説明

道床バラスト材の製造方法

【課題】 本発明は、エージング処理を施した転炉スラグを用いることにより、吸水率、吸水耐圧度、圧縮粉砕率、単位容積質量等の物性がよく、支持力及び抵抗力に優れ、砕石に比べ安価であり、製鉄所から毎日排出される副産物を有効利用し、地産地消の循環型社会を形成することができるとともに、安定した品質を確保でき、砕石を用いないため、岩石を採掘する必要がないので、省資源や省エネルギー、CO2の削減に繋がり、自然環境を保護できる道床バラスト材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 徐冷後の転炉スラグを破砕して粒度を調整した粒度調整スラグを得る破砕工程と、粒度調整スラグを山積みにして耐熱性のあるシート状で覆う積山工程と、積山工程で山積みにされた粒度調整スラグの下部側から蒸気を供給することでエージング処理を行うエージング工程と、を備える構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線路や鉄道軌道における道床バラスト材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バラスト軌道における道床バラスト材には、枕木を緊密に保持し、列車荷重を路盤に広く分散させ、列車の横圧やレール温度上昇にともなう張り出しに抵抗し、排水性を高くすることで雑草の発生を防ぎ、軌道に弾性を持たせる等の役割がある。この道床バラスト材は、従来から自然の岩石を破砕した砕石が用いられていた。しかしながら、砕石を道床バラスト材に用いた場合、列車の走行による荷重等の外力により摩耗し、細粒化する。細粒化した道床バラスト材は雨水等によって泥となり道床バラスト材の隙間を埋め固め、軌道の弾性がなくなる噴泥に至る。噴泥が発生すれば、レールの陥没や張り出しが起こる危険性が高く、メンテナンス周期も短くなる。この課題を解決するために、(特許文献1)には、「アルミナ及び石炭灰の混合粉末を、手動式油圧プレスで成形し、最高温度1100〜1400℃で焼結したセラミック焼結体によるバラスト」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−186910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)道床バラスト材として砕石を用いるので、岩石を採掘する必要があり、自然環境の破壊に繋がるとともに、摩耗して細粒化した場合、道床バラスト材間の隙間を埋め、軌道の排水性が損なわれるとともに、噴泥の発生に至ると軌道の弾性がなくなり、レールの陥没や張り出しが起こる危険性が高く、メンテナンスの周期が短くなるという課題を有していた。また、地質の変化に富む日本では、良好で均質な砕石を常に得ることが難しいという課題を有していた。
(2)(特許文献1)に開示の技術は、セラミック成分と石炭灰の混合粉末を成形して焼結させるので、その製造に手間が掛かるという課題を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、エージング処理を施した転炉スラグを用いることにより、吸水率、吸水耐圧度、圧縮粉砕率、単位容積質量等の物性がよく、支持力及び抵抗力に優れ、砕石に比べ安価であり、製鉄所から毎日排出される副産物を有効利用し、地産地消の循環型社会を形成することができるとともに、安定した品質を確保でき、砕石を用いないため、岩石を採掘する必要がないので、省資源や省エネルギー、CO2の削減に繋がり、自然環境を保護できる道床バラスト材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために、本発明の道床バラスト材の製造方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の道床バラスト材の製造方法は、徐冷後の転炉スラグを破砕して粒度を調整した粒度調整スラグを得る破砕工程と、前記粒度調整スラグを山積みにして耐熱性のあるシート状で覆う積山工程と、前記積山工程で山積みにされた前記粒度調整スラグの下部側から蒸気を供給することで促進エージング処理を行うエージング工程と、を備える構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)製鉄所から毎日排出される転炉スラグを使用するので、品質が安定しており、地産地消の循環型社会の形成に繋がるとともに、岩石の採掘量が減らすことができるので、自然環境の保護に繋がる他、CO2の削減等にも繋がる。
