説明

遠心分離機及び遠心分離機の運転情報収集システム

【課題】
既存のネットワークを活用して、少数台のデータ管理装置で複数台の遠心分離機の稼働データを効率よく収集することができる遠心分離機の運転情報収集システムを提供する
【解決手段】
駆動部23によって回転され試料を保持するためのロータ22と、駆動部の回転を制御する制御部(21)と、外部のネットワークに通信するための通信制御装置27を有する遠心分離機2において、制御部(21)は遠心分離機2が稼働している際に所定間隔毎に稼働データを収集し、ネットワーク3を介して稼働データを情報管理装置1宛に自動的に送出する。データ管理装置1は、遠心分離機2から送出された稼働データから送信元固有情報を判別し、機種毎に記録するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルがセットされたロータを高速で回転する機能を有する複数の遠心分離機と、それら遠心分離機からネットワークを介して稼働データを収集するデータ管理装置を用いた遠心分離機の運転情報収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンや医薬品の製造過程では、原料からウイルス、培養細胞、および培養菌体を分離するという目的で遠心分離機が使用されている。また献血によって採取された血液は血液センターに集められ、製薬、製剤の前処理のために遠心分離機が用いられる。従来から、ワクチンや医薬品製造にあたってはGMP(Good Manufacturing Practice)という、製造に関するソフト面およびハード面の規範が決められ、これに適合した設備や管理の下で製造しなければならない。このGMPの要求を満足するためには、遠心分離機を含むすべての工程を管理するための膨大な資料を必要とし、これらの資料は紙による保管を余儀なくされている。
【0003】
GMPの要求に沿って、例えば、遠心分離機を誰がどのような条件で操作したのか、また、遠心分離機の回転数、温度、運転時間などの設定状態と、その運転状態をすべて管理するが、オペレータが記録した紙によるデータだけしか残らない場合、記録ミスや記載漏れなどの人為ミスを完全に防ぐことは難しい。このような紙による資料の保管による不都合を解消するために、紙の代わりに電子データを正式な記録として管理することを認めるガイドライン(例えば、米国連邦規則第21条第11章:電子記録・電子署名に関するガイドライン)が制定されており、遠心分離機の運転記録を電子データにより記録することが行なわれている。
【0004】
上記ガイドラインに則した電子記録をするために、例えば遠心分離機1台ごとにデータ管理装置を1台ずつ接続して記録する方法や、複数の遠心分離機の運転情報を1台のデータ管理装置に集約して管理する方法が知られている。遠心分離機1台ごとにデータ管理装置を1台ずつ接続する方法としては、例えば特許文献1に示す技術が知られている。しかしながら、製薬、製剤の業務などのように数台から十数台の遠心分離機が用いられる場合は、それぞれの遠心分離機にデータ管理装置を1台ずつ用意するのは費用や設置場所の面で不経済であるため、1台のデータ管理装置に運転情報を集約する方式が好ましい。
【0005】
上記の特許文献1の技術は、遠心分離機と、その稼働状態を監視するデータ管理装置(情報取得装置)は1対1で接続されるが、この技術を用いてデータ管理装置が複数の遠心分離機を同時に監視するようにするのは難しかった。また、特許文献1においては、LANを介して情報取得装置と接続される情報分析装置が設けられるが、この情報分析装置は、遠心分離機における障害発生時、または駆動部またはロータの寿命が近付いているときまたは寿命に到達したときのみ、データ管理装置と通信が行われるので、稼働状態のデータをリアルタイムに遠隔収集する技術ではない。
【0006】
一方、1台のデータ管理装置を用いてネットワークで接続された複数台の遠心分離機の稼働状態を監視する運転情報収集システムも提案されている。このような方式におけるデータ管理装置の処理手順を示すのが図9のフローチャートである。図9において、複数台の遠心分離機を1台のデータ管理装置で管理する場合、データ管理装置は対象となる複数台のうち1台の遠心分離機を決定し(ステップ101)、決定された遠心分離機に対してネットワークを介して稼働データの送信要求を送信する(ステップ102)。稼働データの送信要求を受信した遠心分離機は、その際の稼働データを収集して所定のフォーマットの稼働データに変換した後にデータ管理装置に送出する。データ管理装置は、遠心分離機から送出された稼働データを受信し(ステップ103)、稼働データをデータ管理装置内の記憶装置に格納する(ステップ104)。その後、ステップ101に戻り、対象とする遠心分離機を順次変更しながら複数台の遠心分離機の管理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−246147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図9に示す手順による運転情報の運転情報収集システムにおいては、管理サーバとなるデータ管理装置側が、管理対象の遠心分離機に対して稼働データの送信要求信号を毎回送信する必要があるため、管理サーバ側の負荷が重くなってしまうという問題がある。