過大内圧解放弁付き蓋
【課題】 地上に配置されるトラフの蓋やマンホールの蓋が風圧、強風や水圧などの外部要因によって、容易に外れないようにした過大内圧解放弁付き蓋を提供する。
【解決手段】 過大内圧解放弁付き蓋について、地上に配置される蓋1と、この蓋1の一部に構築される過大内圧解放弁10とを備え、前記蓋1は円環状の段部2とこの円環状の段部2の中央側に円形の開口3を備え、前記過大内圧解放弁10は開口11Aを有する円環状下部弁部材11と、円盤状の上部弁部材12と、前記円環状下部弁部材11と前記円盤状の上部弁部材12を繋ぐ棒状部材13とを有し、前記過大内圧解放弁10は外部要因の消滅により原状に復帰する復帰手段を具備する。
【解決手段】 過大内圧解放弁付き蓋について、地上に配置される蓋1と、この蓋1の一部に構築される過大内圧解放弁10とを備え、前記蓋1は円環状の段部2とこの円環状の段部2の中央側に円形の開口3を備え、前記過大内圧解放弁10は開口11Aを有する円環状下部弁部材11と、円盤状の上部弁部材12と、前記円環状下部弁部材11と前記円盤状の上部弁部材12を繋ぐ棒状部材13とを有し、前記過大内圧解放弁10は外部要因の消滅により原状に復帰する復帰手段を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過大内圧解放弁付き蓋に係り、特に、蓋の内部と外部との差圧によって蓋が飛ばされる恐れがあるトラフ蓋やマンホール蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道線路の沿線には、図11,図12に示すように、電力ケーブルや信号ケーブルなど多種の配線を収納し保護するため、トラフと呼ばれるコンクリート製のU型側溝が設置されている。なお、図11はトラフが閉じている状態が、図12はトラフが開いている状態が示されている。
【0003】
通常、トラフはむき出しではなく、トラフ内にゴミや動物等が入らないように、また、沿線巡回時の通路として、トラフの上面はコンクリート製の蓋で覆われている。ただし、トラフ内の点検・配線交換等の作業性を考慮して、トラフの蓋は人力で取り外し・取り付けできる程度の大きさに分割されたものが、連続的に設置される。
【0004】
現在では、鉄道線路沿いのU字形側溝の蓋を、運搬時には軽量で、設置後は列車通過時に移動し飛ばされない重量に調整され、かつひび割れや欠損を生じない側溝用蓋が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、ボール逆止弁とこれを用いた排水制御装置が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−312922号公報
【特許文献2】特開2005−98493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したトラフの蓋は、トラフの近傍を高速で列車が通過することで生じる風圧や圧力変化、さらには天候(台風などによって生じる強風)などの外部要因によって、外れる恐れがある。
【0007】
図13はトラフの蓋の上下面に作用する圧力変化から求めた差圧の実測例を示す図である。
【0008】
列車101がトラフの近傍を通過することで、トラフの蓋の上下面には、図13のような差圧が瞬間的に生じる。特に、この例では、列車の後尾側が通過する際に、トラフの蓋を浮き上がらせる方向(差圧が正)の大きな力となっている。
【0009】
一方、蓋は自重によって浮き上がる力と対抗している。すなわち、蓋が浮き上がる限界の差圧ΔPは、以下のように求められる。
【0010】
ΔP>Mg/S=13×9.8/0.125≒1(kPa)
ただし、Mは蓋の質量、gは重力加速度、Sは蓋の表面積であり、実際の値は蓋の条件によって異なる。
【0011】
上記式から、図13に示した蓋の例では、列車の後尾通過時に生じる1kPa以上の差圧によって蓋が浮き上がると見積もられ、実際に飛散した箇所の蓋とも符号した。
【0012】
また、道路に敷設されるマンホールの蓋は、大雨時に急激に排水路へ流れ込んだ水流によって引き起こされる空圧や溢れ出す水圧により外れる恐れがある。
【0013】
本発明は、上記状況に鑑みて、地上に配置されるトラフの蓋やマンホールの蓋が風圧、強風や水圧などの外部要因によって、容易に外れないようにした過大内圧解放弁付き蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕過大内圧解放弁付き蓋について、地上に配置される蓋と、この蓋の一部に構築される過大内圧解放弁とを備え、前記蓋は円環状の段部とこの円環状の段部の中央側に円形の開口を備え、前記過大内圧解放弁は開口を有する円環状下部弁部材と、円盤状の上部弁部材と、前記円環状下部弁部材と前記円盤状の上部弁部材を繋ぐ棒状部材とを有し、前記過大内圧解放弁は外部要因の消滅により原状に復帰する復帰手段を具備することを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記〔1〕記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記復帰手段が過大内圧解放弁の自重であることを特徴とする。
【0016】
〔3〕上記〔1〕記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記復帰手段が前記蓋の円環状の段部の下面と前記円環状下部弁部材の表面との間に配置される弾性体であることを特徴とする。