(2)転炉スラグに残存する生石灰をエージング処理によって消石灰に変え安定化するので、膨張及び崩壊し難く、密度が高いため、ポーラス状でないため、堅牢で強度があり、列車の荷重等の外力によって摩損や破砕し難いので、細粒化し難く排水性に優れ、雑草の発生も防ぐことができる道床バラスト材を得ることができる。
(3)促進エージング処理を行うので、半年以上要する通常のエージング処理に比べ短い期間で処理でき、転炉スラグは予め所定の大きさに破砕しておくだけで良いので、生産性に優れ低原価で量産できる。
【0007】
積山工程において、転炉スラグの積山の上面は平らにならすことが望ましい。これは、平らにすることで、積山下部の締固め度合いを小さくすることができ、転炉スラグの空隙が塞がれ難く、通気性を良くすることができるからである。
また、積山を耐熱性でシート状のもので覆うのは、蒸気でエージング処理する際に保温状態を保つためである。保温状態を保つことで、エージング処理時間を短縮することができる。
【0008】
エージング工程において、蒸気を供給するために、転炉スラグを山積みにする前に、蒸気配管等を積山下部の周辺へ引き込んでおくことが望ましい。下部側から蒸気を供給することで、空隙を有する積山に蒸気が侵入しやすく、エージング処理斑が起こり難い。また、エージングが短期間でよく、一度に数百t〜千tを処理することができる。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の道床バラスト材の製造方法であって、a)吸水率が5%以下、b)吸水耐圧強度が0.6t/cm2以上、c)単位容積質量が1.1t/m3以上である構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え以下のような作用が得られる。
(1)吸水率が5%以下と低く、吸水耐圧強度も0.6t/cm2と低いので、吸水による強度劣化等の性質変化が起き難く、列車の荷重等に対する支持力及び抵抗力に優れ、屋外での使用に適している。
(2)転炉スラグの単位容積質量が1.1t/m3以上であるので、細粒及び粗粒が適度に混合されており、締固め密度を高くすることができるので、枕木を緊密にむらなく保持され、列車の荷重等に対する大きな支持力及び抵抗力が得られるとともに、列車通過時の騒音や振動を路盤に広く且つ均一に分散させることができる。
【0010】
転炉スラグの粒径としては、15mm〜70mmが好適に選択さるが、より好ましくは25mm〜65mmが選択される。粒径が25mmより小さくなるにつれ、粒径が小さいため排水性が悪くなる傾向にあり15mmより小さくなるにつれ、その傾向が著しいため好ましくない。粒径が65mmより大きくなるにつれ、空隙が増し、沈下への抵抗力が減る傾向があり、70mmより大きくなるにつれ、その傾向が著しいため好ましくない。
これにより、以下の作用が得られる。
(1)粒径が15mm〜70mmであるため、排水性が良く、雑草の生育を防止できる。
(2)粒径が15mm〜70mmであるため、枕木を緊密にむらなく保持できるため支持力及び抵抗力が大きく、列車の荷重等やレール温度上昇による張り出しを防ぎ、レールの伸縮による枕木の移動を防ぐことができる。
(3)枕木を緊密にむらなく保持できるため、列車通過時の騒音や振動を路盤に広く且つ均一に分散させることができ、騒音や振動を抑えることができる。
【0011】
転炉スラグの吸水率は、5%以下のものが好適に用いられるが、より好ましくは3%未満のものが用いられる。吸水率が3%を超えるにつれ、ポーラス状であると考えられ、強度が小さく、吸水による強度劣化等の性質変化が大きくなり、支持力及び抵抗力が小さくなる傾向にあり、5%を超えるにつれ、その傾向が著しいため好ましくない。
【0012】
転炉スラグの吸水耐圧強度は、0.6t/cm2以上のものが好適に用いられるが、より好ましくは0.8t/cm2以上のものが用いられる。吸水耐圧強度が0.8t/cm2より小さくなるにつれ、吸水時に列車の荷重等による摩損及び破砕が生じやすく、細粒化しやすくなるので、排水性が悪くなり、支持力及び抵抗力小さくなる傾向があり、0.6t/cm2より小さくなるにつれ、その傾向が著しいため好ましくない。
【0013】
転炉スラグの単位容積質量は、1.1t/m3以上のものが好適に用いられるが、より好ましくは1.4t/m3以上のものが用いられる。1.4t/m3小さくなるにつれ、転炉スラグ中の細粒と粗粒のバランスが悪くなり、道床バラスト材の締固め密度を高くできず、枕木の保持にムラが出るので、列車の荷重等に対する支持力や抵抗力が得られず、騒音や振動を分散し難くなる傾向があり、1.1t/m3小さくなるにつれ、その傾向が著しいため好ましくない。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の道床バラスト材の製造方法であって、前記転炉スラグの摩損率が35%以下ある構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え以下の作用が得られる。