また、管理サーバは遠心分離機の電源がONしているかどうかに関わらず送信要求信号を送信するので、例えば対象とする遠心分離機が多数ありながら、夜間・休日のような時間的状況によってその多くが電源OFFとなれば、共用されるネットワーク設備に無駄なデータ(送信要求信号)が大量に流れ、回線の利用効率を低下させることになる。さらに、管理サーバは、管理対象とするすべての遠心分離機に対してコマンドを送信するために、あらかじめ個々の遠心分離機のアドレスを登録しなければならず、その際、通信管理上のアドレスと実際の遠心分離機の型名や製造番号などを手動入力しなければならないという煩わしさが生じていた。
【0009】
一方、インターネット、イントラネット等のネットワーク設備が普及している昨今においては、遠心分離機を含む通信システム構築にあたって新たな専用配線を布設するよりも、既存のネットワークに遠心分離機を追加接続する方法が経済的である。現在もっとも普及している情報ネットワークは、IEEE802.3規格によるネットワークや、IEEE802.11規格による無線式のネットワークであり、いずれも同時通信によるデータ衝突防止機能を備えている。従って、複数の機器が1台のデータ処理装置に対して同時にデータを送信しようとしても衝突は回避され、かつデータ消失することもなく全てのデータがデータ処理装置に届けられる。
【0010】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、既存のネットワークを活用して、少数台のデータ管理装置で複数台の遠心分離機の稼働データを効率よく収集することができる遠心分離機及び遠心分離機の運転情報収集システムを提供することである。
【0011】
また本発明の他の目的は、遠心分離機から稼働データをデータ管理装置に自発的に効率良く送出することができる遠心分離機を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、遠心分離機の電源がONのときだけネットワーク設備に稼働データが流れるようにして、複数の遠心分離機の情報を特定のデータ管理装置にて効率良く収集することができる遠心分離機の運転情報収集システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち代表的なものの特徴を説明すれば次の通りである。
【0014】
本発明の1つの特徴によれば、駆動部と、駆動部によって回転され試料を保持するためのロータと、駆動部の回転を制御する制御部と、外部のネットワークに通信するための通信制御手段を有する遠心分離機において、制御部は、遠心分離機が稼働している際に所定間隔毎に稼働データを収集し、ネットワークを介して稼働データをデータ管理装置宛に定期的に送出する自動送信モードを設けた。遠心分離機は、自動送信モードをオンにするか又はオフとするかを選択可能に構成した。
【0015】
本発明の他の特徴によれば、制御部はネットワークが通信可能状態であるかを検出し、通信可能である場合は自動送信モードをオンにして稼働データを送出し、通信不能である場合は自動送信モードをオフにして稼働データを送出しないように構成した。ネットワークに送出される稼働データには、送信元固有情報を含む。この送信元固有情報としては、遠心分離機に割り当てられるネットワーク上の固有アドレスや、遠心分離機の機種名、使用しているユーザ名などを用いることができる。制御部は、遠心分離機の電源が投入されてから電源がオフになるまで、一定間隔毎に稼働データを送出すると好ましい。
【0016】
本発明のさらに他の特徴によれば、駆動部と、駆動部によって回転され試料を保持するためのロータと、駆動部の回転を制御する制御部と、外部のネットワークに通信するための通信制御手段を有し、制御部から稼働データを所定間隔毎に送出する複数の遠心分離機と、遠心分離機から送出される稼働データを受信して記録するデータ管理装置と、を有する遠心分離機の運転情報収集システムであって、データ管理装置は、遠心分離機から送出された稼働データから送信元固有情報を判別し、機種毎に記録するように構成した。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、遠心分離機の制御部は、遠心分離機が稼働している際に所定間隔毎に稼働データを収集し、ネットワークを介して稼働データをデータ管理装置宛に定期的に送出する自動送信モードを有するので、遠心分離機の電源がONのときだけネットワークに情報を送出するので、遠心分離機の電源がOFFのときは無駄なデータがネットワーク上に送出されることがなく、ネットワークの負荷を軽減できる。