説明

遠心分離機

【課題】
ロータアダプタに形成された凹凸の溝を短時間で安定して検知可能な遠心分離機を提供する。
【解決手段】
コルピッツ発振回路5の発振出力を分周した分周信号を高速なクロックでカウントし、カウント値の差分値の変化により凹溝のロータ穴と平面のロータプレート面に対応したデータを生成してメモリ83に記憶し、マイクロコンピュータ8はこの数値データをフィルタ処理して生成した2値化エンベロープ数値データと元の数値データを比較することにより凹溝を検出する。検出された凹溝の配置パターンは2値コード化され、予め記憶されているコード表と比較することによってロータ1の種類を識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心分離機においてクラウン等に載置される複数のロータの種類を自動識別するためのロータ識別装置を有する遠心分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機チャンバ内のクラウン等に載置され使用されるロータが複数の種類に及ぶ場合、ロータ固有の最高回転数、ロータの形状、慣性モーメント、ロータ内試料温度管理用のデータ等のロータ情報取得がロータを運転する際に遠心分離機側で必要なため、ロータの種類を識別する装置が必要とされている。このロータの種類を識別する装置として、ロータ底面にアルミニウム等の非磁性体金属を材質とするロータアダプタを設け、ロータアダプタにロータの識別子となる凹の溝を彫り、この凹凸の溝の感知を遠心分離機側に設けた渦電流センサにより行い、凹の溝の配置パターンによりロータを識別するようにしている。
【0003】
ロータアダプタに形成された凹の溝の配置パターンによりロータを識別する技術として特許文献1が知られている。この技術では、ロータの識別は、ロータ表面の凹凸の溝とセンサヘッド間のエアギャップの変化によりセンサヘッドと協同して発振する発振回路の出力信号の発振周波数が変化するのを、バンドパスフィルタの周波数に対する減衰特性を利用して周波数電圧変換器として用い、この出力信号の周波数変化を電圧信号の変化に変換し、予め定められた手順で作成された比較電圧値との大小を比較することにより凹溝を検出する。検出された凹溝の配置パターンはコード化され、このコードに対応するロータが識別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3780670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のロータの識別回路は、コルピッツ発振回路によりロータ識別センサヘッドのインダクタンスが、凹溝のロータ穴が平面のロータプレート面と比べて渦電流が減少するため見かけ上のインダクタンスが増加する特性を利用し、凹溝のロータ穴を検出しこの穴の数と円周上の位置を把握しロータを識別している。しかし、凹溝のロータ穴でインダクタンスが減少することによる周波数減少は僅か0.2%から0.5%程度であり、一方、センサヘッドが配置されている遠心分離機チャンバ内の温度変化、センサヘッド固有のバラツキによりインダクタンスが異なることに起因する基本発振周波数のずれなどの方が大きい。
【0006】
このため、コルピッツ発振回路の周波数を例えば455kHzのバンドパスフィルタの肩スロープ部に合わせるように調整して、それからインダクタンス減少による周波数減少を検出する。つまり、ロータ表面の凹凸の溝とセンサヘッド間のエアギャップの変化によりセンサヘッドと協同して発振するコルピッツ発振回路の出力信号の発振周波数をバンドパスフィルタに通過させるようにするため、コルピッツ発振回路の調整のためのハードウエアと制御動作が必要な上、ロータの識別処理毎にコルピッツ発振回路の周波数を合わせこむ制御のためにロータを十分回転させる必要があるため、読み取りに約10秒程度の時間を要する。それ故に、“ユーザがロータをセットしてドアを閉めた後にロータを数回転させて直ちにロータ識別コードを読み取る”、いわゆるクイックロータ自動識別機能の実現が困難であった。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、ロータアダプタに形成された凹凸の溝を短時間で安定して検知可能な遠心分離機を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、ロータ表面の凹凸の溝とセンサヘッド間のエアギャップの変化を検出する際、チャンバ内の温度変化や発振器の基本発振周波数ずれ等の外乱要因があっても検知時間に影響しない遠心分離機を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、ロータの最初の数回転においてロータアダプタの情報を読み取ってメモリに格納し、メモリに格納されたデータをデジタル処理することによってロータアダプタを識別する遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち代表的なものの特徴を説明すれば次の通りである。
【0011】
