説明

遠心クラッチを備えた携帯作業機のブレーキ装置

【課題】慣性運動している刃物を的確に動作停止することのできる携帯作業機のブレーキ装置を提供する。
【解決手段】クラッチドラム44aに臨んで電磁石48のコア本体54が配設されている。加速度センサ24が衝撃を検知するとエンジン14が緊急停止される。そして、発電器70の発電電圧が所定の電圧まで低下すると回転数検知回路80の第1のリセットICが動作し、これによりコントローラ(マイコン)26から電磁石ブレーキ機構42にブレーキON信号が出力される。電磁ブレーキ機構42は電磁石48とコンデンサ74を含み、コンデンサ74を電源として電磁石48が駆動される。電磁石48のコア本体54はクラッチドラム44aに電磁吸着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈払機、チェーンソー、ヘッジトリマなどの内燃機関によって駆動される刃物を備えた携帯作業機に関し、より詳しくは、遠心クラッチを備えた携帯作業機のブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
刃物を備えた作業機は、駆動源を背中に背負って作業する背負い式と、駆動源と刃物とが一体構造の手持ち式とに大別され、これらを総称して「携帯作業機」と呼び、携帯作業機を、その作業の適用対象に着目して分類すると、草刈りに適用される刈払機、樹木の伐採に適用されるチェーンソー、垣根を整えるのに適用されるヘッジトリマが知られている。この種の携帯作業機は、駆動源と刃物との間に、特許文献1に見られるように遠心クラッチが介装され、駆動源が所定の回転数に達すると遠心クラッチが締結して駆動源の動力が刃物に伝達される。
【0003】
刃物を備えた携帯作業機に関し、作業中に予期しない状況が発生したときに刃物から作業者の安全を確保する安全装置が開発されている。
【0004】
特許文献2は、刈払機の内燃機関から刈刃に至る動力伝達シャフトを包囲するチューブハウジングと、このハウジングに挿入した安全ピンに繋いだロープとを備え、作業者が転倒したときにロープを引っ張って安全ピンをハウジングから引き抜くことで、内燃機関の点火回路を強制的に接地して内燃機関を停止させることを開示している。
【0005】
特許文献3は、肩掛けベルト式の刈払機の左右のハンドルに、夫々、作業者が把持することにより動作する停止レバーを設け、作業者が手を離して左右の停止レバーの少なくともいずれか一方が解放されたときには、この停止レバーに機械的に連係された燃料バルブを閉ることにより、内燃機関への燃料供給を強制的に停止する又は点火プラグへの電源供給を強制的に停止して内燃機関を停止させることを開示している。
【0006】
特許文献4は、肩掛けベルト式の刈払機において、ハンドルに停止レバー又は圧力センサを設け、この作業者がハンドルから手を離したときには、電磁ブレーキ又は機械式のストッパが動作して刈刃の回転動作を強制的に停止させることを開示している。
【0007】
特許文献5は、内燃機関から回転刃物に至る動力伝達経路に電磁ブレーキを設け、非常時に例えばハンドグリップに設けられたマニュアルスイッチによって電磁ブレーキを動作させて刃物の動作を強制停止することを開示しており、この電磁ブレーキの電源としてコンデンサに蓄えた電荷を使うことを提案している。
【0008】
特許文献6は電動刈払機を開示している。この電動刈払機は、駆動源であるモータと刈刃との間の動力伝達軸を包囲する操作チューブと当接する圧電素子からなる衝撃センサを有し、この衝撃センサが衝撃を検出したときに電動モータの回転を強制停止させることを開示している。
【0009】
特許文献7は、内燃機関又は電動モータからなる駆動源と、この駆動源と刈刃とを機械的に連結する動力伝達軸との間に介装した遠心クラッチとを有する肩掛けベルト式の刈払機において、この遠心クラッチにクラッチシューを設け、駆動源と動力伝達軸との間に大きな相対変位が有ったときには、この相対変位によって機械的に動作するクラッチシューによって自動的に遠心クラッチに制動力を加えることを開示している。
【0010】
特許文献8は、肩掛けベルト式の刈払機において、この刈払機を肩掛けするためのベルトの先端に取り付けられたキャップを、刈払機側のスイッチ本体に係脱自在に設けることを提案している。この肩掛けベルト式の刈払機にあっては、刈刃が大きな石などに当たって刈払機が跳ね返されるキックバックの衝撃でキャップがスイッチ本体から離脱すると、点火プラグへの電源供給が強制的に停止されることにより内燃機関が停止する。
【0011】
特許文献9は、電動モータの出力を刈刃に伝達する動力伝達シャフトを包囲する操作チューブの傾斜角度を検出する水銀スイッチを設け、操作チューブの傾斜角度が所定の範囲から逸脱したときに電動モータへの電源供給を遮断することで電動モータを強制的に停止させることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】JP特開平10−225925号公報
【特許文献2】JP特開昭64−63315号
【特許文献3】JP実用新案出願公開平2−131822号公報
【特許文献4】JP特開平4−158714号公報
【特許文献5】JP実開昭52−153995号公報
【特許文献6】JP特開2006−288296号公報
【特許文献7】JP特開平8−187024号公報
【特許文献8】JP特開2008−118960号公報