(1)転炉スラグの摩損率が35%以下であるので、列車の荷重等による道床バラスト材同士の擦れ合いにより細粒化し難く、高低変位や噴泥が発生し難いため、道床バラスト材の寿命が長く、メンテナンス性に優れる。
【0015】
摩損率は、35%以下のものが好適に用いられるが、より好適には27%以下のものが用いられる。摩損率が27%を超えるにつれ、列車の荷重等による道床バラスト材同士の擦れ合いにより細粒化しやすく、排水性が悪くなるので高低変位や噴泥が発生し易くなるとともに、支持力及び抵抗力小さくなる傾向があり、35%を超えるにつれ、その傾向が著しいため好ましくない。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の道床バラスト材の製造方法であって、前記転炉スラグの硬度が14以上である構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3で得られる作用に加え以下の作用が得られる。
(1)転炉スラグの硬度が14以上であるので、列車の荷重等による摩損や破砕が生じ難く、細粒化し難いため、高低変位や噴泥が発生し難く、道床バラスト材としての寿命が長く、メンテナンス性に優れる。
【0017】
転炉スラグの硬度は、14以上のものが好適に用いられるが、より好ましくは17以上のものが用いられる。硬度が17より小さくなるにつれ列車の荷重等により摩損及び破砕が生じやすく、細粒化しやすく、排水性が悪く、支持力及び抵抗力小さくなる傾向があり、14より小さくなるにつれ、その傾向が著しいため好ましくない。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の内いずれか1に記載の道床バラスト材の製造方法であって、前記転炉スラグの圧縮粉砕率が30%以下である構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4で得られる作用に加え以下の作用が得られる。
(1)転炉スラグの圧縮粉砕率が30%以下であるので、列車の荷重等の圧縮応力により破砕され難く、粉末化し難いため、高低変位や噴泥が発生し難く、道床バラスト材としての寿命が長くメンテナンス性に優れる。
(2)圧縮応力の作用により破砕され難く、細粒化し難いので、排水性がよく、列車の荷重等に対する支持力及び抵抗力に優れる。
【0019】
転炉スラグの圧縮粉砕率は、30%以下のものが好適に用いられるが、より好ましく24%以下のものが用いられる。圧縮粉砕率が24%を超えるにつれ、列車の荷重等の圧縮応力の作用によって道床バラスト材が破砕され易く、細粒化しやすく、排水性が悪く、支持力及び抵抗力小さくなる傾向があり、30%を超えるにつれ、その傾向が著しいため好ましくない。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の内いずれか1に記載の道床バラスト材の製造方法であって、前記転炉スラグの形状において、細長度が60%以下、偏平度が45%以下である構成を有している。
この構成により、請求項2乃至5で得られる作用に加え以下の作用が得られる。
(1)転炉スラグの細長度が60%以下、偏平度が45%以下であるので、道床バラスト材の締固め密度を高くすることができ、列車の荷重等に対する支持力及び抵抗力に優れる。
【0021】
転炉スラグの細長度は60%以下、偏平度は45%以下のものが好適に用いられる。細長度が60%、偏平度が45%を超えるにつれ、道床バラスト材の締固め密度が低くなり、列車の荷重等に対する支持力及び抵抗力が小さくなる傾向があるため好ましくない。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の道床バラスト材の製造方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1によれば、
(1)膨張崩壊性を示さず堅牢で強度の高い道床バラスト材を得ることができるとともに、生産性に優れ、品質の安定した道床バラスト材を低原価で量産できる道床バラスト材の製造方法を提供することができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え
