説明

遠心分離サイクル中の凝集評価を事前に提供するための少なくとも1つのイメージャーを有する免疫診断検査装置

【課題】免疫診断検査における処理量および処理時間を改善する。
【解決手段】免疫診断検査装置は、遠心分離機と、この遠心分離機に関連して配置されたイメージャーとを含み、装置または検査エレメントの不良モードないし凝集反応の存在に関する予測データを提供するために、遠心分離時間の完了前に、少なくとも1つの検査エレメントの少なくとも1つの画像がキャプチャーされる。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本願は、免疫診断検査(immunodiagnostic testing)の分野に関するものであり、特に、少なくとも1つの検査サンプルを支持するために使用される遠心分離機に相対的に近接する関係で配置された少なくとも1つのイメージャーを有する自動検査装置に関するものである。この少なくとも1つのイメージャーは、遠心分離サイクルの全面的な完了の前に処理の向上を可能にするために検査サンプルの画像を提供するように構成される。
【0002】
〔発明の背景〕
様々な種類の血液型を識別するため、ならびに、血液サンプルおよび他の水溶液の中の様々な種類の抗体および抗原を検出するために、免疫学的な凝集反応が用いられる。そのような処置において、赤血球のサンプルは、検査チューブまたはマイクロプレートのいずれかの中の血清または血漿と混ぜ合わせられ、この混合物はインキュベート(incubate)されてから遠心分離機にかけられる。次いで、たとえば、赤血球の血液型または或る抗体が血液サンプル中に存在するか否か等にもよるが、様々な反応が起きたり起きなかったりする。これらの反応は、凝集塊と呼ばれる、セルの凝集塊として、または抗原もしくは抗体を表面に有する粒子として現れる。現れるべき凝集塊の不全は、反応が起きなかったことを示すのに対して、凝集塊の存在は、形成された凝集塊の寸法および量にもよるが、反応の存在とサンプル中の濃度レベルと反応強度を示す。
【0003】
つい最近は、マイクロプレートまたは検査チューブを使用するというよりも、ラピエールら(LaPierre et al.)の米国特許第5,512,432号に記載されているような別の形式の凝集検査方法が利用されてきている。この方法によれば、ゲルまたはガラスビード微粒子は、微小カラム(microcolumn)またはマイクロチューブと呼ばれる小さいカラムの中に包含される。「A」抗原を検出するための抗体のような試薬は、微小カラムの希釈剤の中に分配され、「A」抗原を含むかまたは含まないかもしれない検査赤血球は、カラム上側の反応チャンバの中に配置される。カラムは、典型的には、透明なカードもしくはカセットの中に形成された複数のカラムのうちの1つであるが、その後、遠心分離機にかけられる。遠心分離は、赤血球と試薬との間の反応がある場合は、その反応を促進させ、全てのセルをカラム底部に推し進める。ところで、ガラスビードまたはゲル材料は、フィルタとして機能し、カラム内の粒子の下方移動の抵抗または邪魔をする。その結果、微小カラムの中の粒子の特性および配分は、凝集反応が起きたかどうか、そして、そのような反応が起きた場合には、カラム内の凝集塊の相対位置に基づく反応の強度を視覚的に表示する。
【0004】
凝集反応が起きなかった場合、カラム内の全てのまたは実質上全ての赤血球は、遠心分離の処理中に、ペレット形式のカラムの底部まで下降する。逆に、試薬と赤血球との間に強烈な反応が存在する場合、実質上全ての赤血球は、凝集し、それらの凝集塊が通り抜けないようにマトリクスが寸法付けされているので、ゲルまたはビードマトリクスの上側のマイクロチューブの上部には、大きなグループが形成される。それら後者の両極端の間に位置する反応が考えられ、その反応では、全てではないが多少の赤血球が凝集する。凝集する赤血球の割合および凝集した粒子の寸法の各々は、反応の強度と、ある関係を有する。遠心分離処理に続いて全ての処理ステップの完了後に、マイクロチューブは、人間オペレータまたは機械視覚(machine vision)のいずれかにより視覚的に検査され、赤血球と試薬との間の反応が区別される。反応は陽性(positive)または陰性(negative)のいずれかとして区別され、陽性の場合、反応は、典型的には、反応の強度に応じて、4つのクラスのうちの1つにさらに区別される。
【0005】
