説明

過冷却状態の食品及び一般冷凍食品を超音波で解凍する方法及びそのシステム

【課題】過冷却状態の食品及び一般冷凍食品を、細胞の損傷もなく、解凍むらや風味・旨味も失わず、超音波で解凍する方法及びそのシステムを提供すること。
【解決手段】円筒形の超音波振動子を用いて、過冷却状態の食品及び一般冷凍食品に、超音波振動子を直接接触させ、超音波振動子を回転させることで均一に照射させ、振動子の接触圧力の強さを調節できることを特徴とする、超音波解凍方法及びそのシステムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
この発明は、過冷却状態の食品及び一般冷凍食品を解凍する超音波解凍方法及びそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般冷凍食品を解凍する方法として、電子レンジを用いて加熱する方法、冷凍食品を流水中に浸す方法、水槽内に配置した冷凍食品に、超音波を照射させる方法などがある。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
冷凍食品を流水中に浸す方法は、解凍するまでに時間がかかり、水を流し続けることにより、大量の水を消費することと、冷凍食品によっては水では解凍し難いものもある。
【0004】
電子レンジを用いる方法では、均一に解凍できないことや、電磁波で加熱するため、電磁波が漏れないようにする装置も必要であり、又、食品の細胞組織が破壊されてしまうため、風味や旨味、更に栄養素までが消えてしまう。
【0005】
超音波を用いた方法では、冷凍食品を真空密閉する手順や、水などの媒介装置や媒質を必要とする、又、照射するときの媒質の温度管理や水垢などの衛生管理、媒介及び媒質自体の品質管理等が必要となり、作業が煩雑になり、装置も大掛かりになってしまう。
【0006】
また、空中伝播方式だと、超音波の照射元に近い位置ほどエネルギーが強いので、均一に照射することができない。
【0007】
一般冷凍食品はもちろんのこと、過冷却状態の冷凍食品においては、生きた細胞が破壊されてしまうため、従来の方法では食品の品質を低下させるだけである。
【0008】
本発明は、従来の欠点を解決し、食品の細胞を破壊せず、解凍むらもなく衛生的で迅速に解凍できる、超音波解凍方法及びそのシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は、円筒形の超音波振動子を用いて、過冷却状態の食品及び一般冷凍食品に、超音波振動子を接触させ、超音波振動子を回転させることで均一に照射させ、振動子の接触圧力の強さを調節できることを特徴とする、超音波解凍方法及びそのシステムを提供する。
【0009】
円筒状の超音波振動子と同形のものを複数個つなぎ合わせた構造を持ち、振動子は振動子中央を貫通した軸に固定され、各振動子の電線は、軸の内部を通って出されることを特徴とする、超音波解凍方法及びそのシステムを提供する。
【0010】
振動子は、過冷却状態の食品及び一般冷凍食品に接触した状態にし、振動子の側面から放射させる超音波を、直接照射させることを特徴とする、超音波解凍方法及びそのシステムを提供する。
【0011】
過冷却状態の食品及び一般冷凍食品に接触した状態で、振動子を回転させながら、超音波を照射させることを特徴とする、超音波解凍方法及びそのシステムを提供する。
【0012】
超音波の照射時間及び照射強度は、過冷却状態の食品及び一般冷凍食品の材質や水分含有量により、手動・半自動・自動調節できる制御機能を持つことを特徴とする、超音波解凍方法及びそのシステムを提供する。
【0013】
超音波振動子を過冷却状態の食品及び一般冷凍食品に、接触させる圧力を調整する機構及び制御回路を持ち、圧力センサーから受け取った信号を、センサー制御回路で、アナログ信号からデジタル信号に変換する機能を持つ。手動制御方法は、入力ユニットに取り付けられた、照射時間設定スイッチで、照射時間を入力し、照射強度スイッチにより、照射強度を設定することで、制御マイコンが設定された通りの条件で、超音波の照射を制御する機能を持つことを特徴とする、超音波解凍方法及びそのシステムを提供する。
【0014】
半自動制御方法は、制御マイコンに予め複数個の制御パターンが装備してあり、入力ユニットに取り付けられた、パターン選択ボタンにより、任意の制御パターンを選択することができる、機能を持つことを特徴とする、超音波解凍方法及びそのシステムを提供する。
【0015】