【0017】
〔4〕上記〔1〕記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記蓋の円環状の段部の下面に円環状の座金を配置し、この円環状の座金と前記円環状下部弁部材の表面との間にコイルスプリングを配置することを特徴とする。
【0018】
〔5〕上記〔1〕から〔4〕の何れか一項記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記棒状部材は少なくともその外表面に潤滑処理を施した棒状部材であることを特徴とする。
【0019】
〔6〕上記〔5〕記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記潤滑処理がテフロン(登録商標)処理であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地上に配置されるトラフの蓋やマンホールの蓋が風圧、天候や水圧などの外部要因によって、容易に外れないようにした過大内圧解放弁付き蓋を提供する。特に、過大内圧解放弁が開いた状態になっても、過大内圧解放弁が開く要因となった外部要因が消滅すると自動的に原状に復することができ、安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の過大内圧解放弁付き蓋は、地上に配置される蓋と、この蓋の一部に構築される過大内圧解放弁とを備え、前記蓋は円環状の段部と該円環状の段部の中央側に円形の開口を備え、前記過大内圧解放弁は開口を有する円環状下部弁部材と、円盤状の上部弁部材と、前記円環状下部弁部材と前記円盤状の上部弁部材を繋ぐ棒状部材とを有し、前記過大内圧解放弁は外部要因の消滅により原状に復帰する復帰手段を具備する。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図、図2はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が閉まっている状態を示す図、図3はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図、図4は過大内圧解放弁の斜視図である。
【0024】
これらの図において、1は蓋であり、この蓋1には円環状の段部2とその内側には蓋の円形の開口3が形成されている。
【0025】
一方、図4に示すように、蓋1の円環状の段部2とその内側には円形の開口3とに対応するように、過大内圧解放弁10が設けられている。この過大内圧解放弁10は開口11Aを有し、円環状下部弁部材(重量のある金属部材又はコンクリート部材)11と円盤状の上部弁部材(重量のある金属部材又はコンクリート部材)12と、円環状下部弁部材11と円盤状の上部弁部材12を繋ぐ棒状部材13から構成されている。
【0026】
そこで、図2に示すように、通常は、蓋1の円環状の段部2に過大内圧解放弁10の上部弁部材12の円周下部12Aが係合されており、蓋1の円形の開口3は過大内圧解放弁10の上部弁部材12によって閉じられている。
【0027】
一方、過大内圧解放弁10が外部要因により上昇すると、図3に示すように、過大内圧解放弁10は押し上げられる。すると、過大内圧解放弁10の円環状下部弁部材11の上部円周部11が蓋1の円形の開口3の下部円周部1Aに当接して、これ以上過大内圧解放弁10は外に移動することはない。
【0028】
過大内圧解放弁10に作用する外部要因が解除されると、過大内圧解放弁10は、その過大内圧解放弁10の自重により、図2に示すように、原状に復帰させることができる。
【0029】
このように、簡便な構造であり、しかも、通常は蓋に配置される過大内圧解放弁は閉じており、ゴミや動物等が入ることもない。
【0030】
図5は本発明の第2実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図、図6はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が閉まっている状態を示す図、図7はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図である。
【0031】
これらの図に示すように、蓋21の円環状の段部22とその内側には蓋の円形の開口23とに対応するように、過大内圧解放弁30が設けられている。この過大内圧解放弁30は開口31Aを有する円環状下部弁部材31と円盤状の上部弁部材32と、円環状下部弁部材31と円盤状の上部弁部材32を繋ぐ表面潤滑性を有する棒状部材33から構成されている。この表面潤滑性を有する棒状部材33としては、例えばテフロン(登録商標)性棒状部材を用いることができる。
【0032】
また、金属棒にテフロン(登録商標)性チューブを被着するようにしてもよい。
【0033】
図8は本発明の第3実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図、図9はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が閉まっている状態を示す図、図10はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図である。
【0034】
