説明

過酢酸含有廃水を処理する処理方法及び処理装置

【課題】処理装置内の微生物の繁殖を抑制して、装置内の清掃を大幅に低減できる効果的な過酢酸含有廃水の処理方法と装置を提供する。
【解決手段】被処理水8中の過酸化水素及び過酢酸を活性炭又は遷移金属系触媒から選ばれた過酸化物分解材1に接触させて分解し、分解生成物を含むイオン類をイオン交換樹脂5と接触させて除去する過酢酸含有廃水の処理方法において、1により分解される過酸化水素及び過酢酸を含む8から、過酸化水素及び過酢酸を1〜10mg/Lの範囲の濃度とした処理水2を得、該2を5と接触する直前に、2の過酸化水素及び過酢酸を完全に還元反応させ得る量の還元剤7を2中に添加して還元中和させ、該還元中和された処理水をカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床の5に接触することとしたものであり、前記処理水2は、前記8の一部を1により分解させずに漏洩及び/又はバイパスさせて行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品容器殺菌廃水等の過酢酸含有廃水を処理する処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食品工場においてPET容器等に各種食品を無菌充填する場合には、食品を充填する前に、高濃度の過酸化水素と過酢酸が含有された、いわゆるオキソニアと呼ばれる殺菌剤を用いて容器の殺菌を行っている。殺菌後の殺菌廃水は、殺菌効果が殆どそのまま残存しており、これらの廃水をそのまま廃棄すると、廃水処理設備において、生物処理を行う微生物を死滅させて、廃水処理能力の低下を招く。そのため、少なくとも過酸化水素と過酢酸を分解し、殺菌能力を除去することが必要となる。また、昨今の水回収ニーズから、殺菌能力を除去した廃水を、更に生物処理やイオン交換樹脂により処理して回収、再利用することが広く行われている。
過酢酸を含有する廃水を処理する方法は種々あるが、代表的な方法として、活性炭等の過酸化物分解材と接触させ、過酸化水素と過酢酸を各々水と酢酸に分解し、その後イオン交換樹脂に通水し、残存する酢酸等の残留イオンを除去する方法(特開2001−129564号公報や特開2001−170657号公報)が知られている。
【0003】
しかしながら、公知の方法において、過酸化物分解材により還元された殺菌廃水は、過酸化物が完全に分解されるため殺菌効果がなくなり、かつ微生物の栄養源となる酢酸を含有する水となる。また、オキソニアによる殺菌は、一般的に80℃以上の温度で殺菌されるため、殺菌廃水も70℃程度の温廃水となる。そのため、水温が高く、かつ酢酸を含有した水であるため、細菌類やカビ類等の微生物が非常に繁殖し易く、頻繁な装置内の清掃及び殺菌作業が必要となっており、装置の運転の面及びメンテナンスの面で大きな問題となっている。
【0004】
また、公知の方法では、過酸化物分解材により過酸化水素と過酢酸を完全に分解させるため、還元効率の点から過酸化水素及び過酢酸濃度の高い廃水には適用し難い。つまり、公知の方法は、殺菌廃水の適用範囲が過酸化水素や過酢酸濃度が200mg/L程度と比較的低濃度の廃水にのみ好適に適用されるものである。
更に、比較的低濃度の殺菌廃水を対象としているにも拘らず、過酸化水素及び過酢酸のリークを抑制するため、過酸化物分解材への通水速度は、空塔速度として20hr−1程度と比較的低くする必要がある。このことは、過酸化物分解材量が多くなり、かつ設置スペースや設備イニシャルコストが増大することを意味する。
【0005】
また、特開2001−129564号公報では、過酢酸を還元後、カチオン交換樹脂と接触させ、その後アニオン交換樹脂と接触させている。イオン交換樹脂による除去は化学平衡反応に基づいているため、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を各々別に通水する場合、カチオン交換樹脂塔、アニオン交換樹脂塔からは各々微量のイオンがリークする。このことは、処理水中に微量の酢酸イオンが存在することを意味し、処理水水質の不良を招くだけでなく、前記段落番号(0003)の問題によりイオン交換樹脂の周りに微生物が固着することによるイオン交換処理性能低下させる要因にも成り得る。
