説明

過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液及びその製造方法

【課題】 本発明の課題は、有機合成反応用触媒や半導体材料のドーピング剤、リチウムイオン電池の電解質として有用な過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液を提供することにある。
【解決手段】 本発明の課題は、一般式(1)
【化1】


(式中、Mは非金属元素又は金属元素を示し、nは1〜6の整数を示す。)
で示される過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液及びその製造方法に関する。過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液は、大気中で不安定な過フッ化無機酸リチウム(固体)を得るための原料として、又、過フッ化無機酸リチウムの運搬溶液として使用できる。なお、過フッ化無機酸リチウム、例えば、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム等)は、例えば、有機合成反応用触媒や半導体材料のドーピング剤、リチウムイオン電池の電解質として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来、過フッ化無機酸リチウム、例えば、六フッ化リン酸リチウムの製造方法としては、無水フッ酸中、五フッ化リンとフッ化リチウムとを反応させる方法(例えば、特許文献1参照)や六フッ化リン酸カリウムと塩化リチウムとを反応させる方法(例えば、特許文献2参照)等が開示されている。
【0003】
又、四フッ化ホウ酸リチウムの製造方法としては、例えば、水溶媒中、四フッ化ホウ酸と炭酸リチウムとを反応させて四フッ化ホウ酸リチウム水溶液を得た後、水を減圧除去した上で得られた固体を90〜160℃で真空乾燥する方法(例えば、特許文献3参照)や炭酸リチウムと三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体とをジエチルエーテル中で反応させる方法(例えば、非特許文献1参照)等が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−82474号
【特許文献2】米国特許第5378445号
【特許文献3】中国特許第101318664号
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,75,1753(1953)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に過フッ化無機酸リチウムは、公知の化合物であり、通常は固体の試薬として市販されているが、大気中の少量の水分に対しては極めて弱く、フッ化水素ガスを発生させながら分解するという取り扱いが煩雑な化合物でもある。ゆえに、固体の過フッ化無機酸リチウムの単離取得やその運搬、有機溶液の調製において、水分混入を避けるため細心の注意が必要であった。更に、過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液については何ら知られていなかった。
【0006】
本発明の課題は、即ち、有機合成反応用触媒や半導体材料のドーピング剤、リチウムイオン電池の電解質として有用な過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Mは非金属元素又は金属元素を示し、nは1〜6の整数を示す。)
で示される過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液によって解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、有機合成反応用触媒や半導体材料のドーピング剤、リチウムイオン電池の電解質として有用な過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の過フッ化無機酸リチウムとは、非金属元素(例えば、リン、ホウ素)又は非金属元素(例えば、ヒ素、アンチモン)が過フッ化されたアニオンとリチウムカチオンとから構成される一般式(1)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Mは非金属元素又は金属元素を示し、nは1〜6の整数を示す。)
で示される化合物を示す。
【0014】
前記非金属元素としては、好ましくはリン又はホウ素であり、前記金属元素としては、好ましくはヒ素又はアンチモンである。又、nは1〜6の整数を示す。
【0015】
前記一般式(1)で示される過フッ化無機酸リチウムとしては、具体的には、例えば、六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、六フッ化アンチモン酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム等が挙げられるが、好ましくは六フッ化リン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウムである。
【0016】
本発明の過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液とは、前記の過フッ化無機酸リチウムが水と有機溶媒との混合溶液に溶解している溶液を示す。
【0017】
前記有機溶媒としては、水と有機溶媒との混合溶液にした際に過フッ化無機酸リチウムを溶解させ得るものならば特に限定されないが、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、ブチロラクトン等のエステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、シアノベンゼン等のニトリル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジフェニルカーボネート等の炭酸エステル類;シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジフェニル等のシュウ酸ジエステル類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、1,2−ジメトキシメタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン、オキセタン、18−クラウン−6−エ−テル、ジフェニルエーテル等のエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3−プロパンサルトン、1,4−ブタンサルトン等のスルホン酸エステル類;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド等のアミド類;1,3−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;クロロベンゼン、ブロモベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;フェノール、カテコール等のフェノール類が挙げられるが、好ましくはエステル類、カーボネート類、ニトリル類、エーテル類、アミド類、尿素類、スルホン類、更に好ましくはエステル類、カーボネート類、ニトリル類、エーテル類が使用される。なお、これらの有機溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0018】
過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液中の過フッ化無機酸リチウムの含有率(質量比率)は、好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは2〜35質量%、より好ましくは4〜25質量%である。前記含有率とすることで、安定性の高い過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液として扱うことが可能である。
【0019】
過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液中の水の存在量は、有機溶媒1gに対して、好ましくは0.02〜1g、より好ましくは0.03〜0.5g、0.05〜0.25gである。前記水の存在量とすることで、過フッ化無機酸リチウムが加水分解せずに安定に存在することができる。
【0020】
本発明の過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液は、リチウム化合物と一般式(2)
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、M及びnは前記と同義である。)
で示される過フッ化無機酸とを、水/有機溶媒の混合溶媒中で反応させることによって得られる。
【0023】
本発明の反応で使用するリチウム化合物としては、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム、リチウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザン、リチウムボロヒドリド、リチウムアルミニウムヒドリド、リチウムジジイソブチルアルミニウム等が挙げられるが、好ましくは水酸化リチウム、炭酸リチウム、更に好ましくは炭酸リチウムが使用される。なお、これらのリチウム塩は水和物も含む。又、反応を阻害しない溶媒で希釈又は分散されていても良く、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0024】
前記リチウム化合物の使用量は、後述する一般式(2)で示される過フッ化無機酸1モルに対して、好ましくは0.1〜10モル、更に好ましくは0.5〜5モル、特に好ましくは0.9〜2.5モルである。
【0025】
本発明の反応で使用する過フッ化無機酸は、前記の一般式(2)
【0026】
【化4】