本発明の一つの特徴によれば、載置されるロータの種類を、ロータに設けられた識別子の配置パターンから識別する識別子検出手段と、モータの回転を制御することによってロータの回転を制御する制御装置を有する遠心分離機であって、識別子検出手段は、識別子を感知するセンサヘッドと、センサヘッドと協同して発振する発振回路と、発振回路の周波数をカウントするカウンタを含んで構成し、制御装置は所定の周期毎にカウンタのカウント値をメモリに記憶し、メモリに記憶された所定周期分のカウント値からロータ識別子の配置パターンの識別を行うように構成した。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、制御装置は、メモリに格納されたカウント値から各カウント位置における2値化閾値を求め、2値化閾値とカウント値の大小に応じて識別子が1または0かを判断する。閾値は、メモリに格納されたカウント値をフィルタ処理した値Ynの平均値Yavを用いて算出すると良い。フィルタ処理した値Ynの算出には、カウント値C0n(nは正の自然数)の中から最小値Cminを見いだして、カウント値C0nの各々からCminを引き算して算出した差分値C1n(nは正の自然数)を用いて算出する。尚、算出された差分値C1nに対して前後の差分値C1n−1とC1n+1との差が平均値の所定値以上の場合は、差分値C1nを補正するようにすると好ましい。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、閾値は、平均値Yavと、フィルタ処理した値Ynをさらにフィルタ処理した値Zn(nは正の自然数)により算出される。また、カウント値の微分値Difnを求め、微分値Difnから穴識別子配置パターンの起点位置を検出する。制御装置は検出された起点位置を基準にして順に識別子が1または0かを判断することによって識別子が示す2値化コードを復号化することができる。遠心分離機は記憶装置を有し、記憶装置内にロータの種類とその2値化コードの照合表を格納しておく。このように構成すれば復号化された2値化コードを照合表と比較することによってロータの種類を即座に特定することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、制御装置は所定の周期毎にカウンタのカウント値を一端メモリに記憶し、所定量のカウント値をメモリに記憶された後に、所定周期分のカウント値からロータ識別子の配置パターンの識別を行うので、従来技術のような発振回路の発振周波数を測定し発振周波数をずらし適切な周波数に設定する制御は不要になり、検出環境条件が変化してもロータアダプタに形成された凹凸の溝を迅速、安定、確実に検知可能となる。この結果、ロータを数回転程度で回転させるだけでロータアダプタに設けられた穴識別子の配置パターンを読み取ることが可能な使い勝手のよい遠心分離機を実現できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、制御装置は、メモリに格納されたカウント値から各カウント位置における2値化閾値を求め、2値化閾値とカウント値の大小に応じて識別子を判断するので、ロータ表面の凹溝とセンサヘッド間のエアギャップの変化によりセンサヘッドの出力が変化しても安定かつ確実に識別子が1または0かを判断することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、閾値はメモリに格納されたカウント値をフィルタ処理した値Ynの平均値Yavを用いて算出されるので、検出環境条件が変化してもそれに応じて適切な閾値を設定することができる。また、従来方式、即ち、ロータ表面の凹凸の溝とセンサヘッド間のエアギャップの変化によりセンサヘッドと協同して発振する発振回路の出力信号の発振周波数をバンドパスフィルタに通過させるように調整する手順が不要となるので、高速なロータ自動識別処理が実現できる。
【0017】
請求項4の発明によれば、値Ynの算出には、カウント値C0nの中から最小値Cminを見いだして、C0n − Cminの値を用いて算出するので、データのオフセットが取り除かれて変化分のみの小さな値になり、その後の処理を効率的に行うことができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、算出された差分値C1nに対して前後の差分値C1n−1とC1n+1との差が平均値の所定比以上の場合は、差分値C1nを補正するので、カウント値の桁上がり処理やノイズ混入によるカウント値異常の影響を効果的に除去することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、閾値は、平均値Yavと、フィルタ処理した値Ynをさらにフィルタ処理した値Zn(nは正の自然数)により算出され、閾値はカウント値の大きさに合わせて最適な値が設定されるので、ロータの種類や設置状態、環境等に影響されずに安定的にロータを検知できる遠心分離機を実現できる。
【0020】
請求項7の発明によれば、カウント値の微分値Difnを求め、微分値Difnから穴識別子配置パターンの起点位置を検出することができるので、確実に基点位置を検出することができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、制御装置は、検出された起点位置を基準にして順に識別子が1または0かを判断することによって識別子が示す2値化コードを復号化するので、ロータの特定処理がコードにより確実に行える遠心分離機を実現できる。
【0022】
請求項9の発明によれば、記憶装置内にロータの種類とその2値化コードの照合表を格納しておき、復号化された2値化コードを照合表と比較することによってロータの種類を特定するので、照合表と一致する唯一のロータを精度良く確実に特定できる遠心分離機を実現できる。
【0023】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係る遠心分離機100のロータ識別装置を示すブロック回路図である。
【図2】図1のロータ1の底面図であって穴識別子3の配置例を示す図である。
【図3】本実施例のセンサヘッド4と協同して発振する発振回路及び分周回路を示す図である。
【図4】本実施例のロータ識別装置のカウンタ30の回路図である。
【図5】本発明の実施例における識別コード読取処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例におけるカウンタの動作状態とメモリに格納される分周データの関係を示す図である。
【図7】本発明の実施例におけるメモリに格納される分周データ(カウント値C0n、差分値C1n)とアドレスの関係を示す図である。
【図8】本発明の実施例における2値化閾値及び先頭穴位置起点算出を示す図である。