以上のように、煩雑なメンテナンスの問題や、廃水の適用範囲が限定される問題、又は処理水質の不良、更にはイオン交換樹脂の性能低下といった問題があり、その対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−129564号公報
【特許文献2】特開2001−170657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の問題点を包括的に解消して、装置内の微生物の繁殖を抑制して、装置内の清掃を大幅に低減できる効果的な過酢酸含有廃水の処理方法及び処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明では、被処理水中の過酸化水素及び過酢酸を活性炭又は遷移金属系触媒から選ばれた過酸化物分解材に接触させて分解し、その後、分解生成された酢酸を含むイオン類をイオン交換樹脂と接触させて除去する過酢酸含有廃水の処理方法において、前記過酸化物分解材により分解される過酸化水素及び過酢酸を含む被処理水から、過酸化水素及び過酢酸が微生物の増殖を抑制し得る1mg/Lから10mg/Lの範囲の濃度とした処理水を得る工程と、該処理水をイオン交換樹脂と接触させる直前に、該処理水中の過酸化水素及び過酢酸を完全に還元反応させ得る量の還元剤を該処理水中に添加して還元中和させる工程と、該還元中和された処理水をカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床のイオン交換樹脂床に供給する工程とを有することを特徴とする過酢酸含有廃水の処理方法としたものである。
前記処理方法において、被処理水から1mg/Lから10mg/Lの範囲の濃度とした処理水を得る工程は、前記被処理水の一部を過酸化物分解材により分解させずに漏洩及び/又はバイパスさせて行うのがよい。
【0009】
また、本発明では、被処理水中の過酸化水素及び過酢酸を分解する活性炭又は遷移金属系触媒から選ばれた過酸化物分解材が充填された充填塔と、該充填塔で分解生成された酢酸を含むイオン類を除去するイオン交換樹脂塔と、前記充填塔と該イオン交換樹脂塔とを接続する流路とを有する過酢酸含有廃水の処理装置において、前記過酸化物分解材充填塔から流出する処理水が、過酸化水素及び過酢酸の濃度を微生物の増殖を抑制し得る1mg/Lから10mg/L範囲になるように調整する手段と、前記充填塔とイオン交換樹脂塔とを接続する流路のイオン交換樹脂塔への直前の流路に、前記処理水中の過酸化水素及び過酢酸を完全に還元させ得る量の還元剤を該処理水中に添加する手段とを有すると共に、前記イオン交換樹脂塔がカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床であることを特徴とする過酢酸含有廃水の処理装置としたものである。
前記処理装置において、処理水中の過酸化水素及び過酢酸の濃度を調整する手段は、被処理水の一部を過酸化物分解材充填塔を漏洩及び/又はバイパスさせて行うものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の過酢酸含有廃水の処理方法及び処理装置によれば、処理装置内の微生物の繁殖が効果的に抑制され、頻繁な装置内の清掃及び殺菌作業を大幅に低減でき、更に、イオン交換樹脂を混床式とすることにより、得られる処理水は電気伝導率が極めて低い、純水として利用可能な水を得ることが可能となるため工業的に極めて有用な方法である。また、過酸化物還元材充填塔では、廃水を高いSVで通水するため過酸化物還元材の充填量を低減しうる装置及び方法となり、運転コスト及び環境負荷低減にも繋がる発明である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の処理装置の一例を示す系統図。
【図2】本発明の処理装置の他の例を示す系統図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によれば、活性炭や白金又はマンガンに代表される遷移金属系触媒から選ばれた過酸化物分解材と接触後の流出水には、任意の濃度の過酸化水素や過酢酸を残留させることが可能なため、微生物の増殖を抑制することが可能となる。過酸化水素や過酢酸を残留させる方法としては、過酸化物分解材への通水速度を上昇させるか、又は、被処理水である殺菌廃水の一部をバイパスさせ、その後過酸化物分解材と接触した処理水とを混合する方法が挙げられる。