これらの図に示すように、蓋41の円環状の段部42とその内側には蓋の円形の開口43とに対応するように、過大内圧解放弁50が設けられている。この過大内圧解放弁50は開口51Aを有する円環状下部弁部材51と円盤状の上部弁部材52と、円環状下部弁部材51と円盤状の上部弁部材52を繋ぐ棒状部材53から構成されおり、この棒状部材53の下部には、円環状座金54とコイルスプリング55とが貫通している。
【0035】
そこで、図9に示すように、通常は、蓋41の円環状の段部42に過大内圧解放弁50の上部弁部材52の円周下部52Aが係合されており、蓋41の円形の開口43は過大内圧解放弁50の円盤状の上部弁部材52によって閉じられている。
【0036】
一方、過大内圧解放弁50が外部要因により上昇すると、図10に示すように、過大内圧解放弁50は押し上げられる。すると、過大内圧解放弁50の円環状下部弁部材51の棒状部材53には円環状座金54とコイルスプリング55とが貫通しており、コイルスプリング55が押し縮められた状態で蓋41の円形の開口43の下部円周部41Aに当接して、これ以上過大内圧解放弁50は外に移動することはない。
【0037】
過大内圧解放弁50に作用する外部要因が解除されると、過大内圧解放弁50は、コイルスプリング55の圧縮からの解放力により円環状下部弁部材51は下方に押し戻されて原状に復帰する。
【0038】
この実施例によれば、その過大内圧解放弁50の自重に加えて、コイルスプリング55の圧縮された状態からの解放力により、迅速的確に過大内圧解放弁50を復帰させることができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の過大内圧解放弁付き蓋は、外部条件により飛ばされることがなく、しかも自動的に元の位置に復帰できる過大内圧解放弁付き蓋として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁付が閉まっている状態を示す図である。
【図3】本発明の第1実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図である。
【図4】本発明の第1実施例を示す過大内圧解放弁の斜視図である。
【図5】本発明の第2実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が閉まっている状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図である。
【図8】本発明の第3実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図である。
【図9】本発明の第3実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が閉まっている状態を示す図である。
【図10】本発明の第3実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図である。
【図11】従来のトラフが閉じている状態を示す図である。
【図12】従来のトラフが開いている状態を示す図である。
【図13】従来のトラフの蓋の上下面に作用する差圧の実測例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1,21,41 蓋
2,22,42 円環状の段部
3,23,43,52 蓋の円形の開口
10,30,50 過大内圧解放弁
11,31,51 円環状下部弁部材
11A,31A,51A 円環状下部弁部材の開口
12,32,52 円盤状の上部弁部材
13,33,53 棒状部材
33 棒状部材[テフロン(登録商標)性棒状部材]
41A 下部円周部
54 円環状座金
55 コイルスプリング
52A 上部弁部材の円周下部
【技術分野】
【0001】
本発明は、過大内圧解放弁付き蓋に係り、特に、蓋の内部と外部との差圧によって蓋が飛ばされる恐れがあるトラフ蓋やマンホール蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道線路の沿線には、図11,図12に示すように、電力ケーブルや信号ケーブルなど多種の配線を収納し保護するため、トラフと呼ばれるコンクリート製のU型側溝が設置されている。なお、図11はトラフが閉じている状態が、図12はトラフが開いている状態が示されている。
【0003】
通常、トラフはむき出しではなく、トラフ内にゴミや動物等が入らないように、また、沿線巡回時の通路として、トラフの上面はコンクリート製の蓋で覆われている。ただし、トラフ内の点検・配線交換等の作業性を考慮して、トラフの蓋は人力で取り外し・取り付けできる程度の大きさに分割されたものが、連続的に設置される。
【0004】
現在では、鉄道線路沿いのU字形側溝の蓋を、運搬時には軽量で、設置後は列車通過時に移動し飛ばされない重量に調整され、かつひび割れや欠損を生じない側溝用蓋が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、ボール逆止弁とこれを用いた排水制御装置が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−312922号公報
【特許文献2】特開2005−98493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したトラフの蓋は、トラフの近傍を高速で列車が通過することで生じる風圧や圧力変化、さらには天候(台風などによって生じる強風)などの外部要因によって、外れる恐れがある。
【0007】