【特許文献9】JP特開昭62−198320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
携帯作業機の安全性を高めるには、予期しない状況の発生を検出してから刃物が停止するまでの時間を出来る限り短縮することが望まれる。この観点から従来技術を検討してみると、例えば特許文献2のように内燃機関を強制的に停止させたとしても刃物は慣性運動によって動作し続ける。また、特許文献4のように電磁ブレーキなどで刃物の動作を停止させるにしても、電磁ブレーキは、摩擦係合つまり刃物に連結された回転体の運動エネルギを熱エネルギに変換することにより刃物の動作を停止させるものであるため刃物の動作が停止するまでに時間を要すると共に電磁ブレーキに高い耐久性が要求される。
【0014】
特に、駆動源として電動モータではなくて内燃機関を採用した携帯作業機では刃物の動作を直ぐに停止させるのは容易でない。例えば特許文献5に開示のようにコンデンサに蓄えた電荷を使って電磁ブレーキを駆動するにしても、内燃機関が動作している状態では刃物の動作を停止させる前にコンデンサの電荷を使い切ってしまう。
【0015】
また、携帯作業機、特に駆動源として内燃機関を採用した作業機の使用状態を観察すると、作業の途中や次の作業に移るときに、内燃機関の運転を停止させないで、スロットルレバーから手を離してアイドル運転状態に保つ場合が多い。前述したように、内燃機関と刃物とは遠心クラッチを介して連結されているため、アイドル運転中は遠心クラッチがOFF状態(クラッチ非締結状態)であり、内燃機関の動力が刃物に伝達されない。ただし、刃物を高速運転した状態からアイドル運転へと移行させた場合には、刃物は慣性運動を継続する。このことから、作業者はスロットルレバーから手を離したとしても、慣性運動を継続している刃物に注意を払う必要がある。
【0016】
本発明の目的は、遠心クラッチを備えた携帯作業機を前提として、遠心クラッチがOFF状態のときに刃物の動作を的確に停止させることのできるブレーキ装置を提供することにある。
【0017】
本発明の更なる目的は、遠心クラッチがON状態(クラッチ締結状態)からOFF状態(クラッチ非締結状態)になって内燃機関から刃物への動力伝達が遮断されたときに、刃物の慣性運動を早期に停止させることのできるブレーキ装置を提供することにある。
【0018】
本発明の更なる目的は、作業者が予期しない状況が発生したときに内燃機関の運転を強制的に停止する携帯作業機を前提として、内燃機関の運転停止から刃物の動作停止までの時間を大幅に短縮することのできるブレーキ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した技術的課題は、本発明によれば、
駆動源の動力を遠心クラッチを介して刃物に伝達する携帯作業機を前提として、前記遠心クラッチが非締結状態の下で慣性運動している前記刃物を制動するためのブレーキ装置であって、
前記遠心クラッチの被駆動側部材から刃物に至る動力伝達部材に臨んで配設され且つ該動力伝達部材に対して離間接近動作可能なコアを有する電磁石と、
前記動力伝達部材から離間する方向に前記コアを付勢する付勢手段とを有し、
前記遠心クラッチが非締結状態のときに前記電磁石に電源を供給して前記コアを前記動力伝達部材に電磁吸着させることにより前記刃物の慣性運動を完全停止させることを特徴とする携帯作業機のブレーキ装置を提供することにより達成される。
【0020】
本発明の携帯作業機のブレーキ装置は、電磁石に電源を供給すると、電磁石のコアが遠心クラッチの動力伝達部材に向けて接近する。電磁石のコアが動力伝達部材に接近すると当該動力伝達部材の内部に渦電流が発生し、この渦電流によって動力伝達部材に制動力が働く。そして、このコアが更に接近して動力伝達部材に当接することで電磁石のコアが動力伝達部材に電磁吸着する。これにより遠心クラッチが非締結状態(クラッチOFF状態)で慣性運動している刃物の動作を完全停止することができる。
【0021】
本発明の携帯作業機のブレーキ装置は、例えば内燃機関の出力を制御するマニュアル式のスロットルレバーを作業者が解放した後に、例えば作業者がマニュアルスイッチを操作することで、このマニュアルスイッチの操作をトリガーとして上記電磁石に電源を供給するようにしてもよい。また、内燃機関のアイドル運転状態が所定時間継続したことを条件として上記電磁石に電源を供給するようにしてもよい。言うまでもないことであるが、アイドル運転状態では遠心クラッチがクラッチOFF状態にある。電磁石の電源は、作業機がバッテリを備えているときには、このバッテリを利用してもよいし、次に説明するコンデンサであってもよい。
【0022】
本発明の好ましい実施形態は、前述したコンデンサによって駆動される電磁ブレーキ(特許文献5)を見直して、この電磁ブレーキを電磁石で置換した電磁石ブレーキ機構を有している。この電磁石ブレーキ機構に含まれる電磁石は、そのコアが、遠心クラッチから刃物までの間の動力伝達部材、特に好ましくは遠心クラッチの被駆動側金属部材に直接的に電磁吸着することで刃物の慣性運動を強制的に完全停止させることができる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態は、また、電磁石を動作させるタイミング、つまりコンデンサの電荷を電磁石のコイルに供給するタイミングを、内燃機関と刃物との間に介装された遠心クラッチが切断された直後に設定してある。