過酸化水素や過酢酸を残留させる方法は、上記に限定されるものではないが、過酸化物分解材への通水速度を上昇させることは、装置内の微生物増殖を抑制できるだけでなく、過酸化物分解材量を低減させることが可能となる。更に、被処理水である殺菌廃水の過酸化水素や過酢酸濃度が比較的高い廃水に対しても適用することができ、廃水回収再利用できる廃水の適用範囲が広くなり、回収水量を多くさせることが可能となる。
【0013】
過酸化水素及び過酢酸が残留した処理水は、後段のイオン交換樹脂塔に流入する直前に還元剤が添加され、残留した過酸化水素及び過酢酸は完全に還元中和される。このときに使用される還元剤は、重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、アスコルビン酸塩、シュウ酸塩等が挙げられ、特に制限されないが、薬品取扱い易さの観点から重亜硫酸ナトリウムが好適に用いられる。還元中和後のイオン交換樹脂塔に流入する水には、過酢酸が還元された酢酸イオンと、未反応の還元剤、また還元剤が過酸化物により酸化されたカチオン種やアニオン種のイオン類が存在する。還元剤に重亜硫酸ナトリウムを使用した場合は、カチオン種としてナトリウムイオンが、アニオン種として硫酸イオン、亜硫酸イオン、そして酢酸イオンが含まれる。これらのイオン類は、イオン交換樹脂により除去されるが、カチオン交換樹脂塔、アニオン交換樹脂塔を各々単独の塔として順次被処理水を通水すると、次のような問題が存在する。すなわち、まず、カチオン交換樹脂に通水すると、ナトリウム等のカチオン種のみが除去されるが、イオン交換反応は平衡反応であるため、どうしても若干のカチオン種がリークする。またアニオン交換樹脂にのみ通水しても、カチオン交換樹脂と同様、若干のアニオン種がリークする。
【0014】
これらのリークをより低減し高度に処理された水とするためには、上記のカチオン交換樹脂塔とアニオン交換樹脂塔からなる2床2塔式装置を多数直列に接続してリークするイオンを限りなく除去する方法があるが、この方法と同様の効果が得られるカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を同一樹脂塔内に充填混合した混床式のイオン交換樹脂塔とするのが最良の方法である。また、混床式とすることで、イオン交換樹脂塔は1塔のみとなり、省スペース化を図る効果も得られる。
【0015】
また、使用するイオン交換樹脂において、一般的なアニオン交換樹脂の使用最高温度は最大でも60℃程度に対し、該廃水は70℃程度の温廃水であるため、アニオン交換樹脂の熱分解反応によるイオン交換容量の低下等、イオン交換性能低下が進行し易く、イオン交換樹脂の頻繁な交換により、運転コストの増大を招くという問題も生じる。そのため、使用するアニオン交換樹脂は耐熱性のある、例えばムロマチテクノス株式会社製の「OT−57−OH」のような樹脂を使用することも有用である。
温廃水を熱交換等により温度を低下させた後、処理することも可能であるが、再度殺菌水として再利用する場合を考慮すると、できるだけ温度は低下させない方が好ましい。
【0016】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の過酢酸含有廃水の処理装置の実施の形態を示す系統図である。
図1の実施の形態を説明する。まず、過酢酸含有廃水8を活性炭等を充填した過酸化物分解材充填塔1に高い通水速度で通水して、処理水中に過酸化水素と過酢酸を残留させ、過酸化物濃度を1mg/Lから10mg/Lとした処理水2を得る。このときの過酸化物分解材充填塔1の通水速度は特に限定されないが、上記過酸化物濃度とするために空塔速度(以下SVと記す)は100hr−1以上とするのが好ましい。このような通水により、過酸化物分解材充填塔内、及びイオン交換樹脂塔までの配管を含む装置内の微生物の繁殖を抑制することができる。その後、処理水2は、混床式イオン交換樹脂塔5に流入する直前に還元剤7が添加され、過酸化物を完全に還元反応せしめる。還元剤7の種類及び添加量に制限はないが、添加量については、残留過酸化水素及び過酢酸と当量反応する量の1倍量から2倍量の範囲とするのが好ましい。その後、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床式イオン交換樹脂塔5に流入され良質の純水9が得られる。