図13はトラフの蓋の上下面に作用する圧力変化から求めた差圧の実測例を示す図である。
【0008】
列車101がトラフの近傍を通過することで、トラフの蓋の上下面には、図13のような差圧が瞬間的に生じる。特に、この例では、列車の後尾側が通過する際に、トラフの蓋を浮き上がらせる方向(差圧が正)の大きな力となっている。
【0009】
一方、蓋は自重によって浮き上がる力と対抗している。すなわち、蓋が浮き上がる限界の差圧ΔPは、以下のように求められる。
【0010】
ΔP>Mg/S=13×9.8/0.125≒1(kPa)
ただし、Mは蓋の質量、gは重力加速度、Sは蓋の表面積であり、実際の値は蓋の条件によって異なる。
【0011】
上記式から、図13に示した蓋の例では、列車の後尾通過時に生じる1kPa以上の差圧によって蓋が浮き上がると見積もられ、実際に飛散した箇所の蓋とも符号した。
【0012】
また、道路に敷設されるマンホールの蓋は、大雨時に急激に排水路へ流れ込んだ水流によって引き起こされる空圧や溢れ出す水圧により外れる恐れがある。
【0013】
本発明は、上記状況に鑑みて、地上に配置されるトラフの蓋やマンホールの蓋が風圧、強風や水圧などの外部要因によって、容易に外れないようにした過大内圧解放弁付き蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕過大内圧解放弁付き蓋について、地上に配置される蓋と、この蓋の一部に構築される過大内圧解放弁とを備え、前記蓋は円環状の段部とこの円環状の段部の中央側に円形の開口を備え、前記過大内圧解放弁は開口を有する円環状下部弁部材と、円盤状の上部弁部材と、前記円環状下部弁部材と前記円盤状の上部弁部材を繋ぐ棒状部材とを有し、前記過大内圧解放弁は外部要因の消滅により原状に復帰する復帰手段を具備することを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記〔1〕記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記復帰手段が過大内圧解放弁の自重であることを特徴とする。
【0016】
〔3〕上記〔1〕記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記復帰手段が前記蓋の円環状の段部の下面と前記円環状下部弁部材の表面との間に配置される弾性体であることを特徴とする。
【0017】
〔4〕上記〔1〕記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記蓋の円環状の段部の下面に円環状の座金を配置し、この円環状の座金と前記円環状下部弁部材の表面との間にコイルスプリングを配置することを特徴とする。
【0018】
〔5〕上記〔1〕から〔4〕の何れか一項記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記棒状部材は少なくともその外表面に潤滑処理を施した棒状部材であることを特徴とする。
【0019】
〔6〕上記〔5〕記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記潤滑処理がテフロン(登録商標)処理であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地上に配置されるトラフの蓋やマンホールの蓋が風圧、天候や水圧などの外部要因によって、容易に外れないようにした過大内圧解放弁付き蓋を提供する。特に、過大内圧解放弁が開いた状態になっても、過大内圧解放弁が開く要因となった外部要因が消滅すると自動的に原状に復することができ、安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の過大内圧解放弁付き蓋は、地上に配置される蓋と、この蓋の一部に構築される過大内圧解放弁とを備え、前記蓋は円環状の段部と該円環状の段部の中央側に円形の開口を備え、前記過大内圧解放弁は開口を有する円環状下部弁部材と、円盤状の上部弁部材と、前記円環状下部弁部材と前記円盤状の上部弁部材を繋ぐ棒状部材とを有し、前記過大内圧解放弁は外部要因の消滅により原状に復帰する復帰手段を具備する。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図、図2はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が閉まっている状態を示す図、図3はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図、図4は過大内圧解放弁の斜視図である。
【0024】
これらの図において、1は蓋であり、この蓋1には円環状の段部2とその内側には蓋の円形の開口3が形成されている。
【0025】
一方、図4に示すように、蓋1の円環状の段部2とその内側には円形の開口3とに対応するように、過大内圧解放弁10が設けられている。この過大内圧解放弁10は開口11Aを有し、円環状下部弁部材(重量のある金属部材又はコンクリート部材)11と円盤状の上部弁部材(重量のある金属部材又はコンクリート部材)12と、円環状下部弁部材11と円盤状の上部弁部材12を繋ぐ棒状部材13から構成されている。
【0026】
そこで、図2に示すように、通常は、蓋1の円環状の段部2に過大内圧解放弁10の上部弁部材12の円周下部12Aが係合されており、蓋1の円形の開口3は過大内圧解放弁10の上部弁部材12によって閉じられている。