また、データ管理装置1が、稼働データの送信要求を各遠心分離機に出さなくても遠心分離機側で自発的に稼働データを送信するので、データ管理装置1の処理手順が少なくて済み、複数台の遠心分離機の稼働データを効率よく収集及び記録することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、遠心分離機において、自動送信モードをオンにするか又はオフとするかを選択可能であるので、データ管理の必要な遠心分離機だけの稼働データを収集することができる。また、自動送信モードをオフとすることで従来の遠心分離機と全く同様の使い方をすることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、遠心分離機の制御部はネットワークが通信可能状態であるかを検出し、通信可能である場合は自動送信モードをオンにして稼働データを送出するので、作業者は送信モードの設定をすることなく、遠心分離機側で自動的に送信モードを設定することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、遠心分離機の制御部はネットワークが通信可能状態であるかを検出し、通信不能である場合は自動送信モードをオフにして稼働データを送出しないので、作業者は送信モードの設定をすることなく、遠心分離機側で自動的に送信モードを設定することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、ネットワークに送出される稼働データには、送信元固有情報を含むので、データ管理装置はネットワーク上で電源がONしている遠心分離機の固有の情報を得ることができる。また、データ管理装置の管理対象とする遠心分離機を登録作業する際、オペレータが遠心分離機の固有の情報、例えば型式や製造番号などの情報を手作業で入力する作業を軽減することができる。
【0022】
請求項6の発明によれば、送信元固有情報は、遠心分離機に割り当てられるネットワーク上の固有アドレスであるので、送信元識別のために新たな識別情報を設定することなく広く用いられているIPアドレス等の情報を利用することができる。
【0023】
請求項7の発明によれば、制御部は、遠心分離機の電源が投入されてから電源がオフになるまで、一定間隔毎に稼働データを送出するので、データ管理装置は送信されるデータを受信するだけで稼働データを漏れなく収集することができ管理効率が大幅に向上する。
【0024】
請求項8の発明によれば、複数の遠心分離機から送出される稼働データを受信して記録するデータ管理装置を有する遠心分離機の運転情報収集システムであって、データ管理装置は、遠心分離機から送出された稼働データから送信元固有情報を判別し、機種毎に記録するので、広く用いられているインターネット等のネットワーク網に遠心分離機とデータ管理装置を接続するだけで容易に本発明の運転情報収集システムを実現できる。
【0025】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例に係る遠心分離機の運転情報収集システムを示す全体構成図である。
【図2】本発明の実施例に係るデータ管理装置1及び遠心分離機2、2’の制御回路構成を示すブロック図である。
【図3】図1の遠心分離機2からデータ管理装置1に送出される稼働データ30のデータフォーマットである。
【図4】図1の遠心分離機2における稼働データ30の送出手順を示すフローチャートである。
【図5】図1のデータ管理装置1における管理対象(遠心分離機2)の登録作業手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例に係るデータ管理装置1における稼働データ30の受信及び記録手順を示すフローチャートである。
【図7】特定イベントを説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施例に係るデータ管理装置1における稼働データ30の受信及び記録手順を示すフローチャートである。
【図9】従来技術によるデータ管理装置における稼働データ30の受信及び記録手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0027】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0028】
図1は本発明の実施例に係る遠心分離機の運転情報収集システムを示す全体構成図である。本実施例のシステムでは、1台のデータ管理装置1に、ネットワーク3を介して5台の遠心分離機2(2a〜2e)が接続されている。データ管理装置1は、汎用のパーソナルコンピュータを用いることができ、遠心分離機2から送信される後述する稼働データを受信して、集計および記録する。遠心分離機2は、それぞれ、試料を保持するためのロータと、ロータを回転させるためのモータと、モータの回転を制御する制御部と、外部のネットワークに通信するための通信制御手段を有する。本実施例においては、遠心分離機2a〜2eは、同一機種であっても良いし、別機種であってもよく、例えば遠心分離機2aは最高回転速度150,000rpmの超遠心分離機、遠心分離機2bは最高回転速度7,000rpmの血液分離用遠心分離機とすることができる。遠心分離機2a〜2eが別機種の場合、設定できるロータの種類や直径、最高回転数が異なっても良く、また、冷却装置の有無や真空ポンプの有無などの違いなどあっても良い。さらに、接続される遠心分離機2の台数は限定されず、ネットワーク3の容量やデータ管理装置1の処理能力を考慮して多数台接続するようにしても良い。
