(S3)における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階(S4)とからなる。
【0079】
白質病変検査段階(S1)では、白質病変検査手段(1)により被験者の大脳白質病変の程度を検査する。評価手段(15)は、被験者の大脳白質病変の程度を評価し、評価結果は運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。
運転適性予備判断段階(S2)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、入力手段(21)から入力された白質病変検査手段(1)の評価手段(15)による評価結果に基づいて、白質病変の程度が規定値以上であるか否か(例えばグレード2以上であるか否か)を判定し、規定値未満である場合には被験者の運転適性を適と判断して表示手段(24)に表示し、規定値以上である場合には注意機能反応速度検査段階(S3)へと移行する。
【0080】
注意機能反応速度検査段階(S3)では、白質病変検査段階(S1)において検査された白質病変の程度が規定値以上である被験者について、注意機能反応速度検査手段(3)により被験者の注意機能反応速度を検査する。評価手段(35)は、注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを評価し、評価結果は運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。
運転適性判断段階(S4)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、注意機能反応速度検査手段(3)の評価手段(35)による評価結果に基づいて、注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを判定し、規定値以下である場合には被験者の運転適性を不適と判断し、規定値を超える場合には被験者の運転適性を適と判断する。判断結果は表示手段(24)に表示される。
【0081】
第五実施形態の運転適性診断方法によれば、第一実施形態の方法と同じく、白質病変検査段階において白質病変検査手段により被験者の大脳白質病変の程度を検査し、運転適性判断段階において白質病変の程度が規定値以上である場合には被験者の運転適性を不適と判断することから、検査環境、被験者の体調や精神状態、検査者の恣意等の影響を受けることなく、被験者の運転適性を高い信頼度で診断することが可能となる。
加えて、白質病変の程度が規定値以上である被験者について注意機能反応速度検査段階が行われるため、白質病変の程度の検査結果を診断の1次フィルタとして使用することができ、診断の効率を高めることができるとともに、白質病変検査と注意機能反応速度検査を併用することにより被験者の運転適性をより高い信頼度で診断することが可能となる。
【0082】
図12は本発明に係る運転適性診断方法の第六実施形態を示すフローチャートである。
第六実施形態の運転適性診断方法は、上記第二実施形態の運転適性診断装置を使用して行うことができる。
【0083】
以下、図12に基づいて第六実施形態の運転適性診断方法を説明する。
第六実施形態の運転適性診断方法は、白質病変検査段階(S1)と、白質病変検査段階(S1)において検査された白質病変の程度が規定値以上であるか否か及び白質病変の発生部位を判断する運転適性予備判断段階(S2,S3)と、運転適性予備判断段階(S2,S3)において白質病変の程度が規定値以上であり且つ白質病変の発生部位が前頭前野を含む前頭葉にあると判断された被験者について該被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査段階(S4)と、注意機能反応速度検査段階(S4)における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階(S5)とからなる。
【0084】
白質病変検査段階(S1)では、白質病変検査手段(1)により被験者の大脳白質病変の程度及び発生部位を検査する。評価手段(15)は、被験者の大脳白質病変の程度(グレード)及び発生部位を評価し、評価結果は運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。
運転適性予備判断段階(S2)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、入力手段(21)から入力された白質病変検査手段(1)の評価手段(15)による評価結果に基づいて、白質病変の程度が規定値以上であるか否か(例えばグレード2以上であるか否か)を判断し、白質病変の程度が規定値未満である場合には被験者の運転適性を適と判断する。一方、白質病変の程度が規定値以上である場合は運転適性予備判断段階(S3)に移行する。
運転適性予備判断段階(S3)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、入力手段(21)から入力された白質病変検査手段(1)の評価手段(15)による評価結果(白質病変の発生部位)に基づいて白質病変の発生部位が前頭前野を含む前頭葉にあるか否かを判定し、前頭前野を含む前頭葉にある場合には注意機能反応速度検査段階(S3)へと移行し、前頭前野を含む前頭葉にない場合には被験者の運転適性を適と判断する。判断結果は表示手段(24)に表示される。
