説明

道路拡幅構造

【課題】工期の短縮が可能で高い強度を有する拡幅道路構造を提供する。
【解決手段】既設道路の谷側の路肩部に上位基礎体を設け、L字ブロック体よりなる複数の拡幅用路床部材を逆L字状に倒立させて前記既設道路に沿って並設し、前記L字ブロック体の水平版部の先端部を前記上位基礎体に支持させる一方、前記L字ブロック体の垂直版部の下端を谷側法面の既存擁壁に支持させ、前記L字ブロック体と前記既存擁壁に囲まれた空間に中詰充填材を充填し、拡幅路床部の上載荷重を前記既存擁壁で支承させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、谷側の路肩部に接する既存擁壁を上載荷重の支承部として利用した道路拡幅構造に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳地等の斜面の途中に造成された既設道路において、交通量の増加や大型車両の乗り入れ開放によって道路の拡幅が必要となった場合には、山側に道路を拡幅することが困難であるため、谷側の法面部の上方空間に拡幅用の路床部材を張り出させることが行われている。
【0003】
従来の道路拡幅工法の一例においては、法面部に間隔を隔てて埋設された基礎にコンクリート製の支柱を支持させ、その各支柱間に梁を架け渡し、当該梁と、既設道路の側縁に設置した支持梁とに路床版の両側縁をそれぞれ支持させている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上記の道路拡幅工法では、支柱を立設する工程、支柱間に梁を架け渡す工程、路床版を設置する工程等、施工現場における工程が多く、工期が長期化し、施工費用が嵩むという問題があった。また、路床版を支柱によって支持する構造であるため、車道のように大きな負荷のかかるものに対しては十分な強度を得ることが困難であるという問題があった。
【0005】
別の道路拡幅構造では、路肩下の法面より道路下の地盤内に地中アンカーを設け、この地中アンカーに支持させて、前記法面を覆う法面保護擁壁を場所打ちコンクリートによって形成し、この法面保護擁壁の前面部に立設した支柱の上端と、前記法面保護擁壁の上端面間にプレキャストコンクリート材を掛け渡し、この拡幅床盤に舗装を施している(特許文献2参照)。
【0006】
この道路拡幅構造においても、地中アンカーを設置する工程、法面保護擁壁を打設する工程、法面保護擁壁に支柱を立設する工程、路床用のプレキャストコンクリート材を支柱と法面保護擁壁の上端間に掛け渡す工程、プレキャストコンクリート材に舗装する工程等、施工現場における工程が多く、工期が長期化し、施工費用が嵩むという問題があった。
また、拡幅道路部分においてはプレキャストコンクリート部材の下側空間は空間のまま放置され、プレキャストコンクリート材を支柱によって支持する構造であるため、車道として使用するには、プレキャストコンクリート材それ自体の部材断面を大きくとって強度を確保するとともに、地中アンカーも数多く設置する必要があり、プレキャストコンクリート材を法面保護擁壁に固定するアンカーボルトも数多く設置する必要があった。
【0007】
しかしながら、谷側の法面部への地中アンカーの設置工事は容易な作業ではなく、多数本の地中アンカーの設置のために既設道路を占用する期間、すなわち道路閉鎖等の交通規制の期間が長くなり、その道路が生活用道路であるときには地域住民への影響が大きい。また、前記アンカーボルトによるプレキャストコンクリート材の固定作業も煩雑であり、工期が長くなる原因となる。
【0008】
【特許文献1】特開2000−352001号公報
【特許文献2】特開平3−279501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、コストの嵩む地中アンカーの設置作業がなく、工期の短縮が可能で高い強度を有する道路拡幅構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明の道路拡幅構造では、既設道路の谷側の路肩部に上位基礎体を設け、L字ブロック体よりなる複数の拡幅用路床部材を逆L字状に倒立させて前記既設道路に沿って並設し、前記L字ブロック体の水平版部の先端部を前記上位基礎体に支持させる一方、前記L字ブロック体の垂直版部の下端を谷側法面の既存擁壁に支持させ、前記L字ブロック体と前記既存擁壁に囲まれた空間に中詰充填材を充填し、拡幅路床部の上載荷重を前記既存擁壁で支承させるようにしたものである。
【0011】
請求項2の発明の道路拡幅構造は、請求項1の発明の前記構成に加えて、前記上位基礎体にアンカーボルトを植設し、前記L字ブロック体の水平版部の先端部にアンカー穴を形成し、前記アンカー穴に挿入した前記アンカーボルトの上端部にナットを嵌め、前記ナットの締付けによって、前記L字ブロック体の水平版部を前記上位基礎体に固定したものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明の道路拡幅構造では、既設道路の谷側の路肩部に設けた上位基礎体に前記L字ブロック体の水平版部の先端部を支持させる一方、前記L字ブロック体の垂直版部の下端を谷側法面部の既存擁壁に支持させ、前記L字ブロック体と前記既存擁壁に囲まれた空間に中詰充填材を充填して、前記L字ブロック体と前記既存擁壁が一体構造化しており、前記L字ブロック体の水平版部に負荷される通行車両Dからの上載荷重が、前記既存擁壁の全面に伝達されるため、十分に大きな支承力を確保でき、基礎杭がなくても強度の高い道路拡幅構造が的確に得られる。既存擁壁を支承構造として活用しており、追加構造部材を必要としないため、経済的な施工が行える。