【0029】
ネットワーク3としては、公知のネットワーク技術を利用することができる。例えば、広く普及しているIEEE802.3規格によるネットワークを用いることができ、その場合はネットワーク回線上でのデータ衝突回避機能を有するので、複数の遠心分離機2を接続する場合には特に好ましい。また、またデータ管理装置1および各遠心分離機2には個々を識別する固有のアドレスが付与される。この固有のアドレスを用いることによって各遠心分離機2は、ネットワークに接続された複数の遠心分離機2の中から特定のデータ管理装置1に情報を送信することが可能となる。本実施例では通信プロトコルとしてIEEE802.3で使用されることが多いTCP/IPを採用したシステムを想定し、個々のアドレスとしてIPアドレス(Internet Protocol Address)を用いるようにした。
【0030】
TCP/IPとIPアドレスを用いることによって、固有のIPアドレスを持つ機器同士における情報の通信が可能となる。そのためには、データ管理装置1および遠心分離機2が固有のIPアドレスを持つ必要がある。また、それぞれの遠心分離機2は、データ管理装置1のIPアドレスを知っている必要がある。データ管理装置1のIPアドレスは、遠心分離機2側のプログラム内に記録されるか、またはプログラム可能領域に記録された設定ファイルに記録される。また、遠心分離機2の情報をインターネット等を介してデータ管理装置1に送信する際に、TCP/IPの機能により遠心分離機2のIPアドレスが付け加えられるので、データ管理装置1は遠心分離機2のIPアドレスを知ることができる。
【0031】
本実施例ではネットワーク3の規模は限定されず、ローカルエリアネットワーク(LAN)であっても、ワイドエリアネットワーク(WAN)であっても、インターネットを用いたネットワークであっても良い。ネットワーク3で接続できる範囲であれば、データ管理装置1や遠心分離機2a〜2eの設置場所は問われない。例えば、同じ部屋の内部にこれら全部を設置しても良いし、データ管理装置1が本社ビルに設置され、遠心分離機2が各事業所に分散して配置されているような設置であっても良い。
【0032】
図2は、本発明の実施例に係るデータ管理装置1及び遠心分離機2、2’の制御回路構成を示すブロック図である。データ管理装置1は、汎用のパーソナルコンピュータであり処理装置(CPU)11と、情報を表示する液晶ディスプレイ等の表示装置12と、RAMやハードディスク装置等の記憶装置13と、ネットワーク3に接続するための通信制御装置14を含んで構成される。データ管理装置1に含まれる構成はこれらだけに限らないが、その内部構成は公知であるので更なる説明は省略する。通信制御装置14には、ネットワーク3への接続ケーブルを装着するためのコネクタ19が設けられる。
【0033】
遠心分離機2は、試料を保持して回転するロータ22と、ロータ22を回転させるモータ等の駆動部23と、駆動部23を制御する処理装置21を含んで構成される。処理装置21には、RAMやハードディスク装置等の記憶装置25や、遠心分離機2の上部に設けられるタッチ式液晶表示パネル等の操作表示装置26や、ネットワーク3と情報のやりとりをするための通信制御装置27を含んで構成される。通信制御装置27には、ネットワーク3への接続ケーブルを装着するためのコネクタ29が設けられる。尚、遠心分離機2の内部には、チャンバ内を減圧する真空ポンプ(図示せず)や、チャンバ内を外気(チャンバ外部)と連通又は遮断するためのエアリークバルブや、チャンバ内の圧力を測定する真空センサや、ドアの開閉をロックするドアロックや、ロータ22を収容するチャンバ内を冷却する冷却装置等を含んで構成することもできる。例えば、図2の遠心分離機2’は、遠心分離機2とほぼ同様の構成であるが、冷却装置を含む冷却部24を有する。
【0034】
遠心分離機2の記憶装置25には、管理サーバであるデータ管理装置1のIPアドレスを設定ファイルにて記録しておく。処理装置21は遠心分離機2の電源が投入された後に、所定の時間間隔で遠心分離機2の稼働データを作成し、それを自発的にデータ管理装置1に送信する。図3は、遠心分離機2からデータ管理装置1に送信される稼働データ30の形式を示す図である。稼働データ30は大きく分けて、ヘッダ情報31、遠心条件設定値32、運転状態データ33、その他34が含まれる。ヘッダ情報31には、送信する遠心分離機2の機種名31a、製造番号または顧客が任意の管理番号等の本体ID31b、データ管理装置1へのログインユーザ名となるユーザ名31c、稼働データ30を送信する日時31dが含まれる。遠心条件設定値32には、ロータ22の回転速度や温度などの遠心分離機2の設定値が含まれる。運転状態データ33には、送信時点におけるロータ22の回転速度や温度などの稼働状態を示すデータが含まれる。その他34は、その他の追加的に送信されるデータの他、EOF(End of File)データやチェックサム等のネットワーク送信のために必要なデータが含まれる。