「ゲルカード」、「ビードカセット」、または、カラム凝集法(column agglutination technology)を採用する上述したような検査エレメントの他の形態を取扱い、検査し、かつ、評価するために使用される、自動の免疫診断検査装置またはシステムが設計されてきた。典型的な自動装置では、少なくとも1つのイメージャーおよび接続されたプロセッサを有する制御モジュールまたはステーションは、遠心分離サイクルの完了に続いて検査の結果を評価するために使用され、このサイクルは、典型的には、約10分〜30分の間持続する。従来既知の装置における遠心分離に続いて、検査エレメントは、先ず遠心分離機から取り外さなければならず、次いで、装置の制御ステーションの中に再配置しなければならないか、あるいは、検査エレメントは、遠心分離機から取り外すことができ、凝集反応(もしあれば)の程度を決定するために手動で評価することができる。
【0006】
免疫診断検査の分野における一般的な継続する課題は、特には自動分析システムまたは装置を用いて、処理量および処理時間を改善することである。また、同様な理由から、遠心分離がその完全な典型的な時間サイクルの全体に亘って進行すべきであった場合に、たとえば、明らかに間違った結果を生じさせ相当な時間を浪費させる不良モードが生じたときは、検査を終了することが望ましい。完全な遠心分離サイクルの前に或る検査結果(たとえば、強陽性または強陰性の反応)を決定または予測するための方法があるとみられている。
【0007】
〔発明の概要〕
一態様によれば、遠心分離機と、所定の遠心分離時間の終了前で遠心分離中に少なくとも1つの検査エレメントの少なくとも1つの画像がキャプチャーされ得るように遠心分離機に近接して配置される少なくとも1つのイメージャーと、を含む免疫診断検査装置が開示される。検査エレメントは、グレード付けできる感知可能な凝集反応を生じさせることができ、凝集反応が遠心分離によって加速され、検査エレメントの少なくとも1つのキャプチャーされた画像が所定の遠心分離時間の終了前に採取されて、少なくとも1つの検査エレメントの処理に関して装置により使用される。
【0008】
或る形態(version)では、イメージャーは、グレード付けできる凝集反応の予測値を得ることができるように、遠心分離処理の進行中に、ゲルカードまたはビードカセットのような、少なくとも1つの検査エレメントの単一の画像または複数の画像をキャプチャーできる。適切な予測データを得ることができれば、遠心分離処理は、典型的な遠心分離時間の完了時以前に停止することが可能である。或る形態では、反応における変化率は、順々にまたは標準画像との比較のいずれかで、キャプチャー済み画像の検討により、検出することができる。たとえば、或る形態によれば、変化率は、反応の終点を予測するために時間とともに移動する距離に基づくかどうかで決定することができる。或いは、少なくとも1つのキャプチャー済み画像は、不良モードがたとえば検査エレメントの中またはその処理自体の中のいずれかに存在するかどうかを決定するために、利用することができる。ストロボランプまたは他の制御可能な光源のような画像化の目的のために作動させることが可能である照明源が設けられる。或る形態では、ストロボランプおよびイメージャーは、各々が遠心分離の回転に同調し、イメージャーは、好ましくは固定位置に配置される。照明源は、少なくとも1つのイメージャーと一体にすることができ、あるいは、それに相対的に近接して配置することができる。
【0009】
或る形態では、イメージャーは、遠心分離機が依然として作動している間はデータを提供するために、動的に、すなわち、「その場(on the fly)」において作動することができる。別の形態によれば、遠心分離機は、検査サイクル中の中間点で停止することができ、次いで、イメージャーは、少なくとも1つの画像をキャプチャーするために使用することができ、少なくとも1つのキャプチャー済み画像は、検査の再開の前に評価することができる。この後者の形態では、検査エレメントの画像は、遠心分離機の中でキャプチャーすることができ、あるいは、遠心分離機を停止させて、評価のために検査エレメントを取り除くことができる。この評価の結果にもよるが、遠心分離機を再起動することができ、検査の完結のために検査エレメントを交換することができ、あるいは、十分な予測情報が得られた場合には、少なくとも1つの新規な検査エレメントを遠心分離機に追加することができる。
【0010】
別の態様によれば、免疫診断検査を実施するための方法が開示されており、この方法は、グレード付けできる凝集反応を引き起こす目的のために検査エレメントに患者のサンプルを追加するステップであって、検査エレメントが不活性な検査材料を保持する少なくとも1つのカラムと、試薬と、ある量の患者のサンプルとを含み、検査エレメントが凝集反応を生じさせることができる、ステップ、遠心分離機の中に検査エレメントを配置するステップ、凝集反応を加速するために検査エレメントを遠心分離機に掛けるステップ、および、予測検査データを得るために完全な遠心分離サイクルの完了前に検査エレメントを画像化するステップ、を含む。
