説明

過酸化水素モニター装置及び過酸化水素モニター方法

【課題】過酸化水素の分解の時に発生する自由ラジカルによって形成される磁気場を検出することによって、過酸化水素の分解反応をモニターするモニター装置及びモニター方法を提供する。
【解決手段】過酸化水素モニター装置100は試料が提供される試料領域150に磁気場を印加する磁気場発生器120、試料領域150の磁気場を感知する磁気場感知器110、磁気場感知器110の感知結果を出力する信号処理器130、及び磁気場発生器120、磁気場感知器110及び信号処理器130を制御する制御器140で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過酸化水素モニター装置及び過酸化水素モニター方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学、生物、医学、環境工学、半導体等で過酸化水素(hydrogen peroxide)が使用されている。過酸化水素が分解されながら、発生する多様な種類のイオンと自由ラジカル(free radical)とは高分子物質の合成又は環境有害物質の分解に使用されている。
【0003】
過酸化水素の分解反応を研究したり、産業で応用したり、又は生体内の毒性メカニズムを明らかにするために、過酸化水素が自由ラジカル及びその他のイオンとしてどう分解されるのかに対する情報が要求される。現在、過酸化水素の初期濃度と終止点(end point)の濃度を測定して中間産物を類推する方法が使用されている。
【0004】
過水濃度測定は発色試薬又は蛍光試薬を利用する方法とMRI(Magnetic Resonance Imaging)又はESR(Electromagnetic Spin Resonance)とを利用する方法が最も広く使用されている。
【0005】
発色試薬又は蛍光試薬を利用する方法は終止点の過酸化水素の濃度を測定できるが、過酸化水素の分解反応が進行されるか否かを分かることができない短所がある。即ち、発色試薬又は蛍光試薬を利用する方法は過水が分解されながら、発生される様々なイオンと自由ラジカルの濃度とを測定できない。
【0006】
MRI又はESRを利用する方法は過酸化水素の分解反応の過程を分かるが、高価であり、大型である装備が要求され、また過酸化水素の分解反応の時に存在する時間がマイクロ秒以下である分解産物の分析が難しい。
【0007】
また、発色試薬又は蛍光試薬を利用する方法とMRI又はESRを利用する方法は生体内で発生する過酸化水素の分解反応を測定するのが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許公開第10−2010−0107963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は過酸化水素の分解反応をモニターするモニター装置及びモニター方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、生体試料のように試料の採取が不可能であり、過酸化水素の分解反応が発生する位置の確認が必要である試料の過酸化水素の分解反応をモニターするモニター装置及びモニター方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態による過酸化水素モニター装置は、試料が提供される試料領域に磁気場を印加する磁気場発生器と、前記試料領域の磁気場を感知する磁気場感知器と、前記磁気場感知器の感知結果を出力する信号処理器と、前記磁気場発生器、前記磁気場感知器、及び前記信号処理器を制御する制御器と、を含む。
【0012】
実施形態として、前記磁気場発生器が前記試料領域に磁気場を印加した後に、前記磁気場感知器が前記試料が提供される領域の磁気場を感知する。
【0013】
実施形態として、前記磁気場発生器は10ミリテスラ以下の磁気場を発生する。
【0014】
実施形態として、前記試料領域で、試料を前記磁気場感知器を通過するように運搬する運搬器をさらに含む。
【0015】
実施形態として、前記磁気場感知器によって、感知される磁気場の強さの変化が基準値の以上である時、過酸化水素の分解が発生することと判別される。
【0016】
本発明の実施形態による過酸化水素モニター方法は、試料へ磁気場を印加する段階と、前記試料の磁気場を測定する段階と、前記測定された磁気場の強さにしたがって、過酸化水素の分解をモニターする段階と、を含む。
【0017】
実施形態として、前記測定された磁気場の強さの変化が基準値の以上である時、前記過酸化水素の分解が発生することと判別される。
【0018】
実施形態として、前記測定された磁気場の強さの変化にしたがって前記過酸化水素の初期濃度が判別される。
【0019】
実施形態として、前記測定された磁気場の強さの変化にしたがって前記過酸化水素の分解比率が判別される。
【0020】