【0035】
次に、遠心分離機2における稼働データ30の送出手順を図4のフローチャートを用いて説明する。図4のフローチャートに示す手順は、遠心分離機2の処理装置21がプログラムを実行することによってソフトウェアにより実現される。遠心分離機2の電源がオンになると、処理装置21は予め決められた起動手順に従って記憶装置25から処理プログラムを読み出して実行する。まず、処理装置21は、稼働データ30を定期的にデータ管理装置1に送出する送信機能が有効にされているかどうかを判断する(ステップ41)。本実施例における遠心分離機2は、稼働データを所定間隔毎にデータ管理装置1に自動送信する自動送信モードを有するが、この自動送信モードを稼働させるか、稼働させないかは任意に設定できる。自動送信モードを無効に設定しておけば、通信制御装置27付きの遠心分離機2であっても、通信機能を利用しないでスタンドアロンで運転することも可能である。
【0036】
次に、自動送信モードが有効の場合は、処理装置21はコネクタ29にネットワークケーブルが接続されているか、又は、接続されているが通信が可能な状態であるか否かを判断する(ステップ42)。自動送信モードが無効にされている場合(ステップ41)、或いは、自動送信モードが有効であるがネットワーク3が利用できない状態の場合はステップ41に戻る(ステップ42)。
【0037】
次に処理装置21は、データ管理装置1に送出する稼働データを収集する(ステップ43)。収集するデータの内容は任意に設定できるが、本実施例では例えば、ロータ22の回転速度、RCF状態値、運転時間(経過時間)、ロータ温度、真空度、真空レベル、運転状態(停止中、加速中、減速中、ドアの状態、真空ポンプの状態など)が含まれる。次に、処理装置21は収集した稼働データを整列させて必要な情報を付加することにより図3で示すフォーマットの稼働データ30の形式に変換し、ネットワーク3を介してデータ管理装置1へ送出する(ステップ44)。送出先となるデータ管理装置1は1台だけに限られずに、信頼性を向上させるために複数台とする冗長構成としても良い。この際、個々の遠心分離機2a〜2eは非同期的に稼働データ30をデータ管理装置1に送信することになるが、それらはネットワーク3により衝突することなくすべてデータ管理装置1に到達する。
【0038】
次に、処理装置21は、データ管理装置1へ稼働データ30を送出してから10秒待機し(ステップ45)、待機した後にステップ41に戻って処理を繰り返す。以上にように遠心分離機2側において、所定の時間間隔毎に自動的に稼働データ30を作成して、自発的にデータ管理装置1へ送信するので、データ管理装置1から稼働データ30の送信要求のコマンドを送信する必要が無くなる。尚、本実施例では自動送信モードを有効にするか無効にするかは、記憶装置25に記録される設定ファイルに登録するようにしたが、遠心分離機はデータ管理装置1のIPアドレスが設定されていてネットワーク3が利用可能状態であるならば自動送信モードをONとし、いずれかの条件が欠けた場合は自動送信モードをOFFにするように構成しても良い。
【0039】
次に、図5及び図6を用いてデータ管理装置1側の処理手順について説明する。図5はデータ管理装置1における管理対象(遠心分離機2)の候補となる接続リストの登録作業手順を示すフローチャートである。本実施例では、データ管理装置1は過去にデータ管理装置にデータを送信してきたことがある全ての遠心分離機のリストである「接続リスト」と、接続リストの中から管理者が手動選択して管理対象に設定した遠心分離機2のリストとなる「管理リスト」の2種類のリストを用いる。例えば、図1の構成において、新たに遠心分離機2f(図示せず)を購入して、ネットワーク3に接続したとする。その場合、遠心分離機2fにデータ管理装置1のIPアドレスを登録して自動送信モードを有効にする。その後、遠心分離機2fの電源が投入されると、図4のフローチャートに示した手順に従って遠心分離機2fは所定の時間間隔毎に稼働データ30をデータ管理装置1に送出する。
【0040】
データ管理装置1は、新たに追加された遠心分離機2fからの稼働データ30を受信すると(ステップ51)、ヘッダ情報31からその発信元の機種名および本体IDを識別する(ステップ52)。次に、受信した稼働データ30の個体(発信元の遠心分離機2f)が、データ管理装置1における接続リストに登録されているかを判定し(ステップ53)、登録されていなかったら接続リストに登録してステップ51に戻る(ステップ54)。ここで、接続リストは、あくまで通信実績があるというだけのリストである。登録済みの場合は、ステップ53からステップ51に戻る。このようにしてデータ管理装置1においては、データ管理装置1のIPアドレス宛に稼働データ30が送信されるだけで自動的に接続リストが作成される。