【0011】
この方法は、遠心分離サイクルの終了前に、検査エレメント内に形成される凝集反応のグレードを予測するステップ、および、得られる予測データに基づいて遠心分離ステップを終了するステップをさらに含む。この方法によれば、単一および/または複数のその場画像(in-situ images)を得ることができ、画像化ステップは、検査エレメントが遠心分離機の中かまたは評価のために別に取り外されている場合に、遠心分離機が依然として作動しているときには動的に、または、検査サイクルの中間点で静的に、実施することができる。
【0012】
別の形態によれば、遠心分離機と、グレード付けできる感知可能な凝集反応を生じさせることができる少なくとも1つの検査エレメントの少なくとも1つの画像がキャプチャーされ得るように、遠心分離機に近接して配置される少なくとも1つのイメージャーと、を含む免疫診断検査装置が記載される。少なくとも1つのイメージャーは、少なくとも1つの検査エレメントが遠心分離機の中にある間に、少なくとも1つの画像をキャプチャーするように配置され、少なくとも1つのキャプチャー済み画像は、所定の遠心分離時間の終了前にキャプチャーされる。
【0013】
本明細書に記載されたような装置および方法を用いて実現される1つの利点は、免疫診断検査の面に関するより多くのデータを抽出すること、および、現在既知の検査装置によるよりもより早期の結果を決定すること、が可能であることである。処理の早い時点で不良モードを識別することができ、これにより、大幅な時間の節約および日程計画の追加の機会を提供できる、ということも利点である。
【0014】
さらに、検査エレメントのその場での画像化を提供することは、免疫診断検査エレメントを読取り待ち行列(reader queue)の中に運ぶための別の操作がもはや必要とされず、これにより、処理量が著しく改善されながらも、そのような装置の設計および設置面積が簡略化および最適化されるという点で、検査装置を用いる時間管理に抜本的な改善をもたらす。
【0015】
これらのおよび他の特徴および利点は、添付図面に関連して読まれるべき以下の詳細な説明から容易に明らかになる。
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
以下は、この例では「ゲルカード」または「ビードカセット」である、少なくとも1つの例示的な検査エレメントを免疫診断検査するための装置および関連する方法に関する。マイクロプレートなどのような他の形式の検査エレメントだけでなく他の形式の装置も組み込むことが可能であって、同一の独創的な態様を適用している、ということが容易に明らかになろう。さらに、添付図面に関して適切な基準系を提供するために、特定の用語が全体にわたって使用される。これらの用語は、非常に明確に指示されている場合を除いて、本明細書中に記載した発明概念の範囲を制限する意図ではない。
【0017】
図1および図2を参照すると、先行技術の免疫診断検査装置が示されている。この特定の例によれば、装置は、本明細書では参照符号100で全体が示されたオーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス社(Ortho-Clinical Diagnostics, Inc.)が製造したオートビュー(AutoVue)(登録商標)診断装置である。同一出願人の手に係る、ヤレンコら(Yaremko et al.)の米国特許第5,578,269号に非常に詳細に記載されているように、この検査装置100は、各々が図1に示される、サンプルおよび試薬の保持供給源(a sample and reagent holding supply)115、インキュベーターステーション117、遠心分離機118、分析ステーション124、および、引き出しアセンブリ127を含む、複数の個別のモジュールまたはアセンブリを収容するフレーム114で全体的に画定される。
【0018】