(1)密度が高く、強度があり、吸水性も無いので、列車の荷重等によって摩損や破砕し難く、細粒化し難いので、排水性に優れ、高低変位や噴泥も発生し難く、道床バラスト材としての寿命が長く、メンテナンス性に優れる道床バラスト材の製造方法を提供することができる。
(2)循環型社会の形成に繋がるとともに、自然環境の保護にも繋がる道床バラスト材の製造方法を提供することができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)列車の荷重等による道床バラスト材同士の擦れ合いにより細粒化し難く、高低変位や噴泥が発生し難いため、排水性がよく、荷重等に対する支持力及び抵抗力に優れ、道床バラスト材の寿命が長く、メンテナンス性に優れる道床バラスト材の製造方法を提供することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の効果に加え、
(1)列車の荷重等による摩損や破砕が生じ難く、細粒化し難いため、高低変位や噴泥が発生し難く、排水性がよく、列車の荷重等に対する支持力及び抵抗力に優れ、道床バラスト材としての寿命が長く、メンテナンス性に優れる道床バラスト材の製造方法を提供することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の効果に加え、
(1)列車の荷重等の圧縮応力により破砕され難く、粉末化し難いため、高低変位や噴泥が発生し難く、排水性がよく、列車の荷重等に対する支持力及び抵抗力に優れ、道床バラスト材としての寿命が長くメンテナンス性に優れる道床バラスト材の製造方法を提供することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の効果に加え、
(1)道床バラスト材の締固め密度が高く、列車の荷重等に対する支持力及び抵抗力に優れる道床バラスト材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態1における道床バラスト材を用いたバラスト軌道の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
なお、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1のバラスト軌道の断面様式図である。
1は鉄道のバラスト軌道、2はバラストの特性を備えた転炉スラグで作製された道床バラスト材、3は道床バラスト材2に保持された枕木、4は枕木3の上に敷設されたレール、5は道床バラスト材2及び枕木3、レール4を支える路盤である。
【0030】
以上のように構成された本実施の形態1の道床バラスト材について、以下にその製造方法を説明する。製鋼過程における、転炉での不純物の除去工程で副生され、徐冷した転炉スラグを、道床バラスト材として適した25〜65mmの粒径に破砕する。破砕した転炉スラグは、孔の開いた蒸気配管を引き込んで山積みにされ、シートを掛けた状態で、約100℃、大気圧下のもと約48時間蒸気に暴露して、蒸気エージング処理され、膨張安定化する。エージング処理後、冷却して道床バラスト材の原料にする。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実験例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
(実施例1)
25〜65mmの粒径に破砕し、蒸気エージング処理をした転炉スラグ(以下、処理済転炉スラグと記す)を道床バラスト材としての物性を確かめるため、物性試験を行った。試料は30〜40kg準備し、特別に乾燥が必要な場合を除き、自然乾燥させたものを用いた。以下、具体的に説明する。
【0032】
(単位容積質量)
処理済転炉スラグに細粒及び粗粒な粒子が適度に混合されているかを評価するため、以下の方法で単位容積質量を測定した。(a)あらかじめ重量を測っておいた縦×横×深さ=20cm×20cm×25cmの大きさの一面開口の方形状の試験容器をコンクリートスラブのような強固で水平な床の上に置き、転炉スラグを詰めた。(b)転炉スラグを試験容器の1/3満たす毎に、転炉スラグが密に詰まるよう、試験容器の片側を約5cm持ち上げて床を叩くように落下させた。(c)反対側も同様にし、落下回数は、片側25回で、全体で50回とした。(d)試験容器全体に転炉スラグを詰めたら、指又は定規で表面をならし、試験容器上面から出る突起が容器上面のへこみと同じくらいになるようにし、全体の重量W1(単位:kg)を測定した。
単位容積質量は、試験容器の重量をW2(単位:kg)とし、(数1)により算出した。
【0033】
【数1】