【図9】本発明の実施例における2値化閾値により穴識別子の配置パターンを決定する様子を示す図である。
【図10】本発明の実施例における穴識別子の配置パターンからロータ識別コードを決定する様子を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0026】
図1は、本発明に係る遠心分離機100の構造を示す図であり、ロータ識別装置をブロック回路図で示したものである。遠心分離機100は、チャンバ18の内部においてロータ1を高速で回転させる装置である。装着できるロータは複数種類準備され、そのうちユーザが一つのロータ1を選択して遠心分離機100にセットする。ロータ1は、モータ21から延びる駆動シャフト22の先端に固定されるトルク伝達器22aにて保持され、ロータ1の底面にはアルミニウム等を材質とした円筒形のロータアダプタ2が設けられる。ロータアダプタ2の底面の円周上には、ロータ1の識別子となる凹溝の穴識別子3が複数個設けられる。穴識別子3はロータアダプタ2の底面から上方向に円筒形に形成された穴であり、ロータアダプタ2の円周上の一箇所に設けられロータアダプタ2に対向するセンサヘッド4により感知される。センサヘッド4はチャンバ18の底面等の非回転部分に固定されるものであって、公知の渦電流式のセンサを用いることができる。
【0027】
ロータ1は、例えば3相の誘導モータ或いはDCブラシレス等のモータ21によって回転駆動される。モータ21から延びる駆動シャフト22は、チャンバ18の底面に設けられた貫通穴を貫通してチャンバ18の内部にまで延びる。チャンバ18の上端に設けられるトルク伝達器22aは、モータ21の駆動トルクをロータ1に伝達するクラウン、スパッド等である。チャンバ18は、遠心分離機100のフレーム27に支持され、チャンバ18の外周側には、ロータ1を冷却するための冷媒を通す銅パイプが巻かれてエバポレータの機能を果たす。銅パイプのさらに外周側には、フレーム27で支持されるプロテクタリング26が設けられる。プロテクタリング26は、ロータ1の破損時に破損した破片が遠心分離機100の外部に飛び出そうとするのを受け止めるものである。
【0028】
チャンバ18の上部には開閉可能なドア25が設けられ、チャンバ18と共にロータ1を閉じ込める閉空間を画定する。ロータ1の遠心分離時の回転方向は、この場合CCWの矢印で示す方向であり、ドア25側からロータ1を見たときに反時計回りである。
【0029】
モータ21の回転制御、チャンバ18内の温度制御と、装着されたロータ1の識別、及びその他の遠心分離機100全体の制御は制御装置であるCPU8が行う。CPU8は、例えばルネサステクノロジーズ社製SH7080シリーズのマイクロプロセッサであり、市販のマイコンを用いて構成することができる。尚、図示していないがマイクロプロセッサはタイマー、カウンタ、記憶装置等の公知の電子機器を含んで構成される。
【0030】
モータ21の回転は、CPU8から信号線17を介して入力される制御信号に基づいて、インバータ変換器50が接続線73を介してモータ21に可変周波数の電圧を出力することによって制御する。モータ21にはモータ21の回転数を検出するための検出手段が設けられる。検出手段は、駆動シャフト22の下端側に設けられたエンコーダディスク76と、エンコーダディスク76のスリットの有無により回転パルス信号MPGを出力するフォトインタラプタ11、エンコーダディスク76のスリットの有無によりロータの回転角度信号を出力するフォトカプラ19、フォトカプラ19からの出力の有無を発振器9のタイミングでカウントするカウンタ30を含んで構成される。カウンタ30の出力は、信号線14、15を介してCPU8に入力される。
【0031】
ロータ1のロータアダプタ2の内周部分の2箇所にはマグネット20が設けられる。マグネットセンサ29は、マグネット20の近接を検出しロータ1の回転数を検出するホール素子等のパルス信号RPGを信号線75を介してCPU8に出力する。またトルク伝達器22aの底部の円周上には少なくとも1つ以上のマグネット23が設けられ、マグネットセンサ28がマグネット23の近接を検出してロータ1の回転数を示すパルス信号SPGを信号線70を介してCPU8に出力する。
【0032】
本実施例においては、センサヘッド4、発振回路5、比較器6及び分周器7、CPU8内のMTU81で識別子検出手段74を構成する。センサヘッド4は発振回路5に接続される。発振回路5は穴識別子3の有無によるセンサヘッド4のインダクタの変化を周波数の変化に置き換えるもので、同軸ケーブル10により接続されたセンサヘッド4と協同して発振するコルピッツ方式等の回路で構成される。比較器6は、発振回路5の出力を“1”又は“0”の論理レベルの2値化方形波信号に変換し、分周器7は比較器6の方形波信号を分周する。分周器7の信号出力は信号線24を介してCPU8内のマルチファンクションタイマカウンタユニット81(以下MTUと称す)に入力される。MTU81は、信号線24を介して穴識別子3が設けられた凹溝部とロータアダプタ2の平面状態のプレート面とから成る凹凸の周波数の違いを計測する。発振器9は、例えば80MHzのクロック信号を信号線91を介してMTU81とカウンタ30に供給する。バッファ82は、MTU81のイベントカウント終了毎にカウント値を転送し保存するために用いられる。
【0033】
フォトインタラプタ19は、ロータ1の回転角度を検出するためのエンコーダディスク76のスリットを読み取るものであり、90°位相が異なる2相の信号を信号線12及び13を介してカウンタ30に出力する。カウンタ30は、2相信号を逓倍した信号、例えばロータ1の1回転当たり480パルスの信号を信号線15を介してMTU81に出力する。MTU81は、分周器7の方形波信号の周期を80MHzのクロックでカウントし、そのカウント値を信号線15から到来するパルス信号に同期してメモリ83に格納する。CPU8は、メモリ83に格納された分周器7の方形波信号の周期となるデジタル値を基にして2値化閾値を算出し、この閾値により元のデジタル値との2値化演算を行い穴識別子3の凹溝を検出する。この検出結果と凹溝の配置パターンからCPU8はロータ1の種類を識別する。カウンタ30の信号線14からはエンコーダディスク76の回転方向すなわちロータ1の時計・反時計方向の回転方向を示す“1”又は“0”の論理レベルの信号がCPU8に出力される。識別コード自動読み取りボタン101は、ロータ1の識別コードの自動読み取り動作を起動するためのスイッチである。