特に、この特定の装置100に係るサンプルおよび試薬の保持供給源115は、サンプルラック116内に配置された複数の患者用バイアル、および、試薬ラック120内に保持されたバイアルの中に単独で配置される試薬を含む。バーコードリーダー119も、検査されているサンプルを識別するために設けられ、バイアルは、ロット番号、有効期限、および、他の関連情報などの符号化コードを備えたラベル(図示せず)を含む。図2に示される駆動機構135は、供給源を回転させるために使用され、チューブ押さえ付け装置136がさらに組み込まれる。インキュベーターステーション117は、個々の第1ステーション131および第2ステーション133をさらに含むカセットラック129、ならびに、モーター137を含む駆動機構を含む。遠心分離機118は、モーター139およびローター141を含む。分析ステーション124は、保持手段143、照明アセンブリ145、画像化サブシステム147、画像化サブシステムに連結されている処理サブシステム148、搬送サブシステム149、収納ラック151、バーコードリーダー153、および、廃棄物容器155を含む。図1および図2を参照すると、引き出しアセンブリ127は、引き出し機(drawer)157、スライドトレイ159、保持エリア160、モーター161、センサーバー163、および、バーコードリーダー165を含む。装置100の搬送アセンブリ167は、ロボットアーム169およびグリッパ171を含む。ピペットアセンブリ173は、ロボットアーム177に取り付けられたピペット175を含み、このアセンブリは、浅いおよび深い洗浄エリア179、ならびに、セル希釈パック181をさらに含む。装置100の動作を説明する前に、図3を参照すると、図1および図2の自動化された免疫診断検査装置100と共に使用することができる例示的な検査エレメント60が示されている。この検査エレメント60は、上面66および対向する底面67を含む、プラスチックまたは他の適当な材料から形成される平面基材64によって画定される。複数の透明なマイクロチューブ68は、平面基材64によって支持され、各マイクロチューブは、鉛直に配置されかつ互いに対して離間される。本明細書中に記載した検査エレメント60に設けられているような各マイクロチューブ68は、検査エレメントの上面66と同一の平面上に配置される開いた端部を有する上部69を含む。各上部69は、下部70の中に延びており、下部は、上部の直径よりも小さい直径を有し、上部および下部は、内方向に先細りする移行部分73によって分離されている。各マイクロチューブ68は、水溶性の媒体すなわち懸濁液を形成するために、抗原または抗体でコーティングできるマトリクス状のゲル粒子または複数のガラスビード(glass beads)というような、ある量の不活性な材料72を含む。穿孔可能なホイルラップ(pierceable foil wrap)76は、検査エレメント60の上面66に取り付けられて、マイクロチューブ68の各々の上部をカバーおよび閉鎖してシールし、抗原または抗体は、製造時にホイルシール76の添加前に追加されている。また、各検査エレメント60は、ラベル80の他にバーコード82も含み、その各々は、検査エレメントの形式、製造日、ならびに、検査エレメントの推奨有効期限およびその内容を含む検査エレメントに関する様々なデータを識別している。このバーコード82は、検査エレメント製造者、ならびに、製造日時および場所、ロット番号、および、他の情報、といったような他のデータを含むことができる。
【0019】
図1〜図3を参照すると、検査装置100の一般的な作動に関して、複数の検査エレメント60は、最初に、検査装置の中に引き出しアセンブリ127を介して、搬送アセンブリ167のグリッパ171がアクセスを有する位置に搭載される。次いで、検査エレメント60は、グリッパ171によって持ち上げられて、引き出しアセンブリ127のバーコードリーダー165まで動かされ、検査エレメントのラベル情報は、読み取りおよび検証が為される。読み取りに続き、検査エレメント60は、グリッパ171、より詳細には、穿孔アセンブリ183に関連してカセットラック129により、インキュベーター117の中に搭載される。本明細書中に記載した検査装置100の穿孔アセンブリ183は、回転アセンブリ(図示せず)の上に配置される複数の穿孔エレメント(図示せず)によって検査エレメント60のホイルラップ76に開口を形成するために使用される。或いは、この機能のためにピペット175または他の穿孔手段を用いることができる。穿孔エレメントは、ソレノイドまたは類似の手段によって往復動式に駆動される。次いで、インキュベーター117は、ある量の患者のサンプルをカラム(columns)内にピペット175が分配するのを可能にする位置に検査エレメント60を動かす。ピペット175は、サンプルおよび試薬供給源115の試薬およびサンプルラック116、120から流体を引き出すように作動する。ホイルラップ76の穿孔時または除去時に、サンプル供給源115からの(赤血球(RBCs)および血清の形式の)所定量の患者のサンプルは、ピペットアセンブリ127を介して各マイクロチューブ68の下部70に追加され、次いで、検査エレメント60は、インキュベートされる。そのとき、検査エレメント60は、搬送アセンブリ167のグリッパ171によって把持して遠心分離機118まで搬送することができる。それに続いて、検査エレメントは、たとえば血液型判定のためにグレード付けできる試薬とサンプルとの間の(もしあれば)凝集反応(agglutination reaction)を促進するために所定のプロトコルにしたがって順番に遠沈(spun down)される。