【0034】
(吸水率)
処理済転炉スラグの吸水による劣化のし難さを評価するため、以下の方法で吸水率を測定した。(a)JIS Z 8801−1に規定する公称目開き4.75mmの金属製網篩いにとどまる有姿の転炉スラグを105±5℃の温度で一定重量になるまで乾燥させ重量(W4)を測った。(b)乾燥後転炉スラグを24時間吸水させ、水切り後、吸水性の布の上で目に見える水膜を拭い去り、表面乾燥飽水状態の重量(W3)を測定した。吸水率は、(数2)により算出した。
【0035】
【数2】

【0036】
(摩損率)
処理済転炉スラグ同士又は枕木との叩き合いの強度を評価するため、以下の方法で摩損率を測定した。(a)処理済転炉スラグを所定の粒度分布になるようふるい分けした試料5kgを準備した。(b)この試料を、ロサンゼルス試験機を用い、毎分30〜33回転の速さで、直径約46.8mm、重量390〜445gの鋼球12個と共に1000回転させた。(c)試料を取り出し、ふるい目が1.7mmであるふるいを用いてふるった残りを水洗し、105±5℃の温度で一定重量になるまで乾燥させ、重量W5(単位:kg)を測定した。
摩損率は、(数3)により算出した。
【0037】
【数3】

【0038】
(吸水耐圧強度)
処理済転炉スラグの吸水時の強度を評価するために、一軸圧縮試験機を用い、吸水率の測定後の試料における圧縮ひずみ及び圧縮応力を測定した。圧縮ひずみは、(数4)により、圧縮応力は、(数5)により算出した。
吸水耐圧強度は、圧縮ひずみを横軸に、圧縮応力を縦軸にとった応力−ひずみ曲線における、圧縮ひずみが15%に達するまでの圧縮応力の最大値とした。
【0039】
【数4】

【0040】
【数5】

【0041】
(圧縮粉砕率)
処理済転炉スラグの、枕木下状況下での強度を評価するため、以下の方法で圧縮粉砕率を測定した。(a)処理済転炉スラグを所定の粒度分布になるようふるい分けした試料を15kg準備した。(b)圧縮試験器を用いて、50tfの荷重で15〜20分間圧砕した。(c)容器内の試料を、JIS Z 8801−1に規定された目開き53.0mm、37.5mm、31.5mm、19.0mm、9.5mm、4.7mm、1.7mmの金属性網ふるいを用いてふるい分けした。
圧縮粉砕率は、圧砕前の粒度曲線と圧砕後の粒度曲線の面積差から算出した。
【0042】
(硬度)
処理済転炉スラグの摩損や破砕に対する強度を評価するため、以下の方法で硬度を測定した。(a)有姿の処理済転炉スラグを準備し、重量を測定した(W6)。(b)ドリー硬さ試験器を用い、試料に1.25kgの荷重をかけ、毎分28回転する円板に接触させた。(c)試料と回転円盤の間には、石英砂を散布しながら、1000回転させた後、摩耗後の重量を測定した(W7)。
硬度は、(数6)により算出した。
【0043】
【数6】

【0044】
(形状)
処理済転炉スラグの全体の形状を評価するため、以下の方法で細長度及び偏平度を測定した。単位体積重量を測定した後の試料において、(表1)に示す目開きのふるいでふるい分けし、各粒子の最長辺、最短辺の長さを測定した。(表1)に示す各ふるい目の細長度における制限値より長いものの重量をそれぞれWL53.0、WL37.5、WL31.5、WL19.0とし、偏平度における基準値より短いものの重量をそれぞれWS53.0、WS37.5、WS31.5、WS19.0とし、細長度及び偏平度の測定に用いた試料の全体重量をW8とした。
細長度及び偏平度は、(数7)及び(数8)により算出した。
【0045】
【表1】