実施形態として、前記過酸化水素の分解をモニターする段階は、自由ラジカルの生成にしたがう磁界強度の変化をモニターする段階を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、過酸化水素の分解の時に発生する自由ラジカルによって形成される磁気場を検出することによって、過酸化水素の分解反応をモニターするモニター装置及びモニター方法が提供される。
【0022】
本発明によれば、生体試料のように試料の採取が不可能であり、過酸化水素の分解反応が発生する位置の確認が必要である試料の過酸化水素の分解反応をモニターするモニター装置及びモニター方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態による過酸化水素モニター装置を示すブロック図である。
【図2】過酸化水素測定方法を示す順序図である。
【図3】過酸化水素水の磁界強度の変化を示すグラフである。
【図4A】多様な濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示すグラフである。
【図4B】多様な濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示すグラフである。
【図4C】多様な濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示すグラフである。
【図4D】多様な濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示すグラフである。
【図4E】多様な濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示すグラフである。
【図4F】多様な濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示すグラフである。
【図5】図4の線の磁界強度の変化を示すグラフである。
【図6】過酸化水素モニター装置100で試料が移動される例を示すブロック図である。
【図7】図6で運搬器が磁気場感知器を通過する時に発生する磁界強度の変化を示すグラフである。
【図8】図1の過酸化水素検出装置の応用例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下で、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明の技術的思想を容易に実施できる程度に詳細に説明するために、本発明の実施形態を添付された図面を参照して説明する。
【0025】
図1は本発明の実施形態による過酸化水素モニター装置100を示すブロック図である。図1を参照すれば、過酸化水素モニター装置100は試料領域150の磁気場を感知する磁気場感知器110、試料領域150に磁気場を印加する磁気場発生器120、磁気場感知器110の感知結果を出力する信号処理器130、及び磁気場感知器110、磁気場発生器120及び信号処理器130を制御する制御器140を含む。
【0026】
磁気場感知器110は試料領域150の磁気場、さらに詳細には磁気場の変化を感知できる。感知結果は信号処理器130へ出力される。
【0027】
磁気場発生器120は試料領域150に磁気場を印加できる。例えば、磁気場発生器120は試料領域150に磁気場を印加して試料領域150の磁気場を安定化できる。磁気場発生器110は10ミリテスラ以下の磁気場を試料領域150に印加できる。
【0028】
信号処理器130は磁気場感知器110の感知結果を出力できる。信号処理器130は磁気場感知器110の感知結果を増幅し、増幅された信号をディスプレイ装置のようなインターフェイスを通じて出力できる。
【0029】
制御器140は磁気場感知器110、磁気場発生器120、及び信号処理器130を制御できる。制御器140は磁気場発生器120が特定時間の間に試料領域150に磁気場を印加した後、磁気場感知器110が試料領域150の磁気場を感知するように制御できる。制御器140は磁気場感知器110の感知結果を出力するように信号処理器130を制御できる。
【0030】
試料領域150に過酸化水素(hydrogen peroxide)の分解反応を測定しようとする試料が提供され得る。
【0031】
過酸化水素の分解反応(例えば、フェントン反応:Fenton Reaction)が発生する時、自由ラジカル(free radical)が生成される。自由ラジカルの最外殻電子(outermost electron shell)の電子の数は奇数である。したがって、自由ラジカルは常磁性(paramagnetic)である。したがって、過酸化水素の分解反応の時に自由ラジカルが生成されれば、試料領域150の磁気場が変化できる。
【0032】
同様に、過酸化水素の分解反応が発生する時、多様な常磁性イオンが生成され得る。常磁性イオンが生成されれば、試料領域150の磁気場が変化できる。
【0033】