【0020】
処理の観点から、典型的な遠心分離サイクルは、装置によって実行されている特定の検査の特性に応じて、10〜20分またはそれ以上にわたることができる。次いで、もたらされる反応(もしあれば)を評価するために、検査エレメント60は、グリッパ171によって検査装置100の遠心分離機118から取り外されて、分析ステーション124の収納ラック151まで搬送される。次いで、このラック151は、検査エレメントホルダー143の直ぐ近くに検査エレメント60を位置付けるために回転する。それに続いて、分析ステーション124の搬送サブシステム149は、収納ラック151から検査ホルダー143に検査エレメント60を搬送し、検査エレメントのデジタル化された画像もしくはその関連部分は、照明アセンブリ145と組み合わせて画像化サブシステム147を用いて獲得される。次いで、検査エレメント60のデジタル化されたデータは、検査エレメントで反応が起きたか否かおよびその場合には反応の分類を決定するために、接続された処理サブシステム148で利用される。この決定は、機械視覚を用いて画像に基づいて実施することができる。
【0021】
例示的な検査エレメント60は、遠心分離後の図4に示され、支持されたマイクロチューブ68内には変化する反応が起きている。検査エレメント60のマイクロチューブ68の原理は、不活性材料72上にコーティングされた試薬が患者のサンプルの赤血球と反応でき、凝集塊(clumps/agglutinates)を形成できることであって、強烈な陽性反応を示す大きな凝集塊が通過するのがフィルタリングで抑制される、ということである。この場合に、ゲルまたはマトリクス状ビードの上側には、層状の凝集粒子190が形成され、強烈な陽性反応が視覚的に表示される。逆に、どのような反応も無い場合に、小球状の赤血球196は、不活性材料72を貫通して、マイクロチューブ68の底部に沈殿して、陰性反応を示す。また、これらの両極(two extremes)の間のグレードが変化する反応が可能であり、カラム全体に凝集塊198が配置される。或いは、検査エレメント60は、遠心分離機118から取り外されたときに目視検査することができる。
【0022】
上記説明は背景として役立っており、図5を参照すると、本発明の一実施形態にしたがい、検査装置200の遠心分離チャンバまたはモジュール222が示される。本明細書中に記載した検査装置200は、単に図解的に示されており、サンプルおよび試薬の供給源204、インキュベーター208、および、搬送アセンブリ210を含む。
【0023】
本明細書中に記載した装置の遠心分離チャンバまたはモジュール222は、遠心分離機224を保持するハウジング(図示せず)によって画定される。この実施形態に係る遠心分離機224は、センターハブ240から半径方向外方に延びる一対の対向する端部232、236を有する回転式のアーム部材228を含む。回転式のアーム部材228の(アーム)端部232、236の各々は、図3に関して前述した例示的なエレメントのような少なくとも1つの検査エレメント60を支持するように構成される。本実施形態によれば、検査エレメント60は、クランプによって各アーム端部232、236で支持され、検査エレメントの上端66(図3)は、図6に示されるように複数のマイクロチューブ68が水平に配置されるように支持される。
【0024】
図5および図6を参照すると、回転式のアーム部材228は、センターハブ240に固定して取り付けられており、ハブしたがってアーム部材はそれぞれ、参照数値244で本明細書の図5に図解的に示されたモーターを含む駆動機構によって、鉛直配置の軸線247の周りを回転させられる。
【0025】
好適な形態によれば、画像化アセンブリ250は、検査装置220の遠心分離チャンバ222の中に配置され、好ましくは、遠心分離機224の回転式のアーム部材228の端部232、236がそれに対して通過できるように、ハウジング内の固定位置に実装される。ここで注目すべきは、実装の代替案を提供できることである。たとえば、バケット形式の遠心分離機を設けることができ、前記少なくとも1つの検査エレメントを支持する遠心分離機の一部が遠心力の影響下でセンターハブから離れるように外方に旋回できる。この場合、画像化アセンブリは、前記少なくとも1つの検査エレメントを上側からアクセスできるように、別異に位置付けることができる。他の類似の構成が可能である。
【0026】