【0027】
(式中、M及びnは前記と同義である。)
で示される。その一般式(2)において、M及びnは前記と同義である。
【0028】
前記過フッ化無機酸としては、具体的には、例えば、六フッ化リン酸、四フッ化ホウ酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化ヒ酸等が挙げられるが、好ましくは六フッ化リン酸、四フッ化ホウ酸である。なお、過フッ化無機酸は、公知の方法で合成することもできるし、市販品をそのまま使用することもできるが、六フッ化リン酸ならば60〜70質量%の水溶液を、四フッ化ホウ酸ならば40〜50質量%の水溶液を容易に入手できるが、水で更に希釈、逆に水を除去して過フッ化無機酸の濃度を高めたものを使用することも出来る。
【0029】
本発明の反応は、例えば、リチウム化合物と過フッ化無機酸とを、水/有機溶媒の混合溶媒中にて、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは−50〜50℃、更に好ましくは−25〜25℃、より好ましくは−10〜20℃であり、反応圧力は特に制限されない。なお、原料や目的物がフッ素化合物であるため、例えば、樹脂製の反応器具等を用いることが好ましい。
【0030】
得られた過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶はそのまま使用することができるが、更に塩基又は無機塩と接触させることによって、反応によって副生した過フッ化無機酸リチウムの加水分解物を除去することができる。ここで、加水分解とは、過フッ化無機酸リチウムと水とが接触して、フッ化水素を発生させながら非金属又は金属元素が酸化される反応を示し、加水分解物とは前記の酸化反応で副生した酸性酸化物を示す。例えば、六フッ化リン酸リチウムならば、リン酸(O=P(OH))、モノフルオロリン酸(O=P(OH)F)、ジフルオロリン酸(O=P(OH)F)を示す。なお、これらの加水分解物は、各種核磁気共鳴スペクトルにより定性・定量することができる。
【0031】
前記塩基又は無機塩による加水分解物の除去は、例えば、過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液と塩基とを混合して攪拌させる等の方法によって行われる。その際の接触温度は、好ましくは−60〜100℃、更に好ましくは−20〜50℃、より好ましくは−10〜30℃であり、接触圧力は特に制限されない。なお、当該処理によって生じた無機塩(不溶物)は、例えば、濾過、デカンテーション等により取り除くことができる。
【0032】
加水分解物の除去の際に使用する塩基としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、エチレンジアミン、アニリン等の一級アミン類、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、1,4−ジメチルエチレンジアミン、メチルアニリン等の二級アミン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジメチルアニリン等の三級アミン類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸セシウム等の金属炭酸塩が挙げられるが、好ましくはアンモニア、三級アミン、金属水酸化物、金属炭酸塩、更に好ましくはアンモニア、トリエチルアミン、水酸化リチウム、より好ましくは水酸化リチウムが使用される。当該塩基は、気体、液体及び固体のいずれの状態で用いても構わず、水や有機溶媒に溶解されたものや水和物を使用することも出来る。なお、これらの塩基は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0033】
又、無機塩としては、例えば、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化ルビジウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化ルビジウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化ルビジウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化ルビジウム等のアルカリ金属ハロゲン化物;フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム等のアルカリ土類金属ハロゲン化物;酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属酸化物;硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム硫酸アンモニウム等の硫酸塩;硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸アンモニウム等の硝酸塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸アンモニウム等のカルボン酸塩;モルキュラーシーブ;ゼオライト等が使用されるが、好ましくはアルカリ金属フッ素化物、金属酸化物、更に好ましくはフッ化カリウム、酸化カルシウムであり、その水和物も使用できる。なお、これらの無機塩は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0034】
前記塩基又は無機塩の使用量は、過フッ化無機酸リチウムに対して好ましくは0.05〜10モル、更に好ましくは0.1〜5モル、特に好ましくは0.2〜1モルである。
【0035】
本発明の加水分解物の除去により、過フッ化無機酸リチウムの加水分解物が十分に除かれた高純度過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液を得ることができる。その際の全加水分解物の含有率は、過フッ化無機酸リチウムに対して1モル%未満(各種核磁気共鳴スペクトルによる分析値)である。
【実施例】
【0036】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、生成物や加水分解物の分析は以下の手法により行った。
【0037】
六フッ化リン酸リチウム及びその加水分解物;
リン核磁気共鳴スペクトル(31P−NMR)、内部標準;メチルジフェニルホスフィンオキシド
四フッ化ホウ酸リチウム及びその加水分解物;
ホウ素核磁気共鳴スペクトル(11B−NMR)、内部標準;2−(3,5−ジメチルフェニル)−4,4,5,5、−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン
フッ化水素;フッ素核磁気共鳴スペクトル(19F−NMR)。
【0038】
実施例1(六フッ化リン酸リチウムの水/酢酸エチル混合溶液の合成)
攪拌装置及び温度計を備えた内容積500mlのPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製容器に、酢酸エチル200ml及び炭酸リチウム51g(953mmol)を加え氷浴中で混合液を0〜10℃に冷却し、液温を同温度に保ちながら、65質量%ヘキサフルオロリン酸水溶液(Aldrich社製)77.2g(344mmol)をゆるやかに滴下した。滴下終了後、攪拌しながら0〜10℃で1時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過し、六フッ化リン酸リチウムの酢酸エチル混合溶液307gを得た(水/酢酸エチル=1/10)。なお、当該混合溶液には六フッ化リン酸リチウムが50.6g含まれていた(ヘキサフルオロリン酸基準の反応収率;97%)。
【0039】
実施例2〜6(六フッ化リン酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液の合成)、実施例7〜9(四フッ化ホウ酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液の合成)
実施例1において、各種反応条件等を変えたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
比較例1(六フッ化リン酸リチウムの水/炭酸ジエチル混合溶液の合成)
アルゴン気流下、プラスチック製の反応容器に、室温にて六フッ化リン酸リチウム1g(6.6mmol)及び炭酸ジエチル10gを加えて溶解させた後、水0.7g(39mmol)を加えたところ、六フッ化リン酸リチウムは全て分解した。
【0042】
比較例2(六フッ化リン酸リチウムの水/炭酸ジエチル混合溶液の合成)
アルゴン気流下、プラスチック製の反応容器に、室温にて水0.7g(39mmol)及び炭酸ジエチル10gを加えて混合溶液を調製した後、六フッ化リン酸リチウム1g(6.6mmol)を加えたところ、六フッ化リン酸リチウムは全て分解した。
【0043】
参考例1(六フッ化リン酸リチウムの水/炭酸ジエチル混合溶液の合成)
アルゴン気流下、プラスチック製の反応容器に、室温にて六フッ化リン酸リチウム1g(39mmol)及び炭酸ジエチル10gを加えて溶解させたところ、六フッ化リン酸リチウムはほとんど分解せずに炭酸ジエチル中に存在していた。
【0044】
以上の結果により、固体の六フッ化リン酸リチウムを用いて、有機溶媒溶液は合成できるものの(参考例1)、本発明の六フッ化リン酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液を合成することはできなかった(比較例1〜2)。
【0045】
実施例10〜13(加水分解物の除去;高純度六フッ化リン酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液の合成)
実施例2及び3で得られた六フッ化リン酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液に塩基又は無機塩を加え、室温にて攪拌しながら六フッ化リン酸リチウムの加水分解物の除去(塩基又は無機塩との接触)を行った。その結果を表2に示す。なお、除去前の全加水分解物の含有率(高純度六フッ化リン酸リチウムに対する31P−NMRの相対比率)は、それぞれ5.4モル%、5.8モル%であった。
【0046】
【表2】