【0013】
このように施工が容易でない法面部への地中アンカーの設置作業が不要となるため、道路拡幅工事の工期が短縮化され、施工コストを節減できる。また、基礎杭の打ち込み用機械設備によって道路を封鎖することがないので、道路の通行規制が少なくなり、生活用道路である場合、地域住民に与える影響が少ない。
既存擁壁を支承部として利用するので急勾配の箇所でも強度の高い施工が可能である。
【0014】
また、請求項2の発明の道路拡幅構造では、前記上位基礎体のアンカーボルトを前記水平版部の先端部のアンカー穴に挿入し、前記アンカーボルトの上端部に嵌めたナットを締付けることによって、前記水平版部を前記上位基礎体に固定するため、前記L字ブロック体は、中詰め充填材の充填開始から固化に至るまで当初の据付け位置に安定に保持されており、中詰め充填材の充填作業性がよく、また、拡幅路床部の完成寸法に狂いが生じない。
【0015】
本発明による道路拡幅は、現況を極力崩すことなく簡単に施工可能である。既存擁壁としては、ブロック積みによって構築した擁壁、場所打ちコンクリートで構築した重力式擁壁、もたれ式擁壁等にも対応可能である。
【実施例】
【0016】
図示の実施例では、上位基礎体1は、拡幅対象の既設道路Aの谷側の路肩部を適宜に掘削して締め固め、所要間隔に配置した型枠パネル間に鉄筋とアンカーボルト2を組み込み、場所打ちコンクリートを流し込んで硬化させることによって形成される。上位基礎体1は、既設道路Aに沿って一連に設置されており、アンカーボルト2は上位基礎体1の中央部に植設されている。
既存擁壁Cは、既設道路Aの谷側の路肩部より下向きに傾斜した法面部Bに構築されたものである。
【0017】
拡幅用路床部材のL字ブロック体4はプレキャストコンクリート製品であり、水平版部5と垂直版部6とで構成されている。アンカー穴7は水平版部5の先端部の中央部に形成されている。アンカー穴7の上部はナット3の嵌め合わせと締め付け作業のために拡大されている。ナット3の締め付け後、アンカー穴7にはセメントモルタルなどのグラウト材14が上面を閉塞するまで注入される。
【0018】
水平版部5の基端部上面には段差を付けて車輪止めリブ8が形成されており、車輪止めリブ8にはガードレール9の支柱10が挿入される受孔11が形成されている。
水平版部5には半円形の充填用開口部12が形成されており、隣り合う2枚の水平版部5の充填用開口部12が合わされた円形開口部を通して、場所打ちコンクリート等の中詰め充填材13が充填される。中詰め充填材13は、開口部12の上面を閉塞まで充填される。中詰め充填材13としては、コンクリートや重量モルタル等が使用できる。
【0019】
図1から図4に示した実施例では、L字ブロック体4の垂直版部6は、水平版部5に対して直角に形成されている。図5から図8に示した別の実施例では、L字ブロック体4の垂直版部6は、水平版部5に対して斜めに形成されている。
炉床を構成するL字ブロック体4の水平版部5の上面部には、既設道路Aの舗装面にレベルを揃えて舗装層15が施される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例に係る道路拡幅構造を示し、中詰め充填材の充填前における斜視図である。
【図2】図1の道路拡幅構造に使用されたL字ブロック体の斜視図である。
【図3】図2のL字ブロック体の別の方向からの斜視図である。
【図4】中詰め充填材の充填後における本発明の道路拡幅構造の斜視図である。
【図5】本発明の別の実施例に係る道路拡幅構造を示し、中詰め充填材の充填前における斜視図である。
【図6】図5の道路拡幅構造に使用されたL字ブロック体の斜視図である。
【図7】図5のL字ブロック体の別の方向からの斜視図である。
【図8】中詰め充填材の充填後における図5の道路拡幅構造の斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
A 既設道路
B 法面部
C 既存擁壁
D 車両
1 上位基礎体
2 アンカーボルト
3 ナット
4 L字ブロック体
5 水平版部
6 垂直版部
7 アンカー穴
8 車輪止めリブ
9 ガードレール
10 支柱
11 受孔
12 充填用開口部
13 中詰め充填材
14 グラウト材
15 舗装層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設道路の谷側の路肩部に上位基礎体を設け、L字ブロック体よりなる複数の拡幅用路床部材を逆L字状に倒立させて前記既設道路に沿って並設し、前記L字ブロック体の水平版部の先端部を前記上位基礎体に支持させる一方、前記L字ブロック体の垂直版部の下端を谷側法面の既存擁壁に支持させ、前記L字ブロック体と前記既存擁壁に囲まれた空間に中詰充填材を充填し、拡幅路床部の上載荷重を前記既存擁壁で支承させるようにした道路拡幅構造。
【請求項2】
前記上位基礎体にアンカーボルトを植設し、前記L字ブロック体の水平版部の先端部にアンカー穴を形成し、前記アンカー穴に挿入した前記アンカーボルトの上端部にナットを嵌め、前記ナットの締付けによって前記L字ブロック体の水平版部を前記上位基礎体に固定したことを特徴とする請求項1に記載の道路拡幅構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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