この実施形態に係る画像化アセンブリ250は、回転式アーム部材228の画像、そして特に、保持された検査エレメント60の画像のキャプチャーを可能にする開口264を備えたハウジング260内に配置されるピクセル配列(an array of pixels)を有する、CCDまたはCMOS型イメージャーのような、少なくとも1つの電子イメージャー(electronic imager)を含む。或いは、従来のカメラのような、他の画像化手段を利用することができる。照明アセンブリ272は、画像化アセンブリ250に関連して配置され、ストロボランプのような光源、少なくとも1つのLED、白熱ランプ、または、他の適当な発光可能な光源を含む。照明アセンブリは、イメージャーアセンブリ250に関連して単独で配置されるか、または、たとえば、従来の35ミリカメラのフラッシュアセンブリなど、イメージャーアセンブリにおいて直接一体化することができる。
【0027】
図5を参照すると、一形態によれば、画像化アセンブリ250および照明アセンブリ272の制御は、本明細書中に280で図解的に示されたコントローラによって、1サイクル中の中間点での遠心分離処理の間、検査エレメント60の少なくとも1つの画像をキャプチャーするために、遠心分離機224のアーム部材228の回転位置と同調(synchronized)するようにされる。したがって、図6に285で図解的に示された複数の画像(multiple images)または画像の配列(sequence of images)は、遠心分離機224の回転速度と連動する電子イメージャーの集積時間(integration time)の適切な制御により、そのままで獲得することができる。もたらされる画像は、本実施形態によれば現場デジタル化画像(in-situ digitized image)を提供するための処理手段を含む、コントローラ280に伝送される。少なくとも1つの現場画像(in-situ image)を用いて、もたらされる凝集反応(または反応の欠如)の予測的なグレード変化(predictive gradation)を装置200のユーザーに提供することが可能である。別の形態では、不活性マトリクスを通って移動する凝集塊の変化率は、採取したキャプチャー画像に基づいてアルゴリズム的に決定することができ、時間および距離は、速度のプロフィールを作り出すために、したがって、完全な遠心分離サイクルの遥か前に、終点(endpoint)を含む処理関連状態(process-related conditions)に関する予測(predictions)を行うために、利用することができる。或いは、画像の結果は、その場の表示のためにユーザーに向けることができ、ユーザーは、サイクル完了の前に遠心分離処理を終了することを選択できる。したがって、免疫診断検査のための処理時間は、効果的に著しく低減できる。
【0028】
他の形態では、イメージャーを「その場(on the fly)」で用いるよりはむしろ、遠心分離機222は、サイクルの中間点で停止させることができ、画像化アセンブリ250は、検査エレメント60の少なくとも1つの画像、特に、透明なマイクロチューブ68のそれをキャプチャーするために利用することができる。或いは、遠心分離機222は、停止させることができ、少なくとも1つの支持された検査エレメント60は、グリッパまたは装置の搬送アセンブリを用いた他の手段によって、そうでなければ、完了前の遠心分離時間サイクルの所定の中間点で、取り外すことができる。次いで、検査エレメントは、図2および図3について前述したような検査装置の分析ステーションに搬送することができ、少なくとも1つのカラムの少なくとも1つの画像は、含まれている画像化アセンブリを用いての評価のために、キャプチャーすることができる。もたらされる画像は、先に記載したものと同様、もたらされる反応(もし、あれば)のグレード(grade)の予測結果を形成するために、または、完全な遠心分離サイクルの前の検査エレメントもしくは処理の不良モード(failure mode)を識別するために、利用することができる。さらに留意すべきことは、遠心分離モジュールの中で使用されている場合にはイメージャーが、保持される検査エレメントに適切にアクセスできるという条件で、採用する遠心分離機の形式が、本発明の作動上、必ずしも重要ではないということであり、したがって、記載されている遠心分離機が単なる例示であるということである。
【0029】