【0047】
以上の結果により、塩基又は無機塩により、六フッ化リン酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液中の六フッ化リン酸リチウム由来の加水分解物が除去されたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、有機合成反応用触媒や半導体材料のドーピング剤、リチウムイオン電池の電解質として有用な過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液を提供することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Mは非金属元素又は金属元素を示し、nは1〜6の整数を示す。)
で示される過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液。
【請求項2】
リチウム化合物と一般式(2)
【化2】

(式中、M及びnは前記と同義である。)
で示される過フッ化無機酸とを、水/有機溶媒の混合溶媒中で反応させる請求項1記載の一般式(1)
【化3】

(式中、M、X、m及びnは前記と同義である。)
で示される過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液の製造方法。
【請求項3】
各種核磁気共鳴スペクトル分析による全加水分解物の含有率が、過フッ化無機酸リチウムに対して1モル%未満である高純度過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液。
【請求項4】
リチウム化合物と一般式(2)
【化4】

(式中、M及びnは前記と同義である。)
で示される過フッ化無機酸とを、水/有機溶媒の混合溶媒中で反応させて一般式(1)
【化5】

(式中、M、X、m及びnは前記と同義である。)
で示される過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液を得た後、更に塩基又は無機塩と接触させる請求項3記載の高純度過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液の製造方法。
【請求項5】
過フッ化無機酸リチウムの水/有機溶媒混合溶液を塩基又は無機塩と接触させることを特徴とする、過フッ化無機酸リチウムの加水分解物の除去方法。

【公開番号】特開2012−30984(P2012−30984A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169264(P2010−169264)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】