次に管理者は遠心分離機2fを管理対象にする意思があれば、この接続リストから遠心分離機2fを選択して管理リストへの追加登録を行う。ここで管理リストとは、稼働データ30を所定間隔毎に受信して記録する対象の遠心分離機2のリストである。管理リストへの登録作業の仕方は種々考えられ、例えば、接続リストに新たな遠心分離機2fが接続された際に、データ管理装置1の表示装置12に、「新たな接続対象があります。登録しますか(Y/N)」というような質問文と遠心分離機2fから送信された稼働データの内容を表示し、管理者からの指示を受け付けることができる。この場合、管理者はYESを示すアイコンを選択するだけで、追加された遠心分離機2fの詳細情報の入力操作は不要であるので、個々の機種名、本体ID、固有のIPアドレスを逐一入力する煩わしさを省くことができる。
【0041】
本実施例において詳細な説明を省略するが、公知のファイアウォール機能を用いて、未知のIPアドレス、あるいは信頼できないIPアドレスからデータ管理装置1へのデータ送信を遮断するように構成すると好ましい。尚、稼働データ30を送信してきた遠心分離機を自動的に接続リストに登録すると、一度でもデータを送ってきた遠心分離機のデータが接続リストに恒久的に残ってしまうので、所定時間が経過して有効性が低下した古いデータを接続リストから削除するように構成しても良い。また、上記した管理リストへの登録において管理者による承認操作を必要とせずに、一度でも稼働データを送ってきた遠心分離機2を管理リストへ自動登録するようにしても良い。
【0042】
図6は、本発明の実施例に係るデータ管理装置1における稼働データ30の受信及び記録手順を示すフローチャートである。図5と図6のフローチャートを実行するプログラムは、それぞれ処理装置11によって並列処理される。図6において、データ管理装置1の処理装置11は、遠心分離機2から送信される稼働データ30を受信する(ステップ61)。稼働データ30を受信したら処理装置11は、ヘッダ情報31からその発信元を識別し、管理リストを用いて発信元の遠心分離機2が管理者から承認された管理対象であるか否かを判定する(ステップ62)。管理対象のデータでない場合はステップ61に戻る(受信した稼働データ30は破棄する)。管理対象機のデータの場合は特定イベントのデータか否かを判定する(ステップ63)。
【0043】
ここで、特定イベントとは、例えば、スタートボタン選択によるロータの運転開始、ロータの加速後で設定回転数への到達、ストップボタンによるロータの減速開始、設定時間経過によるロータの減速開始、何らかのエラーの発生、ロータの減速後にロータが停止、ドア開、ドア閉、真空ポンプオン、真空ポンプオフ、運転中の運転条件変更による制御状態変化(回転速度、温度など)、遠心分離機2へのユーザのログイン又はログアウト、等のイベントであって、管理者の方針によっては周期的に遠心分離機から送信される情報の他にデータ管理装置1において記録すべき事象のデータである。
【0044】
図7は特定イベントを説明するための図である。遠心分離機2は、主電源がオンになると図4に示すフローチャートに従って、データ管理装置1にデータの送信を開始する(71)。次に、作業者はロータに試料をセットしてからドアを閉鎖し(72)、スタートボタンを押す(73)ことによって速度曲線70に示すようにロータ22の回転速度が上昇する。設定回転速度に到達すると(74)、設定された一定回転速度で所定時間の運転を行う。作業者によってストップボタンが押されるか又は設定時間の運転が終了すると(75)、ロータが減速されて停止(76)する。その後、作業者がドアを開き(77)、試料を取り出す。遠心分離運転が終了の場合は作業者は電源スイッチをオフにする(78)ことにより、遠心分離機2からデータ管理装置1へのデータの送信が終了する。本実施例は、管理者の方針に応じて記録すべき事象(特定イベント)を任意に設定できるようにし、データ管理装置1が特定イベントにおける稼働データ30を受信した場合は、無条件に記録するようにした。
【0045】
図6のステップ63で特定データのイベントでない場合は、データ管理装置1での記録インターバル時間が経過したか否かを判定し、経過していなかったら受信した稼働データ30は記録せずに破棄し、ステップ61に戻る(ステップ64)。記録インターバル時間とは、データ管理装置1で稼働データ30を記録する時間間隔のことで、例えば遠心分離機2が10秒毎に稼働データ30を送信する場合であっても、データ管理装置1では10秒毎だけでなく、30秒毎や60秒毎のように、受信した稼働データ30を間引きして記録するようにすることができる。このように非同期に記録タイミングを設定する場合であっても、遠心分離機2側では何ら設定を変えずに済み、データ管理装置1側の記録インターバル時間の設定を変更するだけでよい。
【0046】
ステップ64で記録インターバル時間が経過した場合は受信した稼働データ30を記憶装置13に記録し、ステップ61に戻る(ステップ64、65)。ステップ63において特定データのイベントの場合は、記録インターバル時間が経過しているか否かに拘わらずに稼働データ30を記録する(ステップ63、65)。尚、記憶装置13に記録される稼働データ30は、図3に示す稼働データ30の内容全体を記録する必要はなく、稼働データ30の中から必要な情報だけを抜き出して記録すれば良い。