【0085】
注意機能反応速度検査段階(S4)では、白質病変検査段階(S1)において検査された白質病変の程度が規定値以上であって且つ白質病変の発生部位が前頭前野を含む前頭葉にある被験者について、注意機能反応速度検査手段(3)により被験者の注意機能反応速度を検査する。評価手段(35)は、注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを評価し、評価結果は運転適性判断手段(2)の入力手段(21)から入力される。
運転適性判断段階(S5)では、運転適性判断手段(2)の判断手段(22)が、注意機能反応速度検査手段(3)の評価手段(35)による評価結果に基づいて、注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを判定し、規定値以下である場合には被験者の運転適性を不適と判断し、規定値を超える場合には被験者の運転適性を適と判断する。判断結果は表示手段(24)に表示される。
【0086】
第六実施形態の運転適性診断方法によれば、白質病変検査段階において白質病変検査手段により被験者の大脳白質病変の程度及び発生部位を検査し、運転適性予備判断段階において白質病変の程度が規定値以上であり且つ前頭前野を含む前頭葉にある場合に注意機能反応速度検査段階へと移行することから、第五実施形態の運転適性診断方法よりも更に高い信頼度で被験者の運転適性を診断することが可能となる。
【0087】
以下、本発明者が行った大脳白質病変の程度(グレード)と人身事故等の大きな交通事故との相関性の分析結果について説明する。
高知県検診クリニック脳ドックセンターの検診者に対して、自動車運転時の交通事故歴のアンケートを行い、回答した1128名のうち過去3年以内に事故歴があった102名の被験者について、MRIにより検査された大脳白質病変の程度(グレード)と、コグヘルスにより検査された注意機能反応速度と、大きな事故の相関性を分析した。
分析に当たっては、人身事故を含む場合と事故が複数回である場合を「大きな事故」と定義し、注意機能反応速度が87.5以下の場合に「低下群」と評価した。
【0088】
図13は回答者1128名についての事故型に応じた白質病変グレード別の割合の分析結果を示す表であり、図14は「大きな事故」を起こした人についての分析結果を示す表である。
図13及び図14から分かるように、大きな事故を起こした人26名のうち、白質病変のグレードが2以上の人は12名(約46%)であった。一方、回答者1128名のうち、白質病変のグレードが2以上の人は207名(約18%)に過ぎなかった。
この結果から、大脳白質病変の程度(グレード)と人身事故等の大きな交通事故との間には高い相関性があると言える。
また、上記した大きな事故を起こした人26名のうちの白質病変のグレードが2以上の人12名全員が前頭前野を含む前頭葉に白質病変が発生していた。
この結果から、白質病変の発生部位が前頭前野を含む前頭葉であることと人身事故等の大きな交通事故との間にも高い相関性があると言える。
更に、大きな事故を起こした人のうち10名について、コグヘルスによる注意機能反応速度が「低下群」にあるか否かを分析した結果、5名が「低下群」にあった。
この結果から、コグヘルスによる注意機能反応速度と人身事故等の大きな交通事故との間にも高い相関性があると言える。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、例えば運転免許の更新時において運転適性を診断するためや個人が安全運転能力を評価するために利用することができ、不適と判断された場合には、運転に注意するように指導したり、運転免許の返上を勧告したりすることにより、交通事故を減少させる効果が期待できる。更に、本発明は自動車運転に限らず、自動二輪車運転や飛行機及び船舶の操縦における適正診断にも適用することが可能であり、自動車のみならず自動二輪車、飛行機、船舶の事故を減少させる効果も期待できる。
【符号の説明】
【0090】
1 白質病変検査手段
11 画像データ取得手段
12 画像データ処理手段
13 画像表示手段
14 記憶手段
15 評価手段
2 運転適性判断手段
21 入力手段
22 判断手段
23 記憶手段
24 表示手段
3 注意機能反応速度検査手段
31 記憶手段
32 処理手段
33 表示手段
34 入力手段
35 評価手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査手段と、
前記白質病変検査手段の検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断手段とを備えており、
前記運転適性判断手段は、前記白質病変検査手段により検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に、被験者の運転適性を不適と判断する
ことを特徴とする運転適性診断装置。
【請求項2】
被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査手段と、
被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査手段と、
前記注意機能反応速度検査手段及び前記白質病変検査手段の検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断手段とを備えており、