【0017】
次に、図2を用いて本発明のもう1つの実施の形態を説明する。
本実施の形態において、過酸化物分解剤充填塔1の流出水3の過酸化物濃度は1mg/Lから10mg/Lの範囲に限定されず、1mg/L未満の僅かな漏洩で良い。この時の過酸化物分解材充填塔1の通水速度は、特に限定されないが、50hr−1以上とするのが好ましい。このことにより、少なくとも過酸化物分解材充填塔1内においては、微生物の繁殖を抑制することが可能となる。その後の設備の微生物増殖抑制手段として、流出水3中の過酸化物濃度を1mg/Lから10mg/Lの範囲に調整する手段として、過酢酸含有排水の一部を過酸化物分解材充填塔1に通水せずにバイパス6させた後、過酸化物分解材充填塔の流出水3と合流及び混合させ、上記過酸化物濃度に調整された処理水4を得る。その後の工程は、図1で説明した内容と同じである。図2の装置及び方法は、漏洩させる過酸化物濃度を過酸化物分解材充填塔1をバイパス6する廃水原水流量で制御するものであり、過酸化物濃度の制御を容易に実施できる点がメリットである。
【0018】
このような本発明の方法及び装置は、過酢酸含有廃水を高度に処理するのに好適であり、特に装置内の微生物増殖を抑制し、大幅なメンテナンス性の向上が達成できるだけでなく、過酸化物分解材の量をも低減し、更に処理水は純水として使用が可能なほど高度に処理された水を得ることが可能な方法及び装置となる。
また、過酸化物分解材は、微生物を抑制するために蒸気及び/又は90℃以上の熱水で殺菌して用いることができる。
【実施例】
【0019】
次に、実施例で本発明を具体的に説明する。
実施例1
過酸化水素及び過酢酸模擬廃水(以下模擬廃水と記す)を調製し、粒状活性炭「エバダイヤLG−20S(荏原エンジニアリングサービス株式会社製)」を充填したカラムに異なるSVで通水し、得られた過酸化水素及び過酢酸、及び、酢酸の濃度を調べた。また、カラム流出水を連続的にプラスチック製テストピースと接触させ、通水終了後のテストピース表面のヌメリも観察した。表1に通水条件と結果を示す。
【0020】
【表1】

※1)酢酸濃度は還元中和した後、TOC測定後、酢酸濃度に換算した値から過酢
酸濃度を引いた濃度。
※2)通水18時間における1時間毎の平均分析値。
【0021】
表1よりSV 50hr−1以上で過酸化水素と過酢酸が処理水中に漏洩し、その漏洩濃度に応じて、テストピース表面のヌメリ、つまり微生物増殖が抑制された効果が認められた。本結果において、微生物の増殖が抑制された最大の理由は、過酸化水素より殺菌能力がより優れている過酢酸濃度が高いためと推察される。また、本結果から微生物増殖が抑制される過酢酸濃度は、少なくとも1mg/L以上がとすることが好ましい。
【0022】
実施例2
実施例1と同じ模擬廃水と粒状活性炭を充填したカラムを用い、SV50hr−1に相当する流量を所定の流量比で一部をバイパスさせ、かつ残りの流量をカラムに通水した。更に、バイパスした模擬原水は、カラム流出水と合流させて混合水を流出せしめ、得られたカラム流出水と混合水の過酸化水素及び過酢酸、及び酢酸の濃度を各々調べた。また、実施例1と同様に、混合水を連続的にプラスチック製テストピースと接触させ、通水終了後のテストピース表面のヌメリも観察した。表2に通水条件と結果を示す。
【0023】
【表2】

※3)酢酸濃度は還元中和した後、TOC測定後、酢酸濃度に換算した値から過酢
酸濃度を引いた濃度。
※4)通水18時間における1時間毎の平均分析値。
※5)バイパス流量比は「バイパス流量:カラム流出水流量」
【0024】
表2より模擬廃水を一部バイパスさせたのち、カラム流出水と混合した処理水においても、実施例1と同様に、過酢酸濃度が少なくとも1mg/L以上でテストピース表面のヌメリが抑制された効果が認められた。
【0025】
実施例3
次にエバダイヤLG−20Sを充填したカラムに模擬廃水を実施例1の条件の1つであるSV100hr−1で通水した処理水に対して、残存した過酸化水素及び過酢酸を還元する2倍当量となる16mg/Lの重亜硫酸ソーダを添加した後、混床式イオン交換樹脂塔に通水して得られた処理水の各濃度を調べた。表3に結果を示す。
【0026】
【表3】

※6)通水6時間後の処理水
カチオン交換樹脂:ダウケミカル製 「DOWEX MONOSPHERE
650C」を300mL使用