【0034】
図2は、本発明になる穴識別子の配置の一例をロータ1の底面方向から見た配置パターン図であり、ロータ1の識別のためにロータ1の底面に取り付けられたロータアダプタ2に設けた穴識別子3の配置パターンは、ロータ1の回転軸を中心としたロータアダプタ2の同一円周上に、この場合15等分した等角間隔の格子点上AからOに凹溝の穴識別子3が穴は黒丸●、面は破線の白丸○で示されており、AからOの格子点上の黒丸●で示したA、B、G、H、L、Nの位置に6個の穴識別子3が設けられ、破線の円で示したC、D、E、F、I、J、K、M、Oの位置は穴識別子を設けずロータアダプタ2のそのままの底面としている状態を示している。この配置パターンは、ロータ1の種類毎に後述する規則に従って格子点上の凹溝の穴識別子3の数と配置を違え、種類が異なるロータとして識別できるようになっている。なお、ロータ1の遠心分離時の回転方向は反時計回りであるから、ロータ1を底面方向から見ると回転方向は矢印CWの方向となる。
【0035】
図3はセンサヘッド4と協同して発振するコルピッツ発振回路5、比較器6及び分周器7の回路図である。コルピッツ発振器はコンデンサ51、54、55、56、トランジスタ53、抵抗器52、57、58及びセンサヘッド4で主に構成され、これらの部品は同軸ケーブル10でセンサヘッド4と接続される。本実施例では、発振回路5の発振周波数は約1.2MHzである。
【0036】
比較器6に出力された発振回路5の出力はコンデンサ60及び抵抗器61で微分され、入力抵抗器63、64を介して±AVCCを電源とするコンパレータ65に入力される。コンパレータ65の出力端からは発振回路5の周波数に等しい方形波が分周器7に送られる。分周器7はその入力段に設けられたシュミットトリガ71でノイズを除去し、バイナリリプルカウンタ72で分周された方形波を信号線24を介してCPU8に出力する。ここで、バイナリリプルカウンタ72は、例えばNXP Semiconductors社の製品名74HC4040等であり、この場合4096分周された方形波が信号線24から出力される。
【0037】
図4はカウンタ30のブロック回路図である。カウンタ30は、ロータ1及びロータアダプタ2の角度検出器となるエンコーダディスク76、フォトインタラプタ19とその信号出力をカウントする。カウンタ30にはフォトインタラプタ19からの2本の出力が入力されるものであって、信号線12からはφBが、信号線13からはφAが入力される。信号線12のφBは、モータ21の1回転当たり120パルスの2相信号であり、信号線13のφAは、φBと1/480回転だけずれたタイミング(=4分の1パルス分ずれたタイミング)でモータ21の1回転当たり120パルス出力される2相信号である。φBとφAの信号はVCCを電源とする積分回路を構成する抵抗器31、32、35、36及びコンデンサ33、37を経た後に、シュミットトリガ34、38を介してフリップフロップ(FlipFlop)39、41の1段目のD入力端子に入力される。フリップフロップ39、41としては、例えば74HC175を用いることができ、そのQ出力はフリップフロップ40、49のD入力端子に入力される。また、1段目のフリップフロップ39、41のQ出力と、2段目のフリップフロップ40、49のQ出力は排他的論理和を取るイクスクルーシブオアゲート(以下EXORと称す)42、43の入力端が接続される。EXOR42、43は、例えば74HC86を用いることができる。
【0038】
2相信号φA及びφBについて、1段目のフリップフロップ39、40のQ出力にEXOR42、44の入力端が接続され、これらのEXOR42、44の出力はデータセレクタ45の入力端1A及び2B、2A及び1Bに接続され、EXOR43の出力端はデータセレクタ45のセレクト入力端Sに入力される。フリップフロップ 39、40、41、49のそれぞれのクロック入力端子CKには信号線92からこの場合約624kHzのクロック信号が供給される。データセレクタ45の反転出力端1Y、2YはEXOR48に入力され、このゲートの出力端は信号線15を介してCPU8の割り込み入力端子IRQに接続され、この信号はφA及びφB信号を4逓倍したロータ1の1回転当たり480パルスの出力となる。データセレクタ45の反転出力端1Y、2Yはそれぞれ74HC00等のナンドゲート46、47で構成されるRS形フリップフロップの入力端に接続され、ナンドゲート47の出力は信号線14を介してCPU8の入力ポートに出力され、この信号はロータ1の回転方向を示す信号となり、ロータ1が遠心分離中のCCW方向回転なら論理“0”レベルの出力となる。
【0039】
次に本実施例の遠心分離機におけるロータの識別コード読取処理について図5のフローチャートを用いて説明する。図5に示す処理手順は、CPU8がコンピュータプログラムを実行することによってソフトウェアで実現することができる。本実施例では、ロータアダプタ2に設けられた穴識別子3の配置パターンを読み取るために、オペレータがロータ1を手で回すことにより識別コードを読み取るか、或いは、オペレータが遠心分離機100に設けてある識別コード自動読み取りボタン101を押下することによりロータ1をモータ21の駆動シャフト22にセットした状態で回転させる幾つかの方法がある。ここではモータ21によってロータ1を回転させる方法の例で説明する。
【0040】
