説明

過電流保護素子の実装構造

【課題】PTCサーミスタの熱がベタパターンに逃げることを防止し、負荷を過電流から確実に保護することができる過電流保護素子の実装構造を提供する。
【解決手段】基板の上に電源ベタパターン3と導電体パターン4が形成され、電源ベタパターン3と導電体パターン4の端部とPTCサーミスタ1が接続されている。導電体パターン4側には、スルーホール8が形成され、このスルーホール8にはコネクタのピンが挿入されてはんだ付固定され、負荷に接続される。そして、電源ベタパターン3にはPTCサーミスタ1側に突出した、幅の狭い伝熱規制パターン9が形成されているので、PTCサーミスタ1から電源ベタパターン3への熱の拡散を少なくし、過電流時に温度を確実に上昇させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流保護素子の実装構造、特に、正温度係数サーミスタの基板への実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル複合機やファクシミリ等の端末機器にはファンモータやトナー搬送用モータ、用紙搬送用モータ等多数のモータが使用されているが、これらのモータに何らかの異常によって定格以上の電流が流れた場合、モータ巻線のレイヤショートによる破損、モータ駆動回路の過温度上昇による破損などを起こす可能性があるので、モータに流れる電流が基準電流を超えた場合にモータへの給電を停止することが行われていた。
【0003】
しかし、このような構成では、回路が複雑化してしまうので、温度ヒューズ、または電流ヒューズなどを用いて異常負荷時に電流を遮断することも行われている。しかしながら、このようにヒューズを使用すると、ヒューズに定格電流以上の電流が流れると切断され、ヒューズが切断されるたびにヒューズを交換しなければならず、手間が係るという問題が生じる。
このため、保護素子として、温度の上昇にともなって抵抗値が増加するPTC(Positive Temperature Coefficient Resistor)特性を持つポリマ系のPTCサーミスタ(正温度係数サーミスタ)を使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−167881号公報
【0004】
PTCサーミスタは図6の温度−抵抗特性図に示すように、温度が低いときは、非常に低い抵抗値を有し、過熱され、ある温度を超えると、高抵抗に変化(トリップ)する特性を有している。
このようなPTCサーミスタを用いて過電流保護を行う場合、PTCサーミスタ自体を負荷に接近させ、負荷からの熱がPTCサーミスタに伝達されやすくする場合と、PTCサーミスタを負荷とは離れた位置の基板、特に面実装型の基板に実装し、PTCサーミスタ自体の温度上昇によって負荷を保護する場合とがある。
【0005】
一方、一般にプリント配線板では、半導体チップ等の電子部品に電源供給を行うために、電源層および接地層が形成されている。電源層および接地層には、配線層をそれぞれ一層ずつ割り当て、多層基板にすることが望ましいが、高密度化の要求が厳しいことから、その他の信号のための配線を同一層の配線層に混在させることがおこなわれている。しかし、一層ずつ割り当てないまでも、電源、接地の電位を安定させることが求められていることから、電源のアースラインのパターンは、広い面積で形成した、いわゆるベタパターンとすることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PTCサーミスタを負荷とは離れた位置の基板に実装し、PTCサーミスタ自体の温度上昇によって負荷を保護する構成の場合、従来、図7に示すように、電源ベタパターン11とスルーホール12が設けられた導電パターン13との間にPTCサーミスタ14を配置している。
【0007】
このように、電源のベタパターン11にPTCサーミスタ14が接近していると、PTCサーミスタ14の熱がベタパターン11に逃げ、過電流が発生していても、PTCサーミスタの温度上昇が遅れ、通常のトリップ遷移電流状態またはトリップ遷移熱状態にならない場合もあり、負荷を過電流から完全に保護できない場合があった。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、PTCサーミスタの熱がベタパターンに逃げることを防止し、負荷を過電流から確実に保護することができる過電流保護素子の実装構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、請求項1に係る発明の過電流保護素子の実装構造は、ベタパターンに過電流保護素子を近接して実装する過電流保護素子の実装構造において、ベタパターンと過電流保護素子との間に伝熱規制パターンを設けたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明の過電流保護素子の実装構造は、請求項1に記載された過電流保護素子の実装構造において、上記伝熱規制パターンはベタパターンより突出した形状であり、その先端に過電流保護素子の一端子が接続されることを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に係る発明の過電流保護素子の実装構造は、請求項1または請求項2に記載された過電流保護素子の実装構造において、上記過電流保護素子が正温度係数サーミスタであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1または請求項2に係る発明の過電流保護素子の実装構造によれば、ベタパターンと過電流保護素子との間に伝熱規制パターンを設けているので、過電流保護素子の熱がベタパターンに拡散することを防止でき、過電流が発生した場合には、直ちに所定の温度まで過電流保護素子の温度が上昇するので、負荷を確実に保護することができる。
なお、この場合ベタパターンは複雑な形状ではないので、基板のパターン配置等に支障をきたすことはない。
【0013】
また、請求項3に係る発明の過電流保護素子の実装構造のように、過電流保護素子としてPTCサーミスタを使用すれば、温度が下がれば抵抗値が復帰するので、素子の交換の手間がかからないようにすることが可能である。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の過電流保護素子の実装構造の実施例について、図面を用いて説明する。