【0024】
例えば特許文献2、3に開示のように作業中に予期しない状況が発生したときに内燃機関の運転を緊急停止させたときや、作業者がスロットルレバーから手を離したときなど、内燃機関の回転数の低下に伴って遠心クラッチは締結状態(クラッチON状態)から非締結状態(クラッチOFF状態)に変化する。本発明の好ましい実施形態では、このクラッチON状態からクラッチOFF状態に変化した直後に、コンデンサを電源として電磁石が駆動される。電磁石が駆動すると、そのコアが遠心クラッチの被駆動側金属部材に向けて接近する。電磁石のコアが被駆動側金属部材に接近すると、既知のように被駆動側金属部材の内部に渦電流が発生し、この渦電流によって被駆動側金属部材に制動力が働く。そして、このコアが更に接近して被駆動側金属部材に当接することで、電磁石のコアは被駆動側金属部材に電磁吸着する。
【0025】
遠心クラッチがON状態からOFF状態に変化しても刃物は上述したように慣性で動作し続ける。この慣性運動している刃物に連結されている被駆動側金属部材に対して電磁石のコアが接近し、この過程で被駆動側金属部材は、その内部に発生する渦電流によって制動され、その後コアが被駆動側金属部材に電磁吸着することにより、被駆動側金属部材は制動される。その結果、遠心クラッチがOFF状態になった直後に、コンデンサを電源として動作する電磁石によって被駆動側金属部材に連結されている刃物の慣性運動を迅速に且つ完全停止させることができる。勿論、電磁石の電源であるコンデンサの電荷は電磁石を駆動することで消費されることになるが、コンデンサの電荷が無くなると、これに伴って電磁石が消磁することから、上記の付勢手段によって電磁石のコアがブレーキ解除位置に復帰する。このことは、内燃機関を緊急停止した後に内燃機関を再始動する際に、電磁石ブレーキ機構を解除するための特別な操作が不要であることを意味する。
【0026】
本発明は、典型的には、前述した特許文献2、3、8に開示のように、作業者が予期しない状況に陥ったことを検出したときに内燃機関の運転を強制的に停止するエンジン緊急停止機構を有する携帯作業機に適用される。上記の作業者が予期しない状況に陥ったことを検出するための検出手段としては、前述した特許文献2に開示の安全ピンによるスイッチ方式、特許文献3に開示の停止レバー方式、特許文献4に開示のハンドルに設けた停止レバー又は圧力センサ方式、特許文献5に開示のハンドグリップに設けたマニュアルスイッチ方式、特許文献6に開示の圧電素子からなる衝撃センサ方式、特許文献8に開示の肩掛けベルトに加わる荷重によって動作するスイッチ方式、特許文献9に開示の操作チューブの傾斜角度を検出する傾斜角度センサ方式などを採用することができる。したがって、これらセンサ又はスイッチに関する上記各特許文献の明細書及び図面の開示を本願の明細書に援用する。また、作業者が予期しない状況に陥ったことを検出するための検出手段として加速度センサを採用し、例えば作業中にキックバックにより刈払機に大きな加速度が作用したときに、これを加速度センサによって検出することにより内燃機関の運転を強制的に停止するようにしてもよい。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、前記電磁石のコアの前記離間接近動作を案内するガイド手段を更に有し、このガイド手段によってコアの誤作動を防止できる。
【0028】
本発明の他の目的、作用効果は以下の本発明の好ましい実施例の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例の刈払機の斜視図である。
【図2】図1の刈払機の駆動源部を後ろから見た背面図である。
【図3】図1の刈払機が備えるエンジン緊急停止機構の系統図を説明するための図である。
【図4】図1の刈払機の駆動源部を斜め前方から見た図である。
【図5】図1の刈払機の駆動源部の前半分つまり遠心クラッチが搭載されている部分の断面図である。
【図6】図1の刈払機の遠心クラッチの部分に配置された電磁石ブレーキ機構の平面図である。
【図7】図1の刈払機の駆動源部を前方から見た図である。
【図8】図1の刈払機の遠心クラッチのクラッチドラムの周面に臨んで配設した電磁石ブレーキ機構の縦断面図であり、刈払機の出力軸を横断する面で切断した図である。
【図9】電磁石ブレーキ機構を斜め下方から見た断面図である。
【図10】図1の刈払機の遠心クラッチのクラッチドラムの周面に臨んで配設した電磁石ブレーキ機構の縦断面図であり、刈払機の出力軸に沿って切断した図である。
【図11】図1の刈払機の遠心クラッチのクラッチドラムの周面に臨んで配設した電磁石ブレーキ機構を下方から見た底面図である。
【図12】電磁石ブレーキ機構に関する第1例の制御系統図である。
【図13】第1例の制御での制御例を説明するためのフローチャートである。
【図14】電磁石ブレーキ機構に関する第2例の制御系統図である。
【図15】第2例の制御での制御例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0030】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0031】