まず、オペレータが識別コード自動読み取りボタン101(図1参照)を押下すると、CPU8は信号線17を介してインバータ変換器50にモータ21の回転指令を送出し、モータ21を回転させてロータ1を数回転〜数十回転程度回転させる。このようにロータ1が回転すると、CPU8はロータ1が所定の回転数N1以下で回転中であるかを判断する(ステップ700)。ここで、N1は例えば60min−1とすることができる。ロータ1が回転数N1より大きい回転数で回転中である場合は、ステップ700に戻ることにより、ステップ701以下に示す手順は実行しない。ロータ1が回転数N1以下で回転中である場合は、この回転中に分周器7のパルス間隔を信号線91のクロックでカウントし、そのカウント値CNをバッファ82へ格納する動作を繰り返すように構成されており、フォトインタラプタ19の信号12、13に基づいてカウンタ30が出力する信号15に同期して上記分周器7のパルス間隔のカウント値をメモリ83に格納する(ステップ701)。次にCPU8は、メモリ83に格納されたデータが1000データ分に達したかどうかを判断し、1000データに達していなかったらステップ701に戻り(ステップ702)、ステップ701を繰り返す。
【0041】
ここで、メモリ83に格納されるカウント値CNについて図6及び図7を用いて説明する。図6は、フォトインタラプタ19の出力φA、φBと、出力φA、φBから求められるタイミング信号であるSIGNAL15と、分周器7の出力(信号線24)する信号の周期を信号線91からのクロック信号でカウントしたカウント値の関係を示す図である。フォトインタラプタ19の出力φA、φBは、モータ21の1回転当たり120パルスの2相信号であり、φAとφBは1/480回転だけずれたタイミング(=1/4パルス分ずれたタイミング)で出力される。よってMTU81には信号線15からカウンタ30で2相信号φAとφBの立ち上がりまたは立ち下がりエッジから作成される4逓倍した信号であるSIGNAL15が入力される。
【0042】
SIGNAL15は、例えばロータ1が30min−1で回転中なら4.17msec周期の信号となり1周あたり480個の矩形波が発せられる。MTU81には信号線24から分周器7の出力信号であるSIGNAL24が入力される。SIGNAL24は、この場合約1.22MHz、0.817μsec周期の発振回路5の信号を分周器7で4096分周した約3.34msec周期の信号である。MTU81は、信号線24の信号SIGNAL24の立下りから次の立下りまでの幅を、信号線91からの80MHzのクロックでイベントカウントする。この例ではカウント値は約268,000カウントとなり、カウント終了毎にバッファ82にこのイベントのカウント値CNを転送する。カウント値CNは、SIGNAL15の矩形波が何番目かによって定まるメモリ83の格納アドレスにC0n(n=0〜999)として格納される。バッファ82には常に1個しかデータが置けず、信号線24のパルスで常に更新される。
【0043】
そしてバッファ82のカウント値CNを、SIGNAL15のパルスの立下りに同期してメモリ83の先頭アドレス0番地から順に999番地まで1000個のデータを逐次格納する。ロータ1の1周分は480データであるから、1000個のデータはデータ間の比較のためロータ1の2回転分とデータ処理の都合で40データ余分に格納する合計値であり、1000個のカウント値C0nがメモリ83に格納される。図7は、メモリに格納される分周データとアドレスの関係を示す図である。図7の左側の表のように、メモリ83のアドレス0048、0049、0050、・・・には、カウント値C0n(n=0〜999)が順に格納される。
【0044】
図6においてロータ1が30min−1で回転中であり約3.34msec周期の信号SIGNAL24の立下り時間間隔CYC24は4.17msec周期の信号SIGNAL15の立下り時間間隔CYC15よりも短いので、図6のカウント値269,005で示すスキップDataのようにカウント値C0nとして取り込まれないものもある。逆に、ロータ1が60min−1で回転中なら時間間隔CYC24は時間間隔CYC15よりも長くなり1回のカウント値CNが2度連続してC0nとC0(n+1)に格納される場合もあるが、ロータ1の15の格子点に対してSIGNAL15が480パルスで1周分に相当する480個のデータ数を取り込み、1格子点当たり32データでカバーされるので格子点の穴・面の識別に支障は無い。
【0045】
再び図5に戻り、ステップ703は、MTU81が16ビットのカウンタとすると、約268,000カウント中に上位桁への桁上がりが4回発生した直後にSIGNAL24の立ち下がりが到来し、他の割込み処理中にこの桁上がりが発生すると桁上がりが4回でなく5回あったと処理され、その次のカウント値は桁上がりが3回であったと処理される場合が発生する。一方で、処理に使うデータはカウント値の差分値であるから、差分値が異常に大きい場合と小さい場合がカウント値C0nのデータ列中に現われ、この場合は桁上がり異常と見なし差分値を補正する必要がある。さらにデータにインバータ変換器50からのノイズが重畳するなどしてカウント値C0nの数値が異常なデータを排除するための準備として、カウント値C0nの1,000データの平均値を求め、平均値の10%データを算出する。
【0046】
図5のステップ704では、メモリ83に格納されたカウント値C0nデータ列の前後データの差が平均値の10%以上の場合は前のアドレスのデータで埋めるデータ補正処理を行う。次に、補正後のカウント値C0nの中から最小値Cminを見いだし(ステップ705)、カウント値C0nのデータ列からCminを引き算し、差分値C1n(n=0〜999)=C0n−Cminを求める(ステップ706)。この差分値C1nはn=0〜999の1000データ分すべて求められ、メモリ83の対応するアドレスに格納する。これを示すのが図7の右側の表である。
【0047】
次に、求められた差分値C1nに対してノイズ成分を除去するための1次遅れフィルタ処理を行う(ステップ707)。ここではn=0〜999で初期値Y=0として