全自動制御方法は、透過用と反射用との超音波センサーが取り付けられており、反射用は振動子の一部に組み込まれている。センサーから受け取った信号はアナログ信号なので、センサー制御回路でデジタル信号に変換され、制御マイコンに渡される。制御マイコンではセンサー信号を分析し、最適化した超音波を照射する機能を持つことを特徴とする、超音波解凍方法及びそのシステムを提供する。
【0016】
超音波振動子を過冷却状態の食品及び一般冷凍食品に、接触させる圧力を調整する機構及び制御回路を持ち、圧力センサーから受け取った信号を、センサー制御回路で、アナログ信号からデジタル信号に変換し、センサー信号を分析し、超音波照射時の接触圧力及び、内容物を抽出する時の圧力を最適化する特徴を持つ、超音波解凍方法及びそのシステムを提供する。
【0017】
振動子は円筒状(ローラー形)で、振動子本体はセラミックスで出来ており、適度な高度を持っている。超音波により解凍もしくは軟化された袋体容器に封入された内容物は、振動子を通して一定の圧力がかけられ、更に振動子を回転させることで、袋体容器から押し出される特徴を持つ、超音波解凍方法及びそのシステムを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、円筒状の超音波振動子(1)と同形のものを複数個つなぎ合わせた構造を持ち、振動子(1)は振動子中央を貫通した軸(2)に固定され、各振動子の電線(3)は、軸(2)の内部を通って出される。
【0019】
次に、図2は、振動子(1)は、冷凍食品に接触した状態にし、(1)の側面から放射させる超音波を直接冷凍食品(4)に照射する。
冷凍食品(4)に振動子(1)を接触させた状態で、振動子(1)を回転させながら超音波を冷凍食品(4)に照射する。
【0020】
図3は、照射時間、照射強度が可変できることを示すユニット図で、超音波の照射時間、照射強度は、冷凍食品の材質や水分含有量により、調節できる制御機能を持つ。調節は、手動、半自動、自動の3通りが可能である。
【0021】
手動の場合は、入力ユニットに取付けられた照射時間設定スイッチ(5)から照射時間を入力し、照射強度スイッチ(6)により照射強度を設定することで、制御マイコンが設定された通りの条件で超音波の照射を制御することができる。
【0022】
図4は、半自動の場合を説明している。
制御マイコンには予め複数個の制御パターンが装備してあり、入力ユニットに取付けられたパターン選択ボタン(7)により、任意の制御パターンを選択することができる。
【0023】
図5は、自動の場合を説明している。
透過用(8)と反射用(9)の超音波センサーが取り付けられており、反射用は振動子(1)の一部に組み込まれている。
センサー(8)(9)から受け取った信号はアナログ信号なので、センサー制御回路でデジタル信号に変換され制御マイコンに渡される。制御マイコンではセンサー信号を分析し、最適化した超音波を照射する。
【0024】
図6は、接触圧力の強さ(冷凍食品に超音波振動子を押し付ける力)が可変できることを説明したものである。
振動子(1)を冷凍食品に接触させる圧力(ハ)を調整する機構及び制御回路を持つ。
圧力センサー(10)から受け取った信号はアナログ信号なので、センサー制御回路でデジタル信号に変換され、制御マイコンに渡される。制御マイコンではセンサー信号を分析し、超音波照射時の接触圧力及び内容物を抽出する時の圧力を最適化する。
【0025】
振動子(1)は円筒状(ローラー形)で、振動子本体はセラミックスでできており、適度な硬度を持っている。
超音波により解凍もしくは軟化された袋体容器(11)に封入された内容物は、振動子(1)を通して一定の圧力が掛けられ、更に振動子(1)を回転させることで袋体容器(11)から押し出される。
【0026】
次に、超音波ドライブ回路と超音波発振回路について、図7で説明する。
制御マイコンから出力される超音波発振制御信号を超音波発振回路にてパルス信号に変換し、超音波ドライブ回路に送る。超音波ドライブ回路では受取ったパルス信号を指定された強度まで増幅し、超音波振動子へ出力する。
【0027】
超音波センサーユニット・圧力センサーユニットとセンサー制御回路についてであるが、超音波振動子から照射された超音波を透過センサーと反射センサーで受信する。
センサーの信号はアナログなので、センサー回路にてデジタル化して制御マイコンへ出力する。一方、冷凍食品への押し付ける力を受ける圧力センサーの信号もアナログなので、センサー回路にてデジタル化して制御マイコンへ出力する。
デジタル化された各センサーの信号は制御マイコンで解析され、制御信号として各制御回路やドライブ回路へフィードバックされる。
【0028】
入力スイッチユニットと入力信号制御回路であるが、照射時間・照射強度スイッチ、パターン選択スイッチの各「+」「−」の信号を入力信号制御回路で受け取る。