図1、図2は実施例の肩掛けベルト式の携帯刈払機を示す図である。実施例の携帯刈払機の斜視図である図1を参照して、刈払機100は、操作チューブ2の一端に配設された駆動源部4と、操作チューブ2の他端に配設された刈刃部6とを有し、操作チューブ2にはその長手方向中間部分にハンドル8が組み付けられている。この構成は、従来から周知の構成である。ハンドル8にはスロットルレバー10等が設けられ、作業者は、このスロットルレバー10を操作することで刈刃部6の回転動作速度を調整することができる。
【0032】
駆動源部4は、エンジンカバー12に包囲された単気筒の空冷2ストローク内燃エンジン14(図2)と、このエンジン14の下方且つ隣接して配設された燃料タンク16とを有し、この燃料タンク16から供給される燃料を受け取ってエンジン14の運転が実行される。単一気筒の内燃エンジン14はそのシリンダボアの軸線が垂直方向に沿って延びるように駆動源部4に搭載されている。図中、参照符号18は点火プラグを示し、点火プラグ18はエンジン14の頂部に取り付けられている。また、参照符号20はリコイルスタータを示す。リコイルスタータ20は、駆動源部4の後部において、後方に向けて突出する状態で取り付けられている。このリコイルスタータ20を操作することでエンジン14を始動することができる。リコイルスタータ20の下方且つ燃料タンク16の後方のデッドスペースに衝撃検出ボックス22が配設されている。
【0033】
図2は、刈払機100を後端面つまり刈刃部6とは反対側から刈払機100を見た図であり、この図2では、衝撃検出ボックス22の蓋22aを取り外した状態で図示してある。衝撃検出ボックス22には、刈払機100に加わる衝撃を検出する加速度センサ24と、マイコンからなるコントローラ26とが収容されている。
【0034】
加速度センサ24は圧電センサで構成され、この圧電センサのピックアップは、圧電セラミックを薄い円盤状の金属板に貼り付けた構成を有しており、その検出軸は単一である。図2の参照符合DAは加速度センサ24の検出軸を示す。勿論、加速度センサとして半導体式センサを採用してもよい。半導体式センサの典型例はピエゾ素子型、圧電素子型のセンサである。半導体式センサは、検出軸が単一の一軸式、2つの検出軸を備えた二軸式、3つの検出軸を備えた三軸式が知られている。本発明は、一軸、二軸、三軸のいずれの加速度センサであっても、これを採用することができるが、一軸式の加速度センサを採用することで、コントローラ26での処理を簡素化及びコンパクトにすることができ、また、一軸式の加速度センサは比較的安価に入手できるという利点がある。
【0035】
加速度センサ24、コントローラ26及び点火プラグ18に高電圧を供給する高電圧発生回路30が、エンジン14の運転を強制停止するエンジン緊急停止機構32を構成している(図3)。すなわち、加速度センサ24から加速度情報がコントローラ26に入力される。コントローラ26では、加速度センサ24が検出した加速度が所定のしきい値よりも大きいときにエンジン緊急停止信号を出力して点火プラグ18に対する高電圧の供給を停止させる。具体的には、エンジンの緊急停止(点火プラグ18への高電圧供給停止)は高電圧発生回路30が生成した高電圧を接地することにより行われる。勿論、点火プラグ18に対する高電圧の供給を停止することで、エンジン14の運転が強制停止される。
【0036】
上記のエンジン緊急停止機構32の制御系において、一軸式の加速度センサ24の取り付けに関して、その検出軸DAが上下方向となるように駆動源部4に取り付けてもよいが、以下に説明するように、図2に示すように上下方向に対して検出軸DAを傾斜させるようにしてもよい。
【0037】
図2に戻って、加速度センサ24の単一の検出軸DAは、図から理解できるように、刈払機100を水平面に着座させた状態で、シリンダボアの軸線と平行な鉛直面において、加速度センサ24が上下方向に対して斜めの姿勢で取り付けられており、これにより検出軸DAが、鉛直面において、シリンダボアの軸線方向である上下方向に対して傾斜している。このように、加速度センサ24を傾斜した状態で駆動源部4に搭載することにより、センサ24の衝撃受け面は上下方向に対して傾斜して位置決めされることになる。これによれば、一軸式加速度センサ24の感度を上下方向の振動に関しては低下させながら、二次元の各方位の衝撃に対して一軸式加速度センサを感応させることができる。
【0038】
図4は刈払機100の駆動源部4を斜め前方から見た図である。駆動源部4の前端にはクラッチカバー40が備えられ、このクラッチカバー40の内部に後に説明する遠心クラッチ44が収容されている。そして、クラッチカバー40の下部には電磁石ブレーキ機構42が取り付けられている。図5は駆動源部4の縦断面図である。電磁石ブレーキ機構42は遠心クラッチ44のクラッチドラム44aの周面に臨んで配設されている。遠心クラッチ44は、従来と同様に、エンジン14と刈刃部6との間に介装されている。図5中、参照符合14aはエンジン出力軸(クランクシャフト)を示す。遠心クラッチ44はエンジン14の回転数が所定の回転数に達すると、遠心力によりクラッチ遠心子が外側に拡開して当該クラッチ遠心子の外周がクラッチドラムの内周面に摩擦係合することにより締結(クラッチON)される。遠心クラッチ44のクラッチドラム44aは金属製であり、刈刃部6に連結される被動部材である。
【0039】
図6は電磁石ブレーキ機構42を上から見た平面図である。電磁石ブレーキ機構42は、4つの側壁46aを備えた平面視矩形のコアガイド部材46を有し、このコアガイド部材46によって電磁石48のコア50の上下動が案内される。