フィルタ処理値 Yn+1=0.5×(C1n+1 + Yn)を逐次算出する。
【0048】
次に、閾値を算出するため、一次遅れのフィルタ処理値Ynから平均値Yavを算出する処理を行う(ステップ708)。平均値Yavは、求められたフィルタ処理値Yn(n=0〜999)の平均を取ることで算出できる。次にフィルタ処理値Ynに対してさらなる一次遅れフィルタ処理を行う(ステップ709)。ここでは、n=0〜999で初期値Z=0としてさらなる一次遅れのフィルタ処理値Zn+1は
Zn+1 =(0.1×Yn+1 + 0.9×Zn)にて求めることができる。
【0049】
以上のようにして求められた平均値Yavとフィルタ処理値Znを用いることによって、閾値THn(n=0〜999)を
THn=0.75×Yav + 0.5×Zn
により算出する(ステップ710)。
【0050】
次に、フィルタ処理値Ynのデータ列からメモリ83のアドレス内で先頭穴位置起点となるメモリ83のアドレスを見い出す処理を行う(ステップ711)。図8は、2値化エンベロープデータとなる2値化閾値及び先頭穴位置起点算出を例示するものであって、本実施例では図8の「起点」で示すように52番地のアドレスがロータ1の起点となる。この起点の求め方は、n=0〜999で初期値Y−2、Y−1、Y0は共に0、Dif0、Dif1は共に0として微分値Difn=0.5×(Yn−2 − Yn+2)を算出した結果、Ynが閾値THn以上であってDifnが負から正の値に符号が切り替わる際の正のデータが先頭穴位置起点アドレスであると算出でき、このアドレスが格子点Aの穴識別子3の位置となる。ただし、1次遅れフィルタ処理では、フィルタ処理出発時のYnがフィルタ処理前のC1nと大きく乖離する場合があるため、Difnの最初から20個のデータすなわちメモリ83で最初の20アドレスは、微分値Difnで符号が切替わり及び閾値THn以上の条件が合致しても先頭穴位置起点としては無視する。
【0051】
ロータアダプタ2に設けた穴識別子3の配置は15等分した等角間隔の格子点上AからOのいずれかにあり、SIGNAL15が480パルスでロータ1の1周分に相当するから32アドレス飛びが格子点になるので、メモリ83の先頭穴位置起点アドレス52番地から始まり32アドレス飛びに、データYnと閾値THnを比較する(ステップ712)。
この比較において、
Ynのデータ > 閾値データ THn の場合は穴“1”であると判定し、
Ynのデータ ≦ 閾値データ THn の場合は面“0”であると判定する(ステップ712)。この処理を15回行ことにより、すなわち先頭穴位置起点アドレス52番地から、84、116、148、・・・、500のアドレスに渡って、穴“1”か面“0”かを決定する。この決定方法を示すのが図9である。
【0052】
図9は、本発明の実施例における2値化閾値により穴識別子の配置パターンを決定する様子を示す図である。図9において横軸はメモリ83のアドレスであり、縦軸はフィルタ処理値Yn、閾値THnである。ここで太線で示すのがフィルタ処理値Ynの値を結んだ曲線であり、実線で示すのが平均値Yavとフィルタ処理値Znを用いることによって求めた閾値THnである。上述したように、本実施例の場合ロータ1の一周分の格子点アドレスは起点が52番地から、84、116、148、・・・、500であるから、各点をA、B、C・・とアルファベットで識別すると、識別コードID1は読み出し位置をAとして、AとBは穴“1”で穴識別子有り、続くC、D、E、Fは面“0”で穴識別子無しでロータアダプタ2のそのままの底面であり、以下同様にしてGからOまで進めると識別コードID1は15ビットの2値化コード“110000110001010”を算出することができる。
【0053】
次にCPU8は、文字列“110000110001010”が示すロータを、ロータの識別コードが格納されたデータベースと比較する(ステップ713)。CPU8は、読み取ったロータ1の1回転目の識別コードID1を逐次1ビット左ローテイトして、識別コードID1の16進チェックコードが16進分類コードから算出した 算出16進チェックコードに一致するビット配列を求め、あらかじめ用意してあるデータベースと比較して一致するものがあるかを調べる。ここで、一致するものが無い場合はIDコード異常ステップ719に移行し、CPU8はインバータ変換器50にモータ21の回転を停止する指令を送りロータ1の運転を停止するか或いは識別コード異常などのエラーメッセージをオペレータに知らせる処理等を行う。
【0054】
図10は、図2に示す穴識別子の配置パターンからロータIDコードを決定する様子を例示する表である。図10は得られた識別コードID1の15ビットの2値化コード“110000110001010”を読み出し位置を異ならせて示してあり、読み出し先頭位置は図2のAの場合からOの場合に対応し、今回読み取ったID1の15ビットの2値化コード“110000110001010”は図2に示す穴識別子の配置パターンをAから時計回りに読み出すことに相当し、先頭から5ビット単位で16進数で表現すると、上位5ビットは“11000”であるから「18」、中位5ビットは“01100”であるから「0C」、下位5ビットは“01010”であるから「0A」となり、先頭から10ビットの「180C」を分類コード、末尾5ビットの「0A」を分類コードのチェックコードとする。
【0055】
計算チェックコードの生成は、16進数の「1F」から分類コードを構成する2つの16進数「18」、「0C」を減算し、この場合は1F−18=07、07−0C=FBとなり、16進数「FB」の2の補数を取ることにより計算チェックコードは16進数で「05」とする計算方法による。この結果、16進チェックコード「0A」と計算チェックコード「05」が一致しないために識別コードとして正当性がないが、ロータ1の識別コードの読み出し位置は常にAから開始するとは限定できず、例えばBの位置から読み出す場合もあり、Bのときは16進分類コードは「10 18」、16進チェックコードは「15」となり、計算16進チェックコード「09」と一致しないためにこの場合も識別コードとして正当性がない。