【0047】
以上のように、本実施例によれば、データ管理装置1のIPアドレスが登録されている遠心分離機2からデータ管理装置1に稼働データ30が所定の間隔毎に自発的に送信されるので、データ管理装置1はネットワーク3に接続されていて電源がONであり、送信機能がオンとなっている遠心分離機2から稼働データ30を効果的に収集することができる。また、本実施例では電源がONしている遠心分離機2だけが自発的に通信を行なうので、データ管理装置1側から稼働データ30の送信依頼コマンドを発する必要が無く、ネットワークの回線を効率よく使用することができる。また、データ管理装置1は、データ管理装置1を送信先に設定した遠心分離機2の固有情報を自動的に収集することによって、管理対象とする管理リストを簡単に登録できるので、管理の手間を大幅に省略することができる。
【実施例2】
【0048】
次に図8のフローチャートを用いて、本発明の第2の実施例に係るデータ管理装置1における稼働データ30の受信及び記録手順を説明する。本フローチャートに示す制御手順では、遠心分離機2側の設定は何ら変更する必要はなく、データ管理装置1側の処理装置11で実行されるプログラムを変更するだけで実現できる。データ管理装置1の処理装置11は、遠心分離機2から送信される稼働データ30を受信する(ステップ81)。稼働データ30を受信したら処理装置11は、ヘッダ情報31からその発信元を識別し、管理リストを用いて発信元の遠心分離機2が管理対象であるか否かを判定する(ステップ82)。管理対象のデータでない場合はステップ81に戻り、管理対象のデータの場合は特定イベントのデータか否かを判定する(ステップ83)。特定イベントの場合はステップ88に進む。
【0049】
ステップ83で特定データのイベントでない場合は、受信したデータが前回受信したデータと状態変化があるか否かを判断し、状態変化がある場合は無条件でデータを記録するためにステップ88に進む(ステップ84)。状態変化がない場合はステップ85に進み「記録モード」がオンとなっているかを判別し、記録モードがオフ、即ち遠心分離機2から受信するデータの記録の必要がない場合は、ステップ81にもどる(ステップ85)。ここで「記録モード」とは、データ管理装置1側で遠心分離機2の稼働データ30を記録するか否かの設定であり、例えばメインテナンス作業等においてテストデータを送信するような場合は、記録モードをオフにして記録しないように設定することができる。
【0050】
ステップ85で「記録モード」がオンの場合は、データ管理装置1での記録インターバル時間が経過したか否かを判定し、経過していなかったらステップ81に戻る(ステップ86)。記録インターバル時間が経過している場合は受信した稼働データ30を記録し、ステップ61に戻る(ステップ86、87)。
【0051】
ステップ83又は84から分岐されたステップ88は、データ管理装置1での記録インターバル時間が経過したか否かを考慮せずに、無条件に稼働データ30の記録を考慮するルーチンである。これは、特定イベントや、前回の状態から変化した場合は、その際の稼働データを記録することが遠心分離機における運転情報収集システムにおいて重要であるためである。
【0052】
まず、データ管理装置1で遠心分離機2から受信するデータの記録を行う「記録モード」がオンとなっているかを判別する(ステップ88)。記録モードがオンの場合は、受信した稼働データ30を記録し(ステップ89)、その稼働データが「OFFイベント」であるか否かを判定する(ステップ90)。ここで「OFFイベント」とは、遠心分離機2の停止(図7の76)等であって、その後の稼働データ30の記録が必要なくなるイベントである。データ管理装置1はOFFイベントを検出した場合は、その遠心分離機2に対する記録モードをOFFとしステップ81に戻る(ステップ90、91)。OFFイベントでない場合は、記録モードを変更せずに(即ち記録モードONのまま)ステップ81に戻る(ステップ90)。
【0053】
ステップ88において記録モードがOFFの場合は、本来ならば受信した稼働データ30を記録する必要はなく破棄しても良いが、本実施例では破棄する前に稼働データ30の内容を判断して、それが「ONイベント」に相当するものであるかを判断する(ステップ92)。ここで「ONイベント」とは、遠心分離機2のスタート(図7の73)等であって、その後データ記録の必要が生ずる場合である。ステップ92でONイベントでない場合はステップ81に戻り、ONイベントである場合はデータ管理装置1のその遠心分離機2の記録モードをONとし(ステップ93)、データの記録を開始する(ステップ94)。 ここで「ONイベント」「OFFイベント」は必ずしもスタート、ストップとは限らず、管理者の方針に基づき例えば「ONイベント」をドア閉(図7の72)、「OFFイベント」をドア開(図7の77)または、「ONイベント」を遠心分離機2の主電源のON(図7の71)、「OFFイベント」を遠心分離機2の主電源のOFF(図7の78)のように変更できるようにしておくことが好ましい。