【0040】
コア50は、図8を参照して、一対のコア本体54を有し、この一対のコア本体54はクラッチドラム44aの周面に向けて延びている。勿論、各コア本体54の周囲にはコイル56が配設される。
【0041】
図9を参照して、コア本体54の下端は、バネ座プレート52で互いに連結されている。コア本体54は、コアガイド部材46の一対のガイド孔46aに挿入されており、このガイド孔46aはコア本体54の外形輪郭と相補状の形状を有している。コア本体54の外形輪郭と相補的な形状のガイド孔46aを有するコアガイド部材46は、コア50の上下動を案内するガイド手段を構成するものであるが、このガイド手段の他の例として、例えば一対のコア本体54に、その下端面に開放して上下に延びる中空部分を形成し、この中空部分に挿入したガイドピンによってコア56の上下動を案内するようにしてもよい。上記のコアガイド手段によりコア50の動作を案内することでコア50の誤作動を防止できる。
【0042】
コアガイド部材54の底面には、コア本体54を挟んで2つの凹所46b(図9)が形成され、各凹所46bに夫々リターンスプリング58が収容されている。各リターンスプリング58は、その下端がバネ座プレート52によって支持されている。
【0043】
バネ座プレート52の中央部分にはギャップ調整ネジ62が配設され、このギャップ調整ネジ62のヘッド62aが、電磁石ブレーキ機構42を下方から覆う底蓋部材64に衝突することにより、コア本体54の先端面とクラッチドラム44との間のギャップ長を規定する。したがって、このギャップ調整ネジ62を調整することによって、コア本体54の先端面54aとクラッチドラム44との間のギャップの大きさ(ギャップ長)を調整することができる。
【0044】
図8から最も良く分かるように、コア本体54の先端面はクラッチドラム44aの周面と相補的な形状に形作られている。電磁石ブレーキ機構42のコイル56に電源が供給されると、リターンスプリング58のバネ付勢力に抗してコア50がクラッチドラム44に向けて接近つまりクラッチドラム44に接近し、この過程でクラッチドラム44には渦電流が発生する。この渦電流によりクラッチドラム44に制動力が作用し始める。コア50がクラッチドラム44に向けて更に接近してコア本体54の先端面54aがクラッチドラム44と当接すると共にクラッチドラム44に電磁吸着する。これによりクラッチドラム44aの回転動作を完全に停止させることができる。
【0045】
すなわち、クラッチドラム44の制動は、コア本体54の先端面54aがクラッチドラム44に接近することによって発生する渦電流による制動力と、コア本体54の先端面54aがクラッチドラム44に当接して電磁吸着することによる制動力とによって行われる。勿論、クラッチドラム44の回転動作が停止すると刈刃部6の回転も停止する。逆に、コイル56への電源供給を停止するとコア50の磁力が無くなり(コア50の消磁)、リターンスプリング58のバネ力によってコア50はクラッチドラム44aから離れた原位置に復帰する。
【0046】
図6、図8を参照して、電磁石ブレーキ機構42の一対のコイル56を包囲するブレーキ機構ハウジング66に、各コア本体54の先端部を包囲するように定置した共振止め部材68をブレーキ機構ハウジング66に固定するのがよい。この共振止め部材68は樹脂成型品であるのが好ましい。コア本体54の先端部の周囲を、定置した樹脂成型品の共振止め部材68で包囲することにより、クラッチドラム44とコア本体54とが接触することに伴って発生する音を低減できる。なお、ブレーキ機構ハウジング66と共振止め部材68とを一体成形してもよいのは勿論である。
【0047】
上述した電磁石ブレーキ機構42によるクラッチドラム44の制動つまり刈刃部6の制動は前述したエンジン緊急停止機構32の制御に関連して実行される。
【0048】
図12は、電磁石ブレーキ機構42の制御に関連した第1例の制御の全体系統図である。この図12を参照して、エンジン14によって駆動される発電器70が生成した電力は、上述したように点火プラグ18の電源として利用される。
【0049】
上述したように、刈払機100に加わる例えばキックバックなどの衝撃を加速度センサ24が検出するとコントローラ26によってエンジン14の運転が緊急停止される。このコントローラ26は電磁石ブレーキ機構42の制御にも用いられる。電磁石ブレーキ機構42は第1のコンデンサ74を含んでおり、この第1のコンデンサ74には発電器70が生成した電力が蓄えられる。
【0050】
コントローラ26には、エンジン14の回転数を検出する回転数センサ72からの信号が入力される。そして、エンジン回転数が低下していることを前提として、このエンジン回転数が所定の回転数(具体的には遠心クラッチ44がクラッチOFF状態となるときの回転数)まで低下すると、コントローラ26から電磁石ブレーキ機構42にブレーキON信号が出力され、電磁石ブレーキ機構42は上記の第1のコンデンサ74を電源として動作を開始する。図13は第1例のブレーキ制御の一例を示すフローチャートである。
【0051】