【0056】
このように順次読み出し先頭位置をずらしていくと、図10で太線で囲った読み出し先頭位置がDの場合は、16進分類コードは「03 02」、16進チェックコードは「16」となり、計算16進チェックコードも「16」となり一致するので識別コードとして正当性があり、データベースにあらかじめ登録されている分類コード「03 02」、チェックコード「16」に合致するものがあるかをサーチし、ロータ1の種類が特定される。このデータベースはCPU8が有する不揮発性記憶メモリ中に格納しておいても良いし、CPU8の外部に搭載される公知の不揮発性記憶メモリに格納しても良い。
【0057】
次に、ステップ715はステップ712と同様の方法でロータ1の2回転目の識別コードID2を読み取る処理であり、メモリ83のアドレス532番地から980番地にあるデータを対象とし、識別コードID2はID1と同一の15ビットの2値化コード“110000110001010”を読み出す。以下、ステップ716、ステップ717は、識別コードID1を対象にしたステップ713、ステップ714と同様の処理であり、ステップ718で識別コードID1と識別コードID2は一致するからロータ1の識別処理が完了する。
【0058】
なお、識別コードID1と識別コードID2が一致していなければ、リトライ処理として再度1,000個のデータを取り込み、ステップ700以下の処理手順を繰り返しロータ1の識別コードを取得するようにしても良い。また、ステップ712で識別コードID1中の穴数が少なく、識別コードID1の先頭穴位置起点アドレスがメモリ83の後方の番地にずれ、そのためステップ715で識別コードID2がメモリ83の999番地以内で15ビット集まらない場合があり、その場合はメモリ83のアドレスをリング状に捉え、999番地の次以降のアドレスとして40番地以降のアドレスのデータを利用する。
【0059】
以上、本実施例ではロータ表面の凹溝とセンサヘッド間のエアギャップの変化によりセンサヘッドと協同して発振する発振回路の出力信号の発振周波数を分周回路により分周した周期信号の時間周期をクロックでカウントし、カウント値の差分値の変化をロータ表面の凹溝に対応した数値データとしたので、ロータの数回転程度でロータアダプタ2に設けられた穴識別子3の配置パターンを読み取ることが可能である。また、ロータ1の種類を自動識別した後は、CPU8の信号線17からインバータ変換器50に停止指令を送出してモータ21を減速停止させることができる。
【0060】
次に、ロータ1を図1で示すロータ1の遠心分離時の反時計回り方向CCWとは逆方向の時計回り方向CWに回転させた場合、或いは反時計回り方向CCWと時計回り方向CWを織り交ぜて回転させ識別コードID1、ID2を取得した場合も、結果として識別コードID1、ID2をロータ1を反時計回り回転CCWで読み取ったとして処理可能なことについて以下説明する。
【0061】
ロータ1が時計回り方向CWで回転する場合は、CPU8に入力される信号線14の出力は論理“1”レベルとなる。これは、シュミットトリガ34、38を介してフリップフロップ39、41の1段目のD入力端子に入力され、2段目のフリップフロップ40、49のD入力端子は1段目のQ出力にそれぞれ接続されており、シュミットトリガ34、38からエンコーダディスク76の2相信号φB、φAの反転信号がフリップフロップ39に入力されると、例えばロータ1が時計方向CW回転時にはデータセレクタ45の1Y出力端から2相信号φB、φAのエッジが現れる度に発振器9の信号線92のクロックパルス幅の論理“0”レベルの信号が出力されるからである。この時のデータセレクタ45の2Y出力端は論理“1”レベルに保てたれているから、CPU8の割り込み入力端子IRQ にはEXOR48で論理が反転された信号が送られ、一方の信号線14は、エンコーダディスク76の回転方向を示す信号となり、この状態では論理“1”レベルの信号が送られる。CPU8は信号線14の信号入力状態をチェックし、論理“1”レベルであればロータ1が時計方向CWに回転しているから、バッファ82のカウント値C0nをSIGNAL15のパルスの立下りに同期してメモリ83のアドレス999番地から始まり0番地まで格納アドレスをデクリメントしながら1000個のデータを逐次格納する。
【0062】
ロータ1の回転方向が変わり、カウント値C0nの書込み途上で信号線14の信号入力状態が論理“1”レベルから論理“0”レベルに反転した場合は、カウント値C0nをSIGNAL15のパルスの立下りに同期してメモリ83のアドレスを1アドレスインクリメントさせる動作をCPU8が行い、データをそのアドレスに格納する。インクリメント前のアドレスが既にメモリ83の最高段となる999番地であればアドレスを最小段となる0番地とし、同様にデクリメント前のアドレスが0番地の最小段であればアドレスを999番地の最高段とする処理を行いながら、ロータ1が結果的に2回転余り回りメモリ83の0番地から999番地までの全格納エリアにカウント値C0nが書き込まれたことを確認し、ステップ702からステップ703に進む。このようにCPU8が信号線14の信号入力状態をチェックしながらメモリ83への書込みアドレスを降順させているから、結果として識別コードID1、ID2をロータ1を反時計回り回転CCWで読み取ったとしてステップ703以下は処理として利用可能になる。
【0063】
本実施例では検出環境条件が変化してもロータアダプタに形成された凹凸の溝を迅速、安定、確実に検知可能であり、ロータを数回転させる程度で精度良くロータの自動識別を行うことができる遠心分離機を実現できる。