【0027】
一方、過大内圧解放弁10が外部要因により上昇すると、図3に示すように、過大内圧解放弁10は押し上げられる。すると、過大内圧解放弁10の円環状下部弁部材11の上部円周部11が蓋1の円形の開口3の下部円周部1Aに当接して、これ以上過大内圧解放弁10は外に移動することはない。
【0028】
過大内圧解放弁10に作用する外部要因が解除されると、過大内圧解放弁10は、その過大内圧解放弁10の自重により、図2に示すように、原状に復帰させることができる。
【0029】
このように、簡便な構造であり、しかも、通常は蓋に配置される過大内圧解放弁は閉じており、ゴミや動物等が入ることもない。
【0030】
図5は本発明の第2実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図、図6はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が閉まっている状態を示す図、図7はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図である。
【0031】
これらの図に示すように、蓋21の円環状の段部22とその内側には蓋の円形の開口23とに対応するように、過大内圧解放弁30が設けられている。この過大内圧解放弁30は開口31Aを有する円環状下部弁部材31と円盤状の上部弁部材32と、円環状下部弁部材31と円盤状の上部弁部材32を繋ぐ表面潤滑性を有する棒状部材33から構成されている。この表面潤滑性を有する棒状部材33としては、例えばテフロン(登録商標)性棒状部材を用いることができる。
【0032】
また、金属棒にテフロン(登録商標)性チューブを被着するようにしてもよい。
【0033】
図8は本発明の第3実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図、図9はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が閉まっている状態を示す図、図10はその過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図である。
【0034】
これらの図に示すように、蓋41の円環状の段部42とその内側には蓋の円形の開口43とに対応するように、過大内圧解放弁50が設けられている。この過大内圧解放弁50は開口51Aを有する円環状下部弁部材51と円盤状の上部弁部材52と、円環状下部弁部材51と円盤状の上部弁部材52を繋ぐ棒状部材53から構成されおり、この棒状部材53の下部には、円環状座金54とコイルスプリング55とが貫通している。
【0035】
そこで、図9に示すように、通常は、蓋41の円環状の段部42に過大内圧解放弁50の上部弁部材52の円周下部52Aが係合されており、蓋41の円形の開口43は過大内圧解放弁50の円盤状の上部弁部材52によって閉じられている。
【0036】
一方、過大内圧解放弁50が外部要因により上昇すると、図10に示すように、過大内圧解放弁50は押し上げられる。すると、過大内圧解放弁50の円環状下部弁部材51の棒状部材53には円環状座金54とコイルスプリング55とが貫通しており、コイルスプリング55が押し縮められた状態で蓋41の円形の開口43の下部円周部41Aに当接して、これ以上過大内圧解放弁50は外に移動することはない。
【0037】
過大内圧解放弁50に作用する外部要因が解除されると、過大内圧解放弁50は、コイルスプリング55の圧縮からの解放力により円環状下部弁部材51は下方に押し戻されて原状に復帰する。
【0038】
この実施例によれば、その過大内圧解放弁50の自重に加えて、コイルスプリング55の圧縮された状態からの解放力により、迅速的確に過大内圧解放弁50を復帰させることができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の過大内圧解放弁付き蓋は、外部条件により飛ばされることがなく、しかも自動的に元の位置に復帰できる過大内圧解放弁付き蓋として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁付が閉まっている状態を示す図である。
【図3】本発明の第1実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図である。
【図4】本発明の第1実施例を示す過大内圧解放弁の斜視図である。
【図5】本発明の第2実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が閉まっている状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図である。
【図8】本発明の第3実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の斜視図である。
【図9】本発明の第3実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が閉まっている状態を示す図である。
【図10】本発明の第3実施例を示す過大内圧解放弁付き蓋の過大内圧解放弁が上昇して開いている状態を示す図である。
【図11】従来のトラフが閉じている状態を示す図である。
【図12】従来のトラフが開いている状態を示す図である。