図13を参照して、先ずステップS1において、エンジン14の緊急停止の有無が判定され、YESつまり加速度センサ24からの衝撃検知信号を受け取ると、ステップS2に進んで、エンジン14の回転数が、所定の回転数以下まで低下したかの判定が行われる。ここに所定の回転数として、遠心クラッチ44がクラッチOFF状態になる回転数またはこれよりも若干低い回転数が設定される。ステップS2で、エンジン回転数が所定の回転数以下であると判定されると、ステップS3に進んで、電磁石ブレーキ機構42に動作開始信号が供給される。これにより、電磁石ブレーキ機構42に含まれる第1コンデンサ74(図12)から電磁石48のコイル56に電源が供給される。このコンデンサ74による電磁石48への電源供給はコンデンサ74の電荷を使い切るまで継続される。
【0052】
電磁石ブレーキ機構42に含まれる電磁石48は、コイル56に電流が流れると、前述したように、コア50がクラッチドラム44aに向けて接近する。このコア50の接近動作は、上述したようにコアハウジング46によって案内される。コア本体54がクラッチドラム44aに接近するとクラッチドラム44aの内部に発生する渦電流によってクラッチドラム44aが制動される。そして、コア50が更に接近するとコア本体54の先端面54aがクラッチドラム44aと電磁吸着してクラッチドラム44aの慣性運動を停止させる。
【0053】
ちなみに、電磁石ブレーキ機構42の電磁石48の代わりに、コア本体54の先端面54aにブレーキシューを付設して電磁ブレーキを作製し、この電磁ブレーキを使って上記と同じ制御を行ったところ、コンデンサ74の電荷を使い切った後もクラッチドラム44aの回転が継続し、結局クラッチドラム44aの回転が停止するまで約20〜25秒の時間を要した。これに対して上記の実施例で説明した電磁石48を使った電磁石ブレーキ機構42によれば、約2秒でクラッチドラム44aの慣性運動を完全停止させることができた。
【0054】
コンデンサ74を電源とする電磁石ブレーキ機構42は、コンデンサ74の電荷を使い切った後は電磁石46が消磁する。したがって、電磁石48のコア50は、電磁石ブレーキ機構42に含まれるリターンスプリング58によってコア本体54がクラッチドラム44aから離れる方向に移動して待機位置に戻る。したがって、エンジン14を再起動した後に電磁石ブレーキ機構42を解除する操作を全く必要としない。
【0055】
上述した制御例において、遠心クラッチ44のクラッチOFF状態を検出するのに、エンジン回転数を使用する例を説明したが、変形例として、遠心クラッチ44の入力側部材(駆動側部材)又は出力側部材(非駆動側部材:例えばクラッチドラム44a)の回転数を使用してもよい。
【0056】
図14は、電磁石ブレーキ機構42の制御に関連した第2例の制御のブロック図である。この第2の実施例においても電磁石ブレーキ機構42の第1のコンデンサ74を電源とした電磁石48の駆動によってクラッチドラム44aの制動が実行される。
【0057】
図14を参照して、発電器70が生成した電力は第1の定電源回路76によって12Vの電圧に調整され、12Vの電圧が加速度センサ24に供給される。また、第2の定電源回路78によって5Vに調整され、この5Vの電圧がコントローラ(マイコン)26に供給される。発電器70が生成した電力は電磁石ブレーキ機構42の第1コンデンサ74に供給される。また、発電器70が生成した電力は回転数検知回路80に入力され、この回転数検知回路80の信号がコントローラ(マイコン)26に供給される。
【0058】
回転数検知回路80は、実質的に遠心クラッチ44のクラッチOFFタイミングを検出するクラッチOFF検出手段を構成するものである。回転数検知回路80はリセットICを含んでおり、このリセットICは、発電器70が生成する電圧変化に応動し、所定の電圧を境に出力を反転する出力反転素子として使われている。変形例として、リセットICの代わりにツェナーダイオードとトランジスタとの組み合わせ又はコンパレータを採用してもよい。
【0059】
コントローラ26から制御信号(ブレーキON信号)が電磁石ブレーキ機構42に供給され、この電磁石ブレーキ機構42の第1コンデンサ74の電荷を使って電磁石48が駆動され、コア本体54がクラッチドラム44aに接近し且つ電磁吸着することによりクラッチドラム44aが制動される。電磁石ブレーキ機構42とコントローラ26との間にはブレーキ保持回路82が介装されている。このブレーキ保持回路82は第2のコンデンサ84を含んでおり、この第2のコンデンサ84を電源にしてブレーキ保持回路82から電磁石ブレーキ機構42に対するブレーキON信号が保持され、これにより電磁石ブレーキ機構42の第1コンデンサ74を電源とするクラッチドラム44aの制動が継続される。
【0060】
好ましくは、第2の定電源回路78とコントローラ26との間に電源切断回路86を介装するのがよい。電源切断回路86はリセットICを主なる要素として構成されている。変形例として、この電源切断回路86のリセットICの代わりにツェナーダイオードとトランジスタとの組み合わせ又はコンパレータを採用してもよい。
【0061】
前述したように、加速度センサ24が刈払機100に加わる衝撃、例えばキックバックを検出するとコントローラ26によって点火プラグ18への電源供給が停止される。これによりエンジン14の回転数は低下し、これに伴って発電器70の発電能力が低下する。発電器70が生成する電力の電圧は一般的にエンジン回転数によって規定することができる。
【0062】