図1は本発明の過電流保護素子の実装構造を適用する保護回路の一例を示す図であり、モータ(M)等の負荷とPTCサーミスタ1の直列回路が電源Vccと駆動トランジスタTrとの間に挿入されている。トランジスタTrには抵抗Rを介して制御信号が入力され、制御信号がONになると、トランジスタTrが導通して、モータMが駆動される。なお、ダイオードDは過電圧保護用のダイオードである。
【0015】
このように、PTCサーミスタ1をモータMに直列に接続することにより、モータMに過電流が流れた場合、この過電流によりPTCサーミスタ1が自己発熱する。自己発熱による素子の内部温度は、モータMの駆動電流とPTCサーミスタ1の放熱特性で定まるが、PTCサーミスタ1の放熱特性が一定であるとき、モータ駆動電流の大小によって変化する。したがって、モータMの電流が増大すると、PTCサーミスタ1の温度も上昇し、モータMの電流が一定値を超え、例えば、PTCサーミスタ1の温度が80℃を超えると、PTCサーミスタ1が高抵抗となって、負荷電流を下げ、モータMの破損を防止することができる。
【0016】
そして、PTCサーミスタ1が高抵抗になった後も小電流が流れ続けるので、モータMに電圧が印加されている限り、発熱は継続され、PTCサーミスタ1が低抵抗に戻ることはない。
一方、制御信号がオフとなり、電源が遮断されると、冷却によってPTCサーミスタ1の抵抗値が高抵抗から徐々に基準抵抗値まで復帰するので、トリップしても温度が下がれれば正常な状態に復帰する。したがって、部品の交換や、マニュアルでのリセットの必要がなく、手間のかからない、安定した制御が可能である。
【0017】
図2、図3は上記のPTCサーミスタ1を基板に実装した、本発明の実装構造を示す断面図及び平面図であり、図2に示すように、基板2の上に電源ベタパターン3と導電体パターン4が形成され、その上にソルダレジスト層5が形成されている。そして、このソルダレジスタ層5の上にPTCサーミスタ1が配置され、電源ベタパターン3と導電体パターン4の端部のソルダレジスト層5の開口部においてフローはんだ(又はリフローはんだ)6によりPTCサーミスタ1の端子7と電源ベタパターン3及び導電体パターン4との導通が図られている。なお、導電体パターン4側には、スルーホール8が形成され、このスルーホール8には図示しないコネクタのピンが挿入されてはんだ付固定され、モータMに接続される。
【0018】
一方、電源ベタパターン3は図3の平面図に示すように、PTCサーミスタ1側に突出した、幅の狭い伝熱規制パターン9が形成されており、ソルダレジスト層5の開口部にはこの伝熱規制パターン9の部分のみが位置するので、PTCサーミスタ1から電源ベタパターン3への熱の伝達を少なくし、放熱を抑えることができる。
【0019】
以上のように、ベタパターンとPTCサーミスタとの間に伝熱規制パターンを設けることにより、PTCサーミスタの熱がベタパターンに拡散することを防止でき、過電流が発生した場合には、直ちに所定の温度まで過電流保護素子の温度が上昇するので、負荷を確実に保護することができる。
【0020】
上記の実施例では、伝熱規制パターンを方形状としたが、図4の平面図に示すように、伝熱規制パターン9の両側を削ってさらに、面積を少なくすることにより、PTCサーミスタ1からの放熱をさらに少なくすることができる。
また、図5の平面図に示すように、伝熱規制パターン9及び電源ベタパターン3の内側に導電体を形成しない部分を設けることにより、PTCサーミスタ1からの放熱を少なくすることも可能である。
【0021】
なお、上記の実施例では、本発明の過電流保護素子の実装構造をモータに保護素子としてPTCサーミスタを設ける場合を例として説明したが、本発明は過電流保護素子をその他の負荷に接続する場合にも実施することができ、また、過電流保護素子としては、温度により急激に抵抗値が変化する素子であれば、PTCサーミスタ以外の素子を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の過電流保護素子の実装構造を適用する保護回路の一例を示す図である。
【図2】PTCサーミスタを基板に実装した、本発明の実装構造の断面図である。
【図3】PTCサーミスタを基板に実装した、本発明の実装構造の平面図である。
【図4】PTCサーミスタを基板に実装した、本発明の実装構造の他の実施例の平面図である。
【図5】PTCサーミスタを基板に実装した、本発明の実装構造のさらに他の実施例の平面図である。
【図6】PTCサーミスタの温度−抵抗特性を示す図である。
【図7】PTCサーミスタを基板に実装した従来の構造を示す平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 PTCサーミスタ
2 基板
3 電源ベタパターン
4 導電体パターン
5 ソルダレジスト層
6 フローはんだ
7 端子
8 スルーホール
9 伝熱規制パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベタパターンに過電流保護素子を近接して実装する過電流保護素子の実装構造において、
ベタパターンと過電流保護素子との間に伝熱規制パターンを設けたことを特徴とする過電流保護素子の実装構造。
【請求項2】
請求項1に記載された過電流保護素子の実装構造において、
上記伝熱規制パターンはベタパターンより突出した形状であり、その先端に過電流保護素子の一端子が接続されることを特徴とする過電流保護素子の実装構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された過電流保護素子の実装構造において、
上記過電流保護素子が正温度係数サーミスタであることを特徴とする過電流保護素子の実装構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−269446(P2006−269446A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80778(P2005−80778)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】