【0064】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、差分値C1nの大きさは、ロータアダプタ2の回転位置に対する底面の面ぶれ、穴識別子3の偏心等にも起因して大きくうねる場合があるため、実施例で説明したような手順で閾値THnを算出するのではなく、差分値C1nのヒストグラムを基に差分値C1nの最大、最小値を求め、その中間値を閾値THnとして求めるように構成しても良い。また、上述の実施例ではロータアダプタ2がアルミニウム等の非磁性体金属の場合を例として説明したが、ロータアダプタ2が鉄等の強磁性体の場合でも渦電流センサの周波数が変化するため、同様の識別方法が適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 ロータ 2 ロータアダプタ 3 穴識別子
4 センサヘッド 5 発振回路 6 比較器
7 分周器 8 CPU 9 発振器
10 同軸ケーブル 11 フォトインタラプタ
12、13、14、15、16、17 信号線 18 チャンバ
19 フォトカプラ 20 マグネット 21 モータ
22 駆動シャフト 22a トルク伝達器 23 マグネット
24 信号線 25 ドア 26 プロテクタリング
27 フレーム 28、29 マグネットセンサ
30 カウンタ 31、32 抵抗器 33 コンデンサ
34 シュミットトリガ 35、36 抵抗器 37 コンデンサ
38 シュミットトリガ 39 フリップフロップ
40、41、49 フリップフロップ
42、43、44、48 イクスクルーシブオアゲート(EXOR)
45 データセレクタ 46、47 ナンドゲート
50 インバータ変換器 51 コンデンサ 52 抵抗器
53 トランジスタ 54、55、56、60 コンデンサ
56 コンデンサ 57、58、61、63、64 抵抗器
65 コンパレータ 70 信号線 71 シュミットトリガ
72 バイナリリプルカウンタ 73 接続線
74 識別子検出手段 75 信号線 76 エンコーダディスク
81 マルチファンクションタイマカウンタユニット(MTU)
82 バッファ 83 メモリ 91 信号線
92 信号線 100 遠心分離機
101 自動読み取りボタン
φA 信号線13の2相信号出力
φB 信号線12の2相信号出力
SIGNAL15 φAとφBの2相信号から4逓倍した周期の信号
SIGNAL24 信号線24の信号
C0n SIGNAL24の信号幅をクロックでイベントカウントしたカウント値
Cmin 補正後のカウント値C0nの最小値
C1n C0n−Cminとする差分値
Yn+1 データ列C1nの1次遅れのフィルタ処理値
Yav データ列Ynの平均値
Zn+1 データ列Ynの1次遅れフィルタ処理値
THn 閾値
Difn データ列Ynの差分を取った微分値
ID1、ID2 識別コード
CCW 反時計回り方向回転
CW 時計回り方向回転
CYC15 SIGNAL15の立下り時間間隔
CYC24 SIGNAL24の立下り時間間隔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置されるロータの種類を、前記ロータに設けられた識別子の配置パターンから識別する識別子検出手段と、モータの回転を制御することによって前記ロータの回転を制御する制御装置を有する遠心分離機であって、
前記識別子検出手段は、
前記識別子を感知するセンサヘッドと、前記センサヘッドと協同して発振する発振回路と、前記発振回路の周波数をカウントするカウンタを含んで構成され、
前記制御装置は、
所定の周期毎に前記カウンタのカウント値をメモリに記憶し、
前記メモリに記憶された所定周期分のカウント値から前記ロータ識別子の配置パターンの識別を行うことを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記メモリに格納された前記カウント値から各カウント位置における2値化閾値を求め、前記2値化閾値と前記カウント値の大小に応じて前記識別子が1または0かを判断することを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項3】
前記閾値は、前記メモリに格納された前記カウント値をフィルタ処理した値Ynの平均値Yavを用いて算出されることを特徴とする請求項2に記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記フィルタ処理した値Ynの算出には、カウント値C0n(nは正の自然数)の中から最小値Cminを見いだして、前記カウント値C0nの各々からCminを引き算して算出した差分値C1n(nは正の自然数)を用いて算出することを特徴とする請求項3に記載の遠心分離機。
【請求項5】
算出された前記差分値C1nに対して前後の差分値C1n−1とC1n+1との差が平均値の所定比以上の場合は、差分値C1nを補正することを特徴とする請求項4に記載の遠心分離機。
【請求項6】
前記閾値は、前記平均値Yavと、前記値Ynをさらにフィルタ処理した値Zn(nは正の自然数)により算出されることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項7】
前記カウント値の微分値Difnを求め、前記微分値Difnからロータの起点位置を検出することを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載の遠心分離機。
【請求項8】
前記制御装置は、検出された前記起点位置を基準にして前記識別子を順に1または0かを判断することによって前記識別子が示す2値化コードを復号化することを特徴とする請求項7に記載の遠心分離機。
【請求項9】
記憶装置を設け、前記記憶装置に前記ロータの種類とその2値化コードの照合表を格納しておき、前記復号化された2値化コードを前記照合表と比較することによって前記ロータの種類を特定することを特徴とする請求項8に記載の遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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