回転数検知回路80に含まれる第1のリセットICは、エンジン回転数が低下する過程で遠心クラッチ44がクラッチOFFする回転数(例えば3800rpm)の時に発電器70が発生する電圧を境に出力を反転するリセットICが選択される。したがって、遠心クラッチ44がクラッチOFF状態になると、回転数検知回路80からコントローラ26にクラッチOFF信号(Lowレベルの信号)が供給される。
【0063】
他方、電源切断回路84に含まれる第2のリセットICは、エンジン14の運転が停止する直前の回転数(例えば約800rpm)の時に発電器70が発生する電圧を境に出力を反転するリセットICが選択される。したがって、エンジン14の回転数が約800rpmまで低下すると、第2のリセットICの出力が反転し、電源切断回路84は、発電器70を電源としたコントローラ26への電源供給を遮断する。これにより、極めて低い電圧の電源がコントローラ26に供給されることに伴うコントローラ26の誤動作を防止することができる。
【0064】
図15は、第2例に関するコントローラ26の制御例を示すフローチャートである。先ず、ステップS10で加速度センサ24の衝撃検知を受けてエンジン14が緊急停止されたか否かが判断され、このステップS10においてYESと判定されたときには、エンジン14を強制的に停止させる制御が実行されたとしてステップS11に進む。
【0065】
ステップS11では、回転数検知回路80からLowレベルの信号が入力されたか否かの判断が行われる。上記ステップS10において、エンジン14の点火を停止することでエンジン14の運転を緊急停止させる制御が実行されるとエンジン14の回転数が急激に低下する。そして、これに伴って発電器70の発電電圧が所定の電圧まで低下すると回転数検知回路80の第1リセットICが動作して回転数検知回路80からLow信号が出力される。このLow信号がコントローラ26に入力されると、ステップS12に進んで、ブレーキ保持回路82にブレーキON信号(Hiレベルの信号)が出力される。ブレーキ保持回路82は、このブレーキON信号を受けて電磁石ブレーキ機構42に対してブレーキ駆動信号を出力すると共にブレーキ保持回路82に含まれる第2コンデンサの蓄電を開始する。
【0066】
この状態は、僅かな時間であるが、電源切断回路86によってコントローラ(マイコン)26がシャットダウンされるまで継続される(S13)。コントローラ26がシャットダウンした後は、ブレーキ保持回路82の第2コンデンサの電荷を使って電磁石ブレーキ機構42に対するブレーキ駆動信号が保持される。
【0067】
電磁石ブレーキ機構42は、ブレーキ保持回路82から供給されるブレーキ駆動信号を受けて、上記第1の例と同様に、電磁石ブレーキ機構42の第1コンデンサ74を電源として電磁石48が駆動され、この電磁石48がクラッチドラム44aに電磁吸着することによって、このクラッチドラム44aが制動される(刈刃部6の完全停止)。
【0068】
この第2の例では、エンジン14の緊急停止に伴う発電器70の急激な発電能力低下を使うことで、この発電器70の発電電圧によって的確に遠心クラッチ44のクラッチOFFタイミングを検知することができる。したがって第1コンデンサ74に蓄えられた有限の電荷を使って電磁石ブレーキ機構42により刈刃部6の慣性運動を早期に完全停止させることができる。
【0069】
また、電源切断回路84を組み込むことにより、発電器70の発電能力低下に伴うコントローラ26の誤作動を確実に回避することができる。このことは刃物を備えた作業機100の安全対策にとって極めて重要なことである。
【0070】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、これに限定されることなく例えば以下の変形例を包含するものである。
【0071】
(1)実施例ではコア50が一対のコア本体54を有しているが、コア本体54は単一であってもよいし、3以上の複数であってもよい。
(2)実施例では電磁石ブレーキ機構42がクラッチドラム44aの周面に臨んで配置されているが、クラッチドラム44aの平らな側面に臨んで電磁石ブレーキ機構42を配設し、コア本体54の先端面がクラッチドラム44aの側面に当接することでクラッチドラム44aを制動するようにしてもよい。
【0072】
(3)手持ち作業機として刈払機100を例示して実施例を説明したが、チェーンソー、ヘッジトリマなどの刃物を備えた作業機に対しても本発明を効果的に適用することができる。
(4)エンジン14を背中に背負う背負い式の作業機に対しても本発明を効果的に適用することができる。
(5)実施例では、エンジン14を緊急停止させるのに加速度センサ24によって衝撃を検知したが、作業者が予期しない状況に陥ったことを検出する手段は加速度センサ24に限定されない。前述した特許文献に開示のセンサやスイッチであってもよい。
【0073】
(6)典型的な実施例として、非常時にエンジン14の運転を停止するエンジン緊急停止機構を備えた作業機(刈払機100)を説明したが、アイドル運転状態のときの刈刃部6の空転を防止するのに電磁石ブレーキ機構42を使用してもよい。具体的には、例えばアイドル回転数が所定時間継続したときに、電磁石ブレーキ機構42を作動させてクラッチドラム44の制動つまり刈刃部6を制動するようにしてもよい。また、作業者が操作するマニュアル式のスイッチを用意し、エンジン14の出力を制御するスロットルレバーを解放したことを条件に、作業者がマニュアルスイッチを操作したことをトリガーとして電磁石ブレーキ機構42を動作させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