図7を参照すると、図5および図6に示される構成を採用し、図3および図4の検査エレメント60または視覚的に感知できる凝集反応を生じさせることが可能な他のエレメントを用いて説明する目的のための処理方法論を示すフローチャート300が示されている。図7のフローチャートにしたがって、しかし、残りの図面を参照すると、ステップ304によれば、検査エレメント60は、直前のステップ302に記載されているように、インキュベーション(incubation)および早めの処理ステップの後で搬送アセンブリ210によって遠心分離機222の中に搭載される。この搭載の直前では、フローチャートに示されていないが、分析ステーションか、さもなければ、患者のサンプルの搭載前もしくは遠心分離機222への搭載前に標準画像を提供するためのいずれかにより、検査エレメント60の第1画像がキャプチャーされる場合がある。一形態によれば、遠心分離機222は、コントローラ280を用いてステップ306によって開始される所定の期間またはサイクル(たとえば、10〜30分)の間、作動するために、典型的にはプログラミングされる。しかしながら、この形態によれば、画像化アセンブリ250は、遠心分離を停止して画像をキャプチャーし、遠心分離を停止して画像の取得のために検査エレメントを取り外すことにより、または、回転するアーム部材228の位置に基づいて(ステップ310)少なくとも1つの画像を動的にもしくは進行中に(on the fly)キャプチャーすることにより、遠心分離サイクルの間に検査エレメント60の現場画像をキャプチャーするために利用され、また、反応が起きたか否か(ステップ310)、もしそうであれば、反応のグレード(ステップ312)(すなわち、強陽性(strongly positive)または強陰性(strongly negative))または不良モードが起きたか否か(ステップ313)を前もって予測するために十分な情報があるか否かを、少なくとも1つのキャプチャーされた画像の結果に基づいて決定するために利用される。標準画像が、最初にキャプチャーされて、たとえば、検査エレメント上に欠陥(たとえば、擦り傷)を示す場合、この特徴は、結果を偏らせないように、もたらされる画像から差し引くことができる。
【0030】
本明細書に記載された教示に必須であるように、次のどちらかの場合、すなわち、イメージャーアセンブリが画像化アセンブリ250の作動(activation)のために遠心分離機内に配置される場合または画像が検査装置の内部もしくは検査装置の別の部分で静的にキャプチャーされる場合において、遠心分離サイクルの中間点であってその終結前に、少なくとも1つの画像がキャプチャーされる。反応(たとえば、無反応または強い反応)の予測グレードが形成できることまたは不良モードが存在することを結果が示している場合、ステップ314にしたがい、コントローラ280は、遠心分離サイクルの完了前に、モーター244に遠心分離機222を停止させ、検査エレメント60は、組込型のイメージャーの場合に取り外されるか、または、検査エレメント60は、検査エレメントが少なくとも1つの画像をキャプチャーする前に先ず取り外されるような場合に遠心分離機の中に再配置されない。予測グレードが形成され得ない場合または不良モードが識別され得ない場合、遠心分離が進行し(ステップ316)、サイクル時間の完了前に別の画像が採取されることがあり(ステップ320、322)、既述のステップが繰り返される。一形態において、複数の画像は、もしあれば反応の変化率(すなわち、時間を掛けて計測された凝集塊の距離的な動き)を決定するため、および、たとえばキャプチャー済み画像に基づいてアルゴリズム的に決定される不活性マトリクス状カラムを介して、凝集塊の速度ベクトルによって、処理の終点の変化率を決定するために、遠心分離サイクルの中間で採取することができる。遠心分離機の外側で少なくとも1つの画像が採取される場合には、検査エレメントは、装置の搬送アセンブリによって遠心分離機に戻され、遠心分離が再開される。
【0031】
添付の請求項によって画定される本発明の意図する範囲の中で創作できる多くの変形例および変更例があることが容易に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】先行技術の自動血液分析装置の簡略化した平面図である。
【図2】図1の自動血液分析装置の簡略化した前面図である。
【図3】先行技術の免疫診断検査エレメントの前面図であって、検査前の検査エレメントを示す図である。
【図4】先行技術の免疫診断検査エレメントの前面図であって、検査の後で、かつ検査エレメントのカラムの中に凝集反応が起きた後の検査エレメントを示す図である。
【図5】統合型の遠心分離/画像化システムを含む自動装置の一部の部分図である。
【図6】図5の統合型システムを含む自動免疫診断検査装置の図解的なブロック図である。
【図7】図5および図6の装置を採用する検査手順のフローチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫診断検査装置において、
遠心分離機と、