入力信号制御回路ではスイッチ信号のノイズを除去し、信号の波形を整形して制御マイコンへ出力され、解析される。
【0029】
図8では、軟化・抽出機構ユニットと抽出ユニットドライブ回路について説明する。
軟化・抽出機構ユニットは、3つのモータとそれぞれの動作機構で構成される。また、軟化・抽出機構ドライブ回路は、制御マイコンから出力されるモータ制御信号をモータの駆動信号に変換する回路で、それぞれのモータ用に構成されている。
尚、スライド用モータと回転用モータは、動作機構の構造によっては、1つのモータを兼用した機構にすることも可能である。
【0030】
AC/DC回路とDC電源回路については、商用の交流100Vを直流電流に変換し、回路で必要な直流電源を供給する回路である。
【0031】
制御マイコンは、本装置全体を制御する中心部分である。具備する機能は、各制御信号の生成、センサー信号の監視と解析、超音波発振器制御用基本データの内蔵、ユーザーインターフェイス制御である。
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、過冷却状態の食品や一般冷凍食品を、細胞の損傷もなく、風味や旨味も失わず、きわめて簡便な方法で解凍でき、省エネルギー効果も絶大であり、実用的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】円筒状超音波振動子
【図2】超音波振動子と冷凍食品の接触図
【図3】照射時間・照射強度スイッチ入力ユニット
【図4】パターン選択スイッチと入力ユニット
【図5】超音波センサーの取り付け位置
【図6】圧力センサー
【図7】ブロック図
【図8】軟化・抽出機構ユニット及びユニットドライブ回路図
【符合の説明】
1・・・振動子
2・・・振動子中央部を貫通した軸
3・・・各振動子の電線
4・・・過冷却状態及び一般冷凍食品
イ・・・回転方向
ロ・・・移動方向
ハ・・・圧力の方向
5・・・照射時間設定スイッチ
6・・・照射強度スイッチ
7・・・パターン選択スイッチ
8・・・透過用センサー
9・・・反射用センサー
10・・・圧力センサー
11・・・袋体容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の超音波振動子を用いて、過冷却状態の食品及び一般冷凍食品に、超音波振動子を直接接触させ、回転させることで均一に照射させ、振動子の接触圧力の強さを調節できることを特徴とする、超音波解凍方法及びそのシステム。
【請求項2】
円筒状の超音波振動子と同形のものを複数個つなぎ合わせた構造を持ち、振動子は振動子中央を貫通した軸に固定され、各振動子の電線は、軸の内部を通って出されることを特徴とする、特許請求項1記載の超音波解凍方法及びそのシステム。
【請求項3】
振動子は、過冷却状態の食品及び一般冷凍食品に接触した状態にし、振動子の側面から放射させる超音波を、直接照射させることを特徴とする、特許請求項1記載の超音波解凍方法及びそのシステム。
【請求項4】
過冷却状態の食品及び一般冷凍食品に接触した状態で、振動子を回転させながら、超音波を照射させることを特徴とする、特許請求項1記載の超音波解凍方法及びそのシステム。
【請求項5】
超音波の照射時間及び照射強度は、過冷却状態の食品及び一般冷凍食品の材質や水分含有量により、手動・半自動・自動調節できる制御機能を持つことを特徴とする、特許請求項1記載の超音波解凍方法及びそのシステム。
【請求項6】
超音波振動子を過冷却状態の食品及び一般冷凍食品に、接触させる圧力を調整する機構及び制御回路を持ち、圧力センサーから受け取った信号を、センサー制御回路で、アナログ信号からデジタル信号に変換する機能を持つことを特徴とする、特許請求項1記載の超音波解凍方法及びそのシステム。
【請求項7】
振動子は円筒状で、振動子本体はセラミックスで出来ており、適度な硬度があり、超音波振動子を回転させることで、内容物が抽出できる機能を持つことを特徴とする、特許請求項1記載の超音波解凍方法及びそのシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−207204(P2010−207204A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89543(P2009−89543)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(509092487)株式会社ベネボル (1)
【出願人】(509092498)株式会社ビーソル (1)
【Fターム(参考)】