100 刈払機
4 刈払機の駆動源部
6 刈払機の刈刃部
14 エンジン(単気筒の空冷2ストローク)
14a エンジン出力軸(クランクシャフト)
18 点火プラグ
24 加速度センサ(衝撃センサ)
26 マイコンからなるコントローラ
DA 加速度センサの検出軸
30 点火プラグ用の高電圧発生回路
32 エンジン緊急停止機構
42 電磁石ブレーキ機構
44 遠心クラッチ
44a クラッチドラム
48 電磁石
50 電磁石のコア
52 バネ座プレート
54 コア本体
54a コア本体の先端面
56 コイル
58 リターンスプリング
68 共振止め部材(樹脂成型品)
70 発電器
72 回転数センサ
74 第1コンデンサ(電磁石ブレーキ機構)
80 クラッチOFF検出回路(第1のリセットIC)
82 ブレーキ保持回路
86 電源切断回路(第2のリセットIC)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の動力を遠心クラッチを介して刃物に伝達する携帯作業機を前提として、前記遠心クラッチが非締結状態の下で慣性運動している前記刃物を制動するためのブレーキ装置であって、
前記遠心クラッチの被駆動側部材から刃物に至る動力伝達部材に臨んで配設され且つ該動力伝達部材に対して離間接近動作可能なコアを有する電磁石と、
前記動力伝達部材から離間する方向に前記コアを付勢する付勢手段とを有し、
前記遠心クラッチが非締結状態のときに前記電磁石に電源を供給して前記コアを前記動力伝達部材に電磁吸着させることにより前記刃物の慣性運動を完全停止させることを特徴とする携帯作業機のブレーキ装置。
【請求項2】
内燃機関と刃物との間に介装された遠心クラッチを有し、
該遠心クラッチの被駆動側部材に前記刃物が機械的に連結されて、前記内燃機関の回転数が所定の回転数に達すると前記遠心クラッチがON状態となって前記内燃機関と前記刃物が機械的に連結され、前記内燃機関の回転数が所定の回転数よりも小さくなると前記遠心クラッチがOFF状態となって前記内燃機関から前記刃物への動力伝達が遮断される携帯作業機であって、
前記内燃機関によって駆動される発電器と、
該発電器が生成した電気エネルギを蓄えるコンデンサと、
前記遠心クラッチの被駆動側部材から刃物に至る動力伝達部材に臨んで配設され且つ該動力伝達部材に対して離間接近動作可能なコアを有する電磁石と、
前記動力伝達部材から離間する方向に前記コアを付勢する付勢手段と、
前記遠心クラッチがON状態からOFF状態に変化したクラッチOFFタイミングを検出するクラッチOFF検出手段と、
該クラッチOFF検出手段からの信号を受け、前記遠心クラッチがON状態からOFF状態に変化したときに前記コンデンサを電源として前記電磁石を駆動させる電磁石制御手段とを有し、
前記コンデンサを電源として前記電磁石のコアを前記動力伝達部材に電磁吸着させることにより前記刃物の慣性運動を停止させることを特徴とする携帯作業機のブレーキ装置。
【請求項3】
前記電磁石のコアの前記離間接近動作を案内するガイド手段を更に有する、請求項1又は2に記載の携帯作業機のブレーキ装置。
【請求項4】
前記電磁石の先端部を包囲する且つ定置した共振止め部材を更に有する、請求項3に記載の携帯作業機ブレーキ装置。
【請求項5】
作業者が予期しない状況に陥ったことを検出したときに内燃機関の運転を強制的に停止する機構を有する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の携帯作業機ブレーキ装置。
【請求項6】
前記作業者が予期しない状況に陥ったことを検出する手段が、前記携帯作業機に加わる衝撃を検出するセンサで構成されている、請求項5に記載の携帯作業機のブレーキ装置。
【請求項7】
前記携帯作業機に加わる衝撃を検出するセンサが加速度センサで構成されている、請求項6に記載の携帯作業機のブレーキ装置。
【請求項8】
前記携帯作業機が手持ち式作業機であり、
前記加速度センサが前記内燃機関の近傍に配設されている、請求項7に記載の携帯作業機のブレーキ装置。
【請求項9】
前記クラッチOFF検出手段が、前記発電器の発電電圧に応答して出力を反転する第1の出力反転素子で構成されている、請求項2〜8のいずれか一項に記載の携帯作業機のブレーキ装置。
【請求項10】
前記電磁石制御手段が、前記発電器を電源とするマイコンを含み、
前記発電器と前記マイコンとの間に接続された電源切断回路を有し、
該電源切断回路は、前記発電器の発電電圧に応答して出力を反転する第2の出力反転素子を含み、
前記発電器の発電電圧が所定の発電電圧まで降下したときに、前記電源切断回路によって前記マイコンへの電源供給が遮断される、請求項2〜9のいずれか一項に記載の携帯作業機のブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−152109(P2012−152109A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11452(P2011−11452)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(509264132)株式会社やまびこ (65)
【Fターム(参考)】