【0046】
【数7】

【0047】
【数8】

【0048】
(比較例1)
物性試験の試料として、前記粒度試験で得られた粒径25〜63mmの高炉スラグを30〜40kg準備し、実施例1と同様に物性試験を行った。
【0049】
(比較例2)
物性試験の試料として、前記粒度試験で得られた粒径25〜63mmの砕石を30〜40kg準備し、実施例1と同様に物性試験を行った。
【0050】
以上の物性試験における、実施例1と比較例1及び2の試験結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
表2より、鉄鋼スラグの中でも、道床バラスト材として用いられることがあった高炉スラグよりも、処理済転炉スラグの物性値は優れていることが分かった。また、通常、道床バラスト材として用いられている砕石と比べても、処理済転炉スラグの物性値は優れていることが分かった。この結果から、処理済転炉スラグを用いる道床バラスト材は、列車等の荷重による支持力及び抵抗力に優れ、細粒化し難く、排水性に優れるとことが示され、特に吸水性の面では砕石よりも優れていることが確認できた。
【0053】
また、実施例1の物性試験結果と道床バラスト材の財団法人鉄道総合技術研究所の定めている石質基準を表3に示す。尚、要特認の欄の値は、地域条件などにより、原則の物性値のものが得られない場合の特別規準を意味する。
【0054】
【表3】

【0055】
表3から、全ての項目で道床バラスト材の基準値を十分に満たしていることが示された。また、基準値と比べても、特に吸水性の面で優れていることが確認できた。
【0056】
(実施例2)
自社敷地内のバラスト軌道において、実施例1の処理済転炉スラグを道床バラスト材として延べ1kmに渡り施工した。
【0057】
施工後のバラスト軌道は、5年経過後も軌道の変位や枕木の移動は生じておらず、細粒化もせず噴泥等は生じていなかった。また、雑草の発生も見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、エージング処理を施した転炉スラグを用いることにより、吸水率、吸水耐圧度、圧縮粉砕率、単位容積質量等の物性がよく、支持力及び抵抗力に優れ、砕石に比べ安価であり、製鉄所から毎日排出される副産物を有効利用し、地産地消の循環型社会を形成することができるとともに、安定した品質を確保でき、砕石を用いないため、岩石を採掘する必要がないので、省資源や省エネルギー、CO2の削減に繋がり、自然環境を保護できる道床バラスト材の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 軌道
2 道床バラスト材
3 枕木
4 レール
5 路盤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
徐冷後の転炉スラグを破砕して粒度を調整した粒度調整スラグを得る破砕工程と、前記粒度調整スラグを山積みにして耐熱性のあるシート状で覆う積山工程と、前記積山工程で山積みにされた前記粒度調整スラグの下部側から蒸気を供給することで促進エージング処理を行うエージング工程と、を備えることを特徴とする道床バラスト材の製造方法。
【請求項2】
前記道床バラスト材であって、a)吸水率が5%以下、b)吸水耐圧強度が0.6t/cm2以上、c)単位容積重量が1.1t/m3以上であることを特徴とする請求項1に記載の道床バラスト材の製造方法。
【請求項3】
前記道床バラスト材であって、摩損率が35%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の道床バラスト材の製造方法。
【請求項4】
前記道床バラスト材であって、硬度が14以上であることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1に記載の道床バラスト材の製造方法。
【請求項5】
前記道床バラスト材であって、圧縮粉砕率が30%以下であることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1に記載の道床バラスト材の製造方法の製造方法。
【請求項6】
前記道床バラスト材であって、形状において、細長度が60%以下、偏平度が45%以下であることを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1に記載の道床バラスト材の製造方法。


【図1】
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