したがって、試料領域150の磁気場の変化を検出することによって、過酸化水素の分解反応がモニターされ得る。
【0034】
図2は過酸化水素測定方法を示す順序図である。図1及び図2を参照すれば、S110段階で試料が提供される。例えば、過酸化水素を含む液体、固体、ゲル(gel)形態の試料が提供され得る。例えば、過酸化水素の分解が発生する有機体が試料として提供され得る。
【0035】
S120段階で、磁気場が印加される。磁気場発生器120は試料領域150に磁気場を印加できる。磁気場が印加されることによって、試料領域150の磁気場が安定化され得る。例えば、提供された試料の常磁性物質が印加された磁気場にしたがって特定な方向に磁化され得る。
【0036】
S130段階で、磁気場が測定される。磁気場感知器110は試料領域150の磁気場の変化を測定できる。試料領域150の磁気場は安定化された状態から変化できる。例えば、提供された試料の固有特性にしたがって試料領域150の磁気場が変化できる。提供された試料で過酸化水素の分解反応が発生して常磁性物質が生成されることによって、試料領域150の磁気場が変化できる。磁気場感知器110は提供された試料の磁気場の変化を検出することによって、提供された試料の固有特性にしたがう磁気場又は過酸化水素の分解反応をモニターできる。
【0037】
例示的に、試料領域150に試料が提供されない状態にS120段階及びS130段階が遂行され得る。これによって、試料が提供されない時の磁気場が検出され得る。検出された磁気場は他の条件にしたがって検出された磁気場と比較するための基準値であり得る。
【0038】
試料領域150に多様な濃度の過酸化水素水(oxygenated water)が提供された状態にS120段階及びS130段階が遂行され得る。これによって、多様な濃度の過酸化水素水の固有な磁気場が検出され得る。検出された磁気場は他の条件にしたがって検出された磁気場と比較するための基準値であり得る。
【0039】
試料領域150に過酸化水素の分解を促進する触媒(例えば、FeSO又はAg)が提供された状態に、S120段階及びS130段階が遂行され得る。これによって、触媒の固有な磁気場が検出され得る。検出された磁気場は他の条件にしたがって検出された磁気場と比較するための基準値であり得る。
【0040】
図3は過酸化水素水の磁界強度の変化を示すグラフである。図3で、横軸は時間を示し、縦軸は磁界強度(magnetic intensity)を示す。
【0041】
第1時間T1に、試料が提供されない時の磁気場が検出される。
【0042】
第2時間T2に、過酸化水素水が試料として提供された時の磁気場が検出される。例えば、30%濃度の過酸化水素水が試料として提供され得る。過酸化水素水の固有な特性でよって、過酸化水素水が提供されれば、磁界強度は減少する。
【0043】
第3時間T3に、過酸化水素水の分解反応を促進する触媒が提供される。例示的に、硫酸鉄(FeSO)が触媒として提供され得る。触媒が提供されれば、磁界強度は急激に変化できる。自由ラジカル及び常磁性イオンのような常磁性物質の発生が磁界強度の変化を発生させ得る。即ち、磁界強度の変化をモニターすることによって、過酸化水素の分解反応がモニターされ得る。
【0044】
図4A乃至図4Fは多様な濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示すグラフである。図4A乃至図4Fで、横軸は時間を示し、縦軸は磁界強度を示す。
【0045】
図4A乃至図4Fを参照すれば、第1線L1は30%濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示す。第2線L2は3%濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示す。第3線L3は0.3%濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示す。第4線L4は0.03%濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示す。第5線L5は0.003%濃度の過酸化水素水の磁界強度の変化を示す。第6線L6は0.0003%濃度の磁界強度の変化を示す。
【0046】
図3を参照して説明されたように、第1時間T1に試料が提供されなく、第2時間T2に過酸化水素水が提供され、第3時間T3に触媒が提供され得る。
【0047】
図5は図4A乃至図4Fの線L1〜L6の磁界強度の変化を示すグラフである。図5で、横軸は線L1〜L6を示し、縦軸は磁界強度の変化を示す。
【0048】
図4A乃至図4F及び図5を参照すれば、過酸化水素水の濃度が減少するほど、過酸化水素水の分解反応が発生する時の磁界強度の変化が減少する。即ち、磁界強度の変化量を検出することによって、分解反応でよる過酸化水素水の濃度の変化がモニターされ得る。また、過酸化水素水の初期濃度が検出され得る。
【0049】