【図13】従来のトラフの蓋の上下面に作用する差圧の実測例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1,21,41 蓋
2,22,42 円環状の段部
3,23,43,52 蓋の円形の開口
10,30,50 過大内圧解放弁
11,31,51 円環状下部弁部材
11A,31A,51A 円環状下部弁部材の開口
12,32,52 円盤状の上部弁部材
13,33,53 棒状部材
33 棒状部材[テフロン(登録商標)性棒状部材]
41A 下部円周部
54 円環状座金
55 コイルスプリング
52A 上部弁部材の円周下部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)地上に配置される蓋と、
(b)該蓋の一部に構築される過大内圧解放弁とを備え、
(c)前記蓋は円環状の段部と該円環状の段部の中央側に円形の開口を備え、前記過大内圧解放弁は開口を有する円環状下部弁部材と、円盤状の上部弁部材と、前記円環状下部弁部材と前記円盤状の上部弁部材を繋ぐ棒状部材とを有し、前記過大内圧解放弁は外部要因の消滅により原状に復帰する復帰手段を具備することを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【請求項2】
請求項1記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記復帰手段が過大内圧解放弁の自重であることを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【請求項3】
請求項1記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記復帰手段が前記蓋の円環状の段部の下面と前記円環状下部弁部材の表面との間に配置される弾性体であることを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【請求項4】
請求項1記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記蓋の円環状の段部の下面に円環状の座金を配置し、該円環状の座金と前記円環状下部弁部材の表面との間にコイルスプリングを配置することを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記棒状部材は少なくともその外表面に潤滑処理を施した棒状部材であることを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【請求項6】
請求項5記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記潤滑処理がテフロン(登録商標)処理であることを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【請求項1】
(a)地上に配置される蓋と、
(b)該蓋の一部に構築される過大内圧解放弁とを備え、
(c)前記蓋は円環状の段部と該円環状の段部の中央側に円形の開口を備え、前記過大内圧解放弁は開口を有する円環状下部弁部材と、円盤状の上部弁部材と、前記円環状下部弁部材と前記円盤状の上部弁部材を繋ぐ棒状部材とを有し、前記過大内圧解放弁は外部要因の消滅により原状に復帰する復帰手段を具備することを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【請求項2】
請求項1記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記復帰手段が過大内圧解放弁の自重であることを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【請求項3】
請求項1記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記復帰手段が前記蓋の円環状の段部の下面と前記円環状下部弁部材の表面との間に配置される弾性体であることを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【請求項4】
請求項1記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記蓋の円環状の段部の下面に円環状の座金を配置し、該円環状の座金と前記円環状下部弁部材の表面との間にコイルスプリングを配置することを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記棒状部材は少なくともその外表面に潤滑処理を施した棒状部材であることを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【請求項6】
請求項5記載の過大内圧解放弁付き蓋において、前記潤滑処理がテフロン(登録商標)処理であることを特徴とする過大内圧解放弁付き蓋。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−285845(P2008−285845A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130127(P2007−130127)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
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