所定の遠心分離時間の終了前に少なくとも1つの検査エレメントの少なくとも1つの画像がキャプチャーされ得るように前記遠心分離機に近接して配置される少なくとも1つのイメージャーであって、前記検査エレメントがグレード付けできる感知可能な凝集反応を生じさせることができ、前記凝集反応が遠心分離によって加速される、前記少なくとも1つのイメージャーと、
を含み、
前記所定の遠心分離時間の終了前に採取される前記検査エレメントの前記少なくとも1つのキャプチャーされた画像が予測データを含み、前記予測データが前記遠心分離時間の終了前に検査が停止され得るか否かを示す、免疫診断検査装置
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記少なくとも1つのイメージャーに関連して配置される照明源、
をさらに含む、検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において、
前記少なくとも1つの照明源は、ストロボランプである、検査装置。
【請求項4】
請求項1に記載の検査装置において、
前記少なくとも1つのイメージャーは、前記遠心分離機に対して固定した関係で保持される、検査装置。
【請求項5】
請求項1に記載の検査装置において、
前記検査エレメントは、ゲルカードおよびビードカセットのうち少なくとも1つを含む、検査装置。
【請求項6】
請求項1に記載の検査装置において、
前記少なくとも1つのイメージャーは、電気イメージャーを含む、検査装置。
【請求項7】
感知可能な凝集反応を生じさせることができる検査エレメントの凝集反応の程度を予測する方法において、
感知可能な凝集反応を生じさせることができる少なくとも1つの検査エレメントを前記遠心分離機の中に配置するステップと、
前記少なくとも1つの検査エレメントを所定時間にわたり、遠心分離機にかけるステップと、
前記所定時間の終わる前に前記少なくとも1つの検査エレメントを一度に画像化するステップと、
前記画像化ステップから得られる画像から得られる予測データに基づき、前記所定時間の前に前記遠心分離ステップを停止するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
前記配置ステップの前に患者のサンプルを前記検査エレメントに追加するステップ、
を含み、
前記検査エレメントは、不活性な検査材料を保持する少なくとも1つのカラム、および前記サンプルとの感知可能な凝集反応を生じさせることができる試薬、を含む、方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
前記画像化ステップは、前記遠心分離ステップの間に前記検査エレメントの少なくとも1つの画像をキャプチャーすることによって動的に起きる、方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法において、
前記画像化ステップから凝集反応の予測結果を作成するステップ、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法において、
前記検査エレメントは、ゲルカードおよびビードカセットのうち少なくとも1つを含む、方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法において、
前記画像化ステップの前に前記遠心分離機を停止させ、次いで、前記遠心分離ステップを再開する前に少なくとも1つのキャプチャーした画像を評価するステップ、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法において、
前記予測結果は、前記装置の少なくとも1つの不良モードを示す、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−271069(P2009−271069A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−109582(P2009−109582)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(501131014)オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド (30)
【氏名又は名称原語表記】Ortho−Clinical Diagnostics, Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Indigo Creek Drive, Rochester, NY 14626−5101, U.S.A.
【Fターム(参考)】