【0054】
以上のように、第2の実施例においては、データ管理装置1の記録モードのON/OFF状態に拘わらずに、受信した特定イベントを示す稼働データ30を受信した際に強制的に記録モードをON又はOFFにすることができるので、記録ミスを防止できると共に冗長な記録をすることなく効率よく稼働データ30を記録することができる。また、第2の実施例を用いることによって遠心分離機2側から特定イベントを示すデータをデータ管理装置1に送信するだけで、データ管理装置1の記録モードのON/OFFの切り替えを行うことができるので、データ管理装置1側で遠心分離機2毎に記録モードのON/OFF制御をする必要が無くなる。
【0055】
尚、第2の実施例において、ステップ84で前回のデータとの状態変化があるかを検出したが、遠心分離機2側からの特定イベントを万が一にも取りこぼさないような運転情報収集システムであればこのステップを省略しても良い。
【0056】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば本実施例では遠心分離機が通信機能を内蔵しているものとして記述しているが、遠心分離機にはRS232Cなどの古典的な通信機能を持たせ、ネットワークとの接続のための外付けのアダプタを介して通信する方法でも良い。また、本実施例ではコネクタ19、29を介して有線接続によりネットワーク3に接続したが、この構成に限られずに無線接続でネットワーク3に接続するようにしても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 データ管理装置 2(2a〜2e)、2’ 遠心分離機
3 ネットワーク 11 処理装置 12 表示装置
13 記憶装置 14 通信制御装置 19 コネクタ
21 処理装置 22 ロータ 23 駆動部
24 冷却部 25 記憶装置 26 操作表示装置
27 通信制御装置 29 コネクタ 30 稼働データ
31 ヘッダ情報 31a 機種名 31b 本体ID
31c ユーザ名 31d 日時 32 遠心条件設定値
33 運転状態データ 34 その他(のデータ)
70 速度曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、該駆動部によって回転され試料を保持するためのロータと、前記駆動部の回転を制御する制御部と、外部のネットワークに通信するための通信制御手段を有する遠心分離機において、
前記制御部は、前記遠心分離機が稼働している際に所定間隔毎に稼働データを収集し、前記ネットワークを介して前記稼働データをデータ管理装置宛に定期的に送出する自動送信モードを有することを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記遠心分離機において、前記自動送信モードをオンにするか又はオフとするかを選択可能であることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項3】
前記制御部は前記ネットワークが通信可能状態であるかを検出し、通信可能である場合は自動送信モードをオンにして前記稼働データを送出することを特徴とする請求項2に記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記制御部は前記ネットワークが通信可能状態であるかを検出し、通信不能である場合は自動送信モードをオフにして前記稼働データを送出しないことを特徴とする請求項3に記載の遠心分離機。
【請求項5】
前記ネットワークに送出される稼働データには、送信元固有情報を含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の遠心分離機。
【請求項6】
前記送信元固有情報は、前記遠心分離機に割り当てられるネットワーク上の固有アドレスであることを特徴とする請求項5に記載の遠心分離機。
【請求項7】
前記制御部は、前記遠心分離機の電源が投入されてから電源がオフになるまで、一定間隔毎に前記稼働データを送出することを特徴とする請求項6に記載の遠心分離機。
【請求項8】
駆動部と、該駆動部によって回転され試料を保持するためのロータと、前記駆動部の回転を制御する制御部と、外部のネットワークに通信するための通信制御手段を有し、前記制御部から稼働データを所定間隔毎に送出する複数の遠心分離機と、
前記遠心分離機から送出される稼働データを受信して記録するデータ管理装置と、を有する遠心分離機の運転情報収集システムであって、
前記データ管理装置は、前記遠心分離機から送出された稼働データから送信元固有情報を判別し、機種毎に記録することを特徴とする遠心分離機の運転情報収集システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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