図4A乃至図4Fに示したように、分解反応が進行されるほど、磁界強度の変化量は減少する。磁界強度の変化量の変化を検出することによって、分解比率(decomposition ratio)が検出され得る。分解比率は過酸化水素水の分解反応が進行される速度を示し得る。
【0050】
図6は過酸化水素モニター装置100で試料が移動される例を示すブロック図である。図1の過酸化水素モニター装置100と比較すれば、運搬器160がさらに提供される。
【0051】
運搬器160に複数の試料170が提供される。複数の試料170は特定間隔に互に離隔されるように配置できる。複数の試料170は30%濃度の過酸化水素水及び銀Agを包含できる。運搬器160は過酸化水素モニター装置100の磁気場感知器110間に移動できる。運搬器が移動されれば、4つの試料170が順次的に磁気場感知器110を通過できる。
【0052】
図7は図6で運搬器160が磁気場感知器110を通過する時に発生する磁界強度の変化を示すグラフである。図7で、横軸は時間を示し、縦軸は磁界強度を示す。
【0053】
図7を参照すれば、安定状態の磁界は第1区間I1、第2区間I2、第3区間I3、及び第4区間I4で変化する。4つの試料170が磁気場感知器110を順次的に通過することによって、磁気場感知器110が感知する磁気場の強さが第1乃至第4区間I1〜I4で順次的に変化できる。即ち、本発明の実施形態による過酸化水素モニター装置100はモニターされる対象で過酸化水素の分解反応が発生する位置を検出できる。
【0054】
図8は図1の過酸化水素モニター装置100の応用例を示す。図8を参照すれば、過酸化水素モニター装置100に身体が試料として提供され得る。身体内の活性酸素は常磁性を有する自由ラジカルである。したがって、図7を参照して説明されたように、身体が過酸化水素モニター装置100を通じて移動されれば、身体内で活性酸素が存在する位置が検出され得る。
【0055】
活性酸素はアルツハイマー(Alzhemier)性痴呆及び脳卒中の原因物質である。活性酸素の検出は、アルツハイマー性痴呆及び脳卒中の原因糾明及び診断に利用され得る。
【0056】
本発明の詳細な説明では具体的な実施形態に関して説明したが、本発明の範囲と技術的な思想から逸脱しない限度内で様々な変形が可能である。したがって、本発明の範囲は上述した実施形態に限定されて決まってはならないし、後述する特許請求の範囲のみでなく、この発明の特許請求の範囲と均等物によって決まらなければならない。
【符号の説明】
【0057】
100・・・過酸化水素モニター装置
110・・・磁気場感知器
120・・・磁気場発生器
130・・・信号処理器
140・・・制御器
150・・・試料領域
160・・・運搬器
170・・・複数の試料



【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が提供される試料領域に磁気場を印加する磁気場発生器と、
前記試料領域の磁気場を感知する磁気場感知器と、
前記磁気場感知器の感知結果を出力する信号処理器と、
前記磁気場発生器、前記磁気場感知器、及び前記信号処理器を制御する制御器と、を含む過酸化水素モニター装置。
【請求項2】
前記磁気場発生器が前記試料領域に磁気場を印加した後に、前記磁気場感知器が前記試料が提供される領域の磁気場を感知する請求項1に記載の過酸化水素モニター装置。
【請求項3】
前記磁気場発生器は10ミリテスラ以下の磁気場を発生する請求項1に記載の過酸化水素モニター装置。
【請求項4】
前記試料領域で、試料を前記磁気場感知器を通過するように運搬する運搬器をさらに含む請求項1に記載の過酸化水素モニター装置。
【請求項5】
前記磁気場感知器によって感知される磁気場の強さの変化が基準値以上である時、過酸化水素の分解が発生することと判別される請求項1に記載の過酸化水素モニター装置。
【請求項6】
試料に磁気場を印加する段階と、
前記試料の磁気場を測定する段階と、
前記測定された磁気場の強さにしたがって過酸化水素の分解をモニターする段階と、を含む過酸化水素モニター方法。
【請求項7】
前記測定された磁気場の強さの変化が基準値の以上である時、前記過酸化水素の分解が発生することと判別される請求項6に記載の過酸化水素モニター方法。
【請求項8】
前記測定された磁気場の強さの変化にしたがって前記過酸化水素の初期濃度が判別される請求項6に記載の過酸化水素モニター方法。
【請求項9】
前記測定された磁気場の強さの変化にしたがって前記過酸化水素の分解比率が判別される請求項6に記載の過酸化水素モニター方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−11593(P2013−11593A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120627(P2012−120627)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】