アニオン交換樹脂:ダウケミカル製 「DOWEX MONOSPHERE
550A」を300mL使用
【0027】
表3より、酢酸は本分析における定量下限値である0.01mg/L未満であり、かつ混床式イオン交換樹脂処理水の電気伝導率は0.0059mS/mと、超純水と同レベルの値であり、極めて良好な水質であった。
【0028】
比較例1
実施例1と同様にエバダイヤLG−20Sを充填したカラムに模擬廃水をSV100hr−1で通水した処理水に対して、残存した過酸化水素及び過酢酸を還元する2倍当量となる16mg/Lの重亜硫酸ソーダを添加した後、カチオン交換樹脂塔、アニオン交換樹脂塔へ順次通水する2床2塔式のイオン交換樹脂処理水の各濃度を調べた。表4に結果を示す。
【0029】
【表4】

※7)通水6時間後の処理水
カチオン交換樹脂:ダウケミカル製 「DOWEX MONOSPHERE
650C」を300mL使用
アニオン交換樹脂:ダウケミカル製 「DOWEX MONOSPHERE
550A」を300mL使用
表4より、0.83mg/Lの酢酸が存在し、かつ電気伝導率は0.621mS/mと、実施例3と比較して、明らかに高い値であった。
【符号の説明】
【0030】
1:過酸化物分解材充填塔、2:処理水、3:流出水、4:処理水、5:混床式イオン交換樹脂塔、6:バイパス路、7:還元剤、8:過酢酸含有廃水、9:純水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中の過酸化水素及び過酢酸を活性炭又は遷移金属系触媒から選ばれた過酸化物分解材に接触させて分解し、その後、分解生成された酢酸を含むイオン類をイオン交換樹脂と接触させて除去する過酢酸含有廃水の処理方法において、前記過酸化物分解材により分解される過酸化水素及び過酢酸を含む被処理水から、過酸化水素及び過酢酸が微生物の増殖を抑制し得る1mg/Lから10mg/Lの範囲の濃度とした処理水を得る工程と、該処理水をイオン交換樹脂と接触させる直前に、該処理水中の過酸化水素及び過酢酸を完全に還元反応させ得る量の還元剤を該処理水中に添加して還元中和させる工程と、該還元中和された処理水をカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床のイオン交換樹脂床に供給する工程とを有することを特徴とする過酢酸含有廃水の処理方法。
【請求項2】
前記被処理水から1mg/Lから10mg/Lの範囲の濃度とした処理水を得る工程は、前記被処理水の一部を過酸化物分解材により分解させずに漏洩及び/又はバイパスさせて行うことを特徴とする請求項1記載の過酢酸含有廃水の処理方法。
【請求項3】
被処理水中の過酸化水素及び過酢酸を分解する活性炭又は遷移金属系触媒から選ばれた過酸化物分解材が充填された充填塔と、該充填塔で分解生成された酢酸を含むイオン類を除去するイオン交換樹脂塔と、前記充填塔と該イオン交換樹脂塔とを接続する流路とを有する過酢酸含有廃水の処理装置において、前記過酸化物分解材充填塔から流出する処理水が、過酸化水素及び過酢酸の濃度を微生物の増殖を抑制し得る1mg/Lから10mg/L範囲になるように調整する手段と、前記充填塔とイオン交換樹脂塔とを接続する流路のイオン交換樹脂塔への直前の流路に、前記処理水中の過酸化水素及び過酢酸を完全に還元させ得る量の還元剤を該処理水中に添加する手段とを有すると共に、前記イオン交換樹脂塔がカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が混合充填された混床であることを特徴とする過酢酸含有廃水の処理装置。
【請求項4】
前記処理水中の過酸化水素及び過酢酸の濃度を調整する手段が、被処理水の一部を過酸化物分解材充填塔を漏洩及び/又はバイパスさせて行うものであることを特徴とする請求項3記載の過酢酸含有廃水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−45472(P2012−45472A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188968(P2010−188968)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(591030651)水ing株式会社 (94)
【Fターム(参考)】