前記運転適性判断手段は、前記注意機能反応速度検査手段により検査された注意機能反応速度が規定値以下であって、前記白質病変検査手段により検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に、被験者の運転適性を不適と判断する
ことを特徴とする運転適性診断装置。
【請求項3】
前記白質病変検査手段は、被験者の大脳白質病変の程度と発生部位とを検査し、
前記運転適性判断手段は、更に前記白質病変検査手段により検査された白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件を満たした場合に、被験者の運転適性を不適と判断する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の運転適性診断装置。
【請求項4】
前記白質病変検査手段が磁気共鳴画像装置であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の運転適性診断装置。
【請求項5】
前記注意機能反応速度検査手段が、コグヘルス(登録商標)、仮名拾いテスト、TMT(トレイルメイキングテスト)、ストループ課題、D-CATの少なくとも1つの検査を実行可能な検査装置であることを特徴とする請求項2記載の運転適性診断装置。
【請求項6】
被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査段階と、
前認白質病変検査段階における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階とからなり、
前記運転適性判断段階において、前記白質病変検査段階において検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に、被験者の運転適性を不適と判断する
ことを特徴とする運転適性診断方法。
【請求項7】
被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査段階と、
前記注意機能反応速度検査段階において検査された注意機能反応速度が規定値以下であるか否かを判断する運転適性予備判断段階と、
前記運転適性予備判断段階において注意機能反応速度が規定値以下であると判断された被験者について、該被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査段階と、
前記白質病変検査段階における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階とからなり、
前記運転適性判断段階において、前記白質病変検査段階において検査された白質病変の程度が規定値以上である場合に、被験者の運転適性を不適と判断する
ことを特徴とする運転適性診断方法。
【請求項8】
被験者の大脳白質病変の程度を検査する白質病変検査段階と、
前記白質病変検査段階において検査された白質病変の程度が規定値以上であるか否かを判断する運転適性予備判断段階と、
前記運転適性予備判断段階において白質病変の程度が規定値以上であると判断された被験者について、該被験者の注意機能反応速度を検査する注意機能反応速度検査段階と、
前記注意機能反応速度検査段階における検査結果に基づいて被験者の運転適性を判断する運転適性判断段階とからなり、
前記運転適性判断段階において、前記注意機能反応速度検査手段により検査された注意機能反応速度が規定値以下である場合に、被験者の運転適性を不適と判断する
ことを特徴とする運転適性診断方法。
【請求項9】
前記白質病変検査段階において、被験者の大脳白質病変の程度と発生部位とを検査し、
前記運転適性判断段階において、更に前記白質病変検査段階において検査された白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件を満たした場合に、被験者の運転適性を不適と判断する
ことを特徴とする請求項6又は7記載の運転適性診断方法。
【請求項10】
前記白質病変検査段階において、被験者の大脳白質病変の程度と発生部位とを検査し、
前記運転適性予備判断段階において、更に前記白質病変検査段階において検査された白質病変が前頭前野を含む前頭葉にあるという条件を満たすか否かを判断し、
前記注意機能反応速度検査段階において、前記運転適性予備判断段階において白質病変の程度が規定値以上であって且つ白質病変の発生部位が前頭前野を含む前頭葉にあると判断された被験者について、該被験者の注意機能反応速度を検査する
ことを特徴とする請求項8記載の運転適性診断方法。
【請求項11】
前記白質病変検査段階において磁気共鳴画像診断により大脳白質病変の程度を検査することを特徴とする請求項6乃至10いずれかに記載の運転適性診断方法。
【請求項12】
前記注意機能反応速度検査段階において、コグヘルス(登録商標)、仮名拾いテスト、TMT(トレイルメイキングテスト)、ストループ課題、D-CATの少なくとも1つの検査を実行することにより被験者の注意機能反応速度を検査することを特徴とする請求項7又は8記載の運転適性診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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